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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099117
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240718BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 B
F16H57/04 N
F16H63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002822
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】貞弘 真吾
【テーマコード(参考)】
3J063
3J067
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB02
3J063AC03
3J063AC11
3J063BA11
3J063CA07
3J063CD42
3J063CD43
3J063CD44
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD47
3J063XD62
3J063XD73
3J067AB02
3J067AC03
3J067EA81
3J067FA56
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】差動装置に多くの潤滑油を供給することができ、差動装置の潤滑性能を向上できる車両用変速機を提供すること。
【解決手段】自動変速機2において、ライトケース5は、上部に潤滑油供給溝5rが形成され軸受7Eを介して差動装置10のデフケース12を支持する軸受支持部5dと、潤滑油供給溝5rよりも上側に位置してライトケース5の縦壁5Wからファイナルドリブンギヤ11側に突出し、パーキングポールシャフト41を支持するボス部5mと、縦壁5Wからファイナルドリブンギヤ11側に突出し、ボス部5mと潤滑油供給溝5rの周縁とに連絡される下側縦リブ5tとを有し、ボス部5mと下側縦リブ5tがパーキングポールシャフト41の軸方向から見てパーキングギヤ24Cに対向するように配置されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に潤滑油が貯留される変速機ケースと、
前記変速機ケースに回転自在に支持される回転軸と、
前記回転軸から駆動力が伝達されるギヤを有し、前記変速機ケースに回転自在に支持される差動装置と、
前記回転軸の回転を機械的に阻止するパーキングロック機構とを有し、
前記パーキングロック機構が、前記回転軸に取付けられたパーキングギヤと、揺動軸を中心に揺動自在に設けられ、前記パーキングギヤに係合することにより、前記回転軸の回転を阻止するパーキングポールとを有し、前記揺動軸の軸方向で前記パーキングギヤと前記パーキングポールが前記ギヤに対向する車両用変速機であって、
車両の前進時に前記ギヤによって掻き上げられる潤滑油の流れ方向において、前記パーキングポールよりも上流側に前記パーキングギヤが配置されており、
前記変速機ケースは、上部に潤滑油供給溝が形成され、軸受を介して前記差動装置を支持する軸受支持部と、前記潤滑油供給溝よりも上側に位置して前記変速機ケースの壁部から前記ギヤ側に突出し、前記揺動軸を支持するボス部と、前記変速機ケースの前記壁部から前記ギヤ側に突出し、前記ボス部と前記潤滑油供給溝の周縁とに連絡される縦リブとを有し、
前記ボス部と前記縦リブが前記揺動軸の軸方向から見て前記パーキングギヤに対向するように配置されていることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記回転軸は、前記パーキングギヤよりも小径で、かつ、前記ギヤに噛み合い、前記回転軸から前記ギヤに駆動力を伝達する小径ギヤを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記変速機ケースは、前記変速機ケースの前記壁部から前記ギヤ側に突出し、前記パーキングギヤの下縁に沿って延びる円弧リブを有し、
前記円弧リブは、円弧の延長線上に前記ボス部または前記縦リブが位置しており、
前記円弧リブと前記縦リブの間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記縦リブは、上端部から前記潤滑油供給溝側の下端部に向かって斜めに傾斜していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項5】
前記縦リブは、上端部から前記潤滑油供給溝側の下端部に向かって斜めに傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキングロック機構を備えた車両用変速機としては、特許文献1に記載される駆動装置が知られている。
【0003】
この駆動装置は、変速機ケースの側壁に設けられたボス部に嵌合される揺動軸と、揺動軸に揺動自在に設けられ、パーキングギヤの回転を規制するパーキングポールとを備えている。
【0004】
パーキングギヤとパーキングポールの下方には差動装置が配置されており、差動装置は、軸受を介して変速機ケースのライトケースに回転自在に支持されている。
【0005】
変速機ケースの底部には潤滑油が貯留されており、オイル貯留部の上方に配置されたオイルポンプによって潤滑油が潤滑部位に供給可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-56393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される駆動装置にあっては、差動装置の軸受を潤滑油によって潤滑する必要がある。この駆動装置はオイルポンプを有しているので、オイルポンプから吐出される潤滑油をパイプ等の油路を用いて差動装置の軸受に導いて潤滑することが考えられるが、オイルポンプを持たない駆動装置では、差動装置の軸受への潤滑油の供給が問題となる。
【0008】
さらに、特許文献1に記載される駆動装置にあっては、差動装置の上方の空間にはパーキングポールを含んだパーキングロック装置が配置されており、オイルポンプを持たない駆動装置では差動装置の軸受を潤滑するためには差動装置のファイナルドリブンギヤによって上方に掻き上げられた潤滑油が利用されるものと考えられるが、掻き上げられた潤滑油はパーキングロック装置を配置するために拡大された空間で拡散されて差動装置の軸受に到達することが難しい。
【0009】
さらに、特許文献1に記載されるものは、ライトケースにボスやリブが形成されており(図3参照)、ファイナルドリブンギヤによって掻き上げられた潤滑油はボスやリブによって前方に流され、差動装置の軸受に導かれないことが考えられる。
【0010】
つまり、特許文献1に記載される駆動装置にあっては、差動装置の上方の空間が、パーキングロック機構の設置スペースを確保するために拡大されるので、ファイナルドリブンギヤによって掻き上げられた潤滑油が周囲に飛散し、ボスやリブに捕捉された潤滑油は前方に送られてしまうので、差動装置の軸受に到達する潤滑油量が要求量に満たないおそれがある。
【0011】
このように、差動装置の軸受に供給される潤滑油量が足りなくなるおそれがあり、未だ改善の余地がある。
【0012】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、差動装置の軸受に多くの潤滑油を供給することができ、差動装置の軸受の潤滑性能を向上できる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、底部に潤滑油が貯留される変速機ケースと、前記変速機ケースに回転自在に支持される回転軸と、前記回転軸から駆動力が伝達されるギヤを有し、前記変速機ケースに回転自在に支持される差動装置と、前記回転軸の回転を機械的に阻止するパーキングロック機構とを有し、前記パーキングロック機構が、前記回転軸に取付けられたパーキングギヤと、揺動軸を中心に揺動自在に設けられ、前記パーキングギヤに係合することにより、前記回転軸の回転を阻止するパーキングポールとを有し、前記揺動軸の軸方向で前記パーキングギヤと前記パーキングポールが前記ギヤに対向する車両用変速機であって、車両の前進時に前記ギヤによって掻き上げられる潤滑油の流れ方向において、前記パーキングポールよりも上流側に前記パーキングギヤが配置されており、前記変速機ケースは、上部に潤滑油供給溝が形成され、軸受を介して前記差動装置を支持する軸受支持部と、前記潤滑油供給溝よりも上側に位置して前記変速機ケースの壁部から前記ギヤ側に突出し、前記揺動軸を支持するボス部と、前記変速機ケースの前記壁部から前記ギヤ側に突出し、前記ボス部と前記潤滑油供給溝の周縁とに連絡される縦リブとを有し、前記ボス部と前記縦リブが前記揺動軸の軸方向から見て前記パーキングギヤに対向するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように上記の本発明によれば、差動装置の軸受に多くの潤滑油を供給することができ、差動装置の軸受の潤滑性能を向上できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の後面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態で左方から見た図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態で左方から見た図であり、図2の状態から入力軸、カウンタ軸、差動装置を取り外した状態を示す。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態で左方から見た図であり、図3の状態からリテーナを取り外した状態でパーキングポールがパーキングギヤに係合する状態を示す。
図5図5は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態で左方から見た図であり、図3の状態からリテーナを取り外した状態でパーキングポールがパーキングギヤから離隔した状態(パーキングロックしていない状態であって、シフト位置が非パーキングポジションの時の状態)を示す。
図6図6は、本発明の一実施例に係る車両用変速機に収容される変速機構、差動装置およびモータジェネレータの展開図である(図2のVI-VI方向矢視断面図)。
図7図7は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のパーキングロック機構を右側から見た状態を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のパーキングロック機構を上側から見た状態を示す図である。
図9図9は、図3のIX-IX方向矢視断面図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のライトケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、底部に潤滑油が貯留される変速機ケースと、変速機ケースに回転自在に支持される回転軸と、回転軸から駆動力が伝達されるギヤを有し、変速機ケースに回転自在に支持される差動装置と、回転軸の回転を機械的に阻止するパーキングロック機構とを有し、パーキングロック機構が、回転軸に取付けられたパーキングギヤと、揺動軸を中心に揺動自在に設けられ、パーキングギヤに係合することにより、回転軸の回転を阻止するパーキングポールとを有し、揺動軸の軸方向でパーキングギヤとパーキングポールがギヤに対向する車両用変速機であって、車両の前進時にギヤによって掻き上げられる潤滑油の流れ方向において、パーキングポールよりも上流側にパーキングギヤが配置されており、変速機ケースは、上部に潤滑油供給溝が形成され、軸受を介して差動装置を支持する軸受支持部と、潤滑油供給溝よりも上側に位置して変速機ケースの壁部からギヤ側に突出し、揺動軸を支持するボス部と、変速機ケースの壁部からギヤ側に突出し、ボス部と潤滑油供給溝の周縁とに連絡される縦リブとを有し、ボス部と縦リブが揺動軸の軸方向から見てパーキングギヤに対向するように配置されている。
【0017】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、差動装置に多くの潤滑油を供給することができ、差動装置の潤滑性能を向上できる。
【実施例0018】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から図10は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
【0019】
図1から図10において、上下前後左右方向は、車両に配置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0020】
まず、構成を説明する。
図1において、車両の図示しないエンジンルームには内燃機関としてのエンジン1と、エンジン1に連結される自動変速機2とが設けられている。本実施例の自動変速機2は、車両用変速機を構成する。
【0021】
自動変速機2は、例えば、AMT(Automated Manual Transmission)から構成されている。自動変速機2は変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、レフトケース4とライトケース5を備えている。
【0022】
レフトケース4とライトケース5の合わせ面にはフランジ部4A、5Aが形成されており、レフトケース4とライトケース5は、フランジ部4Aとフランジ部5Aがボルト30Aによって締結されることにより、一体化されている。
【0023】
ライトケース5に関し、レフトケース4側に形成されているフランジ部5Aに対して反対側となるエンジン1側にはフランジ部5Bが形成されており、フランジ部5Bは、図示しないボルトによってエンジン1の図示しないシリンダブロックに締結されている。
【0024】
図2図6に示すように、変速機ケース3には変速機構6が収容されている。詳細には、後述するレフトケース4とライトケース5で構成される変速機室8Bに変速機構6は配置されており、ライトケース5で構成されるクラッチ室8Aには図示しない摩擦クラッチが収容されている。また、レフトケース4とライトケース5によって形成される変速機室8Bの後空間部分には差動装置10が収容されており、差動装置10は、変速機構6の後方に配置されている。
【0025】
図2図3に示すように、ライトケース5には縦壁5Wが設けられており、縦壁5W(隔壁部分)は後述する入力軸21やカウンタ軸22の軸心の延びる方向に略垂直な面に形成されている。変速機ケース3は、縦壁5Wによって摩擦クラッチを収容するクラッチ室8Aと変速機構6を収容する変速機室8Bとに仕切られている(図1参照)。
【0026】
なお、縦壁5Wは、クラッチ室8Aの左側に配置されクラッチ室8Aと変速機室8Bとを仕切る隔壁部分と、クラッチ室8Aの後方で隔壁部分に連続して後方に延びる縦壁部分とを含んで構成されている。本実施例の縦壁5Wは、壁部を構成する。
【0027】
図1に示すように、レフトケース4には、変速機構6を上下方向および前後方向から取り囲む周壁4Bが設けられている。
【0028】
ライトケース5には、クラッチ室8Aを上下方向および前後方向から取り囲む周壁5Cが設けられており、周壁5Cの左端部にフランジ部5Aが形成されている。
【0029】
自動変速機2は、クラッチ室8Aに配置された摩擦クラッチを介してエンジン1の駆動力を変速機構6に入力し、同期装置の作動により変速機構6において変速を行い、変速された回転(回転速度)を差動装置10により、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動輪に伝達する。
【0030】
変速機構6は、レフトケース4とライトケース5とで構成される変速機室8Bに収容され、それぞれ平行に延びる入力軸21、カウンタ軸22、リバース軸23および中間軸24を備えている。
【0031】
入力軸21は、摩擦クラッチを介してエンジン1の図示しないクランク軸に連結可能となっており、入力軸21にはエンジン1の駆動力が摩擦クラッチを介して伝達される。
【0032】
図2に示すように、カウンタ軸22は入力軸21に対して後斜め下方に配置されており、リバース軸23は入力軸21の前斜め下方に配置されている。カウンタ軸22とリバース軸23は略同じ高さ位置に配置されている。
【0033】
図6に示すように、入力軸21には1速入力ギヤ21A、2速入力ギヤ21B、3速入力ギヤ21C、4速入力ギヤ21D、5速入力ギヤ21E、6速入力ギヤ21Fおよびリバース入力ギヤ21Gが設けられている。
【0034】
カウンタ軸22には1速カウンタギヤ22A、2速カウンタギヤ22B、3速カウンタギヤ22C、4速カウンタギヤ22D、5速カウンタギヤ22E、6速カウンタギヤ22F、リバースカウンタギヤ22Gおよびファイナルドライブギヤ22Hが設けられている。
【0035】
1速カウンタギヤ22Aから6速カウンタギヤ22Fは、同一の変速段を構成する1速入力ギヤ21Aから6速入力ギヤ21Fにそれぞれ常時噛み合っている。
【0036】
リバース軸23にはリバースアイドラギヤ23Aが設けられており、リバースアイドラギヤ23Aは、車両の後進時にリバース軸23に沿って軸方向に移動し、リバース入力ギヤ21Gに噛み合うとともに、リバースカウンタギヤ22Gに噛み合う。
【0037】
そして、車両の後進時には、リバース入力ギヤ21Gの駆動力(回転力)はリバースアイドラギヤ23Aを介してリバースカウンタギヤ22Gに伝えられる。
【0038】
変速機構6には、1-2速段用の同期装置25A、3-4速段用の同期装置25B、5-6速段用の同期装置25Cが設けられている。変速機構6は、後進段用の同期装置は持たず、後進段はリバースアイドラギヤ23Aがギヤ間に移動して変速段を達成する所謂飛込式となっている。
【0039】
同期装置25A、25B、25Cおよびリバースアイドラギヤ23Aは、図示しないシフトフォークによって操作されることにより、1速入力ギヤ21Aから6速入力ギヤ21F、1速カウンタギヤ22Aから6速カウンタギヤ22Fおよびリバースアイドラギヤ23Aのいずれか1つを動力伝達可能な状態に操作して所定の変速段を成立させる。
【0040】
図3図4に示すように、ライトケース5の縦壁5Wに軸受支持部5a、5b、軸支持部5cが形成されている。軸受支持部5aの内方において縦壁5Wには開口部5eが形成されている。入力軸21は、開口部5eを通して変速機室8Bからクラッチ室8Aに延び、軸受支持部5aに軸受7A(図6参照)を介して回転自在に支持されている。
【0041】
入力軸21の左端部は、レフトケース4の左側壁4Wに設けられた図示しない軸受支持部に軸受7Bを介して回転自在に支持されている。
【0042】
カウンタ軸22の右端部は、軸受7C(図6参照)を介して縦壁5Wの軸受支持部5bに回転自在に支持されており、カウンタ軸22の左端部は、軸受7D(図6参照)を介してレフトケース4の左側壁4Wの図示しない軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0043】
リバース軸23の右端部は、縦壁5Wの軸支持部5cに挿入されて支持されており、リバース軸23の左端部はレフトケース4の周壁4Bに回転不能に取付けられている。
【0044】
図6に示すように、差動装置10は、ファイナルドリブンギヤ11と、ファイナルドリブンギヤ11が固定されたデフケース12と、ピニオンシャフト13と、ピニオンシャフト13に回転自在に支持された一対のピニオンギヤ14A、14Bと、ピニオンギヤ14A、14Bに噛み合う一対のサイドギヤ15A、15Bとを有している。サイドギヤ15A、15Bは、それぞれ左右のドライブシャフトに連結されている。
【0045】
本実施例の自動変速機2は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両において、横置きに配置されるエンジン1に取付けられている。
【0046】
ファイナルドリブンギヤ11は、ファイナルドライブギヤ22Hに噛み合っており、差動装置10は、左右の駆動輪の差動を許容しつつ、ファイナルドライブギヤ22Hの回転を左右の駆動輪に伝達する。
【0047】
図4に示すように、ライトケース5の後部には右側に膨出して内部空間を拡大する収容部5Dが形成されており、収容部5Dは、縦壁5Wからレフトケース4と離れる方向に膨出している。収容部5Dの膨出方向の先端部(右端部)には軸受支持部5dが設けられており、デフケース12の右端部は、軸受7E(図6図9参照)によって軸受支持部5dに回転自在に支持されている。
【0048】
レフトケース4の後部には、収容部5Dに対向するように図示しない収容部が設けられている。収容部の左端部には図示しない軸受支持部が設けられており、デフケース12の左端部は、軸受7F(図6参照)によってレフトケースの軸受支持部に回転自在に支持されている。この収容部には、差動装置10が収容されている。
【0049】
図6に示すように、中間軸24にはファイナルドライブギヤ24Aと、モータ出力ギヤ24Bと、モータ出力ギヤ24Bに一体に形成されたパーキングギヤ24Cとが設けられている。ファイナルドライブギヤ24Aは、パーキングギヤ24Cやモータ出力ギヤ24Bよりも小径に形成されている。
【0050】
詳細には、パーキングギヤ24Cはファイナルドライブギヤ24Aに対向する内径部分が抉られており、この抉られた内径部分の直径よりもファイナルドライブギヤ24Aは小径に形成されている。本実施例のファイナルドライブギヤ24Aは、小径ギヤを構成する。
【0051】
図10に示すように、収容部5Dの上方に位置するライトケース5の縦壁5Wには軸受支持部5fが形成されており、中間軸24の右端部は、軸受7G(図6参照)を介して軸受支持部5fに回転自在に支持されている。
【0052】
レフトケース4の後部で差動装置10が収容される収容部の上方には、入力軸21の軸方向で左側壁4Wとライトケース5の間に位置する図示しない隔壁が設けられており、隔壁には図示しない軸受支持部が形成されている。
【0053】
この隔壁は、後述するモータ収容壁4Cの一部を構成し、モータジェネレータ27の右側に配置されてモータ軸27Bに垂直な方向に延びている。そして、この隔壁は、モータ軸27Bを軸受7K(図6参照)を介して支持するとともに、中間軸24の左端部を軸受7H(図6参照)を介して軸受支持部で回転自在に支持している。本実施例の入力軸21、カウンタ軸22、リバース軸23および中間軸24は、平行に配置されている。
【0054】
ファイナルドリブンギヤ11の下端部は、入力ギヤ21Aやカウンタギヤ22A等の変速機ケース3に収容されたギヤの中で最も下方に位置している。
【0055】
図2図3に示すように、ライトケース5の周壁5Cの上壁5Eの後方には膨出壁5Fが設けられており、膨出壁5Fは、その前側に位置するライトケース5の周壁5Cの上壁5Eよりも上方に内部空間を拡大するように膨出している。この膨出壁5Fによって拡大された空間には、モータ軸27Bが配置されているとともに、後述するリテーナ40の上部が配置されている。
【0056】
変速機ケース3の底部には潤滑油が貯留されており、ファイナルドリブンギヤ11は、潤滑油に浸かっている。このため、車両の前進時にファイナルドリブンギヤ11が図2において反時計回りに回転すると、ファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられた潤滑油は、潤滑油O1で示すように、後壁5Iから膨出壁5Fに沿って流れる。
【0057】
詳細には、潤滑油の流れは、車両の速度(ファイナルドリブンギヤ11の回転速度)に依存し、速度が速い場合は後壁5Iから膨出壁5Fに沿って中間軸24やモータ軸27Bの上方を通過して潤滑油は前方に流れていき、速度が遅い場合はモータ軸27Bの上方よりも中間軸24の周囲を通過して潤滑油は前方に流れる。
【0058】
図2に示すように、車両の前進時にファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられる潤滑油O1の流れ方向において、パーキングポール32よりも上流側にファイナルドライブギヤ24Aとパーキングギヤ24Cが配置されている。
【0059】
比較的高速で走行している車両の前進時にファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられる潤滑油O1の流れ方向は、矢印で示す潤滑油O1の流れる方向である。すなわち、ファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられた潤滑油O1が、ファイナルドリブンギヤ11と後壁5Iの間からパーキングギヤ24Cの後方と後壁5Iの間を通してパーキングギヤ24Cと膨出壁5Fの間を通って前壁5H側に流れるコースである。
【0060】
また、比較的低速で走行している車両の前進時にファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられる潤滑油は高速時に比較して勢いが無く中間軸24の後方に溜まる傾向にある。すなわち、ファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられた潤滑油は、パーキングギヤ24Cの周囲に溜まり、ファイナルドリブンギヤ11とパーキングギヤ24Cの間を通過して中間軸24の前方に配置されたパーキングポール32側に流れる。
【0061】
つまり、パーキングギヤ24Cは、パーキングポール32よりも潤滑油の流れ方向で上流側であって、パーキングポール32に対して後壁5I側に配置されている。
【0062】
本実施例のライトケース5の周壁5Cは、上壁5Eおよび膨出壁5Fと、上下方向で上壁5Eおよび膨出壁5Fに対向する下壁5Gと、上壁5Eの前端部と下壁5Gの前端部とに連絡される前壁5Hと、上壁5Eの後端部と下壁5Gの後端部とに連絡される後壁5Iとを含んで構成されている。
【0063】
図1に示すように、レフトケース4にはモータ収容壁4Cが設けられている。モータ収容壁4Cは、変速機構6(入力軸21、カウンタ軸22)を取り囲むレフトケース4の周壁4Bの上壁4Dよりも上側に突出するように形成されており、ライトケース5の膨出壁5Fよりも上側に膨出している。レフトケース4のモータ収容壁4Cの左端部は開放しており、モータ収容壁4Cの左端部にはボルト30Gによってモータケース26が取付けられて閉じられている。
【0064】
図1に示すように、モータ収容壁4Cとモータケース26の内部にはモータジェネレータ27(図6参照)が収容されている。図6に示すように、モータジェネレータ27は、モータ部27Aと、モータ軸27Bと、モータ軸27Bの右端部に設けられたモータ入力ギヤ27Cとを有する。
【0065】
図6に示すように、モータ部27Aは、複数の永久磁石が埋め込まれたロータ27aと、ステータコイルが巻き付けられたステータ27bとを備えており、ステータコイルに三相交流電力が印加されることでステータ27bに回転磁界が形成され、この回転磁界によってロータ27aが回転して駆動力を生成する。モータ軸27Bは、ロータ27aにスプライン嵌合されており、ロータ27aと一体で回転する。
【0066】
モータ入力ギヤ27Cは、中間軸24と一体的に回転するように取付けられたモータ出力ギヤ24Bに噛み合っている。モータジェネレータ27によるモータ走行時、またはエンジン1とモータジェネレータ27とによるハイブリッド走行時に、モータジェネレータ27の駆動力は、モータ入力ギヤ27Cからモータ出力ギヤ24Bを介して中間軸24に伝達される。
【0067】
モータジェネレータ27の駆動力は、中間軸24からファイナルドライブギヤ24Aを介してファイナルドリブンギヤ11に伝達される。
【0068】
また、モータジェネレータ27は、ファイナルドリブンギヤ11を介して駆動輪やエンジン1から駆動力を受けることにより、図示しないバッテリに充電する電力を生成する発電機としても機能する。本実施例の中間軸24は、回転軸を構成し、ファイナルドリブンギヤ11は、ギヤを構成する。
【0069】
図3図10に示すように、ライトケース5の縦壁5Wには軸受支持部5gが形成されており、軸受支持部5gにはモータ軸27Bの右端部が軸受7I(図6参照)を介して回転自在に支持されている。
【0070】
モータケース26の左側壁26Aには図示しない軸受支持部が形成されており、モータ軸27Bの左端部は、軸受7J(図6参照)を介して軸受支持部に回転自在に支持されている。モータ軸27Bの軸方向で軸受7Iと7Jの間には軸受7Kが設けられており、軸受7Kは上述した隔壁の軸受支持部に回転自在に支持されている。
【0071】
図10に示すように、モータ収容壁4Cは、モータジェネレータ27のモータ部27Aの右半分の周囲を取り囲み、モータ収容壁4Cの左端部は開口端となっており、モータ部27Aの左半分の周囲を取り囲むモータケース26によって閉塞されている。
【0072】
モータ収容壁4Cとモータケース26によって、モータジェネレータ27が収容されるモータ収容室が形成されている。モータ収容壁4Cの右端部は前述の隔壁となっている。この隔壁には軸受支持部の内方において開口部が形成されており、モータ軸27Bは開口部を通してモータ収容室から変速機室8Bに延び、軸受支持部に軸受を介して回転自在に支持されている。
【0073】
モータ収容壁4Cの隔壁は、ライトケース5の膨出壁5Fに締結される部分を有し、その一部がライトケース5によって覆われている。また、モータ収容壁4Cの隔壁の一部は、ライトケース5の膨出壁5Fよりも上側に突出している。
【0074】
図3に示すように、ライトケース5の縦壁5Wにはボス部5h、5i、5j、5kが形成されており、ボス部5h、5i、5j、5kには図示しない1-2速段、3-4速段、5速段および後進段の変速用のシフタ軸の右端部が取付けられている。
【0075】
レフトケース4の左側壁4Wには入力軸21の軸方向でボス部5h、5i、5j、5kに対向する図示しないボス部が形成されており、このボス部には1-2速段、3-4速段、5速段および後進段の変速用のシフタ軸の左端部が取付けられている。
【0076】
シフタ軸には変速段に対応したシフトフォークが取付けられており、シフタ軸は、入力軸21の軸方向に移動自在にライトケース5のボス部5h、5i、5j、5kとレフトケース4のボス部とに支持されている。
【0077】
ボス部5hは、ボス部5iに対して中間軸24側に位置しており、ボス部5iの後斜め下方に位置している。ボス部5jは、ボス部5iよりも前壁5H側に位置しており、ボス部5iと同じ高さ位置で前方に位置している。
【0078】
ボス部5kは、ボス部5jよりも前壁5H側に位置しており、ボス部5jの前斜め下方に位置している。ボス部5h、5i、5j、5kは、入力ギヤの中で最も大きい6速入力ギヤ21Fの上側に位置しており、シフタ軸は屈曲せずとも入力ギヤ21Aから入力ギヤ21Fと干渉問題が生じない配置となっている。
【0079】
AMTとしての自動変速機2には電気式または油圧式の図示しない変速用のアクチュエータとクラッチ用のアクチュエータが設けられ、有段変速機の変速を自動で行えるようになっている。
【0080】
変速用のアクチュエータは、運転者によって操作される図示しないシフトレバーがリバースポジション、ニュートラルポジションおよびドライブポジションの各ポジションに操作されると、図示しないECU(Electronic Control Unit)から出力される制御信号に基づいて、図示しないシフトアンドセレクト軸をシフト方向およびセレクト方向に操作する。
【0081】
シフトアンドセレクト軸は、セレクト方向に移動したときに、いずれか1つのシフタ軸に係合し、シフト方向に移動したときに係合したシフタ軸を入力軸21の軸方向に移動させて同期装置25A、25B、25C、または、リバースアイドラギヤ23Aのいずれか1つを操作することにより、所定の変速段を成立させる。
【0082】
クラッチ用のアクチュエータは、変速時に自動でクラッチを機械的に切断/締結してエンジン1からの駆動力の伝達状態を切替えるだけでなく、運転者によって図示しないクラッチペダルが踏み込まれると、クラッチを機械的に切断させてエンジン1から入力軸21に入力される駆動力を遮断する。
【0083】
また、クラッチ用のアクチュエータは、運転者によってクラッチペダルの踏み込みが解除されると、クラッチを機械的に締結してエンジン1から入力軸21に駆動力を伝達可能とする。
【0084】
次に、本実施例に係る車両用変速機のパーキングロック機構31について、図面を用いて説明する。図3に示すように、周壁5Cの内方においてライトケース5にはパーキングロック機構31が収容されている。
【0085】
パーキングロック機構31は、パーキングギヤ24C、パーキングポール32、パーキングロッド33、パーキングカム34、カムスプリング35、パーキングサポート36、マニュアルシャフト37、ディテントプレート38、ディテントスプリング39およびリテーナ40を含んで構成されている。
【0086】
図3に示すように、パーキングギヤ24Cの外周部には複数の歯部24cが周方向に等間隔に設けられている。
【0087】
図2図3に示すように、パーキングポール32は、ファイナルドリブンギヤ11と縦壁5Wの間で、かつパーキングギヤ24Cと前後方向に並んで配置されており、パーキングギヤ24Cと同じ高さ位置で前側に位置している(図4参照)。
【0088】
つまり、パーキングポール32は、その下端部がファイナルドリブンギヤ11の右方(側方)に位置し、その上端部がファイナルドリブンギヤ11よりも上方に突出している。
【0089】
図4に示すように、パーキングポール32の下端部は、パーキングポールシャフト41が貫通して回動自在に支持されている。図4図9図10に示すように、ライトケース5の縦壁5Wにはボス部5mが設けられている。ボス部5mは縦壁5Wからレフトケース4側に突出しており、ボス部5mにはパーキングポールシャフト41の右端部が挿入されて支持されている。
【0090】
リテーナ40は、ファイナルドリブンギヤ11の右方に位置して入力軸21の軸方向で縦壁5Wと略平行に配置されており、縦壁5Wとの間にパーキングポール32を挟み込むように配置されて4本のボルト30B、30Cによって縦壁5Wに固定されている(図3参照)。リテーナ40の後ろ下部には、パーキングポールシャフト41の左端部が挿入されて支持されている。
【0091】
本実施例のパーキングポール32の爪部32aは係合部を構成し、リテーナ40は支持部材を構成する。パーキングポールシャフト41は、揺動軸を構成する。
【0092】
図4図5に示すように、パーキングポール32には爪部32aが形成されており、爪部32aは、パーキングポール32がパーキングポールシャフト41を中心に右回り(図4図5の時計回り)に揺動すると、パーキングギヤ24Cの歯部24cに噛み合う。
【0093】
爪部32aは、パーキングポール32がパーキングポールシャフト41を中心に左回り(図4図5の反時計回り)に揺動すると、歯部24cとの噛み合いが解除される。
【0094】
つまり、パーキングポール32は、爪部32aが歯部24cに噛み合う噛合い位置と、爪部32aが歯部24cから離れる解除位置との間で揺動する。なお、パーキングポール32の爪部32aがパーキングギヤ24Cの歯部24cに噛み合うことは、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cに係合することを意味する。
【0095】
図4は、パーキングポール32の爪部32aが歯部24cに噛み合う噛合い位置であって、パーキングロックしている状態を示している。図5は、パーキングポール32の爪部32aが歯部24cから離れる解除位置であって、パーキングロックしていない状態(シフト位置が非パーキングポジションの時の状態)を示している。
【0096】
爪部32aが歯部24cに噛み合うと、パーキングギヤ24Cの回転が規制され、中間軸24の回転が規制される。
【0097】
中間軸24は、ファイナルドライブギヤ24Aがファイナルドリブンギヤ11に噛合っており、差動装置10を介して駆動輪に連動する。
【0098】
これにより、爪部32aと歯部24cが噛み合うと中間軸24の回転が規制され、差動装置10のファイナルドリブンギヤ11の回転が規制されて、ドライブシャフトを介して駆動輪が回転することが規制され、車両の停車状態が維持される。
【0099】
パーキングポールシャフト41の上方において縦壁5Wに形成された穴にはスプリング用ピン42が挿入されて取付けられており、スプリング用ピン42にはリターンスプリング43のコイル部分が巻き掛けられている。
【0100】
パーキングポール32は、リターンスプリング43によって、歯部24cから爪部32aが離隔する方向に付勢されている。本実施例のリターンスプリング43は、付勢部材を構成する。
【0101】
図4に示すように、上下方向において、パーキングロッド33は、ボス部5h、5i、5j、5kと上壁5Eの間に配置されており、後方先端付近となる膨出壁5Fの下方ではパーキングポール32とパーキングサポート36の間に配置されている。
【0102】
パーキングロッド33は、途中屈曲部分を有するが基本的にライトケース5の縦壁5Wに沿って前後方向に延びており、前端部が差し込まれてレバープレート44に回動自在に連係されている。
【0103】
レバープレート44は、マニュアルシャフト37の上端部に取付けられており、マニュアルシャフト37から径方向(水平方向)外方に突出している(図8参照)。そして、レバープレート44の突出した先端部に、パーキングロッド33が差し込まれている。
【0104】
ライトケース5の前壁5Hは、その下部が下方に行くほど後方になるように屈曲している。マニュアルシャフト37は、この前壁5Hの下部を貫通してライトケース5の外部に突出している。つまり、マニュアルシャフト37は、入力軸21よりも前側において前壁5Hの下部に回転自在に取付けられており、前壁5Hの下部から上壁5Eの近傍まで上下方向に延びている。マニュアルシャフト37の上端部は、ライトケース5に回転自在に取付けられている。
【0105】
マニュアルシャフト37の下端部は、前壁5Hからライトケース5の下方に突出しており、突出したマニュアルシャフト37の下端部には図示しないケーブル部材の一端部が連結されている。ケーブル部材の他端部は、運転者によって操作されるシフトレバーに連結されている。
【0106】
ケーブル部材は、シフトレバーがパーキングポジションと非パーキングポジションとの間で切替え操作される動きをマニュアルシャフト37に伝え、マニュアルシャフト37を回転させる。
【0107】
このようにマニュアルシャフト37は、シフトレバーの操作に連動してライトケース5に対して回転する。
【0108】
図7図8に示すように、パーキングロッド33は、レバープレート44に連動して前後方向に往復動自在となっている。パーキングロッド33は、レバープレート44から後方に直線状に延びる前側ロッド部33Aと、前側ロッド部33Aから屈曲し後方に行くほど縦壁5Wに接近し、かつ、前側ロッド部33Aから屈曲し後方に行くほど下方となるように直線状に延びる屈曲部33Bと、屈曲部33Bの後端部から屈曲し後方に直線状に延びる後側ロッド部33Cとを有する。
【0109】
図8に示すように、前側ロッド部33Aは後側ロッド部33Cよりも縦壁5Wから離れる側(左側)に位置し、図7に示すように、前側ロッド部33Aは後側ロッド部33Cよりも上方に位置している。そして、左右方向に関し、前側ロッド部33Aはリテーナ40よりも左側に配置され、後側ロッド部33Cはリテーナ40よりも右側に配置されている。
【0110】
つまり、パーキングロッド33は屈曲してリテーナ40の裏側(縦壁5W側)に入り込んでパーキングギヤ24Cに向かって延びている。
【0111】
図4図5に示すように軸方向から見て、前側ロッド部33Aの下方にはボス部5i、5j、5kが形成されている。
【0112】
ボス部5hはボス部5i、5j、5kよりも後方に配置されており、後側ロッド部33Cに最も接近する位置にボス部5hが形成されている。
【0113】
ボス部5hは、ボス部5iよりも下方に位置しているが、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cから離れた状態(後述するパーキングカム34がパーキングサポート36の窪み部36cに当接した状態)におけるパーキングロッド33の後側ロッド部33Cの移動軌跡の延長線L1上にボス部5hが存在している。
【0114】
このため、パーキングロッド33は、ボス部5hを避けるようにパーキングロッド33の後端部33a側から屈曲する屈曲部33Bを有し、屈曲部33Bがボス部5hの周囲を通過するように後側ロッド部33Cから上方に屈曲している。
【0115】
これにより、後ろ側先端(後端部33a)に取り付けられるパーキングカム34を最適な位置に配置しつつ、パーキングロッド33をボス部5h、5i、5j、5kと上壁5Eの間の狭い空間に設置することができる。
【0116】
図5において、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cから離れた状態において、パーキングカム34が後述するパーキングサポート36の窪み部36cに当接した状態のパーキングロッド33の後側ロッド部33Cの移動軌跡の延長線L1を示す。
【0117】
なお、図5に示すパーキングロッド33の位置はパーキングカム34が突部36bに乗り上げた位置を示しており、パーキングロッド33が確実にボス部5hを避けることができている状態を示している。
【0118】
パーキングカム34は、パーキングロッド33の後端部33aに取付けられている。パーキングカム34にはパーキングロッド33が貫通しており、パーキングカム34は、パーキングロッド33の軸方向に沿って移動自在となっている。
【0119】
図5図7に示すように、パーキングロッド33にはストッパ部33bが形成されており、ストッパ部33bとパーキングカム34との間にカムスプリング35が配置されている。カムスプリング35は、パーキングロッド33に外挿されてパーキングロッド33に沿って伸縮自在となっており、前端部がストッパ部33bによって移動が規制され、後端部がパーキングカム34に当接している。
【0120】
つまり、カムスプリング35は、パーキングカム34とストッパ部33bとの間に配置され、パーキングカム34をストッパ部33bから離れる方向(後端部33a側)に付勢するように設けられている。
【0121】
パーキングロッド33の後端部33aには、パーキングカム34を貫通する部分に比べて太くなっている先端ストッパ部が形成されている。パーキングカム34は、先端ストッパ部よりもマニュアルシャフト37側に配置されており、パーキングロッド33からの脱落が阻止されている。
【0122】
カムスプリング35は、パーキングカム34が先端ストッパ部に接触してもなおパーキングカム34をパーキングポール32側に付勢しており、パーキングカム34は、確実に先端ストッパ部に接触するまでパーキングロッド33に沿って移動させられる。
【0123】
パーキングカム34は、パーキングポール32側に向かって先細りのテーパ形状に形成されている。パーキングカム34は、パーキングカム34の軸方向における中央付近でテーパ形状の角度が大きくなる二段形状になっており、パーキングポール32側の方がテーパ形状の角度が大きい。
【0124】
図7に示すように、パーキングサポート36はリテーナ40の裏側(縦壁5W側)にボルト30Fによって固定されており、リテーナ40と一体に設けられている。
【0125】
後述するカム部36aの下方に形成されたパーキングサポート36の穴にはノックピン36Aが挿入されている。そして、パーキングサポート36は、ノックピン36Aによってリテーナ40に位置決めされており、リテーナ40に対して相対移動不能となっている。
【0126】
パーキングカム34は、パーキングサポート36に支持されてその形状に沿って前後方向に移動し、パーキングポール32を噛合い位置と解除位置との間で揺動させる。
【0127】
パーキングサポート36の右端面にはガイド板45が重ねられて配置され、前述のボルト30Fによってパーキングサポート36と共締め固定されている。ガイド板45は、パーキングロッド33の右方でパーキングロッド33に沿って延びるガイド板本体45Aを有する。本実施例のガイド板本体45Aは、ガイド部本体を構成する。
【0128】
ガイド板本体45Aは、パーキングポールシャフト41の軸方向でリテーナ40と所定の間隔(パーキングサポート36の左右方向の幅)を有してリテーナ40に対向して配置されており、ガイド板本体45Aはリテーナ40との間でパーキングカム34の移動方向を規制している。
【0129】
ガイド板45は、図示しない係合片が形成されており、係合片がパーキングサポート36の外周部に当接して引っ掛かり、回り止めされた状態でボルト30Fによってパーキングサポート36と共にリテーナ40に固定されている。
【0130】
ボルト30Fの頭部は、リテーナ40と縦壁5Wの間に配置されており、縦壁5Wに接近して配置されていることから、ボルト30Fおよびパーキングサポート36はリテーナ40から脱落しない。
【0131】
パーキングカム34は、パーキングポールシャフト41の軸方向でガイド板本体45Aとリテーナ40の間に位置している。つまり、パーキングカム34は、パーキングポールシャフト41の軸方向でガイド板本体45Aとリテーナ40に挟まれてガイドされ移動方向が規制されている。
【0132】
ガイド板本体45Aの前側には覆い部45Bが設けられており、覆い部45Bは、ガイド板本体45Aの前側の上縁から上方に延びて、その上端縁からリテーナ40側に屈曲し、図8に示すようにパーキングロッド33の上方を覆っている。
【0133】
これにより、パーキングロッド33は、パーキングサポート36と、リテーナ40と、ガイド板45のガイド板本体45Aおよび覆い部45Bとによって上下左右方向から取り囲まれて、パーキングサポート36から脱落することが防止されている。本実施例のガイド板45は、ガイド部材を構成する。
【0134】
図4図7に示すように、パーキングポール32は、腕部32Aと、腕部32Aの先端部に設けられた操作部32Bとを有する。
【0135】
腕部32Aは、パーキングポールシャフト41からパーキングギヤ24Cの外周縁に沿って上方に延びており、延びる方向の先端部に爪部32aを有する。腕部32Aは、前後方向の幅よりも上下方向の長さが長くなるように上下方向に延びている。
【0136】
操作部32Bは、リテーナ40と縦壁5Wの間に入り込んでおり、図3に示すようにリテーナ40に覆われてパーキングポールシャフト41の軸方向(左側)から目視不能となっている。
【0137】
図7に示すように、操作部32Bは、爪部32aが形成された腕部32Aの先端部(上端部)からパーキングギヤ24Cと反対側(前側)に延びる延在部32Cと、延在部32Cの延びる方向の前端部(先端部)からパーキングカム34から離れる方向に屈曲する屈曲部32Dとを有する。延在部32Cは、パーキングサポート36を覆うようにその上方を前側に延びている。
【0138】
屈曲部32Dは、パーキングギヤ24C側の面が付勢力受面32bとなっており、付勢力受面32bにはリターンスプリング43の一端が当接している。これにより、付勢力受面32bは、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cから離れるように(爪部32aが歯部24cから離れるように)リターンスプリング43から付勢力を受ける。
【0139】
操作部32Bは、延在部32Cの下面にパーキングカム34が当接する当接面32cを有し、パーキングカム34は、延在部32Cの当接面32cに当接して延在部32Cを押し上げる。
【0140】
腕部32Aはストッパ面32dを有する。ストッパ面32dは、腕部32Aのパーキングギヤ24Cに対向する後側面でなく、後側面の反対側となる前側面に形成されており、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cから離れる方向に移動する移動量を規制する。
【0141】
具体的には、ストッパ面32dは、前後方向でパーキングサポート36の後端面に対向しており、パーキングポール32がリターンスプリング43によってパーキングギヤ24Cから所定量以上だけ離れる方向に移動(揺動)されたときに、ストッパ面32dがパーキングサポート36の後端面に接触して移動量が規制される(図5参照)。本実施例のパーキングサポート36は、ストッパ部材を構成する。
【0142】
これにより、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cから過度に離れることを防止できてパーキングポール32の離隔位置の位置決めができ、パーキングカム34によってパーキングポール32を離隔位置から噛合い位置に移動させるときのパーキングロッド33の前後方向への移動量を低減できる。
【0143】
この結果、ライトケース5の内部におけるパーキングロッド33やパーキングポール32の移動を考慮した配置空間を少なくでき、変速機ケース3の小型化を図ることができる。
【0144】
図7に示すように、パーキングサポート36の上面にはカム部36aと、突部36bと、窪み部36cとが形成されている。
【0145】
パーキングポール32がパーキングギヤ24Cに係合する側(噛合い位置側)を前進側、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cから離れる側(解除位置側)を後退側とした場合に、カム部36aは、パーキングサポート36におけるパーキングロッド33の可動範囲の前進側の端部に形成されており、突部36bは、パーキングロッド33の可動範囲の後退側の端部に形成されている。前進側の端部はパーキングサポート36の後端部であり、後退側の端部はパーキングサポート36の前端部である。
【0146】
窪み部36cは、前後方向でカム部36aと突部36b間に形成されており、パーキングサポート36は、前後方向の中央側が下方に窪んでいる。つまり、カム部36a、窪み部36c、突部36bは、パーキングサポート36の上面にパーキングギヤ24Cに近い側から順にカム部36a、窪み部36c、突部36bの順に形成されている。
【0147】
換言すれば、カム部36aは、パーキングサポート36の後端部で窪み部36cから上方に突出しており、突部36bは、パーキングサポート36の前端部で窪み部36cから上方に突出している。カム部36aの上面には前後方向に沿って溝が形成されていており、この溝にパーキングカム34が落ち込みことで、パーキングカム34が左右方向に位置決めされつつ移動する。
【0148】
パーキングロック機構31において、シフトレバーがパーキングポジションに操作されると、マニュアルシャフト37が一方向に回転し、マニュアルシャフト37の回転に伴ってレバープレート44が一方向に揺動する。
【0149】
このとき、パーキングロッド33がレバープレート44に押されてパーキングギヤ24C側に移動し、カムスプリング35によって付勢されたパーキングカム34がパーキングサポート36の窪み部36cに沿ってカム部36a側に移動してカム部36aに乗り上げる。
【0150】
ここで、パーキングカム34が窪み部36cに沿って移動してカム部36aに乗り上げる前には、パーキングカム34がパーキングポール32の延在部32Cとパーキングサポート36の間に入り込む。
【0151】
つまり、窪み部36cにパーキングカム34が当接したときには、パーキングカム34がパーキングポール32の当接面32cから離隔した状態となり、パーキングカム34は、カム部36aに乗り上げる前にパーキングポール32の延在部32Cとパーキングサポート36の間に入り込みながらカム部36aに乗り上げる。このとき、パーキングカム34がパーキングポール32の操作部32Bの下方に位置している。
【0152】
パーキングカム34は、パーキングポール32に向かって先細り形状のテーパ形状に形成されているので、カムスプリング35の付勢力によってパーキングカム34がカム部36aに容易に乗り上げて後方に移動する。パーキングカム34のカム部36aへの乗り上げに伴って、パーキングカム34がパーキングポール32の操作部32Bを押し上げる。
【0153】
このとき、パーキングポール32は、リターンスプリング43の付勢力に抗してパーキングポールシャフト41を中心に図4の時計回りに揺動する。
【0154】
これにより、図4に示すように、パーキングポール32の爪部32aがパーキングギヤ24Cの歯部24cに噛み合ってパーキングギヤ24Cの回転が規制され、中間軸24の回転が規制される。この結果、ドライブシャフトを介して駆動輪が回転することが規制され、車両の停車状態が維持される。
【0155】
この状態では、パーキングカム34の円筒部分がパーキングポール32の操作部32Bとパーキングサポート36のカム部36aの上面との間に位置することにより、パーキングポール32が図4の反時計回りに回ることが規制されて爪部32aと歯部24cとの噛み合いが外れることはない。
【0156】
パーキングロック機構31において、シフトレバーが非パーキングポジションに操作されると、マニュアルシャフト37が他方向に回転し、マニュアルシャフト37の回転に伴ってレバープレート44が他方向に揺動される。
【0157】
このとき、パーキングロッド33がパーキングポール32から離れるマニュアルシャフト37側に移動し、パーキングカム34がパーキングサポート36のカム部36aとパーキングポール32の操作部32Bから離れ、パーキングカム34がカム部36aよりも低い高さ位置にある窪み部36cに移動する。
【0158】
ここで、パーキングカム34が窪み部36cの高さ位置に沿って後方に移動すると、パーキングロッド33がボス部5hに衝突するおそれがある。
【0159】
本実施例のパーキングサポート36は、パーキングロッド33がパーキングギヤ24Cから離れる方向に移動した状態において、パーキングカム34が乗り上げることにより、パーキングロッド33をボス部5hから離れる方向(上方)に移動させる突部36bを有する。
【0160】
これにより、パーキングロッド33がボス部5hに接触することを防止して、パーキングロッド33が円滑に移動しないような事態が発生することや、ボス部5hからパーキングロッド33に衝撃が加わることやパーキングロッド33の損傷を防止できる。突部36bの上方にはガイド板45の覆い部45Bが配置されており、覆い部45Bがパーキングカム34の位置を規制してパーキングロッド33の外れを防止している。
【0161】
図4に示すように、ディテントプレート38は、レバープレート44よりも下方に位置するようにマニュアルシャフト37の下部に取付けられており、マニュアルシャフト37の回転によりマニュアルシャフト37を中心に揺動する扇形形状に形成されている。
【0162】
ディテントプレート38の外周部には、図示しない一対の嵌合溝が形成されている。自動変速機2において、シフトレバーにより選択されるシフト位置は、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、M(マニュアル)ポジションであり、この順に配置される。
【0163】
Rポジション、Nポジション、Dポジション、Mポジションが非パーキングポジションに相当する。
【0164】
運転者のパーキングポジションへのシフト操作により、マニュアルシャフト37が回転してディテントプレート38が揺動し、パーキングポジション用の係合溝にローラ部材39Aが係合する。この係合した状態では、パーキングポール32は揺動していて爪部32aがパーキングギヤ24Cの歯部24cに噛み合う噛合い位置にあり、係合溝とローラ部材39Aの係合によって噛合いの状態が維持される。
【0165】
一方、運転者の非パーキングポジションへのシフト操作により、マニュアルシャフト37が回転してディテントプレート38が揺動し、非パーキングポジション用の係合溝にローラ部材39Aが係合した状態では、パーキングカム34がパーキングサポート36のカム部36aから退避してパーキングポール32が揺動しており、パーキングポール32の爪部32aがパーキングギヤ24Cの歯部24cから外れた解除位置にある。
【0166】
ディテントプレート38とディテントスプリング39とは、ディテント機構を構成しており、運転者によるパーキングポジションと非パーキングポジションとのシフト操作時にローラ部材39Aがパーキングポジション用の係合溝あるいは非パーキングポジション用の係合溝に係合する動作と脱出する動作とにより、シフト操作時の運転者に切換え感触(所謂、クリック感)を与える。
【0167】
また、シフト操作の完了時にローラ部材39Aがパーキングポジション用の係合溝または非パーキングポジション用の係合溝に係合することにより、マニュアルシャフト37に対する回転方向の位置決めをする。
【0168】
ローラ部材39Aがパーキングポジション用の係合溝に係合したときのマニュアルシャフト37の回転位置において、パーキングカム34は、カム部36aに乗り上げてパーキングポール32を噛合い位置に位置させている。
【0169】
ローラ部材39Aが非パーキングポジション用の係合溝においてMポジションに応じた位置に位置しているときのマニュアルシャフト37の回転位置において、パーキングポール32は解除位置に位置し、パーキングカム34が突部36bに乗り上げている。
【0170】
つまり、ローラ部材39Aが非パーキング用の係合溝に係合したときに、マニュアルシャフト37がRポジション、Nポジション、Dポジションに応じた回転位置にあるときには、パーキングポール32は解除位置に位置し、パーキングカム34が窪み部36cに位置している。
【0171】
図2に示すように、モータ軸27Bはデフケース12の上側に配置されており、中間軸24はモータ軸27Bとデフケース12の間の高さ位置に配置されている。
【0172】
図2図4に示すように、モータ軸27Bの軸方向から見た場合に、モータ軸27Bの軸心C1とデフケース12の軸心C3とを結んだ仮想線L2に対して、中間軸24はその軸心C2が後側(一方側)に位置するように配置されており、パーキングギヤ24Cを除くパーキングロック機構31は前側(他方側)に配置されている。
【0173】
すなわち、中間軸24とパーキングロック機構31は、仮想線L2を挟んで前後に配置されている。
【0174】
モータ軸27Bの軸心C1と、中間軸24の軸心C2と、ファイナルドリブンギヤ11の軸心C3と、パーキングポールシャフト41の軸心C4とは平行であり、同じ方向(左右方向)である。以後、各軸の軸心C1、C2、C3、C4の延びる方向を軸方向という。
【0175】
図4に示すように、パーキングポールシャフト41は、中間軸24の軸心C2とデフケース12の軸心C3の間の高さ位置に配置されている。
【0176】
パーキングポール32は、爪部32aがモータ軸27Bの軸心C1と中間軸24の軸心C2の間の高さ位置に位置し、かつ、爪部32aがモータ軸27Bの下方に位置するように配置されている(図2参照)。
【0177】
一方、図3に示すように、パーキングポールシャフト41の軸方向から見た場合に、リテーナ40は、第1の頂点部40a、第2の頂点部40bおよび第3の頂点部40cを有する略正三角形形状に形成されている。後ろ側に第1の頂点部40a、前側に第2の頂点部40b、上側に第3の頂点部40cが配置されている。
【0178】
第1の頂点部40aは、パーキングギヤ24C側に位置している。第1の頂点部40aにはパーキングポールシャフト41の左端部が支持されており(図7参照)、パーキングポールシャフト41の両端部は、縦壁5Wとリテーナ40の第1の頂点部40aに支持されている。
【0179】
第2の頂点部40bは、第1の頂点部40aに対してパーキングギヤ24Cから離れ、かつ、第1の頂点部40aよりも上側に位置している。
【0180】
第3の頂点部40cは、第2の頂点部40bよりもパーキングギヤ24C側で、かつ、第2の頂点部40bよりも上側に位置している。
【0181】
すなわち、パーキングサポート36は、パーキングギヤ24C側に配置されており、第2の頂点部40bおよび第3の頂点部40cは、パーキングサポート36に対してパーキングギヤ24Cから離れて配置されている。
【0182】
図7に示すように、第2の頂点部40bには一対の締結部40mが設けられており、締結部40mは、一対のボルト30Bによって縦壁5Wの一対のボス部5n(図4参照)に締結されている。
【0183】
第3の頂点部40cには一対の締結部40nが設けられており、締結部40nは、一対のボルト30Cによって縦壁5Wの一対のボス部5p(図4図10参照)に締結されている。つまり、第2の頂点部40bと第3の頂点部40cは、縦壁5Wに固定されている。
【0184】
第3の頂点部40cにはノックピン40Aが取付けられており、ノックピン40Aは、縦壁5Wにおいて一対のボス部5pの間に形成されたノックピン嵌合用のボス部5v(図4図5参照)に嵌合されている。
【0185】
リテーナ40は、第3の頂点部40cがノックピン嵌合用のボス部5vに取付けられたノックピン40Aに嵌合されるとともに、第1の頂点部40aがパーキングポールシャフト41に嵌合されることにより、縦壁5Wに相対移動不能に位置決めされた後、ボルト30B、30Cによって縦壁5Wに締結される。
【0186】
第2の頂点部40bと第3の頂点部40cの間において、リテーナ40と縦壁5Wの間には前方に開口する前側の開口が形成されており、第3の頂点部40cと第1の頂点部40aの間において、リテーナ40と縦壁5Wの間には後方に開口する後側の開口が形成される。
【0187】
これにより、パーキングポール32の操作部32Bは、後方から第1の頂点部40aのパーキングポールシャフト41と第3の頂点部40cの締結部の間を通して縦壁5Wとリテーナ40の間に入り込む。
【0188】
また、パーキングロッド33は、前側から第2の頂点部40bの締結部と第3の頂点部40cの締結部の間を通して縦壁5Wとリテーナ40の間に入り込み、パーキングカム34によってパーキングポール32を揺動させる。
【0189】
図3に示すように、リテーナ40には抜け止め片40dが形成されている。抜け止め片40dは、第3の頂点部40cから後ろ上方に延び、縦壁5Wに取付けられたスプリング用ピン42の左側にまで延び、パーキングポールシャフト41の軸方向でスプリング用ピン42に対向している。
【0190】
これにより、スプリング用ピン42の左端部は抜け止め片40dに覆われるので、スプリング用ピン42からリターンスプリング43が外れることを防止できる。本実施例のスプリング用ピン42は、軸部を構成し、抜け止め片40dは、抜け止め部を構成する。
【0191】
図9図10に示すように、ライトケース5には潤滑油供給溝5rが形成されており、潤滑油供給溝5rは、軸受支持部5dの上部において上下方向に延びている(図4図5参照)。
【0192】
ボス部5mは、潤滑油供給溝5rよりも上側に位置しており、縦壁5Wからファイナルドリブンギヤ11側に突出している。ボス部5mは、前後方向でパーキングギヤ24Cに対向しているパーキングポール32にパーキングポールシャフト41の軸方向で当接する高さに縦壁5Wから突出するように形成されている。
【0193】
つまり、ボス部5mは、パーキングポール32とパーキングポールシャフト41の軸方向に並んでパーキングギヤ24Cの前側に配置されている。
【0194】
図9図10に示すように、ライトケース5には上側縦リブ5sと下側縦リブ5tが形成されており、上側縦リブ5sと下側縦リブ5tは、縦壁5Wからファイナルドリブンギヤ11側に突出している。
【0195】
図9に示すように、上側縦リブ5sは、下端部が縦壁5Wからボス部5mの先端部まで延び、上端部が縦壁5Wから軸受支持部5gの先端部まで延び、下端部から上方に行くに従って縦壁5Wからの突出高さが低くなり右側に位置するように傾斜している。
【0196】
つまり、上側縦リブ5sは、ボス部5mと軸受支持部5gを連結するように上下方向に延びている。下側縦リブ5tは、上端部が縦壁5Wからボス部5mの先端部まで延び、上端部から下方に行くに従って縦壁5Wからの突出高さが低くなり右側に位置するように傾斜している。
【0197】
上側縦リブ5sおよび下側縦リブ5tは、パーキングポールシャフト41の軸方向でパーキングポール32と並ぶようにパーキングギヤ24Cの前側に配置され、パーキングポール32の右側の空間を塞ぐように縦壁5Wから突出して形成されている。
【0198】
下側縦リブ5tは、その下端部が潤滑油供給溝5rの周縁に達しており、下側縦リブ5tによってボス部5mと潤滑油供給溝5rの周縁とは連絡されている。
【0199】
図3図10に示すように、下側縦リブ5tは、上端部から潤滑油供給溝5r側の下端部に向かって斜めに傾斜している。つまり、パーキングポールシャフト41の軸方向から見た場合に、下側縦リブ5tは、ボス部5mから潤滑油供給溝5rまで延びていて、その傾斜した形状から下側縦リブ5tを伝って流れる潤滑油を潤滑油供給溝5rに導いている。本実施例の下側縦リブは、縦リブを構成する。
【0200】
図3図10に示すように、縦壁5Wには円弧リブ5uが形成されている。円弧リブ5uは、縦壁5Wからパーキングギヤ24C側(左側)に突出しており、前後方向では後壁5Iからパーキングギヤ24Cの下縁に沿い、ボス部5mに向かって延びている。
【0201】
つまり、円弧リブ5uは、モータ出力ギヤ24Bの下方を囲むように円弧状に形成されている。なお、パーキングギヤ24Cはモータ出力ギヤ24Bよりも小径に形成されているので、円弧リブ5uとモータ出力ギヤ24Bとの径方向の隙間よりも円弧リブ5uとパーキングギヤ24Cとの径方向の隙間の方が大きくなっている。
【0202】
図4に示すように、円弧リブ5uはボス部5mには接続されておらず、円弧リブ5uの前端とボス部5mの間には潤滑油が通過できる隙間が形成されている。詳細には、円弧リブ5uの円弧形状の延長線L3上に、円弧リブ5uの前端と距離を置いてボス部5mが位置している。なお、円弧リブ5uは、円弧の延長線上に下側縦リブ5tまたは上側縦リブ5sが位置してもよい。
【0203】
図5に示すように、パーキングギヤ24Cの上下方向と後方とは、円弧リブ5uと後壁5Iの上部と膨出壁5Fに囲まれている。
【0204】
円弧リブ5uと下側縦リブ5tの間には前後方向の隙間61が形成されており、潤滑油供給溝5rは、隙間61の下側(右側)に位置している。つまり、パーキングギヤ24Cやモータ出力ギヤ24Bが配置される円弧リブ5uとパーキングポール32、上側縦リブ5sおよび下側縦リブ5tで囲まれた空間と、その下に配置される差動装置10の収容部5Dとは上下方向で隙間61によって連通している。そして、隙間61の下方に潤滑油供給溝5rが配置されている。
【0205】
このため、円弧リブ5uと下側縦リブ5tの間の隙間61と潤滑油供給溝5rとは、パーキングギヤ24Cが配置される空間から差動装置10の収容部5Dへの潤滑油の供給路となる。
【0206】
次に、本実施例の自動変速機2の効果を説明する。
本実施例の自動変速機2は、底部に潤滑油が貯留される変速機ケース3と、変速機ケース3に回転自在に支持される中間軸24と、中間軸24から駆動力が伝達されるファイナルドリブンギヤ11を有し、変速機ケース3に回転自在に支持される差動装置10と、中間軸24の回転を機械的に阻止するパーキングロック機構31とを有する。
【0207】
パーキングロック機構31が、中間軸24に取付けられたパーキングギヤ24Cと、パーキングポールシャフト41を中心に揺動自在に設けられ、パーキングギヤ24Cに係合することにより、中間軸24の回転を阻止するパーキングポール32とを有し、パーキングポールシャフト41の軸方向でパーキングギヤ24Cとパーキングポール32がファイナルドリブンギヤ11に対向している。
【0208】
これにより、ファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられる潤滑油が、パーキングギヤ24Cに衝突してパーキングギヤ24Cに連れ回り、中間軸24の前方に送られる。
【0209】
また、本実施例の自動変速機2によれば、車両の前進時にファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられる潤滑油の流れ方向において、パーキングポール32よりも上流側にパーキングギヤ24Cが配置されている。
【0210】
変速機ケース3のライトケース5は、上部に潤滑油供給溝5rが形成されて軸受7Eを介して差動装置10のデフケース12を支持する軸受支持部5dと、潤滑油供給溝5rよりも上側に位置してライトケース5の縦壁5Wからファイナルドリブンギヤ11側に突出し、パーキングポールシャフト41を支持するボス部5mとを有する。
【0211】
また、ライトケース5は、縦壁5Wからファイナルドリブンギヤ11側に突出し、ボス部5mと潤滑油供給溝5rの周縁とに連絡される下側縦リブ5tを有し、ボス部5mと下側縦リブ5tがパーキングポールシャフト41の軸方向から見てパーキングギヤ24Cに対向するように配置されている。
【0212】
これにより、パーキングギヤ24Cに連れ回る潤滑油をパーキングポール32、ボス部5mおよび下側縦リブ5tに衝突させ、潤滑油を下側縦リブ5tに沿って潤滑油供給溝5rに案内し(図9の潤滑油O2参照)、軸受7Eに潤滑油を供給して、軸受7Eを潤滑油によって潤滑できる。
【0213】
また、図9に示すように、デフケース12には開口部12aが形成されており、開口部12aは、下側縦リブ5tの下方に位置している。下側縦リブ5tには、開口部12aの上方に位置する部位に角部が形成されている。
【0214】
このため、下側縦リブ5tに沿って流下する潤滑油は角部から滴下し、潤滑油を開口部12aからデフケースの内部に供給することができる。そして、ピニオンシャフト13に加えて、ピニオンギヤ14A、14Bとサイドギヤ15A、15Bとの噛み合い部に潤滑油を供給することができて、差動装置10を潤滑することができる。
【0215】
このように、パーキングギヤ24Cに連れ回る潤滑油をボス部5mと下側縦リブ5tで捕捉して、差動装置10に多くの潤滑油を供給することができ、差動装置10の潤滑性能を向上できる。
【0216】
また、ライトケースは、ボス部5mから上方に延びる上側縦リブ5sを有するので、ボス部5mと下側縦リブ5tに加えて、上側縦リブ5sにパーキングギヤ24Cに連れ回る潤滑油を衝突させて上側縦リブ5sから下側縦リブ5tを通して潤滑油供給溝5rに案内できる。このため、軸受7Eにより多くの潤滑油を供給することができる。
【0217】
つまり、ファイナルドリブンギヤ11の右側であって、パーキングギヤ24Cやモータ出力ギヤ24Bに連れ回わされて飛散する潤滑油を、上側縦リブ5s、ボス部5m、下側縦リブ5t、パーキングポール32にて受け止めて、それらの前方に流れる潤滑油を抑制して差動装置10の潤滑に利用することができる。
【0218】
また、上側縦リブ5sに衝突した潤滑油を隙間61を通過させて下側縦リブ5tに流下させ、下側縦リブ5tから開口部12aを通してデフケース12の内部に供給することができる。
【0219】
このため、差動装置10により一層多くの潤滑油を供給することができ、差動装置10の潤滑性能をより効果的に向上できる。
【0220】
また、上側縦リブ5sと下側縦リブ5tによってボス部5mを補強できるので、ボス部5mの剛性を高くでき、パーキングポールシャフト41の支持剛性を高くできる。このため、パーキングポール32を安定して支持できるとともに、車両の駐車時にパーキングギヤ24Cからパーキングポール32が受ける力をパーキングポールシャフト41で高い剛性で受け止めることができる。
【0221】
また、本実施例の自動変速機2によれば、中間軸24は、パーキングギヤ24Cよりも小径で、かつ、ファイナルドリブンギヤ11に噛み合い、中間軸24からファイナルドリブンギヤ11に駆動力を伝達するファイナルドライブギヤ24Aを有する。ファイナルドライブギヤ24Aは、パーキングギヤ24Cの側方に並んで中間軸24に配置されている。
【0222】
これにより、ファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられる潤滑油の一部をファイナルドライブギヤ24Aによって剥ぎ取り、剥ぎ取った潤滑油の一部をファイナルドライブギヤ24Aからパーキングギヤ24C側に送り込むことができる。
【0223】
このため、ファイナルドライブギヤ24Aから送られる潤滑油をパーキングギヤ24Cの回転によってボス部5mと下側縦リブ5tに衝突させ、下側縦リブ5tに沿って潤滑油供給溝5rや開口部12aに案内できる。
【0224】
これにより、差動装置10および差動装置10の軸受7Eにより一層多くの潤滑油を供給することができ、差動装置10の潤滑性能をより効果的に向上できる。
【0225】
また、本実施例の自動変速機2によれば、変速機ケース3は、縦壁5Wからファイナルドリブンギヤ11側に突出し、パーキングギヤ24Cの下縁に沿って延びる円弧リブ5uを有する。
円弧リブ5uは、円弧の延長線L3上にボス部5mが位置しており、円弧リブ5uと下側縦リブ5tの間に隙間61が形成されている。
【0226】
これにより、パーキングギヤ24Cに衝突した潤滑油を円弧リブ5uで受け止め、パーキングギヤ24Cの回転によって潤滑油を円弧リブ5uに沿ってボス部5m側に案内し、円弧リブ5uと下側縦リブ5tの間の隙間61からボス部5mと下側縦リブ5tに衝突させることができる。
【0227】
このため、ファイナルドリブンギヤ11によって掻き上げられる潤滑油に加えて、円弧リブ5uで受け止められた潤滑油を、下側縦リブ5tを利用して潤滑油供給溝5rや開口部12aに案内できる。
【0228】
この結果、差動装置10により一層多くの潤滑油を供給することができ、差動装置10の潤滑性能をより効果的に向上できる。
【0229】
また、本実施例の自動変速機2によれば、下側縦リブ5tの左端縁は、上端部から潤滑油供給溝5rに向かって斜めに傾斜している。
【0230】
これにより、下側縦リブ5tで捕捉した潤滑油が下側縦リブ5tの傾斜に沿って潤滑油供給溝5rに向かって流れ、潤滑油供給溝5rに潤滑油を確実に導くことができる。この結果、差動装置10により一層多くの潤滑油を供給することができ、差動装置10の潤滑性能をより効果的に向上できる。
【0231】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0232】
2...自動変速機(車両用変速機)、3...変速機ケース、5d...軸受支持部、5m...ボス部、5r...潤滑油供給溝、5t...下側縦リブ(縦リブ)、5u...円弧リブ、5W...縦壁(壁部)、7E...軸受、10...差動装置、11...ファイナルドリブンギヤ(ギヤ)、24...中間軸(回転軸)、24A...ファイナルドライブギヤ(小径ギヤ)、24C...パーキングギヤ、31...パーキングロック機構、32...パーキングポール、41...パーキングポールシャフト(揺動軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10