(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099168
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20240718BHJP
H01T 21/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/20 E
H01T21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002903
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】阪野 智一
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 真由
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA04
5G059CC02
5G059DD01
5G059DD04
5G059DD11
(57)【要約】
【課題】チップの耐消耗性と接合の耐久性とを向上できるスパークプラグを提供する。
【解決手段】スパークプラグは、第1の成分を最も多く含む母材と、チップと、チップと母材とに接し第1の成分と第2の成分とを含有する溶融部と、を含む。溶融部における第1の成分の含有率Xの、母材における第1の成分の含有率Yに対する割合X/Yは0.93未満であり、放電面に垂直な断面において、チップの側面と溶融部の表面とが交わる第1の交点から放電面を含む第1の直線に下した第1の垂線から、溶融部の表面から遠のく方向へ0.03mm離れた第1の直線上の点を通る第1の直線に垂直な第2の直線と、チップと溶融部との界面と、が交わる第2の交点と点との間の距離をC(mm)とし、第2の交点を通る放電面に平行な直線に第1の交点から下ろした第2の垂線の長さをB(mm)としたときにB/C≧0.4である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の成分を最も多く含む母材と、
前記第1の成分と種類が異なる第2の成分を最も多く含むチップと、
前記チップと前記母材とに接し前記第1の成分と前記第2の成分とを含有する溶融部と、を含み、
前記チップは、放電面と、前記溶融部の表面が交わる面であって前記放電面につながる側面と、を含む第1電極と、
前記第1電極と間隔をあけて設けられた第2電極と、を備えるスパークプラグであって、
前記溶融部における前記第1の成分の含有率Xの、前記母材における前記第1の成分の含有率Yに対する割合X/Yは0.93未満であり、
前記放電面に垂直な断面において、
前記チップの前記側面と前記溶融部の前記表面とが交わる第1の交点から前記放電面を含む第1の直線に下した第1の垂線から、前記溶融部の前記表面から遠のく方向へ0.03mm離れた前記第1の直線上の点を通る前記第1の直線に垂直な第2の直線と、前記チップと前記溶融部との界面と、が交わる第2の交点と前記点との間の距離をC(mm)とし、
前記第2の交点を通る前記放電面に平行な直線に前記第1の交点から下ろした第2の垂線の長さをB(mm)としたときに、B/C≧0.4であるスパークプラグ。
【請求項2】
前記割合X/Yは0.69以下である請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記第1の垂線の長さAは0mmより大きく0.2mm未満である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記第1の垂線の長さAは0mmより大きく0.12mm未満である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項5】
前記第1の垂線の長さをAとすると、A/C<0.53である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項6】
前記第1の垂線の長さをAとすると、A/B<0.89である請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項7】
前記第1の成分はNiである請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項8】
前記第2の成分はIrである請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は母材にチップが接合されたスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融部を介して母材の表面にチップが接合されたスパークプラグに関する先行技術は、例えば特許文献1に開示されている。先行技術は、母材の表面に対するチップと溶融部との界面の角度の設定により接合の耐久性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術は接合の耐久性に加え、チップの耐消耗性に改善の余地がある。
【0005】
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、チップの耐消耗性と接合の耐久性とを向上できるスパークプラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の第1の態様は、第1の成分を最も多く含む母材と、第1の成分と種類が異なる第2の成分を最も多く含むチップと、チップと母材とに接し第1の成分と第2の成分とを含有する溶融部と、を含み、チップは、放電面と、溶融部の表面が交わる面であって放電面につながる側面と、を含む第1電極と、第1電極と間隔をあけて設けられた第2電極と、を備えるスパークプラグであって、溶融部における第1の成分の含有率Xの、母材における第1の成分の含有率Yに対する割合X/Yは0.93未満であり、放電面に垂直な断面において、チップの側面と溶融部の表面とが交わる第1の交点から放電面を含む第1の直線に下した第1の垂線から、溶融部の表面から遠のく方向へ0.03mm離れた第1の直線上の点を通る第1の直線に垂直な第2の直線と、チップと溶融部との界面と、が交わる第2の交点と点との間の距離をC(mm)とし、第2の交点を通る放電面に平行な直線に第1の交点から下ろした第2の垂線の長さをB(mm)としたときにB/C≧0.4である。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、割合X/Yは0.69以下である。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、第1の垂線の長さAは0mmより大きく0.2mm未満である。
【0009】
第4の態様は、第1又は第2の態様において、第1の垂線の長さAは0mmより大きく0.12mm未満である。
【0010】
第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、第1の垂線の長さをAとすると、A/C<0.53である。
【0011】
第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、第1の垂線の長さをAとすると、A/B<0.89である。
【0012】
第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、第1の成分はNiである。
【0013】
第8の態様は、第1から第7の態様のいずれかにおいて、第2の成分はIrである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チップと溶融部との界面上の第2の交点とチップの放電面との間の距離Cに対し、チップの側面と溶融部の表面とが交わる第1の交点から第2の交点を通る放電面に平行な直線に下した第2の垂線の長さBは0.4倍以上である。チップのうち溶融部に囲まれる部分の長さが確保されるので、チップの耐消耗性を向上できる。さらに溶融部における母材の主成分である第1の成分の含有率Xの、母材における第1の成分の含有率Yに対する割合X/Yは0.93未満だから、チップと溶融部との界面の熱応力を低減できる。界面に生じるクラックの発生を低減できるので、接合の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施の形態におけるスパークプラグの片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は一実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。
図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(
図2においても同じ)。
図1に示すようにスパークプラグ10は、火花放電を起こす第1電極と第2電極とを備えている。本実施形態では中心電極13を第1電極、接地電極31を第2電極とする。
【0017】
絶縁体11は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミック製の略円筒状の部材である。絶縁体11は軸線Oに沿って軸孔12が設けられている。
【0018】
中心電極13は、絶縁体11の軸孔12の中に配置された棒状の部材である。中心電極13は、銅を主成分とする芯材が有底円筒状の母材14に覆われている。芯材を省略することは可能である。母材14は第1の成分を最も多く含む化学組成を有する。第1の成分はNi,Co,Feが例示される。本実施形態では第1の成分はNiであるがこれに限られるものではない。母材14に占める第1の成分の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に70質量%以上が好適である。
【0019】
図2は中心電極13の後端側の図示を省略した、中心電極13の先端付近の断面図である。母材14の先端には、溶融部15を介してチップ16が接続されている。溶融部15は、チップ16の底面が母材14に接したものにレーザビームを当てるレーザ溶接によって作られる。溶融部15は母材14とチップ16とが溶けてなる。溶融部15は、チップ16と溶融部15との界面17と、母材14と溶融部15との界面18と、母材14とチップ16とをつなぐ溶融部15の表面19と、を含む。
【0020】
チップ16は絶縁体11の先端から先端側に突出している。チップ16は、第1の成分と種類が異なる第2の成分を最も多く含む化学組成を有する。第2の成分はPt,Rh,Ir,Ru等の貴金属のうちの1種が例示される。本実施形態では第2の成分はIrであるがこれに限られるものではない。チップ16に占める第2の成分の割合は50質量%以上が好ましい。
【0021】
溶融部15における、第1の成分の含有率(質量%)の、母材14における第1の成分の含有率(質量%)に対する割合X/Yは、母材14に占める第1の成分の割合、及び、溶融部15に溶け込んだ母材14の割合の影響を受ける。レーザ溶接のときのレーザビームを当てる位置や角度、ビーム強度の設定等により、溶融部15に溶け込む母材14の割合を設定できる。
【0022】
割合X/Yは0.93未満であり、より好ましくは割合X/Yは0.69以下である。第1の成分を含む溶融部15の線膨張係数と第2の成分を含むチップ16の線膨張係数との差を小さくして、チップ16と溶融部15との界面17の熱応力を低減するためである。溶融部15に占める第1の成分の割合は20質量%以上が好ましい。溶融部15に溶け込む母材14の量を確保して、母材14と溶融部15との間の界面18の機械的強度を確保するためである。
【0023】
チップ16は、放電面20と、放電面20につながる側面21と、を含む。本実施形態では放電面20は、放電面20の重心22を中心とする円形である。重心22は、放電面20を平面図形としたときの、周知の手段で算出される幾何中心である。チップ16の側面21は、軸線方向の全長に亘って直径が一定の円筒面である。チップ16の放電面20は接地電極31(
図1参照)に対向している。
【0024】
溶融部15に占める第1の成分の割合(質量%)は、試料に電子線を当てるエネルギー分散型X線分光器を搭載した走査電子顕微鏡(SEM-EDS)による分析で求められる。溶融部15の成分を検知するために試料に電子線を当てる位置は、重心22を通る放電面20に垂直な直線23が界面17,18によって切り取られた線分(交点24,25を両端とする線分)の中点26である。
【0025】
母材14に含まれる第1の成分の割合(質量%)もSEM-EDSにより求められる。母材14の成分を検知するために試料に電子線を当てる位置は、交点25と中点26との間の距離の分だけ交点25から離れた母材14の中の直線23上の点である。
【0026】
図1に戻って説明する。中心電極13は、軸孔12の中で端子金具27と電気的に接続されている。端子金具27は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具27は、先端側が軸孔12に挿入された状態で、絶縁体11の後端側で固定されている。
【0027】
絶縁体11の外周に主体金具28が固定されている。主体金具28は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具28は、径方向の外側へ鍔状に張り出す座部29と、座部29よりも先端側の外周面に設けられたねじ部30と、を備えている。主体金具28は、エンジン(シリンダヘッド)のねじ穴(図示せず)にねじ部30を締結して固定される。主体金具28の先端部に接地電極31が接続されている。
【0028】
接地電極31は、導電性を有する金属材料によって形成された棒状の部材である。接地電極31は、主体金具28に端部が接合された棒状の母材32と、溶融部を介して母材32に接続されたチップ33と、を備えている。母材32はNiを50質量%以上含む化学組成を有する。チップ33はPt,Rh,Ir,Ru等の貴金属のうちの1種または2種以上を50質量%以上含む化学組成を有する。
【0029】
図2は、チップ16の放電面20の重心22を通る中心電極13の断面図であって放電面20に垂直な断面図である。
図2を参照して母材14とチップ16との接合について説明する。チップ16の側面21と溶融部15の表面19とが交わる第1の交点34から放電面20を含む第1の直線35に下した第1の垂線36の長さをA(mm)とする。
【0030】
図2に示すようにチップ16の側面21と溶融部15の表面19とが交わる第1の交点34は断面図に2つ現出するので、第1の交点34から第1の直線35に下した第1の垂線36も2つ存在する。2つの垂線36のうち短い方の第1の垂線36の長さを長さAとする。長さAは0mmを含まない。長さAが0mmを含むとすると、電界強度が強く放電が生じ易い放電面20の角が溶融部15に覆われてしまう場合が存在することになり、溶融部15のうち放電面20の角の付近が火花消耗し易くなるからである。
【0031】
第1の直線35上の点37は、第1の交点34を含む溶融部15の表面19から遠のく方向へ第1の垂線36から0.03mm離れた点である。第1の直線35に垂直な点37を通る第2の直線38と、チップ16と溶融部15との界面17と、が交わる第2の交点39と点37との間の距離をC(mm)とする。距離Cは、第1の直線35と界面17とによって第2の直線38が切りとられた線分の長さである。第2の直線38は第1の垂線36と平行である。
【0032】
第1の垂線36と第2の直線38との間の距離を0.03mmとするのは、溶融部15の界面17のうちチップ16の側面21が溶けてできた部分とチップ16の底面が溶けてできた部分とがつながる部分は、一般に丸みを帯びるからである。第1の垂線36と第2の直線38との間の距離を0.03mmとすることで、界面17の丸みの曲率の変動による距離Cの変動を低減し、界面17のうち主にチップ16の底面が溶けてできた部分と放電面20との間の距離Cの測定精度を高めることができる。
【0033】
直線40は、第2の交点39を通る直線であって放電面20に平行な直線である。スパークプラグ10は、第1の交点34から直線40に下ろした第2の垂線41の長さをB(mm)とすると、B/C≧0.4を満たす。換言すればチップ16の放電面20と界面17との間の距離Cに対し、チップ16のうち溶融部15に周囲を囲まれる部分の長さBが0.4倍以上である。
【0034】
中心電極13は、B/C≧0.4を満たし、さらに割合X/Y<0.93であると、チップ16と溶融部15との界面17の熱応力を低減できる。界面17の端(第1の交点34)から界面17に沿って進展するクラックを低減できるので、チップ16の接合の耐久性を向上できる。
【0035】
またB/C≧0.4を満たすと、火花放電によってチップ16の長さAの部分が消耗したり、チップ16の長さBの部分を囲む溶融部15が消耗したりしても、長さBの部分によってチップ16と接地電極31との間の放電が起こる。よってチップ16の耐火花消耗性を確保できる。さらにチップ16の長さBの部分が溶融部15に囲まれると、雰囲気に曝されるチップ16の長さAの部分の表面積が小さくなるので、高温下におけるチップ16の耐酸化消耗性を向上できる。従ってチップ16の耐消耗性を向上できる。
【0036】
特にIr合金からなるチップ16の主成分であるIrは融点が高いが、高温環境下では揮発性の酸化物を生じて消耗し易いという性質がある。溶融部15によってチップ16の長さBの部分を囲み、雰囲気に曝されるチップ16の長さAの部分の表面積を小さくすることでIrの酸化揮発を低減できるので、チップ16の耐酸化消耗性を向上できる。
【0037】
チップ16の耐消耗性を向上できるので、チップ16が尽きるまでの時間の確保のためにチップ16の体積を大きくしなくても済むようにできる。従って貴金属を含むチップ16の使用量を低減できる。
【0038】
長さAは0.2mm未満であると好ましく、0.12mm未満であるとより好ましい。火花放電によってチップ16の長さAの部分が消耗したり、チップ16の長さBの部分を囲む溶融部15が消耗したりしても、長さBの部分が大きく残存するので、チップ16の耐消耗性をさらに向上できるからである。
【0039】
A/Bは1.39未満であると好ましく、0.89未満であるとより好ましい。A/Bが1.39未満であると、界面17を進展するクラックをさらに低減できるからである。A/Bが0.89未満であると、チップ16の長さAの部分が消耗したりチップ16の長さBの部分を囲む溶融部15が消耗したりしても、長さBの部分が大きく残存するので、チップ16の耐消耗性をさらに向上できるからである。
【0040】
A/Cは0.58未満であると好ましく、0.53未満であるとより好ましい。A/Cが0.58未満であると、界面17を進展するクラックをさらに低減できるからである。A/Cが0.53未満であると、チップ16の長さAの部分が消耗したりチップ16の長さBの部分を囲む溶融部15が消耗したりしても、長さBの部分が大きく残存するので、チップ16の耐消耗性をさらに向上できるからである。
【実施例0041】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0042】
円柱形の母材の端面にチップの底面が接するように母材の上に円柱形のチップを置き、これにレーザビームを照射して溶融部を形成した。このようにして溶融部を介して母材にチップを結合したNo.1-23のサンプルを作製した。母材の端面の直径は0.9mmであり、チップの底面の直径は0.55mmであり、チップの高さは0.36mmであった(いずれも溶融前の寸法)。母材の材料はNCF600であり、母材の主な化学組成はNi>72質量%、Cr:14-17質量%、Fe:6-10質量%であった。チップの材料はIr合金(Ir-5Pt-0.9Rh-1Ni)であった。
【0043】
各サンプルのチップの温度が900℃になるようにチップをバーナーで2分間加熱した後、空気中で1分間放置して冷却する過程を1サイクルとして、1000サイクルの加熱冷却を繰り返す冷熱試験を行った。冷熱試験を始める前に、チップの近くに熱電対を埋め込んだサンプルをバーナーで加熱して温度を測定し、冷熱試験においてチップの温度が900℃に到達するようにバーナーの燃焼条件を設定した。
【0044】
冷熱試験後、各サンプルのチップの中心軸を含む切断面(
図2参照)を顕微鏡で観察して、長さA、長さB、距離C、チップと溶融部との界面の長さ(界面の全長)D、チップと溶融部との界面の端から界面に沿って進展したクラックの長さEを測定した。クラックは酸化していたので、接合されている界面と界面が破壊したクラックとを判別できた。溶融部におけるNi(第1の成分)の含有率X(質量%)の、母材におけるNiの含有率Y(質量%)に対する割合X/Yは、SEM-EDSによる分析によって求めた。B/C、A/B、A/C、X/Y、E/Dを算出し、界面の全長に占めるクラックの割合(E/D)が40%以下のサンプルをG(良い)と判定し、クラックの割合が40%を超えたサンプルをP(劣る)と判定した。結果は表1に記した。
【0045】
【表1】
表1に示すようにNo.1-12,21-23のサンプルはB/C≧0.4であり、No.13-20のサンプルはB/C<0.4であった。No.1-12,21-23のうち、B/C≧0.4かつX/Y<0.93のNo.1-12は、クラックの割合が40%以下であり判定はGであった。B/C≧0.4かつX/Y=0.93のNo.21-23は、クラックの割合が100%であり判定はPであった。この結果から、B/C≧0.4かつX/Y<0.93であると、溶融部の界面の端から界面に沿って進展するクラックを低減できることが明らかになった。従ってチップの接合の耐久性を向上できるものと推定する。
【0046】
また、No.1-13のサンプルはX/Y≦0.69であるが、No.1-13のうちB/C≧0.4のNo.1-12は、クラックの割合が40%以下であり判定はGであった。一方、B/C<0.4のNo.13は、クラックの割合が60%であり判定はPであった。この結果から、B/C≧0.4かつX/Y≦0.69であると、溶融部の界面の端から界面に沿って進展するクラックをさらに低減できることが明らかになった。
【0047】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0048】
実施形態では、中心電極13を第1電極とし、接地電極31を第2電極とする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これと反対に、接地電極31を第1電極とし、中心電極13を第2電極とすることは当然可能である。
【0049】
実施形態では、チップ16が円柱の形状をなす場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。チップ16の形状は、円錐台、四角柱、四角柱以外の多角柱など適宜設定できる。チップ16の形状が円錐台のときは、チップ16の中心軸を含む断面図において、チップ16の側面21は垂線36と第1の交点34を共有するが、交点34以外の部分は重ならない。
【0050】
接地電極31を第1電極とする場合も、チップ33の形状は円柱、四角柱、四角柱以外の多角柱など適宜設定できる。チップ16,33の形状の変更に伴い、チップの放電面の形状も円形、四角形以外の多角形など適宜設定できる。主体金具28に接合された接地電極31の母材32とチップ33との間に中間材(母材)を介在したり、中心電極13の母材14とチップ16との間に中間材(母材)を介在したりすることは当然可能である。中間材が介在する場合には、溶融部はチップと中間材とが溶けてなる。