(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099115
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】パーツフィーダ
(51)【国際特許分類】
B65G 27/24 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
B65G27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002820
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】510246781
【氏名又は名称】翔栄システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】蟻生 斉
【テーマコード(参考)】
3F037
【Fターム(参考)】
3F037AA04
3F037BA03
3F037CA14
3F037CB03
(57)【要約】
【課題】ステージの案内溝に沿って部品をスムーズに搬送することができるパーツフィーダを実現する。
【解決手段】パーツフィーダ100の制御部50が、変位センサ40が検出するステージ10の変位の波形が鋸歯状を呈するとともに、ステージ10の移動が一の方向から他の方向へ切り替わるタイミングの傾斜が急峻であって、ステージ10の移動が他の方向から一の方向へ切り替わるタイミングの前後の傾斜が緩やかである波形を呈するように、圧電素子30の駆動をフィードバック制御するようにすることで、ステージ10の案内溝10aに沿って、部品Pを一の方向に滑らせるように搬送することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を搬送する所定方向に沿った案内溝が上面に設けられており、前記案内溝の延在方向に移動可能に弾性部材によって支持台上に弾性支持されているステージと、
前記ステージに接触して配されており、前記ステージを前記所定方向に沿って移動させる圧電素子と、
前記ステージが前記所定方向に沿って移動する変位を検出する変位センサと、
を備え、
前記圧電素子は、前記ステージを少なくとも前記所定方向に沿う一の方向に一の速度で移動させる駆動と、前記ステージを少なくとも前記所定方向に沿う他の方向に前記一の速度より速い他の速度で移動させる駆動が可能に構成されており、
前記変位センサが検出する前記ステージの変位の波形が鋸歯状を呈するとともに、前記ステージの移動が前記一の方向から前記他の方向へ切り替わるタイミングの傾斜が急峻であって、前記ステージの移動が前記他の方向から前記一の方向へ切り替わるタイミングの前後の傾斜が緩やかである波形を呈するように、前記圧電素子の駆動をフィードバック制御する制御部を備えたことを特徴とするパーツフィーダ。
【請求項2】
前記ステージが前記一の方向に移動されたことに伴い弾性変形した前記弾性部材が復元する際の復元力が、前記ステージを前記他の方向に移動させる駆動力となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパーツフィーダ。
【請求項3】
前記ステージを前記所定方向と直交する面にて断面視した際、前記案内溝はその側面が上方に向かって開いた態様を呈するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパーツフィーダ。
【請求項4】
前記ステージにはグランドが設置されており、少なくとも前記案内溝が帯電しないように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパーツフィーダ。
【請求項5】
前記ステージには消磁器が設置されており、少なくとも前記案内溝が磁気を帯びないように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパーツフィーダ。
【請求項6】
前記ステージにはヒータが設置されており、少なくとも前記案内溝が乾燥しているように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパーツフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ式のパーツフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子(ピエゾ素子)を利用して、電子部品等の被搬送物を搬送するパーツフィーダが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このパーツフィーダは、バイモルフ型の圧電素子の駆動によってステージを振動させ、ステージ上の電子部品を搬送するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のパーツフィーダの場合、バイモルフ型の圧電素子による振動方向が放物線的であり、ステージが楕円軌道を描くため、ステージ上で電子部品がバウンド或いは回転しながら搬送されることがあるので、電子部品が欠損したり、クラックが生じたりすることがあるという問題があった。
特に、被搬送物が微小部品である場合、微小部品がステージに付着して移動しなくなることや、微小部品同士が集まり固まって搬送路を塞いだりするといった問題があった。
【0005】
本発明の目的は、部品などの被搬送物をスムーズに搬送することができるパーツフィーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、パーツフィーダであって、
部品を搬送する所定方向に沿った案内溝が上面に設けられており、前記案内溝の延在方向に移動可能に弾性部材によって支持台上に弾性支持されているステージと、
前記ステージに接触して配されており、前記ステージを前記所定方向に沿って移動させる圧電素子と、
前記ステージが前記所定方向に沿って移動する変位を検出する変位センサと、
を備え、
前記圧電素子は、前記ステージを少なくとも前記所定方向に沿う一の方向に一の速度で移動させる駆動と、前記ステージを少なくとも前記所定方向に沿う他の方向に前記一の速度より速い他の速度で移動させる駆動が可能に構成されており、
前記変位センサが検出する前記ステージの変位の波形が鋸歯状を呈するとともに、前記ステージの移動が前記一の方向から前記他の方向へ切り替わるタイミングの傾斜が急峻であって、前記ステージの移動が前記他の方向から前記一の方向へ切り替わるタイミングの前後の傾斜が緩やかである波形を呈するように、前記圧電素子の駆動(圧電素子の伸縮)をフィードバック制御する制御部を備えるようにした。
【0007】
かかる構成のパーツフィーダにおいて、比較的低速な一の速度でステージを一の方向へ移動させる場合、ステージの案内溝と部品との間に静摩擦力が働き、部品はステージに付着し、その部品はステージと一体的に移動する(静摩擦モード;付着モード)。
一方、比較的高速な他の速度でステージを他の方向へ移動させる場合、ステージの案内溝と部品との間に動摩擦力が働き、部品は慣性によってパーツフィーダにおける相対位置を維持するように案内溝を滑り、ステージ上で相対的に一の方向へ移動する(動摩擦モード;滑りモード)。
このような静摩擦モード(付着モード)と動摩擦モード(滑りモード)の繰り返しによって、部品がステージの案内溝に沿って一の方向に滑るように搬送される。
特に、変位センサが検出するステージの変位の波形が鋸歯状を呈するとともに、ステージの移動が一の方向から他の方向へ切り替わるタイミングの傾斜が急峻であって、ステージの移動が他の方向から一の方向へ切り替わるタイミングの前後の傾斜が緩やかである波形を呈するように、圧電素子の駆動をフィードバック制御することで、部品がステージの案内溝をよりスムーズに滑るようになり、その部品をスムーズに搬送することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記ステージが前記一の方向に移動されたことに伴い弾性変形した前記弾性部材が復元する際の復元力が、前記ステージを前記他の方向に移動させる駆動力となるように構成されている。
このような構成を有していれば、ステージを他の方向により一層速やかに移動させることが可能になる。
【0009】
また、望ましくは、
前記ステージを前記所定方向と直交する面にて断面視した際、前記案内溝はその側面が上方に向かって開いた態様を呈するように形成されている。
側面が上方に向かって開いた態様を呈する案内溝であれば、案内溝に沿って移動する部品がその側面と擦れないので、部品の移動がよりスムーズになる。
【0010】
また、望ましくは、
前記ステージにはグランドが設置されており、少なくとも前記案内溝が帯電しないように構成されている。
また、望ましくは、
前記ステージには消磁器が設置されており、少なくとも前記案内溝が磁気を帯びないように構成されている。
また、望ましくは、
前記ステージにはヒータが設置されており、少なくとも前記案内溝が乾燥している(少なくとも前記案内溝に結露が生じない)ように構成されている。
このように構成されたステージであれば、案内溝に沿う部品の移動がスムーズになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステージの案内溝に沿って部品をスムーズに搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のパーツフィーダを示す概略上面図である。
【
図2】本実施形態のパーツフィーダを示す概略側面図である。
【
図3】ステージに設けられている案内溝を断面視した説明図である。
【
図4】パーツフィーダの制御部が圧電素子に入力する制御信号の一例(a)と、その制御信号に応じたステージの移動と部品の搬送に関する説明図(b)である
【
図5】圧電素子を駆動する制御信号と、ステージの応答に関する説明図である。
【
図6】本実施形態のパーツフィーダにおけるステージの変位の波形(a)と、その変位波形に対応する速度の波形(b)と加速度の波形(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るパーツフィーダの実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
本実施形態のパーツフィーダ100は、例えば、
図1、
図2に示すように、部品Pを搬送する所定方向に沿った案内溝10aが上面に設けられているステージ10と、ステージ10を案内溝10aの延在方向に移動可能に支持台B上に弾性支持している弾性部材20と、ステージ10を所定方向に沿って移動させる圧電素子30と、ステージ10が所定方向に沿って移動する変位を検出する変位センサ40と、変位センサ40が検出したステージ10の変位に応じて圧電素子30の駆動をフィードバック制御する制御部50等を備えている。
なお、このパーツフィーダ100で搬送する部品Pは、例えば、0.2mm角で長さ0.4mm(04×02)の微小部品や、0.1mm角で長さ0.2mm(02×01)の微小部品である。
【0015】
ステージ10は、例えば、金属製の平板部材であり、その上面に所定方向に沿った案内溝10aが設けられている。
このステージ10を所定方向と直交する面にて断面視した際、案内溝10aは、例えば、
図3に示すように、案内溝10aの側面が上方に向かって開いた態様を呈するように形成されている。
案内溝10aの側面が上方に向かって開いた態様を呈していれば、案内溝10aに沿って移動する部品Pがその側面と擦れないので、部品の移動がよりスムーズになる。
【0016】
弾性部材20は、例えば、上面視した際に略L字形状を呈する板バネであり、ステージ10の四隅に設けられている。
略L字形状を呈する弾性部材20の一端側がステージ10に固定され、他端側が支持台Bに固定されている。この弾性部材20の一端側が弾性変形する部分である。
この弾性部材20は、支持台B上でステージ10を略水平方向に移動可能に弾性支持している。
【0017】
圧電素子30は、支持台B上に固定されており、圧電素子30の駆動部がステージ10の一方の側面(図中、左側の側面)に接触して配されている。
圧電素子30には、電圧を印加するためのリード線が接続されており、圧電素子30に電圧が印加されると伸長するようになっている。
伸長した圧電素子30は、ステージ10を一の方向(図中、右方向)に押し出すように移動させ、収縮した圧電素子30は、ステージ10を他の方向(図中、左方向)に引き戻すように移動させる。
この圧電素子30は、ステージ10を所定方向に沿う一の方向(図中、右方向)に一の速度で移動させる駆動と、ステージ10を所定方向に沿う他の方向(図中、左方向)に一の速度より速い他の速度で移動させる駆動が可能に構成されている。
【0018】
また、圧電素子30によってステージ10が一の方向に移動されたことに伴い弾性変形した弾性部材30が復元する際の復元力が、ステージ10を他の方向(図中、左方向)に移動させる駆動力となるように構成されている。
【0019】
なお、圧電素子30がステージ10を移動させる駆動力を作用させる作用線L上に、ステージ10の重心があるように設計され、支持台B上に圧電素子30とステージ10が設置されている。
このような構造とすることで、ステージ10の移動を安定させることができる。
【0020】
変位センサ40は、支持台B上に固定されており、ステージ10の他方の側面(図中、右側の側面)側であって、ステージ10から離間した位置に配設されている。
つまり、圧電素子30と変位センサ40は、ステージ10を挟んで対向配置されている。
この変位センサ40は、例えば、静電容量式の変位センサであり、圧電素子30の駆動によって水平方向に移動するステージ10の変位を検出する。
ここでの変位センサ40は、変位センサ40に対して近接したり離間したりするステージ10の変位を検出する。
【0021】
制御部50は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを有しており、RAMの作業領域に展開されたROMに記憶されたプログラムデータとCPUとの協働により各部を統括制御するコントローラである。
なお、
図2に示すように、制御部50は変位センサアンプ41を介して変位センサ40と接続されている。また、制御部50はピエゾドライバ31を介して圧電素子30と接続されている。
本実施形態のパーツフィーダ100の制御部50は、後述するように、変位センサ40が検出するステージ10の変位の波形が鋸歯状を呈するとともに、ステージ10の移動が一の方向から他の方向へ切り替わるタイミングの傾斜が急峻であって、ステージ10の移動が他の方向から一の方向へ切り替わるタイミングの前後の傾斜が緩やかである波形を呈するように、圧電素子30の駆動をフィードバック制御するようになっている。
【0022】
次に、本実施形態のパーツフィーダ100による部品Pの搬送について説明する。
【0023】
例えば、外部上位制御装置からの指令に基づき、
図4(a)に示す波形を有する制御信号を制御部50に入力し、ピエゾドライバ31を介して制御信号の指令値に応じた電圧を圧電素子30に印加する。
この制御信号に応じた電圧が印加された圧電素子30は、
図4(b)に示すように、ステージ10を一の方向(図中、右方向)に一の速度で移動させた後((1)-(2))、ステージ10を他の方向(図中、左方向)に一の速度より速い他の速度で移動させ((2)-(3))、続けてステージ10を一の方向に一の速度で移動させた後((3)-(4))、ステージ10を他の方向に一の速度より速い他の速度で移動させる((4)-(5))。
【0024】
そして、比較的低速な一の速度でステージ10が一の方向(図中、右方向)へ移動する場合((1)-(2),(3)-(4))、ステージ10の案内溝10aと部品Pとの間に静摩擦力が働き、部品Pはステージ10と一体的に移動する(静摩擦モード;付着モード)。
一方、比較的高速な他の速度でステージ10が他の方向(図中、左方向)へ移動する場合((2)-(3),(4)-(5))、ステージ10の案内溝10aと部品Pとの間に動摩擦力が働き、部品Pは慣性によってパーツフィーダ100における相対位置を維持するように案内溝10aを滑り、ステージ10上で相対的に一の方向へ移動する(動摩擦モード;滑りモード)。
つまり、このような波形(
図4(a))を有する制御信号を制御部50に入力して、圧電素子30を伸縮駆動させることで、ステージ10の案内溝10aと部品Pとの間に静摩擦力が働く一の速度(低速)でステージ10を一の方向へ移動させる静摩擦モード(付着モード)と、ステージ10の案内溝10aと部品Pとの間に動摩擦力が働く他の速度(高速)でステージ10を他の方向へ移動させる動摩擦モード(滑りモード)が繰り返される。
この静摩擦モードと動摩擦モードの繰り返しによって、部品Pがステージ10上の案内溝10aに沿って、一の方向(図中、右方向)に滑るように搬送される。
【0025】
なお、制御信号の波形が
図4(a)に示す鋸歯状を呈する波形である場合、その制御信号の指令値に応じた電圧が印加された圧電素子30によって移動されるステージ10の変位の波形は、その制御信号の波形に類似した鋸歯状の波形として変位センサ40に検出される。
【0026】
ところで、制御信号の指令値に応じた電圧が印加された圧電素子30によってステージ10が一の方向に移動される際、その圧電素子30が伸長する速度(加速度)が大きいとそれが衝撃となってステージ10に固有振動が生じることがある(
図5の上段参照)。
このような固有振動が生じてしまうと、部品Pがステージ10上を跳ねて、ステージ10ともに移動できなくなってしまうことがある。
例えば、このような固有振動が生じてしまうと、ステージ10の移動が制御信号に基づくものからズレが生じてしまい、部品Pの搬送が滑らかでなくなるので、圧電素子30の駆動をフィードバック制御することでステージ10の固有振動の発生を抑えるようにした(
図5の下段参照)。
特に、ステージ10が他の方向に移動された後にステージ10が一の方向に移動される際、急激に移動方向が変わることが衝撃となり易く、ステージ10に固有振動が生じてしまうので、圧電素子30の駆動をフィードバック制御することでステージ10の固有振動の発生を抑えるようにした。
また、制御部50にノッチフィルタ回路を備え、そのノッチフィルタによる波形制御によっても、ステージ10の固有振動を抑えることができる。
【0027】
次に、本実施形態のパーツフィーダ100による部品Pの搬送に関し、
図6(a)を参照して、圧電素子30の駆動をフィードバック制御することについて説明する。
なお、
図6(a)においては、ステージ10の変位の波形として、鋸歯状を呈する波形のうちの1つの波形を図示しているが、この波形が繰り返されて鋸歯状の波形となる。
【0028】
前述したように、電圧が印加された圧電素子30によってステージ10が一の方向に移動される際、その圧電素子30が伸長する速度(加速度)が大きいとそれが衝撃となってステージ10に固有振動が生じてしまうことがある。
その固有振動を生じさせないためには、ステージ10が他の方向に移動する動摩擦モードから、ステージ10が一の方向に移動する静摩擦モードに切り替わるタイミングの前後において、ステージ10の加速度の大きさを小さくすることが好ましい(例えば、
図6の(ニ)や(ロ)のタイミングにおける加速度)。
そこで本実施形態においては、動摩擦モードが終わるタイミング(
図6(a)の(ニ)-(ホ)のタイミング)と静摩擦モードが始まるタイミング(
図6(a)の(イ)-(ロ)のタイミング)において、ステージ10が比較的ゆっくり移動するように圧電素子30の駆動を制御するようにした。
具体的には、ステージ10の加速度の大きさを小さくするように制御波形を編集する機能を制御部50に付加した。
【0029】
そのために、制御部50が、ステージ10の移動が他の方向(動摩擦モード)から一の方向(静摩擦モード)へ切り替わる際の変位の波形の傾斜が緩やかになるように(
図6(a)の(ニ)-(ホ),(イ)-(ロ))、圧電素子30の駆動をフィードバック制御する。
具体的には、動摩擦モード後半の変位の波形の傾斜(
図6(a)の(ニ)-(ホ))が、動摩擦モード前半での変位の波形の傾斜(
図6(a)の(ハ)-(ニ))よりも緩やかであって、静摩擦モード当初の変位の波形の傾斜(
図6(a)の(イ)-(ロ))が、その後の静摩擦モードでの変位の波形の傾斜(
図6(a)の(ロ)-(ハ))よりも緩やかになるように、制御波形を編集し、圧電素子30の駆動をフィードバック制御する。
【0030】
また、静摩擦モードから動摩擦モードへの明瞭な切り替えを行うためには、逆向きに急激な速度変化をつけてステージ10を移動させることが好ましい。換言すれば、瞬間的に逆向きとなる大きな加速度をつけてステージ10を移動させることが好ましい。
そこで本実施形態においては、静摩擦モードから動摩擦モードに切り替わるタイミング(
図6(a)の(ハ)のタイミング)において、ステージ10が一の方向から他の方向に急激に向きを変えて高速移動するように圧電素子30の駆動を制御するようにした。
【0031】
そのために、制御部50が、ステージ10の移動が一の方向(静摩擦モード)から他の方向(動摩擦モード)へ切り替わる際の変位の波形の傾斜が急峻になるように(
図6(a)の(ハ))、圧電素子30の駆動をフィードバック制御する。
具体的には、動摩擦モード当初の変位の波形の傾斜(
図6(a)の(ハ))が略垂直になるように、制御波形を編集し、圧電素子30の駆動をフィードバック制御する。
より具体的には、ステージ10の移動が一の方向(静摩擦モード)から他の方向(動摩擦モード)へ切り替わる際の変位の波形の傾斜が急峻(加速度が大)になるように(
図6(a)の(ハ))、制御波形を調整する。その際、ステージの加速度信号の大きさを参照しながら制御波形を編集する。加速度信号は変位センサ信号を処理してつくられる。
ここでは、動摩擦モード当初の変位の波形の傾斜(
図6(a)の(ハ))が略垂直になるように、制御波形を編集している。
【0032】
つまり、本実施形態では、ステージ10が制御信号通りに移動するよう変位センサ40を使ったフィードバック制御を行い、静摩擦モード(付着モード)と動摩擦モード(滑りモード)を好ましく切り替えるために、ステージ10の加速度信号を参照しながら、制御信号を編集している。
【0033】
そして、変位センサ40が検出するステージ10の変位の波形が、
図6(a)に示した実線の波形を呈するように、圧電素子30の駆動をフィードバック制御することによって、静摩擦モードと動摩擦モードの切り替えを好適に行うことができ、ステージ10の案内溝10aに沿って部品Pを好適に搬送することができる。(
図6(a)の鎖線の波形は、
図4(a)に示したモデル波形と同様のものである。)
なお、変位センサ40が検出するステージ10の変位の波形が、
図6(a)に示した実線の波形を呈するように圧電素子30の駆動をフィードバック制御している場合、外部上位制御装置が、
図6(a)に示した実線の波形に類似した制御信号を制御部50に入力し、ピエゾドライバ31を介して制御信号の指令値に応じた電圧を圧電素子30に印加して、ステージ10を移動させているといえる。
また、制御部50は、
図6(a)に示した実線の波形に類似した制御信号波形パターン情報を複数個内部に保持し、外部上位制御装置が波形パターン選択と波形出力ON/OFFを切り替え、波形出力タイミング信号(繰り返し周波数)を出力するようにして、ステージ10を移動させるようにしてもよい。
【0034】
このように、変位センサ40が検出するステージ10の変位の波形が、単純な鋸歯状の波形(
図6(a)の鎖線の波形)ではなく、
図6(a)に示した実線の波形を呈するように、圧電素子30の駆動をフィードバック制御するようにすれば、ステージ10上の案内溝10aに沿って、部品Pを一の方向(図中、右方向)に滑らせるように搬送することができる。
つまり、ステージ10上の部品Pがバウンドするように搬送されることがないので、搬送される部品Pに欠損などの不具合が生じることは無い。
特に、パーツフィーダ100で搬送する部品Pが微小部品であると、僅かな振動などで部品Pがバウンドしてしまうことがあるが、本実施形態のパーツフィーダ100であれば、静摩擦モードと動摩擦モードを好適に切り替えて、微小な部品Pであってもステージ10上を滑らせるように搬送することができる。
【0035】
なお、
図6(a)に示した制御信号の制御波形を反転させた態様の制御信号を用いることで、ステージ10上を移動させる部品Pの搬送方向を逆向きに切り替えることができる。
例えば、ステージ10を比較的低速で他の方向(図中、左方向)に移動させた後(静摩擦モード;付着モード)、そのステージ10を比較的高速で一の方向(図中、右方向)に移動させるようにすれば(動摩擦モード;滑りモード)、ステージ10上の部品Pを他の方向へ移動させるように、搬送方向を切り替えることができる。
そして、部品Pの搬送方向を逆向きに切り替えることができれば、複数の部品Pが案内溝10aに詰まってしまった際に、制御信号(制御波形)を切り替えるようにして、一旦部品Pの搬送方向を逆向きにすることで、その詰まりを解消することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、グランド(図示省略)がステージ10に設置されていてもよい。
そのグランドによって案内溝10aが帯電しないように構成されていれば、案内溝10aに沿う部品Pの移動がスムーズになるので好ましい。
【0037】
また、消磁器(図示省略)がステージ10に設置されていてもよい。
その消磁器によって案内溝10aが磁気を帯びないように構成されていれば、案内溝10aに沿う部品Pの移動がスムーズになるので好ましい。
【0038】
また、ヒータ(図示省略)がステージ10に設置されていてもよい。
そのヒータによって案内溝10a(ステージ10)を温め、案内溝10aの表面の水分を飛ばすようにして、案内溝10aが乾燥しているように構成されていれば、案内溝10aに沿う部品Pの移動がスムーズになるので好ましい。
また、そのヒータによって案内溝10aの温度をパーツフィーダ100が設置されている室内の温度とほぼ同じにするなどして、案内溝10aに結露が生じないように構成されていれば、案内溝10aに沿う部品Pの移動がスムーズになるので好ましい。
【0039】
なお、帯電防止や静電気対策、磁気対策のために、ステージ10をセラミックスなどの非磁性材料を用いて形成するようにしてもよい。
【0040】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 ステージ
10a 案内溝
20 弾性部材
30 圧電素子
40 変位センサ
50 制御部
100 パーツフィーダ
B 支持台
P 部品
L 作用線