(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099152
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】表示物の取付体及び表示物セット
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
G09F9/00 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002877
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000177357
【氏名又は名称】三和サインワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】澤村 豊
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 翔
【テーマコード(参考)】
5G435
【Fターム(参考)】
5G435BB12
5G435EE13
5G435EE50
5G435LL04
5G435LL08
(57)【要約】
【課題】 インテリアを損なうことなく、デジタルサイネージ等の表示物2を内壁へ設置できる取付体を提供する。
【解決手段】 本発明のデジタルサイネージ等の表示物2の取付体3は、下端へ床面配置部材5と上端へ天井配置部材6を備えた複数の柱体4と、胴縁部材7とを備え、各柱体4は、間隔を開けて、夫々壁面kに沿って上下に伸び、各胴縁部材7は、柱体4の夫々へ固定されて各柱体4の夫々と交差し複数の柱体4を一体とし、柱体4は、下方柱部材41と上方柱部材42と継手部材43とにて構成され、上方柱部材42は、継手部材43にて下方柱部材41に対し上下にスライド可能に継がれると共に、ボルトにて前記下方柱部材に対しスライドできないように固定でき、柱体4を床面と天井面間にて突っ張った状態とし、表示物2を壁面kへ設置することを可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内壁へデジタルサイネージ等の表示物を設置する、表示物の取付体であって、
前記内壁の壁面へ沿って配置される複数の柱体と、前記各柱体の下端に設けられて床面へ配置される床面配置部材と、前記各柱体の上端に設けられて天井面へ配置される天井配置部材と、1つ又は複数の胴縁部材とを備え、
複数の前記柱体は、横方向について互いに間隔を開けて配列され、夫々前記壁面に沿って上下に伸びるものであり、
前記各胴縁部材は、横方向に伸びるよう複数の前記柱体の夫々へ固定されて前記柱体の夫々と交差し且つ複数の前記柱体を一体とするものであり、
前記柱体の夫々は、下方柱部材と上方柱部材の、少なくとも2本の柱部材にて構成され、
前記上方柱部材は、前記下方柱部材と別体に形成されて、前記下方柱部材の上方に継がれるものであり、
前記床面配置部材は、前記下方柱部材の下端へ設けられ、
前記天井配置部材は、前記上方柱部材の上端へ設けられ、
前記上方柱部材は、前記下方柱部材に対し上下にスライド可能に継がれると共に、ボルト等の固定具にて前記下方柱部材に対しスライドできないように固定でき、
前記スライドにて前記柱体の長さを調整し、前記柱体を床面と天井面間にて前記柱体を突っ張った状態とすることで前記取付体を前記壁面へ配置でき、前記表示物を前記壁面へ設置することを可能とする表示物の取付体。
【請求項2】
前記柱体は、前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々と、別体に形成された、筒状の継手部材を備え、前記継手部材を縦にした状態において、前記下方柱部材の上端側が前記継手部材の下端から前記継手部材へ挿入されて前記継手部材へ前記固定具にて固定され、前記上方柱部材の下端側が前記継手部材の上端から前記継手部材へ挿入されて前記継手部材へ前記固定具にて固定されるものであり、前記スライドにて前記継手部材に対する前記下方柱部材と前記上方柱部材の少なくとも何れか一方の固定位置を調整することにより、前記柱体の前記長さの調整を行うことができる請求項1記載の表示物の取付体。
【請求項3】
3本以上の前記柱体を備え、
前記各前記柱体の前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々は、側面へ夫々の長手に伸びる溝を備え、
筒状の前記継手部材は、側面において、内部空間と外部とを連絡する貫通孔を、前記継手部材の長手方向について互いに位置の異なる少なくとも2箇所に備え、前記貫通孔の夫々は雌ねじを備え、
前記固定具は、前記貫通孔へねじ込まれるボルトであり、前記ボルトを前記貫通孔へねじ込み、前記下方柱部材及び前記上方柱部材の前記継手部材内へ収容された箇所について、前記ボルトの先端を前記各溝の底へ押し付けることで前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々を前記継手部材に対し固定することができ、前記ボルトを緩める或いは前記貫通孔から前記ボルトを外すことで、前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々は、前記継手部材に対して前記スライドを可能とするものであり、
前記各下方柱部材において前記継手部材の下方へ、下胴縁部材と、前記下胴縁部材の上方へ配置される上胴縁部材の、少なくとも2本の前記胴縁部材を備え、
前記胴縁部材の少なくとも一方へ前記表示物が取り付けられる請求項2記載の表示物の取付体。
【請求項4】
横方向へ伸びる前記胴縁部材の長さは、取り付けられる前記表示物全体の横幅と同じか当該横幅よりも大きく、
前記柱体のうち、横方向の左右両側に設けられる柱体は、正面視において前記表示物の左側及び右側に配置されて、前記表示物の左右両端を保護する、保護体である請求項1乃至3の何れかに記載の表示物の取付体。
【請求項5】
少なくとも1台のデジタルサイネージ等の表示物と、請求項1記載の表示物の取付体と、前記表示物を前記取付体へ固定する治具とを備えた表示物セット。
【請求項6】
少なくとも1台のデジタルサイネージ等の表示物と、請求項3記載の表示物の取付体と、前記表示物を前記取付体へ固定する治具とを備え、
前記表示物が取り付けられる前記胴縁部材は、上面と下面へ前記胴縁部材の長手方向即ち横方向へ沿って伸びる溝を備え、
前記治具は、前記表示物の背面へ設けられた第1の爪と、前記表示物と別体に形成された第2の爪とを備え、
前記第1の爪と第2の爪の少なくとも一方を前記胴縁部材の前記上面の溝へ挿入し、前記第1の爪と第2の爪の少なくとも他の一方を前記胴縁部材の前記下面の溝へ挿入して、前記第2の爪をボルト等の留具にて前記表示物の背面へ固定し、前記第1及び第2の爪の爪先にて前記胴縁部材を挟持することで、前記治具は前記表示物を前記胴縁部材へ固定することができる表示物セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、表示物の取付体及び表示物セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広告媒体としてデジタルサイネージが普及してきている。
デジタルサイネージは、ディスプレイやタブレット端末などの電子媒体を使用して広告や看板、掲示板などの用途で情報を発信するシステムであり、STB(Set Top Box/セットトップボックス)に接続したディスプレイへ、動画やテキスト・画像などのコンテンツを表示させるものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、室内にてデジタルサイネージの表示装置(ディスプレイ)を壁掛けとするものが示されている(
図1~
図3)。
特許文献1へ示されているのは、表示装置の横移動の防止が可能な表示装置用壁取付具、表示装置用壁取付ベース板及び表示装置セットを提供することを目的とするものである(特許文献1の段落0009)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1へ示されたものに代表される通り、従来のデジタルサイネージは、建物の内壁へ直接ディスプレイを取付ける必要があった(特許文献1の段落0012~段落0016及び
図1~
図3へ示されたベース板2)。
建物の内壁に直接デジタルサイネージの上記ディスプレイを取り付けるためには、壁(当該内壁)へボルトを通すことが必要であり、壁に当該ボルトを通す穴を開けることが強いられた。
【0006】
特に、上記の通り壁に穴を開けるには、壁内を通る配線等を傷つけないように、事前に、壁内の配線の位置や壁内の構造を把握しておく必要があった。また、壁自体にディスプレイを支持する十分な強度がない場合、壁内を通る柱などを探して当該柱を通っている位置に向けて壁にボルトを通す必要があり、当該柱の位置も事前に把握しておく必要があった。
壁内の配線や柱の位置を調べる労を取り、その位置の把握が事前にできたとしても、壁内の配線や構造によっては、上記ディスプレイを取付けできないことを知る結果となることも多々あった。
【0007】
更に、上記にて設置したディスプレイが不要となった場合などディスプレイの除去や移動の必要が生じた際、上記設置によってディスプレイは壁に通された上記ボルトにて完全に固定されているので、ディスプレイの取り外しやその移動には手間がかかる。また、当該取り外し後、ボルトを通す穴を塞ぐなどディスプレイの取付け前の状態に壁を戻す手間が必要となる場合もある。
【0008】
そこで、本発明の発明者は、建物の内壁へデジタルサイネージのディスプレイを設置する取付体として、上記内壁の壁面へ沿って上下に伸びるよう配置され上記ディスプレイを取り付ける1本の柱体と、当該柱体の下端に設けられて床面へ配置される床面配置部材と、上記柱体の上端に設けられて天井面へ配置される天井配置部材とを備えるものであって、上記柱体が、下方柱部材と上方柱部材の、少なくとも2本の柱部材にて構成され、上記上方柱部材が、上記下方柱部材と別体に形成され上記下方柱部材の上方に継がれるものであり、上記床面配置部材が上記下方柱部材の下端へ設けられ、上記天井配置部材が上記上方柱部材の上端へ設けられ、上記上方柱部材が上記下方柱部材に対し上下にスライド可能に継がれると共に、ボルトにて上記下方柱部材に対しスライドできないように固定でき、上記スライドにて上記柱体の長さを調整し、上記柱体を床面と天井面間にて上記柱体を突っ張った状態とすることで上記取付体を上記壁面へ上記ディスプレイを設置可能とするものを考えた。
上記アイデアによって、上記壁面を傷つけることなくディスプレイを上記壁面へ設置することができた。
【0009】
しかし、上記アイデアに従い1本の上記取付体を用いてディスプレイを壁面へ配置してみると、室内空間にてディスプレイを取り付けた1本の棒状体の上下に伸びる箇所が、フラットな内壁とは調和しないスポットとなってしまうことがあった。
上記取付体に設けられたディスプレイも、フラットな壁面から空中へ飛び出し宙ぶらりんに見える違和感を抱かせ、棒状の上記取付体と共に壁面との調和を壊し、インテリアの美観を著しく損なうものとなっていた。
また、デジタルサイネージのディスプレイなどの表示装置に限らず、上記取付体を用いて旧来の看板やフォトパネルなどの表示物を取り付ける場合であっても上記の問題のある点は同様である。
本発明は、建物の内壁へデジタルサイネージなどの表示物を設置する際に当該内壁を傷つけることなく設置することを前提とし、その上で上記違和感を解消してインテリアを損なわずに室内の装飾性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、建物の内壁へデジタルサイネージ等の表示物を設置する、表示物の取付体であって、前記内壁の壁面へ沿って配置される複数の柱体と、前記各柱体の下端に設けられて床面へ配置される床面配置部材と、前記各柱体の上端に設けられて天井面へ配置される天井配置部材と、1つ又は複数の胴縁部材とを備え、複数の前記柱体は、横方向について互いに間隔を開けて配列され、夫々前記壁面に沿って上下に伸びるものであり、前記各胴縁部材は、横方向に伸びるよう複数の前記柱体の夫々へ固定されて前記柱体の夫々と交差し且つ複数の前記柱体を一体とするものであり、前記柱体の夫々は、下方柱部材と上方柱部材の、少なくとも2本の柱部材にて構成され、前記上方柱部材は、前記下方柱部材と別体に形成されて、前記下方柱部材の上方に継がれるものであり、前記床面配置部材は、前記下方柱部材の下端へ設けられ、前記天井配置部材は、前記上方柱部材の上端へ設けられ、前記上方柱部材は、前記下方柱部材に対し上下にスライド可能に継がれると共に、ボルト等の固定具にて前記下方柱部材に対しスライドできないように固定でき、前記スライドにて前記柱体の長さを調整し、前記柱体を床面と天井面間にて前記柱体を突っ張った状態とすることで前記取付体を前記壁面へ配置でき、前記表示物を前記壁面へ設置することを可能とする表示物の取付体を提供する。
尚、デジタルサイネージ等の表示物とは、デジタルサイネージのディスプレイ、テレビジョンセット、コンピュータのディスプレイ、医療機器や理美容機器のモニタ、その他の表示装置、旧来の光源を備えない看板、内照式看板、更にはポスターパネルやフォトフレーム、額に入れられた絵画といった表示物であって、バックライトなどの光源を備えた表示物或いは当該光源を備えない前記表示物を含む。
また、本発明では、前記柱体は、前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々と、別体に形成された、筒状の継手部材を備え、前記継手部材を縦にした状態において、前記下方柱部材の上端側が前記継手部材の下端から前記継手部材へ挿入されて前記継手部材へ前記固定具にて固定され、前記上方柱部材の下端側が前記継手部材の上端から前記継手部材へ挿入されて前記継手部材へ前記固定具にて固定されるものであり、前記スライドにて前記継手部材に対する前記下方柱部材と前記上方柱部材の少なくとも何れか一方の固定位置を調整することにより、前記柱体の前記長さの調整を行うことができる表示物の取付体を提供できた。
更に本発明では、3本以上の前記柱体を備え、前記各前記柱体の前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々は、側面へ夫々の長手に伸びる溝を備え、筒状の前記継手部材は、側面において、内部空間と外部とを連絡する貫通孔を、前記継手部材の長手方向について互いに位置の異なる少なくとも2箇所に備え、前記貫通孔の夫々は雌ねじを備え、前記固定具は、前記貫通孔へねじ込まれるボルトであり、前記ボルトを前記貫通孔へねじ込み、前記下方柱部材及び前記上方柱部材の前記継手部材内へ収容された箇所について、前記ボルトの先端を前記各溝の底へ押し付けることで前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々を前記継手部材に対し固定することができ、前記ボルトを緩める或いは前記貫通孔から前記ボルトを外すことで、前記下方柱部材及び前記上方柱部材の夫々は、前記継手部材に対して前記スライドを可能とするものであり、前記各下方柱部材において前記継手部材の下方へ、下胴縁部材と、前記下胴縁部材の上方へ配置される上胴縁部材の、少なくとも2本の前記胴縁部材を備え、前記胴縁部材の少なくとも一方へ前記表示物が取り付けられる表示物の取付体を提供できた。
また更に本発明では、横方向へ伸びる前記胴縁部材の長さは、取り付けられる前記表示物全体の当該横幅よりも大きく、前記柱体のうち、横方向の左右両側に設けられる柱体は、正面視において前記表示物の左側及び右側に配置されて、前記表示物の左右両端を保護する、保護体である表示物の取付体を提供できた。
また更に本発明では、少なくとも1台のデジタルサイネージ等の表示物と、前記表示物の上記取付体と、前記表示物を前記取付体へ固定する治具とを備えた表示物セットを提供できた。
更にまた本発明は、少なくとも1台のデジタルサイネージ等の表示物と、前記表示物の上記取付体と、前記表示物を前記取付体へ固定する治具とを備え、前記表示物が取り付けられる前記胴縁部材は、上面と下面へ前記胴縁部材の長手方向即ち横方向へ沿って伸びる溝を備え、前記治具は、前記表示物の背面へ設けられた第1の爪と、前記表示物と別体に形成された第2の爪とを備え、前記第1の爪と第2の爪の少なくとも一方を前記胴縁部材の前記上面の溝へ挿入し、前記第1の爪と第2の爪の少なくとも他の一方を前記胴縁部材の前記下面の溝へ挿入して、前記第2の爪をボルト等の留具にて前記表示の背面へ固定し、前記第1及び第2の爪の爪先にて前記胴縁部材を挟持することで、前記治具は前記表示物を前記胴縁部材へ固定することができる表示物セットを提供できた。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、デジタルサイネージ等の表示物を内壁へ設置するのに、壁へ表示物固定用のボルトを通す必要がなく、壁にボルトを通すための穴を開ける必要がない。本発明では、上記上方柱部材が、上記下方柱部材に対し上下にスライド可能に継がれると共に、固定具にて下方柱部材に対しスライドできないよう固定でき、当該スライドにて上記柱体の長さを調整し、柱体を床面と天井面間にて上記柱体を突っ張った状態とすることで上記取付体を壁面へ設置できるものであり、上記表示物の内壁への設置に際し内壁を直接施工する必要がなく、内壁を傷つけない。
上記効果を前提とし、特に本発明では、取付体が横方向について互いに間隔を開けて配列され、夫々上記壁面に沿って上下に伸びる複数の柱体に対し、横方向に伸び複数の上記柱体の夫々と交差するよう固定されて複数の柱体を一体とする胴縁部材を備えることで、格子状の装飾面を上記壁面へ施すことができる。本発明の実施により、上記格子状の装飾面を通して背後の内壁を見せることで、壁と表示物の取付体との調和を図ると共に、格子状の取付体による斬新なデザインをインテリアに付与することができた。
即ち、本発明は、表示物がレイアウトされた、壁面へ重なるグリッド面(格子面)の形成にてインテリアに融和する装飾性を室内へ与えた。
【0012】
より詳しくは、上記の格子状の取付体を背景としてディスプレイを壁面へ配置することにより、一本の棒状体にてディスプレイを内壁へ設置した場合に抱かせる、当該棒状体共々壁の一点から浮き出たディスプレイの宙ぶらりんの不安定感即ちインテリアを損なう違和感を解消し、ロビーなどのインテリアと表示物及びその取付体を調和のとれたものとした。本発明は、上記の通り、ディスプレイの設置において、格子状の取付体という斬新なデザインの創出によって上記調和を図ると共にインテリアの美観を向上させたのである。
また、格子状の構造による美観の向上のみならず、当該格子状の構造により、ディスプレイの取り付けをより安定したものとした。
特に請求項4の本発明において、横方向の左右両側に設けられる柱体は保護体として、ディスプレイの左右両端を保護することを可能せしめた。
【0013】
また、上記インテリア向上の前提となる上記内壁を傷つけない点に付随して、従来の、壁に穴を開けるために壁内を通る配線等を傷つけないよう事前に壁内の配線の位置や壁内の構造を把握しておくという必要も無くした。更にボルトを用いて建物の壁に直接ディスプレイを支持させるものでないため、事前に壁内を通る柱などを探しておく必要もない。
特に、本発明では、建物自体に何ら施工を施す必要がなく、事前に壁内の状況を知る必要がないため建物の設計図を調達しておくなどの手間が不要であり、壁内の状況によってディスプレイの設置を諦めるということもない。
更に、上記にて設置したディスプレイが不要となった場合などディスプレイの除去や移動の必要が生じた際、本発明では、上記設置においてディスプレイを直接壁へ固定するものではないので、ディスプレイの取り外しやその移動の手間を低減でき、また、当該取り外し後、ボルトを通す穴を塞ぐなどディスプレイの取付け前の状態に壁を戻す手間も排除できた。
また更に本発明では、上記の通り、柱体を床面と天井面間にて上記柱体を突っ張った状態とすることで上記取付体を壁面へ設置するものであるため、荷重により前傾しようとする回転運動を、天面と天井の接触により止めるものであり、構造的にディスプレイは上記前傾にて転倒しないものとなっている。このため、ティスプレイの前傾を引き留めるための張力をディスプレイへ掛ける必要もない。
上記の通り、本発明は、ボルトを用いて壁へ直接固定するものではないため、言い換えれば、本発明では、取付具を含む表示物セットは据え置き式のものである為、設置、除去及び移動が容易に行える。また、表示物の除去や移動の際に、ボルトを通した穴を埋めて壁面を元の状態へ戻す手間も不要である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る表示装置セットの使用状態を示す略側面図、(B)は(A)の略正面図。
【
図2】
図1(A)の表示装置セットから表示装置を除いた(表示装置の)取付体の略正面図。
【
図3】(A)は
図1(A)へ示す表示装置セット上部の拡大側面図、(B)は
図1(B)へ示す表示装置セット上部の拡大正面図。
【
図4】(A)は
図1(A)へ示す表示装置セット下部の拡大側面図、(B)は
図1(B)へ示す表示装置セット下部の拡大正面図。
【
図5】(A)は
図3(B)に示す継手部材の拡大正面図、(B)は(A)のX-X断面図、(C)は(A)のY-Y断面図、(D)は(B)の継手部材のみ示す断面図。
【
図6】(A)は
図4(A)(B)へ示す床面配置部材の柱体への固定構造を示す一部切欠斜視図、(B)は胴縁部材と継手部材を省略した
図2へ示す1本の柱体の拡大平面図、(C)は
図3(A)(B)へ示す天井配置部材の柱体への固定構造を示す一部切欠斜視図。
【
図7】(A)は
図2及び
図4(B)へ示す下胴縁部材の柱体への固定構造を示す一部切欠要部拡大正面図、(B)は(A)の平面図、(C)は(A)の右側面図。
【
図8】(A)は
図2及び
図3(B)へ示す上胴縁部材の柱体への固定構造を示す一部切欠要部拡大正面図、(B)は(A)の平面図、(C)は(A)の左側面図。
【
図9】(A)は
図8(C)へ示すパネルハンガー(上胴縁部材)へ
図3(A)のデジタルサイネージのディスプレイ(表示装置)を取り付ける過程を示す一部分解拡大側面図、(B)は(A)へ示す取り付けの過程完了後の拡大側面図。
【
図10】(A)は
図1(B)及び
図2へ示す取付体の他の使用例を示す一部切欠略正面図、(B)は取付体の他の実施の形態を示す一部切欠略正面図。
【
図11】
図1(B)へ示す実施の形態に係る表示装置セットの変更例を示す略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
この表示物セット1は、表示物2と、表示物2を取り付けて壁面kへ表示物2を配置する取付体(以下単に取付体3と呼ぶ。)と、表示物2を取付体3へ固定する治具21とを備える(
図1)。
この例では、表示物2は、表示装置であるデジタルサイネージのディスプレイを例示する。以下必要に応じて表示物2を表示装置2と呼び、表示物セット1を表示装置セット1と呼ぶ。
以下この表示装置セット1の各部の構成について詳しく説明する。
【0016】
(表示装置2)
上記の表示装置2は、デジタルサイネージのディスプレイである(
図1及び
図9)。即ち表示装置2は、液晶又はLED、有機ELといった薄型ディスプレイである。
表示装置2は、表示面側を表面として、裏面側に取付体3へ表示装置2を固定する、上記治具21が設けられる。治具21は表示装置2へ付属する周知のものを利用することができる。
当該治具21については後に詳述する。
デジタルサイネージのSTB(セットトップボックス)及び、STBと上記ディスプレイとの間の配線は省略するが、Wi-Fi(ワイファイ)など無線LANを利用する場合当該配線は不要である。即ち、表示装置2は有線・無線のいずれでSTBと接続するものであってもよい。
また、表示装置2には、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)のコネクタを備え、コンテンツを記録したUSBメモリを当該コネクタへ接続して当該コンテンツを表示する、STB不要なスタンドアロン型のものを採用することもでき、この場合も配線は不要である。
STBも、小型のものであれば、表示装置2と共に取付体3へ取り付けるものとしてもよい。
【0017】
表示装置2はデジタルサイネージのディスプレイに限定するものではなく、液晶テレビなどの薄型テレビジョンセットやコンピュータの液晶モニタを表示装置2としてもよい。
但し、表示装置2は、スピーカやアンプを内蔵して重量の大きなテレビジョンセットよりも、静止画を表示するだけで不要な機能のない、比較的軽量なデジタルサイネージ専用のディスプレイのほうが、アルムニウムなどの軽金属で構成された、デジタルサイネージ専用の取付体3へ取り付けるのに適する。
【0018】
(取付体3)
取付体3は、格子状に形成されるものであり、正面視長方形の上記ディスプレイにマッチしたものである(
図1及び
図2)。
特に、電子看板として広告を表示する目的から、デジタルサイネージ専用のディスプレイには、一般に発色が良い高輝度の、視認性の高いものが採用される。
このため上記専用ディスプレイに看者mの視線が強く誘導されるので、ディスプレイの傍に現れる取付体3がインテリアを損なうものであれば、広告を見る多くの者(看者m)にマイナスのイメージを与えてしまう。この点について上記の通り、矩形のディスプレイにマッチし、インテリアに融和する格子状の装飾性を備えた本発明に係る取付体3は、上記マイナスイメージを払拭できるものである。
【0019】
即ち、取付体3は、表示装置2を設置する室内の壁面kへ沿って配され且つ支柱となる複数の柱体4と、柱体4夫々の下端に設けられた床面配置部材5と、柱体4夫々の上端に設けられた天井配置部材6と、上記複数の柱体4に渡された胴縁部材7とを備える。互いに隣り合う柱体4同士は間隔を開けて配される。
複数の柱体4は、平行に並べられて夫々上下へ縦に伸び、横方向に伸びる上記胴縁部材7を固定され、胴縁部材7と共に複数の柱体4同士が一体とされる。即ち、上下縦に伸びる柱体4の夫々と、横に伸び当該柱体4の夫々と交差する胴縁部材7とにて取付体3は、格子状に構成される。柱体4に対する胴縁部材7の固定は、ボルトやネジなどの周知の固定手段を採用する。
【0020】
隣接する柱体4同士の間の間隔は、取付体3にて表示装置2を設置するスペースに応じて変更すればよいし、固定する胴縁部材7の長さによって変更すればよい。また、当該間隔は全て等しいものとするのが好ましいが、インテリアに応じ隣接する柱体4の対によって異なるものとしてもよい。
この例では、取付体3は、5本の柱体4を備え、下胴縁部材71と上胴縁部材72の2本の胴縁部材7を備える。
【0021】
この例では、上胴縁部材72ヘ上記表示装置2が取付けられる。即ち、上胴縁部材72が上記ディスプレイを固定するパネルハンガーを構成する。
図1(B)は、上胴縁部材72へ横並びに3台の上記ディスプレイを取り付けたものを例示する。尚、上胴縁部材72へ取り付ける上記ディスプレイは、1台であってもよいし2台、或いは4台以上であってもよい。また、下胴縁部材71へ上記ディスプレイを取り付けるものとしても実施できる。
【0022】
床面配置部材5は、この例では床面へ対面する薄板状体である(
図2、
図4及び
図6(A)(B))。
天井配置部材6は、この例では天井へ対面する棒状体である(
図2及び
図3及び
図6(C))。天井配置部材6は上方柱部材42の上端から前方へ向け上方柱部材42に対し直角に伸びる。
【0023】
柱体4の夫々は、下方柱部材41及び上方柱部材42の2本の柱部材と、両柱部材を接続する継手部材43とを備える(
図1~
図3及び
図5)。継手部材43は、下方柱部材41及び上方柱部材42と別体に形成されたものである。
この例では、下方柱部材41と上方柱部材42は、何れも押出にて形成された同じ太さ(径)のアルミニウム製の棒状体であり、筒状に形成された中空の継手部材43の一端から下方柱部材41の一端(上端)側が継手部材43へ収容され、継手部材43の他の一端から上方柱部材42の一端(下端)側から継手部材43へ収容される。
上記の床面配置部材5は、下方柱部材41の他の一端(下端)へ設けられ、天井配置部材6は、上方柱部材42の他の一端(上端)へ設けられる。
【0024】
特にこの例では、下方柱部材41と上方柱部材42とは、何れも断面を矩形特に略正方形とする角柱体(角材)であり、継手部材43は断面を矩形とする箱状の筒である。継手部材43の内部空間43aへ下方柱部材41と上方柱部材42夫々の上記一端側が継手部材43に対しスライド可能に挿入される。
即ち、上方柱部材42は、継手部材43にて下方柱部材41に対し上下にスライド可能に継がれると共に、固定具44にて前記下方柱部材に対しスライドできないように固定されているのであり、この例では下方柱部材41も、継手部材43にて上方柱部材42に対し上下にスライド可能に継がれると共に上記と別途の固定具44にて前記下方柱部材に対しスライドできないように固定されている。
下方柱部材41と上方柱部材42の断面の上記正方形の一辺は3cm~8cmとするのが適する。但し、下方柱部材41と上方柱部材42の断面の寸法は格子の装飾性を損なわないものであれば上記の数値範囲外であってもよい。
【0025】
固定具44はボルトである。但し、固定具44には、螺子などのボルト以外の周知のものを採用して実施してもよい。
この例では、継手部材43の左右両側面の夫々には、内部空間43aへ通じる貫通孔43bが上下2箇所に設けられている。貫通孔43bの夫々には雌ねじが形成されている。
固定具44である上記ボルトを貫通孔43bへねじ込み、下方柱部材41及び上方柱部材42の継手部材43内へ収容された箇所について、当該ボルトの先端を各溝41a,42aの底へ押し付けることで下方柱部材41及び上方柱部材42の夫々を継手部材43に対し固定することができる。
【0026】
固定具44である上記ボルトを緩め或いは貫通孔43bから外すことで、下方柱部材41及び上方柱部材42の夫々の継手部材43に対する上記のスライドが可能となる。
上記スライドにて継手部材43に対する下方柱部材41と上方柱部材42の一方或いは双方の固定位置を調整することにより、柱体4の長さの調整を行うことができる。
取付体3を設置する天井tの高さ、即ち床uと天井t間の間隔に応じ、上記スライドにて各柱体4の長さを調整し、各柱体4を床面と天井面間にて突っ張った状態とすることで取付体3を壁面kへ配置・固定し壁面へ設置すればよい。
【0027】
特に表示装置2を設置する天井の高さによって、各柱体4の最大長さを決めればよい。
但し、床と天井間にて、各柱体4を突っ張った状態にすることで取付体3を設置する必要があるため、天井tと床u間へ配置していない状態の各柱体4を最も伸ばした場合に、各柱体4の長さは天井tと床u間の幅よりも大きくできるものとする。
一例としては、各柱体4を上下へ最も伸ばした状態において柱体4の夫々を2m以上として実施できたが、ロビーなど比較的天井tの高い空間への取付体3の設置では、上記最も伸ばした状態の柱体4の夫々を2.5m以上、或いは3m以上とするのが好ましい。但し、上記の、最も伸ばした柱体4の長さは、例示であり、上述の通り、表示装置2を設置する天井の高さによって、各柱体4の最大長さを決めればよく、上記数値に限定するものではない。
継手部材43の上下の長さを大きくすれば、上記スライド幅を大きくでき、低い天井から高い天井tに幅広く対応できる。
【0028】
複数の柱体4間の間隔及び胴縁部材7同士の間の間隔は、柱体4の本数、胴縁部材7の本数によって、更には支持する表示装置2の大きさや台数によって、或いはインテリアとしての格子の目の大きさの要望に応じて変更すればよい。
例えば柱体4間の間隔は0.2m~1.5mとすることができ、また胴縁部材7間の間隔は0.3m~2mとすることができる。実用的な範囲では、柱体4間の間隔は0.5m~1.2mとし、胴縁部材7の間隔は0.5m~1.5mとするのが望ましい。
図示した例では、柱体4間の間隔は約1mとし、胴縁部材7間の間隔は約1.3mとした。
また、ロビーなどの人の往来が比較的多い場所を想定するこの例では、取付体3は、看者mの頭上に表示装置2を配置できる高さに、上胴縁部材72を設けている(
図1(A)及び(B))。実用的な範囲では、上胴縁部材72を、床uから1.5m以上の高さに設け、特に床uから1.8m以上の高さに設けるのが望ましい。
但し、上記の各部の数値は、取付体3を格子状とできる範囲において変更可能である。
【0029】
ここで、上記の継手部材43に対する下方柱部材41及び上方柱部材42の取付けについて、より具体的に説明する。
下方柱部材41の左右側面に下方柱部材41の長手(上下)方向へ伸びる溝41aが設けられている(
図3(A)及び
図5(C))。またこの例では、下方柱部材41の正面及び背面の夫々にも下方柱部材41の長手(上下)方向へ伸びる溝が副溝41bとして設けられている(
図3(B)及び
図5(B)(C))。
上方柱部材42の左右側面にも上方柱部材42の長手(上下)方向へ伸びる溝42aが設けられており、この例では上方柱部材42の正面及び背面の夫々にも上方柱部材42の長手(上下)方向へ伸びる溝が副溝42bとして設けられている(
図3(A)(B)、
図5(A)(B))。
【0030】
固定具44である上記ボルトを、継手部材43において雌ねじが形成された下方の貫通孔43bへねじ込み上記ボルトの先端を下方柱部材41の上記両溝41aの底へ押し付ける(
図3(A)(B)及び
図5(A)~(D))。
同様に固定具44である上記ボルトを、継手部材43において雌ねじを形成された上方の貫通孔43bへねじ込み上記ボルトの先端を上方柱部材42の上記両溝42aの底へ押し付ける。
上記各ボルト先端の、溝41a及び溝42aの上記各底への押し付けによって、継手部材43に対する下方柱部材41及び上方柱部材42の位置が決まり、柱体4の長さが天井tと床uとの間で突っ張った状態に固定できる。
【0031】
この例では、継手部材43の左右側面の夫々において、下方の2箇所に上記貫通孔43bが設けられており、当該下方の貫通孔43bよりも上方の2箇所にも上記貫通孔43bが設けられている。上記上方の2箇所の貫通孔43bは上下に間隔を開けて配置され、上記下方の2箇所の貫通孔43bは上下に間隔を開けて配置されている。
即ち、継手部材43の左右側面の夫々において、上記の通り上方の2箇所と下方の2箇所へ貫通孔43bが設けられ、上記上方へ左右2対の貫通孔43b、上記下方へ左右2対の貫通孔43bと、合計8箇所に貫通孔43bが継手部材43に設けられている。
【0032】
左右の貫通孔43b同士は、同じ高さ(上下長手方向について同じ位置)に設けられており、各貫通孔43bへ固定具44であるボルトがねじ込まれることにより、下方柱部材41の中心部41cを下方の左右の上記各2箇所にねじ込まれた左右2対のボルトが左右から挟み、上方柱部材42の中心部42cを上方の上記左右の上記各2箇所にねじ込まれた左右2対のボルトが左右から挟み、継手部材43を介して下方柱部材41へ上方柱部材42が継がれるのである。
【0033】
尚図面の煩雑を避けるため、
図5(B)~(D)に付すべきハッチングは省略する。
図示した例では、固定具44であるボルトの夫々は、継手部材43の左右側面へねじ込まれて下方柱部材41の溝41aや、上方柱部材42の溝42aに挿入され、各溝41a,42aの底を押圧するものとしたが、固定具44である上記ボルトの夫々は、継手部材43の正面(前面)及び背面(後面)へねじ込まれて下方柱部材41の副溝41bや、上方柱部材42の副溝42bに挿入され、各副溝41b,42bの底を押圧するものとしてもよい。
【0034】
パネルハンガーである上胴縁部材72の高さの設定により、継手部材43をディスプレイの後ろに隠して取付体3の美観の向上を図ってもよい。この場合上胴縁部材72の長さ(左右の幅)はディスプレイの(
図1(A)の例では3台のディスプレイを合わせた)横幅と同じとして、全ての継手部材43をディスプレイの後ろに隠すことも可能であるが、左右の柱体4は、ディスプレイより左右に位置するものとして上胴縁部材72の左右をディスプレイから露出させることで、下胴縁部材71のみならず上胴縁部材72と柱体4との交差も見せることができ、グリッド面(格子)をより強調できる。
【0035】
この例では、断面視において下方柱部材41と上方柱部材42の中心部41c,42cは軽量化のための空洞部45が設けられており、角材(角柱材)である下方柱部材41の各溝41aと副溝41bに挟まれた四隅付近の内部、更に角材(角柱材)である上方柱部材42の各溝42aと副溝42bに挟まれた四隅付近の内部にも、夫々空洞部45が設けられている。尚、上記空洞部45を設けずに実施してもよい(
図5(B)(C))。
【0036】
上記の床面配置部材5の下方柱部材41への取付け、及び天井配置部材6の上方柱部材42の取付けについて、具体的に説明する。
床面配置部材5は、この例では、短辺である前辺5a及び後辺5bと、長辺である左辺5c及び右辺5dに象られた、平面視略長方形の薄板状体である(
図6(A)(B))。床面配置部材5の底面が床面に対面する。床面配置部材5の厚みを4.5mm~6mmとすることで、床とほぼ面一になり、取付体3付近を往来する者が足を引掛けて躓くという危惧がない。
柱体4間の間隔によるが、床面配置部材5の横幅を20cm~40cmとして、また床面配置部材5の前後幅を20cm~60cmとして実施するのが好ましい。この例では、床面配置部材5は、上記横幅30cmとし上記前後幅を50cmとした。但し、床を傷つけずに押圧することができる限りにおいて、床面配置部5の寸法は、上記数値範囲を逸脱するものであってもよい。
【0037】
床面配置部材5の上面において、上記後辺5b寄りに下方柱部材41の下端が設けられている。この例では、床面配置部材5は鉄板であり、側面視直角三角形のアングル部材51(下アングル部材51)の斜辺に隣接する一辺が床面配置部材5へ溶接にて或いは皿ねじによるねじ留めにて固定されており、アングル部材51の斜辺に隣接する他の一辺が下方柱部材41の正面へボルト或いはねじにて固定されている。即ち、床面配置部材5は、アングル部材51を介して下方柱部材41の下端へ固定されている。
床面配置部材5の形状は上記長方形や正方形、その他の四角形に限定するものではなく、三角形や五角形以上の多角形であっても良く、或いは円や楕円、長円、或いは円弧と多角形の複合、他の曲線に象られたものであっても良い。
【0038】
天井配置部材6は、この例では下方柱部材41や上方柱部材42と同様の押出されたアルミニウム製の角材である(
図6(C))。
天井配置部材6は、上方柱部材42の上端から前方へ向け水平に伸びる。天井配置部材6の後端が上方柱部材42の上端部前面へ設けられている。天井配置部材6の前後の長さは20cm~50cmとするのが好ましく、この例では30cmとした。但し、天井配置部材6の前後の長さは天井を傷つけずに押圧することができる限り、上記範囲を逸脱するものであってもよい。
この例では、側面視直角三角形のアングル部材61(上アングル部材61)の斜辺へ隣接する一辺が上方柱部材42の正面へボルト或いはねじにて固定されており、アングル部材61(上アングル部材61)の斜辺へ隣接する他の一辺が天井配置部材6の下面へボルト或いはねじにて固定されている。即ち、天井配置部材6は、アングル部材61を介して上方柱部材42の上端へ固定されている。
【0039】
図示は省略するが、天井配置部材6の先端(前端60)へキャップ(蓋体)を嵌めて、押出されたアルミニウム製の角材である天井配置部材6の切りっぱなしの先端面を隠すことで、取付体3の美観の向上を図ることができる。
【0040】
上記の柱体4に対する胴縁部材7の取付けについて具体的に説明する。
下胴縁部材71は、この例では、下方柱部材41及び上方柱部材42と同様押出されたアルミニウム製の角材である(
図7)。下胴縁部材71の断面の略正方形の寸法も下方柱部材41や上方柱部材42の上記寸法と同様の数値範囲内とするのが好ましい。
下胴縁部材71は、ボルトやねじなどの固定部材73が突き通されて下方柱部材41の夫々の正面側へ固定され、各下方柱部材41(柱体4)と交差して(左右)横方向へ伸びる。下胴縁部材71を下方柱部材41と同様の太さの棒状体(この例では角材)とし、格子を構成する縦横の線の太さを揃えることで、取付体3は洗練された印象を奏する。
【0041】
この例では、固定部材73はボルトである。下方柱部材41の溝41a,41bは間口よりも奥のほうが広くなるように形成され、溝41aの両縁付近は逆鉤を構成する。
固定部材73であるボルトの頭部は、下胴縁部材71への取付けに先立ち、押出された下方柱部材41の解放された端部から前面側の副溝41b内へ挿入されて当該ボルトの軸部を前方へ突出させる。上記ボルトの頭部の座面は、上記の逆鉤となる溝41aの両縁付近に引掛り、上記ボルトは下方柱部材41から脱落しない。そして上記軸部が下胴縁部材71の背面側から前面側へ向けて突き通され、下胴縁部材71の前方にてナット74がねじ込まれる。上記固定部材73であるボルトとナット74にて下胴縁部材71は下方柱部材41の前面へ固定される。
下胴縁部材71には、上記ボルトの軸部を通す貫通部を予め設けておけばよい。
【0042】
上胴縁部材72は、押出されたアルミニウム製の部材である(
図8)。上胴縁部材72も下胴縁部材71と同様の形状・太さの角材として、取付体3の呈する格子をより洗練されたものとすることができるが、この例では、複数の上記ディスプレイの設置に耐えられように、上胴縁部材72は、押出にて上下方向へ角材である下胴縁部材71のほぼ3本分一体とした形態を採る。
この例では、下胴縁部材71と同様上胴縁部材72断面の略長方形の前後の幅は、下方柱部材41や上方柱部材42の断面の正方形の一辺が採る上記数値範囲内とするが、上胴縁部材72断面の略長方形の上下の幅は下方柱部材41や上方柱部材42の断面の正方形の一辺が採る上記数値範囲の2~3倍とするのが好ましい。
但し、格子の美観を損なわず、ディスプレイを支持する強度を確保できる限り、上胴縁部材72の寸法は上記範囲を逸脱したものであってもよい。
また上胴縁部材72は図示した上記の形態に限定するものではなく、他の形態を採用し、或いは鉄板や木材などアルミニウム以外の素材にて形成するものとしてもよい。
【0043】
上記の通り、上胴縁部材72は、下胴縁部材71よりも上下方向の幅が大きく、固定する固定用部材75として上下に2本のボルトをねじ込むものとする。
但し、上胴縁部材72の下方柱部材41への取付の構造も、基本的には下胴縁部材71の下方柱部材41への取付けと同様である。
【0044】
即ち、固定用部材75である夫々のボルトの頭部は、上胴縁部材72への取付けに先立ち、押出された下方柱部材41の解放された端部から前面側の副溝41b内へ挿入されて当該ボルトの軸部を前方へ突出させる。上記ボルトの頭部の座面は、上記の逆鉤となる副溝41bの両縁付近に引掛り、上記ボルトは下方柱部材41から脱落しない。そして上記軸部が上胴縁部材72の背面側から前面側へ向けて突き通され、上胴縁部材72の前方にてナット76がねじ込まれる。上記固定用部材75であるボルトの夫々とナット76にて上胴縁部材72は下方柱部材41の前面へ固定される。
図示は省略するが、両胴縁部材71,72の左右両端へも、キャップ(蓋体)を嵌めて、押出されたアルミニウム製の角材の切りっぱなしの端面を隠すことで、取付体3の美観の向上を図ることができる。
【0045】
上記柱体4(下方柱部材41)への上下の胴縁部材71,72の取付けにおいて、上下の胴縁部材71,72を柱体4に対して上下にスライドさせることにより、上下の胴縁部材71,72を固定する固定部材73及び固定用部材75である夫々のボルトの上記頭部の溝41b内における位置を調整(変更)することで、上胴縁部材71及び下胴縁部材72夫々の上下の位置を、調整することができ、また、上胴縁部材72と下胴縁部材71の間の間隔も調整することができる。
この例では、上記柱体4(下方柱部材41)同士の間の間隔は調整できない。この点について例えば、上記上下の胴縁部材71,72へ固定部材73及び固定用部材75のボルトを突き通すのではなく、柱体4へ当該ボルトを突き通すものとし、上下の胴縁部材71,72の夫々の備える長手方向(横方向)に伸びる溝へ当該ボルトの頭部を収容するものとすることによって、上下の胴縁柱体71,72夫々の上下の位置の調整(変更)はできなくなるが、柱体4同士の間の間隔を調整(変更)することが可能となる(図示しない)。
図1へ示す例では、横方向へ伸びる各胴縁部材71,72の長さは、取り付けられる表示装置2(3台合わせた)全体の横幅よりも大きく、柱体のうち、少なくとも横方向の左右両側に設けられる柱体4は、正面視において表示装置2よりも左側及び右側に配置されて、表示装置2の左右両端を保護する保護体を構成する。
【0046】
表示装置2が取り付けられる上記の上胴縁部材72は、パネルハンガーとして、上面と下面へ上胴縁部材72の長手方向即ち横方向へ沿って伸びる溝を取付溝77として備える。
一方、前述の治具21は、表示装置2の背面へ設けられた第1爪部材22と、表示装置2と別体に形成された第2爪部材23とを備える(
図9)。
第1爪部材22は、表示装置2の背面から後方へ突出し、先端を上方へ向け屈曲する第1の爪22aを備える。第1爪部材22は、表示装置2の背面へ金属製の連結部材にて固定された、金属製の部材である。
【0047】
第2爪部材23の基部側は、ボルトまたはねじなどの周知の固定用具(図示は省略)にて、第1爪部材22の基部側へ固定される金属製の部材である。22bは第1爪部材22の基部に設けられて上記固定用具を通す挿通孔を示し、23bは第2爪部材23の基部に設けられて上記固定用具を通す挿通孔を示している。
第2爪部材23は、上記固定用具にて第1爪部材22へ固定された状態において、表示装置2の背面から後方へ突出し、先端を下方へ向け屈曲する第2の爪23aを備える。
【0048】
第2爪部材23の第1爪部材22への上記固定に先立ち、第1の爪22aを上胴縁部材72の上記下面の溝77へ挿入し、第2の爪23aを上胴縁部材72の上記下面の溝77へ挿入する。当該挿入後に上記固定用具にて第2爪部材23の基部側を第1爪部材22の基部側へ固定すればよい。当該固定により第1及び第2の爪22a,23aの爪先にて上胴縁部材72を挟持することで、表示装置2を上胴縁部材72へ固定することができる。
【0049】
上記
図9へ示すものと逆に、第1の爪22aを上胴縁部材72の上記上面の溝77へ挿入し、第2の爪23aを上胴縁部材72の上記下面の溝77へ挿入するように、第1爪部材22を
図9と上下逆に表示装置2の背面へ設けるものとしてもよい(図示しない)。
上記の通り第1の爪22aを上胴縁部材72の上記上面の溝77へ挿入し、第2の爪23aを上胴縁部材72の上記下面の溝77へ挿入するものとすることで、上記固定用具にて第2爪部材23を固定する間、第1爪部材22にて上胴縁部材72へ表示装置2を引掛けて固定作業を行える。
【0050】
図1(B)へ示す例では、表示装置2であるディスプレイを左右へ3台並べた状態に上胴縁部材72であるパネルハンガーへ取り付けているが、この他、室内の広さや、上記ディスプレイの寸法に応じて、1台又は2台の或いは4台以上のディスプレイをパネルハンガーへ設けるものとしてもよい。
【0051】
また、胴縁部材7として複数のパネルハンガーを上下に互いの間隔を開けて横方向へ互いに平行に伸びるよう配置して、上記ディスプレイを、取付体3へ縦に並べて或いは縦横に並べて取り付けるものとしてもよい。
【0052】
上記の通り、柱体4の夫々が継手部材43を備えることにより、柱体4同士は互いに独立して上下の長さ調整を行うことができ、例えば
図10(A)へ示すように、天井tに張出部位t1や段差があった場合も、下方柱部材41に対する上方柱部材42のスライド幅を、張出部位t1や段差の上端と下端とで異なるものとして対応することができる。この場合
図10(A)へ示す通り、上下の胴縁部材71,72を下方柱部材41へ設けるものとし、上方柱部材42へ胴縁部材を設けないものとする。
【0053】
(変更例)
下胴縁部材71よりも下方にて下方柱部材41へ上方柱部材42を継ぐように、当該下方に継手部材43を設けるものとしてもよい(
図10(B))。即ち、上下の胴縁部材71,72を上方柱部材42へ取り付けるものとし、下方柱部材41には胴縁部材を設けないのである。
下胴縁部材71よりも下方へ継手部材43を設けることにより
図10(B)へ示す通り床に段差u1があった場合でも、下方柱部材41に対する上方柱部材42のスライド幅を、段差の上部と下部とで異なるものとして、下胴縁部材71と共に上胴縁部材72(パネルハンガー)を水平にでき、デジタルサイネージ等の表示物2(もしくは表示装置2)を水平に保つことができる。上記の通り下胴縁部材71よりも下方へ設ける継手部材43を設けることによって複数の段差のある即ち階段の壁面kへ取付体3を受けて表示装置2を配置することも可能である。
【0054】
また、継手部材43は、柱体4において、各胴縁部材71,72の上方と下方の双方に備えるものとしてもよく、この場合柱体4は、下方柱部材41と上方柱部材42の間へ更に別体の柱部材(中柱部材)を介するものとすればよい(図示しない)。
図1及び
図2へ示す例では、柱体4は5本としたが、室内の広さや天井の高さ、取り付ける表示装置の寸法や台数、所望する格子の目の大きさにより、2~4本としても良いし6本以上としてもよい。また上記の例では胴縁部材7についても、パネルハンガーを含む2本に限定するものではなく、1本又は3本以上としてもよい。例えば
図11へ示すように、柱体4を3本としてもよい。この
図11へ示す例では胴縁部材も3本としており、下方胴縁部材71の下方へ最下方胴縁部材70を備える。
【0055】
取付体3の最小構成としては柱体4を2本としてもよいが、柱体4を3本以上として、前述のとおり、取付体3の左端の柱体4を表示装置2の左端と同じか当該左端よりも左側に位置するものとし、取付体3の右端の柱体4を表示装置2の右端と同じか当該右端よりも右側に位置するものとすることで、背の高い観葉植物などの室内配置物を表示装置セット1の近傍へ搬入する際、上記左右端の柱体4が表示装置2のプロテクタ(保護体)として、当該室内配置物の、表示装置2であるディスプレイの左右の下端部への接触を防ぐことができる。
但し、上記ディスプレイを十分な高所へ設置する場合など、上記室内配置物との上記接触の危惧がない場合、取付体3の左端の柱体4より左方へ上記ディスプレイ(群)の左端が突出し、取付体3の右端の柱体4より右方へ上記ディスプレイ(群)の右端が突出するものとしてもよい。
【0056】
上述してきた各例において、胴縁部材7の一つを、表示装置2を取り付けるパネルハンガーとした。この他、表示装置2を取り付けるパネルハンガーを胴縁部材7とは別に各柱体4が備えるものとしても実施できる(図示は省略)。
尚、下方柱部材41と上方柱部材42とは丸棒とし、継手部材43は丸筒としても実施可能である(図示しない)。
また、柱体4は継手部材43を備えず、下方柱部材41と上方柱部材42の、少なくとも何れか一方を内径が他の一方の外径よりも大きな中空の筒状体とし、上記一方の内部へ他の一方の一端側を収容するようにしてもよい(図示しない)。
【0057】
上記において下方柱部材41と上方柱部材42の何れもが継手部材43に対してスライドし位置調整を行うことができるものを例示したが、下方柱部材41と上方柱部材42の一方のみが継手部材43に対してスライドし位置調整を行うことができるものとしてもよい(図示しない)。例えば、上方柱部材42と継手部材43の固定については、
図5(B)へ示す通り、左右に2本(上下に2対)のボルト(固定具44)をねじ込むものとする一方、下方柱部材41と継手部材43の固定については、1本(上下2本)のボルトを左右の一方から下方柱部材41及び継手部材43へ突き通し当該ボルトの先端側へナットをねじ込むことで、継手部材43に対し下方柱部材41はスライドできないように固定されるものとしてもよい(図示しない)。また逆に、下方柱部材41と継手部材43の固定については、
図5(B)へ示すのと同様、左右に2本(上下に2対)のボルト(固定具44)をねじ込むものとする一方、上方柱部材42と継手部材43の固定については、1本(上下2本)のボルトを左右の一方から上方柱部材42及び継手部材43へ突き通し当該ボルトの先端側へナットをねじ込むことで、継手部材43に対し上方柱部材42はスライドできないように固定されるものとしてもよい(図示しない)。
尚、
図5(A)へ示す例及び上記変更例において、固定具44は説明した数や図示した位置に限定するものではなく、下方柱部材41と上方柱部材42とを位置調整可能に固定ができるかぎりにおいて、変更可能である。
【0058】
(総括)
本発明に係るデジタルサイネージ等の表示物2の取付体3は、下端へ床面配置部材5と上端へ天井配置部材6を備えた複数の柱体4と、胴縁部材7とを備え、各柱体4は、間隔を開けて、夫々壁面kに沿って上下に伸び、各胴縁部材7は、柱体4の夫々へ固定されて各柱体4の夫々と交差し複数の柱体4を一体とし、柱体4は、下方柱部材41と上方柱部材42と継手部材43とにて構成され、上方柱部材42は、継手部材43にて下方柱部材41に対し上下にスライド可能に継がれると共に、ボルトにて前記下方柱部材に対しスライドできないように固定でき、柱体4を床面と天井面間にて突っ張った状態とし、表示物2を壁面kへ設置することを可能とする。
上記にて本発明に係る取付体3は、インテリアへ壁面kに重なる格子面を付与しつつ、デジタルサイネージ等の表示物2を、壁面kを傷つけることなく建物の内壁へ設置できる。
【符号の説明】
【0059】
1 表示装置セット(表示物セット)
2 表示装置(表示物)
3 取付体
4 柱体
5 床面配置部材
6 天井配置部材
7 胴縁部材
21 治具
22 (治具21の)第1爪部材
22a 第1の爪
23 (治具21の)第2爪部材
22b 第2の爪
41 下方柱部材
41a(下方柱部材41の)溝
41b(下方柱部材41の)副溝
41c(下方柱部材41の)中心部
42 上方柱部材
42a(上方柱部材42の)溝
42b(上方柱部材42の)副溝
42c(上方柱部材42の)中心部
43 継手部材
43a(継手部材43の)内部空間
43b(継手部材43の)貫通孔
44 固定具
45 空洞
51 下アングル部材
52 上アングル部材
60 (天井配置部材6の)前端
70 最下方胴縁部材
71 下胴縁部材
72 上胴縁部材
73 固定部材
74 ナット
75 固定用部材
76 ナット
77 (上胴縁部材の)取付溝
k 壁面
m 看者
t 天井
t1 (天井tの)張出部位
u 床
u1 (床uの)段差