IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャプシュゲル・ベルジウム・エヌ・ヴィの特許一覧

<>
  • 特開-不透明化剤を含むカプセル 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009915
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】不透明化剤を含むカプセル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20240116BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240116BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240116BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/32
A23L5/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175654
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2020564215の分割
【原出願日】2019-05-14
(31)【優先権主張番号】18172133.3
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512054458
【氏名又は名称】キャプシュゲル・ベルジウム・エヌ・ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】リージャナ・パランジェティック
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ・ノンブル
(72)【発明者】
【氏名】ステファーン・ヤーク・ファンクイッケンボルネ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光透過率が低減された不透明なカプセルのような、摂取可能な剤形物品を提供する。
【解決手段】カプセル形成組成物であって:ゼラチン、多糖、加工デンプン、セルロース誘導体または合成ポリマーからなる群から選択される皮膜形成剤;および該カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして3~10重量%の間の量の、炭酸カルシウムの形態の不透明化剤を含む前記カプセル形成組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル形成組成物であって:
- ゼラチン、多糖、加工デンプン、セルロース誘導体または合成ポリマーからなる群から選択される皮膜形成剤;および
- 該カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして3~10重量%の間の量の、炭酸カルシウムの形態の不透明化剤
を含む前記カプセル形成組成物。
【請求項2】
前記不透明化剤は、カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして、4.5~6.5重量%のような、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間の量で存在する、請求項1に記載のカプセル形成組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムは、略球形または多面体の粒子形状を有する、請求項1または2に記載のカプセル形成組成物。
【請求項4】
前記CaCOは、0.2~2.0μmの間のメジアン粒径を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のカプセル形成組成物。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムは沈降炭酸カルシウムの形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載のカプセル形成組成物。
【請求項6】
前記皮膜形成剤は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロースまたはそれらの組合せのようなセルロース系作用剤、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである;あるいはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール/オキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルピロリドンのような合成ポリマーである;あるいはゼラチン、コラーゲン、ゼイン、カゼイン、ダイズタンパク質、またはリョクトウタンパク質、エンドウマメタンパク質、コムギタンパク質のようなポリペプチド-(タンパク質-)系ポリマーである;あるいは多糖、好ましくはプルラン、デンプン、セルロース、またはデキストランである;あるいはアクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー、ポリアクリル酸、またはポリメタクリル酸メチルのようなアクリレート系および/または(メタ)アクリレート系ポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載のカプセル形成組成物。
【請求項7】
ゲル化剤、ゲル化助剤、粘度調整剤、消泡助剤、可塑剤、滑沢剤、着色剤、溶媒、溶媒助剤、界面活性剤、分散剤、可溶化剤、安定化剤、矯正剤、甘味剤、吸着剤、粘着剤、酸化防止剤、消毒剤、保存剤、乾燥剤、香味剤、芳香剤、抗酸化剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、放出制御剤のような1種またはそれ以上の添加剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のカプセル形成組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のカプセル形成組成物から形成されるカプセル。
【請求項9】
ゼラチン系、プルラン系またはHPMC系カプセルである、請求項8に記載のカプセル。
【請求項10】
光透過率が低減されたカプセルを製作する方法であって、請求項1~7のいずれか1項
に記載の皮膜形成組成物を用意すること、および浸漬コーティングプロセスを使用してカプセルを形成することを含む前記方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膜形成組成物を製造する方法であって:
a)炭酸カルシウム不透明化剤の水性分散体を、混合によって調製する工程;
b)ゼラチン、多糖、加工デンプン、セルロース誘導体もしくは合成ポリマー、またはそれらの組合せの群から選択される1種またはそれ以上の皮膜形成剤を含む皮膜形成配合物を調製する工程;
c)工程a)の該水性分散体を工程b)の該溶液に添加する工程;および
d)得られた工程c)の分散体を混合し、それにより、該皮膜形成組成物を得る工程
を含む前記方法。
【請求項12】
工程c)は、2工程:c1)工程b)の皮膜形成配合物の一部を工程a)の分散体に添加して、スラリーを形成する工程、およびc2)前記スラリーを皮膜形成配合物の残部に添加する工程で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
皮膜形成剤は、ゼラチン、プルラン、HPMCASまたはHPMCを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
不透明化剤は、皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間の量で存在する、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
カプセルを作製する方法であって:
a)請求項11~14のいずれか1項に記載の方法に従って皮膜形成組成物を製造する工程、および
b)浸漬成形によってカプセルを製作する工程
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不透明なカプセルまたはカプセル殻の製造のための配合物、およびそれから作製される不透明なカプセルに関する。前記カプセルは、良好な機械的性質を保持しながら内部の成分を光から遮蔽する。本発明はまた、そのようなカプセルを作製する方法、および成分の送達のためのその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ある特定の薬剤、または栄養補助食品などのような他の活性成分は、光による劣化を受けやすく、光を遮蔽するように保管する必要がある。それ故、カプセル内では、カプセルの不透明性が光遮蔽(light-shielding)を制御する。先行技術では一般に、カプセル殻において不透明性を生み出すために二酸化チタン(TiO)が使用される。
【0003】
新規な製品の継続的な探索が原動力となり、よく知られている不透明化剤の代わりになるものが探し求められた。
【0004】
多くの不透明化剤があるが、それらの不透明化能力には限りがあるため、それらの全てが、製作、加工および活性成分の充填に必要な機械的強度を維持しながら良好な遮光(light blocking)性を備えるカプセルをもたらすわけではない。
【0005】
CaCOは、複数の特許または特許出願、例えば:特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8および特許文献9において、不透明化剤、遮光剤、光遮蔽材料または顔料になり得る多くの候補のうちの1つと定義されている。しかしながら、これらの文献のいずれも、カプセル殻基材の何らかのコーティングにCaCOを適用するのではなく、カプセル配合物自体にCaCOを組み入れる場合に、カプセルの不透明化効果と機械的強度の保持との両方を獲得することについて、CaCOを用いた実験での成功を記述していない。特許文献10は、HPMC系カプセルにおける不透明化剤としての乳酸カルシウムの使用を開示している。しかしながら、前記乳酸カルシウムは屈折率が幾分低く、それ故、十分な不透明度が得られない。そのようなカプセルの機械的強度については情報が記載されていない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、光遮蔽能を備え、TiOを使用する必要がなく、依然として良好な機械的性質を維持しているカプセルを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP1580229A1
【特許文献2】WO2011143347
【特許文献3】WO2015174868A1
【特許文献4】EP1502588A1
【特許文献5】US3784684
【特許文献6】EP1757275A1
【特許文献7】JP2003300872A
【特許文献8】US200244970A1
【特許文献9】US20100021535A1
【特許文献10】EP1574220A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、カプセルの製作、保管、加工、充填などに必要な機械的安定性を保持しながら、前記カプセルの光透過率を減少させる不透明化剤の選択に焦点を当てたカプセル殻配合物設計に関する。
【0009】
本発明者らは、炭酸カルシウム(CaCO)が、特定の濃度範囲で存在する場合、カプセルの良好な不透明性と良好な機械的性質との間の最高のバランス、即ち不透明化レベルと機械的強度レベルとについての最高のバランスをもたらすことを確立した。
【0010】
これは意外であった。なぜなら、多くの刊行物が、不透明化剤として炭酸カルシウムを使用することの可能性を報告しているが、不透明化剤がカプセル形成配合物の中に混合される場合に、不透明性と機械的強度との両方に対する実際の結果が示されていないからである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、この問題について広範な調査を行った上で、今般、以下の本発明の態様を提示する:
【0012】
態様1.カプセル形成組成物であって:
- ゼラチン、多糖、加工デンプン、セルロース誘導体もしくは合成ポリマーまたはそれらの組合せからなる群から選択される皮膜形成剤;および
- カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして3~10重量%の間の量の、炭酸カルシウム、好ましくは沈降炭酸カルシウムの形態の不透明化剤
を含むカプセル形成組成物。
【0013】
態様2.前記不透明化剤は、カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして、4.5~6.5重量%のような、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間の量で存在する、態様1に記載のカプセル形成組成物。
【0014】
態様3.前記炭酸カルシウムは、略球形(round)または多面体の(prismatic)粒子形状を有する、態様1または2に記載のカプセル形成組成物。特定の実施形態では、炭酸カルシウムは球形または多面体の均一な小粒子を包含する。
【0015】
態様4.前記CaCOは、0.2~2.0μmの間のメジアン粒径または約10μm以下のD4,3粒径を有する、態様1~3のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0016】
平均粒径は、0.5~1.5μmの間のような0.2~2μmの間、より好ましくは0.3~1.2μmの間、より好ましくは約1μmのような0.4~1.1μmの間の「D50」(Dv50)メジアン粒径として表すことができる。
【0017】
代替として、粒子は、約10μm以下、より好ましくは、約6μm以下または約4μm以下のような約8μm以下、より特定すると1~10μmの間または1~8μmの間、好ましくは2~6μmの間、より好ましくは約4μm、例えば3.5~4.5μmの間の「D4,3」粒径を有することができる。
【0018】
一実施形態では、粒径分布は粒径スパンとして定義され、その粒径スパンは可能な限り小さい。好ましくは、前記スパンは、10未満のような15未満、好ましくは8未満、より好ましくは6未満である。
【0019】
態様5.約10%の炭酸カルシウム濃度を有し、通常、20%以上の不透明度係数を有する、態様1~4のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。約5%の炭酸カルシウム濃度を有する態様1~4のいずれか1項に記載のカプセル形成組成物は、通常、15%以上の不透明度係数を有することになる。代替として、態様1~4のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物は、カプセルが10%の炭酸カルシウムを含む場合、650nmでの光透過率が35%以下であり、またはカプセルが5%の炭酸カルシウムを含む場合、650nmでの光透過率が55%以下である。
【0020】
態様6.前記炭酸カルシウムは沈降炭酸カルシウムの形態である、態様1~5のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0021】
態様7.前記皮膜形成剤は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロースまたはそれらの組合せのようなセルロース系ポリマー、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、態様1~6のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0022】
態様8.前記皮膜形成剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール/オキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルピロリドン、またはそれらの組合せのような合成ポリマーである、態様1~6のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0023】
態様9.前記皮膜形成剤は、ゼラチン、コラーゲン、ゼイン、カゼイン、ダイズタンパク質、またはリョクトウタンパク質、乳清タンパク質、エンドウマメタンパク質のようなポリペプチド-(タンパク質-)系ポリマーである、態様1~6のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0024】
態様10.前記皮膜形成剤は、多糖、好ましくはプルラン、デンプン、セルロース、またはデキストランである、態様1~6のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0025】
態様11.前記皮膜形成剤は、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー、ポリアクリル酸、またはポリメタクリル酸メチルのようなアクリレート系および/または(メタ)アクリレート系ポリマーである、態様1~6のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0026】
態様12.ゲル化剤、ゲル化助剤、粘度調整剤、消泡助剤、可塑剤、滑沢剤、着色剤、溶媒、溶媒助剤、界面活性剤、分散剤、可溶化剤、安定化剤、矯正剤、甘味剤、吸着剤、粘着剤、酸化防止剤、消毒剤、保存剤、乾燥剤、香味剤、芳香剤、抗酸化剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、放出制御剤のような1種またはそれ以上の添加剤をさらに含む、態様1~11のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物。
【0027】
態様13.態様1~12のいずれか1つに記載のカプセル形成組成物から形成されるカプセル。
【0028】
好ましくは、前記カプセルは:
- ゼラチン、多糖、加工デンプン、セルロース誘導体、または合成ポリマーからなる群から選択される皮膜形成剤;および
- カプセル形成組成物の乾燥重量を基準にして3~10重量%の間の量の、好ましくは
カプセル形成組成物の乾燥重量を基準にして4.5~6.5重量%のような、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間の量の炭酸カルシウムの形態の不透明化剤
を含む。
【0029】
好ましい実施形態では、前記カプセルがHPMCを皮膜形成剤として含む場合、最終カプセルは、カプセルの総重量を基準にして、4~6重量%の水を含むことになる。さらに好ましい実施形態では、前記カプセルがゼラチンを皮膜形成剤として含む場合、最終カプセルは、カプセルの総重量を基準にして、12~15重量%の水を含むことになる。これらの濃度は、周囲温度および周囲湿度(25℃(+/-2℃)およびRHが30~50%)を基準とする。
【0030】
態様14.硬殻カプセル、好ましくはゼラチン系、プルラン系またはHPMC系硬殻カプセルである態様13に記載のカプセル。
【0031】
態様15.光透過率が低減されたカプセル(不透明なカプセルとも呼ぶ)を製作する方法であって、態様1~12のいずれか1つに記載の皮膜形成組成物を用意すること、および浸漬コーティングプロセスを使用してカプセルを形成することを含む方法。
【0032】
態様16.態様1~12のいずれか1つに記載の皮膜形成組成物を製造する方法であって:
a)炭酸カルシウム不透明化剤の水性分散体を、混合によって調製する工程;
b)ゼラチン、多糖、加工デンプン、セルロース誘導体もしくは合成ポリマー、またはそれらの組合せの群から選択される1種またはそれ以上の皮膜形成剤を含む皮膜形成配合物を調製する工程;
c)工程a)の水性分散体を工程b)の溶液に添加する工程;および
d)得られた工程c)の分散体を混合し、それにより、皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、3~10重量%の間、好ましくは4.5~6.5重量%のような、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間のCaCOを含む皮膜形成組成物を得る工程
を含む方法。一実施形態では、前記皮膜形成組成物は、最終カプセル形成配合物の総乾燥重量を基準にして、20.5重量%のHPMCのような15~25重量%のHPMC;または約31重量%のような25~35重量%のゼラチンを含む。
【0033】
態様17.工程c)は、2工程:c1)工程b)の皮膜形成配合物の一部を工程a)の分散体に添加して、スラリーを形成する工程、およびc2)前記スラリーを皮膜形成配合物の残部に添加する工程で実行される、態様16に記載の方法。好ましくは、前記スラリーは、例えば12000rpm以上のような少なくとも10000rpmの速度で少なくとも2分間混合するような高剪断混合を使用して形成される。
【0034】
態様18.工程a)における前記混合は、少なくとも15000rpm、好ましくは少なくとも20000rpmの速度で少なくとも4分間混合するような高剪断混合を包含する、態様16または17に記載の方法。
【0035】
態様19.皮膜形成剤は、ゼラチン、プルラン、HPMCASまたはHPMCを含む、態様16~18のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
加えて、皮膜形成溶液は、ゲル化剤、ゲル化助剤、粘度調整剤、消泡助剤、可塑剤、滑沢剤、着色剤、溶媒、溶媒助剤、界面活性剤、分散剤、可溶化剤、安定化剤、矯正剤、甘味剤、吸着剤、粘着剤、酸化防止剤、消毒剤、保存剤、乾燥剤、香味剤、芳香剤、抗酸化剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、放出制御剤のような1種またはそれ以上の添加剤をさ
らに含む。
【0037】
態様20.不透明化剤は、皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間の量で存在する、態様16~19のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
態様21.カプセルを作製する方法であって:
a)態様16~20のいずれか1つに記載の方法に従って皮膜形成組成物を製造する工程、および
b)浸漬成形によってカプセルを製作する工程
を含む方法。通常、そのような浸漬成形方法は:成形ピンを皮膜形成組成物に適切な温度で浸漬して、前記浸漬ピンの表面に皮膜形成組成物が皮膜形成するのを可能にする工程;浸漬ピンの表面の前記皮膜を(空気)乾燥する工程;および皮膜形成されたカプセルの半分体を前記浸漬ピンから除去する工程を含む。
【0039】
態様22.態様13または14に記載のカプセル、または態様21の方法によって得られるカプセル。このカプセルにおいて:
- カプセルが約5または10%の炭酸カルシウム濃度を有するHPMCカプセルである場合、それは通常、20%以上の不透明度係数を有することになる。5%のCaCOを有するHPMCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が35%以下となり、約10%のCaCOを有するHPMCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が10%以下となる。
- カプセルが約5または10%の炭酸カルシウム濃度を有するHGCカプセルである場合、それは通常、17%以上の不透明度係数を有することになる。10%のCaCOを有するHGCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が30%以下となり、約5%のCaCOを有するHGCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が55%以下となる。
【0040】
これらの値は、標準的なカプセルの平均カプセル壁厚、即ち約100μmを基に決定される。
【0041】
態様23.栄養剤または薬剤のような活性成分を含む充填配合物を充填した、態様22に記載のカプセル。
【0042】
態様24.活性成分は、前記充填配合物の総乾燥重量を基準にして、約0.05重量%~約100重量%の範囲の量で存在する、態様23に記載のカプセル。通常、活性成分は、前記充填配合物の総乾燥重量を基準にして、約0.5重量%~約90重量%の範囲の量で、好ましくは前記充填配合物の総重量を基準にして、約1重量%~約50重量%、より好ましくは約5重量%~約30重量%の範囲の量で存在することができる。
【0043】
態様25.活性成分は、原薬(active pharmaceutical ingredient)、栄養補給剤、栄養補助食品、ビタミン、ミネラル、化粧品、健康食品、好ましくは光に対して不安定な活性成分である、態様23または24に記載のカプセル。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】異なる種類のCaCO粒子:A)均一な球形/多面体の小粒子を示す沈降CaCO;B)凝集して大粒子(100μmまで)を形成している顆粒を示す、カプセル封入されたCaCO、のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
例えば光に対して不安定な活性成分を保護するために光透過率を制限したカプセル剤のような剤形を開発することは、カプセル殻の、不透明性と、機械的強度および安定性との間のバランスをとることである場合が多い。
【0046】
本発明者らは、今般、良好な不透明化効果と機械的強度との両方を実現するための良好なバランスをもたらす炭酸カルシウムの濃度範囲および種類を特定した。
【0047】
本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される用語は限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0048】
本明細書で使用する場合、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈上明確に否定されない限り、単数および複数の両方の指示対象を含む。
【0049】
「~を含む(comprising)」、「~を含む(comprises)」および「~で構成される(comprised of)」という用語は、本明細書で使用する場合、「~を含む(including)」、「~を含む(includes)」または「~を含む(containing)」、「~を含む(contains)」と同義であり、包括的または非限定的であり、追加の、記載されていない構成材、要素または方法工程を排除しない。これらの用語はまた、「~からなる」および「~から本質的になる」も包含する。
【0050】
両端点による数値の範囲の記載は、それぞれの範囲内に包まれる全ての数および端数、ならびに記載された両端点を含む。
【0051】
本明細書で使用する「約」という用語は、パラメーター、量、および時間の長さなどのような測定可能な値について言う場合、所定値の、および所定値からのばらつき、特に、所定値の、および所定値からの、+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、より一層好ましくは+/-0.1%以下のばらつきを包含するものとするが、但し、そのようなばらつきが、開示されている発明において実行するのに適切である場合に限る。「約」という修飾語がつく値は、それ自体もまた、具体的におよび好ましくは開示されていることを理解すべきである。
【0052】
構成材の群の1つ(種)またはそれ以上の構成材のような「1つ(種)またはそれ以上」という用語は、それ自体が明確であるが、さらなる例示によって、その用語は、とりわけ、前記構成材のいずれか、または例えば、前記構成材の任意の3つ(種)以上、4つ(種)以上、5つ(種)以上、6つ(種)以上または7つ(種)以上など、および前記構成材の全てに至るまでのような前記構成材の任意の2つ(種)以上への言及を包含する。
【0053】
「低い光透過率」という表現は、カプセルまたはカプセル配合物と組み合わせて使用される場合、光透過率の制限を可能にし、それ故、活性成分を含むカプセル体のキャビティーに(例えば天然または人工の)光が入るのをある程度遮ることができるカプセルまたはカプセル配合物のことを言う。10重量%の沈降CaCOをその殻の中に含むカプセルについては、通常、25%以上または35%以上のような約20%以上の不透明度係数が想定される。代替として、光透過率係数を示すことができ、これは、カプセル殻に入ることが可能な光の量を意味する。通常、650nmでの透過率が35%未満、好ましくは約20%以下または約10%以下のような25%未満であることが想定される。5重量%の沈降CaCOをその殻の中に含むカプセルについては、通常、約15%以上の不透明度係数が想定される。代替として、光透過率係数を示すことができ、これは、カプセル殻に
入ることが可能な光の量を意味する。通常、650nmでの透過率が55%未満であることが想定される。
【0054】
本発明のカプセルの不透明度および透過率は、使用される皮膜形成ポリマーの種類および使用されるCaCOの濃度に依存する。例示的な指針として:
カプセルが約5または10%の炭酸カルシウム濃度を有するHPMCカプセルである場合、それは通常、20%以上の不透明度係数を有することになる。5%のCaCOを有するHPMCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が35%以下となり、約10%のCaCOを有するHPMCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が10%以下となる;
カプセルが約5または10%の炭酸カルシウム濃度を有するHGCカプセルである場合、それは通常、17%以上の不透明度係数を有することになる。10%のCaCOを有するHGCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が30%以下となり、約5%のCaCOを有するHGCカプセルは、通常、650nmでの光透過率が55%以下となる;これらの値は、標準的なカプセルの平均カプセル壁厚、即ち約100μmを基に決定される。粒径および粒径分布を測定する方法がいくつかある。その中には、光に基づくものもあれば、超音波、もしくは電界、もしくは重力、または遠心分離に基づくものもある。
【0055】
全ての方法において、サイズは、実際の粒子形状を、球(最も一般的)または立方形(最小境界ボックスが使用される場合)のような単純で標準化した形状に、抽象化法で変換する(その場合、サイズパラメーター(例えば球の直径)が理に適っている)モデルによって得られる、間接的測定値である。例外は数理形態学の手法であり、この場合、形状の仮説が不要である。
【0056】
粒子の集合体(集団)についての粒径の決定には別の問題がある。実際の系はほぼ常に多分散系であり、これは集合体中の粒子が様々なサイズを有していることを意味する。粒径分布の概念は、この多分散性を反映している。粒子の集合体については、ある特定の平均粒径を必要とすることが多い。
【0057】
「D50平均粒径」という用語もしくは「Dv50」または体積基準のメジアン粒径(volume basis median particle size)は、混合粒子中、粒子の50%(全質量に基づく)の直径が、示されたD50平均サイズより小さく、粒子の残りの50%(全質量に基づく)の直径が、示されたD50平均サイズより大きいことを意味する。典型的な測定技術は、当技術分野において公知の、ふるい解析、直接画像化およびレーザー回折である。
【0058】
「D4,3平均直径」という用語または体積に関する平均直径(mean diameter over volume)(ref.2、ASTM E 799の規則により、De Brouckere平均とも呼ばれる)は、体積分布に基づく平均粒径であり、サイズ分布の中心点を決定するために体積平均が使用されることを意味するが、この技法を使用する場合、平均値よりメジアンの方が頻繁に使用される。D[4,3]の値は、測定中に容易に崩壊しない凝集体の存在に強く影響され、より広範囲の粒子において、測定された粒径に大きなばらつきが生じる。式は次のとおりである:
【数1】
【0059】
「粒径分布」という用語は、粒径の分布の幅または広がりを示す。数種の計算値が分布の幅を表すために使用されるが、最もよく使用される計算値は標準偏差および分散である。
【0060】
「粒径スパン」という用語は、粒径分布の幅の広さを示し、式:スパン=(Dv0.9-Dv0.1)/Dv0.5[式中、Dv0.9(D90)、Dv0.1(D10)およびDv0.5(D50)は、例えばレーザー回折で測定した場合に、粒子のそれぞれ90%、10%および50%がそのサイズ未満となるようなサイズを表す]に従う。
【0061】
「高剪断混合」という用語は、少なくとも15000rpm、好ましくは少なくとも20000rpmの速度での、少なくとも4分間の、任意の種類の高剪断混合を包含する。非限定的な例として、IKA Ultra Turrax T25撹拌機を使用することができる。分散体の濃度は、好ましくは少なくとも15重量%であり、好ましくは20重量%を超える。
【0062】
本明細書に引用している文献は全て、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0063】
特に指定のない限り、本発明の開示に使用される専門用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者が共通に理解する意味を有する。本発明の教示をより深く理解するために、さらなる説明により、用語の定義を含める場合がある。
【0064】
本明細書で言及される皮膜形成剤は、任意の種類の皮膜形成剤とすることができる。特に想定される皮膜形成剤は、ゼラチン、多糖、加工デンプン、または合成ポリマーである。その非限定的な例としては、一般に知られている作用剤、例えば:メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、およびカルボキシメチルエチルセルロースなどのようなセルロース系ポリマー;プルラン、カラギーナン、ジェラン、およびアルギネートなどのような多糖;またはゼラチン;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(Eudragit-E - Rohm Pharma Co.Ltd.)、およびポリビニルピロリドンなどのような合成ポリマー;アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー懸濁剤(Eudragit NE(商品名)、Rohm Pharma
Co.Ltd.)などのような(メタ)アクリレート系ポリマー;メタクリレートコポリマーL(Eudragit L - Rohm Pharma Co.Ltd.)、およびメタクリレートコポリマーLD(Eudragit L-30D55-Rohm Pharma Co.Ltd.)などのようなアクリレート系ポリマー;ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0065】
ゼラチン、プルランおよびセルロース系ポリマーが好ましい。前記セルロース系ポリマーのうち、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを使用するのがより好ましい。
【0066】
皮膜形成剤に追加して、当技術分野において公知の可塑剤、着色剤、溶媒、溶媒助剤、分散剤、可溶化剤、安定化剤、矯正剤、甘味剤、吸着剤、吸収剤、粘着剤、酸化防止剤、消毒剤、保存剤、乾燥剤、香味剤、芳香剤、pH調整剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、崩壊剤、および/または放出制御剤のような他の添加剤を加えることができる。
【0067】
分散剤(例えば(イオタ-)カラギーナン、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンまた
はレシチン)のような添加剤を加えることは有益となり得る。
【0068】
硬カプセル殻が想定される場合、前記カプセル殻には、場合により、カプセルに従来使用されている、または浸漬するための水性組成物に使用されている、および完成したカプセルの一部として残る、他の微量構成成分をさらに含めてもよい。そのような材料の例としては、界面活性剤、消泡助剤、抗酸化剤、粘度調整剤、ゲル化剤、ゲル化助剤、滑沢剤および可塑剤が挙げられる。
【0069】
非熱ゲル化浸漬成形プロセスによる硬カプセル殻の製造において、この条件でそれ自体はゲル化性が乏しい(プルラン、HPMCまたはデンプン誘導体のような)皮膜形成ポリマーに、冷却して適切な固化能を付与するために、従来、ゲル化剤および/またはゲル化助剤を含むいわゆる「固化系(setting system)」が頼りにされている。固化系は、浸漬したピンの表面に水性組成物を固化させ、このようにしてカプセルの製作を可能にし、確実に、均一なカプセル殻厚にする。
【0070】
そのようなゲル化剤およびゲル化助剤は、当技術分野において周知である。カプセル殻の製造に使用されることになる皮膜形成ポリマーに依存して、例えば、米国特許第5,264,223号明細書およびEP714656(HPMCカプセルを記載)、EP1117736(デンプン誘導体カプセルを記載);WO2005105051ならびにEP1072633(プルランカプセルを記載)を参照する。
【0071】
一実施形態では、本発明の固化系は、1種またはそれ以上のゲル化剤を含む。一実施形態では、本発明の固化系は、1種またはそれ以上のゲル化剤および1種またはそれ以上のゲル化助剤、別名共ゲル化剤を含む。
【0072】
一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化剤は、アルギネート、カンテンガム、グアーガム、ローカストビーンガム(イナゴマメ)、カラギーナン(好ましくはカッパ、ラムダ、および/またはイオタ)、タラガム、アラビアガム、ガッチガム、カヤ・グランディフォリオラ(khaya grandifolia)ガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、アラビアン(アラバン)、キサンタン、低アシルおよび高アシルのジェランガム、デンプン、コンニャクマンナン、ガラクトマンナン、フノラン、アセタン、ウェラン、ラムサン、フルセレラン、サクシノグリカン、スクレログリカン(scleroglycan)、シゾフィラン、タマリンドガム、カードラン、デキストランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、1種またはそれ以上のゲル化剤は、カラギーナン(好ましくはカッパおよび/またはイオタ、より好ましくはカッパ-カラギーナン)、ジェランガムおよびそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化剤は、カラギーナン(好ましくはカッパおよび/またはイオタ、より好ましくはカッパ-カラギーナン)を含み、好ましくはカラギーナン(好ましくはカッパおよび/またはイオタ、より好ましくはカッパ-カラギーナン)からなる。一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化剤は、ジェランガムを含み、好ましくはジェランガムからなる。
【0073】
一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化剤は、上記に挙げた作用剤のうち2種以上の組合せを含む。一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化剤は、キサンタンとローカストビーンガムとの組合せを含み、好ましくはキサンタンとローカストビーンガムとの組合せからなる。一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化剤は、キサンタンとコンニャクマンナンとの組合せを含み、好ましくはキサンタンとコンニャクマンナンとの組合せからなる。
【0074】
一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化助剤(別名共ゲル化剤)は陽イオンであ
る。一実施形態では、1種またはそれ以上のゲル化助剤は:K、Li、Na、NH 、Ca2+、Mg2+およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、1種またはそれ以上のゲル化助剤は:K、NH 、Ca2+およびそれらの混合物からなる群から選択される。陽イオンは、薬学的に許容されるまたは食品として許容される水溶性の塩(例えば塩化物、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)の形態で固化系に加えることができる。
【0075】
一実施形態では、本発明の固化系は:カラギーナン(好ましくはカッパおよび/またはイオタ、より好ましくは少なくともカッパ-カラギーナン)、ジェランおよびそれらの混合物からなる群から選択される1種またはそれ以上のゲル化剤;ならびに1種またはそれ以上の薬学的に許容されるまたは食品として許容されるK、NH 、Ca2+の水溶性の塩およびそれらの混合物を含む。
【0076】
一実施形態では、本発明の水性組成物は、上記で定義した1種またはそれ以上のゲル化剤を、下記に定義する、硬カプセル殻を得るのに好適な量で含み、その硬カプセル殻は、殻の重量に対して、約0.01~3.0重量%の間、好ましくは約0.03~1.0重量%の間、好ましくは約0.1重量%~0.5重量%の間のそのようなゲル化剤を含む。例示的な好適なゲル化剤の量は、硬カプセル製造の分野の当業者には容易に利用可能である。例えば、上記に挙げた範囲内にある「目標」量のゲル化剤を含む硬カプセル殻は、当該目標量(組成物の重量に対する重量%として表される)の約1/4(即ち25%)を含む水性組成物を使用することによる浸漬成形プロセスによって得ることができることが、広く認められている。
【0077】
一実施形態では、本発明の水性組成物は、上記で定義した1種またはそれ以上のゲル化助剤を、下記に定義する、硬カプセル殻を得るのに好適な量で含み、その硬カプセル殻は、殻の重量に対して、約3重量%未満、好ましくは約2.0重量%未満、より好ましくは約0.5重量%~2.0重量%の間、より一層好ましくは約1.0重量%~2.0重量%の間のそのような1種またはそれ以上のゲル化助剤を含む。ゲル化助剤が陽イオンである場合、上記の範囲は、殻の重量に対して、その陽イオンを含む薬学的に許容されるまたは食品として許容される水溶性の塩の重量として表される。例示的な好適なゲル化助剤の量は、硬カプセル製造の分野の当業者には容易に利用可能である。例えば、水が水性組成物の重量に対して約75重量%である場合、「目標」量のゲル化助剤を含む硬カプセル殻は、当該目標量(組成物の重量に対する重量%として表される)の約1/4(即ち25%)を含む水性組成物を使用することによる浸漬成形プロセスによって得ることができることが、広く認められている。
【0078】
硬カプセル殻はまた、残留水も含むことができる。通常、そのような殻は、例えば、25重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは0重量%~14重量%、より一層好ましくは1重量%超~10重量%未満、より好ましくは2重量%~7重量%の水を含む。
【0079】
原薬、栄養補給剤、栄養補助食品、ビタミン、ミネラル、化粧品、または健康食品などから選択される任意の活性成分を本発明のカプセル配合物に封入することができるが、光に対して不安定なまたは光に敏感な成分が特に適している。本発明のカプセル配合物中に充填される場合、有効な光遮蔽を得るためにカプセルに充填することができる、光に対して不安定な非制限的な薬剤は:ジヒドロピリジン誘導体(例えば、ニフェジピン)、抗ウイルス剤であるHIVプロテアーゼ阻害剤(例えば、リトナビル、サキナビル)、高脂血症の治療剤(例えば、クロフィブレート)、ヨウ素化合物(例えば、イオポダートナトリウム、ヨウ化ナトリウム)、多価不飽和脂肪酸誘導体(例えば、エチルエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA))、カロテノイド(例えば、リコピン、
ビキシン、β-カロテン、キサントフィル、ルテイン)、ユビキノン(補酵素Q)(例えば、代謝性強心薬として使用されるユビデカレノン)、種々のビタミン誘導体、ならびにインドメタシン、コルヒチン、ジアゼパム、シロシンゴピン、ノルエチステロン、ピレタニド、プロペリシアジン、ペルフェナジン、メキタジン、メダゼパム、メナテトレノン、塩酸インデノロール、レセルピン、ソファルコン、メシル酸ブロモクリプチン、塩酸ブフェトロールおよび塩酸オクスプレノロールである。ビタミン誘導体の中では、脂溶性のものを使用するのが好ましい。例として、ビタミンA誘導体(例えば、トレチノイン、肝油、パルミチン酸レチノール)、ビタミンA類似体(例えば、エトレチネート)、ビタミンD誘導体、ビタミンE誘導体(例えば、ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム)、およびビタミンK誘導体(例えば、フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナテトレノン、フィトナジオン)が挙げられる。
【0080】
活性成分としての薬剤は、単独で、または任意の基剤または担体、添加剤もしくは賦形剤と組み合わせて、本発明のカプセル中に充填することができる。任意の種類の基剤または担体は、薬剤の活性を損なわず、カプセル殻の、強度、ガス透過性、および崩壊プロファイルまたは溶解プロファイルのような種々の物理的性質に影響を及ぼさない限り、脂溶性であっても水溶性であっても使用することができる。同様に、基剤それ自体は、加熱または他の溶媒での希釈などで補助してカプセル中に充填することができる限り、常温で液体状態または固体状態であってもよい。そのような基剤の例としては、植物油(例えば、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、オリーブ油)、脂肪酸グリセリド(例えば、中鎖トリグリセリド)、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、トリアセチン、流動パラフィン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、エタノールおよび精製水が挙げられ、これらは単独でまたは組み合わせて使用してもよい。ビタミンA、D、EおよびKのような脂溶性の薬剤を溶解するのに好ましい基剤は、植物油または脂肪酸グリセリドであり、中鎖トリグリセリドが特に好ましい。水溶性の基剤を使用する場合、カプセル殻への影響を考慮して、殻層と薬剤層との間に保護層を設けること、または結晶化阻害剤を用意することが好ましい。
【0081】
本発明のカプセル殻に充填されることになる薬剤としては、好ましくは、液体形態のもの、または上記に挙げたような基剤に溶解、懸濁または乳化されたものが例示されるが、これらに限定はされない。薬剤はまた、固体形態(例えば、散剤、顆粒剤)または半固体形態(例えば、クリーム剤またはゲル剤)とすることもできる。
【0082】
したがって、本発明は、光透過率が低減されたカプセル(不透明なカプセルとも呼ばれる)を形成するためのカプセル配合物であって:
- 本明細書で定義された皮膜形成剤;および
- カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして3~10重量%の間の量の、炭酸カルシウムの形態の不透明化剤
を含む、カプセル配合物を提供する。好ましくは、前記CaCOは、最終カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして4~8%の間の量で、より好ましくは最終カプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして4.5~6.5重量%の間の量で存在する。
【0083】
実施例の項から明らかになるであろうが、炭酸カルシウムの量および粒径ならびにCaCOの種類は、本明細書で想定される皮膜およびカプセルの不透明性と機械的強度とのバランスに影響を及ぼす。
【0084】
本発明者らは、0.2~2.0μmの間のメジアン粒径(Dv50)および/または約10以下のD4,3粒径が、そのような皮膜およびカプセルを形成するのに特に有利であ
ることを発見した。
【0085】
平均粒径は、0.5~1.5μmの間のような0.2~2μmの間の、より好ましくは0.3~1.2μmの間の、より好ましくは約1μmのような0.4~1.1μmの間の「D50」(Dv50)メジアン粒径として表すことができる。
【0086】
代替として、粒子は、約10μm以下の、より好ましくは、約6μm以下または約4μm以下のような約8μm以下の、より特定すると、1~10μmの間または1~8μmの間の、好ましくは2~6μmの間の、より好ましくは、約4μm、例えば3.5~4.5μmの間の「D4,3」粒径を有することができる。
【0087】
好ましくは、前記炭酸カルシウムは、略球形/多面体の粒子形状を有する。特定の実施形態では、炭酸カルシウムは、均一な球形または多面体の小粒子を包含する。
【0088】
典型的には、上記で定義したCaCO粒子の粒径スパンは可能な限り小さい。好ましくは、前記スパンは10未満、好ましくは8未満、より好ましくは6未満である。
【0089】
好ましい実施形態では、CaCOは沈降したものであり、即ち酸化カルシウム(CaO-生石灰)から製造される。酸化カルシウムに水を添加すると水酸化カルシウムが得られる。次に、二酸化炭素をこの溶液に通過させて所望の炭酸カルシウムを沈降させ、業界では沈降炭酸カルシウム(PCC)とされる。PCCは、多くの結晶形態およびサイズで入手可能であり、特定の用途における性能を最適化するように適応させることができる。沈降法用の出発材料として使用される酸化カルシウムは、石灰乳プロセスを通して得ることができ、そのプロセスは、高純度の炭酸カルシウム岩を粉砕して加工に好適な小粒子または粉末にすること、この小粒子または粉末を約1000℃に加熱すること、それにより、炭酸カルシウムを酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO)とに分離することを包含し、二酸化炭素は捕捉して上記の沈降法に再利用することができる。
【0090】
好ましい実施形態では、前記PCCは、0.2~2.0μmの間のメジアン粒径、または約10μm以下のD4,3粒径を有する。代替として、PCCの平均粒径は、0.5~1.5μmの間のような0.2~2μmの間の、より好ましくは0.3~1.2μmの間の、より好ましくは約1μmのような0.4~1.1μmの間の「D50」(Dv50)メジアン粒径として表すことができる。
【0091】
したがって、本発明は、不透明化能力を有する皮膜形成組成物を製造する方法であって:
a)炭酸カルシウム不透明化剤の水性分散体を、混合によって調製する工程;
b)ゼラチン、多糖、加工デンプン、(メタ)アクリレート系ポリマー、もしくは合成ポリマー、またはそれらの組合せの群から選択される1種またはそれ以上の皮膜形成剤を含む皮膜形成配合物を調製する工程;
c)工程a)の水性分散体を工程b)の溶液に添加する工程;および
d)得られた工程c)の分散体を混合し、それにより、皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、3~10重量%の間、好ましくは4.5~6.5重量%のような、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間のCaCOを含む皮膜形成組成物を得る工程を含む方法を提供する。一実施形態では、前記皮膜形成組成物は、最終カプセル形成配合物の総乾燥重量を基準にして、20.5重量%のHPMCのような15~25重量%のHPMC;または約31重量%のような25~35重量%のゼラチンを含む。
【0092】
一実施形態では、前記皮膜形成組成物は、最終カプセル形成配合物の総乾燥重量を基準にして、20.5重量%のHPMCのような15~25重量%のHPMC;または約31
重量%のような25~35重量%のゼラチンを含む。
【0093】
一実施形態では、工程c)は、2工程:c1)工程b)の皮膜形成配合物の一部を工程a)の分散体に添加して、スラリーを形成する工程、およびc2)前記スラリーを皮膜形成配合物の残部に添加する工程で実行される。
【0094】
好ましくは、前記スラリーは、例えば12000rpm以上のような少なくとも10000rpmの速度で少なくとも2分間混合するような高剪断混合を使用して形成される。
【0095】
一実施形態では、工程a)における前記混合は、少なくとも15000rpm、好ましくは少なくとも20000rpmの速度で少なくとも4分間混合するような高剪断混合を包含する。
【0096】
いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、高剪断混合をすると、より良好なの皮膜形成組成物中CaCO分散体を得ることができ、それにより、機械的強度が増加する。
【0097】
一実施形態では、不透明化剤は、皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、4~8重量%の間のような、3~10重量%の間の量、より好ましくは5~7重量%の間の量で存在する。
【0098】
本発明はまた、カプセルを作製する方法であって:
a)本明細書で定義された皮膜形成組成物を製造する工程、および
b)例えば、押出成形、射出成形、キャスティングまたは浸漬成形のような従来のプロセスによってカプセルを製作する工程
を含む方法も提供する。通常、そのような浸漬成形方法は:成形ピンを皮膜形成組成物に適切な温度で浸漬して、前記浸漬ピンの表面に皮膜形成組成物が皮膜形成するのを可能にする工程;浸漬ピンの表面の前記皮膜を((熱)空気)乾燥する工程;および皮膜形成されたカプセルの半分体を前記浸漬ピンから除去する工程を含む。
【0099】
本明細書に記載した方法によって得られるカプセルは、例えば10%w/wの濃度の沈降炭酸カルシウムが使用される場合、通常、約20%以上の不透明度係数、および/または35%以下の650nmでの光透過率を有することになる。それより低い約5%のような濃度の炭酸カルシウムを使用する場合、約17%以上の不透明度係数、および/または55%以下の650nmでの光透過率に到達する。前記範囲は、市販のカプセルに標準的に使用されているようなおよそ100μm(例えば、90μm~110μm)のカプセル壁厚に基づいている。
【0100】
そのようなカプセルは、当然、任意の種類の成分の送達に使用することができるが、光に対する安定性が限定されている活性成分に特に好適である。活性成分の例は、原薬、栄養補給剤、栄養補助食品、ビタミン、ミネラル、化粧品、または健康食品などとすることができる。そのような成分は、0.05重量%から100重量%までの間の量で存在することができる。通常、活性成分は、前記充填配合物の総乾燥重量を基準にして、約0.5重量%~約90重量%の範囲の量で、好ましくは前記充填配合物の総重量を基準にして約1重量%~約50重量%、より好ましくは約5重量%~約30重量%の範囲の量で存在することができる。
【0101】
一実施形態では、不透明化剤が使用されているカプセルは:米国特許第6,517,865号明細書に記載されている、VegiCapsまたはVcaps(登録商標)と呼ばれる植物系カプセルのようなHPMC系カプセル;米国特許第9,655,860号明細
書に記載されているVcaps(登録商標)Plus;米国特許第6,887,307号明細書に記載されているもののようなプルラン系カプセル;またはWO2018/017799A1およびWO2013164121に記載されているVcaps(登録商標)Entericのような腸溶性カプセルであり、これらの文献の内容は、参照によって本明細書に組み入れる。そのようなカプセルを製作する好ましい方法もまた前記各特許に開示されており、それらを参照によって本明細書に組み入れる。
【0102】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてさらに説明される。
【実施例0103】
材料および方法
皮膜の機械的強度の試験
22℃ならびに50%RHおよび23%RHで保管した試料について、ASTM D882-02(Instron 5965を使用)に従って実行した引張試験により、皮膜の機械的性質を決定した。皮膜を、これらの条件で7日間保管した。材料の引張試験のほとんどについて、試験の初期部において、加えた力または負荷と、検査試料が示す伸長との間の関係は線形であることに気づく。この線形領域において、線は、ひずみ(ε)に対する応力(σ)の比が一定であるという「フックの法則」と定義される関係に従う。即ち、フックの法則:
【数2】
によれば、「E」はこの領域における傾きであり、応力(σ)はひずみ(ε)に比例し、「弾性係数」または「ヤング率」と呼ばれている。
【0104】
カプセルの機械的強度
下記に概要を述べるように、従来の浸漬成形技術を使用して、様々な皮膜形成組成物から試験カプセルを製造し、約100μmのカプセル側壁厚を有するサイズ0のカプセルを製作した。製造したカプセルの機械的強度を管試験法(内部衝撃法)によって評価した。要するに、100gのおもりを8cmの高さからカプセル(n=50)の上に落とし、壊れたカプセルの数を計数し、パーセンテージで表した。
【0105】
カプセルを、室温にて、2.5%、10%、23%、33%および45%の相対湿度(RH)で7日間保管した。測定は室温で行った。
【0106】
不透明度試験
不透明度については、分光光度計(Color Eye XTH Portable Spectrophotometer)により、位相差画像法を使用して測定した。光透過率の測定については、皮膜試料をUV-VIS分光光度計内の光経路に置き、650nmでの透過率を記録した。皮膜は室温で保持した。
【0107】
不透明度試験用に、およそ約100μm厚の皮膜を、下記で説明する様々な皮膜形成組成物から製造した。そのような皮膜は、厚みに関して、カプセルの側壁厚90~110μmの範囲に相当していた。
【0108】
「不透明度係数」という用語は、本明細書で使用する場合、コントラスト比不透明度(Contrast Ratio Opacity)(OP)、即ち黒色背景に対して測定された輝度または明るさと、白色背景に対して測定された輝度または明るさとの比に相当
する。OPの測定値は、不透明に近い材料が、どのくらい不透明に近いかを定量化する。
【0109】
その測定は2部のプログラム測定であり、黒色背景に置かれた試料についてY(輝度または明るさ)値が第1に測定され、次いで、白色背景に置かれた試料についてY値が第2に測定される。得られた割合はY%で表され、次:
OP=Y黒色背景/Y白色背景×100
のように計算される。
【0110】
粒径の測定および画像化
レーザー回折法(Mastersizer 2000、Malvern)を使用して粒径を決定した。測定は、2バールの空気圧を使用して分散させた乾燥粉末に対して行った。
【0111】
粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて画像化した。
【0112】
高剪断混合
不透明化した溶液または分散体の高剪断混合を、Ultra Turrax T25撹拌機(IKA)を使用して、21000rpmの速度で少なくとも6分間行った。分散体の濃度は、少なくとも15重量%であり、好ましくは20重量%を超えていた。
【実施例0113】
皮膜形成配合物の設計
CaCOを、その不透明性を誘導する能力について、および形成されたポリマー皮膜の機械的強度に対するその効果について試験した。セルロース系(HPMC)皮膜およびゼラチン系皮膜の両方に対してこれを試験した。
【0114】
カプセル封入されていないCaCOの分散体を最初に調製し、皮膜形成配合物に添加した。同じ基本手法をゼラチン配合物およびHPMC配合物に使用した。
【0115】
要するに、水60gを沈降CaCO(PCC)22.45gに添加し、この混合物を、高剪断混合(例えば21000rpmで3×2分間、各混合の間に30秒の休止を挟む高剪断混合(Ultra Turrax))でホモジナイズした。
【0116】
次に、水中20.5重量%のHPMCまたは水中31重量%のゼラチンを含む、液体の皮膜形成用HPMC配合物またはゼラチン配合物の一部(例えば20g)を添加し、12000rpmで例えば3分間撹拌(例えばSilverson装置)しながら混合して分散体にし、それにより、スラリーを形成した。次いで、前記スラリーを皮膜形成配合物の残部と混合し、それにより、皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして10重量%のCaCO濃度になる前記皮膜形成組成物を形成した。
【0117】
カプセル封入されたCaCO(最終カプセル形成配合物の総乾燥重量を基準にして10重量%)を、らせん状撹拌機で約45分間撹拌することによって水中に分散させた。得られた分散体の必要量を、最終カプセル形成配合物の総乾燥重量を基準にして、水中20.5重量%のHPMCまたは水中31重量%のゼラチンを含む、液体の皮膜形成用HPMC配合物またはゼラチン配合物に添加し、混合した。
【0118】
HPMC系皮膜を次のように製造した:ガラスプレートを60℃に保持し、異なる量のCaCOを含む皮膜形成組成物を28℃に保持し、温貯蔵器(40~50℃)の中で、例えば手動式TLCプレートコーター(CAMAG、Muttenz、CH)を使用して皮膜を形成した。次いで、皮膜を60℃で約1時間乾燥させ、22℃、50%のRHで終
夜保持した。
【0119】
ゼラチン皮膜を次のように製造した:ガラスプレートを60℃に保持し、異なる量のCaCOを含む皮膜形成溶液を55℃に保持し、温貯蔵器(約60℃)の中で、例えばTLCプレートコーター(Camag、CH)を使用して皮膜を形成した。次いで、皮膜を22℃、50%のRHで終夜乾燥させた。
【0120】
HPMC皮膜およびゼラチン(HGC)皮膜についての試験の結果を下の表1に示す:
【0121】
【表1】
【0122】
上記の結果により、炭酸カルシウムは、許容できる機械的強度を保持しながら不透明化剤としての潜在力を見せることが示されたが、異なる粒径を有するCaCO間で、差違がいくつか観測された。特に興味深い点は、カプセル封入されたCaCOおよび粉砕したCaCOでは、皮膜の機械的強度が劣ることである。
【0123】
さらなる全ての実験において、「沈降CaCO」という用語は、表1に示しているように、PCCと言う。
【0124】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像法を使用して、異なるCaCO組成物の粒径および粒子形状を解析した。この目的のため、粒子を金属でコーティングし、当技術分野において公知の走査型電子顕微鏡を使用して画像化した。画像にはスケールバーが記載されている。
【0125】
図1から分かるように、試験したCaCO組成物の粒径および粒子形状は大きく異なっている:図1Bは、カプセル封入されたCaCOの凝集顆粒が大粒子(100μmまで)を形成していることを示しているが、図1Aは、それより大幅に小さい粒子の沈降CaCO(PCC)が、小さい球形/多面体の形状を有し、粒子形状およびサイズ分布において、カプセル封入されたCaCOより均一であることを示している。
【0126】
次に、異なるCaCO組成物の粒径を、上記に示したレーザー回折法を使用して解析した(表2を参照)。
【0127】
【表2】
【実施例0128】
HPMCの皮膜およびカプセルについての試験:
次に、皮膜およびカプセルの性質に対する、異なるレベルの炭酸カルシウムの影響について試験を行った。
【0129】
これについては、実施例1に従ってHPMC皮膜を製作するのに使用したものと同じ手法を使用したが、いくつかの炭酸カルシウム濃度および種類(表1または2に記載のPCC、またはカプセル封入されたCaCO)を使用した。以下の手順を使用して、10重量%のCaCOを含む20.5重量%のHPMCをベースとする皮膜を製造した:
【0130】
【表3】
【0131】
皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、6.5重量%のCaCOを含む前記皮膜形成組成物を得るために、上記の手順の工程4は以下のとおりとなる:
【0132】
【表4】
【0133】
皮膜形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、5重量%または7.5重量%のCaCOを含む前記皮膜形成組成物を得るために、上記の手順を、HPMC皮膜形成配合物対CaCO分散体の相対量を変化させることによって調整することができる。
【0134】
異なるHPMC系皮膜の不透明度および光透過率を試験した。結果を下の表3に示す。
【0135】
【表5】
【0136】
前記皮膜の引張特性もまた、Instronデバイスを使用し、ASTM D882-02に従って試験した。表4に示すように、5または10重量%の、沈降CaCOまたはカプセル封入されたCaCOを含むHPMCカプセル間を比較しても、HPMC皮膜
が本来変形しにくいため、引張特性において顕著な差違を示していない。
【0137】
【表6】
【0138】
次に、本明細書に概要を述べた従来の浸漬成形技術を使用して、HPMCカプセルを形成した:サイズ0の浸漬ピンを約73℃で予熱し、一方、浸漬用組成物を32℃に維持した。従来の浸漬プロセスにより、予熱したピンを用いて、サイズ0のカプセルを製造した。
【0139】
浸漬した後に、カプセルを60℃の熱空気および40%RHで30分間、次いで約22℃および50%RHで約20分間乾燥させた。
【0140】
沈降CaCOおよびカプセル封入されたCaCOが、HPMCカプセル中10重量%で使用された場合に機械的強度に及ぼす影響を比較した。管試験の評価から、沈降CaCOの方が機械的性能に優れていることが明らかになった(壊れたカプセルが少なかった、表5を参照)。
【0141】
【表7】
【0142】
次に、10重量%、7.5重量%または6.5重量%の沈降CaCOを含む皮膜形成組成物(実施例1および2の手順に従って製造)を使用して形成したHPMC系カプセルの機械的強度を、上記に示した管試験(内部衝撃試験)を使用して試験した(表6)。
【0143】
【表8】
【0144】
前記結果に基づいて、HPMCカプセル中で炭酸カルシウムが有効になる条件を、3~10重量%の間の濃度範囲の沈降CaCOに集約することができる。それにより、許容できる不透明度および機械的強度を有するカプセルが得られる。
【実施例0145】
ゼラチン皮膜についての試験:
実施例1の皮膜形成組成物および方法を使用してゼラチン皮膜を製作した。
【0146】
【表9】
【0147】
上記で説明したように、不透明度および650nmでの光透過率を試験した。結果を下の表7にまとめている。沈降CaCO(表1または2に記載のPCC)およびカプセル封入されたCaCOについて、類似の結果が得られている。
【0148】
【表10】
【0149】
皮膜の引張試験を、ゼラチン皮膜ついて上記で説明したようにして行った。その試験により、沈降CaCOを含む皮膜は、カプセル封入されたCaCOを含む皮膜より変形し得ることが示されている(表8を参照)。
【0150】
【表11】
【0151】
この皮膜形成組成物はまた、従来の浸漬成形(mold dipping)によりゼラチン系カプセルを製作するために使用することもできる。要するに、ステンレス鋼の成形ピンを、室温で(約22℃で)温液のゼラチン溶液(例えば約45℃)に浸漬することにより、鋳型の表面に、寸法が制御された皮膜が形成される。乾燥させた後に、殻の壁厚が約100μmのカプセルの半分体が得られる。
【実施例0152】
工業規模の試験
実施例2に記載のものと同じ皮膜形成組成物を使用して、550,000個のサイズ0のHPMCカプセルおよび625,000個のサイズ1のHPMCカプセルを製造し、品質は良好で不透明度は許容できるものであった。それ故、総合的な試験の結果は極めて優良である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードシェルカプセル形成組成物であって:
- ゼラチンまたはプルランから選択される皮膜形成剤;および
- 該ハードシェルカプセル形成組成物の乾燥重量を基準にして3~10重量%の間の量の、沈降炭酸カルシウムの形態の不透明化剤
を含む前記ハードシェルカプセル形成組成物。
【請求項2】
前記不透明化剤は、ハードシェルカプセル形成配合物の乾燥重量を基準にして、4.5~6.5重量%のような、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間の量で存在する、請求項1に記載のハードシェルカプセル形成組成物。
【請求項3】
前記沈降炭酸カルシウムは、略球形または多面体の粒子形状を有する、請求項1または2に記載のハードシェルカプセル形成組成物。
【請求項4】
前記沈降炭酸カルシウムは、0.2~2.0μmの間のメジアン粒径を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のハードシェルカプセル形成組成物。
【請求項5】
ゲル化剤、ゲル化助剤、粘度調整剤、消泡助剤、可塑剤、滑沢剤、着色剤、溶媒、溶媒助剤、界面活性剤、分散剤、可溶化剤、安定化剤、矯正剤、甘味剤、吸着剤、粘着剤、酸化防止剤、消毒剤、保存剤、乾燥剤、香味剤、芳香剤、抗酸化剤、pH調整剤、結合剤、崩壊剤、放出制御剤のような1種またはそれ以上の添加剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のハードシェルカプセル形成組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のハードシェルカプセル形成組成物から形成されるハードシェルカプセル。
【請求項7】
光透過率が低減されたハードシェルカプセルを製作する方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のハードシェルカプセル形成組成物を用意すること、および浸漬コーティングプロセスを使用してカプセルを形成することを含む前記方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のハードシェルカプセル形成組成物を製造する方法であって:
a)沈降炭酸カルシウム不透明化剤の水性分散体を、混合によって調製する工程;
b)ゼラチン、プルラン、またはそれらの組合せの群から選択される1種またはそれ以上の皮膜形成剤を含む皮膜形成配合物を調製する工程;
c)工程a)の該水性分散体を工程b)の該溶液に添加する工程;および
d)得られた工程c)の分散体を混合し、それにより、該ハードシェルカプセル形成組成物を得る工程
を含む前記方法。
【請求項9】
工程c)は、2工程:c1)工程b)の皮膜形成配合物の一部を工程a)の分散体に添加して、スラリーを形成する工程、およびc2)前記スラリーを皮膜形成配合物の残部に添加する工程で実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
不透明化剤は、ハードシェルカプセル形成組成物の最終乾燥重量を基準にして、4~8重量%の間、より好ましくは5~7重量%の間の量で存在する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ハードシェルカプセルを作製する方法であって:
a)請求項8または9に記載の方法に従ってハードシェルカプセル形成組成物を製造する工程、および
b)浸漬成形によってハードシェルカプセルを製作する工程
を含む前記方法。
【外国語明細書】