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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099136
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】免震装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240718BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
F16F15/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002848
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 靖典
(72)【発明者】
【氏名】馮 徳民
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖史
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC17
2E139AC43
2E139AD03
2E139CA02
2E139CC02
2E139CC08
2E139CC11
3J048AA01
3J048AD05
3J048BA08
3J048BA18
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】免震装置の取付構造において、ボルトに作用する応力の低減を図る。
【解決手段】積層ゴム(免震用積層ゴム)11と、積層ゴム11の端部に設けられて構造物(支持部材)101,111に取付けられる取付プレート12,13とを有する免震装置10を備え、免震装置10は、ボルト14,15が取付プレート12,13を貫通して構造物101,111に固定されるナット16に螺合することで、構造物101,111に取付けられ、取付プレート12,13とナット16との間にボルト14,15が貫通する貫通孔17aを有する中間部材17が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震用積層ゴムと、
前記免震用積層ゴムの端部に設けられて支持部材に取付けられる取付プレートと、
を有する免震装置を備え、
前記免震装置は、ボルトが前記取付プレートを貫通して前記支持部材に固定されるナットに螺合することで、前記支持部材に取付けられ、
前記取付プレートと前記ナットとの間に前記ボルトが貫通する貫通孔を有する中間部材が設けられる、
免震装置の取付構造。
【請求項2】
前記中間部材は、円筒形状をなし、前記ナットと一体に構成される、
請求項1に記載の免震装置の取付構造。
【請求項3】
免震用積層ゴムと、
前記免震用積層ゴムの端部に設けられて支持部材に取付けられる取付プレートと、
を有する免震装置を備え、
前記免震装置は、ボルトが前記取付プレートを貫通して前記支持部材に固定されるナットに螺合することで、前記支持部材に取付けられ、
前記ボルトの頭部と前記取付プレートとの間に前記ボルトが貫通する貫通孔を有する中間部材が設けられる、
免震装置の取付構造。
【請求項4】
前記貫通孔は、軸方向の長さが前記ボルトの外径の0.5倍以上である、
請求項1または請求項2に記載の免震装置の取付構造。
【請求項5】
前記ボルトの外周面と前記貫通孔の内面との間に隙間が設けられる、
請求項1または請求項3に記載の免震装置の取付構造。
【請求項6】
前記取付プレートは、前記免震用積層ゴムの上部に設けられる上部取付プレートと、前記免震用積層ゴムの下部に設けられる下部取付プレートとを有し、
前記支持部材は、前記上部取付プレートが取付けられる上部支持部材と、前記下部取付プレートが取付けられる下部支持部材とを有し、
前記中間部材は、前記上部取付プレート側と前記下部取付プレート側の少なくともいずれか一方に設けられる、
請求項1または請求項3に記載の免震装置の取付構造。
【請求項7】
前記中間部材は、前記上部取付プレート側に設けられる上部中間部材と、前記下部取付プレート側に設けられる下部中間部材とを有する、
請求項6に記載の免震装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔、タワー、高層建物などの建築物は、地震動による力を受けたりすることで大きな揺れを生じやすい。そのため、建築物に入力する振動エネルギーを吸収するものとして免震装置が知られている。免震装置は、例えば、基礎と建築物との間に配置される。免震装置は、一般的に、複数のゴム板と鋼板とが複数重ね合わされて構成された積層ゴムを有する。免震装置は、積層ゴムの上下にそれぞれ取付プレートが固定されて構成される。そして、免震装置は、上下の取付プレートの外周部が複数のボルトによりそれぞれ基礎や建築物に締結される。このような免震装置としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-182091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
免震装置は、基礎と建築物に対して離間する方向の荷重が作用したとき、基礎と取付プレート、建築物と取付プレートとをそれぞれ締結する各ボルトに引張応力が作用して伸長する。このとき、取付プレートは、基礎や建築物の取付面に接触する外縁部を支点として弾性変形する。すなわち、取付プレートは、外縁部がてこの支点となり、ボルトによる締結位置がてこの作用点となる。そのため、取付プレートが変形すると、ボルトに引張応力が作用したときの伸長量が大きくなり、ボルトに大きな応力が作用してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、ボルトに作用する応力の低減を図る免震装置の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の免震装置の取付構造は、免震用積層ゴムと、前記免震用積層ゴムの端部に設けられて支持部材に取付けられる取付プレートと、を有する免震装置を備え、前記免震装置は、ボルトが前記取付プレートを貫通して前記支持部材に固定されるナットに螺合することで、前記支持部材に取付けられ、前記取付プレートと前記ナットとの間に前記ボルトが貫通する貫通孔を有する中間部材が設けられる。
【0007】
本発明の免震装置の取付構造の望ましい態様として、前記中間部材は、円筒形状をなし、前記ナットと一体に構成される。
【0008】
また、本発明の免震装置の取付構造は、免震用積層ゴムと、前記免震用積層ゴムの端部に設けられて支持部材に取付けられる取付プレートと、を有する免震装置を備え、前記免震装置は、ボルトが前記取付プレートを貫通して前記支持部材に固定されるナットに螺合することで、前記支持部材に取付けられ、前記ボルトの頭部と前記取付プレートとの間に前記ボルトが貫通する貫通孔を有する中間部材が設けられる。
【0009】
本発明の免震装置の取付構造の望ましい態様として、前記貫通孔は、軸方向の長さが前記ボルトの外径の0.5以上である。
【0010】
本発明の免震装置の取付構造の望ましい態様として、前記ボルトの外周面と前記貫通孔の内面との間に隙間が設けられる。
【0011】
本発明の免震装置の取付構造の望ましい態様として、前記取付プレートは、前記免震用積層ゴムの上部に設けられる上部取付プレートと、前記免震用積層ゴムの下部に設けられる下部取付プレートとを有し、前記支持部材は、前記上部取付プレートが取付けられる上部支持部材と、前記下部取付プレートが取付けられる下部支持部材とを有し、前記中間部材は、前記上部取付プレート側と前記下部取付プレート側の少なくともいずれか一方に設けられる。
【0012】
本発明の免震装置の取付構造の望ましい態様として、前記中間部材は、前記上部取付プレート側に設けられる上部中間部材と、前記下部取付プレート側に設けられる下部中間部材とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の免震装置の取付構造によれば、ボルトに作用する応力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態の免震装置を表す概略構成図である。
図2図2は、免震装置の取付構造を表す縦断面図である。
図3図3は、荷重が作用したときの下部取付プレートの変形状態を表す縦断面図である。
図4図4は、第2実施形態の免震装置の取付構造を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる、均等の範囲のものが含まれる。さらに、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0016】
[第1実施形態]
<免震装置の構成>
図1は、第1実施形態の免震装置を表す概略図である。
【0017】
図1に示すように、第1実施形態の免震装置10は、上部構造物(支持部材、上部支持部材)101と下部構造物(支持部材、下支持部材)111との間に配置される。免震装置10は、上部が上部構造物101の下面102に固定され、下部が下部構造物111の上面112に固定される。ここで、上部構造物101は、例えば、建築物であり、下部構造物111は、例えば、基礎(コンクリート構造物など)である。但し、上部構造物101は、建築物の下部に固定された別の構造物であってもよく、下部構造物111は、基礎の上面に固定された別の構造物であってもよい。また、免震装置10は、基礎と建築物との間に配置されるだけでなく、例えば、建築物の低層部と高層部との間など建築物の各階層の間に配置してもよい。
【0018】
免震装置10は、積層ゴム(免震用積層ゴム)11と、上部取付プレート(取付プレート)12と、下部取付プレート(取付プレート)13とを備える。
【0019】
積層ゴム11は、複数のゴム板と複数の鋼板とを厚さ方向(鉛直方向)に交互に積み重ねたものである。上部取付プレート12は、積層ゴム11の上面に一体に固定される。下部取付プレート13は、積層ゴム11の下面に一体に固定される。
【0020】
積層ゴム11は、鉛直軸線Oを中心とする円柱形状をなす。上部取付プレート12および下部取付プレート13は、鉛直軸線Oを中心とする円板形状をなす。上部取付プレート12および下部取付プレート13は、外径が積層ゴム11の外径より大きい。但し、積層ゴム11は、円柱形状に限らず、角柱形状であってもよい。また、上部取付プレート12および下部取付プレート13は、円板形状に限らず、多角形板形状であってもよい。
【0021】
免震装置10は、上部取付プレート12の上面が上部構造物101の下面102に密着し、複数の上部ボルト14により上部構造物101に締結される。複数の上部ボルト14は、上部取付プレート12の外周部に周方向に間隔を空けて複数配置され、上部取付プレート12を貫通して上部構造物101に螺合する。また、免震装置10は、下部取付プレート13の下面が下部構造物111の上面112に密着し、複数の下部ボルト15により下部構造物111に締結される。複数の下部ボルト15は、下部取付プレート13の外周部に周方向に間隔を空けて複数配置され、下部取付プレート13を貫通して下部構造物111に螺合する。
【0022】
地震発生時、上部構造物101と下部構造物111との間に水平方向などの相対変位が発生する。免震装置10は、積層ゴム11によって水平方向などに変位する上部構造物101の揺れを吸収し、下部構造物111から上部構造物101への振動エネルギーの伝達を遮断し、上部構造物101の揺れを低減する。
【0023】
<免震装置の取付構造>
図2は、免震装置の取付構造を表す縦断面図である。
【0024】
以下で、免震装置10の取付構造について説明するが、ここでは、積層ゴム11の下部に固定された下部取付プレート13と下部構造物111との間の取付構造について説明する。なお、積層ゴム11の上部に固定された上部取付プレート12と上部構造物101との間の取付構造についてもほぼ同様の構造である。
【0025】
図2に示すように、免震装置10は、積層ゴム11と、上部取付プレート12(図1参照)と、下部取付プレート13とを備える。第1実施形態の免震装置の取付構造は、下部構造物111にナット16が固定されており、下部ボルト15が鉛直方向の上方から下方に向けて下部取付プレート13を貫通してナット16に螺合することで、免震装置10が下部構造物111に取付けられる。そして、第1実施形態の免震装置の取付構造は、下部取付プレート13とナット16との間に下部ボルト15が貫通する貫通孔17aを有する下部中間部材17が設けられる。
【0026】
下部構造物111は、上面112に鉛直方向の下方に凹む凹部113が形成される。凹部113は、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする円板形状をなす。凹部113は、外径が下部取付プレート13より大きい。アンカープレート21は、鉛直軸線O(図1参照)を中心とするリング形状または円板形状をなす。アンカープレート21は、外径が下部取付プレート13より大きく、凹部113とほぼ同径である。なお、上部取付プレート12が多角形板形状であった場合、凹部113とアンカープレート21も上部取付プレート12と同形状であることが好ましい。この場合であっても、アンカープレート21の外縁部が下部取付プレート13の外縁部より径方向の外側に位置する。アンカープレート21は、下部構造物111の凹部113に配置されて固定される。第1実施形態では、アンカープレート21は、上面21aが下部構造物111の上面112と鉛直方向に段差なく平坦面として連続している。但し、アンカープレート21は、上面21aと下部構造物111の上面112との間に鉛直方向の段差があってもよい。
【0027】
なお、下部構造物111に凹部113やアンカープレート21を設けなくてもよい。この場合、免震装置10は、下部取付プレート13が下部構造物111の上面112に直接密着させて固定されることとなる。
【0028】
下部取付プレート13は、円板形状をなし、外径が積層ゴム11の外径より大きく、アンカープレート21の外径より小さい。下部取付プレート13は、積層ゴム11より径方向の外方である外周部に鉛直方向に沿う取付孔31が形成される。取付孔31は、鉛直軸線O1を中心とする円形孔であり、下部取付プレート13を板厚方向に貫通する。取付孔31は、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて複数形成される。下部取付プレート13は、上面13aと下面13bとが平行をなす。すなわち。下部取付プレート13は、水平方向の各位置で厚さが一定である。下部取付プレート13は、アンカープレート21上に載置される。このとき、下部取付プレート13の下面13bとアンカープレート21の上面21aが密着する。
【0029】
下部構造物111は、アンカープレート21の下方に袋ナット41が埋設される。袋ナット41は、円筒形状をなし、鉛直方向の上方が開口し、鉛直方向の下方が閉塞する。袋ナット41は、上述したナット16と、下部中間部材17とを有する。すなわち、袋ナット41は、ナット16と下部中間部材17が一体に構成される。ナット16は、内周面に雌ねじ部16aが形成され、軸方向の一端部(下端部)に閉塞部16bが設けられる袋ナット形状をなす。下部中間部材17は、円筒形状をなし、貫通孔17aが形成される。ナット16の上部に下部中間部材17が一体に設けられて袋ナット41が構成される。このとき、ナット16の中心と下部中間部材17の中心は、一致する。そして、下部中間部材17の貫通孔17aは、内径がナット16における雌ねじ部16aの内径より大きい。
【0030】
袋ナット41は、下部取付プレート13に形成された複数の取付孔31とほぼ同位置に配置される。すなわち、複数の袋ナット41は、鉛直軸線O1に沿って設けられ、取付孔31と同様に、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて形成される。なお、第1実施形態では、袋ナット41を突起付き袋ナットとしたが、この構成に限るものではなく、例えば、突起付きボルトなどであってもよい。また、一般的なナットであってもよい。
【0031】
また、アンカープレート21は、下部取付プレート13の各取付孔31と各袋ナット41の位置に貫通孔22が形成される。貫通孔22は、鉛直軸線O1に沿って貫通するように形成され、取付孔31や袋ナット41と同様に、鉛直軸線O(図1参照)を中心とする周方向に間隔(好ましくは、等間隔)を空けて形成される。すなわち、下部取付プレート13の取付孔31と、アンカープレート21の貫通孔22と、袋ナット41とは、鉛直軸線O1上に配置される。なお、取付孔31と貫通孔22と貫通孔17aは、内径が同径であるが、異なる径であってもよい。
【0032】
下部ボルト15は、頭部15aと、軸部15bと、雄ねじ部15cとを有する。頭部15aは、外径が下部取付プレート13の取付孔31、アンカープレート21の貫通孔22、下部中間部材17の貫通孔17aの各内径より大きい。軸部15bおよび雄ねじ部15cは、外径が下部取付プレート13の取付孔31、アンカープレート21の貫通孔22、下部中間部材17の貫通孔17aの各内径より小さい。下部ボルト15は、鉛直方向の上方から先端部(下端部)が下部取付プレート13の取付孔31およびアンカープレート21の貫通孔22に挿通され、雄ねじ部15cが袋ナット41を構成するナット16の雌ねじ部16aに螺合する。このとき、下部ボルト15の頭部15aと下部取付プレート13の上面13aとの間にワッシャ15dが配置される。下部取付プレート13が下部ボルト15により下部構造物111に締結されることで、免震装置10が下部構造物111に固定される。
【0033】
このとき、下部ボルト15は、下部取付プレート13の取付孔31、アンカープレート21の貫通孔22、下部中間部材17の貫通孔17aに挿通され、雄ねじ部15cがナット16の雌ねじ部16aに螺合する。そして、下部ボルト15は、軸部15bの外周面が、下部取付プレート13の取付孔31の内周面、アンカープレート21の貫通孔22の内周面、下部中間部材17の貫通孔17aの内周面には接触しない。すなわち、下部ボルト15の軸部15bの外周面と下部取付プレート13の取付孔31の内周面との間に、径方向に沿う隙間S1が確保される。また、下部ボルト15の軸部15bの外周面とアンカープレート21の貫通孔22の内周面との間に、径方向に沿う隙間S2が確保される。また、下部ボルト15の軸部15bの外周面と下部中間部材17の貫通孔17aの内周面との間に、径方向に沿う隙間S3が確保される。
【0034】
下部ボルト15は、下部取付プレート13とアンカープレート21と下部中間部材17を貫通してナット16に螺合する。そのため、下部ボルト15は、頭部15aと雄ねじ部15cとの間で、下部取付プレート13とアンカープレート21と下部中間部材17を貫通している部分が非拘束状態となる。すなわち、下部ボルト15は、軸部15bと雄ねじ部15cの一部とを合わせた軸方向の長さLの領域が下部取付プレート13とアンカープレート21と下部中間部材17に接触せずに、伸びや曲げが拘束されない非拘束領域となる。
【0035】
そして、下部中間部材17は、円筒形状をなし、貫通孔17aの内径が下部ボルト15の軸部15bの外径より大きく、隙間S3が形成される。そして、下部中間部材17は、貫通孔17aの軸方向の長さL1が下部ボルト15の軸部15bまたは雄ねじ部15cの外径の0.5倍以上であることが好ましい。具体的に、貫通孔17aの長さL1は、下部ボルト15の軸部15bまたは雄ねじ部15cの外径の0.5倍以上で、2倍以下であることが好ましい。なお、袋ナット41にて、下部中間部材17の貫通孔17aの長さL1は、ナット16の雌ねじ部16aの長さL2より長いことが好ましい。また、隙間S3は、1mm~3mm程度の範囲内とすることが好ましい。
【0036】
なお、第1実施形態では、下部中間部材17を円筒形状とし、ナット16と一体に構成された袋ナット41を用いたが、この構成に限定されるものではない。例えば、下部中間部材17を円筒部材とし、ナット16を袋ナットとして、下部中間部材17とナット16と別体に構成してもよい。また、下部中間部材17は、複数のナット16の位置にそれぞれ設けられるものであり、複数配置される。そのため、下部取付プレート13と同様に、複数の下部中間部材17が鉛直軸線O1を中心とした周方向に間隔を空けて一体に配置された円板形状であってもよい。
【0037】
また、上述の説明では、下部取付プレート13が密着するアンカープレート21とナット16との間に下部中間部材17を配置したが、アンカープレート21が設けられていない場合、下部取付プレート13とナット16との間に下部中間部材17が配置されることとなる。
【0038】
また、上述の説明では、免震装置10の下部取付プレート13と下部構造物111との間の取付構造にて、下部中間部材17について説明したが、免震装置10の上部取付プレート12と上部構造物101との間の取付構造にて、図示しないが、上部中間部材が設けられる。
【0039】
<免震装置の作動>
図3は、荷重が作用したときの下部取付プレートの変形状態を表す縦断面図である。
【0040】
図2に示すように、上部構造物101と下部構造物111との間に離間する方向(例えば、水平方向)の荷重が作用すると、免震装置10は、下部構造物111に対して上方への引張応力が作用することがある。すると、免震装置10は、下部取付プレート13がこの引張応力により弾性変形する。すなわち、図3に示すように、下部ボルト15が上方への引張応力を受けて軸方向の上方に伸長すると、下部取付プレート13は、下部ボルト15により下部構造物111に締結された部分が上方に移動するように変形する。つまり、下部取付プレート13は、外縁部とアンカープレート21の上面21aとの交点を支点として、図3にて時計回り方向に若干回動する。すると、下部取付プレート13は、下部ボルト15による締結位置が上方に移動し、下部ボルト15に軸方向の引張応力が作用する。
【0041】
下部取付プレート13(アンカープレート21)とナット16との間に下部中間部材17が設けられることで、下部ボルト15の軸部15bの外周面と下部中間部材17の貫通孔17aの内周面との間に隙間S3が設けられている。すなわち、下部ボルト15は、軸部15bと雄ねじ部15cの一部とを合わせた軸方向の長さLの領域が非拘束領域となっている。そのため、下部ボルト15は、軸方向の引張応力を受けたとき、非拘束領域である長さLの領域で伸長することとなり、単位長さ当たりの伸長量が低減され、下部ボルト15に作用する応力が低減される。
【0042】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の免震装置の取付構造を表す縦断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図4に示すように、第2実施形態の免震装置の取付構造は、第1実施形態と同様に、下部構造物111に袋ナット42が固定されており、下部ボルト15が鉛直方向の上方から下方に向けて下部取付プレート13を貫通して袋ナット42に螺合することで、免震装置10が下部構造物111に取付けられる。そして、第2実施形態の免震装置の取付構造は、下部ボルト15の頭部15aと下部取付プレート13との間に下部ボルト15が貫通する貫通孔18aを有する下部中間部材18が設けられる。
【0044】
第2実施形態にて、下部取付プレート13を有する免震装置10と、アンカープレート21を有する下部構造物111は、第1実施形態とほぼ同様である。但し、下部構造物111は、アンカープレート21の下方に袋ナット42が埋設される。袋ナット42は、第1実施形態のナット16とほぼ同様であって雌ねじ部42aを有し、下部中間部材17は設けられていない。
【0045】
下部中間部材18は、円筒形状をなし、貫通孔18aを有する。下部中間部材18は、下部ボルト15の頭部15aと下部取付プレート13との間に配置される。具体的に、下部中間部材18は、下部ボルト15の軸部15bに装着されるリング形状のワッシャ15dと下部取付プレート13との間に配置される。下部中間部材18は、外径が下部ボルト15の頭部15aの外径やワッシャ15dの外径より大きい。
【0046】
下部ボルト15は、鉛直方向の上方から先端部(下端部)がワッシャ15d、下部中間部材18の貫通孔18a、下部取付プレート13の取付孔31、アンカープレート21の貫通孔22に挿通され、雄ねじ部15cが袋ナット42の雌ねじ部42aに螺合する。下部取付プレート13が下部ボルト15により下部構造物111に締結されることで、免震装置10が下部構造物111に固定される。
【0047】
このとき、下部ボルト15は、軸部15bの外周面が、下部中間部材18の貫通孔18aの内周面、下部取付プレート13の取付孔31の内周面、アンカープレート21の貫通孔22の内周面、には接触しない。すなわち、下部ボルト15の軸部15bの外周面と下部取付プレート13の取付孔31の内周面との間に、径方向に沿う隙間S1が確保される。また、下部ボルト15の軸部15bの外周面とアンカープレート21の貫通孔22の内周面との間に、径方向に沿う隙間S2が確保される。また、下部ボルト15の軸部15bの外周面と下部中間部材18の貫通孔18aの内周面との間に、径方向に沿う隙間S4が確保される。
【0048】
下部ボルト15は、下部中間部材18と下部取付プレート13とアンカープレート21を貫通して袋ナット42に螺合する。そのため、下部ボルト15は、頭部15aと雄ねじ部15cとの間で、下部中間部材18と下部取付プレート13とアンカープレート21を貫通している部分が非拘束状態となる。すなわち、下部ボルト15は、軸部15bと雄ねじ部15cの一部とを合わせた軸方向の長さLの領域が下部中間部材18と下部取付プレート13とアンカープレート21に接触せずに、伸びや曲げが拘束されない非拘束領域となる。
【0049】
そして、下部中間部材18は、円筒形状をなし、貫通孔18aの内径が下部ボルト15の軸部15bの外径より大きく、隙間S4が形成される。そして、下部中間部材18は、貫通孔18aの軸方向の長さL1がボルト15の軸部15bまたは雄ねじ部15cの外径の0.5倍以上であることが好ましい。下部中間部材18の貫通孔18aの長さL1は、袋ナット42の雌ねじ部42aの長さL2より長いことが好ましい。
【0050】
なお、第2実施形態では、下部中間部材18を円筒形状としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、下部取付プレート13と同様に、複数の下部中間部材18が鉛直軸線O1を中心とした周方向に間隔を空けて一体に配置された円板形状であってもよい。
【0051】
また、上述の説明では、免震装置10の下部取付プレート13と下部構造物111との間の取付構造にて、下部中間部材18について説明したが、免震装置10の上部取付プレート12と上部構造物101との間の取付構造にて、図示しないが、上部中間部材が設けられる。
【0052】
なお、免震装置10の作動は、第1実施形態とほぼ同様である。すなわち、下部ボルト15の頭部15aと下部取付プレート13との間に下部中間部材18が設けられることで、下部ボルト15の軸部15bの外周面と下部中間部材18の貫通孔18aの内周面との間に隙間S3が設けられている。すなわち、下部ボルト15は、軸部15bと雄ねじ部15cの一部とを合わせた軸方向の長さLの領域が非拘束領域となっている。そのため、下部ボルト15は、軸方向の引張応力を受けたとき、非拘束領域である長さLの領域で伸長することとなり、単位長さ当たりの伸長量が低減され、下部ボルト15に作用する応力が低減される。
【0053】
[本実施形態の作用効果]
第1実施形態の免震装置の取付構造は、積層ゴム(免震用積層ゴム)11と、積層ゴム11の端部に設けられて構造物(支持部材)101,111に取付けられる取付プレート12,13とを有する免震装置10を備え、免震装置10は、ボルト14,15が取付プレート12,13を貫通して構造物101,111に固定されるナット16に螺合することで、構造物101,111に取付けられ、取付プレート12,13とナット16との間にボルト14,15が貫通する貫通孔17aを有する中間部材17が設けられる。
【0054】
第1実施形態の免震装置の取付構造によれば、免震装置10に対して引張応力が作用し、例えば、下部取付プレート13が変形すると、下部取付プレート13は、外縁部を支点として回動する。このとき、取付プレート12,13とナット16との間に中間部材17が設けられていることで、下部ボルト15は、中間部材17の長さだけ非拘束領域が増加している。そのため、下部ボルト15は、軸方向の引張応力を受けたとき、非拘束領域である長さLの領域で伸長することとなり、単位長さ当たりの伸長量が低減され、下部ボルト15に作用する応力の低減を図ることができる。
【0055】
第1実施形態の免震装置の取付構造は、中間部材17は、円筒形状をなし、ナット16と一体に構成される。そのため、ナット16と中間部材17とを一体に構成した袋ナット41を適用することで、構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる。
【0056】
また、第2実施形態の免震装置の取付構造は、積層ゴム(免震用積層ゴム)11と、積層ゴム11の端部に設けられて構造物(支持部材)101,111に取付けられる取付プレート12,13とを有する免震装置10を備え、免震装置10は、ボルト14,15が取付プレート12,13を貫通して構造物101,111に固定されるナット16に螺合することで、構造物101,111に取付けられ、ボルト14,15の頭部と取付プレート12,13との間にボルト14,15が貫通する貫通孔18aを有する中間部材18が設けられる。
【0057】
第2実施形態の免震装置の取付構造によれば、免震装置10に対して引張応力が作用し、例えば、取付プレート12,13が変形すると、取付プレート12,13は、外縁部を支点として回動する。このとき、ボルト14,15の頭部と取付プレート12,13との間に中間部材18が設けられていることで、下部ボルト15は、中間部材18の長さだけ非拘束領域が増加している。そのため、下部ボルト15は、軸方向の引張応力を受けたとき、非拘束領域である長さLの領域で伸長することとなり、単位長さ当たりの伸長量が低減され、下部ボルト15に作用する応力の低減を図ることができる。
【0058】
第1実施形態および第2実施形態(以下、本実施形態と称する。)の免震装置の取付構造は、貫通孔17a,18aの軸方向の長さがボルト14,15の外径の0.5倍以上である。そのため、ボルト14,15が拘束されずに伸長することができる領域を効果的に増加させることができる。
【0059】
本実施形態の免震装置の取付構造は、ボルト14,15の外周面と貫通孔17a,18aの内面との間に隙間S3,S4が設けられる。そのため、ボルト14,15が拘束されずに伸長することができる領域を適切に形成させることができる。
【0060】
本実施形態の免震装置の取付構造は、積層ゴム11の上部に設けられて上部構造物101に取付けられる上部取付プレート12と、積層ゴム11の下部に設けられて下部構造物111に取付けられる下部取付プレート13とを有し、上部取付プレート12が取付けられる上部構造物101と、下部取付プレート13が取付けられる下部構造物111とを有し、中間部材17,18は、上部取付プレート12側と下部取付プレート13側の少なくともいずれか一方に設けられる。そのため、上部ボルト14と下部ボルト15の少なくともいずれか一方側でボルト14,15に作用する応力を低減することができる。
【0061】
本実施形態の免震装置の取付構造は、上部取付プレート12側に設けられる上部中間部材と、下部取付プレート13側に設けられる下部中間部材17,18とを有する。そのため、免震装置10は、上部取付プレート12側と下部取付プレート13側の両方で、ボルト14,15に作用する応力を低減することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態では、上部構造物101側に上部中間部材を設け、下部構造物111側に下部中間部材17,18を設けたが、上部構造物101側と下部構造物111側の少なくともいずれか一方に設けられていればよい。例えば、上部構造物101と下部構造物111のうちの強度が低い側の構造物に適用することが望ましい。
【0063】
また、上述した実施形態では、第1実施形態として、中間部材17を適用し、第2実施形態にて、中間部材18を適用したが、第3実施形態として、中間部材17と中間部材18の両方を適用してもよい。また、第4実施形態として、上部構造物101側と下部構造物111側の一方に中間部材17を適用し、他方に中間部材18を適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 免震装置
11 積層ゴム(免震用積層ゴム)
12 上部取付プレート(取付プレート)
13 下部取付プレート(取付プレート)
14 上部ボルト
15 下部ボルト
16 ナット
17,18 下部中間部材
17a,18a 貫通孔
21 アンカープレート
22 貫通孔
31 取付孔
41,42 袋ナット
101 上部構造物(支持部材)
102 下面
111 下部構造物(支持部材)
112 上面
S1,S2,S3 隙間
図1
図2
図3
図4