(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099154
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】排泄物検出装置及び排泄物検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20240718BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20240718BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20240718BHJP
A61F 13/42 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01N27/00 H
A61F5/44 S
G01N27/22 B
A61F13/42 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002881
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】519277520
【氏名又は名称】株式会社リビングロボット
(74)【代理人】
【識別番号】100186510
【弁理士】
【氏名又は名称】豊村 祐士
(72)【発明者】
【氏名】川内 康裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅愉
(72)【発明者】
【氏名】内山 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】丸本 智彦
(72)【発明者】
【氏名】遠山 理
【テーマコード(参考)】
2G060
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AA07
2G060AB07
2G060AB26
2G060AC01
2G060AE11
2G060AF07
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG10
2G060BB08
2G060BC03
2G060HC11
2G060HC15
2G060HE02
3B200AA01
3B200CA02
3B200DF04
4C098AA09
4C098CD09
(57)【要約】
【課題】排便検出に用いられる電力を実質的に低減するとともに、要介護者に排便があったことを高精度に検出することが可能な排泄物検出装置及び排泄物検出方法を提供する。
【解決手段】排泄物を受容する排泄物受容具(おむつ本体1)における排尿の状況を検出する排尿検出部9と、前記排泄物受容具における排便の状況を検出する排便検出部5と、前記排尿検出部9と前記排便検出部5とをそれぞれ制御する制御部6sと、を有し、前記制御部6sは、前記排尿検出部9によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、前記排尿検出部9によって検出された排尿の状況が「排尿有り」となった場合に、前記排便検出部5によって排便の状況を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物を受容する排泄物受容具における排尿の状況を検出する排尿検出部と、
前記排泄物受容具における排便の状況を検出する排便検出部と、
前記排尿検出部と前記排便検出部とをそれぞれ制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記排尿検出部によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、前記排尿検出部によって検出された排尿の状況が排尿有りとなった場合に、前記排便検出部によって排便の状況を検出することを特徴とする排泄物検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記排尿検出部の出力に基づいて排尿量の総和である総排尿量を決定し、
前記排便検出部が検出した排便の状況が排便無しで、かつ前記総排尿量が所定の量以下である場合、前記排尿検出部によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、
前記排尿検出部によって検出された排尿の状況が排尿有りとなる毎に、前記排便検出部によって排便の状況を検出することを特徴とする請求項1に記載の排泄物検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、
排便の状況の検出を開始するタイミングよりも遅いタイミングにおける前記排尿検出部の出力に基づいて前記総排尿量を決定することを特徴とする請求項2に記載の排泄物検出装置。
【請求項4】
更に通信部を備え、
前記制御部は、決定された前記総排尿量が所定の量を越えた場合、あるいは前記排便検出部が排便有りを検出した場合に、前記通信部を介して外部にその旨を通知することを特徴とする請求項2に記載の排泄物検出装置。
【請求項5】
前記排尿検出部は、前記排泄物受容具に含有された水分を計測し、この計測結果に基づいて排尿の状況を検出することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の排泄物検出装置。
【請求項6】
前記排泄物受容具には、前記排泄物受容具が身体に装着された状態において、身体とは接触しない面の前方から身体の股部分を経由して後方に向け、並行するように延伸された2つの検出電極が設けられ、
前記検出電極は、送信電極と受信電極とで構成され、
前記排尿検出部は、前記送信電極に所定のパルス信号を印加し、この際の前記受信電極の応答に基づき排尿の状況を検出することを特徴とする請求項5に記載の排泄物検出装置。
【請求項7】
前記送信電極、前記受信電極、前記排泄物受容具及び前記排泄物受容具に含有された水分は微分回路の一部を構成し、
前記排尿検出部は、前記微分回路の出力のピーク領域に続くエンベロープ領域の電圧値に基づいて排尿の状況を検出することを特徴とする請求項6に記載の排泄物検出装置。
【請求項8】
前記排便検出部は匂いセンサで構成され、
前記排便検出部は、前記匂いセンサの出力に基づいて、排便の状況を検出することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の排泄物検出装置。
【請求項9】
前記排泄物受容具には、前記排泄物受容具が身体に着用された場合に身体の腹部と向き合う側に収納部が設けられており、この収納部に前記匂いセンサが収納されていることを特徴とする請求項8に記載の排泄物検出装置。
【請求項10】
前記匂いセンサは、前記排泄物受容具を着用した要介護者が存する空間に設置されていることを特徴とする請求項8に記載の排泄物検出装置。
【請求項11】
前記排便検出部と前記排尿検出部とは無線でデータを送受信することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の排泄物検出装置。
【請求項12】
排泄物を受容する排泄物受容具における排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が排尿有りとなった場合に、排便の状況を検出することを特徴とする排泄物検出方法。
【請求項13】
更に、
排尿量の総和である総排尿量を決定し、
決定された排便の状況が排便無しで、かつ前記総排尿量が所定の量よりも少ない場合、前記排泄物受容具における排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が排尿ありとなる毎に、排便の状況を検出することを特徴とする請求項11に記載の排泄物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が着用するおむつ等の排泄物受容具に排泄された排泄物を検出する排泄物検出装置及び排泄物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成25年9月12に内閣府が公表した「介護ロボットに関する特別世論調査の概要」によると、要介護者を介護する者が苦労したことの上位3項目は、「排泄(排泄時の付き添いやおむつの交換)」(62.5%)、「入浴(入浴時の付き添いや身体の洗浄)」(58.3%)、「食事(食事の準備,食事の介助)」(49.1%)となっており、「排泄」の問題は最上位に位置している。
【0003】
トイレに行けない、トイレが使えない、トイレで排泄できない、という排泄障害の状態となるのは、要介護度の5段階のうち要介護「3」以上の重度者とされている。重度者は自立して上衣やズボンの着脱ができず、第三者からの介護を必要とする。平成24年末において要介護「3」以上の重度者は、要介護「3」:72万人、要介護「4」:66万人、要介護「5」:61万人(合計199万人)とされており、自立して排泄できないという点はおむつを着用する乳児等と同じであるが、この人数は当時の0歳児の数(約100万人)よりも遥かに多い。
【0004】
特に介護施設や病院では夜間のおむつ交換における排泄の有無は、介護をする者が一度おむつを開いて確認することになるため、要介護者が覚醒して徘徊の原因となり、更におむつの定期的な点検(定時点検)が必要となる。この定時点検は介護者等に対して排泄処置の過大な負担を与え、介護施設等における雇用逼迫の一因ともなっている。
【0005】
排尿については、複数回の排尿にわたって小便を吸収する吸収体を備え、かつ漏出を阻止する高機能・高性能のおむつが提供されている。おむつのうち肌に直接触れる面は、吸水性、吸汗性が高く、水分が当該面に逆戻りしにくい構造とされていることから、排尿量が少ないうちは皮膚への影響は小さいとされる。しかしながら複数回の排尿によって総排尿量が多くなった場合、濡れたおむつを長時間当てると皮膚がふやけて抵抗力が低下し、僅かに擦られただけでも傷つきやすくなり、かぶれを起こしやすくなる。
【0006】
排便については、放置すると要介護者がおむつかぶれや褥瘡等の皮膚疾患を引き起こし、更におむつ交換を長時間待つ間の要介護者の不快感の軽減を図るためにも、早期の交換が必要である。しかしながら要介護者の羞恥心や告知能力の低下等もあり、排尿/排便していることが介護者等に速やかに伝達されないことも多い。
【0007】
おむつの交換時期を検知する技術に関しては、例えば、おむつの中の排尿を検出するための検知センサを、ポリエチレンテレフタレートによって帯状に形成された基材と、体積抵抗率が10-3~10-4Ω・cmの銀ペーストを基材上に印刷して形成された一対の電極と、体積抵抗率が15Ω・cmの導電性シリコーンを各電極の表面に被覆してなる被覆部とから構成し、電極間の導電率を測定することで、おむつの濡れ状態を把握するおむつの交換時期検知装置が知られている。更にこの交換時期検知装置は、空気中のインドール又は/及びスカトールを臭気として測定する臭気測定部を備えており、臭気測定部は臭気が所定レベル以上になっている時間が所定時間以上継続したときに、おむつ中の排便を検知する。(特許文献1)
【0008】
特許文献1によれば、おむつの中に配設されるとともに、排尿を検出するための少なくとも一対の電極を備えたおむつの交換時期検知センサと、空気中のインドール又は/及びスカトールを臭気として測定する臭気測定手段と、該臭気測定手段の測定結果に基づき、おむつ中の排便を検知する排便検知手段と、を備えることで、おむつの交換時期を正確に検知できるとしている。
【0009】
また、小便を吸収して漏出を阻止する機能を有するおむつの収容ポケットに取付けられるセンサと、センサの感知信号に基づいて排便を判定して排便信号を出力するコントローラとを備え、センサは少なくとも小便よりも低い湿度が小便よりも長時間継続された場合に感知信号を発信する湿度センサと、小便とほぼ同じ温度が小便よりも長時間継続された場合に感知信号を発信する温度センサと、大便の臭気を感知した場合に感知信号を発信する臭気センサと、大便の接触による収容ポケットの色の変化を感知する色彩を判定するためのカメラシステムとからなり、各センサは柔軟性を有するシート状に形成され、湿度センサ、温度センサ、カメラシステムはおむつの内側の肛門に対面する部分の近くに設けられた収容ポケットに挿入取付けされ、臭気センサはおむつの外側の肛門に対面する部分の近くに設けられた収容ポケットに挿入取付けされることを特徴とする排便感知システムが知られている。(特許文献2)
【0010】
特許文献2によれば、湿度センサ、温度センサ、臭気センサからなる3つのセンサの感知信号を総合した判定から、排尿を排した排便のみを感知し排便信号を出力するため、排便のみを確実に感知することができ、また、おむつの定時点検が不要になって介護労働が楽になる効果が生ずるとされている。
【0011】
また、小便、大便を水、臭い感知センサによって検知する手段と、その検知した電気信号(情報)をランプ、音声などに変換する手段と、その変換した情報をナースステーションへ簡易に知らせることによって、おむつ内の管理をする手段とを備えたことを特徴とする排泄の種類と状況を検知・伝達・管理する装置が知られている。(特許文献3)
【0012】
特許文献3によれば、おむつ内の排尿、排便の状況を検知し、その検知した情報を医師や看護師へ速やかに知らせ、患者の排泄の状況を管理することによって患者の不快感を軽減させ、また、装置にコミュニケーション機能を付属させることによって患者と看護師のストレスを軽減させ、更に該装置を安価に提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9-33468号公報
【特許文献2】特許第3491198号公報
【特許文献3】特開2000-93447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
さて排便検出に用いられるセンサとして、例えば振動子に設けられた感応膜に匂い物質が吸着した際の、振動子の共振周波数の変化に基づいて特定の匂いを検出する振動子式の匂いセンサや、半導体表面に匂い物質が吸着した際の表面反応に基づいて、半導体の抵抗値が変化することを利用する半導体式の匂いセンサが知られている。前者の場合は、振動子を機械的に振動させる必要があり、また後者の場合は半導体である金属酸化物を高温に維持する必要があり、消費電力は決して小さなものではない。特に常時匂い検出を行う場合は消費電力が問題となる。
【0015】
特に匂いセンサで構成された検出部をおむつに付帯させるような形態では、当該検出部は小型化されることが好ましく、この場合当該検出部に搭載されるバッテリ容量も制限を受ける。バッテリ容量が小さくなると、匂いセンサを駆動可能な期間が短くなって、長期にわたって継続的に排便を検出することが難しくなる。もちろん排尿検出においても電力が使用されるが、例えばおむつ中の水分量に基づいておむつ全体の電気的特性の変化を検出するような構成では、電力量を極めて小さくできるため、排尿及び排便のいずれをも検出する構成においては、排便検出に用いられる電力が支配的となる。
【0016】
他方、長期にわたっての継続的な排便検出が可能な場合であっても、継続的に排便を検出することに伴う弊害も考えられる。例えば、匂いを検出して排便の有無を判定する構成においては、例えば放屁が間欠的に複数回続いたような場合に、実際には放屁であるにもかかわらず排便と誤検出されることがあり得る。誤検出が発生する度に介護者に通知が行われると、介護者の負担が増大してしまう。
【0017】
ここで特許文献1~特許文献3で開示された技術では、いずれも排尿を検出するセンサ及び排便を検出するセンサを備えているものの、匂いセンサの消費電力を抑え、長期にわたって排便検出を可能とする構成については何ら示唆されていない。更に、比較的長期にわたって放屁に基づく匂いが残存するような場合であっても誤検出を防止する、即ち排便検出の精度を向上させることが可能な構成についても示唆されていない。
【0018】
本発明は、従来技術の課題を解決するべく案出されたものであり、排便検出に用いられる電力を実質的に低減するとともに、排便があったことを高精度に検出することが可能な排泄物検出装置及び排泄物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するためになされた本発明は、排泄物を受容する排泄物受容具における排尿の状況を検出する排尿検出部と、前記排泄物受容具における排便の状況を検出する排便検出部と、前記排尿検出部と前記排便検出部とをそれぞれ制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記排尿検出部によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、前記排尿検出部によって検出された排尿の状況が「排尿有り」となった場合に、前記排便検出部によって排便の状況を検出する排泄物検出装置である。
【0020】
これによって、排尿検出部で「排尿有り」が検出されたことを条件(トリガー)として排便の状況が検出されるため、排便検出部で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便検出部は作動しないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【0021】
また、本発明は、前記制御部は、前記排尿検出部の出力に基づいて排尿量の総和である総排尿量を決定し、前記排便検出部が検出した排便の状況が「排便無し」で、かつ前記総排尿量が所定の量以下である場合、前記排尿検出部によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、前記排尿検出部によって検出された排尿の状況が「排尿有り」となる毎に、前記排便検出部によって排便の状況を検出するようにしたものである。
【0022】
これによって、既に排尿されているが総排尿量が所定の量以下である場合において、「排尿有り」のイベントが新たに検出されたことをトリガーとして排便の状況が検出されるため、排便検出部で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、前記制御部は、排便の状況の検出を開始するタイミングよりも遅いタイミングにおける前記排尿検出部の出力に基づいて前記総排尿量を決定するようにしたものである。
【0024】
これによって、おむつ内部の排尿位置等に起因するイレギュラーな計測結果が得られた場合であっても、正確な総排尿量を決定することが可能となる。
【0025】
また、本発明は、更に通信部を備え、前記制御部は、決定された前記総排尿量が所定の量を越えた場合、あるいは前記排便検出部が「排便有り」を検出した場合に、前記通信部を介して外部にその旨を通知するようにしたものである。
【0026】
これによって、要介護者におむつ交換が必要となった時点で、交換を促す通知を速やかに行うことが可能となる。
【0027】
また、本発明は、前記排尿検出部は、前記排泄物受容具に含有された水分を計測し、この計測結果に基づいて排尿の状況を検出するようにしたものである。
【0028】
これによって、排尿検出に使用する電力量の低減を図るとともに、水分といった直接的な要因に基づき排尿を検出するため、高い検出精度を得ることが可能となる。
【0029】
また、本発明は、前記排泄物受容具には、前記排泄物受容具が身体に装着された状態において、身体とは接触しない面の前方から身体の股部分を経由して後方に向け、並行するように延伸された2つの検出電極が設けられ、前記検出電極は、送信電極と受信電極とで構成され、前記排尿検出部は、前記送信電極に所定のパルス信号を印加し、この際の前記受信電極の応答に基づき排尿の状況を検出するようにしたものである。
【0030】
これによって、印刷された検出電極の間でパルス応答を計測するといった簡易な構成で排尿を検出することが可能となる。
【0031】
また、本発明は、前記送信電極、前記受信電極、前記排泄物受容具及び前記排泄物受容具に含有された水分は微分回路の一部を構成し、前記排尿検出部は、前記微分回路の出力のピーク領域に続くエンベロープ領域の電圧値に基づいて排尿の状況を検出するようにしたものである。
【0032】
これによって、微分回路といった極めて簡単な構成でおむつ内部における排尿の状況を検出することが可能となる。
【0033】
また、本発明は、前記排便検出部は匂いセンサで構成され、前記排便検出部は、前記匂いセンサの出力に基づいて、排便の状況を検出するようにしたものである。
【0034】
これによって、極めて簡易な構成で排便の状況を検出することが可能となる。
【0035】
また、本発明は、前記排泄物受容具には、前記排泄物受容具が身体に着用された場合に身体の腹部と向き合う側に収納部が設けられており、この収納部に前記匂いセンサが収納されているものである。
【0036】
これによって、おむつ内部に籠った排便臭を容易に検出することができる。更に、排便検出部を含む排泄物検出装置を要介護者の腹部の側に設けることで、おむつ本体を交換するにあたり排泄物検出装置を要介護者に取り付ける際の作業効率が改善される。更に要介護者は、排泄物検出装置を取り付けるに際して姿勢を大きく変える必要もなく、身体的負担は小さなものとなる。
【0037】
また、本発明は、前記匂いセンサは、前記排泄物受容具を着用した要介護者が存する空間に設置されているものである。
【0038】
これによって、排便検出部を配置する際の自由度が大幅に向上し、排便検出部を配置する際の制約を大幅に減らすことが可能となる。
【0039】
また、本発明は、前記排便検出部と前記排尿検出部とは無線でデータを送受信するようにしたものである。
【0040】
これによって、要介護者の近辺に配線部材が引き回されることがなく、要介護者の身体的、心理的な負担が軽減される。
【0041】
また、本発明は、排泄物を受容する排泄物受容具における排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が「排尿有り」となった場合に、排便の状況を検出する排泄物検出方法である。
【0042】
これによって、「排尿有り」が検出されたことを条件(トリガー)として排便の状況が検出されるため、排便の状況の検出に使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便の状況の検出は行われないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【0043】
また、本発明は、排尿量の総和である総排尿量を決定し、決定された排便の状況が「排便無し」で、かつ前記総排尿量が所定の量よりも少ない場合、前記排泄物受容具における排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が排尿ありとなる毎に、排便の状況を検出するようにしたものである。
【0044】
これによって、既に排尿されているが総排尿量が所定の量以下である場合において、「排尿有り」のイベントが新たに検出されたことをトリガーとして排便の状況が検出されるため、排便の状況の検出に使用される電力を大幅に低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0045】
このように本発明によれば、排尿検出部で「排尿有り」が検出されたことを条件(トリガー)として排便の状況が検出されるため、排便検出部で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便検出部は作動しないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るおむつ本体1の全体構成を示す説明図、(b)は、おむつ本体1に排泄物検出装置6が装着された状態を示す説明図
【
図2】(a)は、おむつ本体1に排泄物検出装置6が装着された状態における、おむつ本体1のIIa-IIa断面図、(b)は、おむつ本体1のIIb-IIb断面図
【
図3】(a)は、排泄物検出装置6の正面図、(b)は、同側面図
【
図4】本発明の第1実施形態に係る排泄物検出装置6及び排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図
【
図6】(a)は、送信電極8aに入力される信号波形を示す説明図、(b)は、受信電極8bから出力される信号波形を示す説明図、(c)は、受信電極8bから出力される波形の詳細を示す説明図
【
図7】おむつ内部に模擬尿を投入した際の排尿量指標[n]の変化を示すグラフ
【
図8】排泄物検出装置6の動作を示すフローチャート
【
図9】本発明の第2実施形態に係る排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るおむつ本体1の全体構成を示す説明図である。
図1(a)において、1は排泄物受容具としてのおむつ本体である。以降の説明において、おむつ本体1を人が着用したとき、人の腹部の方向を「前(前方)」、背中の方向を「後(後方)」、人の右手方向を「右」、左手方向を「左」、頭の方向を「上(上方)」、足の延伸方向を「下(下方)」と称することがある。また、おむつ本体1のうち要介護者の肌に触れる側を「内面」、要介護者がおむつ本体1を着用した際に外部から目視される側を「外面」、表面材7と防水材4との間の空間を「おむつ内部」と称することがある。
【0048】
おむつ本体1は、ポリオレフィン・ポリエステル不織布等で構成された表面材7、表面材7で覆われて尿や汗等の水分を吸収する吸水材2、おむつ本体1の前方から後方に延設されて排尿や排便に伴う尿や便が外部に漏れるのを防止する左右一対の立体ギャザー3、ポリエチレン等で構成され、おむつ本体1の外面に設けられて排泄物等が外部に漏れるのを防止する防水材4、防水材4の前方に設けられた切込部4c、防水材4の外面に形成された2つの検出電極8、検出電極8に要介護者や介護者等が直接的に触れないよう検出電極8を被覆する不織布8cで構成されている。
【0049】
ここで検出電極8は、おむつ本体1が要介護者に着用された状態において、身体とは接触しない面の前方から身体の股部分を経由して後方に向け、並行して延伸された送信電極8a及び受信電極8bとで構成されている。
【0050】
なお検出電極8は、ポリオレフィン等で構成された防水材4の表面に例えば導電性インクを塗布して形成される。ここで導電性インクは例えば導電性カーボンといったフィラーをビヒクル中に分散してペースト状に加工したものであり、一般的に目視上高い濃度を呈する。従って白色の不織布8cの厚みや繊維密度を適宜調整することで、照明下等の明るい環境にあっては不織布8cの上から検出電極8の位置を目視できる。また、不織布8cに蛍光塗料を含侵、あるいは不織布8cに蛍光塗料を用いたマーカを印刷してもよく、これによって夜間等の暗い環境にあっても、検出電極8が配置されている位置を目視することができる。
【0051】
図1(b)は、おむつ本体1に排泄物検出装置6が装着された状態を示す説明図である。排泄物検出装置6は、おむつ本体1において排尿または排便があったことを検出する。排泄物検出装置6は、外観上は排泄物検出装置本体6aと排便検出部5と中継部材6nとで構成され、排泄物検出装置6と排便検出部5とは中継部材6nを介して接続されている。ここで中継部材6nは可撓性の樹脂で構成されており、少なくとも前後方向に柔軟に湾曲・変位する。
【0052】
介護者等(要介護者を介護する者で、介護施設の従業者や要介護者の家族をいう。)は、要介護者に対しておむつ本体1を着用させた後、まず切込部4cを開いて、排便検出部5をおむつ内部に挿入する。その後、介護者等は、おむつ本体1に設けられた検出電極8(上述したように、不織布8cを透過して位置が把握される)と排泄物検出装置本体6aに凸部として設けられた位置合わせ用マーカ6mとの位置を一致させて、おむつ本体1の外面と内面とを挟むようにして、排泄物検出装置6をおむつ本体1の前方かつ最上方(縁部)に取り付ける。このように、排便検出部5をおむつ内部に配置し、更に排泄物検出装置6でおむつ本体1の上縁を挟持する(後述するように二か所で挟持される)ことで、全体として三点支持が図られ、例えば要介護者が体の向きを変えたとしても、排泄物検出装置6がおむつ本体1から離脱することが防止される。
【0053】
なお、排便検出部5をおむつ内部に挿入することなく、おむつ本体1の外面(身体の腹部側)に配置してもよい。このようにすることで、おむつ本体1に切込部4c等の加工を施すことが不要となり、おむつ本体1の製造コストが低減する。この際、テープ等を用いて中継部材6nをおむつ本体1に固定することで、上述の三点支持と同等の効果が得られる。またおむつ本体1の外面に、中継部材6nを支持するシート状部材を設けておき、当該シート状部材の両端を予めおむつ本体1に貼り付け、中央部にリング状の空隙を形成し、ここに排便検出部5及び中継部材6nを挿通する構成としてもよい。
【0054】
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係るおむつ本体1のIIa-IIa断面図である。
図2(a)は、おむつ本体1の前後に延伸される送信電極8aが現れる断面を示している。以降、
図2(a)に
図1(b)を併用して、排泄物検出装置本体6aと検出電極8との間における電気的接続の態様について説明する。
【0055】
排泄物検出装置本体6aのうち、不織布8c(送信電極8a)と向き合う面には、金属等の導電性材料で構成された電気接点6dが突出するように設けられ、更に電気接点6dには複数の針状突起(図示せず)が設けられている。上述したように、防水材4の表面に印刷により形成された送信電極8aは不織布8cで被覆されているが、おむつ本体1に排泄物検出装置6が取り付けられた際、電気接点6dに設けられた針状突起が不織布8cを貫通し、電気接点6dと送信電極8aとの間で電気的なコンタクトが図られる。受信電極8b(
図1(b)参照)についても、同様に受信電極8bに対応する電気接点6dとの間で電気的なコンタクトが図られる。
【0056】
図2(b)はおむつ本体1のIIb-IIb断面図である。ここで
図2(b)は、おむつ内部に挿入された排便検出部5が現れる断面を示している。以降、
図2(b)に
図1(b)を併用しておむつ内部における排便検出部5の配置態様について説明する。
【0057】
おむつ本体1の表面材7と防水材4との間に設けられた吸水材2は、尿等の水分を拡散させる吸水紙10、水分を吸収する綿状パルプ11及び綿状パルプ11で上下を挟まれた(あるいは綿状パルプ11に分散された)高分子吸水部12で構成されている。そして、おむつ本体1の前方に設けられた切込部4cから下方には、部分的に少量の吸水材2が除去されたポケット状の収納部4dが設けられている。この構成において、綿状パルプ11の量を減らす代わりに、収納部4dの周囲において高分子吸水部12を増量してもよい。高分子吸水部12の吸水量は非常に大きいため、少量の使用によって吸水材2全体の体積を減らすことが可能である。
【0058】
切込部4cから挿入された排便検出部5は、この収納部4dに収納される。上述したように排泄物検出装置6と排便検出部5とを接続する中継部材6nは可撓性を備えており、排便検出部5をおむつ内部に挿入するにつれて中継部材6nが変形し、排便検出部5はスムーズに収納部4dに収納される。
【0059】
なお、中継部材6nには、中継部材6nの延伸方向に沿って図示しない導線が埋設されており、この導線によって排泄物検出装置本体6aから排便検出部5に電力が供給され、また相互にデータがやりとりされる。また、中継部材6nには中空のパイプ部材(図示せず)が設けられている。
【0060】
排便臭を検出しようとした場合、肛門に近い位置に排便検出部5を配置すれば、匂い成分が高濃度となり、また排便位置と計測位置とが近接するため、排便をより早期に検出できると考えられる。しかしながら、出願人の検討によれば、肛門近辺に排便検出部5を配置すると、腰部や下半身に違和感や不快感を訴える要介護者が多数みられた。この知見に基づき、第1実施形態では、
図2(b)に示すように、排便検出部5は、おむつ本体1の前方に偏位して設けられている。即ち、本実施形態では、おむつ本体1には、おむつ本体1が要介護者に着用された場合に要介護者の腹部と向き合う側に収納部4dが設けられており、この収納部4dに排便検出部5(後述する匂いセンサ5b)を収納することとしている。
【0061】
これによって、要介護者に不快感を与えることなくおむつ内部に籠った排便臭を検出することができる。更に、排便検出部5を含む排泄物検出装置6を要介護者の腹部の側に設けることで、おむつ本体1を交換するにあたり排泄物検出装置6を要介護者に取り付ける際の作業効率が改善される。更に要介護者は、排泄物検出装置6を取り付けるに際して姿勢を大きく変える必要もなく、要介護者の身体的負担も小さなものとなる。
【0062】
図3(a)は、排泄物検出装置6の正面図、(b)は、同側面図である。以降、排泄物検出装置6について詳細に説明する。排泄物検出装置6は、排泄物検出装置本体6a、レバー部6b、排便検出部5、中継部材6nで構成されている。レバー部6bは、排泄物検出装置本体6aの上方の後方において支持部6eに軸支されており、方向D1及び方向D2に回動可能とされている。そしてレバー部6bは図示しない板バネ等の付勢部材によって方向D2に付勢されている。介護者等は、レバー部6bの上方を排泄物検出装置本体6aの側に変位させてレバー部6bを方向D1に回動させ、排泄物検出装置本体6aの電気接点6dとレバー部6bの押圧パッド6cとを離間させる。そして排泄物検出装置本体6aとレバー部6bとの間におむつ本体1の上方縁部を挟んだ状態で、レバー部6bをリリースする。これによってレバー部6bは方向D2に回動し、排泄物検出装置本体6aがおむつ本体1の上方縁部に固定される。
【0063】
このとき、おむつ本体1の防水材4に印刷された検出電極8と位置合わせ用マーカ6mの位置を合わせることで、検出電極8が電気接点6dと押圧パッド6cとの間に確実に挟持され、検出電極8と電気接点6dとの間で電気的接続が確保される。なお、上述したように位置合わせ用マーカ6mは排泄物検出装置本体6aに突出する凸部を形成しているが、これを凹部で構成してもよい。いずれにせよ、介護者等が位置合わせ用マーカ6mの位置を指先の触感に基づき認識できるように構成されていればよい。
【0064】
また、排便検出部5は、排泄物検出装置本体6aに対して方向D3及び方向D4に変位可能に構成されている。排泄物検出装置本体6aと排便検出部5とを中継する中継部材6nには、左右の方向に切り欠き部6pが設けられており、排泄物検出装置本体6aの内部には、切り欠き部6pの形状に合わせた凸部を備える図示しない板バネ等が設けられている。この凸部が切り欠き部6pに係合することで排泄物検出装置本体6aに対する排便検出部5の相対的な位置決めが行われる。即ち、排泄物検出装置本体6aと排便検出部5とは上下方向に相対位置の調整が可能に構成されている。これによって、おむつ本体1のサイズに応じて、排便検出部5を適切な位置に配置することが可能となる。
【0065】
排便検出部5にはおむつの内面に向く側に開口部5aが設けられている。上述したように中継部材6nには中継部材6nが延伸する方向に沿って中空のパイプ部材(図示せず)が配置されている。パイプ部材によって排泄物検出装置本体6aと排便検出部5とは連通されている。排泄物検出装置本体6aの側においてパイプ部材の一端はポンプ5c(
図4参照)に接続され、排便検出部5の側においてパイプ部材の他端は開放されている。ポンプ5cを作動させることで、開口部5aから匂い物質(匂い分子)を含む空気が排便検出部5に取り込まれる。
【0066】
開口部5aは、通気性及び撥水性を備える被覆材5gによって被覆されている。被覆材5gとしては、例えばポリウレタン不織布や微細孔を形成したスチレン系エラストマーフィルムの表面にフッ化カーボン等の分散液を塗布・乾燥させたものや、フッ化カーボン等で処理した伸縮性繊維(フィラメント)で織った生地等が好適に利用できる。被覆材5gが撥水性を備えることで、開口部5aを介して排便検出部5内に水分が侵入することが防止されるとともに、通気性を備えることで、開口部5aから匂い物質を匂いセンサ5b(
図4参照)まで到達させることができる。なお、この被覆材5gを指サック状に加工したものを排便検出部5全体に被せるようにしてもよい。このような構成においては、要介護者に排便等があって、おむつ本体1を交換する際、指サック状の被覆部材を併せて交換することが可能となり、衛生面での配慮が図られる。
【0067】
図4は、本発明の第1実施形態に係る排泄物検出装置6及び排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図である。排泄物検出システムS1は、おむつ本体1と排泄物検出装置6とサーバ52と情報端末50とを含み、排泄物検出装置6、サーバ52、情報端末50とはネットワーク51で接続され、相互に情報をやりとりする。
【0068】
以降、まず排泄物検出装置6について説明する。排泄物検出装置6は、制御部6s、記憶部6t、排尿検出部9、排便検出部5、通信部6uで構成される。なお、排泄物検出装置6には図示しない電源(バッテリ)が搭載されており、排泄物検出装置6の各構成要素は、当該電源が供給する電力に基づき動作する。また、これらの構成要素は図示しないバス等で結合されており、制御部6sはバス等を介して他の構成要素を制御するとともに、他の構成要素との間でデータの送受信を行う。
【0069】
制御部6sはCPU(Central Processing Unit)等で構成され、記憶部6tを構成するROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)等に記憶された制御プログラムに従って動作する。記憶部6tには制御プログラムの他に、個々の排泄物検出装置6を識別する固有の識別情報(ID情報)が予め記憶されている。なお、制御部6sは、匂いセンサ5bや温湿度センサ5hから出力されるアナログ信号(図示しない増幅器によって増幅されてもよい)をディジタル信号に変換するA/D変換器を含んでいてもよい。もちろんA/D変換器は制御部6sとは別体に設けられていてもよく、特に匂いに関するデータ処理に関しては匂いセンサ5bに内蔵されていてもよい。
【0070】
排尿検出部9は、上述したように、おむつ本体1に印刷された検出電極8(送信電極8a、受信電極8b)と電気的に接続された電気接点6d、パルス発生部9a、増幅部9b、受信電極8bに接続された電気接点6dと増幅部9bとの間に一端が接続され、他端が接地された抵抗成分9rを含む。排尿検出部9と制御部6sとは協働して、おむつ本体1における排尿の状況を検出し、更に排尿量の総和である総排尿量を決定する。
【0071】
ここで、おむつ内部に排尿されると、塩化ナトリウム等の塩を含む尿(水分)が電解質となり、絶縁体である防水材4に印刷された送信電極8a及び受信電極8bとの間には実質的に容量成分9cが形成される。即ち、送信電極8a、容量成分9c及び受信電極8bはコンデンサを形成する。そして受信電極8bと増幅部9bとの間には抵抗成分9rが接続され、その他端は接地されていることから、送信電極8a、容量成分9c、受信電極8b、抵抗成分9rは全体として微分回路9dを構成する。換言すれば、送信電極8a、受信電極8b、排泄物受容具(おむつ本体1)及び排泄物受容具に含有された水分(尿)は微分回路9dの一部を構成することとなる。
【0072】
もちろん、微分回路9dは他の要素を含んでいてもよく、例えばパルス発生部9aと送信電極8aとの間に、プルアップ/プルダウン抵抗を加えてもよく、増幅部9bと受信電極8bとの間に電流制限用の抵抗を加えてもよい。即ち、パルス発生部9aと増幅部9bとの間に実質的な微分回路9dが形成されていればよく、軽微なアレンジが施されていても構わない。このような微分回路9dで消費される電力は一般に極めて小さい。
【0073】
このように、第1実施形態においては、排尿検出部9は、おむつ本体1に含有された水分を計測し、この計測結果に基づいて排尿の状況を検出する。これによって、排尿検出に使用する電力量の低減を図るとともに、水分という直接的な要因に基づき排尿を検出することとなり、高い検出精度を得ることが可能となる。更に、排尿検出部9の一部を微分回路9dで構成することで、極めて簡単な構成でおむつ内部における排尿の状況を検出することが可能となる。
【0074】
パルス発生部9aはパルス信号を生成し、生成されたパルス信号は送信電極8aに印加される。増幅部9bは受信電極8bの出力を所定の増幅率で増幅する。なお制御部6sに内蔵され、あるいは単独で設けられたA/D変換器の分解能が十分であれば増幅部9bは設けなくてもよい。また、増幅部9bにおいて、A/D変換器の仕様に応じて出力(電圧)のレベルシフトあるいはオフセットが行われてもよいし、いわゆるレベルシフタを個別に設けてもよい。制御部6sは、送信電極8aに入力されたパルス信号に対する、受信電極8bの応答出力をディジタルデータとして受け取る。なお、
図4においては、排尿検出部9と制御部6sとを分離して描いているが、データ処理の過程でこれらは密接に関連しており、制御部6sは実質的に排尿検出部9を構成する一要素である。
【0075】
このように第1実施形態においては、おむつ本体1を構成する防水材4の前方から身体の股部分を経由して後方に向け、並行するように延伸された2つの検出電極8が設けられ、検出電極8は、送信電極8aと受信電極8bとで構成され、排尿検出部9は、送信電極8aに所定のパルス信号を印加し、この際の受信電極8bの応答(受信電極8bの出力の過渡特性)に基づき排尿の状況を検出する。これによって、印刷された検出電極8の間でのパルス応答を計測するといった簡易な構成で排尿を検出することが可能となる。
【0076】
排便検出部5は、匂いセンサ5b、センサ駆動部5d、温湿度センサ5h、ポンプ5cで構成される。排便検出部5と制御部6sとは協働して、おむつ本体1における排便の状況を検出し、排便の有無を判定する。即ち、排便検出部5は匂いセンサ5bで構成され、排便検出部5は、匂いセンサ5bの出力に基づいて排便の状況を検出する。これによって、極めて簡易な構成で排便の状況を検出することが可能となる。
【0077】
以降、排便検出部5を構成する各構成要素について説明する。匂いセンサ5bは、化学センサデバイスの一種であって、互いに異なる匂い物質に対する脱吸着特性を有する感応膜が設けられた振動子を備える複数(N個)のセンサモジュールで構成される。例えば匂いセンサ5bはN=180個のセンサモジュールを備えている。
【0078】
そして各々のセンサモジュールの感応膜に特定の匂い物質が吸着または脱離した際の、振動子の共振周波数の変化に基づいて匂い物質が検出される。なお、匂い物質が吸着したのち一定時間が経過すると、吸着した匂い物質は感応膜から離脱し、振動子は再利用が可能となっている。このように第1実施形態では、振動子式の匂いセンサ5bを採用しているが、これに代えて、半導体表面における匂い物質の吸着と表面反応によって半導体の抵抗値が変化することを利用した半導体式のものを用いてもよい。
【0079】
センサ駆動部5dは、制御部6sの指示に基づいて、匂いセンサ5bの振動子を振動させる圧電素子に対して駆動信号を出力する。ここで駆動信号としては、例えば所定の周波数の範囲で掃引(スイープ)する正弦波(交流電圧)が用いられる。なお、駆動信号をスイープする際、その周波数(駆動周波数)は順次制御部6sで決定され、駆動周波数に対応した所定のコマンドがセンサ駆動部5dに出力される。そしてセンサ駆動部5dは当該コマンドに対応した周波数の駆動信号を圧電素子に供給する。
【0080】
匂いセンサ5bを構成する複数のセンサモジュールには、それぞれ振動子が振動する際の振幅を計測する圧電素子(ピエゾ素子)が設けられている。圧電素子の出力(通常は正弦波)は、図示しないハードウェア等によって全波(あるいは半波)整流ののち平滑化される。そしてこの平滑化データは、図示しないA/D変換器によってディジタル信号に変換される。
【0081】
更に制御部6sは、駆動周波数を順次更新(即ち、スイープ)して振動子の振幅計測を繰り返す。そしてディジタル化された平滑化データを参照して、各センサモジュールの振動子の振幅が最大となる共振周波数を計測する。感応膜に特定の匂い物質が付着して、振動子の共振周波数が変化することに基づき、制御部6sは空気中に特定の匂い物質が含まれていることを検出する。なお、
図4においては、排便検出部5と制御部6sとを分離して描いているが、データ処理の過程でこれらは密接に関連しており、制御部6sは実質的に排便検出部5を構成する一要素である。
【0082】
ここで、便臭に含まれる匂い物質としては、腸内のいわゆる腐敗菌によって生成される例えばアンモニア、インドール、スカトールといった物質が知られている。これらの匂い成分を脱吸着する感応膜を備えるセンサモジュールを用いることで、匂いセンサ5bによって排便臭を検出することが可能となる。
【0083】
ポンプ5cは、排便臭の原因となる匂い物質を含む空気を吸引し、匂いセンサ5bに供給する。ポンプ5cとしては、モータ、ボイスコイルモータ、圧電素子(ピエゾ素子)等の駆動源を備えるものが利用できる。これらはいずれも吸入/吐出を切り替える弁を備え、駆動源によってダイヤフラムを振動させて空気の吸入/吐出を行う。特に圧電素子を備えるダイヤフラムポンプは、小型化、薄型化、低消費電力化に有利だとされているが、消費電力は100mW程度であり、特に装置の小型化を図るためバッテリ駆動を前提とする場合は、連続運転が制限される。
【0084】
温湿度センサ5hは、温度センサまたは湿度センサの少なくとも一方で構成される。ここで温度センサとしては、例えば熱電対、サーミスタ(Thermistor)、測温抵抗体を用いることができる。また湿度センサとしては、感湿材料の吸湿/脱湿によって変化する抵抗値を計測する抵抗式センサ、あるいは静電容量を計測する容量式センサを用いることができる。第1実施形態では、温湿度センサ5hの出力に基づいて、要介護者がおむつ本体1を着用した後において、おむつ本体1に排泄物検出装置6が装着されたか否かを判定している。後述するように、制御部6sは、おむつ本体1に排泄物検出装置6が装着されたことを検出すると、匂いセンサ5bの初期化を実行する。
【0085】
通信部6uは、例えばLPWA(Low Power Wide Area)、LTE(Long Term Evolution)、4G(あるいは5G)といった通信規格に準拠した通信モジュールを含む。このうちLPWAは、1回の送信あたりのデータ量は少ないものの、消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式であることから有用である。通信部6uは、要介護者に排尿あるいは排便に関連するイベント(事象)が生じた場合、ネットワーク51を介してサーバ52と通信を行う。具体的には、制御部6sは通信部6uを制御し、排泄物検出装置6のID情報(固有の識別番号)、イベントコード(後述する。)、総排尿量(以降、これらをまとめて「イベント情報」と称することがある。)をサーバ52に送信する。衛生上の観点から、一般的には一つの排泄物検出装置6を多数の要介護者が使い回すことはない。要介護者と排泄物検出装置6とは1対1に紐づくことから、排泄物検出装置6のID情報は実質的に要介護者を識別する識別子として機能する。なお、総排尿量は、以下に示すイベントコードが総排尿量決定とされている場合を除きNULLが送信される。
【0086】
ここで、イベントコードは、例えば2バイトで構成され、例えば次のように定められている。
排尿有り:01H
排便有り:02H
総排尿量決定:04H
総排尿量過多:08H
おむつ交換の実施:20H
【0087】
ここで、「排尿有り」とは、要介護者に排尿が生じた旨のイベントを指し、「排便有り」とは、要介護者に排便が生じた旨のイベントを指し、「総排尿量決定」とは、「排尿有り」のイベントとは別に、おむつ本体1に保持される尿の総量を決定した旨のイベントを指し、「総排尿量過多」とは、総排尿量がおむつ本体1に保持される上限を超えた旨のイベントを指し、「おむつ交換の実施」とは、要介護者に新たなおむつ本体1が装着された旨のイベントを指す。
【0088】
以降、排泄物検出システムS1について説明する。サーバ52は、サーバ制御部52bとサーバ記憶部52aとで構成される。サーバ制御部52bはCPU等の演算装置を備え、図示しないROM、RAM等に格納された制御プログラムに従って他の構成要素を制御する。またサーバ52には図示しないサーバ通信部が設けられ、ネットワーク51に接続された情報端末50、排泄物検出装置6との間で様々な情報を送受信する。更にサーバ52はNTPサーバ53から時刻情報を取得することで、サーバ52の内部時計の正確性を維持している。
【0089】
サーバ記憶部52aは、更にRAID(Redundant Arrays of Independent Disks)等で構成された記憶手段を備え、サーバ記憶部52aには排泄状況管理データベース(以降、「状況管理DB」と称することがある。)が構築されている。
【0090】
図5は、状況管理DBのデータ構造を示す説明図である。状況管理DBには、排泄物検出装置6のそれぞれに対応する第1レコード52fが設けられ、各第1レコード52fは下記の第1フィールド~第4フィールドで構成されている。第1レコード52fは排泄物検出装置6について一つ割り当てられている。即ち、第1レコード52fは実質的に排泄物検出装置6を利用する要介護者の数だけ存在し、管理対象である要介護者が増える毎に追加される。
【0091】
各第1レコード52fは以下に示す第1フィールド~第4フィールドで構成されている。各フィールドのデータサイズは固定長とされている。
第1フィールド:ID情報
第2フィールド:要介護者の個人情報
第3フィールド:通知先に関する情報
第4フィールド:記憶領域を示すポインタ
【0092】
第1フィールドの「ID情報」には、個々の排泄物検出装置6に付された固有の識別情報(ID0001,ID0002..)が格納されている。第2フィールドの「要介護者の個人情報」には、要介護者の性別、氏名、年齢等といった個人情報が格納されている。第3フィールドの「通知先に関する情報」には、排便等が検出された際におむつ交換を担当する介護者等の連絡先(メールアドレス等)が格納されている。第4フィールドの「記憶領域Mpを示すポインタ」には、イベント情報の履歴を格納する記憶領域の先頭アドレスが格納されている。ここで記憶領域Mpは第1レコード52fのそれぞれに対応して確保されたメモリリソースであり、"p"は、ID情報に対応する番号(p=1,2,3...)を意味する。即ち、記憶領域Mpは第1レコード52fの数だけ確保される。もちろん第1レコード52fのデータ構造はこれに限定されるものではなく、例えば第5フィールドとして電子カルテや介護記録等の記憶領域を示すポインタ等が格納されもよい。
【0093】
第4フィールド「記憶領域Mpを示すポインタ」によって指し示される記憶領域Mpには、第2レコード52gが生成される。第2レコード52gは以下に示すデータ領域d1~データ領域d4で構成されている。なお、データ領域d1~d4はフィールドを意味するが、上述した第1レコード52fのフィールドと区別するため、「データ領域dx(x:1,2,3,4)」の用語を用いている。
【0094】
データ領域dxには、以下の情報が格納される。なおデータ領域dxのデータサイズはいずれも固定長とされている。
データ領域d1:イベントコード
データ領域d2:イベントが発生した年月日及び時刻
データ領域d3:総排尿量
データ領域d4:次の記憶領域Mp-qの先頭を示すポインタ
ここで記憶領域Mp-qにおける"q"は、記憶領域Mpに生成される第2レコード52gの番号(q=1,2,3,...)を意味する。記憶領域Mp-qはイベントが発生する度に新たに確保され、ここに第2レコード52gが追加生成される。
【0095】
以下、
図4を併用して、第1レコード52fの第1フィールドに格納されたID情報が「ID0001」である要介護者にイベントが生じた場合を例にとり、サーバ制御部52bの処理について説明する。サーバ制御部52bは、排泄物検出装置6から上述したイベント情報を受信すると、イベント情報に含まれるID情報をキーとして状況管理DBを検索し、第1レコード52f(ここではID0001が格納された第1レコード52f)を抽出する。そして第1レコード52fの第4フィールドから記憶領域M1を示すポインタを取り出し、記憶領域M1の先頭(即ち、記憶領域M1-1)にアクセスし、第2レコード52gのデータ領域d4に格納された記憶領域M1-2の先頭を示すポインタを取得する。
【0096】
更に、サーバ制御部52bは、取得したポインタの値に基づき記憶領域M1-2に生成された第2レコード52gにアクセスし、そのデータ領域d4に格納された記憶領域M1-3の先頭を示すポインタを取得する。この処理を繰り返して、データ領域d4にNULLが格納されている第2レコード52gに辿り着くと、新たに記憶領域を確保(ここでは、図示しない記憶領域M1-4)して、イベント情報に含まれるイベントコードをデータ領域d1に書き込み、当該イベントコードが「総排尿量決定」である場合は総排尿量をデータ領域d3に書き込み、NULLをデータ領域d4に書き込む。これによって新たな第2レコード52gが生成される。
【0097】
更に、サーバ制御部52bは内部時計から日時及び時刻情報(以降、「時刻等情報」と称することがある。)を取得して、時刻等情報を新たな第2レコード52gのデータ領域d2に書き込む。その後、もともとNULLが格納されていた記憶領域M1-3のデータ領域d4に、新たに生成した第2レコード52gの先頭アドレスを書き込む。このように、サーバ制御部52bは時系列に発生するイベント情報を受信する毎に、新たな記憶領域を確保して第2レコード52gを生成していく。これによって、要介護者毎にイベント情報が蓄積され、排泄に関する履歴(以降、「排泄履歴」と称することがある。)が生成、更新される。
【0098】
以下、
図4を併用して説明を続ける。情報端末50は、例えばスマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末、PC(Personal Computer)である。情報端末50にはタッチパネル等で構成された入力部、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light Emitting Diode)で構成された表示部(いずれも図示せず)が設けられている。
【0099】
サーバ制御部52bは、排泄物検出装置6からイベント情報を受信すると、イベント情報に含まれるID情報に基づき第1レコード52fを抽出し、その第2フィールドに格納された「要介護者の個人情報」、第3フィールドに格納された「通知先に関する情報」を参照して、通知先として登録された情報端末50に通知を行う。この際、送信される情報には「要介護者の個人情報」とともに、イベント情報、時刻等情報が含まれる。以降、この通知を「登録先へのイベント通知」と称することがある。更に、介護者等は、操作部を操作してサーバ52にアクセスが可能とされ、介護者等がID情報を指定することで、これまで状況管理DBに蓄積された要介護者の排泄履歴を参照することができる。
【0100】
サーバ制御部52bは、状況管理DBを参照することで、要介護者毎の排泄履歴に基づいて様々な解析を実行することが可能である。この解析によって、例えば以下の情報が生成される。
(i)排尿の周期・頻度、一日当たりの排尿回数、1回の排尿あたりの排尿量の平均値
(ii)排便の周期・頻度、一日当たりの排便回数
(iii)おむつ交換が実施された際の総排尿量
(iv)「排便有り」や「総排尿量過多」が通知されてから、おむつ交換が実施されたまでに要した時間
(v)おむつ交換の頻度
(vi)これらを可視化したグラフ等
【0101】
(i)の情報から、熱中症、脱水症、膀胱炎、前立腺肥大症、頻尿症、急性腎不全、急性胃軸捻転、尿閉、前立腺癌、過活動膀胱、膀胱炎、尿路感染、前立腺炎等の予兆を捉えることが可能となる。また、(ii)の情報から、便秘症等、感染性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、虫垂炎、大腸がん、過敏性腸症候群等の予兆を捉えることが可能となる。即ち、排泄履歴によって要介護者の健康管理を図ることが可能である。更に、(iii),(iv),(v)の情報から、介護施設等における従業者の負担の把握、サービスの提供状況の把握等、例えば介護施設を運用する者にとっての有用な知見を得ることが可能となる。更に(vi)によって、これらの情報の傾向を把握することが可能となる。
【0102】
これらの解析結果についても、介護者等は情報端末50で参照することが可能とされている。更に、例えば排泄履歴と他の履歴(食事に関する履歴(摂食時刻、カロリー等)、運動履歴(体操を開始した時刻や運動した時間等)、睡眠に関する履歴(消灯時刻や睡眠時間等))とを紐づけて統計的な処理を行なうことで、要介護者の生活習慣と排泄との間の相関を算出する等、健康管理に有用なデータを生成することも可能となる。当該解析結果や統計的な処理の結果は、介護者等のみならず医師や看護師等にとっても有用であることは言うまでもない。
【0103】
図6(a)は、送信電極8aに入力される信号波形を示す説明図、(b)は、受信電極8bから出力される信号波形を示す説明図、(c)は、受信電極8bから出力される波形の詳細を示す説明図である。ここで
図6(c)は、
図6(b)に示す領域P1を拡大したものである。以降、
図6(a)~
図6(c)に
図1、
図2、
図4を併用して、主に排尿検出部9で実行される処理について詳細に説明する。
【0104】
制御部6sの指示に基づき、排尿検出部9のパルス発生部9aは、
図6(a)に示す所定の幅(ここでは500μs)のパルス信号を所定の周期(ここでは1sec。以降、「計測周期TS」と称することがある。)で生成し、生成されたパルス信号は、電気接点6dを介しておむつ本体1の防水材4(
図1(a)、
図2(a)参照)に印刷された送信電極8aに印加される。
【0105】
上述したように、おむつ本体1に設けられた送信電極8a及び受信電極8bと、おむつ内部に排尿がなされることで生成される容量成分9cと、排尿検出部9に設けられた抵抗成分9rとは微分回路9dを構成しており、送信電極8aにパルス信号(矩形波)を印加すると、受信電極8bからはパルス信号を微分した波形が出力される。受信電極8bの出力は増幅部9bで増幅された後、レベルシフタ等により所定の電位(ここではVs)だけオフセットされる。
【0106】
オフセットされた出力において、その電圧(アナログ値。以降、「出力電圧」と称することがある。)は、
図6(b)に示すように、入力されたパルス信号の立ち上がりに対応して急激に変化する凸のピークを形成し、そののち電位Vsに漸近するエンベロープ(裾野)を形成する。またパルス信号の立ち下がりに対応して急激に変化する下に凸のピークを形成し、そののち電位Vsに漸近するエンベロープを形成する。なお、以降の説明においてピークが形成された領域を「ピーク領域pk」、エンベロープが形成された領域を「エンベロープ領域en」と称することがある。出力電圧はA/D変換器(図にせず)によってディジタル化され、制御部6sに入力される。
【0107】
第1実施形態では、
図6(c)に示すように、
Vu0:パルス信号の立ち上がりに応答したタイミング(Tu0)における出力電圧
Vu1:Tu0から50μs経過後の出力電圧
Vu2:Tu1から50μs経過後の出力電圧
Vu3:Tu2から50μs経過後の出力電圧
Vu4:Tu3から50μs経過後の出力電圧
Vd0:パルス信号の立ち下りに応答したタイミング(Td0)に対応した出力電圧
Vd1:Td0から50μs経過後の出力電圧
Vd2:Td1から50μs経過後の出力電圧
Vd3:Td2から50μs経過後の出力電圧
Vd4:Td3から50μs経過後の出力電圧
の計10つのタイミングで取得した出力電圧をA/D変換した値(以下、「水分計測データ」と称することがある。)に基づいて、おむつ本体1における排尿の状況を検出する。なお、Vu0~Vu4,Vd0~Vd4をサンプリングする間隔は適宜定めてよく、サンプリングの回数も適宜定めてよい。
【0108】
なお、送信電極8aにパルス信号を印加してから、受信電極8bに応答が現れるまでには遅延(ディレイ)が発生する。これを補償するため、上述のタイミングTu0、タイミングTd0は、パルス発生部9aがパルス信号をON/OFFするタイミングを基準として、所定時間(δT:数μs~20μs程度)だけ遅延して設定される。即ち、パルス信号が立ち上がるタイミングをTu、立ち下がるタイミングをTdとすると、Tu0=Tu+δT、Td0=Td+δTに設定される。
【0109】
水分計測データは、以下で構成される。
ADVu0:Vu0のA/D変換値
ADVu1:Vu1のA/D変換値
ADVu2:Vu2のA/D変換値
ADVu3:Vu3のA/D変換値
ADVu4:Vu4のA/D変換値
ADVd0:Vd0のA/D変換値
ADVd1:Vd1のA/D変換値
ADVd2:Vd2のA/D変換値
ADVd3:Vd3のA/D変換値
ADVd4:Vd4のA/D変換値
ここで、ADVu0及びADVd0はピーク領域pkにおける水分計測データであり、ADVu1~ADVu4及びADVd1~ADVd4はエンベロープ領域enにおける水分計測データである。なお、以降の説明において、ADVu0については「パルス信号立ち上がり時の水分計測データ」、ADVd0については、「パルス信号立下り時の水分計測データ」と称することがある。
【0110】
制御部6sは、エンベロープ領域enで得られた水分計測データを用いて、以下の演算を実行する。
adc1_ave = (ADVu1+ADVu2+ADVu3+ADVu4)/4
adc2_ave = (ADVd1+ADVd2+ADVd3+ADVd4)/4
なお、これらエンベロープ領域enで得られた水分計測データを平均したものを「第1平均データ」と称することがある。
【0111】
そして制御部6sは、パルス信号が出力される毎に上記演算を行って、時系列に第1平均データ、adc1_ave[n](n:整数)及びadc2_ave[n](n:整数)を取得する。
【0112】
更に時系列に取得された第1平均データに対して、過去M回(ここではM=4)の移動平均を算出して、
ave1[n] =(adc1_ave[n-3]+adc1_ave[n-2]+adc1_ave[n-1]+adc1_ave[n])/4
ave2[n] =(adc2_ave[n-3]+adc2_ave[n-2]+adc2_ave[n-1]+adc2_ave[n])/4
を得る。以降の説明では、時系列に取得された第1平均データの移動平均を「第2平均データ」と称することがある。
【0113】
上述のように送信電極8aへのパルス信号の印加が計測周期TS(ここでは1秒)で行われるとすると、制御部6sはピーク領域pkの水分計測データ、エンベロープ領域enの第1平均データ、同第2平均データを1秒に一回の頻度で取得する。そして制御部6sは、これらを用いて以下の判定を実行する。
【0114】
<case1>(ピーク領域pkの水分計測データに基づくエラーの判定)
(ADVu0-ADVd0)<第1閾値SV1
を満たす場合、
このケースは、パルス信号立ち上がり時の水分計測データであるADVu0とパルス信号立下り時の水分計測データADVd0との差分が所定値より小さく、受信電極8bから応答波形が出力されていない状態である。制御部6sは、検出電極8と電気接点6dとが離間している、即ち、排泄物検出装置6がおむつ本体1から外れている、あるいは排泄物検出装置6がおむつ本体1に正しく装着されていないと判定する。ここで第1閾値SV1は、増幅部9bの増幅率やオフセット量でも異なることから、適宜定めてよく、例えば140に設定される。
【0115】
<case2>(エンベロープ領域の第1平均データに基づくエラーの判定)
(adc1_ave[n]-adc2_ave[n])>第2閾値SV2
を満たす場合、
このケースは、送信電極8aに印加されたパルス信号が殆ど原形のまま受信電極8bに現れている状態であり、制御部6sは、送信電極8aと受信電極8bとが短絡、または排尿検出部9が故障している、と判定する。これは、おむつ本体1の防水材4(
図1参照)が濡れている、あるいは2つの検出電極8間に導電性の異物が存在する等の場合に対応している。第2閾値SV2も同様に適宜定めてよく、例えば2000に設定される。
【0116】
<case3>(第2平均データを用いた排尿の状況の判定)
第2閾値SV2>(ave1[n]-ave2[n])>第3閾値SV3
を満たす場合、
制御部6sは、おむつ内部の水分(尿)が正常に検出されている状態である。第3閾値SV3も同様に適宜定めてよく、例えば160に設定される。排尿がなされたとき、パルス信号の立ち上がり/立ち下がりのタイミング、即ちピーク領域pkにおける出力電圧(即ち、上述したVu0,Vd0)は急激に変化するとともに不安定となる傾向がある。このため第1実施形態では、この不安定な期間を避け、出力電圧がエンベロープを形成する期間、即ちエンベロープ領域enにおいて水分計測データを取得するようにしている。このように排尿検出部9は、微分回路9dの出力のピーク領域pkに続くエンベロープ領域enの電圧値に基づいて排尿の状況を検出する。これによって、排尿の状況の検出を高精度に行うことができる。
【0117】
<case4>
上述の<case1>,<case2>の条件を満たさず、かつ
(ave1[n]-ave2[n])≦第3閾値SV3
を満たす場合、
制御部6sは、おむつ内部に水分が存在しない(排尿されておらずドライの状態)と判定する。
【0118】
ここで<case1>,<case2>を満たす場合は、正常に排尿の状況を検出できない状態である。このとき制御部6sは、エラーが生じていることを情報端末50に通知する。ここで、<case1>の判定においては、ピーク領域pkで得られた水分計測データを判定に用い、また<case2>では、エンベロープ領域enにおける水分計測データ(第1平均データ)を判定に用いているが、いずれの場合も水分計測データは計測周期TS(ここでは1sec)で取得されている。従って<case1>,<case2>におけるエラー判定は、実質的にリアルタイムで行われる。即ち、制御部6sはエラーが発生していることを早期に通知することが可能となる。
【0119】
他方、<case3>や<case4>においては、エンベロープ領域enに対応する第1平均データを時系列で算出し、更に時系列で得られた第1平均データの移動平均である第2平均データを算出し、第2平均データに基づいて排尿の状況を検出する。これによってリアルタイム性は若干損なわれるが、ノイズの影響を抑制することができる。
【0120】
もちろん<case1>において、時系列にADVu0,ADVd0を複数回計測して、この移動平均(あるいは単純平均)を算出し、エラーの有無を判定してもよく、また<case2>においても同様に、エンベロープ領域enの第1平均データを複数回計測して、この移動平均(あるいは単純平均)を算出し、エラーの有無を判定してもよい。
【0121】
制御部6sは、<case3>,<case4>のいずれかの条件を満たす場合、
排尿量指標[n] = ave1[n]-ave2[n]
を算出する。この排尿量指数[n]を用いて、計測周期TSで排尿の状況の検出が行われる。
【0122】
図7は、おむつ内部に模擬尿を投入した際の排尿量指標[n]の変化を示すグラフである。ここでは、おむつ本体1に100mlの模擬尿を、30分間隔で7回投入している。
図7において横軸は模擬尿の投入回数(及び時間)であり、縦軸は排尿量指標[n]の値である。ここで、排尿量指標[n]は上述した計測周期TSで計測されている。なお模擬尿としては、凍結乾燥尿に蒸留水を加えたものを使用した。
【0123】
図示するように、おむつ内部に模擬尿を投入すると、投入のタイミングで排尿量指数[n]の値が急激に上昇する。その後排尿量指数[n]の変化は緩やかになり、およそ5~15分程度経過すると排尿量指数[n]はほぼ安定する。このため排尿量指数[n]の変化を捉えることで、要介護者が排尿したか否か(即ち、排尿のイベントが生じたか否か)を検出することができる。
【0124】
ただし、排尿量指数[n]にはノイズ成分が混入しており、時系列に隣接する排尿量指数[n]の差分に基づき、排尿のイベントが生じたか否かを判定すると誤判定となるおそれがある。
そこで、
δu=(排尿量指数[n]-排尿量指数[n-N])
を算出し、直近の排尿量指数[n]と過去の時点N(例えば10秒前)の排尿量指数[n]の差分δuを取得して、これと予め定めた第4閾値SV4と比較し、
δu>第4閾値SV4
を満たす場合に、排尿のイベントが発生したと判定するとよい。もちろんδuを時系列に複数回算出し、この平均値を第4閾値SV4と比較してもよい。
【0125】
さて、図示するように、模擬尿の投入回数が増える伴い、排尿量指標[n]は増加するが、排尿量指標[n]の増分は小さくなっていく。ここで、実際におむつ内部に含まれる尿の総量(現実の総排尿量。体積、重量のいずれでもよい)と排尿量指数[n]との関係を予め取得しておくことで、排尿量指数[n]に基づいて総排尿量を決定することができる。
【0126】
ただし、
図7において領域P3(投入回数=T5)として示すように、模擬尿を投入した直後に排尿量指標[n]が急峻なピークを形成し、その後緩やかに減少する現象が発生することがある。この原因としては、おむつ本体1に対する模擬尿の投入位置や、投入に要した時間(単位時間当たりの投入量)が、排尿量指標[n]の挙動に影響を与えていると考えられる。これらの知見から、排尿のイベントが発生した直後の排尿量指数[n]を用いて総排尿量を推定・決定することは妥当でなく、少なくとも排尿のイベントが検出された後、数分間経過した後の排尿量指数[n]を用いて総排尿量を決定することが好ましい。そして決定された総排尿量が所定の第5閾値SV5(ここでは、900)を超えた場合、制御部6sは、おむつ内部における尿の保持量が上限に近づいた(即ち、おむつ本体1の交換時期が到来した)と判断する。
【0127】
なお、
図7に示す領域P2では、排尿量指数[n]の値が急激にゼロ近傍まで低下している。このとき、おむつ本体1から排泄物検出装置6(
図1(b)等参照)が意図的に除去されている。これは上述の<case1>で説明したのと同じ状況を意図的に作り出したものであり、排尿量指数[n]を参照することでも、排泄物検出装置6あるいは排泄物検出システムS1で生じているエラーを検出可能であることがわかる。
【0128】
図8は、排泄物検出装置6の動作を示すフローチャートである。以下、
図8に
図1、
図4、
図5を併用して排泄物検出装置6の動作について説明する。まず制御部6sは、要介護者に排泄物検出装置6が装着されたか否かを判定する(ST01)。
【0129】
上述のように、排便検出部5はおむつ内部に挿入されており、温湿度センサ5hは要介護者の身体のごく近傍に配置される。制御部6sは、温湿度センサ5hの出力を参照して体温に基づく温度上昇や発汗による湿度上昇を検出し、要介護者に排泄物検出装置6が装着されているか否かを判定する。要介護者に排泄物検出装置6が装着されていない場合(ST01でNo)、処理はST01に戻る。なお、排泄物検出装置6に所定のスイッチを設けておき、要介護者におむつ本体1が着用された際に、介護者等が当該スイッチをONにするよう構成してもよい。この場合、ST01の処理は省略されうる。
【0130】
要介護者に排泄物検出装置6が装着されたことが検出された場合(ST01でYes)、制御部6sは、通信部6uを介してサーバ52にイベント情報を送信する(ST02)。ここでイベント情報には、イベントコード「おむつ交換の実施:20H」が含まれる。
【0131】
イベント情報を受信したサーバ制御部52bは、状況管理DBにアクセスし、上述した排泄履歴を更新する。要介護者のおむつを交換するのは、通常は介護者等であるから、介護者等に対して「登録先へのイベントの通知」を行う必然性はない。他方、ST02の段階で、排尿検出部9を動作させて、例えば上述した<case4>の条件を満たし、おむつ本体1がドライの状態を検出したときに、「登録先へのイベントの通知」を行うことで、介護者等はおむつ本体1に排泄物検出装置6が正常に装着されたことを確認できる。
【0132】
次に制御部6sは、匂いセンサ5bの初期化(キャリブレーション,校正)を実行する(ST03)。匂いセンサ5bの初期化においては、制御部6sはポンプ5cを駆動し、匂いセンサ5bにおむつ内部の空気を供給し、更にセンサ駆動部5dに所定のコマンドを発行して匂いセンサ5bを駆動する。初期化によって、匂いセンサ5bを構成する各センサモジュールでは、おむつ内部に排泄物がない状態における、振動子の共振周波数が計測される。そしてこの際の共振周波数を基準として、その後の共振周波数の変化に基づき排便臭が検出される。人体からは微量の匂い成分が放出されているため、排泄物検出装置6を装着した時点の匂いを基準とすることで、排便臭は基準との差分(相対値)として検出され、検出精度が向上する。
【0133】
次に制御部6sは、排尿の状況の検出を開始する(ST04)。即ち制御部6sは、排尿検出部9を構成するパルス発生部9aを制御して、送信電極8aに対して計測周期TSでパルス信号を供給し、受信電極8bの出力に基づき排尿量指標[n]を取得する。上述したように、制御部6sは、δu(=排尿量指数[n]-排尿量指数[n-N])の値に基づき、排尿の状況を検出し「排尿有り」か否かを判定する。即ち、ここでは排尿量指標[n]の時間差分を用いて「排尿有り」か否か(新たに排尿のイベントが生じたか否か)を判定する。「排尿有り」が検出されなかった場合(ST05でNo)、処理はST05に戻る。ST05に戻ったのち、排尿の状況の検出は計測周期TSで、時系列に繰り返して行われる。
【0134】
なお、「排尿有り」が検出されなかった場合(ST05でNo)、温湿度センサ5hの出力を参照するようにしてもよい。この場合、温湿度センサ5hの出力に所定の変化があった場合、ST03で説明した匂いセンサ5bの初期化を実行するとよい。匂いセンサ5bを構成する感応膜には、空気中の水分も脱吸着することから、特に湿度が変化すると出力が変化することがある。湿度が変化すると検出精度が影響を受けることから、再度の初期化は有効である。なお、温湿度の計測にあたっては、数回に一度の頻度でポンプ5cを駆動することが好ましい。
【0135】
「排尿有り」が検出された場合(ST05でYes)、制御部6sは、通信部6uを介してサーバ52にイベント情報を送信する(ST06)。ここでイベント情報には、イベントコード「排尿有り:01H」が含まれる。イベント情報を受信したサーバ制御部52bは、状況管理DBにアクセスし、上述した排泄履歴を更新する。ただし第1実施形態においては、単純に「排尿有り」が検出されたからといって、「登録先へのイベント通知」が行われることはない。そして、制御部6sは、排便の状況の検出を開始する(ST07)。
【0136】
このように、第1実施形態の排泄物検出装置6は、排泄物を受容する排泄物受容具(おむつ本体1)における排尿の状況を検出する排尿検出部9と、排泄物受容具における排便の状況を検出する排便検出部5と、排尿検出部9と排便検出部5とをそれぞれ制御する制御部6sと、を有し、制御部6sは、排尿検出部9によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、排尿検出部9によって検出された排尿の状況が「排尿有り」となった場合に、排便検出部5によって排便の状況を検出する。
【0137】
即ち、第1実施形態では、排泄物を受容する排泄物受容具(おむつ本体1)における排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が「排尿有り」となった場合に、排便の状況を検出する。
【0138】
以下、このようなシーケンスを採用している理由について説明する。排便を調節する肛門括約筋と排尿を調節する尿道括約筋は繋がっており、片方の括約筋だけを動かすことができない。即ち排尿時でも排便時でも両方の括約筋が緩む。ただし排尿の場合は膀胱に尿がたまると副交感神経の刺激によって自然に膀胱が収縮するので、尿道括約筋がゆるめば力まなくても排尿が行われる。一方、肛門括約筋が緩んだとしても排便は力まないと始まらない。そしてこのように力んだ時に膀胱が圧迫されるため、排便と同時に尿も出てしまう。
【0139】
このことは、「排尿有り」が検出されたとき、即ち排尿がイベントとして検出されたときは、それと同時期に排便が行われる確率が高いことを示唆している。本発明では、このような知見を背景として、排尿検出部9において「排尿有り」が検出されたことをトリガーとして排便検出部5で排便の状況を検出するようにしている。
【0140】
これによって、排便検出部5で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便検出部5は作動しないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【0141】
ST07では、排便の状況の検出にあたって、制御部6sは、ポンプ5cを駆動して匂いセンサ5bにおむつ内部の匂いを含む空気を供給する。そして、匂いセンサ5bを構成する振動子の共振周波数の変化に基づいて、空気中に排便臭のもととなる特定の匂い物質が含まれるか否かを判定する。
【0142】
「排便有り」が検出された場合(ST08でYes)、制御部6sは、通信部6uを介してサーバ52にイベント情報を送信する(ST09)。ここでイベント情報には、イベントコード「排便有り:02H」が含まれる。イベント情報を受信したサーバ制御部52bは、状況管理DBにアクセスし、上述した排泄履歴を更新する。更に制御部6sは上述した「登録先へのイベント通知」を行って、介護者等に対して要介護者に排便があった旨を通知する(ST10)。
【0143】
上述したように、「登録先へのイベント通知」においては、サーバ制御部52bは、情報端末50に要介護者の個人情報、イベント情報、時刻等情報等を送信する。これによって介護者等が所有する情報端末50において「〇年〇月〇日〇時〇分、〇〇さんに排便がありました。至急おむつを交換してください。」のような通知が行われる。そののち、制御部6sは、排便の状況の検出を停止する(ST11)。排便の状況の検出を停止するにあたり、制御部6sは、ポンプ5cの駆動を停止するとともに、匂いセンサ5b、センサ駆動部5dの動作を停止する。これによって消費電力の低減が図られる。
【0144】
他方、「排便有り」が検出されなかった、即ち「排便無し」であった場合(ST08でNo)において、所定時間が経過していない場合(ST12でNo)、処理はST08に戻る。即ち、所定時間が経過しない間は、ST08において排便の状況の検出が繰り返される。ここで、所定時間は例えば5分に設定されている。即ち、排便の状況の検出は5分間継続して行われる。このように排便の状況の検出を繰り返すのは、「排尿有り」が検出された場合であっても、直ちに排便が行われないことも想定されるためである。
【0145】
他方、所定時間が経過した場合(ST12でYes)、排便の状況の検出を停止する(ST13)。制御部6sは、ポンプ5cの駆動を停止するとともに、匂いセンサ5b、センサ駆動部5dの動作を停止する。これによって消費電力が抑制される。
【0146】
上述したように、排便の状況の検出は所定期間(ここでは5分)継続して行われていることから、総排尿量の決定は、当該所定期間を経過したのちに行われる。換言すれば、制御部6sは、排便の状況の検出を開始するタイミングよりも遅いタイミングにおける排尿検出部9の出力(ここでは排尿量指数[n])に基づいて排尿量の総和である総排尿量を決定する。これによって、例えば
図7の領域P3に示すような、おむつ本体1の排尿位置等に起因すると思われるイレギュラーな計測結果が得られた場合であっても、正確な総排尿量を決定することが可能となる。
【0147】
総排尿量を決定する処理において、制御部6sは、通信部6uを介してサーバ52にイベント情報を送信する。ここでイベント情報には、イベントコード「総排尿量決定:04H」及び「総排尿量」が含まれる。イベント情報を受信したサーバ制御部52bは、状況管理DBにアクセスし、上述した排泄履歴を更新する。この際、記憶領域のデータ領域d3には「総排尿量」が格納される。
【0148】
次に制御部6sは、「総排尿量」が所定の量を超えている場合(ST15でYes)、制御部6sは、通信部6uを介してサーバ52にイベント情報を送信する(ST16)。ここでイベント情報には、イベントコード「総排尿量過多:08H」が含まれる。イベント情報を受信したサーバ制御部52bは、状況管理DBにアクセスし、上述した排泄履歴を更新する。更に制御部6sは上述した「登録先へのイベント通知」を行って、介護者等に対して総排尿量がおむつ交換の上限を超えた旨を通知する(ST17)。
【0149】
上述したように、「登録先へのイベント通知」においては、サーバ制御部52bは、情報端末50に要介護者の個人情報、イベント情報、時刻等情報等を送信する。これによって介護者等が所有する情報端末50等において「〇年〇月〇日〇時〇分、〇〇さんの総排尿量がおむつの上限を超えました。至急おむつを交換してください。」のような通知が行われる。
【0150】
このように、第1実施形態においては、排泄物検出装置6は通信部6uを備え、制御部6sは、決定された総排尿量が所定の量を越えた場合、あるいは排便検出部5が「排便有り」を検出した場合に、通信部6uを介して外部(情報端末50)にその旨を通知する。これによって、要介護者におむつ交換が必要となった時点で、交換を促す通知が速やかに行われる。
【0151】
他方、総排尿量が所定の範囲に収まっている場合(ST15でNo)、処理はST05に戻る。処理がST05に戻ることで、以降、既に排尿がされている状態において、計測周期TSで、排尿の状況の検出が時系列に繰り返して行われる。
【0152】
ST11あるいはST17の処理の後、制御部6sは、排尿の状況の検出を停止する(ST18)。具体的には制御部6sは、パルス発生部9aによるパルスの発生を停止し、増幅部9bの動作を停止する。これによって、排尿検出部9における消費電力が抑制される。そして制御部6sの処理は終了する。
【0153】
このように第1実施形態では、制御部6sは、排尿検出部9の出力に基づいて排尿量の総和である総排尿量を決定し、排便検出部5が検出した排便の状況が「排便無し」(ST08でNo)で、かつ総排尿量が所定の量以下である場合(ST15でNo)、排尿検出部9によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、排尿検出部9によって検出された排尿の状況が「排尿有り」(ST05でYes)となる毎に、排便検出部5によって排便の状況を検出する。
【0154】
また、第1実施形態では、排尿量の総和である総排尿量を決定し、決定された排便の状況が「排便無し」で、かつ総排尿量が所定の量よりも少ない場合、排泄物受容具(おむつ本体1)における排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が排尿ありとなる毎に、排便の状況を検出する。
【0155】
これによって、総排尿量が所定の量以下である場合において、排尿検出部9で「排尿有り」が検出されたことをトリガーとして排便の状況が検出されるため、排便検出部5で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便検出部5は作動しないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【0156】
以上、本発明の第1実施形態を詳細に説明した。ここで第1実施形態では、排便検出部5は中継部材6nを介して排泄物検出装置本体6aと連結されており、排便検出部5をおむつ本体1に挿入するように構成しているが、排便検出部5を排泄物検出装置本体6aに内蔵するように(即ち1つの筐体で)構成してもよい。これによって排泄物検出装置6の構成を簡素化し、コストダウンを図ることが可能となる。
(第2実施形態)
【0157】
図9は、本発明の第2実施形態に係る排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図である。上述の第1実施形態では、排便検出部5と排尿検出部9とは排泄物検出装置6に包含される構成要素であったが、第2実施形態においては、これらは別体とされており、おむつ本体1と合わせて排泄物検出システムS1を構成する。排泄物検出システムS1において、排尿検出部9は第1実施形態で説明した排泄物検出装置6と同様に要介護者のおむつ本体1に装着される。
【0158】
他方、排便検出部5は、第1実施形態と同様に、おむつ本体1(おむつ内部)に設置されてもよいが、例えば要介護者のベッド脇や、就寝具の隙間等の生活空間を含む場所に配置されることも想定している。即ち、排便検出部5を構成する匂いセンサ5bは、おむつ本体1を着用した要介護者が存する空間に設置される。これによって、排便検出部5を配置する際の自由度が大幅に向上し、排便検出部5を配置する際の制約を大幅に減らすことが可能となる。
【0159】
ここで排便検出部5は、匂いセンサ5b、センサ駆動部5d、ポンプ5c、第2制御部5s、第2記憶部5t、第2通信部5u、RTC5vを含み、図示しない電源によって独立して動作する。第2制御部5sはCPU等で構成され、第2記憶部5tを構成するROM、RAM等に記憶された制御プログラムに従って動作する。ここでRTC5vはリアルタイムクロック(Real Time Clock)であり、図示しないクロック源から時刻・年月日等のディジタルデータを生成・出力するとともに第2制御部5sにトリガーを出力する。
【0160】
他方、排尿検出部9はパルス発生部9a、増幅部9b、温湿度センサ5h、制御部6s、記憶部6t、通信部6uを含み、図示しない電源によって独立して動作する。制御部6sはCPU等で構成され、記憶部6tを構成するROM、RAM等に記憶された制御プログラムに従って動作する。上述したように、排便検出部5は要介護者の身体の近傍に配置されないことも想定されるため、第2実施形態ではおむつ本体1に装着される排尿検出部9で温湿度を計測する。ここで温湿度センサ5hは、要介護者の腹部と面する側に設けられることが好ましい。
【0161】
第1実施形態と同様に排尿検出部9は計測周期TSで排尿の状況の検出を実行する。そして、排尿の状況が「排尿有り」となった場合、制御部6sは通信部6uを介して排便検出部5にイベントコードを送信する。ここで排便検出部5の第2制御部5sは、イベントコードを受信するまでスリープ状態に遷移しており、電力消費を極力低減している。
【0162】
ここで、排尿検出部9の通信部6uと排便検出部5の第2通信部5uとは、無線でデータを送受信する。具体的には通信部6u、第2通信部5uは、例えば近距離無線規格である「Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)」規格に準拠した通信モジュールを含み、相互にデータをやりとりする。即ち、第2実施形態では、排便検出部5と排尿検出部9とは無線でデータを送受信する。これによって、要介護者の近辺に配線部材が引き回されることがなく、要介護者の身体的、心理的な負担が軽減される。
【0163】
排便検出部5の第2通信部5uは、イベントコードを受信すると、RTC5vにトリガーを送信する。トリガーを受けたRTC5vは第2制御部5sを起動する。その後第2制御部5sは、第2通信部5uからイベントコードを受け取る。そして、第2制御部5sはポンプ5cを駆動するとともに、センサ駆動部5dに指示を出力して匂いセンサ5bを駆動する。これによって排便の状況の検出が実行される。上述したように、匂いセンサ5bの消費電力は比較的大きい。他方、RTC5vは一般に極めて消費電力が小さいデバイスである。第2実施形態では、排便検出部5を構成する第2制御部5s等はイベントコードを受信するまで動作を停止していることから、排便検出部5の消費電力が大幅に低減される。
【0164】
更に、第2実施形態においては、排尿検出部9からイベントコードを受信しない状況においても、内蔵されたタイマーに基づいてRTC5vが第2制御部5sにトリガーを出力し、所定の時刻等に排便の状況の検出を行うことが可能である。第1実施形態で説明したようにサーバ制御部52bは、排尿の周期を求めることができる。このように一日における要介護者の排尿周期が既知である場合は、例えば排尿と排尿の中間のタイミングで排便の状況の検出を行うことで、排尿を伴わずに排便のみが行われた場合であっても、早期に「排便有り」を検出しておむつ交換を行うことが可能となる。
【0165】
排便検出部5において、第2制御部5sは、排便の状況を検出し、「排便有り」を検出すると、排尿検出部9に第2通信部5uを介してイベントコード(独自のコードであってもよい)を送信する。イベントコードを受信した排尿検出部9の制御部6sは、イベントコード(「排便有り:02H」)を含むイベント情報をサーバ52に送信する。
【0166】
以上、本発明に係る排泄物検出装置6(排泄物検出システムS1)、排泄物検出方法について特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、上述の実施形態において、おむつ本体1として、テープ等を用いて要介護者に装着される構成(いわゆる「テープタイプ」)について例示したが、本発明はパンツ形状をなすいわゆる「パンツタイプ」についても適用が可能であることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明に係る排泄物検出装置は、「排尿有り」が検出されたことを条件(トリガー)として排便の状況が検出されるため、消費電力を大幅に低減することが可能であることから、いわゆる介護用の紙おむつ、乳幼児用の紙おむつ等、種々のタイプの排泄物受容具に付帯させる排泄物検出装置に好適に応用することができる。また排泄物検出方法についても、要介護者が生活する介護施設等において広く応用することができる。
【符号の説明】
【0168】
1 おむつ本体(排泄物受容具)
4 防水材
4c 切込部
4d 収納部
5 排便検出部
5b 匂いセンサ
5c ポンプ
5d センサ駆動部
5h 温湿度センサ
5v RTC
6 排泄物検出装置
6a 排泄物検出装置本体
6d 電気接点
6e 支持部
6n 中継部材
6s 制御部
8 検出電極
8a 送信電極
8b 受信電極
9 排尿検出部
9a パルス発生部
9b 増幅部
9d 微分回路
9c 容量成分
9r 抵抗成分
50 情報端末
51 ネットワーク
52 サーバ
52a サーバ記憶部
52b サーバ制御部
52f 第1レコード
52g 第2レコード
S1 排泄物検出システム