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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099150
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/053 20060101AFI20240718BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240718BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240718BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240718BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B01J27/053 A ZAB
B01J35/04 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002874
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
(72)【発明者】
【氏名】戸田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊
(72)【発明者】
【氏名】清水 建伍
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB01
3G091BA14
3G091GB04W
3G091GB05W
3G091GB07W
3G091GB10W
4D148AA06
4D148AA07
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA03X
4D148BA08X
4D148BA15X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA31X
4D148BA33X
4D148BA42X
4D148BB02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA13A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB10B
4G169BC13B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CA09
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EC28
4G169EE09
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、排ガス浄化用触媒において、未規制物質の排出抑制性能及び低温活性を両立する手段を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、基材と、該基材の上面に配置された、ロジウムを含む第1触媒層と、該第1触媒層の上面に配置された、パラジウムを含む第2触媒層とを有する排ガス浄化用触媒であって、第1触媒層が、排ガス浄化用触媒の下流側端面から基材の全長に対して80から100%の範囲の領域に配置されており、第2触媒層において、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域にパラジウムが1から4 gの範囲で担持されており、第2触媒層に含まれるパラジウムは、80%以上の量でアルミナ、セリア及びジルコニアの複合酸化物(ACZ)に担持されている、前記排ガス浄化用触媒に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材の上面に配置された、ロジウムを含む第1触媒層と、
該第1触媒層の上面に配置された、パラジウムを含む第2触媒層と、
を有する排ガス浄化用触媒であって、
第1触媒層が、排ガス浄化用触媒の下流側端面から基材の全長に対して80から100%の範囲の領域に配置されており、
第2触媒層において、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域にパラジウムが1から4 gの範囲で担持されており、
第2触媒層に含まれるパラジウムは、80%以上の量でアルミナ、セリア及びジルコニアの複合酸化物(ACZ)に担持されている、
前記排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
第2触媒層が、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域に配置されている、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
第2触媒層が、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して30から40%の範囲の領域に配置されており、該領域にパラジウムが1から2 gの範囲で担持されている、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排ガス浄化用触媒は、エンジンから排出される排ガスに含まれる炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化して水及び二酸化炭素に、窒素酸化物(NOx)を還元して窒素に、それぞれ変換する。このような触媒活性を有する排ガス浄化用触媒としては、通常は、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)等の触媒貴金属の粒子を含有する触媒層を、耐熱性の基材に被覆した貴金属担持触媒が使用される。貴金属担持触媒の触媒層は、通常は、前記のような触媒貴金属粒子に加えて、酸素吸蔵能力(以下、「OSC」とも記載する)を有するOSC材料を、担体又は助触媒として含有する。OSC材料は、酸素の吸蔵及び放出を行うことにより、触媒貴金属による排気ガス浄化反応を支援する。
【0003】
例えば、特許文献1は、基材上に排ガス上流側の第1触媒層と排ガス下流側の第2触媒層とを有し、前記第1及び第2触媒層がNOx保持物質を含み、それぞれRhを含む下層とPd及びPtを含む上層とを有し、Pdの濃度が前記第2触媒層よりも前記第1触媒層で高く、Ptの濃度が前記第1触媒層よりも前記第2触媒層で高いことを特徴とする、排ガス浄化用触媒を記載する。
【0004】
特許文献2は、基材と、該基材の表面に形成された多孔質担体からなる触媒コート層と、該触媒コート層の多孔質担体に担持された貴金属触媒と、を備える排ガス浄化用触媒であって、前記触媒コート層は、前記基材表面に近い方を下層とし相対的に遠い方を上層とする上下層を有する積層構造に形成されており、前記上層は貴金属触媒としてRh粒子を備えており、前記下層は貴金属触媒としてPd粒子を備えており、前記下層は、前記Pd粒子が担持された多孔質担体として、アルミナ(Al2O3)とセリア(CeO2)とジルコニア(ZrO2)とからなるACZ複合酸化物により構成された担体を備えていることを特徴とする排ガス浄化用触媒を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-101252号公報
【特許文献2】特開2012-187518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車等の排ガスは、年々排出規制が厳しくなっている。特に、欧州の次期排ガス規制であるEuro7では、従来規制されていなかったN2O、NH3及びCH4等の未規制物質も新たに規制物質として追加される予定であるだけでなく、-10℃規制も導入される予定である。このため、自動車等の排ガス浄化用触媒には、これらの未規制物質の排出抑制性能及び低温活性の双方の向上が求められる。
【0007】
それ故、本発明は、排ガス浄化用触媒において、未規制物質の排出抑制性能及び低温活性を両立する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、ロジウムを含む第1触媒層とパラジウムを含む第2触媒層とを基材に積層した排ガス浄化用触媒において、第2触媒層に含まれるパラジウムをアルミナ、セリア及びジルコニアの複合酸化物(ACZ)に担持し、且つ第2触媒層において、排ガス浄化用触媒の上流側端面から所定の範囲の領域にパラジウムを所定量で担持することにより、N2Oのような未規制物質の排出抑制性能を向上させつつ、低温活性を向上させることができることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(実施形態1)
基材と、
該基材の上面に配置された、ロジウムを含む第1触媒層と、
該第1触媒層の上面に配置された、パラジウムを含む第2触媒層と、
を有する排ガス浄化用触媒であって、
第1触媒層が、排ガス浄化用触媒の下流側端面から基材の全長に対して80から100%の範囲の領域に配置されており、
第2触媒層において、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域にパラジウムが1から4 gの範囲で担持されており、
第2触媒層に含まれるパラジウムは、80%以上の量でアルミナ、セリア及びジルコニアの複合酸化物(ACZ)に担持されている、
前記排ガス浄化用触媒。
(実施形態2)
第2触媒層が、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域に配置されている、実施形態1に記載の排ガス浄化用触媒。
(実施形態3)
第2触媒層が、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して30から40%の範囲の領域に配置されており、該領域にパラジウムが1から2 gの範囲で担持されている、実施形態1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、排ガス浄化用触媒において、未規制物質の排出抑制性能及び低温活性を両立する手段を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一態様の排ガス浄化用触媒の一実施形態を表す断面図である。
図2】本発明の一態様の排ガス浄化用触媒の別の一実施形態を表す断面図である。
図3】比較例及び実施例の排ガス浄化用触媒の低温活性評価試験及び窒素酸化物排出評価試験の結果を示すグラフである。図中、左側の縦軸は、低温活性評価試験において、排ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化率が50%に達した時点の温度(℃)を示す。右側の縦軸は、N2O排出評価試験において、N2O排出量の平均値(ppm)を示す。黒塗りの棒で示すデータは左側の縦軸に、白抜きの丸で示すデータは右側の縦軸に、それぞれ対応する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の一態様は、排ガス浄化用触媒に関する。本態様の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材の上面に配置された、ロジウム(Rh)を含む第1触媒層と、該第1触媒層の上面に配置された、パラジウム(Pd)を含む第2触媒層と、を有する。最上面である第2触媒層にPdを配置することにより、本態様の排ガス浄化用触媒は、高い低温活性を発揮することができる。
【0014】
本態様の排ガス浄化用触媒において、基材は、ハニカム、ペレット又は粒子等の任意の形態であればよく、ハニカムの形態のモノリス基材であることが好ましい。また、基材は、コージェライト等の耐熱性無機物又は金属を含有することが好ましい。前記の特徴を有する基材を用いることにより、高温条件下でも高い排気ガス浄化能力を発揮することができる。
【0015】
本態様の排ガス浄化用触媒において、第1触媒層に含まれる触媒貴金属であるRhは、任意の担体に担持されていればよい。Rhの担体としては、アルミナ、セリア及びジルコニアの複合酸化物(ACZ)、アルミナ及びジルコニアの複合酸化物(AZ)、セリア及びジルコニアの複合酸化物(CZ)、並びにアルミナを挙げることができる。
【0016】
第1触媒層は、Rh及びACZに加えて、任意の微量成分を含んでもよい。微量成分としては、La2O3、Y2O3、Nd2O3及びBaSO4を挙げることができる。前記で例示した担体材料及び微量成分をさらに含むことにより、第1触媒層の触媒活性及び耐熱性を向上させることができる。
【0017】
本態様の排ガス浄化用触媒において、第1触媒層は、排ガス浄化用触媒の下流側端面から基材の全長に対して80から100%の範囲の領域に配置されていればよい。本発明の各態様において、「排ガス浄化用触媒の上流側端面」は、排ガス浄化用触媒に排ガスを流通させるときの流通方向に対して、上流側の端面を、「排ガス浄化用触媒の下流側端面」は、排ガス浄化用触媒に排ガスを流通させるときの流通方向に対して、下流側の端面を、意味する。前記範囲内の領域に第1触媒層が配置されていることにより、本態様の排ガス浄化用触媒は高い排気ガス浄化能力を発揮することができる。
【0018】
本態様の排ガス浄化用触媒において、第2触媒層に含まれるPdは、通常はACZに担持されている。Pdは、NOxを還元してN2Oを生成する反応も触媒し得る。このため、排ガス浄化用触媒においてPdを触媒貴金属として使用する場合、N2Oのような未規制物質の排出量が増加する可能性がある。これに対し、PdがACZに担持されている排ガス浄化用触媒では、N2Oのような未規制物質の排出量を抑制することができる。それ故、第2触媒層に含まれるPdがACZに担持されていることにより、本態様の排ガス浄化用触媒は、高い低温活性を発揮するだけでなく、未規制物質に対する高い排出抑制効果を発揮することができる。
【0019】
第2触媒層は、Pd及びACZに加えて、任意の担体材料及び微量成分を含んでもよい。担体材料としては、AZ、CZ及びアルミナを挙げることができる。微量成分としては、La2O3、Y2O3、Nd2O3及びBaSO4を挙げることができる。前記で例示した担体材料及び微量成分をさらに含むことにより、第2触媒層の触媒活性及び耐熱性を向上させることができる。
【0020】
第2触媒層に含まれるPdは、通常は80%以上、好ましくは85から100%の範囲の量でACZに担持されている。ACZへの担持量が100%未満の場合、Pdは、ACZに加えて前記で例示した他の担体材料に担持されていればよい。
【0021】
第2触媒層において、Pdは、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲、好ましくは20から40%の範囲、より好ましくは30から40%の範囲の領域に所定量が担持されている。当該領域におけるPdの担持量は、通常は1から4 gの範囲であり、1から2 gの範囲であることが好ましい。この場合において、第2触媒層の前記範囲以外の領域には、Pdが実質的に担持されていなくてもよく、さらなるPdが担持されていてもよい。第2触媒層の前記範囲以外の領域には、Pdが実質的に担持されていないことが好ましい。前記範囲内の領域に前記範囲の担持量でPdが担持されていることにより、本態様の排ガス浄化用触媒は高い低温活性を発揮することができる。
【0022】
本態様の排ガス浄化用触媒において、第2触媒層は、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域に配置されていることが好ましく、20から40%の範囲の領域に配置されていることがより好ましく、30から40%の範囲の領域に配置されていることがさらに好ましい。前記範囲内の領域に第2触媒層が配置されていることにより、第2触媒層に含まれるPdをより効率的に排ガスに接触させることができる。このような配置とすることにより、本態様の排ガス浄化用触媒はより高い低温活性を発揮することができる。
【0023】
特に好ましくは、本態様の排ガス浄化用触媒は、第2触媒層が、排ガス浄化用触媒の上流側端面から基材の全長に対して30から40%の範囲の領域に配置されており、該領域にPdが1から2 gの範囲で担持されている。前記特徴を有することにより、本態様の排ガス浄化用触媒は、高い低温活性を発揮するだけでなく、未規制物質に対する高い排出抑制効果を発揮することができる。
【0024】
本態様の排ガス浄化用触媒において、第1触媒層及び第2触媒層に含まれる各材料又は成分の種類及び含有量は、限定するものではないが、例えば、酸等を用いて各触媒層を溶解させた後、得られた溶液中の成分を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析する方法によって決定することができる。
【0025】
本態様の排ガス浄化用触媒において、低温活性は、限定するものではないが、例えば、以下の手順で評価することができる。排ガス浄化用触媒をエンジンの排気系に装着し、所定の空燃比の排ガスを供給して、昇温特性を測定する。排ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化率が50%に達した時点の温度を測定する。本試験において、当該温度が低いほど、低温活性が高い排ガス浄化用触媒と評価することができる。
【0026】
本態様の排ガス浄化用触媒において、未規制物質の排出抑制性能は、限定するものではないが、例えば、以下の手順で評価することができる。排ガス浄化用触媒をエンジンの排気系に装着し、所定の空燃比の排ガスを供給して、未規制物質(例えば、N2O)の排出量を測定する。排ガス供給開始から所定の時間内の未規制物質の排出量の平均値を算出する。本試験において、未規制物質の排出量が少ないほど、未規制物質の排出抑制性能が高い排ガス浄化用触媒と評価することができる。
【0027】
本態様の排ガス浄化用触媒の一実施形態を表す断面図を図1に示す。図1に示すように、一実施形態の排ガス浄化用触媒100は、基材10と、基材10の上面に配置された第1触媒層11と、第1触媒層11の上面に配置された第2触媒層12とを有し、第1触媒層11は、ロジウム13を含み、第2触媒層12は、パラジウム14を含む。図中の矢印は、排ガス浄化用触媒100に排ガスを流通させるときの流通方向を示す。第2触媒層12において、パラジウム14は、排ガス浄化用触媒100の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域に、1から4 gの範囲で担持されている。
【0028】
本態様の排ガス浄化用触媒の別の一実施形態を表す断面図を図2に示す。図2に示すように、一実施形態の排ガス浄化用触媒200は、基材10と、基材10の上面に配置された第1触媒層11と、第1触媒層11の上面に配置された第2触媒層12とを有し、第1触媒層11は、ロジウム13を含み、第2触媒層12は、パラジウム14を含む。図中の矢印は、排ガス浄化用触媒200に排ガスを流通させるときの流通方向を示す。パラジウム14を含む第2触媒層12は、排ガス浄化用触媒200の上流側端面から基材の全長に対して20から50%の範囲の領域に配置されている。このような配置とすることにより、本実施形態の排ガス浄化用触媒は、より高い低温活性を発揮することができる。
【0029】
以上のように、本態様の排ガス浄化用触媒は、高い低温活性を発揮するだけでなく、未規制物質に対する高い排出抑制効果を発揮することができる。それ故、本態様の排ガス浄化用触媒を自動車等に適用することにより、厳しい排ガスの排出規制にも適合し得る自動車等を提供することができる。
【実施例0030】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
<I:材料>
(1)材料1(Al2O3担体材料)
1から10質量%のLa2O3を含む、La2O3複合化Al2O3を使用した。
(2)材料2(ACZ担体材料)
30質量%のCeO2を含み、且つLa2O3及びY2O3が微量添加され、高耐熱化が施された、Al2O3-CeO2-ZrO2複合酸化物を使用した。
(3)材料3(AZ担体材料)
50から80質量%のZrO2を含み、且つNd2O3、La2O3及びY2O3が微量添加され、高耐熱化が施された、Al2O3-ZrO2複合酸化物を使用した。
(4)材料4(CZ担体材料)
30質量%のCeO2を含み、且つLa2O3及びY2O3が微量添加され、高耐熱化が施された、CeO2-ZrO2複合酸化物を使用した。
(5)材料5(Pd材料)
硝酸パラジウムを使用した。
(6)材料6(Rh材料)
硝酸ロジウムを使用した。
(7)材料7(Ba材料)
硫酸バリウムを使用した。
(8)基材
875cc(600セル六角 壁厚2 mil)のコージェライトハニカム基材を使用した。
【0032】
<II:排ガス浄化用触媒の作製>
[II-1:比較例1]
最初に攪拌しながら、蒸留水にRh材料(材料6)及びAZ担体材料(材料3)を投入し、これを乾燥及び焼成することで、Rh/AZ材料を調製した。攪拌しながら、蒸留水にRh/AZ材料、ACZ担体材料(材料2)、Al2O3担体材料(材料1)、及びAl2O3系バインダーを投入し、懸濁したスラリー1を調製した。次に、調製したスラリー1を基材へ流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことにより、基材壁面に材料をコーティングした。その際、コーティング材料は、基材容量に対して、材料6がRhとして0.3 g/L-領域、材料1が30 g/L-領域、材料2が60 g/L-領域、材料3が30 g/L-領域となるようにコート層を調製した。コート幅は、下流側端面から基材の全長に対して100%の領域となるように調整した。最後に、120℃に保たれた乾燥機に、スラリー1を塗布した基材を2時間置いてコーティング材料の水分を蒸発させた後、該基材を電気炉で500℃、2時間焼成して、Rhを含む第1触媒層を調製した。
【0033】
同様に、攪拌しながら、蒸留水にPd材料(材料5)及びCZ担体材料(材料4)を投入し、これを乾燥及び焼成することで、Pd/CZ材料を調製した。攪拌しながら、蒸留水にPd/CZ材料、Al2O3担体材料(材料1)、Ba材料(材料7)、及びAl2O3系バインダーを投入し、懸濁したスラリー2を調製した。これを、第1触媒層を調製した基材へ、スラリー1を塗布した端面とは逆側の端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことにより、基材壁面に材料をコーティングした。その際、コーティング材料は、基材容量に対して、材料5がPdとして4.0 g/L-領域、材料1が25 g/L-領域、材料4が75 g/L-領域、材料7が13 g/L-領域とになるようにコート層を調製した。コート幅は、上流側端面から基材の全長に対して40%の領域となるように調整した。最後に、120℃に保たれた乾燥機に、スラリー2を塗布した基材を2時間置いてコーティング材料の水分を蒸発させた後、該基剤を電気炉で500℃、2時間焼成して、Pdを含む第2触媒層を調製した。Pdを含む第2触媒層において、上流側端面から基材の全長に対して40%の範囲の領域に、Pdは1.4 g担持されている。
【0034】
[II-2:比較例2]
比較例1の手順において、Pdを含む触媒層が第1触媒層に、Rhを含む触媒層が第2触媒層になるように手順を入れ替えた他は同様の手順で、比較例2の排ガス浄化用触媒を調製した。Pdを含む第1触媒層において、上流側端面から基材の全長に対して40%の範囲の領域に、Pdは1.4 g担持されている。
【0035】
[II-3:実施例1]
比較例1の手順において、第2触媒層の調製に使用したCZ担体材料(材料4)をACZ担体材料(材料2)に変更した他は同様の手順で、実施例1の排ガス浄化用触媒を調製した。Pdを含む第2触媒層において、上流側端面から基材の全長に対して40%の範囲の領域に、Pdは1.4 g担持されている。
【0036】
[II-4:比較例3]
実施例1の手順において、材料5のコート量を、基材容量に対してPdとして2.0 g/L-領域に変更し、且つ第2触媒層のコート幅を、上流側端面から基材の全長に対して80%の領域となるように変更した他は同様の手順で、比較例3の排ガス浄化用触媒を調製した。Pdを含む第2触媒層において、上流側端面から基材の全長に対して80%の範囲の領域に、Pdは1.4 g担持されている。すなわち、上流側端面から基材の全長に対して40%の範囲の領域に、Pdは0.7 g担持されている。
【0037】
比較例1から3及び実施例1の排ガス浄化用触媒の構成を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
<III:排ガス浄化用触媒の評価>
[III-1:耐久試験]
作製した比較例及び実施例の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて耐久試験を実施した。具体的には、比較例及び実施例の排ガス浄化用触媒をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)繰り返して流すことにより行った。
【0040】
[III-2:低温活性評価試験]
III-1の手順で耐久試験を実施した比較例及び実施例の排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)14.4の排ガスを供給して、Ga=30 g/s、500℃までの昇温特性を測定した。排ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化率が50%に達した時点の温度を測定した。本試験において、当該温度が低いほど、低温活性が高い排ガス浄化用触媒と評価することができる。
【0041】
[III-3:N2O排出評価試験]
III-1の手順で耐久試験を実施した比較例及び実施例の排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)14.4の排ガスを供給して、Ga=30 g/s、550℃でのN2O排出量を測定した。排ガス供給開始から180秒間のN2O排出量の平均値を算出した。本試験において、N2O排出量が少ないほど、N2O排出抑制性能が高い排ガス浄化用触媒と評価することができる。
【0042】
[III-4:排ガス浄化用触媒の評価試験の結果]
比較例及び実施例の排ガス浄化用触媒の低温活性評価試験及び窒素酸化物排出評価試験の結果を図3に示す。図中、左側の縦軸は、低温活性評価試験において、排ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化率が50%に達した時点の温度(℃)を示す。右側の縦軸は、N2O排出評価試験において、N2O排出量の平均値(ppm)を示す。黒塗りの棒で示すデータは左側の縦軸に、白抜きの丸で示すデータは右側の縦軸に、それぞれ対応する。
【0043】
図3に示すように、排ガス浄化用触媒の第2触媒層にPdを配置することにより低温活性を向上させることができるものの、N2O排出量は高くなった(比較例1)。他方、排ガス浄化用触媒の第1触媒層にPdを配置することによりN2O排出抑制効果を向上させることができるものの、低温活性が低下した(比較例2)。これに対し、排ガス浄化用触媒の第2触媒層にPdを配置し、且つACZにPdを担持させることにより、N2O排出抑制効果を向上させつつ、低温活性を向上させることができることが明らかとなった(実施例1)。実施例1の排ガス浄化用触媒の構成において、第2触媒層のコート幅を2倍に変更し、第2触媒層の上流側端面におけるPd担持量を半量に減少させた場合、ほぼ同等のN2O排出抑制効果を発揮したものの、低温活性が低下した(比較例3)。
【0044】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
100, 200…排ガス浄化用触媒、10…基材、11…第1触媒層、12…第2触媒層、13…ロジウム、14…パラジウム
図1
図2
図3