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特開2024-99165新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及びその重合体、並びにそれらの製造方法
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  • 特開-新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及びその重合体、並びにそれらの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099165
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及びその重合体、並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/58 20060101AFI20240718BHJP
   C08F 20/38 20060101ALI20240718BHJP
   C08F 220/38 20060101ALI20240718BHJP
   C08F 220/58 20060101ALI20240718BHJP
   C07C 309/42 20060101ALI20240718BHJP
   C07C 309/46 20060101ALI20240718BHJP
   C07C 303/32 20060101ALI20240718BHJP
   C07C 303/22 20060101ALI20240718BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20240718BHJP
   A01P 3/00 20060101ALN20240718BHJP
   A01N 61/00 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C08F20/58
C08F20/38
C08F220/38
C08F220/58
C07C309/42
C07C309/46
C07C303/32
C07C303/22
C09K3/16 108C
C09K3/16 103Z
A01P3/00
A01N61/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002897
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】尾添 真治
(72)【発明者】
【氏名】重田 優輔
【テーマコード(参考)】
4H006
4H011
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006AC48
4H006AC53
4H006AC61
4H011AA01
4H011AA04
4H011BB07
4H011BB19
4H011DH02
4J100AA06Q
4J100AB07Q
4J100AC03Q
4J100AC04Q
4J100AC26Q
4J100AC31Q
4J100AE02Q
4J100AE04Q
4J100AE09Q
4J100AF06Q
4J100AF10Q
4J100AG02Q
4J100AG04Q
4J100AJ02Q
4J100AJ08Q
4J100AJ09Q
4J100AK32Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL09Q
4J100AL10Q
4J100AL34Q
4J100AM14Q
4J100AM15Q
4J100AM17P
4J100AM47Q
4J100AM48Q
4J100AM49Q
4J100AN02Q
4J100AP01Q
4J100AQ08Q
4J100AQ12Q
4J100AQ26Q
4J100AR11Q
4J100AS02Q
4J100AS06Q
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4J100BA03Q
4J100BA04Q
4J100BA05Q
4J100BA08Q
4J100BA13Q
4J100BA14Q
4J100BA15Q
4J100BA16Q
4J100BA31Q
4J100BA32Q
4J100BA40Q
4J100BA41Q
4J100BA42Q
4J100BA56P
4J100BA56Q
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4J100BA65Q
4J100BA77Q
4J100BB01Q
4J100BB03Q
4J100BB07Q
4J100BB17Q
4J100BB18Q
4J100BC04Q
4J100BC07Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC48Q
4J100BC49Q
4J100BC53Q
4J100BC65Q
4J100BC73Q
4J100BC79Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA04
4J100JA43
4J100JA50
4J100JA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリスチレンスルホン酸塩に特有の、帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性を保持しながら、ポリスチレンスルホン酸塩の脆性、難溶融性及び各種プラスチックとの相溶性を改良できる新規なポリマー材料及びその重合物を提供する。
【解決手段】下式(1)で表される、スルホフェニル基を有するアクリル系モノマー。

〔RはH又はメチル基を示し、XはO又は二級アミノ基を示し、MはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は置換/無置換のアンモニウムカチオンを示す。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化7】
〔式(1)中、Rは水素又はメチル基を示し、Xは酸素又は二級アミノ基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は置換もしくは無置換のアンモニウムカチオンを示す。〕で表される、スルホフェニル基を有する新規なアクリル系モノマー。
【請求項2】
請求項1に記載したスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーの重合物。
【請求項3】
請求項1に記載したスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及び当該モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合物。
【請求項4】
前記ビニルモノマーがアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、カルボン酸ビニル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、および塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種のビニルモノマーである請求項3に記載の共重合物。
【請求項5】
下記一般式(2)
〔式(2)中、Yは水酸基又はアミノ基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は置換もしくは無置換のアンモニウムカチオンを示す。〕で表されるスルホフェニル化合物と、
【化8】
下記一般式(3)
〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕で表される不飽和カルボン酸無水物を反応させることを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系モノマーの製造方法。
【化9】
【請求項6】
請求項2~4の何れか1項に記載の重合物及び又は共重合物を含む、帯電防止剤。
【請求項7】
請求項6に記載の帯電防止剤が施された製品。
【請求項8】
請求項2~4の何れか1項に記載の重合物及び又は共重合物を有効成分として含む、抗菌剤又は抗ウイルス剤。
【請求項9】
請求項8に記載の抗菌剤又は抗ウイルス剤が施された製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤、抗菌剤、抗ウイルス剤の原料として有用な、新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及びその重合体並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレンスルホン酸塩などのアニオン性ポリマーは、強電解質で且つ耐熱性が優れるため、紙、織布、不織布などシート状多孔質体の帯電防止剤として使用されているが(例えば特許文献1)、非多孔質プラスチックなど水溶液が染込むことができない素材への適用は難しい。
ポリスチレンスルホン酸塩は脆くて溶融せず(例えば非特許文献1)、且つ各種プラスチックとの相溶性が悪く、プラスチックへの溶融混錬やコーティング膜の形成が困難なためである。そこで非多孔質プラスチック向けのアニオン性帯電防止剤として、溶融混錬可能なアルキルベンゼンスルホン酸塩などの低分子化合物が使用されているが、低分子ゆえに脱離し易く、効果の持続性は不十分である(例えば非特許文献2)。
【0003】
一方、ポリスチレンスルホン酸塩はジカウイルス(例えば非特許文献3)、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス(例えば非特許文献4)、さらには淋菌感染症やクラミジア・トラコマスの禁止剤として働くとの学術論文が発表されている(例えば非特許文献5)。
この内、非特許文献3には、ポリスチレンスルホン酸のNa塩(以下、PSSNa)にはジカウイルスに対する抗ウイルス作用があること、PSSNaの分子量が高いほどその効果が高いこと、さらにはジカウイルスを含む細胞とPSSNaとが直接接触することで抗ウイルス作用が極めて高くなることが示されている。非特許文献4には、PSSNaが直接FMV-1のウイルス粒子に作用し、ウイルスの複製をブロックすること、ウイルスも多種多様な変異株にも作用することが示されている。非特許文献5には、PSSNaがバクテリアにも阻害効果(抗菌作用)があることが示されている。
このようなポリスチレンスルホン酸塩の抗ウイルス性を実際に工業製品に適用した例として、繊維表面にリン酸ジルコニウムとポリスチレンスルホン酸ナトリウムを付着させた抗アレルゲン性及び抗ウイルス性を有する繊維製品が知られている(例えば特許文献2)。しかし、上記したポリスチレンスルホン酸塩の性質から、適用範囲は柔軟性の高い繊維に限定されている。
【0004】
上記したポリスチレンスルホン酸塩の改良すべき点を改良するための一般的な手法は、スチレンスルホン酸塩と異種ビニルモノマーとの共重合である。容易に入手出来る量産型ビニルモノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、N-ビニルピロリドン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどがあり、特にアクリル系モノマーは種類が豊富なためポリマー改質に極めて有用だが、スチレンスルホン酸塩は単独重合性が高く、共重合体の設計に大きな制約がある(例えば非特許文献6)。
【0005】
以上の通り、ポリスチレンスルホン酸塩の帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性などの特性を活かしつつ、ポリスチレンスルホン酸塩の改良すべき点である、脆性、溶融性、溶解性及び各種プラスチックとの相溶性が改良されたポリマー材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-43864号公報
【特許文献2】国際公開特許2016/157942号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Paul Balding ; Macromolecules ,2022年,55,1747~1762頁
【非特許文献2】矢崎文彦;工業材料、2012年12月号、60~66頁
【非特許文献3】Pawel Botwina ; Viruses 2020年,Vol.12,Issue 9,926頁
【非特許文献4】Aleksandra Synowiec ; Antiviral Research,2019年,170,104563頁
【非特許文献5】Besty C. Herold ; The Journal of Infection Diseases ,2000年,Vol.181,Issue 2,770~773頁
【非特許文献6】D.N.Schulz;Advances in Chemistry Series,1989年,vol.223,165~174頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の背景及び課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリスチレンスルホン酸塩に特有の帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性を保持しながら、ポリスチレンスルホン酸塩の脆性、溶解性、難溶融性及び各種プラスチックとの相溶性を改良できる新規なアクリル系モノマー及びその重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、非特許文献(上記非特許文献2~5、及び2020年5月29日、経済産業省、新型コロナウイルスに有効な界面活性剤の公表)及び特許文献(例えば、特許第6795720号公報、特開2022-109751号公報)の開示内容を検討した。その結果、ポリスチレンスルホン酸塩が有する帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性はスルホフェニル基に由来するものであり、スルホフェニル基を有するアクリル系ポリマーでもポリスチレンスルホン酸塩と同等の帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性を発現すると考えた。そこで、その原料となる新規なアクリル系モノマーの発明に至った。本発明のモノマーはアクリル系であり、量産されている多様なアクリル系モノマーと共重合することにより、ポリマー組成を自在に制御できると期待される。
【0010】
すなわち本発明は、以下の発明に係る。
[1]下記一般式(1)
【化1】
〔式(1)中、Rは水素又はメチル基を示し、Xは酸素又は二級アミノ基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は置換もしくは無置換のアンモニウムカチオンを示す。〕で表される、スルホフェニル基を有するアクリル系モノマー。
[2]項[1]に記載したスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーの重合物。
[3]項[1]に記載したスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及び当該モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合物。
[4]前記ビニルモノマーが、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、カルボン酸ビニル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、および塩化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種のビニルモノマーである項[3]に記載の共重合物。
[5]下記一般式(2)
〔式(2)中、Yは水酸基又はアミノ基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は置換もしくは無置換のアンモニウムカチオンを示す。〕で表されるスルホフェニル化合物と、
【化2】
下記一般式(3)
〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕で表される不飽和カルボン酸無水物を反応させることを特徴とする、上記項[1]に記載のアクリル系モノマーの製造方法。
【化3】
[6]項[2]~項[4]の何れかに記載の重合物及び/又は共重合物を含む、帯電防止剤。
[7]項[6]に記載の帯電防止剤が施された製品。
[8]項[2]~項[4]の何れかに記載の重合物及び/又は共重合物を有効成分として含む、抗菌剤又は抗ウイルス剤。
[9]項[8]に記載の抗菌剤又は抗ウイルス剤が施された製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明により得られる新規なアクリル系モノマーは、帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性を示すと考えられるスルホフェニル基を有し、且つ多様なビニルモノマーとの良好な共重合性が期待できるため、各種プラスチックなどの素材に帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性を付与するための新たな材料として期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で合成した4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムのプロトン核磁気共鳴スペクトルチャートである。横軸はケミカルシフト(単位はppm)を表し、チャート上部の小数点二桁の数値はケミカルシフト値を示し、チャート上の曲線は、該炭素に結合したプロトンの積分比を示す。構造式中のH~Hは各ピーク近傍に記載したH~Hと対応している。
図2】実施例1で合成した4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの赤外吸収スペクトルチャートである。横軸は波数(単位はcm-1)を表し、縦軸は吸光度(単位は任意)を表す。
図3】実施例1で合成した4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム及びその重合体のGPC溶出曲線であり、横軸は溶出時間(単位は分)を表し、縦軸はUV(波長230nm)吸収ピーク強度(単位は任意)を表す。溶出時間12.3分付近のピークは4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムに対応し、溶出時間8分~10分付近のピークはその重合体に対応する。
図4】合成例2で製造した4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムのプロトン核磁気共鳴スペクトルチャートである。横軸はケミカルシフト(単位はppm)を表し、ピーク近傍に記載した整数は構造式中の炭素1~8に結合したプロトンと対応している。チャート下の数値は、各炭素に結合したプロトンの積分比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0014】
<新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーの製造方法>
本発明の新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーの製造方法は、次の通りである。
すなわち、下記一般式(2)
〔式(2)中、Yは水酸基又はアミノ基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は置換もしくは無置換のアンモニウムカチオンを示す。〕で表されるスルホフェニル化合物と、
【化4】
下記一般式(3)
〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕で表される不飽和カルボン酸無水物を反応させることを特徴とする、上記項[1]に記載のアクリル系モノマーの製造方法。
【化5】
【0015】
ここで、式(2)中、置換基Yは水酸基又はアミノ基とすることが好ましい。置換基Yが水酸基のとき、例えば式(2)のスルホフェニル化合物として、4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。置換基Yがアミノ基のとき、例えば式(2)のスルホフェニル化合物として、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。アミノ基としては1級アミノ基、2級アミノ基が不飽和カルボン酸無水物との反応性の点で好ましい。
また、式(2)中、Mは水素原子、Na、Kなどのアルカリ金属、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、又は置換もしくは無置換のアンモニウムカチオンとすることが好ましく、さらにNaカチオン、アンモニウムカチオンとすることが好ましい。
【0016】
ここで、式(3)中、置換基Rは水素原子又はメチル基とすることが好ましい。式(3)においては2つの置換基Rがあるところ、これらの異同については入手の観点から、同じ置換基とすることが好ましい。式(3)で表される不飽和カルボン酸無水物としては、メタクリル酸無水物(C10)、アクリル酸無水物(C)やメタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリドなどが挙げられる。
【0017】
以下、本発明の新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーの製造方法をより具体的な態様により詳しく説明する。
先ず、4-(2-メタクリル酸エチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの製造例を以下に説明する。
例えば、スルホフェニル化合物としての4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、「HEBS」と略記することがある。)と、不飽和カルボン酸無水物としてのメタクリル酸無水物を適当な溶媒中で反応させることにより、新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーである4-(2-メタクリル酸エチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムを得ることが出来る。
【0018】
この反応において使用できる溶媒としては、HEBSとメタクリル酸無水物を溶解するものであれば特に制限はなく、水、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジオキサン、ジヒドロレボグルコセノン、アセトン及びこれらの混合溶媒を使用できる。
溶媒の使用量は、総基質重量の2倍量~10倍量である。HEBSに対するメタクリル酸無水物の仕込み比は、0.95倍モル~2.00倍モルだが、未反応基質の残存による精製工程の煩雑化を考慮すると1.00倍モル~1.50倍モルがより好ましい。
【0019】
また、反応を促進させるために塩基を添加するのが好ましく、特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの弱塩基が好ましい。
塩基の添加量はHEBSに対して0.50倍モル~3.00倍モルだが、反応後の精製を考慮すると1.00倍モル~2.00倍モルがより好ましい。
【0020】
反応温度は-10℃~+50℃だが、副反応を抑制する観点から-5℃~+30℃がより好ましい。
反応時間は1時間~50時間だが、十分な収率を確保し、且つ重合物の生成を抑制する観点で2時間~20時間がより好ましい。
【0021】
上記基質を反応させる際、内温を-10℃~+10℃の範囲で維持しながら、全ての原料を一括で反応器に仕込んでも良いが、中和熱による暴走反応を抑制する観点から、HEBSと塩基を含む溶液へ、メタクリル酸無水物を逐次添加する方法、又はメタクリル酸無水物を含む溶液へHEBSと塩基を逐次添加する方法がより好ましい。
【0022】
メタクリル酸無水物の代わりにメタクリル酸クロリドなどを使用することも出来る。また、4-(2-アクリル酸エチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムを製造する場合には、メタクリル酸無水物の代わりにアクリル酸無水物やアクリル酸クロリドを使用すれば良い。
また、上記アクリル系モノマーを製造する過程又は製造後、自然重合を防止するため、一般的な重合禁止剤を添加することが出来る。
【0023】
重合禁止剤としては、反応溶液やアクリル系モノマーに溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4-tert-ブチルカテコール、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ハイドロキノンなどのフェノール系化合物、アンモニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-(2-ヒドロキシプロポキシ-3-(2-ヒドロキシエトキシ))-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-1オール、4-(3-ヒドロキシプロポキシ-2-(2-ヒドロキシエトキシ))-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-1オール、フェノチアジン、サリチル酸ヒドラジドなどのアミン系化合物、ジヘキシルチオジプロピオネート、ジノニルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジウンデシルチオジプロピオネート、ジドデシルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジペンタデシルチオジプロピオネート、ヘキサデシルチオジプロピオネート、ジヘプタデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ジヘキシルチオジブチレート、ジノニルチオジブチレートなどのチオエーテル化合物などが挙げられる。これらの内、上記したフェノール系が耐変色性の点で好ましい。
重合禁止剤を用いるときは、その使用量としてアクリル系モノマーに対して0.0重量%~1.0重量%であり、保存安定性と使用時の重合性を考慮すると20ppm~2000ppmがより好ましい。
【0024】
上記反応後、活性炭処理、セライト濾過、シリカゲルカラム精製、溶媒洗浄などの常法により未反応基質や副生成物などの不純物を除去し、さらに再結晶精製により、目的とする4-(2-メタクリル酸エチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム及び4-(2-アクリル酸エチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムを得ることが出来る。
【0025】
原料として用いるHEBSは、例えば、量産されている4-(2-ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸(以下、「BEBS」と略記することがある。)から製造することが出来る。例えば、4-(2-ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸の水溶液に炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの弱塩基を添加し、20℃~100℃で1~50時間反応することにより、加水分解が進行しHEBSが生成する。BEBSの濃度は通常10重量%~80重量%であり、弱塩基の添加量はBEBSに対して0.90倍モル~2.00倍モルである。反応後、無機塩を濾別し、溶媒を留去することにより、HEBSの固体を得ることが出来る。
【0026】
次に4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウムの製造例を以下に説明する。
例えば、スルホフェニル化合物としての4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム(以下、「H2NEBS」と略記することがある。)と、不飽和カルボン酸無水物としてのメタクリル酸無水物を適当な溶媒中で反応させることにより、新規なスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーである4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウムを得ることが出来る。
【0027】
この反応において使用できる溶媒とその使用量、H2NEBSに対するメタクリル酸無水物の仕込み比、反応を促進させるために添加する塩基の種類と量、反応温度と時間、原料の仕込み条件、及び反応後の精製方法は上記したHEBSの場合と同様である。
また、4-(2-アクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウムを製造する場合には、メタクリル酸無水物の代わりにアクリル酸無水物やアクリル酸クロリドを使用すれば良い。
【0028】
原料として用いるH2NEBSは、例えば、量産されている4-(2-ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸から製造することが出来る。例えば、水などの水性溶媒中、4-(2-ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸に対して1.00倍モル~5.00倍モルのアンモニアを加えて反応後、有機溶媒洗浄、活性炭処理、セライト濾過、シリカゲルカラム精製、及び再結晶精製などの方法によりH2NEBSの結晶を得ることが出来る。
【0029】
<新規なスルホフェニル基を有するアクリル系ポリマー(重合物)の製造方法>
次に上記したスルホフェニル基を有する新規なアクリル系モノマー(以下、本発明のモノマーと略称することがある)の重合物及び共重合物の製造方法について説明する。具体的な製造工程には公知の方法を適用することができる。
【0030】
すなわち、ラジカル重合開始剤、光増感剤、紫外線、放射線を用いた一般的なラジカル重合法や乳化重合法(例えば、蒲池ら;新訂版ラジカル重合ハンドブック、2010年、株式会社エヌ・ティー・エス出版、Lovel Peter A.ら;Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers,1997年,John Wiley & Son Ltd出版)の他、原子移動重合(ATRP)、可逆的付加開裂移動(RAFT)重合、沃素移動重合(ITP)、安定ニトロキシル媒介重合(NMP)、有機テルル媒介重合(TERP)などの制御ラジカル重合法(例えば、山子ら、日本ゴム協会誌、82巻、8号、363~369頁、2009年;上垣外ら、ネットワークポリマー、30巻、5号、234~249頁、2009年)が適用できる。
【0031】
上記した重合法の内、汎用性が高いラジカル重合法について詳しく説明する。
例えば、反応容器に溶媒と本発明のアクリル系モノマー及び目的に応じて本発明のモノマーとラジカル共重合可能なビニルモノマーを仕込む。さらに上記した安定ニトロキシル化合物等の重合制御剤又はメルカプタン化合物等の分子量調節剤及びアゾ化合物などのラジカル重合開始剤を加える。そして反応系内を脱酸素した後、所定温度に加熱しながら重合することにより、所望の分子量を有する溶媒に可溶なポリマーを製造できる。当該ポリマーの分子量は、数平均分子量として500ダルトン~5,000,000ダルトンであり、用途に応じて調整することが出来る。
【0032】
上記反応に用いられる溶媒としては、アクリル系モノマー混合物を溶解できるものであれば、特に限定するものではない。例えば、水、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジヒドロレボグルコセノン、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、キシレン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ハロゲン化アルカリ金属塩水溶液及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
重合溶媒の使用量は目的によって異なるが、重合溶媒を用いるときは、その使用量として、全モノマー100重量部に対し0重量部~2,000重量部であり、通常、50重量部~1,000重量部である。
【0033】
分子量調節剤は特に限定されるものではないが、例えば、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド、2,2’-ジチオジプロピオン酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、4,4’-ジチオジブタン酸、2,2’-ジチオビス安息香酸などのジスルフィド類、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3-メルカプト安息香酸、4-メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオコハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、5-メルカプトテトラゾール酢酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、3-メルカプトプロパン-1,2-ジオール、メルカプトエタノール、1,2-ジメチルメルカプトエタン、2-メルカプトエチルアミン塩酸塩、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプト-1-イミダゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、システイン、N-アシルシステイン、グルタチオン、N-ブチルアミノエタンチオール、N,N-ジエチルアミノエタンチオールなどのメルカプタン類、ヨードホルムなどの沃素化炭化水素、ベンジルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、ジフェニルエチレン、p-クロロジフェニルエチレン、p-シアノジフェニルエチレン、α-メチルスチレンダイマー、イソプロパノール、有機テルル化合物、イオウ、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
分子量調節剤を用いるときは、その使用量として、全モノマー100重量部に対し、通常、0重量部~15重量部である。分子量調節剤は、製造するポリマーの分子量や分岐を低減するために有効な添加剤だが、一方で重合速度や共重合性の低下、あるいは臭気の原因となるため、目的によっては必ずしも分子量調節剤は必要でなく、重合開始剤の増量、重合温度の調整、あるいはモノマー及び重合開始剤の添加速度等によって分子量調整することが出来る。
【0034】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などのパーオキサイド類、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレートなどのアゾ化合物、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、エチル-4-(ジメチルアミノ)-ベンゾエート、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタン、エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、o-ベンゾイル安息香酸、4-メチルベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルベンゾイルフォルメイト、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,2-ジメソキシ-2-フェニル アセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパン等の光重合開始剤等があげられる。また、必要に応じて、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アニリン、三級アミン、ロンガリット、ハイドロサルファイト、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤を併用しても良い。
ラジカル重合開始剤の使用量は、全モノマー100重量部に対し、通常、0.1重量部~15重量部である。
【0035】
重合条件は特に限定するものではないが、不活性ガス雰囲気下、20℃~120℃で、4時間~50時間加熱すれば良く、重合溶媒、モノマー組成及び重合開始剤種によって適宜調整すれば良い。光重合する場合は、波長200nm~450nm、照度20mW/cm~1,000mW/cmの紫外光を10℃~60℃で0.1時間~5時間重合すれば良い。
【0036】
本発明のスルホフェニル基を有する新規なアクリル系モノマーと共重合できるビニルモノマーとしては、当該モノマーと共重合できるものであれば特に制限はない。例えば、4-スチレンスルホン酸ナトリウム、4-スチレンスルホン酸リチウム、4-スチレンスルホン酸カリウム、4-スチレンスルホン酸アンモニウム、4-スチレンスルホン酸N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、4-スチレンスルホン酸トリオクチルアミン、4-スチレンスルホニルクロリド、4-スチレンスルホニルブロミド、4-スチレンスルホニルフロリド、4-スチレンスルホンアミド、4-スチレンスルホン酸エチル、4-スチレンスルホン酸ネオペンチル、4-スチレンスルホニル(トリフルオロメチルスルホニルイミド)、4-スチレンスルホニル(パーフルオロブチルスルホニルイミド)、4-スチレンスルホニル(フルオロスルホニルイミド)、リチウム ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド、スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、フロロスチレン、トリフロロスチレン、ニトロスチレン、シアノスチレン、α-メチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-アセトキシスチレン、p-ブトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、3-イソプロペニル-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのスチレン類、ブチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2-フェニルビニルアルキルエーテル、ニトロフェニルビニルエーテル、シアノフェニルビニルエーテル、クロロフェニルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、ポリエチレングリコールアクリレート、アクリル酸グリシジル、2-(アクリロイルオキシ)エチルフォスフェート、アクリル酸2,2,3,3-テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2-トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4-ヘキサフロロブチルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールメタクリレート、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸エチルカルビトール、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、2-(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2-(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6-トリブロモフェニル、メタクリル酸2,2,3,3-テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2-トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4-ヘキサフロロブチル、ジアセトンメタクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメトキシシランなどのメタクリル酸エステル類、イソプレンスルホン酸、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、2-(N-ピペリジルメチル)-1,3-ブタジエン、2-トリエトキシメチル-1,3-ブタジエン、2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ブタジエン、N-(2-メチレン-3-ブテノイル)モルホリン、2-メチレン-3-ブテニルホスホン酸ジエチルなどの1,3-ブタジエン類、N-フェニルマレイミド、N-(クロロフェニル)マレイミド、N-(メチルフェニル)マレイミド、N-(イソプロピルフェニル)マレイミド、N-(スルフォフェニル)マレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ブロモフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-(ニトロフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-(4-アセトキシ-1-ナフチル)マレイミド、N-(4-オキシ-1-ナフチル)マレイミド、N-(3-フルオランチル)マレイミド、N-(5-フルオレセイニル)マレイミド、N-(1-ピレニル)マレイミド、N-(2,3-キシリル)マレイミド、N-(2,4-キシリル)マレイミド、N-(2,6-キシリル)マレイミド、N-(アミノフェニル)マレイミド、N-(トリブロモフェニル)マレイミド、N-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、N-(3,5-ジニトロフェニル)マレイミド、N-(9-アクリジニル)マレイミド、マレイミド、N-(スルフォフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミドなどのマレイミド類、フマル酸ジブチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジエステル類、フマル酸ブチル、フマル酸プロピル、フマル酸エチルなどのフマル酸モノエステル類、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジエステル類、マレイン酸ブチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸エチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸モノエステル類、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物、アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-メチロールアクリルミド、スルフォフェニルアクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルスルホン酸、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、イソプロピルメタクリルアミド、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムクロライドなどのメタクリルアミド類、ビニル酢酸、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサミック酸ビニルなどのカルボン酸ビニル類、その他、ビニルピリジン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、スルフォフェニルイタコンイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-シアノエチルアクリレート、シトラコン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノ2-(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2-(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2-(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、アクロレイン、ビニルメチルケトン、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、ビニルエチルケトン、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、デヒドロアラニン、二酸化イオウ、イソブテン、N-ビニルカルバゾール、ビニリデンジシアニド、パラキノジメタン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ノルボルネン、N-ビニルカルバゾール、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらの中で、本発明の新規なアクリル系モノマーとの共重合性や入手性などを考慮すると、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、カルボン酸ビニル類、アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニルが好ましい。
上記した本発明のアクリル系モノマーと共重合可能なビニルモノマーの使用割合は、全モノマー中で0.0モル%~99.0モル%である。本発明の重合物を適用する素材との相溶性や加工条件によって、適宜、共重合体の組成を調整すれば良い。
【0037】
共重合の様式は特に限定されず、ランダム共重合体、交互共重合体及びグラフト共重合体の他、上記した制御重合法を適用すればブロック共重合体を製造できる。
【0038】
本発明の用途の一つである帯電防止剤について以下に説明する。
本発明の帯電防止剤は、上記したスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーの重合物及び/又はスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及びこのモノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合物を含む。
【0039】
一般に各種プラスチック製品、電子部品を包装又は保護するためのフィルム、あるいは紙、衣服などの帯電を防止するため、多種多様な帯電防止剤が使用されている。例えば、低分子型、高分子型、カーボン、カチオン型、アニオン型、ノニオン型、両性型などに分類される。
これらの中で、高分子型は耐脱離性、耐汚染性が優れるため永久帯電防止剤とも呼ばれ、さらにアニオン型は耐熱性、耐変色性に優れる特徴を有する。上記化合物を有効成分として含む帯電防止剤を、上記基材表面に塗布、あるいは基材に練り込むことによって、基材表面に帯電防止性が付与される。しかしながら、アニオン性高分子は殆どのプラスチックとの相溶性が悪く、且つ脆いため、用途が限定されている。例えば、代表的なアニオン性高分子であるポリスチレンスルホン酸塩がポリエステルフィルム向け帯電防止剤の有効成分として使用されている(例えば、国際公開特許2020/255755号)。
【0040】
ポリスチレンスルホン酸塩は極めて脆く、そのままではフィルム表面にコーティング出来ないため、その水溶液をバインダー樹脂であるアクリルエマルションに添加することにより、コーティング組成物としている。但し、ポリスチレンスルホン酸塩はアクリルポリマーと相溶しないため、相溶化剤として、高価で耐熱性が低い糖アルコールの添加が必須である。
これに対し本発明のモノマー及びポリマーはアクリル系であり、汎用性の高いアクリルポリマーと良好な相溶性が期待できる。
【0041】
さらに本発明の帯電防止剤を基材表面に塗布した製品、あるいは基材と混和もしくは練り込みにより得られた製品を得ることができ、社会への実装化に寄与できる。このような本発明の帯電防止剤が施された製品の剤型は用途に応じた形態を任意に選択できる。
【0042】
本発明の用途である抗菌剤又は抗ウイルス剤について以下に説明する。
本発明の抗菌剤又は抗ウイルス剤は、上記したスルホフェニル基を有するアクリル系モノマーの重合物及び/又はスルホフェニル基を有するアクリル系モノマー及びこのモノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合物を有効成分として含む。
【0043】
本発明の抗菌剤、抗ウイルス剤について説明する。
一般に各種プラスチック製品やカーテン、マスク、衣服などの繊維製品に抗菌性、抗ウイルス性を付与するため、多種多様な抗菌・抗ウイルス剤が使用されている(例えば、抗菌・抗ウイルス性能の材料への付与、加工技術と評価、2021年3月31日発刊、329頁、株式会社技術情報協会)。
例えば、抗菌剤の有効成分としてイミダゾール誘導体、スルホン酸誘導体、フェノール誘導体、第四級アンモニウム塩、銅系、亜鉛系、酸化チタン系の他、茶やワサビから抽出される天然エキスなどがあり、抗菌・抗ウイルス性、即効性、耐熱性、安全性及び価格の面で何れも一長一短がある。上記化合物を有効成分として含む抗菌剤又は抗ウイルス剤を、上記基材表面に塗布、あるいは基材に練り込むことによって、得られた材料を含む基材表面に抗菌性が付与される。
【0044】
上記スルホン酸誘導体の内、ポリスチレンスルホン酸塩などの高分子は、上記した帯電防止剤と同様、耐脱離性、耐汚染性に優れるが、脆く、基材との相溶性が悪いため、実用例は極めて少ない(例えば、国際公開特許2016/157942号)。本発明のモノマーは、多様なモノマーと共重合し易いアクリル系であり、ポリスチレンスルホン酸塩の抗菌・抗ウイルス性を損なわずに、ポリスチレンスルホン酸塩の欠点である脆性や基材との相溶性を改良できる可能性がある。
【0045】
さらに本発明の抗菌剤、抗ウイルス剤を基材表面に塗布した製品、あるいは基材と混和もしくは練り込みにより得られた製品を得ることができ、社会への実装化に寄与できる。このような本発明の抗菌剤又は抗ウイルス剤が施された製品の剤型、製品形態は、用途に応じた剤型、形態を任意に選択できる。例えば、粉状、顆粒状、錠剤の形態や液体の状態としても使用できる。
【実施例0046】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
<製造方法および製造物の同定>
反応の追跡は高速液体クロマトグラフ(以下、HPLC分析と略記する。)により、化合物の同定はプロトン核磁気共鳴分析(以下、「H-NMR分析」と略記する。)及び赤外分光分析(IR)により、モノマーの重合挙動はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC分析」と略記する。)により分析した。
【0048】
<HPLC分析>
装置:東ソー株式会社製
カラム:TSKgel(登録商標)ODS-80TM(4.6mmI.D.×25cm)
溶離液:A) 20mMリン酸二水素ナトリウム水溶液/アセトニトリル=90/10体積%
B) 20mMリン酸二水素ナトリウム水溶液/アセトニトリル=60/40体積%
グラジェント:A液100%(0~60分)→B液100(60~90分)
検出器:紫外線UV230m、カラム温度:25℃、流量:0.8ml/min、注入量:20μl
【0049】
H-NMR分析>
装置:ブルカー・バイオスピン社製、AV-400M
測定サンプルの調製方法:測定試料を約50mg測りとり、重溶媒約1.0mLを加えて溶解し、H-NMRを測定した。
【0050】
<IR分析>
装置:パーキンエルマー社製 Spectrum2000
【0051】
<GPC分析>
機種:東ソー株式会社製、HLC-8320GPC
カラム:TSK guardcolumn Super AW-H/TSKgel(登録商標) Super AW6000/TSKgel(登録商標) Super AW3000/TSKgel(登録商標) Super AW2500
溶離液:NaSO水溶液(0.05M)/アセトニトリル=65/35体積%
カラム温度:40℃
検出器:UV検出器、注入量:10μL
検量線:創和科学製の標準ポリスチレンスルホン酸ナトリウム[3K、15K、41K、300K、1000K、2350K、5000K(「K」は1000の意味で、3Kは3000となる)]のピークトップ分子量と溶出時間から作成した。
【0052】
合成例1 4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム(H2NEBS)の合成
1L四つ口ガラスフラスコに4-(2-ブロモエチルベンゼン)スルホン酸(以下、BEBSと略称する)(東京化成工業株式会社製、純度>97%)126.82g(0.464モル)、イオン交換水141.46g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)38.98g(0.464モル)を採取し、磁気撹拌子で攪拌しながら常温でBEBSを溶解させた。ここへ、内温を30℃~40℃の間に維持しながら、28wt%アンモニア水溶液95.41g(1.571モル)を6時間掛けて滴下し、そのまま16時間熟成した。HPLCで反応をモニタリングした結果、溶出時間19.2分付近に見られたBEBSのピークがほぼ消失し、溶出時間3.1分付近に新たなピークが出現したことから、BEBSがH2NEBSへ変換されたと判断した。両者の面積比から、BEBSの反応転化率(面積基準)は98.5%と推定した。
次に反応器へ1,2-ジクロロエタンを100.01g添加し、常温で2時間攪拌して原料及び不純物を1,2-ジクロロエタンに抽出した後、ロータリーエバポレーターを用いて残った水溶液を濃縮することにより、目的物と推定される固体を得た。当該固体をメタノールに溶解し、シリカゲルカラムを用いた常法により精製した後(富士フイルム和光純薬株式会社製 ワコーゲルTMC-300、展開溶媒水/メタノール)、溶媒を乾固することにより、H2NEBSの結晶116.10gを取得した。
【0053】
実施例1 4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの製造(モノマーの合成)
窒素導入管を備えた100ml三ツ口ガラスフラスコに合成例1で得たH2NEBS(面積基準の純度94%)2.20g(9.5ミリモル)、炭酸水素ナトリウム1.70g(20.20ミリモル)及びイオン交換水50.90gを採取し、窒素雰囲気下、磁気撹拌子で攪拌し、内温を25℃以下に維持しながらメタクリル酸無水物2.30g(東京化成工業株式会社製、純度>97%、14.5ミリモル)を1時間掛けて滴下した。そのまま16時間熟成を続けた。HPLCで反応をモニタリングした結果、溶出時間3.1分付近に見られたH2NEBSのピークがほぼ消失し、溶出時間8.6分付近に新たなピークが出現したことから、目的物である4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムが生成したと判断した。両者の面積比から、H2NEBSの反応転化率(面積基準)は100%と推定した。
反応後、ロータリーエバポレーターを用いてテトラヒドロフランと水を留去し、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラム処理(ゲル:ワコーゲル登録商標C-300、溶媒:クロロホルム/メタノール=1/4~2/1重量比)した後、溶媒を濃縮することにより、白色固体1.40gを得た。
当該白色固体をプロトン核磁気共鳴により分析した結果、4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムであると判定した(図1)。
【0054】
H-NMR(DMSO-d、400MHz)δ(ppm)1.835(a:3H)、5.304(b:1H)、5.621(c:1H)、3.286~3.337(d:2H)、2.736~2.773(e:2H)、7.151~7.171(f:2H)、7.532~7.552(g:2H)、8.052(h:1H)
【0055】
当該白色固体をプロトン核磁気共鳴により分析した結果、4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムであると判定した(図1)。
H-NMR(DMSO-d、400MHz)δ(ppm)1.835(a:3H)、5.304~5.621(b:1H、c:H)、3.286~3.419(d:2H)、2.736~2.773(e:2H)、7.151~7.552(f:2H、g:2H)、8.052(h:1H)
【0056】
また、当該白色固体の赤外分光分析を実施した結果、カルボニル、芳香環、スルホ基由来の吸収ピークが観測されたことから、当該白色固体が目的物であることが示唆された(図2)。
【0057】
(モノマーの重合)
冷却管を備えた50ml三ツ口フラスコに上記モノマー1.00g、イオン交換水20.00g及び重合開始剤0.005g(富士フイルム和光純薬株式会社製 V-50)を採取して溶解した。続いて、アスピレーター減圧と窒素導入を繰返して当該溶液を脱酸素した後、60℃の温浴に浸漬し、磁気撹拌子で攪拌しながら5時間重合した。重合反応前後のGPC溶出曲線を図3に示した。溶出時間14分付近のピークが加熱によって完全に消失し、9分付近へシフトしたことから、4-(2-メタクリルアミドエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムがラジカル重合によって、ポリマー化したことが明らかである。
【0058】
合成例2 4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(HEBS)の合成
冷却管を備えた2L四つ口ガラスフラスコに4-(2-ブロモエチルベンゼン)スルホン酸(以下、BEBSと略称する)(東京化成工業株式会社製、純度>97%)27.32g(0.1000モル)、イオン交換水1128.00g、炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)16.80g(0.200モル)を採取し、磁気撹拌子で攪拌しながら75℃で46時間、加水分解反応を行った。HPLCで反応をモニタリングした結果、溶出時間19.2分付近に見られたBEBSのピークがほぼ消失し、目的物と推測される溶出時間2.9分付近に新たなピークが出現した。両者の面積比から、BEBSの反応転化率(面積基準)は99.2%と推定した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて水を留去し、淡橙色を呈する固体36.38gを得た。
上記粗HEBS固体をメタノール40.00gに溶解し、シリカゲルカラムを用いた常法により精製した(富士フイルム和光純薬株式会社製 ワコーゲル(登録商標)C-300、展開溶媒クロロホルム/メタノール=1/2重量比)。ロータリーエバポレーターを用いてHEBS溶液から溶媒を留去し、白色固体19.97gを得た。当該白色固体をプロトン核磁気共鳴により分析した結果、4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムであることを確認した(図4)。
【0059】
実施例2 4-(2-メタクリル酸エチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの製造
合成例2で得た4-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム0.22g(0.95mmol)、炭酸水素ナトリウム0.17g(2.02mmol)及びイオン交換水5.05gを50ml四つ口ガラスフラスコに採取し、内温を0~5℃に維持しながら溶解させた。上記フラスコの内温を25℃以下に維持し、磁気撹拌子で攪拌しながら無水メタクリル酸のテトラヒドロフラン溶液(無水メタクリル酸0.23g、1.45mmolをテトラヒドロフラン4.42gに溶解したもの)を1時間掛けて滴下して反応した後、そのまま16時間熟成した。反応後、ロータリーエバポレーターを用いてテトラヒドロフランと水を留去し、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラム処理(富士フイルム和光純薬株式会社製 ワコーゲル(登録商標)C-300、展開溶媒:クロロホルム/メタノール=4/1~2/1重量比)した後、溶媒を濃縮することにより、白色固体0.16gを得た。
【0060】
H-NMR分析(DMSO-d、400MHz)の結果は以下の通りであり、当該白色固体が目的物であること判定した。
ケミカルシフト(ppm)1.841(a:3H)、5.653(b:1H)、5.978(c:1H)、4.270~4.303(d:2H)、2.925~2.958(e:2H)、7.232(f:2H)、7.575(g:2H)
【化6】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により得られる新規なアクリル系モノマーは、帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性を示すと考えられるスルホフェニル基を有し、且つ多様なビニルモノマーとの良好な共重合性が期待できるため、各種プラスチックなどの素材に対して帯電防止性、抗菌性、抗ウイルス性を付与できる新たな材料として期待できる。
図1
図2
図3
図4