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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099121
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/025 20120101AFI20240718BHJP
   F16H 57/028 20120101ALI20240718BHJP
   B60K 6/42 20071001ALI20240718BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20240718BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F16H57/025
F16H57/028
B60K6/42 ZHV
B60K6/54
B60K1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002826
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼内 靖義
(72)【発明者】
【氏名】青島 大城
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
3J063
【Fターム(参考)】
3D202EE21
3D235BB23
3D235CC01
3D235CC12
3D235EE04
3D235EE14
3D235EE17
3D235EE24
3D235FF32
3J063AA01
3J063AA04
3J063AB01
3J063AC04
3J063BA04
3J063BB11
3J063CA10
3J063CC23
3J063CD41
3J063XB06
3J063XB07
(57)【要約】
【課題】回転電機を収容する回転電機収容部の振動を抑制でき、回転電機収容部の耐久性が悪化することを抑制できる車両用変速機を提供すること。
【解決手段】自動変速機2の変速機ケース3は、縦壁4Wからモータ軸の軸方向に膨出し、モータジェネレータを収容するモータ収容部6と、モータ収容部6に隣接し、縦壁4Wからモータ軸8Aの軸方向に膨出する膨出壁部4Cとを備えている。モータ収容部6は、モータ収容部6の膨出方向の先端部にモータ軸の左端部を回転自在に支持する左側壁6Aを有し、左側壁6Aは、マウントブラケット11によって膨出壁部4Cに連結されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を有し、駆動力を発生する回転電機と、前記回転電機が取付けられる変速機ケースとを有し、内燃機関の駆動力を変速して出力する車両用変速機であって、
前記変速機ケースは、
壁部と、前記壁部から前記モータ軸の軸方向に膨出し、前記回転電機を収容する回転電機収容部と、前記回転電機収容部に隣接し、前記壁部から前記モータ軸の軸方向に膨出する膨出壁部とを備えており、
前記回転電機収容部は、前記回転電機収容部の膨出方向の先端部に前記モータ軸の一端部を回転自在に支持する第1の側壁を有し、
前記第1の側壁は、ブラケットによって前記膨出壁部に連結されていることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記回転電機収容部は、前記壁部から前記第1の側壁に向かって延び、前記第1の側壁の一側面に連絡される第2の側壁を有し、
前記回転電機収容部は、前記第1の側壁と前記第2の側壁の連絡部分の近傍に第1の締結具が締結される第1の締結部を有し、
前記膨出壁部は、第2の締結具が締結される第2の締結部を有し、
前記ブラケットは、前記第1の締結具が前記モータ軸の軸方向から前記第1の締結部に締結されることにより、前記第1の側壁に連結され、前記第2の締結具が前記モータ軸と直交する方向から前記第2の締結部に締結されることにより、前記膨出壁部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記変速機ケースを車体に連結するマウント部材の一部を構成するマウントブラケットであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記変速機ケースは、第1のケースと、前記第1のケースに連結される第2のケースとを有し、
前記第1のケースは、前記内燃機関が取付けられる内燃機関取付部と、前記モータ軸の軸方向で前記内燃機関取付部と反対側に位置し、前記第2のケースが取付けられる第1のケース側取付部とを有し、
前記第2のケースは、第1のケース側取付部が取付けられる第2のケース側取付部を有し、
前記壁部は、外周縁に前記第2のケース側取付部を有し、前記モータ軸の軸方向で前記第1のケースに対向するようにして前記第2のケースに設けられており、
前記回転電機収容部と前記膨出壁部は、前記壁部から前記第1のケースと離れるように膨出していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項5】
前記変速機ケースは、第1のケースと、前記第1のケースに連結される第2のケースとを有し、
前記第1のケースは、前記内燃機関が取付けられる内燃機関取付部と、前記モータ軸の軸方向で前記内燃機関取付部と反対側に位置し、前記第2のケースが取付けられる第1のケース側取付部とを有し、
前記第2のケースは、第1のケース側取付部が取付けられる第2のケース側取付部を有し、
前記壁部は、外周縁に前記第2のケース側取付部を有し、前記モータ軸の軸方向で前記第1のケースに対向するようにして前記第2のケースに設けられており、
前記回転電機収容部と前記膨出壁部は、前記壁部から前記第1のケースと離れるように膨出していることを特徴とする請求項3に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の走行用の駆動力を発生するモータを備えた車両用駆動装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この車両用駆動装置は、電動モータによる変速機ケースへの重量負荷を軽減できるハイブリッド自動車のモータ支持構造であって、等長ドライブシャフト支持用のブラケットを利用して電動モータを両端支持している。
【0004】
本発明によれば、電動モータの一端側を変速機ケースに固定するとともに、この一端側から離れた部位を等長ドライブシャフト用ブラケットによって支持したので、電動モータは変速機ケースとブラケットとで両端支持され、支持剛性が高くなるとともに、変速機ケースにかかる重量負荷を軽減できる。そのため、変速機ケースの耐久性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-239123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車両用駆動装置にあっては、等長ドライブシャフト用ブラケットによって支持できているが、モータケースが変速機ケースの上方から左方向に突出している場合には利用することができない。モータは比較的重量物であるので、モータの振動により、モータケースが振動してモータケースの耐久性が悪化するおそれがあり、未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、回転電機を収容する回転電機収容部の振動を抑制でき、回転電機収容部の耐久性が悪化することを抑制できる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータ軸を有し、駆動力を発生する回転電機と、前記回転電機が取付けられる変速機ケースとを有し、内燃機関の駆動力を変速して出力する車両用変速機であって、前記変速機ケースは、壁部と、前記壁部から前記モータ軸の軸方向に膨出し、前記回転電機を収容する回転電機収容部と、前記回転電機収容部に隣接し、前記壁部から前記モータ軸の軸方向に膨出する膨出壁部とを備えており、前記回転電機収容部は、前記回転電機収容部の膨出方向の先端部に前記モータ軸の一端部を回転自在に支持する第1の側壁を有し、前記第1の側壁は、ブラケットによって前記膨出壁部に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、回転電機を収容する回転電機収容部の振動を抑制でき、回転電機収容部の耐久性が悪化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の上面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の上面図であり、ブラケットを取り外した状態を示す図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図であり、ブラケットを取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、モータ軸を有し、駆動力を発生する回転電機と、回転電機が取付けられる変速機ケースとを有し、内燃機関の駆動力を変速して出力する車両用変速機であって、変速機ケースは、壁部と、壁部からモータ軸の軸方向に膨出し、回転電機を収容する回転電機収容部と、回転電機収容部に隣接し、壁部からモータ軸の軸方向に膨出する膨出壁部とを備えており、回転電機収容部は、回転電機収容部の膨出方向の先端部にモータ軸の一端部を回転自在に支持する第1の側壁を有し、第1の側壁は、ブラケットによって膨出壁部に連結されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、回転電機を収容する回転電機収容部の振動を抑制でき、回転電機収容部の耐久性が悪化することを抑制できる。
【実施例0013】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から図5は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
【0014】
図1から図5において、上下前後左右方向は、車両に配置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、車両の図示しないエンジンルームには内燃機関としてのエンジン1(図2、参照)と、エンジン1に連結される自動変速機2とが設けられている。本実施例の自動変速機2は、車両用変速機を構成する。
【0016】
自動変速機2は変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、レフトケース4とライトケース5を備えている。
【0017】
図2に示すように、レフトケース4とライトケース5の合わせ面にはフランジ部4A、5Aが形成されており、レフトケース4とライトケース5は、フランジ部4Aとフランジ部5Aが図示しないボルトによって締結されることにより、一体化されている。
【0018】
ライトケース5に関し、レフトケース4側に形成されているフランジ部5Aに対して反対側となるエンジン1側にはフランジ部5Bが形成されており、フランジ部5Bは、図示しないボルトによってエンジン1の図示しないシリンダブロックに締結されている。
【0019】
本実施例のライトケース5は、第1のケースを構成し、レフトケース4は、第2のケースを構成する。フランジ部5Aは、第1のケース側取付部を構成し、フランジ部4Aは、第2のケース側取付部を構成する。フランジ部5Bは、内燃機関取付部を構成する。
【0020】
図3に示すように、レフトケース4には上下方向に延びる縦壁4Wが設けられており、縦壁4Wは、後述するモータ軸8Aの軸方向でライトケース5に対向している。フランジ部4Aは、縦壁4Wの外周縁に沿って形成されている。
【0021】
レフトケース4の縦壁4Wは、後述する差動装置収容部10の左壁部分であったり、フランジ部4Aに近接した部分であり、後述する変速機構の入力軸やカウンタ軸が配置されていない部分におけるレフトケース4の左側壁(変速機ケースの左側壁)を構成しており、壁部を構成する。
【0022】
図1図2に示すように、レフトケース4にはモータ収容部6が設けられている。モータ収容部6は、縦壁4W、縦壁4Wからライトケース5と離れる方向に突出する筒状の周壁部4Bと、周壁部4Bの突出方向の先端部に図示しないボルトによって連結されたモータケース7とで構成され、内部にモータジェネレータ8が配置されている。
【0023】
内部に重量物であるモータジェネレータ8が配置されたモータ収容部6は、レフトケース4に左側に向かって突出するように形成されている。
【0024】
つまり、モータ収容部6は、縦壁4Wからライトケース5と離れる方向に膨出しており、変速機ケース3は、レフトケース4、ライトケース5およびモータケース7を含んで構成されている。
【0025】
周壁部4Bとモータケース7で構成されるモータ収容部6の内部は、モータジェネレータ8が収容されるモータ収容空間となっており、モータ収容部6はモータジェネレータ8のモータ軸8Aを回転自在に支持している。
【0026】
モータジェネレータ8は、複数の永久磁石が埋め込まれた図示しないロータと、図示しないステータコイルが巻き付けられた図示しないステータとを備えており、ステータコイルに三相交流電力が印加されることでステータに回転磁界が形成され、この回転磁界によってロータが回転して駆動力を生成する。ロータにはモータ軸8Aが取付けられており、モータ軸8Aは、ロータと一体で回転する。
【0027】
本実施例のモータジェネレータ8は、回転電機を構成し、モータ収容部6は、回転電機収容部を構成する。
【0028】
なお、モータ収容部6は、周壁部4Bとモータケース7から構成されるものに限らず、縦壁4Wからライトケース5と離れる方向に膨出し、周壁部4Bとモータケース7に相当する大きさを有する筒状の周壁部から構成されてもよい。つまり、周壁部4Bの左端部の開口を塞ぐようにレフトケース4にモータケース7を一体に形成し、左方向に突出するモータ収容部6を構成してもよい。
【0029】
周壁部4Bとモータケース7からなるモータ収容部6は、変速機ケース3に左方向に突出するように形成されており、その突出部は左側壁6Aと、上壁6Bと、前側壁6Cと、後側壁6D、下壁6Eとで構成され、筒状に左方向に突出する。
【0030】
つまり、上壁6Bは、周壁部4Bとモータケース7の上壁を構成し、前側壁6Cは、周壁部4Bとモータケース7の前側壁を構成する。後側壁6Dは、周壁部4Bとモータケース7の後壁を構成し、下壁6Eは、周壁部4Bとモータケース7の下壁を構成する。
【0031】
モータケース7の左側壁7Aは、モータ収容部6の左側壁6Aを構成しており、本実施例の左側壁6Aは、第1の側壁を構成する。
【0032】
上壁6Bは、ライトケース5よりも上方に位置しており、縦壁4Wから左側壁6Aに向かって延び、左側壁6Aの上端に連絡されている。
【0033】
上壁6Bのライトケース5側の端部はライトケース5よりも上方に位置しており、上壁6Bの右側の端部から下方に屈曲してライトケース5との合わせ面となるフランジ部4Aに連絡するようにレフトケース4に形成されている。つまり、モータ収容部6の上部はライトケース5よりも上方に突出している。
【0034】
前側壁6Cは、縦壁4Wから左側壁6Aに向かって延びており、左側壁6Aの前端部(一端部)に連絡されている。本実施例の前側壁6Cは、第2の側壁を構成する。
【0035】
後側壁6Dは、縦壁4Wから左側壁6Aに向かって延びており、左側壁6Aの後端部(他端部)に連絡されている。前側壁6Cと後側壁6Dの上側は縦壁4Wよりも上方に位置している。
【0036】
下壁6Eは、縦壁4Wから左側壁6Aに向かって延びており、左側壁6Aの下端部に連絡されている。つまり、モータジェネレータ8は、左側壁6Aと上壁6Bと前側壁6Cと後側壁6Dと下壁6Eとによって囲まれている。
【0037】
図2に示すように、モータ収容部6の膨出方向の先端部である左側壁6A(モータケース7の左側壁7A)にはモータジェネレータ8のモータ軸8Aの左端部が回転自在に支持されており、モータ軸8Aは、車幅方向(左右方向)に延びている。
【0038】
モータ軸8Aの右端部は、ライトケース5の内部に突出し、ライトケース5の図示しない縦壁に回転自在に支持されている。
【0039】
レフトケース4には変速機構収容部を構成する膨出壁部4Cが設けられている。膨出壁部4Cは、内部空間を拡大するように縦壁4Wからライトケース5と離れる方向に膨出している。つまり、膨出壁部4Cもモータ収容部6と同様に、左方向に突出するように形成されている。
【0040】
ここで、膨出壁部4Cとモータ収容部6は、変速機ケース3の基準となる壁部からモータ軸8Aの方向に内部空間を形成するように膨出していればよく、縦壁4Wから膨出するものに限定されるものではない。
【0041】
例えば、環状のフランジ部4Aを基準となる壁部として、膨出壁部4Cとモータ収容部6をフランジ部4Aからモータ軸8Aの軸方向に膨出させてもよい。換言すれば、膨出壁部4Cとモータ収容部6は、変速機ケース3において、内部に空間を形成するようにしてモータ軸8Aの軸方向に突出する部分であればよい。
【0042】
図3に示すように、膨出壁部4Cは、モータ軸8Aの軸方向と直交する方向(前後方向)でモータ収容部6に隣接しており、前後方向でモータ収容部6と並んで配置されている。
【0043】
ライトケース5と膨出壁部4Cの内部には図示しない変速機構が収容されている。変速機構は、いずれも図示しない複数の回転軸と、回転軸を連結する複数のギヤ対と、ギヤ対を任意の回転軸に連結して任意の変速段を成立させる同期装置等を含んで構成されている。
【0044】
図1図2に示すように、モータ収容部6の下側には、レフトケース4とライトケース5の間に差動装置収容部10が設けられており、差動装置収容部10には図示しない差動装置が収容されている。
【0045】
自動変速機2は、エンジン1の駆動力を変速機構に入力し、同期装置の作動により変速機構において変速を行い、変速された回転(回転速度)を差動装置により、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動輪に伝達する。
【0046】
モータジェネレータ8の駆動力は、差動装置に伝達される。具体的には、モータジェネレータ8によるモータ走行時、またはエンジン1とモータジェネレータ8とによるハイブリッド走行時に、モータジェネレータ8の駆動力は、差動装置に伝達される。
【0047】
また、モータジェネレータ8は、差動装置を介して駆動輪やエンジン1から駆動力を受けることにより、図示しないバッテリに充電する電力を生成する発電機としても機能する。
【0048】
本実施例のレフトケース4は、差動装置が収容される空間を確保するために、差動装置収容部10よりも上方に重量物であるモータジェネレータ8を収容するモータ収容部6が設けられており、モータ収容部6の上壁6Bがライトケース5よりも上方に位置している。そして、ドライブシャフトの配置空間を確保するために、この配置空間の上方に配置されるモータ収容部6は下方に補強構造を構成することが難しい。
【0049】
ここで、モータ収容部6をレフトケース4の上部から上方に突出させると、変速機ケース3の上下方向の寸法が大きくなるおそれがある。
【0050】
本実施例の自動変速機2は、変速機ケース3の上下方向の寸法を短くするために、モータ収容部6をレフトケース4の上部から突出させずに、レフトケース4の縦壁4Wからライトケース5と離れる側に膨出させている。
【0051】
この結果、変速機ケース3の上下方向の寸法を短くして、車高を低くでき、車両の小型化を図ることができる。
【0052】
また、膨出壁部4Cと別に専用のモータ収容部6を設け、モータ収容部6にモータジェネレータ8を収容することにより、モータジェネレータ8を冷却するための油路等をモータ収容部6に設けることができ、モータジェネレータ8の冷却性能を向上できる。
【0053】
膨出壁部4Cは、変速機ケース3に左方向に突出するように形成されており、その突出部は左側壁4Dと、上壁4Eと、前側壁4Fと、後側壁4G、下壁4Hとで構成され、筒状に左方向に突出する。
【0054】
左側壁4Dは、ライトケース5から最も離れた膨出壁部4Cの膨出端を構成しており、左側壁4Dには変速機構の各回転軸の左端部が回転自在に支持されている。左側壁4Dは、モータ収容部6の左側壁6Aよりも縦壁4Wから離れている。すなわち、モータ軸8Aの軸方向で左側壁4Dと左側壁6Aとは段違いになっている。
【0055】
上壁4Eは、縦壁4Wから左側壁4Dに向かって延びており、左側壁4Dの上端に連絡されている。なお、上壁4Eは、膨出壁部4Cの上面から上方に突出するリブ等の補強部材を含んでおり、リブの上面も上壁4Eを構成する。
【0056】
前側壁4Fは、縦壁4Wから左側壁4Dに向かって延びており、左側壁4Dの前端部に連絡されている。後側壁4Gは、縦壁4Wから左側壁4Dに向かって延びており、左側壁4Dの後端部に連絡されている。
【0057】
下壁4Hは、縦壁4Wから左側壁4Dに向かって延びており、左側壁4Dの下端部に連絡されている。つまり、変速機構は、左側壁4Dと上壁4Eと前側壁4Fと後側壁4Gと下壁4Hとによって囲まれている。
【0058】
図1図3に示すように、変速機ケース3の左側端部の上部にはマウントブラケット11が取付けられており、マウントブラケット11は弾性体を介して車体に取付けられる。マウントブラケット11は、前側ブラケット部11Aと後側ブラケット部11Bとを有する。
【0059】
前側ブラケット部11Aは、マウントブラケット11の前側部分であり、前後方向に略水平に伸びている。後側ブラケット部11Bは、マウントブラケット11の後ろ側部分であり、前側ブラケット部11Aの後端部から下方に伸びている。マウントブラケット11は左側から見て本実施例のマウントブラケット11は、ブラケットを構成する。
【0060】
図4に示すように、膨出壁部4Cの上壁4Eにはボス形状の締結部4I、4Jが設けられており、締結部4Iは、上壁4Eと前側壁4Fの連絡部分に配置されている。
【0061】
図5に示すように、モータ収容部6の左側壁6Aにはボス形状の締結部4K、4Lが設けられている。締結部4K、4Lは、モータ収容部6の左側壁6Aと前側壁6Cの連絡部分の近傍において上下方向に並んで配置されている。
【0062】
図2図3に示すように、前側ブラケット部11Aにはボルト12Aが上下方向に貫通されており、ボルト12Aは、モータ軸8Aと直交する上下方向から締結部4I、4Jに締結されている。これにより、前側ブラケット部11Aはボルト12Aによって上壁4Eに連結されている。
【0063】
後側ブラケット部11Bにはボルト12Bが左右方向に貫通されており、ボルト12Bは、モータ軸8Aの軸方向から締結部4K、4Lに締結されている。これにより、後側ブラケット部11Bはボルト12Bによって左側壁6Aに左方向から連結されている。
【0064】
このように、左側壁6Aは、マウントブラケット11によって膨出壁部4Cの上壁4Eに連結されている。つまり、マウントブラケット11は、左側壁6Aと膨出壁部4Cとを連結しており、モータ収容部6は、マウントブラケット11によって補強されている。
【0065】
本実施例の締結部4K、4Lは、第1の締結部を構成し、締結部4I、4Jは、第2の締結部を構成する。ボルト12Bは、第1の締結具を構成し、ボルト12Aは、第2の締結具を構成する。
【0066】
図2に示すように、前側ブラケット部11Aには一対のスタッドボルト11aが設けられており、スタッドボルト11aにはマウント部13の右端部が締結されている。
【0067】
マウント部13の左端部には図示しない弾性体が設けられており、マウント部13の左端部は、弾性体を介してサイドメンバ14に連結されている。
【0068】
変速機ケース3は、マウント部13を介してサイドメンバ14に弾性的に支持されている。本実施例のマウントブラケット11とマウント部13は、マウント部材を構成しており、マウントブラケット11は、マウント部材の一部を構成している。本実施例のサイドメンバ14は、車体を構成する。
【0069】
図1図2に示すように、ライトケース5の下部にはトルクロッド15が取付けられており、トルクロッド15は、弾性部材15Aを介して車幅方向に延びるクロスメンバ16に取付けられている。
【0070】
トルクロッド15は、自動変速機2の振動と揺動を吸収するように自動変速機2とクロスメンバ16とを連結している。
【0071】
次に、本実施例の自動変速機2の効果を説明する。
本実施例の自動変速機2の変速機ケース3は、上下方向に延びる縦壁4Wと、縦壁4Wからモータ軸8Aの軸方向に膨出し、モータジェネレータ8を収容するモータ収容部6と、モータ収容部6に隣接し、縦壁4Wからモータ軸8Aの軸方向に膨出する膨出壁部4Cとを備えている。
【0072】
これにより、モータ軸8Aの左端部が縦壁4Wから離れた位置に位置することになり、モータジェネレータ8の支持剛性が低下し、重量物であるモータジェネレータ8に加わる走行等による加振力によってモータ収容部6が振動し、変速機ケース3の耐久性が悪化するおそれがある。
【0073】
このため、リブによって左側壁6Aと膨出壁部4Cを連結することや、モータ収容部6の内部に隔壁を設けることによってモータ収容部6を補強することが考えられるが、鋳型の型抜き方向に高さのあるリブや隔壁を設けることは、型抜きの抜き勾配の関係で根元が厚くなり鋳巣の発生や変速機ケース3の重量の増加となるので、好ましくない。
【0074】
本実施例の自動変速機2によれば、モータ収容部6は、その突出する先端部をマウントブラケット11によって膨出壁部4Cに連結している。詳細には、モータ収容部6は、モータ収容部6の膨出方向の先端部にモータ軸8Aの左端部を回転自在に支持する左側壁6Aを有し、左側壁6Aは、マウントブラケット11によって膨出壁部4Cに連結されている。
【0075】
これにより、左側壁6Aをマウントブラケット11と膨出壁部4Cによって補強して左側壁6Aによるモータ軸8Aの支持剛性を高くできる。この結果、走行等に伴う車体の振動によってモータ収容部6が振動することを抑制でき、モータ収容部6の耐久性が悪化することを抑制できる。
【0076】
また、本実施例の自動変速機2によれば、マウントブラケット11を膨出壁部4Cだけでなく左側壁6Aにも連結しているので、前後に長い間隔を取って変速機ケース3に取付けることが可能となって、マウントブラケット11の取付け剛性を向上させることができる。この為、マウントブラケット11が大型化することを抑制できる。
【0077】
具体的には、モータ収容部6は、縦壁4Wからモータ軸8Aの軸方向に膨出しており、小型のマウントブラケット11を使用してもモータ収容部6の膨出端である左側壁6Aに連結することができている。しかし、モータ収容部6の膨出がなければ、後側ブラケット部11Bを縦壁4Wの近くに連結することとなり、マウントブラケット11を長尺にする必要があり、マウントブラケット11が大型化する。
【0078】
これに対して、本実施例の変速機ケース3において、膨出壁部4Cは、縦壁4Wからモータ軸8Aの軸方向に膨出しており、膨出壁部4Cは左側壁6Aの近くに位置している。したがって、マウントブラケット11を膨出壁部4Cに連結すれば、マウントブラケット11を長尺にする必要がなく、マウントブラケット11の小型化を図ることができる。
【0079】
また、本実施例の自動変速機2によれば、モータ収容部6は、縦壁4Wから左側壁6Aに向かって延び、左側壁6Aの前端部に連絡される前側壁6Cを有する。
【0080】
モータ収容部6は、左側壁6Aと前側壁6Cの連絡部分の近傍にボルト12Bが締結される締結部4K、4Lを有し、膨出壁部4Cは、ボルト12Aが締結される締結部4I、4Jを有する。
【0081】
マウントブラケット11は、ボルト12Bがモータ軸8Aの軸方向から締結部4K、4Lに締結されることにより、左側壁6Aに連結され、ボルト12Aがモータ軸8Aと直交する方向から締結部4I、4Jに締結されることにより、膨出壁部4Cに連結されている。
【0082】
これにより、剛性の高い左側壁6Aと前側壁6Cの連絡部の近傍に設けられた締結部4J、4Kにボルト12Bによってマウントブラケット11を締結できるので、マウントブラケット11の取付け剛性を向上させることができると共に、マウントブラケット11によって左側壁6Aの剛性をより一層高くできる。
【0083】
また、剛性の高い上壁4Eと前側壁4Fの連絡部分に設けられた締結部4Iにボルト12Aによってマウントブラケット11を締結できるので、膨出壁部4Cに対するマウントブラケット11の取付強度を高くできる。このため、マウントブラケット11によって左側壁6Aの剛性をより一層高くできる。
【0084】
また、剛性の高い左側壁6Aと前側壁6Cの連絡部の近傍に設けられた締結部4K、4Lにモータ軸8Aの軸方向からボルト12Bを締結することにより、変速機ケース3の壁面に沿ってボスを形成することが可能となり、軸長の長いボルト12Bを用いることができ、マウントブラケット11によって左側壁6Aの剛性をより一層高くできる。
【0085】
また、剛性の高い上壁4Eと前側壁4Fの連絡部の近傍に設けられた締結部4Iに、モータ軸8Aと直交する上下方向からボルト12Aを締結することにより、変速機ケース3の壁面に沿ってボスを形成することが可能となり、軸長の長いボルト12Aを用いることができ、膨出壁部4Cに対するマウントブラケット11の取付強度を高くできる。
【0086】
これに加えて、マウントブラケット11がモータ軸8Aの軸方向と上下方向から左側壁6Aと膨出壁部4Cの上壁4Eに連結されているので、左側壁6Aを2方向で固定されたマウントブラケット11によって支持することができ、マウントブラケット11によって左側壁6Aの剛性をより一層高くできる。
【0087】
したがって、左側壁6Aによるモータ軸8Aの支持剛性をより効果的に高くでき、モータジェネレータ8の振動によってモータ収容部6が振動することをより効果的に抑制できる。この結果、モータ収容部6の耐久性が悪化することをより効果的に抑制できる。
【0088】
また、本実施例の自動変速機2によれば、マウントブラケット11は、変速機ケース3をサイドメンバ14に連結するマウント部材の一部を構成するので、自動変速機2に既存のマウントブラケット11を利用して左側壁6Aの剛性を高くできる。
【0089】
このため、左側壁6Aの剛性を高める専用の部品を不要にでき、自動変速機2の部品点数が増加することを防止して、自動変速機2の製造コストが増大することを抑制できる。
【0090】
また、本実施例の自動変速機2によれば、変速機ケース3は、ライトケース5と、ライトケース5に連結されるレフトケース4とを有する。
【0091】
ライトケース5は、エンジン1が取付けられるフランジ部5Bと、モータ軸8Aの軸方向でフランジ部5Bと反対側に位置し、レフトケース4が取付けられるフランジ部5Aとを有し、レフトケース4は、フランジ部5Aが取付けられるフランジ部4Aを有する。
【0092】
縦壁4Wは、モータ軸8Aの軸方向でライトケース5に対向するようにしてレフトケース4に設けられている。縦壁4Wは、外周縁にフランジ部4Aを有し、モータ軸8Aの軸方向でライトケース5に対向するようにしてレフトケース4に設けられている。
【0093】
これに加えて、モータ収容部6と膨出壁部4Cは、縦壁4Wからライトケース5と離れるように膨出している。
【0094】
このように、左側壁6Aをマウントブラケット11によって膨出壁部4Cに連結することにより、左側壁6Aをマウントブラケット11と膨出壁部4Cによって補強することができ、左側壁6Aの剛性をマウントブラケット11および膨出壁部4Cによって高くできる。
【0095】
このため、左側壁6Aによるモータ軸8Aの支持剛性を高くでき、モータジェネレータ8の振動によってモータ収容部6が振動することをより効果的に抑制でき、モータ収容部6の耐久性が悪化することをより効果的に抑制できる。
【0096】
なお、本実施例の自動変速機2は、モータ収容部6をマウントブラケット11によって膨出壁部4Cに連結しているが、モータ収容部6の連結先は膨出壁部4Cに限定されるものではない。
【0097】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0098】
1...エンジン(内燃機関)、2...自動変速機、3...変速機ケース、4...レフトケース(第2のケース)、4A...フランジ部(第2のケース側取付部)、4C...膨出壁部、4I,4J...締結部(第2の締結部)、4K,4L...締結部(第1の締結部)、4W...縦壁(壁部)、5...ライトケース(第1のケース)、5A...フランジ部(第1のケース側取付部)、5B...フランジ部(内燃機関取付部)、6...モータ収容部(回転電機収容部)、6A...左側壁(第1の側壁)、6C...前側壁(第2の側壁)、8...モータジェネレータ(回転電機)、8A...モータ軸、11...マウントブラケット(ブラケット、マウント部材)、12A...ボルト(第2の締結具)、12B...ボルト(第1の締結具)、13...マウント部(マウント部材)、14...サイドメンバ(車体)
図1
図2
図3
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図5