(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099170
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】カバー取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240718BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B60R13/02 A
F16B5/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002906
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 由佳
(72)【発明者】
【氏名】上角 好孝
【テーマコード(参考)】
3D023
3J001
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BA09
3D023BB02
3D023BC02
3D023BD01
3D023BE03
3D023BE36
3D023BE38
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA04
3J001HA07
3J001HA10
3J001JD12
3J001JD15
3J001KA19
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】寸法精度の低い開口を有する乗物用内装材に対してもカバーを確実に取り付けることが可能なカバー取付構造を提供する。
【解決手段】カバー40は、カバー本体部50と掛止部56Lとカバー側面ファスナ66とを備え、掛止部56Lが開口30の挿入許容部32から挿入された後、第1方向(車両前方)に移動させられることによって、掛止面部58が乗物用内装材24の裏面に接する状態で掛止部56Lが開口30の縁部70に掛かり止まり、かつ、カバー側面ファスナ66が内装材側面ファスナ68に接合して、乗物用内装材24に対して固定される構成とする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用内装材に形成された開口を覆うカバーを前記乗物用内装材に取り付けるためのカバー取付構造であって、
前記カバーは、
前記乗物用内装材とともに乗物室の意匠面を形成する板状のカバー本体部と、
前記カバー本体部の裏面における一端部から立設する立設部と、前記立設部から前記カバー本体部の外縁に向かって延び出して前記カバー本体部の裏面に対向する掛止面部と、を有する掛止部と、
前記カバー本体部の裏面における他端部に貼着されたカバー側面ファスナと、を備え、
前記開口に形成された挿入許容部から前記掛止部が乗物室内側から挿入され、前記乗物用内装材に沿って第1方向に移動させられることで前記乗物用内装材に取り付けられる構成とされ、
前記乗物用内装材には、前記開口の縁部における前記第1方向とは反対側の乗物室内側面に、内装材側面ファスナが貼着されており、
前記カバーは、前記掛止部が前記挿入許容部から挿入された後、前記第1方向に移動させられることによって、前記掛止面部が前記乗物用内装材の裏面に接する状態で前記掛止部が前記開口の縁部に掛かり止まり、かつ、前記カバー側面ファスナが前記内装材側面ファスナに接合して、前記乗物用内装材に対して固定されるカバー取付構造。
【請求項2】
前記カバーは、前記掛止部を一対備え、
一対の前記掛止部は、それぞれの前記立設部が、前記第1方向に直交する方向である第2方向に離間して並んで設けられるとともに、一対の前記掛止部の各々の前記掛止面部が前記第2方向において互いに反対向きに延び出した形状とされ、
前記開口は、
一対の前記掛止部の各々の前記掛止面部の先端同士の間隔より大きな幅とされた大幅部と、
前記大幅部の前記第1方向側に形成され、一対の前記掛止部の各々の前記掛止面部の先端同士の間隔より小さく、かつ、前記立設部同士の間隔より大きな幅とされた小幅部と、
を有する形状とされ、
前記大幅部が、前記挿入許容部として機能し、
一対の前記掛止部は、前記小幅部の前記第2方向における両端に掛かり止まる構造とされた請求項1に記載のカバー取付構造。
【請求項3】
前記カバーは、乗物室に向かって延び出す棒状のポール部材を挿通させる挿通孔を有し、前記ポール部材の周囲を覆うためのものである請求項1または請求項2に記載のカバー取付構造。
【請求項4】
前記乗物用内装材は、乗物室の天井をなす天井材であり、
前記ポール部材は、前記天井から下方に延び出した手摺である請求項3に記載のカバー取付構造。
【請求項5】
前記カバーは、
前記開口を覆う主体となる部材であり、前記ポール部材の外径より僅かに大きな幅で前記一端部側に向かって延びる切欠を有する第1カバー部材と、
前記第1カバー部材に対して取り付け可能とされ、前記切欠における前記ポール部材の前記一端部側の部分を塞ぐ第2カバー部材と、
を含んで構成され、それら前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とによって、前記挿通孔が形成される請求項3に記載のカバー取付構造。
【請求項6】
前記第1カバー部材は、前記切欠における前記一端部側を向く内面に、前記一端部に向かって突出する凸部を有し、前記凸部が前記ポール部材に当接した状態で前記乗物用内装材に固定される請求項5に記載のカバー取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーを乗物用内装材に取り付けるためのカバー取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用内装材に設けられた開口を塞ぐように、カバーが取り付けられる場合がある。そのカバーを乗物用内装材に取り付けるためのカバー取付構造には、例えば、下記特許文献1に記載されているような構造が用いられる場合がある。下記特許文献1に記載の部品取り付け装置(カバーに相当)は、背面側に部品を保持した状態で、被着体(乗物用内装材に相当)に設けられた貫通孔(開口に相当)に取り付けられる。その部品取り付け装置は、板状本体と、この板状本体から突出する少なくとも一対の弾性体からなる脚部と、この脚部に設けられて当該装置の外方側へ突出する第1爪と、を備えており、板状本体が被着体に対して傾けられた状態で、一対以上の脚部のうちの一方の脚部が貫通孔に挿入され、その脚部を支点にして板状本体が回転移動されることにより、他方の脚部を内側に弾性変形させながら第1爪を貫通孔に挿入して、被着体へ嵌合させる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているように、乗物用内装材である天井材への開口の形成には、例えばウォータージェットが用いられる場合がある。そのような場合、形成される開口の寸法は、それほど精度が高いものではない。その開口に対して、上記特許文献1に記載されているようなカバー取付構造を採用すると、一対の脚部に対して、開口の寸法が大きい場合には、カバーが乗物用内装材から外れてしまう虞がある。一方、一対の脚部に対して、開口の寸法が小さい場合には、その開口を覆うカバーの乗物用内装材に対する取り付けが困難となる。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、寸法精度の低い開口を有する乗物用内装材に対してもカバーを確実に取り付けることが可能なカバー取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願に開示されるカバー取付構造は、
乗物用内装材に形成された開口を覆うカバーを前記乗物用内装材に取り付けるためのカバー取付構造であって、
前記カバーは、
前記乗物用内装材とともに乗物室の意匠面を形成する板状のカバー本体部と、
前記カバー本体部の裏面における一端部から立設する立設部と、前記立設部から前記カバー本体部の外縁に向かって延び出して前記カバー本体部の裏面に対向する掛止面部と、を有する掛止部と、
前記カバー本体部の裏面における他端部に貼着されたカバー側面ファスナと、を備え、
前記開口に形成された挿入許容部から前記掛止部が乗物室内側から挿入され、前記乗物用内装材に沿って第1方向に移動させられることで前記乗物用内装材に取り付けられる構成とされ、
前記乗物用内装材には、前記開口の縁部における前記第1方向とは反対側の乗物室内側面に、内装材側面ファスナが貼着されており、
前記カバーは、前記掛止部が前記挿入許容部から挿入された後、前記第1方向に移動させられることによって、前記掛止面部が前記乗物用内装材の裏面に接する状態で前記掛止部が前記開口の縁部に掛かり止まり、かつ、前記カバー側面ファスナが前記内装材側面ファスナに接合して、前記乗物用内装材に対して固定されることを特徴とする。
【0007】
本願に開示のカバー取付構造は、カバーが、乗物用内装材に対して、一端部において掛かり止まるとともに、他端部の面ファスナによって接合する構造となっている。本願に開示のカバー取付構造は、開口の大きさに比較的大きな誤差が生じている場合であっても、掛止部の掛止面部において乗物用内装材の裏面に接することにより、カバーの一端部において十分な接触面積を確保しつつ、他端部の面ファスナによって開口の大きさの誤差を吸収することができる。つまり、本願に開示のカバー取付構造によれば、カバーを乗物用内装材に対して容易にかつ確実に取り付けることが可能となる。
【0008】
上記構成において、前記カバーは、前記掛止部を一対備え、
一対の前記掛止部は、それぞれの前記立設部が、前記第1方向に直交する方向である第2方向に離間して並んで設けられるとともに、一対の前記掛止部の各々の前記掛止面部が前記第2方向において互いに反対向きに延び出した形状とされ、
前記開口は、
一対の前記掛止部の各々の前記掛止面部の先端同士の間隔より大きな幅とされた大幅部と、
前記大幅部の前記第1方向側に形成され、一対の前記掛止部の各々の前記掛止面部の先端同士の間隔より小さく、かつ、前記立設部同士の間隔より大きな幅とされた小幅部と、
を有する形状とされ、
前記大幅部が、前記挿入許容部として機能し、
一対の前記掛止部は、前記小幅部の前記第2方向における両端に掛かり止まる構造とすることができる。
【0009】
この構成のカバー取付構造は、一対の掛止部の立設部が小幅部を形成する部分の口縁に当接して、カバーの乗物用内装材に対する第2方向における変位を規制することができるため、カバーの乗物用内装材に対する第2方向における位置を定めることができる。
【0010】
上記構成において、前記カバーは、乗物室に向かって延び出す棒状のポール部材を挿通させる挿通孔を有し、前記ポール部材の周囲を覆うためのものである構成とすることができる。
【0011】
上記構成においては、面ファスナが剥がれたとしても、カバーは傾斜した状態で挿通孔の内面がポール部材に当接して引っ掛かることになり、カバーが完全に脱落してしまうような事態を回避することができる。なお、カバーとポール部材との隙間を小さくするほど、面ファスナが剥がれた場合のカバーの回転量を抑えることができる。つまり、本願に開示のカバー取付構造は、ポール部材の周囲を覆うカバーの取付構造に好適である。
【0012】
上記構成において、前記乗物用内装材は、乗物室の天井をなす天井材であり、前記ポール部材は、前記天井から下方に延び出した手摺である構成とすることができる。
【0013】
例えば、公共の交通に用いられるバスや鉄道車両のような車両には、天井から下方に延び出した手摺が設けられる場合が多い。この構成のカバー取付構造は、この手摺をポール部材として、本願に開示のカバー取付構造が採用されている。
【0014】
上記構成において、前記カバーは、前記開口を覆う主体となる部材であり、前記ポール部材の外径より僅かに大きな幅で前記一端部側に向かって延びる切欠を有する第1カバー部材と、前記第1カバー部材に対して取り付け可能とされ、前記切欠における前記ポール部材の前記一端部側の部分を塞ぐ第2カバー部材と、を含んで構成され、それら前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とによって、前記挿通孔が形成される構成とすることができる。
【0015】
この構成のカバー取付構造は、ポール部材の一端を内装材で覆っているボデーに対して固定した後であっても、カバーを取り付けることが可能とされており、製造作業の効率化を図ることができる。なお、この構成のカバー取付構造において、第2カバー部材の第1カバー部材に対する取り付け構造は、特に限定されず、種々の構造を採用可能である。
【0016】
上記構成において、前記第1カバー部材は、前記切欠における前記一端部側を向く内面に、前記一端部に向かって突出する凸部を有し、前記凸部が前記ポール部材に当接した状態で前記乗物用内装材に固定される構成とすることができる。
【0017】
カバーは、面ファスナが外れると、掛止部(一端側の部分)を基点として他端部が回転し易い構成となっている。しかしながら、この構成のカバー取付構造によれば、そのカバー(第1カバー部材)における挿通孔の他端側の部分が当接した状態となっているため、カバーの掛止部を基点とする他端部の回転は禁止される。つまり、この構成のカバー取付構造は、カバーが乗物用内装材から外れてしまうような事態を確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、寸法精度の低い開口を有する乗物用内装材に対してもカバーを確実に取り付けることが可能なカバー取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態のカバー取付構造が採用された車両の車室内を側方からの視点において示す概略図
【
図2】カバー取付構造が採用された箇所を拡大して示す側面図
【
図3】カバー取付構造が採用された箇所の分解斜視図
【
図4】カバー取付構造が採用された箇所の分解平面図(下方からの視点において示す図)
【
図5】カバー取付構造が採用された箇所を車室内からの視点において示す斜視図
【
図6】カバー取付構造が採用された箇所の平面図(上方からの視点において示す図)
【
図7】カバーを構成する主体となる第1カバー部材の斜視図
【
図8】第1カバー部材の取り付け方法を説明するための平面図図(上方からの視点において示す図)
【
図9】第1カバー部材の取り付け方法を説明するための側面断面図
【
図10】第1カバー部材をルーフトリムに取り付けた状態を示す側面断面図(
図6におけるA-A断面)
【
図11】カバーを取り付けた状態を示す正面断面図(
図6におけるB-B断面)
【
図12】第2カバー部材の第1カバー部材への取付構造を示す正面断面図(
図6におけるC-C断面)
【
図13】カバーを取り付けた状態を示す側面断面図(
図6におけるD-D断面)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のカバー取付構造が採用された車両10について、
図1から
図13を参照しつつ説明する。車両10は、
図1に示すように、前後方向および上下方向に比較的大きな寸法の箱型のボデー12を有し、そのボデー12の内部空間である車室(乗物室)内に、複数の人を乗せて輸送可能なバス型の車両である。なお、図面の一部には、符号Fr,Rr,L,R,U,Dを用いて方向を示しており、それぞれ、車両10の前方側,後方側,車幅方向における左側,右側,上側,下側を表している。
【0021】
車両10の車室内には複数のシート14が設けられており、その一部のシート14aは、前後方向に延在する車両10の側壁部16の内側に沿って進行方向横向きに配されている。そして、それら側壁部16に配されたシート14aの前(車幅方向左側)には、複数の人が起立した状態で乗車することが可能なスペースが設けられている。本車両10は、起立した状態の乗員の安全性を考慮して、
図1および
図2に示すように、車室の天井18に、起立する乗員が把持することが可能な手摺20が設けられている。
【0022】
天井18は、ボデー12を構成するルーフパネル22と、そのルーフパネル22の少なくとも車両前後方向中央部を車室内側(下方側)から覆うルーフトリム(天井材、乗物用内装材)24と、を備える。手摺20は、棒状のポール部材であって、上方に開口する概してコの字形状に形成されている。詳しく言えば、手摺20は、車両前後方向に延びて乗員が把持する主体となる把持部26と、その把持部26の両端から上方に向かって延び出した一対の上方延設部27と、からなる。そして、一対の上方延設部27の各々の先端には、取付ブラケット28が固定されており、それら一対の取付ブラケット28においてルーフパネル22に固定されている。
【0023】
上記の手摺20は、ルーフトリム24でルーフパネル22を覆った後に取り付けられる。具体的には、ルーフトリム24には、
図3および
図4に示すように、手摺20の取付ブラケット28を挿通させることが可能な形状の一対の開口30が形成されており、一対の上方延設部27の先端を、その開口30から挿し込んで、ルーフパネル22に図示を省略するボルトによって締結することが可能とされている。なお、
図3および
図4は、車両前方側に位置するものを図示しており、車両後方側のものは、車両前方側のものを、前後方向について対称的な構造となっている。したがって、以下の説明においては、車両前方側のものを代表して説明することとする。
【0024】
取付ブラケット28は、平面視で概して菱形形状のものとされており、開口30は、その取付ブラケット28の外径より大きな形状のものとされている。具体的には、開口30は、車両前後方向における中央から前方側の部分が、段付き形状とされており、車両前後方向における中央が、車幅方向の寸法が大きな大幅部32とされ、その大幅部32より前方が、大幅部32より車幅方向の寸法が小さな小幅部34とされている。また、開口30の大幅部32より後方側の部分である後方部36は、取付ブラケット28の車両後方側部分の形状に沿った形状に形成されている。
【0025】
そして、開口30を塞ぐべく、
図5に示すように、開口30の手摺20の周囲を覆うカバー40が設けられている。このカバー40のルーフトリム24への取付構造に、本発明のカバー取付構造が採用されている。以下に、カバー40のルーフトリム24への取付構造である本実施形態のカバー取付構造について、詳しく説明する。
【0026】
カバー40は、大きく分けて、2つの部材である第1カバー部材42および第2カバー部材44からなる。第1カバー部材42が、開口30の大部分を覆う主体となる部材であり、第2カバー部材44が、第1カバー部材42によって覆えない部分を、補助的に覆う部材となっている。つまり、手摺20が取り付けられた後、第1カバー部材42がルーフトリム24に対して取り付けられ、その後に、第2カバー部材44が第1カバー部材42に対して取り付けられることで、開口30はカバー40によって塞がれるようになっている。
【0027】
第1カバー部材42は、
図7に示すように、概して矩形板状の部材であり、車室の意匠面を形成する板状のカバー本体部50を主体として構成される。そのカバー本体部50には、中央近傍から車両前方に向かって延びて前方側に開口する形状の切欠52が形成されている。その切欠52は、中央近傍が、換言すれば、車両後端側が、手摺20の外径より僅かに大きな内径の半円形状の半円部53とされ、その半円部53から車両前方側に向かって、その半円部53の内径より大きな幅寸法のスリット部54が形成された形状とされている。
【0028】
また、第1カバー部材42は、カバー本体部50の前端側で車幅方向における両端側の部分の各々に、ルーフトリム24に対して取り付けるための一対の掛止部56L,56Rを備えている。一対の掛止部56L,56Rの各々は、それぞれ、カバー本体部50の裏面から上方に向かって延び出した立設部57と、その立設部57からカバー本体部50の車幅方向における外縁に向かって延び出した延設部58と、を有する。詳しく言えば、一対の掛止部56L,56Rの立設部57が、車幅方向に離間して並んで設けられるとともに、一対の掛止部56L,56Rの延設部58が、車幅方向において互いに反対向きに延び出した形状とされている。
【0029】
また、これら一対の掛止部56L,56Rの各々には、その上面に、車幅方向に延びるリブ60L,60Rが形成されている。各リブ60L,60Rは、切欠52の縁部まで延びている。詳しく言えば、切欠52には、その内縁に沿って、裏面側に立ち上がる立壁部62が設けられており、各リブ60L,60Rは、その立壁部62まで延びて立壁部に連結されている。
【0030】
また、第1カバー部材42は、カバー本体部50の裏面における車両後方側の端部に、車幅方向に間隔をおいて貼着された一対のカバー側面ファスナ66を備えている。一方、ルーフトリム24には、開口30の車両後方側の縁部に、車幅方向に間隔をおいて一対のトリム側面ファスナ68が貼着されている。なお、カバー側面ファスナ66は、両面テープのみによって貼着されているのに対して、ルーフトリム24は、TPO(熱可塑性オレフィン)製の表皮材に覆われているため、トリム側面ファスナ68は、ルーフトリム24の表面にブチルテープと両面テープとを重ねて貼着されている。ちなみに、これら一対のカバー側面ファスナ66および一対のトリム側面ファスナ68は、例えば、一方がループ状の起毛とされ、他方がフック状の起毛とされ、両者を重ね合わせてループとフックとを係合させることで、両者が接合する構成のものに限定されず、両者に区別のない同じ形状の起毛を接合させる構成のものであってもよい。後者として、例えば、マッシュルーム状の起毛のものは、接合力が比較的強いものとなり、本実施形態のカバー取付構造に好適である。
【0031】
次に、上述した第1カバー部材42のルーフトリム24への取付方法について説明する。カバー40の一対の掛止部56L,56Rは、
図8に示すように、延設部58の先端同士の間隔L1が、開口30の大幅部32の間隔L2より小さくされるとともに、開口30の小幅部34の間隔L3より大きくされている。また、一対の掛止部56L,56Rは、立設部57の車幅方向外側面同士の間隔L4が、開口30の小幅部34の間隔L3より僅かに小さくされている。その構造を利用して、作業者は、
図9に示すように、カバー本体部50がルーフトリム24の意匠面に対して傾斜する状態、詳しく言えば、カバー本体部50の後端ほど意匠面から離間するように傾斜した状態で保持し、リブ60L,60Rおよび一対の掛止部56L,56Rを、開口30の大幅部32から挿し込む。また、この状態においては、手摺20の上方延設部27が、第1カバー部材42の切欠52の内側に入り込んだ状態となっている。そして、一対の掛止部56L,56Rの延設部58を小幅部34より上方に位置させる。つまり、開口30の大幅部32は、掛止部56L,56Rの車室内側からの挿入を許容する挿入許容部として機能する部分となっている。
【0032】
次いで、作業者は、第1カバー部材42を車両前方(「第1方向」に相当)に向かって移動させると、
図9および
図10に示すように、小幅部32を形成している開口30の外縁部である小幅部外縁部70を、カバー本体部50と延設部58との間に侵入させることになる。なお、延設部58は、前端側の下面にテーパー部58aを有するため、小幅部外縁部70を侵入させ易くなっている。
【0033】
さらに、第1カバー部材42を車両前方に向かって移動させると、延設部58の下面が小幅部外縁部70の上面に当接するとともに、カバー本体部50の前端がルーフトリム24の下面に沿って下方に移動させられる。それにより、第1カバー部材42は、カバー本体部50の前端を基点とし、後端側が上方に向かって回転させられることになる。そして、立設部57の前端が開口30の前方側の外縁に当接するまで第1カバー部材42を移動させると、第1カバー部材42は、前端側が、延設部58の下面とカバー本体部50の上面との間でルーフトリム24を挟み込むとともに、カバー側面ファスナ66がトリム側面ファスナ68に接合することとなる。つまり、延設部58は、掛止面部として機能する構造となっている。
【0034】
ルーフトリム24は、プレス成形によって外形形状が成形された後に、ウォータージェットによって開口30が形成される。したがって、開口30は、その内寸に比較的大きな誤差(±2mm程度)が生じる可能性がある。本実施形態のカバー取付構造は、後端側が面ファスナ66,68による接合を用いているため、車両前後方向における開口30の大きさの誤差を吸収でき、第1カバー部材42をルーフトリム24に対して容易にかつ確実に取り付けることが可能となっている。また、本実施形態のカバー取付構造は、一対の掛止部56L,56Rが、小幅部34の車幅方向(第1方向に直交する方向である「第2方向」に相当する)における両端に掛かり止まる構造とされている。そのような構造により、一対の掛止部56L,56Rの立設部57が開口30の前方側の口縁に当接して、第1カバー部材42のルーフトリム24に対する車幅方向における変位を規制することができるため、第1カバー部材42のルーフトリム24に対する車幅方向における位置、ひいては、カバー40の車幅方向における位置を定めることができる。
【0035】
第1カバー部材42の取り付けが完了すると、第2カバー部材44が第1カバー部材に対して取り付けられる。第2カバー部材44は、
図3および
図4に示すように、切欠52における手摺20より車両前方側の部分(スリット部54)を塞ぐ形状となっている。つまり、第2カバー部材44は、平面視で概して矩形状の部材であり、後端に半円形の切欠44aを有するものとなっている。また、第2カバー部材44は、
図6および
図11に示すように、裏面(上面)にカバー本体部74から上方に突出形成される複数のツメ部76(本実施形態においては4つ)を有している。
図12に示すように、それら複数のツメ部76が、前述した第1カバー部材42の立壁部62に対して掛かり止まることで、第2カバー部材44は第1カバー部材42に対して固定されるようになっている。
【0036】
第1カバー部材42と第2カバー部材44との取り付けが完了すると、
図5に示したように、カバー40のルーフトリム24への取り付けが完了する。カバー40の取り付けが完了すると、
図5,
図11~
図13に示すように、第1カバー部材42における切欠52の半円部53と第2カバー部材44における切欠44aとによって、カバー40の板面に直交する方向に貫通する円形状の貫通孔、つまり、手摺20の上方延設部27を挿通させる挿通孔が形成される。なお、第1カバー部材42には、
図7に示すように、半円部53の内面における中央に、車両前方側に向かって突出する凸部80が形成されている。
【0037】
この凸部80は、カバー40のルーフトリム24への取り付けが完了した状態において、
図13に示すように、手摺20の上方延出部27に当接した状態となっている。したがって、本実施形態のカバー取付構造は、面ファスナ66,68が剥がれて接合が解除されると、カバー40の前端(一端)側、つまり、掛止部56L,56Rを基点として、後端(他端)側が下方に向かって回転する(下降する)ような構成である。しかしながら、面ファスナ66,68が剥がれたとしても、カバー40が手摺20の上方延設部27に対して傾斜した状態で、第1カバー部材42の半円部53(挿通孔の後端)と第2カバー部材44の切欠44a(挿通孔の前端)とが当接して上方延設部27に引っ掛かることになり、カバー40が完全に脱落してしまうような事態を回避することができる。なお、第1カバー部材42の凸部80が手摺20の上方延設部27にほぼ当接した状態とすれば、カバー40の後端側が下降するような回転をほぼ禁止することができる。つまり、本実施形態のカバー取付構造は、他端側の接合に面ファスナ66,68を用いた構造であっても、カバー40がルーフトリム24からは容易に外れない構造となっているのである。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態のカバー取付構造は、カバー40が一対の掛止部56L,56Rを有して、各係止部の掛止面部である延設部58がカバー40の取付方向である第1方向(車両前方方向)に直交する方向において互いに反対側に延び出す構成とされていたが、それに限定されない。例えば、カバーが単一の掛止部を有するものとされて、その掛止部の掛止面部が第1方向に向かって延び出した構成のものであってもよい。
【0040】
(2)上記実施形態のカバー取付構造は、カバー40が2つの部材42,44からなり、それら2つの部材42,44によってポール部材である手摺20を挿通させる挿通孔が形成された構成とされていたが、それに限定されない。例えば、カバーが挿通孔を有する単一の部材からなり、カバーを乗物用内装材に取り付けた後に、ポール部材をカバーの挿通孔に挿通させるような構造であってもよい。
【0041】
(3)上記実施形態のカバー取付構造は、カバー40がポール部材である手摺20を挿通させる構成のものとされていたが、それに限定されず、単に開口全体を覆うカバーに採用することもできる。
【0042】
(4)上記実施形態のカバー取付構造は、乗物用内装材として、車両の天井材であるルーフトリム24の開口30をカバー40で覆う箇所に採用されていたが、それに限定されず、車両用の内装材へのカバーの取付構造に広く採用することが可能である。例えば、車体の側壁部から延び出す手摺が存在する場合には、その手摺の周囲を覆うカバーの取付構造に採用したり、側壁部に形成された単なる開口を覆うカバーの取付構造に採用したりすることができる。
【0043】
(5)上記実施形態において、本発明のカバー取付構造は、車両(自動車)に提供されるものとされていたが、それに限定されず、本発明のカバー取付構造は、種々の乗物において提供されるものに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…車両〔乗物〕、20…手摺〔ポール部材〕、24…ルーフトリム〔天井材,乗物用内装材〕、30…開口、32…大幅部〔挿入許容部〕、34…小幅部、40…カバー、42…第1カバー部材、44…第2カバー部材、44a…切欠〔挿通孔〕、50…カバー本体部、52…切欠、53…半円部〔挿通孔〕、56L,56R…一対の掛止部、57…立設部、58…延設部〔掛止面部〕、66…カバー側面ファスナ、68…トリム側面ファスナ〔内装材側面ファスナ〕、80…凸部