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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099167
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】粒度解析画像の取得方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0227 20240101AFI20240718BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240718BHJP
【FI】
G01N15/02 B
G03B15/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002901
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110711
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 篤
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 里衣
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】福島 陽
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】岡本 遥河
(57)【要約】
【課題】スケールが配置されておらずカメラも定置されていない場合でも粒度解析対象の粒度を解析するための粒度解析画像を取得することができる方法及びシステムを提供する。
【解決手段】粒度解析対象Eに臨ませた深度センサ付きカメラ10によりxy方向の二次元画像の各画素にz方向の深度が付された深度付き画像G0を撮影し,その深度付き画像G0の各画素をカメラ10の中心点Oと粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lに垂直な平面P上に射影変換して粒度解析画像Gc0を作成する。好ましくは,深度付き画像G0から精度の確保できる範囲G1又は凹凸変化の小さい範囲G1を抽出し,画像抽出手段22により抽出した範囲の深度付き画像G1から粒度解析画像Gc1を作成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度解析対象に臨ませた深度センサ付きカメラによりxy方向の二次元画像の各画素にz方向の深度が付された深度付き画像を撮影し,前記深度付き画像の各画素を前記カメラの中心点と前記粒度解析対象上の最小深度点とを結ぶ直線に垂直な平面上に射影変換して粒度解析画像を作成してなる粒度解析画像の取得方法。
【請求項2】
請求項1の方法において,前記深度センサ付きカメラを前記粒度解析対象の上方又は近傍で移動する移動体に搭載してなる粒度解析画像の取得方法。
【請求項3】
粒度解析対象に臨ませてxy方向の二次元画像の各画素にz方向の深度が付された深度付き画像を撮影する深度センサ付きカメラ,及び前記深度付き画像の各画素を前記カメラの中心点と前記粒度解析対象上の最小深度点とを結ぶ直線に垂直な平面上に射影変換して粒度解析画像を作成する画像変換手段を備えてなる粒度解析画像の取得システム。
【請求項4】
請求項3のシステムにおいて,前記深度センサ付きカメラを,前記粒度解析対象の上方又は近傍で移動する移動体上に取り付け可能なものとしてなる粒度解析画像の取得システム。
【請求項5】
請求項3のシステムにおいて,前記深度付き画像から精度の確保できる範囲又は凹凸変化の小さい範囲を抽出する画像抽出手段を設け,前記画像抽出手段により抽出した範囲の深度付き画像を前記画像変換手段に入力して粒度解析画像を作成してなる粒度解析画像の取得システム。
【請求項6】
請求項3のシステムにおいて,前記深度センサ付きカメラに前記深度付き画像をネットワーク経由でクラウドサーバに送る送信装置を含め,前記画像変換手段をクラウドサーバ上又はネットワークに接続されたコンピュータ上に設けてなる粒度解析画像の取得システム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて,前記クラウドサーバ上又はネットワークに接続されたコンピュータ上に前記粒度解析画像から前記粒度解析対象の粒度を求める粒度解析手段を設けてなる粒度解析画像の取得システム。
【請求項8】
粒度解析対象の粒度を求める画像を取得するためコンピュータを,粒度解析対象に臨ませた深度センサ付きカメラで撮影したxy方向の二次元画像の各画素にz方向の深度が付された深度付き画像を入力する入力手段,及び前記深度付き画像の各画素を前記カメラの中心点と前記粒度解析対象上の最小深度点とを結ぶ直線に垂直な平面上に射影変換して粒度解析画像を作成する画像変換手段として機能させる粒度解析画像の取得プログラム。
【請求項9】
請求項8のプログラムにおいて,前記コンピュータを,前記深度付き画像から精度の確保できる範囲又は凹凸変化の小さい範囲を抽出する画像抽出手段として機能させ,前記画像抽出手段により抽出した範囲の深度付き画像を前記画像変換手段に入力して粒度解析画像を作成してなる粒度解析画像の取得プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒度解析画像の取得方法及びシステムに関し,とくに解析対象の粒度を求めるための粒度解析画像を取得する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば土木・建築構造物を構築する際に,様々な粒径の礫,砂,粘土等の粒状材が混在した地盤材料を使用することがあり,構築する構造物の品質(とくに強度)を確保するため,使用する地盤材料の粒度(粒度分布等)の測定を求められることがある。一般に地盤材料の粒度は,混在する各粒状材の粒径dを横軸(対数軸)とし,各粒径d以下の粒状材の全体に対する質量百分率(=その粒径d以下の粒状材の総質量/粒状材全体の総質量×100,加積通過率と呼ばれる)を縦軸(線形軸)とした片対数グラフ,すなわち粒径加積曲線によって確認することができる。
【0003】
粒径加積曲線を作成する従来方法の一例は,地盤材料中に混在する各粒状材を篩い分けして各粒径dの加積通過率P(d)を求めるものである。しかし,地盤材料は最大粒径から最小粒径までの範囲(粒径範囲)が広いので,粒径加積曲線を作成するためには相応の量の地盤材料の篩い分け作業を篩い目の種類の数だけ繰り返さなければならず,粒度の測定(以下,粒度の解析ということがある)に非常に手間がかかる課題があった。そこで,地盤材料の画像からコンピュータによる画像処理技術によって粒度を解析する方法が開発されている(特許文献1~3参照)。
【0004】
例えば特許文献1は,図5に示すように,地盤材料Eの解析対象範囲を矩形のスケール付き外枠材46で囲い,その外枠材46の中央上方に昇降支持軸44a付き支持装置44によって下向きデジタルカメラ40を設置すると共に,その周囲に異なる向きの複数の照明(ランプ)42a~42dを設置して画像を取得する方法を提案している。複数の照明42a~42dを異なる向きで順次に照射しながらデジタルカメラ40により陰影位置の異なる複数の画像Ga~Gdを撮影し,陰影の異なる画像Ga~Gdを合成することにより.解析対象範囲の個々の粒状材Sを精度よく分離識別することができる。また,デジタルカメラ40によりスケール付き外枠材46が含まれる画像を撮影することにより,外枠材46のスケールを利用して撮影した各粒状材Sの粒径dを計測し,地盤材料Eの粒度を求めることができる。
【0005】
粒径範囲の広い地盤材料Eを対象とする場合は,地盤材料Eの単独の画像Gから特定の粒径d(例えば100mm)以下の粒状材を全て検出して加積通過率P(d)を直接的に求めることは難しい場合もある。そこで,例えば特許文献2が開示するように,画像Gから特定の粒径d以上の粒状材を全て検出し,画像G中の地盤材料の全体面積Eに対する粒径d以上の粒状材の面積eの総和(Σe)の割合Σe/E(以下,粒度インデクスIという)から,その粒径dの加積通過率P(d)を間接的に求めることが提案されている。このような方法を用いることにより,図5のような地盤材料Eの単独の画像Gから,その地盤材料Eの粒径加積曲線を求めることができる。
【0006】
また特許文献3は,図6に示すように,地盤材料Eを建築現場へ搬入する経路に振動ベルトコンベア50を設置し,そのベルトコンベア50の搬送面と対向させて定置した下向きデジタルカメラ60により画像を取得する方法を提案している。振動ベルトコンベア50は,駆動プーリ56とローラ57との間に環状ベルト58を架け渡し,駆動装置59により駆動プーリ56を駆動して環状ベルト58を回転させることにより,ベルト58の上面(搬送面)に載置した地盤材料Eを搬送する。搬送面の下方には,搬送方向に沿って複数のキャリアローラ53,55が並べられており,搬送面上流部のキャリアローラ53は第1支持体51によって連結支持され,他のキャリアローラ55は第1支持体51から縁切りされた第2支持体54によって連結支持されている。
【0007】
第1支持体51には振動装置52が取り付けられており,振動装置52を振動させることにより搬送面の上流側のみを振動させ,その上流部に投入された地盤材料Eを振動させて分散させたのち,分散後の地盤材料Eを搬送面の下流側に送って振動させずに観察することができる。その搬送面の下流側に遮光板で覆われた撮影建屋61を設け,その撮影建屋61内に照明装置と共にデジタルカメラ60が定置されている。カメラ60は搬送面との距離F及び向きが一定となるように固定されており,一定の距離F及び向きで地盤材料Eの画像Gを撮影することにより撮影範囲の大きさ(長さd´)とカメラ60の内部仕様(焦点距離f)とから画像G内の各粒状材Sの粒径d(=d´×F/f)を計測し,地盤材料Eの粒度を求めることができる。
【0008】
特許文献1~3のように地盤材料Eの画像Gから粒度を求める方法によれば,従来の篩い分け方法に比して迅速に,しかも精度よく地盤材料Eの粒度を解析することができる。なお,画像Gから粒度を解析する対象は地盤材料Eに限定されるものではなく,特許文献4が開示するように,例えば岩盤切羽の発破掘削時に生じる発破ズリ(岩盤砕屑物)等の粒状材の堆積物を粒度解析対象とすることもでき,特許文献1~3の画像処理技術によって発破ズリの画像Gから発破ズリの粒度を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-078234号公報
【特許文献2】特開2011-163836号公報
【特許文献3】特開2016-124665号公報
【特許文献4】特開2012-159468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
盛土とする地盤材料Eを掘削する現場等において,掘削した地盤材料が盛土として適切か否かを判定したり,土質の変化を判定することが行われる。その際,バックホウ等の採掘機械(作業重機)に搭載したデジタルカメラで取得した画像を適切に抽出し,解析を行うことによって迅速な判定をすることが可能となる。例えば,所定サイズ以下の地盤材料Eを掘削する現場等において,掘削時に出現する地盤材料Eの粒度をリアルタイムで解析できれば,地盤材料Eの粒度が所定サイズ以下であるか否かを直ちに判断することができ,所定サイズ以上の地盤材料(例えば大きな岩等)は選別又は粉砕することにより作業の迅速化・効率化を図ることが期待できる。
【0011】
しかし,特許文献1~3を参照して説明した従来方法は,図5のようにスケールが配置された地盤材料Eの画像G,或いは図6のようにカメラが定置されて撮影距離及び向きが一定の範囲内の地盤材料Eの画像Gから粒度を解析するものであり,スケールが配置されておらずカメラも定置されていない地盤材料Eの画像Gに適用して粒度を求めることはできない問題点がある。
【0012】
すなわち,バックホウ等の採掘機械が移動する掘削現場で取得される地盤材料Eの画像Gには,図5のようなスケールを配置して写し込むことは現実的でなく,スケールを用いて地盤材料E中の各粒状材Sの粒径dを計測することは期待できない。また,採掘機械は作業中に向きや姿勢を様々に変えるので,図6のようにカメラを定置して撮影距離及び向きを一定に保つこともできず,画像Gの撮影範囲の大きさから各粒状材Sの粒径dを計測することも期待できない。採掘機械に搭載したカメラにより掘削時に出現する地盤材料Eの粒度をリアルタイムで解析するためには,スケールが配置されておらずカメラが定置されていなくても,写り込んだ各粒状材の粒径dを計測することができる画像(以下,粒度解析画像という。)を取得することが必要である。
【0013】
そこで本発明の目的は,スケールが配置されておらずカメラが定置されていない場合でも粒度解析画像を取得することができる方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において本発明は,図1及び図2の実施例に示すように,粒度解析対象Eに臨ませた深度センサ付きカメラ10(図4参照)によりxy方向の二次元画像の各画素にz方向の深度が付された深度付き画像G0(図1(B)参照)を撮影し,その深度付き画像G0の各画素をカメラ10の中心点Oと粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lに垂直な平面P(図2(A)参照)上に射影変換して粒度解析画像Gc0(図1(D)及び図2(B)参照)を作成してなる粒度解析画像の取得方法を提供する。
【0015】
他の態様において本発明は,図1及び図2の実施例に示すように,粒度解析対象Eに臨ませてxy方向の二次元画像の各画素にz方向の深度が付された深度付き画像G0(図1(B)参照)を撮影する深度センサ付きカメラ10(図4参照),及び深度付き画像G0の各画素をカメラ10の中心点Oと粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lに垂直な平面P(図2(A)参照)上に射影変換して粒度解析画像Gc0(図1(D)及び図2(B)参照)を作成する画像変換手段23(図1(C)参照)を備えてなる粒度解析画像の取得システムを提供する。
【0016】
好ましい実施例では,図1及び図3に示すように,深度センサ付きカメラ10を,粒度解析対象Eの上方又は近傍で移動する移動体1a又は1b上に取り付け可能なものとする。また,望ましい実施例では,図1(C)に示すように,深度付き画像G0から精度の確保できる範囲G1又は凹凸変化の小さい範囲G1を抽出する画像抽出手段22を設け,画像抽出手段22により抽出した範囲の深度付き画像G1(図1(C)参照)を画像変換手段23に入力して粒度解析画像Gc1(図1(D)参照)を作成する。
【0017】
更に好ましい実施例では,図3に示すように,深度センサ付きカメラ10に深度付き画像G0又はG1をネットワーク30経由でクラウドサーバ20に送る送信装置18を含め,画像変換手段23をクラウドサーバ20b上又はネットワーク30に接続されたコンピュータ20c上に設ける。更に望ましい実施例では,図3に示すように,クラウドサーバ20b上又はネットワーク30に接続されたコンピュータ20c上に粒度解析画像Gc0又はGc1から粒度解析対象Eの粒度を求める粒度解析手段25を設ける。
【発明の効果】
【0018】
本発明は,粒度解析対象Eに臨ませた深度センサ付きカメラ10によりxy方向の二次元画像の各画素にz方向の深度が付された深度付き画像G0を撮影し,深度付き画像G0の各画素をカメラ10の中心点Oと粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lに垂直な平面P(図2参照)上に射影変換して粒度解析画像Gc0を作成するので,粒度解析対象Eの近傍にスケールが配置されておらずカメラが定置されていない場合でも,写り込んだ各粒状材Sの粒径dを計測して粒度解析対象Eの粒度を求めることができる粒度解析画像Gc0を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
図1】は,本発明の粒度解析画像の取得システムの一実施例のブロック図である。
図2】は,本発明の粒度解析画像の取得方法の原理を示す説明図である。
図3】は,本発明の粒度解析画像の取得システムの他の実施例のブロック図である。
図4】は,本発明で用いる深度センサ付きカメラの一例の説明図である。
図5】は,粒度解析画像を取得する従来方法の一例の説明図である。
図6】は,粒度解析画像を取得する従来方法の他の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は,地山等の地盤材料Eの掘削現場において,掘削時に出現する地盤材料Eの粒度の解析に適用した本発明の画像取得システムのブロック図を示す。図示例のシステムは,出現した地盤材料Eに臨ませて深度付き画像G0を撮影する深度センサ付きカメラ10と,深度センサ付きカメラ10で撮影した深度付き画像G0を入力して地盤材料Eの粒度解析画像Gc0を作成するコンピュータ20aとを備えている。
【0021】
図1の実施例では,掘削現場上を走行移動するバックホウ等の移動体1aに深度センサ付きカメラ10とコンピュータ20aとを搭載し,掘削時に出現する地盤材料Eの粒度を移動体1a上の作業員がリアルタイムで解析できるようにしている。移動体1a上の深度センサ付きカメラ10の取り付け位置は,掘削時に出現する地盤材料Eと対向させることできるように適宜選択することができる。バックホウ等の移動体1aに代えて,図3に示すように掘削現場上方を飛行するドローン等の移動体1bに深度センサ付きカメラ10を取り付けることも有効である。深度センサ付きカメラ10をドローン等の移動体1bに取り付けることにより,高い鳥観的な視点から現場内全体の地盤材料Eの粒度を一気に解析することも可能となる。
【0022】
なお,深度センサ付きカメラ10は必ずしも移動体1a,1bに搭載する必要はなく,例えばスマートフォン等の携帯端末を深度センサ付きカメラ10とすることも可能である。深度センサ付きカメラ10を携帯端末とすることにより,作業員が持ち歩きながら任意地点の地盤材料Eの深度付き画像G0を撮影し,撮影位置毎の地盤材料Eの粒度をリアルタイムで解析することが可能となる。この場合は,図3及び図4に示すように深度センサ付きカメラ10に地盤材料Eの深度付き画像G0をネットワーク30経由でクラウドサーバ20bに送る送信装置18を含め,クラウドサーバ20b又はネットワーク30に接続された他のコンピュータ20cによって地盤材料Eの粒度解析画像Gc0を作成し,地盤材料Eの粒度を解析することもできる。
【0023】
図示例の深度センサ付きカメラ10は,図4に示すようにデジタルカメラ12と距離センサ14とを同じ向きに保持して一体的に組み合わせたものである。距離センサ14の一例はLiDAR(Light Detection and Ranging)である。LiDARは,対象面に向けて角度を切り替えながらレーザ光を照射すると共に対象からの反射光を検知し,検知したレーザ光の往復時間と照射角度とから対象面上の多数の照射点までの距離z及び二次元座標(x,y),すなわち多数の照射点群の三次元座標(x,y,z)を取得することができる。ただし,LiDARに代えて,従来からリモートセンシング測距に使用されている他の距離センサ,例えばミリ波レーダー等を用いることも有効である。
【0024】
図4の深度センサ付きカメラ10は,適当なキャリブレーションによりデジタルカメラ12の中心点及び座標系と距離センサ14の中心点及び座標系とを揃えたうえで,付加装置16において距離センサ14で取得された多数の点群の三次元座標(x,y,z)にデジタルカメラ12で取得されたRGB等の二次元画像データ(x,y)を付加することにより,図1(B)に示すような深度付き画像G0を出力する。深度センサ付きカメラ10の出力する深度付き画像G0は,深度センサ付きカメラ10の中心点Oを原点とする座標系において,xy方向の二次元画像(x,y)の各画素にRGB等の画像データと共にz方向の深度が付されたものである。
【0025】
本発明において深度センサ付きカメラ10は定置されていないので,深度センサ付きカメラ10の出力する深度付き画像G0は画素毎にz方向の深度が異なりうる。従って,深度付き画像G0に写り込んだ地盤材料Eの各粒状材Sの粒径dを画像G0から直接的に求めることはできず,深度付き画像G0から地盤材料Eの粒度を直接的に解析することは困難である。そこで,深度付き画像G0をコンピュータ20aに入力し,地盤材料Eの各粒状材Sの粒径dを計測できる粒度解析画像Gc0に変換することにより,地盤材料Eの粒度の解析を可能とする。
【0026】
図1(C)に示すコンピュータ20aは,一次・二次の記憶装置(図示せず)とディスプレイ・プリンタ等の出力装置(図示せず)とタッチパネル等の入力装置(図示せず)とを有しており,内部プログラムとして,深度センサ付きカメラ10から深度付き画像G0を入力する入力手段21と,深度付き画像G0を粒度解析画像Gc0に変換する画像変換手段23と,変換した粒度解析画像Gc0等を出力装置に出力する出力手段24とを有している。また図示例のコンピュータ20aは,深度付き画像G0から粒度解析精度の確保できる適当な範囲G1を抽出する画像抽出手段22を有しており,必要に応じて,その抽出した範囲の深度付き画像G1を画像変換手段23に入力して粒度解析画像Gc1に変換することができる。更に図示例のコンピュータ20aは,粒度解析画像Gc0又はGc1から粒度解析対象Eの粒度を求める粒度解析手段25を有している。
【0027】
図2(A)は,コンピュータ20aの画像変換手段23における深度付き画像G0の変換手順の概要を示す。画像変換手段23は,先ず深度付き画像G0のうちz方向の深度が最も小さい画素の三次元座標から,深度センサ付きカメラ10の中心点Oを原点とする座標系における粒度解析対象E上の最小深度点Mの三次元座標を検出する。次いで,カメラ10の中心点(原点)Oと粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lに垂直な平面Pを想定し,深度付き画像G0の各画素の三次元座標(x,y,z)を平面P上に射影変換することにより,深度付き画像G0を粒度解析画像Gc0に変換する。
【0028】
射影変換は図学的な中心投影変換に相当する座標変換であり,図2(A)に示すように,射影変換によって深度付き画像G0の各画素の三次元座標(x,y,z)は,その画素とカメラ10の中心点(原点)Oとを結ぶ直線が平面Pと交差する交差点の三次元座標(x´,y´,z´)に変換される。すなわち,原点Oから見て平面Pよりも遠い粒度解析対象E上の点Q1は射影変換によって原点Oに近づいた平面P上の点Q1´に座標変換され,原点Oから見て平面Pよりも近い粒度解析対象E上の点Q2は射影変換によって原点Oから遠い平面P上の点Q2´に座標変換され,平面P上の最小深度点Mの座標はそのまま維持される。
【0029】
図1(D)及び図2(B)は,画像変換手段23による射影変換後の各画素Q1´,Q2´,M等の三次元座標(x´,y´,z´)からなる平面P上の粒度解析画像Gc0の平面図及び断面図を示す。図2(B)から分かるように,カメラの中心点(原点)Oと粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lをz´軸とすると,粒度解析画像Gc0上の各画素のz´軸方向の深度Fは一定となる。すなわち,射影変換後の粒度解析画像Gc0の各画素とカメラとの距離F及び向きが一定となるので,図6に示す定置されたデジタルカメラ60の画像Gの場合と同様に,例えばコンピュータ20aの粒度解析手段25において,粒度解析画像Gc0に写り込んだ撮影範囲の大きさ(x´y´平面(平面P)上の長さd´)とカメラ60の内部仕様(焦点距離f)とから画像Gc0に写り込んだ各粒状材Sの粒径d(=d´×F/f)を求めることができ,地盤材料Eの粒度を解析し,必要に応じて地盤材料Eの粒径加積曲線を作成することが可能となる。
【0030】
図1に示す深度センサ付きカメラ10は比較的広い画角θを有しており,その画角θで撮影された深度付き画像G0の全体を粒度解析画像Gc0に射影変換することにより,比較的広い範囲の地盤材料Eの粒度を解析することが可能である。ただし,深度センサ付きカメラ10の距離センサ14(図4参照)は計測距離(計測深度)に限界があり,計測距離が大きくなると照射点群の相互間隔が大きくなって解像度が相対的に低下しうるため,計測距離の精度(距離精度)が低下しうる。地盤材料Eの粒度を高い精度で解析するためには,深度付き画像G0のうち精度の低い部分を取り除いたうえで粒度解析画像Gc0に射影変換することが有効である。
【0031】
図1の実施例では,コンピュータ20aの画像抽出手段22によって深度付き画像G0から精度(深度の精度)が確保できる範囲G1の画素のみを抽出し(図1(B)参照),その抽出した深度付き画像G1を画像変換手段23に入力して粒度解析画像Gc1に射影変換することができる(図1(D)参照)。例えば,深度付き画像G0のうちz方向の深度が比較的小さい最小深度点Mの周囲の画素のみを抽出して抽出画像G1とする。次いで画像変換手段23において,抽出画像G1の各画素をカメラ10の中心点Oと画像G1に写り込んだ粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lに垂直な平面P上に射影変換して粒度解析画像Gc1を作成する。そして粒度解析手段25において粒度解析画像Gc1から写り込んだ各粒状材Sの粒径dを計測することにより,地盤材料Eの粒度を高い精度で解析することができる。
【0032】
また,図2を参照して説明した画像変換手段23による射影変換は基本的には平面領域を平面領域に座標変換するものであり,粒度解析対象Eを平坦な領域とみなして深度付き画像G0を粒度解析画像Gc0に変換する。粒度解析対象Eに存在する深度変化(凹凸)は,画像変換手段23によって精確に変換されず,粒度解析画像Gc0の各画素の三次元座標に誤差を生じる原因となりうる。このため,コンピュータ20aの画像抽出手段22によって深度付き画像G0から深度変化(凹凸変化)の大きな部分を取り除いたうえで粒度解析画像Gc0に射影変換することが有効である。
【0033】
例えば図1のコンピュータ20aの画像抽出手段22において,深度付き画像G0のうちz方向の深度が急激に変化する部分を取り除き,最小深度点Mの周りの凹凸変化の小さい範囲G1の画素のみを抽出し(図1(B)参照),その抽出した深度付き画像G1を画像変換手段23に入力する。最小深度点Mの周りに凹凸変化の小さい領域がない場合は,画像G0中の最も凹凸変化が小さい適当な大きさの範囲を抽出画像G1としてもよい。次いで画像変換手段23において,抽出画像G1のうちz方向の深度が最も小さい画素の三次元座標から画像G1に写り込んだ粒度解析対象E上の最小深度点Mの三次元座標を検出し,画像G1の各画素をカメラ10の中心点Oと粒度解析対象E上の最小深度点Mとを結ぶ直線Lに垂直な平面P上に射影変換して粒度解析画像Gc1を作成する。次いで粒度解析手段25において粒度解析画像Gc1から写り込んだ各粒状材Sの粒径dを計測することにより,地盤材料Eの粒度を高い精度で解析することができる。
【0034】
図1(D)に示す射影変換後の粒度解析画像Gc0(又は抽出画像Gc1)は,図6に示す定置されたデジタルカメラ60の画像Gの場合と同様に,地盤材料Eの粒度解析に利用することができる。具体的には,コンピュータ20aの粒度解析手段25において粒度解析画像Gc0から写り込んだ地盤材料E中の各粒状材Sの輪郭を抽出し,その輪郭から各粒状材Sの粒径dを計測し,例えば粒径dのヒストグラムを作成することにより地盤材料Eの粒度分布を求めることができる。また,必要に応じて粒径毎の加積通過率Pを直接的に又は間接的に求め,地盤材料Eの粒径加積曲線を作成することもできる。
【0035】
本発明によれば,粒度解析対象Eの近傍にスケール等を設置する必要がなく,深度センサ付きカメラ10で撮影した粒度解析対象Eの画像G0であれば粒度の解析が可能であり,図5及び図6を参照して上述した従来の粒度解析方法に比して画像の撮影に要する手間を格段に省くことができる。
【0036】
また,深度センサ付きカメラ10は定置する必要がなく,粒度解析対象Eの上方又は近傍を移動する作業機械やドローン等の移動体1a,1bに取り付けて粒度解析対象Eの画像G0を撮影することができるので,粒度解析対象Eの発生現場等において粒度をリアルタイムで解析することが可能となる。
【0037】
更に,スマートフォン等の携帯端末を深度センサ付きカメラ10とすることができ,携帯端末で撮影した画像Gをネットワーク30に接続されたクラウドサーバ20b(図3参照)等に転送しておけば,クラウドサーバ20bにおいて粒度解析画像Gc0に変換して粒度解析対象Eの粒度を解析することができる。従って,現場では携帯端末により粒度解析対象Eの画像G0を撮影するだけで作業が完結するので,粒度解析作業の格段の簡単化・迅速化を図ることができる。
【0038】
こうして本発明の目的である「スケールが配置されておらずカメラが定置されていない場合でも粒度解析画像を取得することができる方法及びシステム」を提供することができる。
【0039】
なお,図1の実施例では粒度解析対象を地盤材料Eとしているが,例えば岩盤切羽の発破掘削時に生じる発破ズリ(岩盤砕屑物)等を粒度解析対象とする場合にも本発明を適用することができる。具体的には,スマートフォン等の携帯端末を深度センサ付きカメラ10とし,岩盤切羽の発破直後に携帯端末によって発破ズリの堆積物の深度付き画像G0を撮影してクラウドサーバ20b等に転送し,クラウドサーバ20bにおいて粒度解析画像Gc0に変換して発破ズリの粒度を解析する。切羽における作業を画像G0の撮影だけに限定できるので,作業員の安全にも寄与できる。
【実施例0040】
図3は,地山等の地盤材料Eの掘削現場に適用した本発明の画像取得システムの他の実施例を示す。図3の実施例では,掘削現場を走行移動するバックホウ等の移動体1a又は掘削現場上方を飛行するドローン等の移動体1bにそれぞれ深度センサ付きカメラ10と送信装置18とを搭載し,各移動体1a,1b上の深度センサ付きカメラ10で撮影した深度付き画像G0を送信装置18によりネットワーク30経由でクラウドサーバ20bに転送する。
【0041】
図示例のクラウドサーバ20bは,ネットワーク30と接続するための通信装置28を有すると共に,内部プログラムとして,ネットワーク30経由で転送された深度付き画像G0を入力する入力手段21と,深度付き画像G0を粒度解析画像Gc0に変換する画像変換手段23と,変換後の粒度解析画像Gc0から地盤材料Eの粒度を求める粒度解析手段25と,求めた地盤材料Eの粒度を出力する出力手段24とを有している。クラウドサーバ20bには,必要に応じて出力手段24から出力された地盤材料Eの粒度を掘削現場毎に整理して記憶する外部記憶装置(図示せず)等を接続することができる。
【0042】
必要に応じて,クラウドサーバ20bに深度付き画像G0から適当な範囲G1を抽出する画像抽出手段22を設けることができる。画像抽出手段22によって深度付き画像G0から精度が確保できる範囲G1,或いは凹凸変化が小さい範囲G1のみを抽出して画像変換手段23に入力し,その抽出画像G1から画像変換手段23により粒度解析画像Gc1を作成することにより,粒度解析手段25において粒度解析画像Gc1から解析する地盤材料Eの粒度の精度を,粒度解析画像Gc0から解析した場合に比して高めることができる。
【0043】
図3の実施例では,掘削現場の各移動体1a,1b上の深度センサ付きカメラ10で撮影した深度付き画像G0を断続的(例えば定期的)に又は連続的な動画としてクラウドサーバ20bに転送する。好ましくは,各移動体1a,1bにGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)を搭載し,各移動体1a,1bで撮影した深度付き画像G0を,各移動体1a,1bの位置情報と共にクラウドサーバ20bに転送する。クラウドサーバ20bは,転送された深度付き画像G0を画像変換手段23により粒度解析画像Gc0に変換したうえで,粒度解析手段25に入力して地盤材料Eの粒度を解析し,その解析結果を各移動体1a,1bの位置情報と共に外部記憶装置にデータベースとして累積記憶することができる。累積記憶された地盤材料Eの粒度の解析結果は,例えばネットワーク30に接続されたコンピュータ20cから要求して適宜に読み出すことができる。
【0044】
或いは図3の実施例において,掘削現場の各移動体1a,1bから断続的に又は連続的な動画として転送される深度付き画像G0を,クラウドサーバ20bにおいて解析する前に,各移動体1a,1bの位置情報と共にクラウドサーバ20bの外部記憶装置にデータベースとして累積記憶しておくこともできる。この場合は,ネットワーク30に接続されたコンピュータ20cの要求に基づいて累積記憶された深度付き画像G0を適宜に読み出し,クラウドサーバ20bの画像変換手段23により粒度解析画像Gc0に変換したうえで,粒度解析手段25に入力して地盤材料Eの粒度を解析し,その解析結果を各移動体1a,1bの位置情報と共にネットワーク30経由でクラウドサーバ20bからコンピュータ20cに応答することができる。
【0045】
また,ネットワーク30に接続されたコンピュータ20cに上述した入力手段21,画像抽出手段22,画像変換手段23,粒度解析手段25,及び出力手段24を設け,そのコンピュータ20cの要求に基づいてクラウドサーバ20bに累積記憶された深度付き画像G0を適宜にコンピュータ20cに転送し,コンピュータ20cにおいて画像変換手段23により粒度解析画像Gc0に変換したうえで,粒度解析手段25に入力して地盤材料Eの粒度を解析することも可能である。
【0046】
図3の実施例にように,現場では粒度解析対象Eの深度付き画像G0の撮影のみを行い,クラウドサーバ20b又はネットワーク30に接続されたコンピュータ20cにおいて粒度解析対象Eの粒度を解析するシステムとすることにより,様々な現場において粒度解析対象Eの画像G0を撮影するだけで粒度を簡単に解析することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1a…移動体(作業車両) 1b…移動体(ドローン)
10…深度センサ付きカメラ 12…デジタルカメラ
14…深度センサ(距離センサ) 16…付加装置
18…通信装置 19…アンテナ
20…コンピュータ 21…入力手段
22…画像抽出手段 23…画像変換手段
24…出力手段 25…粒度解析手段(粒径加積曲線作成手段)
28…通信装置 30…ネットワーク(インターネット)
40…デジタルカメラ 42…照明(ランプ)
44…支持装置 44a…昇降支持軸
46…スケール付き外枠材
50…振動ベルトコンベア 51…第1支持体
52…振動装置 53…キャリアローラ
54…第2支持体 55…キャリアローラ
56…駆動プーリ(ドライブプーリ) 57…ローラ
58…環状ベルト 59…駆動装置
60…デジタルカメラ 61…撮影暗室
G0…深度付き画像 G1…抽出(深度付き)画像
Gc0…変換後の深度付き画像 Gc1…変換後の抽出(深度付き)画像
E…粒度解析対象(地盤材料) S…粒状材
O…カメラ中心点(レンズ中心) M…粒度解析対象上の最小深度点
L…カメラ中心点Oと最小深度点Mとを結ぶ直線
P…直線Lに垂直な最小深度点Mが含まれる平面
F…カメラと搬送面との距離(間隔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6