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特開2024-99114タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099114
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240718BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240718BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240718BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002819
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】相武 慶介
(72)【発明者】
【氏名】広田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 瑞哉
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC061
4J002AC072
4J002AC082
4J002AE053
4J002DA036
4J002DE237
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002EG048
4J002EH038
4J002EH058
4J002EH078
4J002EH098
4J002EH108
4J002EH148
4J002EP018
4J002EV248
4J002EW048
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD023
4J002FD028
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】重荷重用タイヤは、耐摩耗性に優れタイヤ寿命が長いことが重要視され、また低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させることが求められている。
【解決手段】イソプレン系ゴムを50質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックを5~70質量部、フィラーを40~80質量部(ただし前記フィラーは前記カーボンブラックを含む)、および可塑剤成分を0~15質量部配合してなるタイヤ用ゴム組成物。
式(A):y ≦ 0.21x + 78、式(B):160 ≦ x ≦ 240(xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、yは前記カーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを50質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックを5~70質量部、フィラーを40~80質量部(ただし前記フィラーは前記カーボンブラックを含む)、および可塑剤成分を0~15質量部配合してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
式(A): y ≦ 0.21 x + 78
式(B): 160 ≦ x ≦ 240
(前記式(A)および式(B)中、xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、yは前記カーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【請求項2】
前記カーボンブラックが、下記式(C)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
式(C): x/z ≧ 1.15
(前記式(C)中、xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、zは前記カーボンブラックのヨウ素吸着量(mg/g)を示す。)
【請求項3】
20℃における硬度が60以上であり、かつ60℃における損失コンプライアンスが28以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなるタイヤ。
【請求項5】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなる重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックおよびバス用タイヤとして使用される重荷重用タイヤは、耐摩耗性に優れタイヤ寿命が長いことが重要視される。一方、タイヤは国連欧州経済委員会(UN/ECE)のR-117での国際基準強化や、米国環境保護庁(EPA)による温室効果ガス(GHG)規制強化などにより低転がり抵抗化が求められている。低転がり抵抗化には、トレッドゴムを硬くする等の手法があるが、耐摩耗性および耐チッピング性が低下する問題点がある。一方、耐摩耗性を向上させるには、カーボンブラックの配合量を増加させる等の手法があるが、これでは発熱性が悪化してしまう。
また、耐チッピング性を向上するには、トレッドゴムを柔らかくする手法があるが、一方で耐摩耗性および発熱性が悪化してしまう。
以上から、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させることは、当業界では極めて困難な事項であると認識されている。
【0003】
なお、例えば下記特許文献1には、ジエン系ゴム100重量部に対して、CTAB吸着比表面積が110~130m/gであり、CTAB吸着比表面積(CTAB)に対する圧縮DBP吸油量(24M4DBP)の比24M4DBP(ml/100g)/CTAB(m/g)が0.85以上であり、かつ、ヨウ素吸着量(IA)に対する窒素吸着比表面積(NSA)の比NSA(m/g)/IA(mg/g)が1.05以上であるカーボンブラックを30~50重量部配合したことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物が開示されている。
しかし、従来技術には、窒素吸着比表面積とDBP吸油量との間に特定の関係を有するカーボンブラックを用い、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させる技術思想は何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-31522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、イソプレン系ゴムを含むゴムに対し、窒素吸着比表面積(NSA)とDBP吸油量との間に特定の関係を有するカーボンブラックおよびフィラーを特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、イソプレン系ゴムを50質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックを5~70質量部、フィラーを40~80質量部(ただし前記フィラーは前記カーボンブラックを含む)、および可塑剤成分を0~15質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
式(A): y ≦ 0.21 x + 78
式(B): 160 ≦ x ≦ 240
(前記式(A)および式(B)中、xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、yは前記カーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを50質量部以上を含むゴム100質量部に対し、上記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックを5~70質量部、フィラーを40~80質量部(ただし前記フィラーは前記カーボンブラックを含む)、および可塑剤成分を0~15質量部配合してなることを特徴としているので、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】複数種のカーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)とDBP吸油量(ml/100g)との関係を表すグラフである。
図2】本発明で使用されるカーボンブラックの製造装置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明で使用されるゴムは、その全体を100質量部としたときに、イソプレン系ゴムを50質量部以上含む必要がある。イソプレン系ゴムの前記配合量が50質量部未満では、本発明の効果を奏することができない。
イソプレン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
なお、NRおよびIR以外にも他のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0012】
本発明で使用されるカーボンブラックは、下記式(A)および式(B)を満たす必要がある。
【0013】
式(A): y ≦ 0.21 x + 78
式(B): 160 ≦ x ≦ 240
(前記式(A)および式(B)中、xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、yは前記カーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
【0014】
上述のように、当業界において低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させることは極めて困難な事項であると認識されていたが、本発明者らの検討によれば、特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックを使用することにより、当該課題を解決できることが見出された。
【0015】
前記課題を解決できる特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックは、本発明者らの数多くの試行錯誤を経て見出したものである。
図1は、複数種のカーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)とDBP吸油量(ml/100g)との関係を表すグラフであり、網掛け部は前記式(A)および式(B)を満たし、かつ本発明の効果を奏する範囲である。なお、図1は説明のため約10数点のカーボンブラックをプロットしたものであるが、前記式(A)は、約100点のカーボンブラックに基づく、最小二乗法の直線回帰により求めたものである。
図1において、網掛け部の範囲外のカーボンブラックを用いた場合はいずれも、十分な低発熱性、耐摩耗性および耐チッピング性を得ることができない。
【0016】
本発明において、前記式(A)および式(B)は、下記式(A-2)および式(B-2)であることがさらに好ましい。
式(A-2): y ≦ 0.21 x + 74
式(B-2): 170 ≦ x ≦ 230
【0017】
また本発明において、前記式(A)および式(B)並びに下記式(C)を満たすことがさらに好ましい。
式(C): y ≧ 0.21 x + 50
【0018】
なお、カーボンブラックのNSAおよびDBP吸油量を本発明で規定する範囲に調整するには、例えば次のような方法がある。
【0019】
例えば、熱分解時間を短くとることにより、例えば1200~800℃程度の温度ゾーンにおける反応滞留時間を短くとることにより、表面活性を失活させる効果を低減することが好適である。
【0020】
この製造方法を具体的に説明すると、収斂,開拡する絞り部をもつ広径円筒反応炉に500~700℃に予熱した空気または酸素を含む適宜な酸化剤と燃料油を混合燃焼させて生成した高温燃焼ガス中に、150~200℃に予熱した原料油を霧化供給して熱分解することにより製造される。
【0021】
例えば、図2に示した炉頭部に接線方向空気供給口1と、炉軸方向に装着された複数の一次燃焼バーナー2を備えた燃焼室3と、同軸的に建設された狭径部5および反応部7を持つ円筒反応炉を用いて製造される。狭径部5および反応部7には、炉軸方向に垂直な方向から原料油を供給する原料油ノズル4、冷却水を導入する冷却水ノズル6が設けられている。
【0022】
なお、本明細書で言う窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217-2に準拠して、DBP吸油量はJIS K6217-4吸油量A法に準拠して求めた値である。
【0023】
本発明で使用されるフィラーとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常配合されるものを使用でき、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等を包含する。
【0024】
また、本発明で使用される前記カーボンブラックは、本発明の更なる効果向上の観点から、下記式(C)を満たすことが好ましい。
式(C): x/z ≧ 1.15
(前記式(C)中、xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、zは前記カーボンブラックのヨウ素吸着量(mg/g)を示す。)
前記x/zの上限値はとくに制限されないが、例えば1.50以下であることが好ましい。また、前記x/zは1.18以上が好ましい。
なお、ヨウ素吸着量(IA)は、JIS K6217-1に準拠して求めた値である。
【0025】
本発明で使用される可塑剤としては、例えば、カルボン酸エステル可塑剤、リン酸エステル可塑剤、スルホン酸エステル可塑剤、オイル、加工助剤等が挙げられる。
カルボン酸エステル可塑剤としては、公知のフタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、トリメリット酸エステル、リノール酸エステル、オレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、リシノール酸エステル等がある。
リン酸エステル可塑剤としては、公知のトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、ジフェニルモノ-o-キセニルホスフェート等がある。
スルホン酸エステル可塑剤としては、公知のベンゼンスルホンブチルアミド、トルエン
スルホンアミド、N-エチル-トルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-p-トルエンスルホンアミド等がある。
オイルとしては、公知のパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の鉱物油系オイルや植物由来のオイル等が挙げられる。
加工助剤としては、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリルアミンのような脂肪族高級アミン、ステアリルアルコールのような脂肪族高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステルなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩等が挙げられる。
【0026】
(タイヤ用ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ゴム100質量部に対し、前記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックを5~70質量部、フィラーを40~80質量部(ただし前記フィラーは前記カーボンブラックを含む)、および可塑剤成分を0~15質量部配合してなることを特徴とすることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が5質量部未満であると補強性が悪化し、70質量部を超えると発熱性が悪化する。
前記フィラーの配合量が40質量部未満であると耐摩耗性が悪化し、80質量部を超えると発熱性、耐摩耗性および耐チッピング性がいずれも悪化する。
また、前記可塑剤の配合量が15質量部を超えると発熱性が悪化する。
【0027】
本発明のゴム組成物において、前記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックの配合量は、ゴム100質量部に対し、40~60質量部がさらに好ましい。
前記フィラーの配合量は、ゴム100質量部に対し、55~70質量部がさらに好ましい。
前記可塑剤成分の配合量は、ゴム100質量部に対し、2~8質量部がさらに好ましい。
【0028】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;老化防止剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0029】
本発明のゴム組成物は、20℃における硬度が60以上であり、かつ60℃における損失コンプライアンスが28以下であることが好ましい。この条件を満たすことにより、耐摩耗性、低発熱性および耐チッピング性をさらに向上させることができる。前記硬度は65~70がさらに好ましく、前記損失コンプライアンスは25以下がさらに好ましい。
なお、硬度はJIS K6253に準拠して測定され、損失コンプライアンスは、岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを使用し、温度60℃、振動数20Hz、振幅2%、初期歪み10%の条件下に測定した値(N/PA)である。
【0030】
本発明のゴム組成物は、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得ることから、タイヤ、とくに重荷重用タイヤのトレッドゴムに好適に用いられ得る。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例0031】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0032】
基準例、実施例1~3および比較例1~6
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で150℃、30分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
なお、カーボンブラックは、上述の製造装置および製造条件に準じて各種のものを調製した。
【0033】
発熱性:株式会社東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用い、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、基準例の値を100として指数で示した。この値が大きいほど、低発熱性であることを示す。
【0034】
耐摩耗性:ランボーン摩耗試験機(岩本製作所株式会社製)を使用して、荷重5kg(=49N)、スリップ率25%、時間4分、室温の条件でランボーン摩耗指数を測定した。結果は、基準例の値を100として指数表示した。この指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0035】
耐チッピング性:JIS K6251に準拠して破断伸びを100℃で測定した。結果は、基準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほど高温での破断伸びが高く、耐チッピング性に優れることを示す。
【0036】
硬度および損失コンプライアンス:上記の測定方法により測定した。
【0037】
結果を表1に併せて示す。なお、表2に実施例および比較例で使用したカーボンブラックA~Fの窒素吸着比表面積(NSA)、DBP吸油量、ヨウ素吸着量(IA)を示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
*1:NR(STR20)
*2:BR(日本ゼオン株式会社製NIPOL BR1220)
*3:シリカ(エヴォニック社製商品名ULTRASIL VN3GR)
*4:カーボンブラックA(窒素吸着比表面積(NSA)=217m/g、DBP吸油量=105ml/100g、ヨウ素吸着量(IA)=181mg/g)
*5:カーボンブラックB(窒素吸着比表面積(NSA)=177m/g、DBP吸油量=108ml/100g、ヨウ素吸着量(IA)=143mg/g)
*6:カーボンブラックC(窒素吸着比表面積(NSA)=163m/g、DBP吸油量=140ml/100g、ヨウ素吸着量(IA)=158mg/g)
*7:カーボンブラックD(窒素吸着比表面積(NSA)=258m/g、DBP吸油量=128ml/100g、ヨウ素吸着量(IA)=260mg/g)
*8:カーボンブラックE(窒素吸着比表面積(NSA)=139m/g、DBP吸油量=120ml/100g、ヨウ素吸着量(IA)=137mg/g)
*9:カーボンブラックF(窒素吸着比表面積(NSA)=81m/g、DBP吸油量=76ml/100g、ヨウ素吸着量(IA)=88mg/g)
*10:シランカップリング剤(エボニックデグッサ社製Si69、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*11:加工助剤(Schill+Seilacher GmbH製ストラクトール HT207)
*12:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*13:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*14:老化防止剤6C(フレキシス製サントフレックス6PPD)
*15:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*16:加硫促進剤NS(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS-F)
*17:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
【0041】
表1の結果から、実施例1~3のゴム組成物は、イソプレン系ゴムを50質量部以上を含むゴム100質量部に対し、前記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックを5~70質量部、フィラーを40~80質量部(ただし前記フィラーは前記カーボンブラックを含む)、および可塑剤成分を0~15質量部配合してなるものであるので、基準例に比べて、低発熱性であり、耐摩耗性および耐チッピング性を向上させ得る結果となった。
これに対し、比較例1は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が悪化した。
比較例2は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性が悪化した。
比較例3は、カーボンブラックのDBP吸油量が本発明で規定する上限を超えているので、耐チッピング性が悪化した。
比較例4は、フィラーの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性、耐摩耗性および耐チッピング性が悪化した。
比較例5は、可塑剤成分の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、発熱性が悪化した。
比較例6は、イソプレン系ゴムの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、耐チッピング性が悪化した。
【0042】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]:イソプレン系ゴムを50質量部以上を含むゴム100質量部に対し、下記式(A)および式(B)を満たすカーボンブラックを5~70質量部、フィラーを40~80質量部(ただし前記フィラーは前記カーボンブラックを含む)、および可塑剤成分を0~15質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
式(A): y ≦ 0.21 x + 78
式(B): 160 ≦ x ≦ 240
(前記式(A)および式(B)中、xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、yは前記カーボンブラックのDBP吸油量(ml/100g)を示す。)
発明[2]:下記式(C)を満たすカーボンブラックを使用することを特徴とする発明1に記載のゴム組成物。
式(C): x/z ≧ 1.15
(前記式(C)中、xは前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)(m/g)を示し、zは前記カーボンブラックのヨウ素吸着量(mg/g)を示す。)
発明[3]:20℃における硬度が60以上であり、かつ60℃における損失コンプライアンスが28以下であることを特徴とする発明1または2に記載のゴム組成物。
発明[4]:発明1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなるタイヤ。
発明[5]:発明1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドゴムに用いてなる重荷重用タイヤ。
【符号の説明】
【0043】
1 接線方向空気供給口
2 一次燃焼バーナー
3 燃焼室
4 原料油ノズル
5 狭径部
6 冷却水ノズル
7 反応部
図1
図2