IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099133
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/14 20060101AFI20240718BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240718BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20240718BHJP
   C11D 1/88 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C11D1/14
C11D3/20
C11D1/66
C11D1/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002845
(22)【出願日】2023-01-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン ペイシュアン
(72)【発明者】
【氏名】矢野 誠二
(72)【発明者】
【氏名】窪田 裕一
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB27
4H003AB31
4H003AC08
4H003AE05
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA03
4H003EA21
4H003EB07
4H003EB08
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】殺菌性と皮脂汚れ洗浄性を両立し、外観安定性が良好である、洗浄剤組成物、及びそれを用いた繊維製品の洗浄方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が1.0以上10.0以下であり、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)が1.5以上6.5以下であり、30℃におけるpHが3.0以上5.0以下である、洗浄剤組成物。
(a)成分:アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上18以下である、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩
(b)成分:(a)成分以外の界面活性剤
(c)成分:カルボキシ基を有する炭素数1以上12以下の有機酸又はその塩であり、(c1)CLogPが1.5以上2.5以下の芳香族モノカルボン酸又はその塩(以下、(c1)成分という)を含む、有機酸又はその塩
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が1.0以上10.0以下であり、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)が1.5以上6.5以下であり、30℃におけるpHが3.0以上5.0以下である、洗浄剤組成物。
(a)成分:アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上18以下である、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩
(b)成分:(a)成分以外の界面活性剤
(c)成分:カルボキシ基を有する炭素数1以上12以下の有機酸又はその塩であり、(c1)CLogPが1.5以上2.5以下の芳香族モノカルボン酸又はその塩(以下、(c1)成分という)を含む、有機酸又はその塩
【請求項2】
(b)成分が、(a)成分以外のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
(c1)成分が安息香酸である、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
(c)成分が、更に(c2)CLogPが-0.5以下のカルボキシ基を有する有機酸又はその塩を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
繊維製品洗浄用である、請求項1~4の何れか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
洗浄槽に繊維製品と請求項1~5の何れか1項に記載の洗浄剤組成物と水を投入して、繊維製品を殺菌、洗浄する、繊維製品の洗浄方法。
【請求項7】
下記の工程A、及び工程Bを行う、請求項6に記載の繊維製品の洗浄方法。
工程A:洗浄槽に繊維製品と前記洗浄剤組成物と水を投入して、全界面活性剤の含有量が400ppm以上であり、pHが5.7未満である、洗浄液Aを調製し、調製した洗浄液Aで前記繊維製品を殺菌する工程。
工程B:工程Aの後に、前記洗浄槽に更に水を投入し、全界面活性剤の含有量が250ppm以下であり、pHが5.7以上である、洗浄液Bを調製し、調製した洗浄液Bで前記繊維製品を洗浄する工程。
【請求項8】
工程Aにおける殺菌時間が30秒以上30分以下である、請求項7に記載の繊維製品の洗浄方法。
【請求項9】
工程Aが、洗浄槽に繊維製品と、前記洗浄剤組成物又はそれを少量の水で混合したものを投入後、水を投入して洗浄液Aを調製し、調製した洗浄液Aで前記繊維製品を殺菌する工程であり、水の投入速度が2L/分以上22L/分以下である、請求項7又は8に記載の繊維製品の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料等の繊維製品の洗浄には、各種界面活性剤を配合した洗浄剤が広く用いられている。近年、生活者の衛生意識の高まりに伴い、繊維製品の表面に付着した菌やウイルスに関心も高まってきている。そのため生活者は、菌が繁殖し易い靴下や汗のかいた衣類を洗浄液にしばらく浸け置いたり、消毒剤や漂白剤を繊維製品用洗浄剤と併用したりするなど、余分な手間やコストをかけて洗浄を行っている。
一方、多くの生活者は、繊維製品の洗浄後に洗浄剤成分が繊維製品に残留することを嫌っており、また、水を節約するという環境負荷の視点からも、少ない水量でも洗浄剤成分がきれいに濯げることは重要である。
繊維製品用洗浄剤には殺菌性能を有するカチオン界面活性剤が汎用的に使用されるが、繊維製品に残留して汚れを再汚染させてしまうことが知られている。また、繊維製品用洗浄剤を強酸性や強アルカリ性にすることにより殺菌性や洗浄性を強化する検討が見られるが、強い液性から生じる衣類や基剤や手肌へのダメージ、強酸性により次亜塩素酸塩配合製品との混合で生じる塩素ガス発生リスクは解決できていない。そのため、繊維製品用洗浄剤を、残留性の高いカチオン界面活性剤を用いることなく、且つ該繊維製品用洗浄剤を水で希釈した洗浄液を弱酸性から弱アルカリ性の穏やかな環境下で、繊維製品の殺菌性能と洗浄性能を両立した技術を確立し、更に洗浄後の繊維製品を少ない水量で濯ぐことができれば、生活者に手間やコストをかけることなく、より衛生的で安心できる繊維製品用洗浄剤、及びそれを用いた繊維製品の洗浄方法を提供できると考えられる。
【0003】
カチオン界面活性剤に依らず殺菌性能を付与する手段として、以下の先行技術文献が開示されている。特許文献1には、殺菌を目的として、成分(A)として、疎水端の炭化水素基の炭素数は10~18のアニオン界面活性剤を0.1~25質量%、成分(B)として、(b1)XlogPが-0.3以上4.1以下のカルボン酸を0.1~5質量%、(b2)ClogPが0.3以上4.2以下の香料を0.1~5質量%、を含有し、25℃におけるpHが2以上6.1以下であり、水で100倍に希釈された後に25℃におけるpHが5.5以下である、液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献2には、乳石の除去を目的とした濃縮液体清浄組成物であって、無機酸、有機酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸と、一般式R-NH-CHCHCHNH(式中RはC4~C22アルキル基)で表される脂肪族アルキル-1,3-ジアミノプロパンまたはそれらの塩とを含有し、酸性下で洗浄する組成物が開示されている。
特許文献3には、a)5~25%のアニオン界面活性剤、b)0~5%の非イオン性界面活性剤、c)任意の両性界面活性剤を含み、アニオン界面活性剤は界面活性剤の50%以上であり、d)0.5~3%のカプリル酸を含む、液体組成物であって、pHは4.5~5.5、好ましくは4.5~5.1である組成物が開示されている。
特許文献4には、a.アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩およびそれらの組み合わせから選択される陰イオン性界面活性剤を0.1~10質量%、b.アルコールエトキシレート、短鎖アルキルポリグリコシドおよびそれらの組み合わせから選択される非イオン性界面活性剤を0.1~10質量%、c.乳酸、酢酸、マロン酸、アジピン酸、グルタル酸、グリコール酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、4-メチルオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸およびそれらの組み合わせから選択される有機酸を1~20質量%含有する、洗浄剤組成物であって、組成物のpHが2~4であり、アルコールエトキシレートは、1から7個のEOを有し、アルキルポリグリコシドはC8~C10のアルキル基を有し、有機溶媒を含まない、洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第110713863号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/020608号
【特許文献3】欧州特許第3700500号明細書
【特許文献4】国際公開第2022/129269号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルキル又はアルケニル硫酸エステルは、天然由来部位が多く、サステナブルな原料調達に貢献できる化合物である。繊維製品の洗浄において、アルキル又はアルケニル硫酸エステルを洗浄成分として含む洗浄剤組成物を用いた場合、洗浄後の繊維製品への界面活性剤残留量が少ないため、濯ぎ水の量が少なくて済み、近年の環境問題となっている水不足対策に貢献できる。またアルキル又はアルケニル硫酸エステルを洗浄成分として含む洗浄剤組成物を希釈した洗浄液のpHを弱酸性にすることで優れた殺菌性を発揮する。しかしながら、アルキル又はアルケニル硫酸エステルを洗浄成分として含む洗浄剤組成物は、繊維製品の皮脂汚れ洗浄性が劣り、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立に課題がある。またアルキル又はアルケニル硫酸エステルはその高いクラフト点により、アルキル又はアルケニル硫酸エステルを洗浄成分として含む洗浄剤組成物の外観安定性に課題がある。
本発明は、アルキル又はアルケニル硫酸エステルを洗浄成分として含む洗浄剤組成物において、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性を両立し、外観安定性が良好である、洗浄剤組成物、及びそれを用いた繊維製品の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が1.0以上10.0以下であり、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)が1.5以上6.5以下であり、30℃におけるpHが3.0以上5.0以下である、洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上18以下である、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩
(b)成分:(a)成分以外の界面活性剤
(c)成分:カルボキシ基を有する炭素数1以上12以下の有機酸又はその塩であり、(c1)CLogPが1.5以上2.5以下の芳香族モノカルボン酸又はその塩(以下、(c1)成分という)を含む、有機酸又はその塩
【0007】
また本発明は、洗浄槽に繊維製品と本発明の洗浄剤組成物と水を投入して、繊維製品を殺菌、洗浄する、繊維製品の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルキル又はアルケニル硫酸エステルを洗浄成分として含む洗浄剤組成物において、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性を両立し、外観安定性が良好である、洗浄剤組成物、及びそれを用いた繊維製品の洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[洗浄剤組成物]
本発明のアルキル又はアルケニル硫酸エステルを洗浄成分として含む洗浄剤組成物において、殺菌性と洗浄性を両立し、外観安定性が良好である理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
アルキル又はアルケニル硫酸エステルと、適切な親疎水性バランスを有する有機酸又はその塩とを含有し、pHが酸性の洗浄剤組成物は、それを水で希釈した洗浄液のpHが酸性の条件下で、菌表面のたんぱく質が正電荷を帯び、洗浄液中のアニオン界面活性剤が、菌表面の正電荷とイオン間相互作用を生じ、効率よく菌表面に作用することが可能となるため、優れた殺菌性を有するが、繊維製品の洗濯の様に、洗浄剤組成物を非常に希釈度の高い条件で使用する場合おいては、洗浄剤組成物を希釈する水道水中の硬度成分の影響により十分な皮脂汚れ洗浄性能が得られない。該洗浄剤組成物に、他の界面活性剤を含有させた処方は多くで見られるが、皮脂汚れ洗浄性能と殺菌性能がトレードオフとなる課題があり、洗浄性能を補うために洗浄剤組成物に過剰の洗浄成分が必要になる。また、適切な親疎水性バランスを有する有機酸又はその塩は多くの場合、疎水性相互作用が強く働き、それを含有した洗浄剤組成物は、容易に析出が生じる。本発明の洗浄剤組成物では、(a)成分であるアルキル又はアルケニル硫酸エステルと、(c1)成分である特定の芳香族モノカルボン酸又はその塩を弱酸性の条件で特定の割合で含有し、更に特定の割合で(b)成分である他の界面活性剤を含有することで、洗浄剤組成物中に適切な立体障害を誘起し優れた外観安定性を実現すると同時に、該洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄液において、アルキル又はアルケニル硫酸エステルと有機酸又はその塩を併用することによる繊維製品の殺菌性を阻害することなく、希釈水中の硬度成分の影響を弱め、皮脂汚れ洗浄性を向上でき、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性を両立できたものと考えられる。
【0010】
<(a)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分として、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上18以下である、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、又はその塩を含有する。
(a)成分のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、殺菌性、及び皮脂汚れ洗浄性の観点から、10以上、好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは14以下である。
(a1)成分のアルキル基又はアルケニル基は、アルキル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。
(a1)成分のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;及び炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0011】
<(b)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分として、(a)成分以外の界面活性剤を含有する。
(b)成分としては、(b1)(a)成分以外のアニオン界面活性剤(以下、(b1)成分という)、(b2)ノニオン界面活性剤(以下、(b2)成分という)、及び(b3)両性界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0012】
(b1)成分の(a)成分以外のアニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、内部オレフィンスルホン酸、αオレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸、α-スルホ脂肪酸、N-アシルアミノ酸、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
アニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基は、例えば、炭素数8以上22以下である。アニオン界面活性剤のオキシアルキレン基の平均付加モル数は、例えば、0以上10以下である。
これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;及び炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0013】
(b1)成分は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、又はその塩がより好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸のアルキル基の炭素数は、10以上、好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは14以下であり、アルキル基は直鎖が好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステルは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下のアルキル基又はアルケニル基を有する。ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸は、オキシアルキレン基の炭素数が、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数が0.5以上、より好ましくは1.0以上、そして、4.0以下、好ましくは3.0以下である。
【0014】
(b2)成分のノニオン界面活性剤としては、(b21)アルキレンオキシ基を含み、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が1以上30以下である、ノニオン界面活性剤(以下、(b21)成分という)が好ましい。
(b21)成分のアルキレンオキシ基は、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基から選ばれる1種以上の基が好ましい。炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基が好ましい。
(b21)成分のアルキレンオキシ基の平均付加モル数は、皮脂汚れ洗浄力向上、及び外観安定性の観点から、1以上、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、そして、30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0015】
(b21)成分は、下記一般式(b21)で表されるノニオン界面活性剤が好ましい。
1b(CO)O-(AO)-R2b (b21)
〔式中、R1bは炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2bは水素原子又はメチル基である。COはカルボニル基であり、mは0又は1の数である。AO基はエチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基である。nは平均付加モル数であって、1以上30以下の数である。〕
【0016】
一般式(b21)中、R1bの炭素数は、皮脂汚れ洗浄性の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
1bは、脂肪族炭化水素基であり、好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基である。
【0017】
一般式(b21)中、AO基は、エチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、好ましくはエチレンオキシ基を含む炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基である。AO基は、エチレンオキシ基と他のアルキレンオキシ基、例えばプロピレンオキシ基とを含むアルキレンオキシ基でもよい。他のアルキレンオキシ基は、プロピレンオキシ基が好ましい。AO基が、エチレンオキシ基と他のアルキレンオキシ基を含む場合は、エチレンオキシ基と他のアルキレンオキシ基は、ブロック型結合でもランダム型結合であってもよい。
【0018】
一般式(b21)中、nは、AO基の平均付加モル数であって、1以上30以下の数である。一般式(b21)中、nは、皮脂汚れ洗浄性、及び殺菌性の観点から、1以上、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、そして、30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0019】
(b21)成分以外のアルキレンオキシ基を有さないノニオン界面活性剤の具体例としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、及びグリセリルモノエーテルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0020】
(b3)成分の両性界面活性剤としては、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-アルキル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインを挙げることができる。これらにおいて、アルカノイル基の炭素数は、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。また、これらにおいて、アルキル基の炭素数は、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0021】
(b)成分は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立の観点から、(b1)成分、及び(b2)成分から選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、及び一般式(b21)で表されるノニオン界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0022】
<(c)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(c)成分として、カルボキシ基を有する炭素数1以上12以下の有機酸又はその塩であり、(c1)CLogPが1.5以上2.5以下の芳香族モノカルボン酸又はその塩(以下、(c1)成分という)を含む、有機酸又はその塩を含有する。
(c)成分のカルボキシ基を有する有機酸又はその塩の炭素数は、界面活性剤との相溶性、及び殺菌性の観点から、1以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、そして、12以下、好ましくは11以下、より好ましくは10以下である。
【0023】
(c)成分は、界面活性剤との相溶性、及び殺菌性の観点から、(c1)成分として、CLogPが1.5以上2.5以下の芳香族モノカルボン酸又はその塩を含む。
(c1)成分のCLogPは、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.7以上、そして、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.2以下である。
本発明においてCLogPはPerkin Elmer社のChemBioDrawUltra ver.20.1のChemPropertyを用いて算出した計算値を用いる。(c)成分が有機酸塩である場合、CLogPの計算は、有機酸塩のカルボキシ基は全てCOOHとして算出する。なお、ClogPの値が大きい程、疎水性が高いことを表す。
【0024】
(c1)成分は、具体的には、安息香酸(CLogP:1.89、炭素数7)、サリチル酸(CLogP:2.19、炭素数7)、3-メチル安息香酸(CLogP:2.38、炭素数8)、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられ、殺菌性の観点から、好ましくは安息香酸、サリチル酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくは安息香酸又はその塩である。
【0025】
(c)成分は、(c1)成分の他に、低温安定性向上の観点から、(c2)成分として、CLogPが-0.5以下のカルボキシ基を有する有機酸又はその塩を含むことが好ましい。すなわち、(c)成分は、殺菌性と低温安定性の両立の観点から、(c1)成分、及び(c2)成分を含むことが好ましい。
(c2)成分のCLogPは、好ましくは-3.0以上、より好ましくは-2.0以上、そして、好ましくは-0.7以下、より好ましくは-1.0以下である。
【0026】
(c2)成分は、具体的には、クエン酸(CLogP:-2.00、炭素数6)、乳酸(CLogP:-0.73、炭素数3)、コハク酸(CLogP:-0.53、炭素数4)、酒石酸(CLogP:-3.22、炭素数4)、リンゴ酸(CLogP:-1.52、炭素数4)、アコニット酸(CLogP:-0.85、炭素数6)、シュウ酸(CLogP:-1.75、炭素数2)、ピルビン酸(CLogP:-1.24、炭素数3)、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられ、殺菌性の観点から、好ましくはクエン酸、乳酸、リンゴ酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはクエン酸、乳酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり。
【0027】
<組成等>
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分を、殺菌性、及び皮脂汚れ洗浄性の観点から、組成物中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは9質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下含有する。
本発明において、(a)成分の質量は、アンモニウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分を、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立の観点から、組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下含有する。
本発明において、(b)成分が(b1)成分を含む場合、(b1)成分の質量は、ナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立の観点から、1.0以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、そして、10.0以下、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下である。
【0030】
本発明の洗浄剤組成物は、(c)成分を、界面活性剤との相溶性および殺菌性の観点から、組成物中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下含有する。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物は、(c1)成分を、界面活性剤との相溶性および殺菌性の観点から、組成物中、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは8質量%以下含有する。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、(c)成分として(c2)成分を含む場合、(c2)成分を、低温安定性向上の観点から、組成物中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは4質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物中、(c)成分として(c1)成分及び(c2)成分を含む場合、(c1)成分の含有量と(c2)成分の含有量との質量比(c2)/(c1)は、殺菌性と低温安定性の両立の観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物中、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(a)/(c)は、殺菌性、皮脂汚れ洗浄性、及び低温安定性の観点から、1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.3以上、そして、6.5以下、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下、更に好ましくは5.0以下である。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物中、(a)成分の含有量と(c1)成分の含有量との質量比(a)/(c1)は、殺菌性、皮脂汚れ洗浄性、及び低温安定性の観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは2.7以上、そして、好ましくは6.5以下、より好ましくは6.0以下、更に好ましくは5.0以下である。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物は、水を含有する。水は、イオン交換水、水道水、精製水などを用いることができる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。
本発明の洗浄剤組成物は、水を、組成物中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは93質量%以下、より好ましくは88質量%以下含有する。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は、繊維製品の処理に用いられる一般的な組成物に添加される成分を含有することができ、例えばpH調整剤、防腐剤、着色剤、香料、ハイドロトロープ剤、ポリマー等の再汚染防止剤及び分散剤、酵素等(但し、(a)成分~(c)成分に該当するものは除かれる。)を含有することができる。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物の30℃におけるpHは、次亜塩素酸塩配合製品との混合リスク及び殺菌性と洗浄性の観点から、3.0以上、好ましくは3.2以上、より好ましくは3.3以上、そして、5.0以下、好ましくは4.7以下、より好ましくは4.4以下である。該pHは、ガラス電極を用いて30℃で測定した値である。具体的には、以下の方法で測定されたものである。
<pHの測定方法>
Consort製multi-parameter analyser C3010にpH電極(SI Analytics製BlueLine 17 pH)をあらかじめReagecon pH4.000 High Resolution Colour Coded Buffer Solution、ReageconpH 7.000 High Resolution Colour Coded Buffer Solutionで校正し、イオン交換水で十分すすいでおく。温度をを30℃に調整した洗浄剤組成物に、上記の通り校正、洗浄したpH電極を入れ、pHメーターのAUTO HOLDモードを用いて、測定値が一定になるまで測定する。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び水を配合してなる洗浄剤組成物であってよい。この洗浄剤組成物には、本発明の洗浄剤組成物で記載した事項を適宜適用することができ、前記の各成分の含有量、及び各質量比を、各成分の配合量に置き換えて適用することができる。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物は、繊維製品用として好適に用いることができ、具体的には衣類、タオル、寝具、寝具用の繊維製品(シーツ、枕カバーなど)、マスクなどの繊維製品の洗浄に用いることができる。これら以外の洗濯が可能な繊維製品も対象とすることができる。繊維製品の材質は、特に限定されず、例えば、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、ポリエステル、アクリル等の合成繊維、及びこれらの混紡繊維等が挙げられ、中でも、綿繊維、あるいは綿繊維と他の繊維との混紡繊維が好ましい。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物は、殺菌性と洗浄性を両立することができることから、一般家庭のみならず医療や介護などに用いる繊維製品の殺菌及び洗浄に利用できる。本発明の洗浄剤組成物が対象とする細菌としては、例えばモラクセラ(Moraxella)属細菌、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、シェードモナス(Pseudomonas)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属細菌、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、キュープリアビダス(Cupriavidus)属細菌、サイクロバクター(Psychorobacter)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、エシェリキア(Escherichia)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、及びブルクホルデリア(Burkholderia)属細菌、リステリア(Listeria)属細菌、シゲラ(Shigella)属細菌、ビブリオ(Vibrio)属細菌、クレブシエラ(Klebsiella)属細菌、サルモネラ(Salmonella)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
[繊維製品の洗浄方法]
本発明は、洗浄槽に繊維製品と本発明の洗浄剤組成物と水を投入して、繊維製品を殺菌、洗浄する、繊維製品の洗浄方法に関する。
【0043】
本発明の繊維製品の洗浄方法は、殺菌性と洗浄性を最大限発揮する観点から、下記の工程A、及び工程Bを行うことが好ましい。
工程A:洗浄槽に繊維製品と前記洗浄剤組成物と水を投入して、全界面活性剤の含有量が400ppm以上であり、pHが5.7未満である、洗浄液Aを調製し、調製した洗浄液Aで前記繊維製品を殺菌する工程。
工程B:工程Aの後に、前記洗浄槽に更に水を投入し、全界面活性剤の含有量が250ppm以下であり、pHが5.7以上である、洗浄液Bを調製し、調製した洗浄液Bで前記繊維製品を洗浄する工程。
【0044】
<工程A>
工程Aは、洗浄槽に繊維製品と本発明の洗浄剤組成物と水を投入して、全界面活性剤の含有量(すなわち、(a)成分、(b)成分の合計含有量)が400ppm以上、好ましくは400ppm以上1500ppm以下であり、pHが5.7未満、好ましくは3.5以上5.7未満である、洗浄液Aを調製し、調製した洗浄液Aで前記繊維製品を殺菌する工程である。
【0045】
洗浄液A中、(a)成分の含有量は、殺菌性の観点から、好ましくは200ppm以上、より好ましくは250ppm以上、更に好ましくは300ppm以上、そして、好ましくは1400ppm以下、より好ましくは1300ppm以下、更に好ましくは1200ppm以下である。
【0046】
洗浄液A中、(b)成分の含有量は、適切な殺菌性を発揮し工程Bで皮脂汚れ洗浄性向上に寄与する観点から、好ましくは40ppm以上、より好ましくは70ppm以上、更に好ましくは85ppm以上、更に好ましくは100ppm以上、そして、好ましくは750ppm以下、より好ましくは600ppm以下、更に好ましくは500ppm以下である。
【0047】
洗浄液A中、(c)成分を含む場合、(c)成分の含有量は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立の観点から、好ましくは50ppm以上、より好ましくは70ppm以上、更に好ましくは90ppm以上、更に好ましくは155ppm以上、そして、好ましくは1300ppm以下、より好ましくは1100ppm以下、更に好ましくは900ppm以下である。
【0048】
洗浄液A中、(c)成分として(c1)成分を含む場合、(c1)成分の含有量は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立の観点から、好ましくは50ppm以上、より好ましくは70ppm以上、更に好ましくは90ppm以上、更に好ましくは155ppm以上、そして、好ましくは1300ppm以下、より好ましくは1100ppm以下、更に好ましくは900ppm以下である。
【0049】
洗浄液A中、(c)成分として(c2)成分を含む場合、(c2)成分の含有量は、殺菌力を補助する観点から、好ましくは25ppm以上、より好ましくは35ppm以上、更に好ましくは45ppm以上、更に好ましくは55ppm以上、そして、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、更に好ましくは600ppm以下である。
【0050】
洗浄液Aにおいて、本発明の洗浄剤組成物において記載した各成分の質量比の範囲は、洗浄液A中の各成分の質量比の範囲にそのまま適用できる。
【0051】
洗浄液AのpHは、次亜塩素酸塩配合製品との混合リスク及び殺菌性の観点から、全界面活性剤の含有量が400ppm以上、好ましくは400ppm以上1500ppm以下の範囲にわたって、好ましくは3.5以上、より好ましくは3.6以上、更に好ましくは3.8以上、そして、5.7未満、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.3以下である。このpHは、洗浄液Aの温度が25℃のpHであってよい。pHの測定方法は前記した方法と同じである。
【0052】
洗浄液Aの調製に用いる水のアルカリ度は、pHを適切に制御する観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、そして、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは50以下である。
水のアルカリ度は下記の方法で測定することができる。
〔アルカリ度の測定方法〕
検水100mLを200mLビーカーにとり、指示薬としてブロモクレゾールグリーン-メチルレッド・エタノール溶液(和光純薬工業(株)製)を0.15mL加える。検水に残留塩素があるときは、あらかじめ検水100mLにチオ硫酸ナトリウム溶液(0.3w/v%)を加えて残留塩素を除いておく。この溶液を緩やかに攪拌しながら10mmol/L硫酸で、溶液の色が青から赤紫色になるまで滴定する。次式によってアルカリ度を算出する。
アルカリ度(CaCOmg/L)=a×10
ここで、a:滴定に要した10mmol/L硫酸(mL)
着色した試料など、指示薬による変色が明らかでない場合には、指示薬に代えてpH計を使用し、pH値が4.8までに要した10mmol/L硫酸量(mL)をaとする。
【0053】
洗浄液Aの調製に用いる水の硬度は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の観点から、ドイツ硬度で、好ましくは0.5°dH以上、より好ましくは1.0°dH以上、更に好ましくは2.0°dH以上、そして、好ましくは50°dH以下、より好ましくは40°dH以下、更に好ましくは30°dH以下である。
また、洗浄液Aの硬度が前記範囲であってよい。
【0054】
ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。
このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0055】
工程Aにおける洗浄液Aを調製する方法は、洗浄槽に繊維製品と、本発明の洗浄剤組成物又はそれを少量の水で混合したものを投入後、水を投入して洗浄液Aを調製する方法、又は洗浄槽に繊維製品と水を投入後、本発明の洗浄剤組成物を投入して洗浄液Aを調製する方法が挙げられ、洗浄剤をより濃い濃度で繊維製品を殺菌開始する観点から、洗浄槽に繊維製品と、本発明の洗浄剤組成物又はそれを少量の水で混合したものを投入後、水を投入して洗浄液Aを調製する方法が好ましい。本発明の繊維製品の洗浄方法において、洗濯機を用いる場合、本発明の洗浄剤組成物又はそれを少量の水で混合したものは直接洗浄槽に投入してもよく、又は洗剤投入口に投入してもよい。
【0056】
工程Aにおける殺菌時間は、殺菌性及び効率的な洗濯の観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、更に好ましくは10分以下である。
ここで殺菌時間は、洗浄液Aが調製され、且つ洗浄液Aが繊維製品と接触した時点を開始時点とし、工程Bにおいて、洗浄槽に更に水を投入開始するまでを終了時点とし、水の投入途中でも洗浄液Aが調製され次第、殺菌時間の開始時点となる。
【0057】
工程Aにおいて、繊維製品を殺菌する洗浄液Aの温度は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立および繊維のダメージ低減の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上、より更に好ましくは20℃以上、そして、好ましくは65℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0058】
工程Aが、洗浄槽に繊維製品と、本発明の洗浄剤組成物又はそれを少量の水で混合したものを投入後、水を投入して洗浄液Aを調製し、調製した洗浄液Aで前記繊維製品を殺菌する工程である場合、水の投入速度は、殺菌性及び効率的な洗濯の観点から、好ましくは2L/分以上、より好ましくは4L/分以上、更に好ましくは6L/分以上、そして、好ましくは22L/分以下、より好ましくは15L/分以下、更に好ましくは12L/分以下である。
【0059】
工程Aにおいて、繊維製品の質量(kg)と洗浄液Aの水量(リットル)の比で表される浴比の値、すなわち洗浄液Aの水量(リットル)/繊維製品の質量(kg)は、殺菌性及び繊維製品が十分に洗浄液Aに浸漬する観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
【0060】
工程Aにおいて、洗浄槽に繊維製品と前記洗浄剤組成物と水を投入して洗浄液Aを調製する時、及び調製した洗浄液Aで前記繊維製品を殺菌する時に、繊維製品に機械力等の外力を加えてよい。繊維製品に外力を加える方法は、回転式洗濯機を用いて、回転式洗浄を行うことが好ましい。回転式洗浄とは、洗浄槽を回転機器に固定し、回転機器に固定されていない繊維製品が洗浄液と共に、回転軸の周りに回転する洗浄方法を意味する。従って、本発明の繊維製品の洗浄方法は、回転式洗濯機を用いて行うことが好ましい。回転式洗濯機としては、具体的には、ドラム式洗濯機、パルセータ式洗濯機又はアジテータ式洗濯機が挙げられる。これらの回転式洗濯機は、それぞれ、家庭用として市販されているものを使用することができる。
【0061】
<工程B>
工程Bは、工程Aの後に、前記洗浄槽に更に水を投入し、全界面活性剤の含有量(すなわち、(a)成分、(b)成分の合計含有量)が250ppm以下、好ましくは50ppm以上250ppm以下であり、pHが5.7以上である、洗浄液Bを調製し、調製した洗浄液Bで前記繊維製品を洗浄する工程である。
【0062】
洗浄液B中、(a)成分の含有量は、皮脂汚れ洗浄性の観点から、好ましくは25ppm以上、より好ましくは31ppm以上、更に好ましくは38ppm以上、そして、好ましくは233ppm以下、より好ましくは217ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。
【0063】
洗浄液B中、(b)成分の含有量は、皮脂汚れ洗浄性の観点から、好ましくは5ppm以上、より好ましくは8ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、好ましくは125ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは80ppm以下である。
【0064】
洗浄液B中、(c)成分を含む場合、(c)成分の含有量は、洗浄液を中性付近に制御する観点から、好ましくは5ppm以上、より好ましくは7ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、好ましくは200ppm以下、より好ましくは170ppm以下、更に好ましくは150ppm以下である。
【0065】
洗浄液B中、(c)成分として(c1)成分を含む場合、(c1)成分の含有量は、洗浄液を中性付近に制御する観点から、好ましくは5ppm以上、より好ましくは7ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、好ましくは200ppm以下、より好ましくは170ppm以下、更に好ましくは150ppm以下である。
【0066】
洗浄液B中、(c)成分として(c2)成分を含む場合、(c2)成分の含有量は、洗浄液を中性付近に制御する観点から、好ましくは2ppm以上、より好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、そして、好ましくは150ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
【0067】
洗浄液Bにおいて、本発明の洗浄剤組成物において記載した各成分の質量比の範囲は、洗浄液B中の各成分の質量比の範囲にそのまま適用できる。
【0068】
洗浄液BのpHは、十分な皮脂汚れ洗浄性を発揮する観点から、全界面活性剤の含有量が250ppm以下、好ましくは50ppm以上250ppm以下の範囲にわたって、5.7以上、好ましくは5.9以上、より好ましくは6.0以上、そして、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.5以下である。このpHは、洗浄液Bの温度が25℃のpHであってよい。pHの測定方法は前記した方法と同じである。
【0069】
洗浄液Bの調製に用いる水のアルカリ度、及び硬度の範囲は、工程Aで記載した洗浄液Aの調製に用いる水のアルカリ度、及び硬度の範囲と同じである。
【0070】
工程Bにおける洗浄時間は、十分な皮脂汚れ洗浄性と繊維のダメージ低減の観点から、好ましくは2分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、更に好ましくは15分以下である。
ここで洗浄時間は、工程Aの後に洗浄槽に水を投入して洗浄液Bが調製された時点を開始時点とし、洗浄槽から洗浄液Bを廃液するまでを終了時点とし、水の投入途中でも洗浄液Bが調製され次第、洗浄時間の開始時点となる。
【0071】
工程Bにおいて、繊維製品を洗浄する洗浄液Bの温度は、殺菌性と皮脂汚れ洗浄性の両立、及び繊維のダメージ低減の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上、より更に好ましくは20℃以上、そして、好ましくは65℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0072】
工程Bにおいて、繊維製品の質量(kg)と洗浄液Bの水量(リットル)の比で表される浴比の値、すなわち洗浄液Bの水量(リットル)/繊維製品の質量(kg)は、皮脂汚れ洗浄性の観点から、好ましくは10を超え、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは20以下である。
【0073】
工程Bにおいて、洗浄槽に更に水を投入して洗浄液Bを調製する時、及び調製した洗浄液Bで前記繊維製品を洗浄する時に、繊維製品に機械力等の外力を加えてよい。繊維製品に外力を加える方法は、工程Aと同様に、回転式洗濯機を用いて、回転式洗浄を行うことが好ましい。
【0074】
本発明の繊維製品の洗浄方法では、工程A、及び工程Bを行った後に、繊維製品を水ですすぎ、乾燥させる。すすぎは、繊維製品の洗濯など、公知の方法に準じて水を用いて行えばよい。本発明のすすぎに用いられる水としては、特に限定されるものではないが、水道水、井戸水、イオン交換水、滅菌水、蒸留水等が挙げられる。本発明のすすぎに用いられる水は、工程A及び工程Bで用いた水であってよい。
【0075】
本発明の繊維製品の洗浄方法において、対象とする繊維製品は、本発明の洗浄剤組成物で記載したものと同じである。
また本発明の繊維製品の洗浄方法において、対象とする細菌は、本発明の洗浄剤組成物で記載したものと同じである。
【実施例0076】
[配合成分]
実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
<(a)成分>
・AS-NH4:ラウリル硫酸アンモニウム、「エマール AD-25」、花王(台湾)有限公司製、有効分25%
【0077】
<(b)成分>
・AES-Na:ポリオキシエチレン(2)ラウリルエ一テル硫酸ナトリウム、カッコ内はオキシエチレン基の平均付加モル数、(b1)成分、「エマール 227HP」、花王(株)製、有効分27%
・AEO10:Natural alcohol polyethylene glycol ether、オキシエチレン基の平均付加モル数は10モル、(b2)成分、「PANNOX 710」、PAN ASIA CHEMICAL CO.製
・AEO20:Natural alcohol polyethylene glycol ether、オキシエチレン基の平均付加モル数は20モル、(b2)成分、「PANNOX 720」、PAN ASIA CHEMICAL CO.製
・C12TMAC:ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、富士フイルム和光純薬(株)製
【0078】
<(c)成分>
・Benzoic acid:安息香酸、(c1)成分、CLogP:1.89、(株)伏見製薬所製
・Citric acid:クエン酸、(c2)成分、CLogP:-2.00、「Citric Acid(Monohydrate)」、San Fu Chemical CO.,LTD.製
・Lactic acid:乳酸、(c2)成分、CLogP:-0.73、「PURAC UltraPure 90」、Corbion製、有効分90%
・Sebacic acid:セバシン酸、CLogP:2.09、CASDA Biomaterials Co.,Ltd製
【0079】
<その他成分>
・HCl:塩酸、「Hydrochloric Acid Fuming 37%」、ACS,ISO,Reag. Ph Eur Grade、Merck KGaA製、有効分37%
・NaOH:水酸化ナトリウム、「Sodium hydroxide 45%」、China General Plastics Corporation製、有効分45%
・イオン交換水
【0080】
[洗浄剤組成物の調製]
表1~3に示す洗浄剤組成物の調製方法は下記の通りである。200mL容量のガラス製ビーカーに長さ3cmのテフロン製スターラーピースを投入し、次に表1~3に示す配合でイオン交換水、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を投入し、ウォーターバスで70℃に加熱しながら、100r/minで10分攪拌し、HCL又はNaOHでpHを調整し、各洗浄剤組成物を調製した。調製した各洗浄剤組成物の30℃におけるpHを表1~3に示す。なお表1~3に各洗浄剤組成物中、各成分の配合量はすべて有効分である。
【0081】
[外観安定性の評価]
調製後の表1~3の各液体洗浄剤組成物25gをNo.6のガラス製規格瓶に入れキャップを閉めた。室温を45℃の高温に設定し、静置して目視観察し、以下の基準で評価した。45℃の高温で静置から5分間、相分離しなければ外観安定性が良好であることがいえる。
透明:静置から5分以上経過後に相分離、または相分離しない。
相分離:静置から5分未満で相分離する。
【0082】
[低温安定性の評価]
調製後の表3の各液体洗浄剤組成物25gをNo.6のガラス製規格瓶に入れキャップを閉めた。5℃の低温の恒温槽で静置して目視観察し、以下の基準で評価した。5℃の低温で静置から一週間、相分離しなければ低温安定性が良好であることがいえる。
透明:静置から一週間以上経過後に相分離、または相分離しない。
相分離:静置から1週間未満で相分離
【0083】
[工程A]
アルカリ度の異なる水の調製方法
各洗浄剤組成物の希釈水に用いる、アルカリ度の異なる水を、以下の方法により調製した。
<アルカリ度=30>
塩化カルシウム二水和物で硬度2°dHに調整した水1Lあたり、炭酸水素ナトリウムを0.0538g入れ、HClでpHを7.5に調整して、アルカリ度が30の水を調製した。
<アルカリ度=40>
塩化カルシウム二水和物で硬度2°dHに調整した水1Lあたり、炭酸水素ナトリウムを0.0718g入れ、HClでpHを7.5に調整して、アルカリ度が40の水を調製した。
【0084】
以下に、各アルカリ度の異なる水のアルカリ度の測定方法を示す。
検水100mLを200mLビーカーにとり、指示薬としてブロモクレゾールグリーン-メチルレッド・エタノール溶液(和光純薬工業(株)製)を0.15mL加える。検水に残留塩素があるときは、あらかじめ検水100mLにチオ硫酸ナトリウム溶液(0.3w/v%)を加えて残留塩素を除いておく。この溶液を緩やかに攪拌しながら10mmol/L硫酸で、溶液の色が青から赤紫色になるまで滴定する。次式によってアルカリ度を算出する。
アルカリ度(CaCOmg/L)=a×10
ここで、a:滴定に要した10mmol/L硫酸(mL)
着色した試料など、指示薬による変色が明らかでない場合には、指示薬に代えてpH計を使用し、pH値が4.8までに要した10mmol/L硫酸量(mL)をaとする。
【0085】
洗浄液Aの調製
表1~3の各実施例、比較例に記載した指定のアルカリ度に調整した水を、121℃高圧水蒸気で20分間殺菌して無菌水とし、その無菌水で、各液体洗浄剤組成物を希釈し、洗浄液A中の全界面活性剤の含有量が表1~3に記載の量となるように調整して、各洗浄液Aを調製した。各洗浄液Aの30℃におけるpHを表1~3に示す。
【0086】
殺菌性の評価
「USP 51」を参考にして殺菌性の評価を実施した。白金耳で低温保存した黄色ブドウ球菌(ATCC6538株)液を採って、SCDLP寒天培地に接種し、37℃で18時間培養した。寒天培地からコロニーを採り、0.85%塩化ナトリウム水溶液に加え、濁度(OD600)を0.5に調整した懸濁液を菌液とした。
表1~3の各実施例、比較例で、全界面活性剤の含有量を400ppmに調整した洗浄液Aを、19.8ml滅菌遠心管に分注し、黄色ブドウ球菌(ATCC6538株)の菌液を0.2ml加えて、均一に混合した。混合後から1分間静置した後、当混合液と、当混合液を10倍、100倍、1000倍、10000倍に希釈した希釈液(いずれも0.85%塩化ナトリウム溶液で希釈)各0.1mlをSCDLP寒天培地に接種した。37℃で18時間培養した後、生菌数を定量した。対照試料は、洗浄液Aに代えて、上述の無菌水とした。以下の計算式により殺菌性を算出した。結果を表1~3に示す。本発明において、殺菌性(Δlog)が1以上の場合、殺菌性が良好と判定される。また表中、殺菌性(Δlog)が「>3」と表記しているのは、殺菌性(Δlog)が3を超えていることを意味する。
殺菌性(Δlog)=log(対照試料の生菌数)-log(洗浄液Aの生菌数)
【0087】
[工程B]
洗浄液Bの調製
表1~3の各実施例、比較例に記載した指定のアルカリ度に調整した水で、各液体洗浄剤組成物を希釈し、洗浄液B中の全界面活性剤の含有量が表1~3に記載の量となるように調整して、各洗浄液Bを調製した。各洗浄液Bの25℃におけるpHを表1~3に示す。
【0088】
洗浄性の評価
・モデル皮脂人工汚染布の調製
下記組成のモデル皮脂人工汚染液を布に付着させてモデル皮脂人工汚染布を調製した。モデル皮脂人工汚染液の布への付着は、グラビアロールコーターを用いて人工汚染液を布に印刷することで行った。モデル皮脂人工汚染液を布に付着させモデル皮脂人工汚染布を作製する工程は、グラビアロールのセル容量58cm/m、塗布速度1.0m/min、乾燥温度100℃、乾燥時間1minで行った。布は木綿2003(谷頭商店製)を使用した。
・モデル皮脂人工汚染液の組成:ラウリン酸0.4質量%、ミリスチン酸3.1質量%、ペンタデカン酸2.3質量%、パルミチン酸6.2質量%、ヘプタデカン酸0.4質量%、ステアリン酸1.6質量%、オレイン酸7.8質量%、トリオレイン13.0質量%、パルミチン酸n-ヘキサデシル2.2質量%、スクアレン6.5質量%、卵白レシチン液晶物1.9質量%、鹿沼赤土8.1質量%、カーボンブラック0.01質量%、水残部(合計100質量%)
【0089】
上記で作製したモデル皮脂人工汚染布(6cm×6cm)4枚を、ターゴトメーター(Ueshima製, MS-8212)にて、100rpmで10分間洗浄した。洗浄条件は、いずれも、ターゴトメーターに、モデル皮脂人工汚染布(6cm×6cm)4枚と、表1~3の各実施例、比較例で、全界面活性剤の含有量を150ppmに調整した洗浄液Bを1L投入し、水温は25℃で洗浄を行った。洗浄後、汚染布を、水道水(25℃)で3分間すすいだ。その後、二層式洗濯機を用いてすすぎ後の汚染布の脱水処理を1分間行った後、アイロンプレス機(株式会社イツミ社製)で乾燥させた。
【0090】
洗浄、乾燥後の各汚染布、洗浄前の汚染布、及びモデル皮脂人工汚染液付着前の原布を、測色色差計(日本電色株式会社製、ZE2000)を用いて、波長550nmにおける反射率を測定した。反射率は全て4枚の平均値とした。
測定した各反射率から、以下の式を用いて洗浄率(%)を算出した。結果を表1~3に示す。
洗浄率(%)=100×[(各洗浄液Bで洗浄した人工汚染布の反射率-洗浄前の人工汚染布の反射率)/(原布の反射率-洗浄前の人工汚染布の反射率)]
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】