(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099118
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】配索部材の保護構造
(51)【国際特許分類】
F16H 61/36 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
F16H61/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002823
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼内 靖義
(72)【発明者】
【氏名】青島 大城
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA01
3J067AB07
3J067AC03
3J067BA58
3J067DA13
3J067DA52
3J067EA81
3J067FA57
3J067FB85
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】車両用変速機の軽量化を図りつつ、配索部材の保護を行うことができる配索部材の保護構造を提供すること。
【解決手段】自動変速機2のライトケース5の下方に配索されるケーブル部材51の保護構造であって、シフトレバー52の操作によってパーキングロック機構31のマニュアルシャフト36を操作するケーブル部材51を有し、ライトケース5の下面に、車両の前後方向に延びる切り通し部5Pが形成されており、ケーブル部材51が切り通し部5Pに配置されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用変速機の変速機ケースの下方に配索される配索部材の保護構造であって、
前記変速機ケースの下面に、車両の前後方向に延びる切り通し部が形成されており、
前記配索部材は、前記切り通し部に配置されていることを特徴とする配索部材の保護構造。
【請求項2】
前記変速機ケースは、前記変速機ケースの下部に設けられ、オイルポンプを収容するオイルポンプ収容部と、車体と前記変速機ケースとを連結するトルクロッドが取付けられるトルクロッド取付部とを有し、
前記オイルポンプ収容部は、車幅方向で前記切り通し部を挟んで前記トルクロッド取付部に対向しており、
前記切り通し部は、前記変速機ケースの下面から上方に窪んでおり、
前記配索部材は、車両の上下方向で前記オイルポンプ収容部の下端部と前記トルクロッド取付部の下端部よりも高い位置で前記切り通し部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の配索部材の保護構造。
【請求項3】
前記変速機ケースは、差動装置を収容する差動装置収容部と、駆動源から前記車両用変速機に伝達される駆動力を前後輪に分配するトランスファ装置が取付けられるトランスファ取付部とを有し、
前記配索部材は、前記切り通し部に沿って前記変速機ケースの下面で前後方向に延びる横配索部と、前記切り通し部から前記変速機ケースの前方または後方で上下方向に延びる縦配索部とを有し、
前記縦配索部は、車幅方向で前記差動装置収容部と前記トランスファ装置の間を通過することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配索部材の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索部材の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から配索部材が変速機ケースに配置された車両用変速機が知られている(特許文献1参照)。この車両用変速機は、変速機ケースの下部にケーブル部材(配索部材に相当)が配置されている。
【0003】
ケーブル部材の一端部は、パーキングロック機構のマニュアルシャフトの下端部に取付けられたアウタレバーに連結されており、ケーブル部材の他端部は、運転者によって操作されるシフトレバーに連結されている。
【0004】
ケーブル部材は、マニュアルシャフトの下端部から変速機ケースの下部側面を通り、変速機ケースの後端部から上方に延びてシフトレバーに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケーブル部材が変速機ケースの底面に配置される場合には、車両の走行に伴い、路面の障害物や飛び石が下方からケーブル部材に衝突するおそれがあるが、従来の車両用変速機にあっては、ケーブル部材が変速機ケースの下面に沿って配置されているので、路面の障害物や飛び石がケーブル部材に衝突するおそれがあり、未だ改善の余地がある。
【0007】
ここで、ケーブル部材の周囲をカバーで覆うことや、ブラケットで取り囲む等してケーブル部材を保護することが考えられる。
【0008】
しかしながら、カバーやブラケットによってケーブル部材を保護する場合には、剛性の大きいカバーやブラケットが必要になるため、カバーやブラケットの重量が増大し、車両用変速機の重量が増大するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両用変速機の軽量化を図りつつ、配索部材の保護を行うことができる配索部材の保護構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両用変速機の変速機ケースの下方に配索される配索部材の保護構造であって、前記変速機ケースの下面に、車両の前後方向に延びる切り通し部が形成されており、前記配索部材は、前記切り通し部に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、車両用変速機の軽量化を図りつつ、配索部材の保護を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る配索部材の保護構造を備えた車両用変速機の右側面図であり、シフトレバー、トランスファ装置およびプロペラシャフトが取付けられた状態を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る配索部材の保護構造を備えた車両用変速機の後面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態で左方から見た図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のレフトケースを取り外した状態で左方から見た図であり、
図3の状態から入力軸、カウンタ軸、モータ軸、差動装置およびリテーナを取り外した状態を示す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る配索部材の保護構造を備えた車両用変速機の右側面図であり、
図1の状態からトランスファ装置およびプロペラシャフトを取り外した状態を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る配索部材の保護構造を備えた車両用変速機の後側の平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係る配索部材の保護構造を備えた車両用変速機を斜め下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る配索部材の保護構造は、車両用変速機の変速機ケースの下方に配索される配索部材の保護構造であって、変速機ケースの下面に、車両の前後方向に延びる切り通し部が形成されており、配索部材は、切り通し部に配置されている。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係る配索部材の保護構造は、車両用変速機の軽量化を図りつつ、配索部材の保護を行うことができる。
【実施例0015】
以下、本発明の一実施例に係る配索部材の保護構造について、図面を用いて説明する。
図1から
図7は、本発明の一実施例に係る配索部材の保護構造を示す図である。
【0016】
図1から
図7において、上下前後左右方向は、車両に配置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1において、車両の図示しないエンジンルームには内燃機関としてのエンジン1(
図2参照)と、エンジン1に連結される自動変速機2とが設けられている。本実施例の自動変速機2は、車両用変速機を構成する。
【0018】
自動変速機2は、例えば、AMT(Automated Manual Transmission)から構成されている。自動変速機2は変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、レフトケース4とライトケース5を備えている。
【0019】
図2に示すように、レフトケース4とライトケース5の合わせ面にはフランジ部4A、5Aが形成されており、レフトケース4とライトケース5は、フランジ部4Aとフランジ部5Aがボルト30Aによって締結されることにより、一体化されている。
【0020】
ライトケース5に関し、レフトケース4側に形成されているフランジ部5Aに対して反対側となるエンジン1側にはフランジ部5Bが形成されており、フランジ部5Bは、図示しないボルトによってエンジン1の図示しないシリンダブロックに締結されている。
【0021】
変速機ケース3には変速機構6(
図3参照)が収容されている。詳細には、
図3に示すように、レフトケース4とライトケース5で構成される変速機室8Aに変速機構6が配置されており、ライトケース5で構成されるクラッチ室8Bには図示しない摩擦クラッチが収容されている。
【0022】
図3に示すように、レフトケース4とライトケース5によって形成される変速機室8Aの後空間部分には差動装置10が収容されており、差動装置10は、変速機構6の後方に配置されている。
【0023】
自動変速機2は、摩擦クラッチを介してエンジン1の駆動力を変速機構6に入力し、同期装置の作動により変速機構6において変速を行い、変速された回転(回転速度)を差動装置10により、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動輪に伝達する。
【0024】
変速機構6は、それぞれ平行に延びる入力軸21、カウンタ軸22、リバース軸23および中間軸24を備えている。
【0025】
入力軸21は、摩擦クラッチを介してエンジン1の図示しないクランク軸に連結可能となっており、入力軸21にはエンジン1から摩擦クラッチを介して駆動力が伝達される。
【0026】
入力軸21には複数の入力ギヤ21Aが設けられており、カウンタ軸22には同一の変速段を構成する入力ギヤ21Aに噛み合う複数のカウンタギヤ22Aが設けられている。
【0027】
カウンタ軸22には図示しないファイナルドライブギヤが設けられており、ファイナルドライブギヤは、差動装置10のファイナルドリブンギヤ11に噛み合っている。
【0028】
差動装置10は、ファイナルドリブンギヤ11と、ファイナルドリブンギヤ11が固定されたデフケース12と、デフケース12に収容された図示しない差動歯車機構とを備えており、差動装置10は、左右の駆動輪の差動を許容しつつ、ファイナルドライブギヤの回転を左右の駆動輪に伝達する。
【0029】
中間軸24にはファイナルドライブギヤ24Aと、モータ出力ギヤ24Bと、モータ出力ギヤ24Bに一体に形成されたパーキングギヤ24Cとが設けられている。
【0030】
ファイナルドライブギヤ24Aは、差動装置10のファイナルドリブンギヤ11に噛み合っている。
【0031】
図2に示すように、レフトケース4にはモータ収容壁4Bと、モータ収容壁4Bにボルト30Bによって締結されたモータケース26とが設けられており、モータ収容壁4Bとモータ収容壁4Bの内部にはモータジェネレータ27が収容されている。
【0032】
図3に示すように、モータジェネレータ27は、モータ軸27Aを有し、モータ軸27Aにはモータ出力ギヤ24Bに噛み合うモータ入力ギヤ27Bが取付けられている。
【0033】
具体的には、モータジェネレータ27は、複数の永久磁石が埋め込まれた図示しないロータと、図示しないステータコイルが巻き付けられた図示しないステータとを備えており、ステータコイルに三相交流電力が印加されることでステータに回転磁界が形成され、この回転磁界によってロータが回転して駆動力を生成する。ロータにはモータ軸27Aが取付けられており、モータ軸27Aは、ロータと一体で回転する。
【0034】
これにより、モータジェネレータ27によるモータ走行時、またはエンジン1とモータジェネレータ27とによるハイブリッド走行時に、モータジェネレータ27の駆動力は、モータ入力ギヤ27Bからモータ出力ギヤ24Bを介して中間軸24に伝達され、中間軸24のファイナルドライブギヤの差動装置10のファイナルドリブンギヤ11に伝達される。
【0035】
また、エンジン1による走行時には、エンジン1の駆動力が入力軸21から入力ギヤ21Aおよびカウンタギヤ22Aを介してカウンタ軸22に伝達され、カウンタ軸22のファイナルドライブギヤから差動装置10のファイナルドリブンギヤ11に伝達される。
【0036】
また、モータジェネレータ27は、ファイナルドリブンギヤ11を介して駆動輪やエンジン1から駆動力を受けることにより、図示しないバッテリに充電する電力を生成する発電機としても機能する。本実施例のエンジン1およびモータジェネレータ27は、駆動源を構成する。
【0037】
図2、
図3に示すように、ライトケース5には変速機構6を上下方向および前後方向から取り囲む周壁5Cが設けられており、周壁5Cの左端部にフランジ部5Aが形成されている。
【0038】
本実施例のライトケース5の周壁5Cは、上壁5Eおよび膨出壁5Fと、上下方向で上壁5Eおよび膨出壁5Fに対向する下壁5Gと、上壁5Eの前端部と下壁5Gの前端部とに連続する前壁5Hと、膨出壁5Fの後端部と下壁5Gの後端部とに連続する後壁5Iとを含んで構成されている。
【0039】
ライトケース5の周壁5Cの上壁5Eの後方には膨出壁5Fが設けられており、膨出壁5Fは、その前側に位置するライトケース5の周壁5Cの上壁5Eよりも上方に内部空間を拡大するように膨出している。膨出壁5Fは、レフトケース4のモータ収容壁4Bに連結されている。
【0040】
図5に示すように、ライトケース5の縦壁5Wは、フランジ部5Bによって囲まれ、クラッチ室8Bと変速機室8Aとを仕切る隔壁5Jと、フランジ部5Bの後方で隔壁5Jに連続する後右側壁5Kとを含んで構成されている。
【0041】
図6に示すように、変速機ケース3には差動装置10が収容されており、
図2に示すように、ライトケース5の後部の下部にはレフトケース4と共に差動装置10を収容する差動装置収容部5Mが設けられている。
【0042】
図4に示すように、ライトケース5にはパーキングロック機構31が収容されている。パーキングロック機構31は、パーキングギヤ24C、パーキングポール32、パーキングロッド33、パーキングカム34、パーキングサポート35、マニュアルシャフト36、ディテントプレート37、ディテントスプリング38およびリテーナ39(
図3参照)を含んで構成されている。
【0043】
パーキングポール32は、パーキングポールシャフト32Aに揺動自在に取付けられている。
図3に示すように、リテーナ39は、ライトケース5の後右側壁5Kにボルト30Cによって締結されており、パーキングポールシャフト32Aは、後右側壁5Kとリテーナ39によって支持されている。
【0044】
パーキングポール32は、パーキングポールシャフト32Aを支点としてパーキングギヤ24Cに係合する位置と係合が解除される位置とに揺動する。
【0045】
パーキングポール32がパーキングギヤ24Cに係合すると、パーキングギヤ24Cの回転が規制されて中間軸24の回転が規制される。
【0046】
これにより、差動装置10のファイナルドリブンギヤ11の回転が規制され、ドライブシャフトを介して駆動輪が回転することが規制されて車両の停車状態が維持される。
【0047】
図4に示すように、パーキングロッド33の後端部にはパーキングカム34が設けられており、パーキングロッド33は、前後方向に移動することにより、パーキングカム34をパーキングサポート35に沿って移動させる。
【0048】
パーキングカム34が後方に移動してパーキングサポート35のカム部35aに乗り上げると、パーキングポール32がパーキングカム34に押されてパーキングギヤ24Cに係合する。
【0049】
パーキングロッド33の前端部は、レバープレート40に連結されており、レバープレート40は、マニュアルシャフト36の上端部に取付けられている。
【0050】
マニュアルシャフト36は、入力軸21よりも前側において前壁5Hの下部に回転自在に取付けられており、前壁5Hの下部から上壁5Eの近傍まで上下方向に延びている。
【0051】
マニュアルシャフト36の下端部は、前壁5Hからライトケース5の下方に突出しており、突出したマニュアルシャフト36の下端部にはレバー部材41を介してケーブル部材51の前端部51aが連結されている(
図7参照)。ケーブル部材51の後端部51bは、運転者によって操作されるシフトレバー52に連結されている(
図1参照)。
【0052】
ケーブル部材51は、シフトレバー52がパーキングポジションと非パーキングポジションとの間で切替え操作される動きをマニュアルシャフト36に伝え、マニュアルシャフト36を回転させる。
【0053】
このようにマニュアルシャフト36は、シフトレバー52の操作に連動してライトケース5に対して回転する。
【0054】
パーキングロッド33は、レバープレート40に連動して前後方向に往復動自在となっており、パーキングカム34をパーキングサポート35上で前後方向に移動させ、パーキングポール32を揺動させる。
【0055】
ディテントプレート37は、レバープレート40よりも下方に位置するようにマニュアルシャフト36の下部に取付けられており、マニュアルシャフト36の回転によりマニュアルシャフト36を中心に揺動する扇形形状に形成されている。
【0056】
ディテントプレート37の外周部には、図示しない嵌合溝が形成されている。自動変速機2において、シフトレバーにより選択されるシフト位置は、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、M(マニュアル)ポジションであり、この順に配置される。
【0057】
Rポジション、Nポジション、Dポジション、Mポジションが非パーキングポジションに相当する。
【0058】
運転者のパーキングポジションへのシフト操作により、マニュアルシャフト36が回転してディテントプレート37が揺動し、パーキングポジション用の係合溝にローラ部材38Aが係合する。この係合した状態では、パーキングポール32が揺動してパーキングポール32がパーキングギヤ24Cに係合し、係合溝とローラ部材38Aの係合によって噛合いの状態が維持される。
【0059】
一方、運転者の非パーキングポジションへのシフト操作により、マニュアルシャフト36が回転してディテントプレート37が揺動し、非パーキングポジション用の係合溝にローラ部材38Aが係合した状態では、パーキングカム34がパーキングサポート35のカム部35aから退避してパーキングポール32が揺動しており、パーキングポール32がパーキングギヤ24Cから離れた位置にある。
【0060】
ディテントプレート37とディテントスプリング38とは、ディテント機構を構成しており、運転者によるパーキングポジションと非パーキングポジションとのシフト操作時にローラ部材38Aがパーキングポジション用の係合溝あるいは非パーキングポジション用の係合溝に係合する動作と脱出する動作とにより、シフト操作時の運転者に切換え感触(所謂、クリック感)を与える。
【0061】
また、シフト操作の完了時にローラ部材38Aがパーキングポジション用の係合溝または非パーキングポジション用の係合溝に係合することにより、マニュアルシャフト36に対する回転方向の位置決めをする。
【0062】
図7に示すように、ライトケース5の右側端部であってフランジ部5Aの後下方にはトルクロッド取付部5cが設けられており、トルクロッド取付部5cにはボルト30Dによってトルクロッド53の前端部が締結されている(
図1、
図5参照)。
【0063】
図1、
図5に示すように、トルクロッド53の後端部は図示しない弾性部材を介して車幅方向に延びるクロスメンバ54に取付けられており、トルクロッド53は、自動変速機2の振動と揺動を吸収するように自動変速機2とクロスメンバ54とを連結している。本実施例のクロスメンバ54は、車体を構成する。
【0064】
図5に示すように、トルクロッド53の上方において、ライトケース5の後右側壁5Kにはトランスファ取付部5dが設けられており、トランスファ取付部5dにはボルト30Eによってトランスファ装置55が取付けられている(
図1参照)。
【0065】
トランスファ装置55は、エンジン1から自動変速機2に伝達される駆動力を前後輪に分配する。
【0066】
具体的には、
図1に示すように、トランスファ装置55にはプロペラシャフト56を介して図示しない後輪側の差動装置が連結されている。トランスファ装置55は、エンジン1の駆動力を、自動変速機2からプロペラシャフト56を介して後輪側の差動装置に伝達し、後輪側の差動装置により後輪に差動回転可能に伝達する。また、エンジン1の駆動力を差動装置10から前輪に差動回転可能に伝達する。
【0067】
これにより、エンジン1の駆動力は、自動変速機2からトランスファ装置55に伝達され、トランスファ装置55によって前後輪に分配される。なお、トランスファ装置55を、二輪駆動と四輪駆動とを切換え可能なパートタイム4WDとして用いてもよく、常時、四輪駆動するフルタイム4WDとして用いてもよい。
【0068】
図3、
図4に示すように、ライトケース5の縦壁5Wの下部にはオイルポンプ57が取付けられている。具体的には、
図3、
図7に示すように、ライトケース5の隔壁5Jが下方に延長されて隔壁5Jの下部にオイルポンプ57の取付部が形成されており、この取付部にオイルポンプ57が取付けられている。また、延長された隔壁5Jに対向するようにレフトケース4の右端部の下部も下方に延長されている。
【0069】
そして、それぞれの下方に延長された部分の間にはオイルポンプ収容部5eが形成されている。つまり、オイルポンプ収容部5eは、変速機室8Aが下方に拡大された部分であって、レフトケース4とライトケース5の間に形成されている。
【0070】
オイルポンプ収容部5eの下部はレフトケース4とライトケース5の合わせ面となっていて、オイルポンプ収容部5eの下方にはボルト30Aによって締結されて剛性のあるフランジ部4Aとフランジ部5Aが配置されている。
【0071】
オイルポンプ収容部5eにはオイルポンプ57が収容されている。
図3、
図4に示すように、オイルポンプ57は、仮想線で示すインナロータ57Aとアウタロータ57Bとを有するトロコイド式のオイルポンプである。
【0072】
インナロータ57Aは、ポンプ駆動歯車61によって回転駆動される。ポンプ駆動歯車61は、インナロータ57Aと同軸上となるようにインナロータ57Aに対してレフトケース側に配置されている。
【0073】
ポンプ駆動歯車61は、ファイナルドリブンギヤ11に噛み合っており、ポンプ駆動歯車61にはファイナルドリブンギヤ11から駆動力が伝達される。
【0074】
アウタロータ57Bは、インナロータ57Aの径方向外方に設けられており、インナロータ57Aの回転に伴って回転する。
【0075】
トロコイド式のオイルポンプ57は、アウタロータ57Bに形成された複数の内歯とインナロータ57Aに形成された複数の外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間に形成される複数の作動室の容積増加および容積減少が連続して発生することにより、オイルを吸入ポート57aから作動室に吸入し、作動室によって加圧されたオイルを吐出ポート57bから吐出する。
【0076】
図2、
図7に示すように、ライトケース5の下面には切り通し部5Pが形成されている。切り通し部5Pは、その左右に位置するライトケース5の下面部分に対して高さが異なる部分であり、車両の前後方向に延びている。つまり、切り通し部5Pは、左端部のフランジ部5Aや右端部のフランジ部5Bよりも上方に位置しており、トンネル状に車両の前後方向に延びている。
【0077】
具体的には、
図2に示すように、切り通し部5Pは、ライトケース5の下壁5Gの下面から上方に窪む凹部から構成されており、凹部上内周面5hと、凹部上内周面5hの左端から下方に延びる凹部左内周面5iと、凹部上内周面5hの右端から下方に延びる凹部右内周面5jとを有する。
【0078】
切り通し部5Pにはケーブル部材51が配置されており、ケーブル部材51は、切り通し部5Pの内部で切り通し部5Pに沿って前後方向に配索されている。すなわち、ケーブル部材51は、凹部上内周面5hと凹部左内周面5iと凹部右内周面5jとによって囲まれる空間に配置されている。本実施例のケーブル部材51は、配索部材を構成する。
【0079】
図7に示すように、オイルポンプ収容部5eは、車幅方向で切り通し部5Pを挟んでトルクロッド取付部5cに対向している。ケーブル部材51は、車両の上下方向でオイルポンプ収容部5eの下端部5fとトルクロッド取付部5cの下端部5gよりも高い位置で切り通し部5Pに配置されている。
【0080】
ケーブル部材51の前端部51aには弾性部材からなるブーツ部材58が設けられており、ケーブル部材51はブーツ部材58によって覆われている。
【0081】
図1、
図5に示すように、ライトケース5にはブラケット59が取付けられている。ブラケット59は、オイルポンプ収容部5eとトルクロッド取付部5cよりも前側において、ケーブル部材51の前端部51a、マニュアルシャフト36の下端部、および、レバー部材41の左右および前方を覆っている。
【0082】
図7に示すように、ケーブル部材51は、横配索部51Aを有する。横配索部51Aは、切り通し部5Pに沿ってライトケース5の下面で前後方向に水平に延びており、ブーツ部材58は、横配索部51Aに取付けられている。
【0083】
図2、
図5に示すように、ケーブル部材51は、縦配索部51Bを有する。縦配索部51Bは、切り通し部5Pからライトケース5の後方でライトケース5に沿って上下方向に延びており、縦配索部51Bは、ブラケット60によってライトケース5の後壁5Iに取付けられている。
【0084】
図1、
図6に示すように、縦配索部51Bは、車幅方向で差動装置収容部5Mとトランスファ装置55の間を上下方向に通過しており、差動装置収容部5Mとトランスファ装置55の間を通過した後に上方で屈曲しシフトレバー52に向かって略水平方向に延びている。
【0085】
次に、本実施例のケーブル部材51の保護構造の効果を説明する。
本実施例のケーブル部材51の保護構造によれば、ライトケース5の下面に、車両の前後方向に延びる切り通し部5Pが形成されており、ケーブル部材51が切り通し部5Pに配置されている。
【0086】
これにより、ケーブル部材51の周囲にライトケース5を配置することができ、ケーブル部材51をライトケース5によって覆うことができる。そして、車両の走行中に路面の障害物や飛び石等が下方からケーブル部材51に向かう場合に、ライトケース5の下部によって障害物や飛び石等がケーブル部材51に衝突することを阻止し、ケーブル部材51が損傷することを抑制できる。
【0087】
このため、ケーブル部材51の全体を重量物であるカバーやブラケットで覆う必要がないので、自動変速機2の軽量化を図りつつ、ケーブル部材51の保護を行うことができる。
【0088】
また、ケーブル部材51をライトケース5の下方に配置してカバーやブラケットによって覆うと、カバーやブラケットが下方に突出して車両の最低地上高を下げてしまうおそれがあるので、自動変速機2の位置を高くして最低地上高さをある程度確保する必要がある。
【0089】
これに対して、本実施例のケーブル部材51は、切り通し部5Pに配置しているので、ケーブル部材51やカバーやブラケットのために自動変速機2の位置を高くする必要がなく自動変速機2の配置高さを低くできる。このため、車高を低くできる上に、自動変速機2のレイアウトの自由度を向上できる。
【0090】
また、本実施例のケーブル部材51の保護構造によれば、ライトケース5は、ライトケース5の下部に、オイルポンプ57を収容するオイルポンプ収容部5eと、クロスメンバ54とライトケース5とを連結するトルクロッド53が取付けられるトルクロッド取付部5cとを有する。
【0091】
切り通し部5Pは、ライトケース5の下壁5Gの下面を上方に窪ませるように形成されており、オイルポンプ収容部5eは、車幅方向で切り通し部5Pを挟んでトルクロッド取付部5cに対向している。
【0092】
オイルポンプ収容部5eはオイルポンプ57およびストレーナ(図示せず)を収容していてレフトケース4とライトケース5の合わせ面部分に前後方向に長く形成されているので、レフトケース4とライトケース5のそれぞれの壁とフランジ部4Aとフランジ部5Aとの配置によって、ライトケース5の中でも剛性の高い部位である。
【0093】
そして、トルクロッド取付部5cは、自動変速機2の動きを受け止めるトルクロッド53がボルト30Dによって取付けられる部位で剛性が高められているので、ライトケース5の中でも剛性が高い部位である。
【0094】
本実施例のケーブル部材51は、車両の上下方向でオイルポンプ収容部5eの下端部5fとトルクロッド取付部5cの下端部5gよりも高い位置で、それぞれの側方に位置する切り通し部5Pに配置されているので、剛性の高いオイルポンプ収容部5eとトルクロッド取付部5cの間にケーブル部材51を配置することができる。
【0095】
これにより、車両の走行中に路面の障害物や飛び石等がケーブル部材51に向かって飛散した場合に、障害物や飛び石等をオイルポンプ収容部5eとトルクロッド取付部5cによって高い剛性で遮ることができ、ケーブル部材51をより効果的に保護できる。
【0096】
また、本実施例のケーブル部材51の保護構造によれば、ライトケース5は、差動装置10を収容する差動装置収容部5Mと、エンジン1から自動変速機2に伝達される駆動力を前後輪に分配するトランスファ装置55が取付けられるトランスファ取付部5dを有する。
【0097】
ケーブル部材51は、切り通し部5Pに沿ってライトケース5の下側で前後方向に水平に延びる横配索部51Aと、切り通し部5Pからライトケース5の後方を上下方向に延びる縦配索部51Bとを有し、縦配索部51Bは、車幅方向で差動装置収容部5Mとトランスファ装置55の間を通過する。
【0098】
これにより、ケーブル部材の縦配索部51Bの車幅方向の両側を差動装置収容部5Mとトランスファ装置55によって覆うことができ、車両の走行中に路面の飛び石等が下方から縦配索部51Bに向かって飛散した場合に、飛び石等を差動装置収容部5Mとトランスファ装置55によって高い剛性で遮ることができ、ケーブル部材51をより効果的に保護できる。
【0099】
本実施例の配索部材は、シフトレバー52によってマニュアルシャフト36を操作するケーブル部材51から構成しているが、これに限定されるものではなく、ワイヤハーネス等であってもよい。すなわち、自動変速機2に配索される線状の部材であれば何に適用してもよい。
【0100】
また、本実施例の縦配索部51Bは、切り通し部5Pからライトケース5の後方でライトケース5に沿って上下方向に延びているが、配索部材の種類や配索位置によっては、縦配索部はライトケース5の前方でライトケース5に沿って上下方向に延びてもよい。
【0101】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1...エンジン(駆動源)、2...自動変速機(車両用変速機)、5c...トルクロッド取付部、5d...トランスファ取付部、5e...オイルポンプ収容部、5f...下端部(オイルポンプ収容部の下端部)、5g...下端部(トルクロッド取付部の下端部)、5M...差動装置収容部、5P...切り通し部、10...差動装置、11...ファイナルドリブンギヤ(大径ギヤ)、27...モータジェネレータ(駆動源)、51...ケーブル部材(配索部材)、51A...横配索部、51B...縦配索部、53...トルクロッド、54...クロスメンバ(車体)、55...トランスファ装置、57...オイルポンプ