(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099174
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240718BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20240718BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20240718BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240718BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C9/18 K
B60C9/22 C
B60C11/03 Z
B60C15/06 B
B60C11/00 Z
B60C11/03 B
B60C11/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002911
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康治
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC01
3D131BC05
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC33
3D131BC44
3D131CB06
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA54
3D131EA08U
3D131EA08X
3D131EA09V
3D131EA09X
3D131EB05U
3D131EB07U
3D131EB08V
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3D131EB47V
3D131EB82V
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3D131EB87V
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3D131EB90V
3D131EB90X
3D131EB94V
3D131EC22U
3D131HA38
(57)【要約】
【課題】操縦安定性、ノイズ性能、および耐摩耗性に優れた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の一例である空気入りタイヤ1は、正規リムに装着して正規内圧となる空気を充填した状態において、トレッド10の表面に沿ったプロファイル面αの赤道位置の高さと、接地端位置の高さとの差が、11.5mm以上14.5mm以下であり、プロファイル面αは、接地端位置から赤道位置に向かって、第1の曲率半径を有する第1の領域、第2の曲率半径を有する第2の領域、および第3の曲率半径を有する第3の領域を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、
タイヤ周方向に延びた主溝と、
前記主溝により区画されたブロックと、
を有し、
前記ブロックには、ショルダーサイプが形成されたショルダーブロックが含まれ、
タイヤを正規リムに装着して正規内圧となる空気を充填した状態において、
前記トレッドの表面に沿ったプロファイル面の赤道位置と、前記ショルダーサイプのタイヤ軸方向外側の端に対応する位置との高さの差が、11.5mm以上14.5mm以下であり、
前記プロファイル面は、接地端位置から前記赤道位置に向かって、第1の曲率半径を有する第1の領域、第2の曲率半径を有する第2の領域、および第3の曲率半径を有する第3の領域を含む、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1の曲率半径が100mm以上120mm未満、前記第2の曲率半径が120mm以上180mm以下、前記第3の曲率半径が450mm以上750mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
カーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置された第1ベルトと、前記第1ベルトのタイヤ径方向外側に配置された第2ベルトと、前記第1および前記第2ベルトを覆って前記第2ベルトのタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライとをさらに備え、
前記第1ベルトの端は、前記赤道位置からタイヤ軸方向に沿った長さが62mm以上66mm以下である範囲に位置し、
前記第2ベルトの端は、前記赤道位置からタイヤ軸方向に沿った長さが56mm以上60mm以下である範囲に位置し、
前記キャッププライの端は、前記赤道位置からタイヤ軸方向に沿った長さが65mm以上69mm以下である範囲に位置する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1および前記第2ベルトを構成するコードのタイヤ周方向に対する角度が22°以上26°以下である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ブロックには、メディエイトブロックと、ショルダーブロックとが含まれ、
前記メディエイトブロックの接地面の幅と、前記ショルダーブロックの接地面の幅との比は、43:57~47:53である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドの接地範囲における溝面積比率は、26%以上28%以下であり、
前記メディエイトブロックと前記ショルダーブロックにおける溝面積比率は、40:60~44:56である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
ビードフィラーをさらに備え、
前記ビードフィラーの高さは、26mm以上34mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドの接地面の矩形率が0.80~0.83である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッド表面に沿ったプロファイル面の形状は、操縦安定性、耐摩耗性、ノイズ性能などのタイヤ性能に大きく影響することが知られている。例えば、特許文献1には、プロファイル面が複数の異なる曲率半径の円弧で形成され、かつ当該各円弧の曲率半径の関係、およびトレッド中央部の円弧の曲率半径とトレッド幅との関係等が特定の条件を満たす空気入りタイヤが開示されている。また、特許文献2には、トレッド中央部のプロファイル面がタイヤ径方向外側に凸となるように湾曲する円弧状であり、かつ所定の内圧においてプロファイル面の曲率半径が特定の条件を満たす空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-126103号公報
【特許文献2】特開2013-173395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示されるように、タイヤのプロファイル面の形状は、良好な操縦安定性を確保しつつ、タイヤから発生するノイズを低減し、耐摩耗性を向上させる上で重要な要素である。一方、特許文献1,2のタイヤを含む従来のタイヤは、操縦安定性、ノイズ性能、および耐摩耗性のバランスについて未だ改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドを備えた空気入りタイヤであって、前記トレッドは、タイヤ周方向に延びた主溝と、前記主溝により区画されたブロックとを有し、タイヤを正規リムに装着して正規内圧となる空気を充填した状態において、前記トレッドの表面に沿ったプロファイル面の赤道位置の高さと、接地端位置の高さとの差が、11.5mm以上14.5mm以下であり、前記プロファイル面は、前記接地端位置から前記赤道位置に向かって、第1の曲率半径を有する第1の領域、第2の曲率半径を有する第2の領域、および第3の曲率半径を有する第3の領域を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、良好な操縦安定性を確保しつつ、タイヤから発生するノイズを低減し、耐摩耗性を向上させることができる。本発明に係る空気入りタイヤは、操縦安定性、ノイズ性能、および耐摩耗性のバランスが良く、高い走行性能が求められる高機能タイヤに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの斜視図である。
【
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤの平面図であって、トレッドの一部を拡大して示す図である。
【
図3】第1メディエイトブロックおよびその近傍の平面図である。
【
図4】第1メディエイトブロックおよびその近傍の斜視図である。
【
図5】実施形態の一例である空気入りタイヤのプロファイル形状を示す図である。
【
図6】実施形態の一例である空気入りタイヤの軸方向断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0009】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の斜視図であって、併せてタイヤの内部構造を示す。空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10を備える。トレッド10は、タイヤ周方向に延びる主溝と、主溝により区画されたブロックとを有する。本実施形態では、タイヤ周方向に延びる主溝として、3本の主溝20,21,22が形成されている。また、ブロックとして、第1のメディエイトブロック30、第2のメディエイトブロック40、第1のショルダーブロック50、および第2のショルダーブロック60が形成されている。
【0010】
空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、車両の右側と左側とで車両に装着する向きが反対になる。トレッド10は、タイヤ赤道CLの左右で異なったトレッドパターンを有する。赤道CLとは、トレッド10のタイヤ軸方向中央を通るタイヤ周方向に沿った仮想線である。本明細書では、説明の便宜上「左右」の用語を使用するが、この左右とは、空気入りタイヤ1が車両に装着された状態で車両の進行方向に向かって左右を意味する。
【0011】
トレッド10は、第1の主溝20と、タイヤが車両に装着された状態において赤道CLよりも車両外側に配置される第2の主溝21と、主溝20,21により区画されたメディエイトブロック30とを有する。言い換えると、空気入りタイヤ1は、メディエイトブロック30が車両外側に位置するように車両に装着される。主溝20は、赤道CL上に形成され、赤道CLに沿ってタイヤ周方向に延びている。トレッド10は、赤道CL上に配置されるブロックを有していてもよいが、本実施形態では、センター領域の排水性の観点から、赤道CL上にはブロックは存在せず、主溝20が形成されている。
【0012】
空気入りタイヤ1は、凍結および積雪のない路面で使用されるサマータイヤであって、操縦安定性、ノイズ性能、および耐摩耗性のバランスが良く、例えば、走行性能が高い車両のタイヤに好適である。詳しくは後述するが、トレッド10のプロファイル形状のラウンド化により、タイヤから発生するノイズが効果的に抑制される。一方で、プロファイル形状のラウンド化により、特にトレッドのセンター領域が摩耗しやすくなる、操縦安定性が低下するといった不具合が発生し得るが、本実施形態のトレッドパターンによれば、良好な耐摩耗性と操縦安定性を確保できる。
【0013】
空気入りタイヤ1は、タイヤ軸方向外側に膨らんだ一対のサイドウォール11と、一対のビード12とを備える。サイドウォール11は、トレッド10の左右両端からタイヤ径方向内側に延び、空気入りタイヤ1の側面を形成している。本実施形態では、タイヤ側面の上部に、外側に向かって小さく突出したサイドリブ2がタイヤ周方向に沿って環状に形成され、このサイドリブ2がトレッド10とサイドウォール11の境界位置となる。
【0014】
ビード12は、ホイールのリムに固定される部分であって、ビードコア13と、ビードフィラー14とを有する。ビードコア13は、束ねられた鋼線(ビードワイヤー)をゴムで被覆したリング状の部材である。ビードフィラー14は、トレッドゴムおよびサイドウォールゴムよりも硬質のゴムで構成され、ビード12の剛性を高める機能を有する。ビードフィラー14は、左右のビードコア13のタイヤ径方向外側にそれぞれ隣接配置される。詳しくは後述するが、ビードフィラー14の高さは、操縦安定性等を考慮して、例えば、26mm以上34mm以下に設定される。
【0015】
空気入りタイヤ1の接地端E1,E2、又はその近傍から左右のサイドリブ2までの部分は、ショルダー又はバットレス領域とも呼ばれる。接地端E1は車両外側の接地端、接地端E2は車両内側の接地端であり、それぞれショルダーブロック50,60に位置する。本明細書において、接地端E1,E2は、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で所定の荷重を加えたときに、平坦な路面に接地する領域(接地面)のタイヤ軸方向両端と定義される。乗用車用タイヤの場合、所定の荷重は正規荷重の88%に相当する荷重である。
【0016】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAおよびETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。正規内圧は、乗用車用タイヤの場合は通常180kPaであるが、Extra Load、又はReinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0017】
空気入りタイヤ1は、カーカス15、ベルト16,17、およびキャッププライ18を備える。カーカス15は、ゴムで被覆されたコード層であって、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤの骨格となる。カーカス15は、例えば、2枚のカーカスプライにより構成され、タイヤ周方向に対して直交する方向にカーカスコードが配置されたラジアル構造を有する。また、カーカス15の内側には、空気圧を保持するためのゴム層であるインナーライナー19が設けられている。
【0018】
ベルト16,17は、トレッド10を構成するゴムとカーカス15との間に配置される補強帯であって、カーカス15を強く締め付けて空気入りタイヤ1の剛性を高める。ベルト16,17は、例えば、金属製のコードをゴムで被覆して構成される。ベルト16,17は、カーカス15を締め付けるようにタイヤ周方向にコードを巻き付けて形成されるが、ベルトコードはタイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列していることが好ましい。タイヤ周方向に対するベルトコードの角度は、例えば、22°以上26°以下である。
【0019】
キャッププライ18は、ベルトを補強する部材であって、2枚のベルト16,17の全体を覆うように配置される。キャッププライ18は、例えば、ポリアミド繊維等の有機繊維のコードをゴムで被覆して構成される。詳しくは後述するが、タイヤの径方向内側から順に、第1のベルト16、第2のベルト17、およびキャッププライ18が配置され、ベルト16の端はベルト17の端よりもタイヤ軸方向外側に位置している。また、キャッププライ18の端は、ベルト17の端よりもタイヤ軸方向外側に位置している。
【0020】
空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定されたタイヤとして使用されるため、車両に対する装着方向を示すための表示を有することが好ましい。装着方向を示す表示は、車両内側又は外側を示す文字、記号、イラスト等であってもよく、その構成は特に限定されない。一般的に、空気入りタイヤ1の側面にはセリアルと呼ばれる記号が設けられているが、装着方向を示す表示としてセリアルを用いてもよい。
【0021】
セリアルには、例えば、サイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれる。車両の外側を向く空気入りタイヤ1の側面(サイドウォール11)のみにセリアルを設ける、或いは車両の外側を向く側面と内側を向く側面とで異なるセリアルを設けることで、車両に対する空気入りタイヤ1の装着方向を特定してもよい。具体例としては、空気入りタイヤ1の両側面に製造工場コードおよびサイズコードを設け、車両の外側を向く側面のみに製造年週を設けることが挙げられる。
【0022】
以下、
図2を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。
【0023】
図2は、空気入りタイヤ1の平面図であって、トレッド10の一部を拡大して示す。トレッド10は、赤道CL上に形成された主溝20を有し、赤道CLに対して左右非対称のトレッドパターンを有する。以下では、赤道CLよりも接地端E1側の領域を第1領域とし、赤道CLより接地端E2側の領域を第2領域とする。空気入りタイヤ1のトレッドパターンは、第1領域が車両外側に、第2領域が車両内側に位置するように車両に対してタイヤが装着された場合に、良好な操縦安定性を確保しつつ、タイヤから発生するノイズを効果的に低減し、耐摩耗性を向上させる。
【0024】
トレッド10の第1領域には、赤道CL側から順に、第1の主溝20、第1のメディエイトブロック30、第2の主溝21、および第1のショルダーブロック50が形成されている。主溝21は、主溝20と平行に形成され、メディエイトブロック30とショルダーブロック50を分断する。トレッド10の第2領域には、赤道CL側から順に、第1の主溝20、第2のメディエイトブロック40、第3の主溝22、および第2のショルダーブロック60が形成されている。主溝22は、主溝20と平行に形成され、メディエイトブロック40とショルダーブロック60を分断する。また、2つのメディエイトブロック30,40は、主溝20により分断されている。
【0025】
主溝20,21,22は、タイヤ周方向に真っ直ぐに延び、それぞれ全長にわたって一定の幅で形成されている。主溝20,21,22は、互いに同じ幅を有していてもよいが、本実施形態では主溝20の幅が最も大きくなっている。主溝21,22については、実質的に同じ幅で形成されている。この場合、トレッド10のセンター領域において良好な排水性が確保される。また、トレッド10の全体でもバランスの良い排水性が確保され、良好なウェット性能が得られる。
【0026】
なお、本明細書において、溝の幅とは、トレッド10のプロファイル面α(後述の
図5参照)に沿った溝幅、言い換えると、溝の開口部における溝幅を意味する。また、サイプとは、幅が狭い細溝であって、溝幅が1.0mm以下である溝を意味する。プロファイル面αは、トレッド10の表面に沿った面である。空気入りタイヤ1の接地幅(接地端E1,E2間のタイヤ軸方向に沿った長さ)は、特に限定されないが、一例としては110mm以上120mm以下、又は113mm以上117mm以下である。
【0027】
主溝20の幅の一例は8.5mm以上9.1mm以下であり、主溝21,22の幅の一例は7.1mm以上7.7mm以下である。主溝20の幅は、例えば、主溝21,22の幅の1.1倍以上1.3倍以下である。なお、各主溝の壁は、溝底に向かって次第に溝体積が小さくなるように傾斜している。主溝の壁はブロックの測壁を構成するため、言い換えると、ブロックは接地面から離れるほどブロック幅が広くなるように側壁が傾斜している。
【0028】
主溝20,21,22は、互いに異なる深さを有していてもよいが、本実施形態では実質的に同じ深さで形成されている。なお、本明細書において、主溝の深さとは、プロファイル面αから最深部の溝底までの長さを意味する。各主溝の深さは、例えば、5.7mm以上6.3mm以下である。一般的に、3本の主溝の少なくともいずれかには、摩耗インジケータ(図示せず)が設けられる。
【0029】
メディエイトブロック30,40は、タイヤ周方向に延びたリブ状のブロックであって、赤道CLから等距離の位置に形成されている。メディエイトブロック30は、タイヤ周方向に延びる副溝31と、第1のサイプ32と、第2のサイプ33とを有する。他方、メディエイトブロック40は、副溝31のようなタイヤ周方向に沿った溝を有さず、サイプ32,33より幅広の溝であるスリット41を有する。詳しくは後述するが、メディエイトブロック30,40の構成、特に車両外側に配置されるメディエイトブロック30のサイプ形状は、タイヤの操縦安定性、耐摩耗性、およびノイズ性能に大きく影響する。
【0030】
メディエイトブロック30は、タイヤ周方向に沿って主溝20の縁に形成された斜面34を有する。斜面34は、メディエイトブロック30の接地面から所定の角度で傾斜し、ブロックの角を面取りしたように形成されている。斜面34の傾斜角度は、例えば、プロファイル面αに対して30°以上60°以下である。斜面34は、メディエイトブロック30の接地圧を分散させ、操縦安定性を向上させる。斜面34の深さは、例えば、主溝20の深さの8%以上27%以下である。斜面34は、タイヤ周方向に沿って一定の深さと幅で形成される。
【0031】
メディエイトブロック30,40の幅は、互いに異なっていてもよいが、本実施形態では実質的に同じである。各ブロックの接地面の幅の比率は、例えば、0.95以上1.05以下である。メディエイトブロック30,40の接地面の幅は、例えば、トレッド10の接地幅の15%以上20%以下であり、一例としては17.7mm以上18.7mm以下である。この場合、良好な制動性能、操縦安定性等を実現することが容易になる。なお、メディエイトブロック30,40には、ブロックを横断する溝およびサイプが形成されていない。
【0032】
メディエイトブロック30の副溝31は、タイヤ周方向に沿って主溝20,21よりも浅く形成されている。また、第1のサイプ32は、主溝20と副溝31の間においてタイヤ周方向および軸方向に対して交差する方向に延び、主溝20に開口し、副溝31に開口していない。第2のサイプ33は、副溝31と主溝21の間においてタイヤ周方向および軸方向に対して交差する方向に延び、少なくとも主溝21に開口していない。サイプ32,33は、タイヤ周方向の同じ方向に凸となるように緩やかに湾曲している。
【0033】
詳しくは後述するが、サイプ32,33の一部同士がタイヤ軸方向に重なり、タイヤ軸方向に重なった当該2本のサイプの組が、各組の間に他のサイプを介することなくタイヤ周方向に間隔をあけて配置されている。即ち、複数のサイプ32は、他の溝やサイプを間に挟むことなく、タイヤ周方向に並んでいる。同様に、複数のサイプ33は、他の溝やサイプを間に挟むことなく、タイヤ周方向に並んでいる。
【0034】
メディエイトブロック40は、主溝22から延びて当該ブロック内で終端する複数のスリット41を有する。スリット41は、主溝22に開口した短い溝であって、主溝20には開口していない。なお、メディエイトブロック40には、スリット41以外の溝やサイプは形成されていない。複数のスリット41は、他の溝やサイプを間に挟むことなく、タイヤ周方向に並んでいる。スリット41は、例えば、メディエイトブロック30のサイプ32と実質的に同じ間隔で、サイプ32と同数形成される。スリット41は、タイヤ周方向に所定本数単位で僅かに間隔を変化させたバリアブルピッチで形成されていてもよい。
【0035】
スリット41は、先端から所定の長さ範囲において大きく縮幅している。スリット41の幅は、例えば、縮幅した先端部を除く他の部分において3.7mm以上4.7mm以下である。スリット41の深さは、最深部において、好ましくは主溝22の深さの57%以上85%以下であり、より好ましくは60%以上80%以下である。スリット41は、縮幅した先端部を除く他の部分において一定の深さで形成され、先端部は他の部分よりも浅く形成されていてもよい。
【0036】
スリット41は、主溝22からタイヤ周方向および軸方向に対して交差する方向に延び、メディエイトブロック40の幅方向中央に至らない長さで形成される。タイヤ軸方向に対するスリット41の傾斜角度は、サイプ32,33の傾斜角度と実質的に同じであってもよく、スリット41が延びる方向とサイプ32,33が延びる方向は互いに平行であってもよい。また、スリット41は、サイプ32とタイヤ軸方向に重なる位置に形成される。スリット41の先端からスリット41のタイヤ周方向に沿った長さの10%以上50%以下の範囲が、サイプ32とタイヤ軸方向に重なっていてもよい。
【0037】
ショルダーブロック50は、タイヤ周方向に交互に形成された横溝51およびショルダーサイプ52(以下、単に「サイプ52」とする)を有する。ショルダーブロック60についても同様に、タイヤ周方向に交互に形成された横溝61およびショルダーサイプ62(以下、単に「サイプ62」とする)を有する。トレッド10の平面視において、横溝51とサイプ52はタイヤ周方向の一方側に凸となるように緩やかに湾曲し、横溝61とサイプ62はタイヤ周方向の他方側、即ち横溝51とサイプ52が凸となる方向と反対の方向に凸となるように緩やかに湾曲している。
【0038】
ショルダーブロック50の横溝51は、主溝21につながっておらず、主溝21と分断されている。この場合、横溝51が主溝21につながる場合と比較して、ブロック剛性を高めることができ、コーナリングパワー特性(以下、「CP特性」とする)が向上する。横溝51は、主溝21と接地端E1の間の位置から、サイドリブ2にわたって形成されている。横溝51の幅は、例えば、3.7mm以上4.7mm以下であり、全長にわたって一定である。横溝51の幅はスリット41の幅と実質的に同じであってもよい。横溝51の深さは、例えば、最深部において主溝21の深さの60%以上80%以下である。
【0039】
ショルダーブロック60の横溝61は、サイプ63を介して主溝22につながっている。この場合、車両内側に配置されるトレッド10の第2領域R2で排水性が向上し、良好なウェット制動性能が得られる。横溝61は、主溝22と接地端E2の間の位置から、サイドリブ2にわたって形成されている。横溝61の幅および深さは、例えば、横溝51の幅および深さと実質的に同じである。サイプ63は、サイプ62と平行に延び、主溝22と横溝61を連通させる。サイプ63は、サイプ62よりも深く形成されている。
【0040】
複数の横溝51は、それぞれの間に1本のサイプ52を挟んでタイヤ周方向に所定間隔で配置される。横溝51とサイプ52は、互いに平行に並び、タイヤ周方向に所定本数単位で僅かに間隔を変化させたバリアブルピッチで形成されていてもよく、同じ間隔で形成されていてもよい。横溝61とサイプ62についても同様に、タイヤ周方向に所定本数単位で僅かに間隔を変化させたバリアブルピッチで形成されていてもよい。
【0041】
ショルダーブロック50のサイプ52は、主溝21から接地端E1を超える位置にわたって形成される。即ち、サイプ52は主溝21に開口している。サイプ52の深さは、例えば、横溝51よりも浅く、最深部において主溝21の深さの20%以上50%以下である。ショルダーブロック60のサイプ62についても同様に、主溝22から接地端E2を超える位置にわたって形成され、主溝22に開口している。サイプ62の深さは、例えば、サイプ52の深さと実質的に同じである。
【0042】
トレッド10の接地範囲(接地端E1から接地端E2までの範囲)における溝面積比率は、好ましくは25%以上30%以下であり、より好ましくは26%以上28%以下である。この場合、良好な排水性と操縦安定性を両立できる。ここで、ボイドとは路面に接地しない凹部を意味し、溝面積比率にカウントされる凹部は主溝20,21,22、ショルダーブロック50,60の横溝51,61、各ブロックのサイプ、およびメディエイトブロック30の斜面34,35である。溝面積比率は、接地範囲における当該凹部の開口面積をプロファイル面αの面積で除することにより求められる。
【0043】
トレッド10の第1領域に形成されるメディエイトブロック40とショルダーブロック50は、それらの相互作用によりCP特性等の操縦安定性を向上させる。メディエイトブロック40にはサイプ32,33が形成され、ショルダーブロック50にはサイプ52が形成されているが、タイヤ軸方向に並ぶ1本のサイプ32と1本のサイプ33とで構成される組は、サイプ52の2本につき1つの割合で形成されている。即ち、サイプ32,33の組の数は、サイプ52(横溝51)の本数の1/2である。この場合、パターンノイズの次数(タイヤ回転時の合致周期)を分散させることができ、ノイズ性能が向上する。
【0044】
サイプ32は、2本のサイプ52とタイヤ軸方向に重なるように形成されている。サイプ33は、サイプ32と比べて長さが短く、1本のサイプ52とタイヤ軸方向に重なって形成されている。サイプ52は、タイヤ周方向の一方側に凸となるように緩やかに湾曲し、サイプ32,33は、タイヤ周方向の他方側、即ちサイプ52が凸となる方向と反対の方向に凸となるように緩やかに湾曲している。また、サイプ32,33が延びる方向と、サイプ52が延びる方向とが垂直に近い角度となっている。
【0045】
サイプ32が延びる方向に沿った仮想線Xと、サイプ52が延びる方向に沿った仮想線Yとがなす角度は、例えば、90°±10°又は90°±5°であり、90°(仮想線XとYが直交)であってもよい。この場合、操縦安定性の改善効果がさらに向上する。なお、仮想線X,Yはサイプの長さ方向両端を結ぶ直線である。また、メディエイトブロック40のスリット41が延びる方向に沿った仮想線Z(スリット41の長さ方向両端を結ぶ直線)と、仮想線Xとがなす角度は、例えば、20°以下又は15°以下であり、0°(仮想線XとZが平行)であってもよい。なお、サイプ33が延びる方向に沿った仮想線(図示せず)と、仮想線Xとがなす角度は、例えば、15°以下又は10°以下であり、0°であってもよい。
【0046】
メディエイトブロック30の接地面の幅と、ショルダーブロック50の接地面の幅との比は、好ましくは41:59~49:51であり、より好ましくは43:57~47:53である。この場合、操縦安定性の改善効果がさらに向上する。各ブロックの接地面の幅の好適な一例は、メディエイトブロック30の接地面の幅:ショルダーブロック50の接地面の幅=45:55である。
【0047】
メディエイトブロック30とショルダーブロック50における溝面積比率は、好ましくは37:63~47:53であり、より好ましくは40:60~44:56である。この場合、操縦安定性の改善効果がさらに向上する。各ブロックの溝面積比率の好適な一例は、メディエイトブロック30のボイド面積:ショルダーブロック50のボイド面積=42:58である。
【0048】
以下、
図3および
図4を参照しながら、トレッドパターンを構成するメディエイトブロック30について、さらに詳説する。
【0049】
図3はメディエイトブロック30およびその近傍の平面図、
図4はメディエイトブロック30およびその近傍の斜視図である。メディエイトブロック30は、上記のように、主溝20,21により区画されたリブ状のブロックであって、副溝31と、第1のサイプ32と、第2のサイプ33とを有する。また、メディエイトブロック30は、タイヤ周方向に沿って主溝20の縁に形成された斜面34を有する。メディエイトブロック30の接地面の幅は、例えば、斜面34の幅の分、メディエイトブロック40の接地面の幅より小さくなっている。
【0050】
メディエイトブロック30は、さらに、サイプ32の縁の一部に形成された斜面35と、サイプ33の縁の一部に形成された斜面36とを有する。斜面35は、サイプ32に向かって次第に深くなり、サイプ32の縁においてブロックの一部を切り欠いたように形成されている。斜面36についても同様に、サイプ33に向かって次第に深くなり、サイプ33の縁においてブロックの一部を切り欠いたように形成されている。斜面35,36を形成することにより、サイプ32,33の縁に集中しやすい接地圧を分散でき、操縦安定性の改善効果が向上する。また、ブロックの接地圧の均一化により耐摩耗性とノイズ性能も向上する。
【0051】
副溝31は、主溝20,21と平行に延び、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。メディエイトブロック30の接地面は、副溝31により2つの領域に分断されている。副溝31は、メディエイトブロック30の幅方向中央よりも主溝21側に形成される。このため、主溝20と副溝31に挟まれた領域A1が、主溝21と副溝31に挟まれた領域A2よりも大きくなっている。領域A1の接地面の幅は、例えば、領域A2の接地面の幅の1.1倍以上1.3倍以下である。サイプ32,33は、各々の間に副溝31を挟んでタイヤ軸方向に少なくとも一部同士が対向するように配置される。
【0052】
副溝31の幅は、サイプ32,33の幅より大きく、サイプ32,33の幅の1.1倍以上2.5倍以下が好ましい。副溝31の幅の好適な一例は、0.5mm以上1.5mm以下であり、より好ましくは0.9mm以上1.1mm以下である。副溝31の深さは、サイプ32,33よりも浅く、主溝21の深さの5%以上30%以下が好ましく、8%以上27%以下がより好ましい。この場合、操縦安定性の改善効果がさらに向上する。副溝31は、例えば、全長にわたって一定の幅、深さで形成される。また、副溝31は、主溝20に沿って形成される斜面34と実質的に同じ深さで形成されていてもよい。
【0053】
サイプ32は、主溝20と副溝31に挟まれた領域A1に形成され、主溝20につながり、副溝31にはつながっていない。サイプ32の深さは、副溝31よりも深く、主溝20,21よりも浅い。サイプ32の深さは、副溝31の深さの130%以上160%以下が好ましく、136%以上148%以下がより好ましい。また、サイプ32の深さは、最深部において、好ましくは主溝22の深さの57%以上85%以下であり、より好ましくは60%以上80%以下である。サイプ32の幅の好適な一例は、0.3mm以上1.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上0.8mm以下である。サイプ32は、例えば、全長にわたって一定の幅、深さで形成される。
【0054】
サイプ32は、全長にわたって湾曲していてもよいが、本実施形態では、サイプ32のうち、領域A1の幅方向中央部に位置する部分が湾曲し、当該湾曲部から長さ方向両端までの部分はそれぞれ直線状に形成されている。サイプ32は、湾曲部32aと、主溝20から湾曲部32aまで直線状に形成された第1直線部32bと、湾曲部32aから副溝31の近くまで直線状に形成された第2直線部32cとを含む。
【0055】
サイプ32の第1直線部32bは、第2直線部32cよりも長く、かつタイヤ軸方向に対する傾斜角度が大きくなっている。第1直線部32bのタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、例えば、60°以上80°以下、又は65°以上75°以下である。第2直線部32cのタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、例えば、40°以上60°以下、又は45°以上55°以下である。この場合、サイプ32による除水効果が向上し、良好な排水性と操縦安定性を両立することが容易になる。
【0056】
斜面35は、サイプ32が凸となる側の縁であって、第1直線部32bの縁に形成されている。斜面35は、湾曲部32aの縁の一部にも形成されているが、第2直線部32cの縁には形成されていない。なお、サイプ32が凸となる側と反対側(凹となる側)の縁に斜面は形成されていない。斜面35は、湾曲部32aと、主溝20の縁の斜面34との間に形成され、第1直線部32bの主溝20との交点およびその近傍では、斜面34を横切って主溝20につながっている。また、斜面35は、湾曲部32a側から第1直線部32bの主溝20との交点に向かって次第に深くなっている。このような斜面35を形成することにより、路面の水を取り込むことができる凹部の体積が増加し、良好な排水性が得られる。
【0057】
サイプ33は、主溝21と副溝31に挟まれた領域A2に形成され、少なくとも主溝21にはつながっていない。サイプ33は、副溝31に開口していてもよいが、本実施形態では副溝31につながっていない。副溝31とサイプ33との最短距離は、主溝21とサイプ33との最短距離より短い。なお、複数のサイプ33の一部が副溝31につながり、他の一部が副溝31につながっていなくてもよい。サイプ33の深さは、副溝31よりも深く、主溝20,21よりも浅い。サイプ33は、例えば、サイプ32と実質的に同じ深さおよび幅を有し、全長にわたって一定の幅、深さで形成される。
【0058】
サイプ33は、全長にわたって湾曲していてもよいが、本実施形態では、サイプ33のうち、領域A1の幅方向中央部に位置する部分が湾曲し、当該湾曲部から長さ方向両端までの部分はそれぞれ直線状に形成されている。サイプ33は、湾曲部33aと、副溝31の近くから湾曲部33aまで直線状に形成された第1直線部33bと、湾曲部33aから主溝21の近くまで直線状に形成された第2直線部33cとを含む。
【0059】
サイプ33の第1直線部33bは、第2直線部33cより長くてもよく、短くてもよいが、本実施形態では、第2直線部33cと実質的に同じ長さを有し、かつタイヤ軸方向に対する傾斜角度が大きくなっている。第1直線部33bのタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、サイプ32の第1直線部32bのタイヤ軸方向に対する傾斜角度と実質的に同じであってもよい。また、第2直線部33cのタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、サイプ32の第2直線部32cのタイヤ軸方向に対する傾斜角度と実質的に同じであってもよく、第2直線部33cは第2直線部32cと同一直線上に配置されていてもよい。
【0060】
斜面36は、サイプ33が凸となる側の縁であって、湾曲部33aおよび第1直線部33bの縁に形成されている。一方、第2直線部33cの縁、およびサイプ33が凸となる側と反対側(凹となる側)の縁に斜面は形成されていない。斜面36は、湾曲部33aと、第1直線部33bと、副溝31とに挟まれた範囲に形成され、湾曲部33a側から第1直線部33bの副溝31側の長さ方向一端に向かって次第に深くなり副溝31につながっている。このような斜面36は、斜面35と同様に、路面の水を取り込むことができる凹部の体積を増やし、排水性を向上させる。
【0061】
副溝31とサイプ32、および主溝21とサイプ33をつなげないことにより、例えば、周方向に延びる溝の中を伝わる空気の振動が隣接する周方向の溝に伝わることを抑制でき、ノイズを低減できる。また、メディエイトブロック30が周方向に連続したリブ状のブロックとなって剛性が高くなるので、コーナリング時にも過度なブロックの倒れ込み、ブロックの変形による浮き上がりが抑制され、良好なCP特性(操縦安定性)が得られる。さらに、メディエイトブロック30の接地面積が大きくなって接地圧が低くなるため、ブロックの摩耗が抑制される。
【0062】
副溝31とサイプ32との最短距離、および主溝21とサイプ33との最短距離は、0.3mm以上2.0mm以下であることが好ましく、0.7mm以上1.5mm以下がより好ましい。各最短距離は、互いに異なっていてもよく、実質的に同じであってもよい。副溝31とサイプ32の距離、主溝21とサイプ33の距離を0.3mm以上確保することにより、ブロックの剛性を確保でき良好なCP特性が得られる。サイプ32,33の長さを確保する観点から、当該距離は2.0mm以下であることが好ましい。なお、当該距離が0.3mm未満であると、走行中に連結部が切断されて操縦安定性が低下することが懸念される。また、当該距離が2.0mmを超えると、路面からの入力増加によりノイズが大きくなることや、重量増加により燃費性能が悪化することが懸念される。
【0063】
サイプ32,33のタイヤ軸方向に沿った合計の長さは、メディエイトブロック30の幅(タイヤ軸方向に沿った長さ)の70%以上90%以下であることが好ましく、76%以上86%以下がより好ましい。この場合、良好な排水性と操縦安定性を両立することが容易になる。タイヤ軸方向に沿ったサイプ32,33の長さの比は、例えば、40:60~45:55である。
【0064】
以下、
図5および
図6を参照しながら、トレッド10のプロファイル形状、および空気入りタイヤ1の内部構造について、さらに詳説する。
【0065】
図5は、トレッド10の表面に沿ったプロファイル面αの形状を示す図である。空気入りタイヤ1は、正規リムに装着して正規内圧となる空気を充填した状態において、プロファイル面αの赤道位置と、ショルダーブロック50のサイプ52のタイヤ軸方向外側の端に対応する位置P1との高さの差Hpが、11.5mm以上14.5mm以下である。なお、赤道CLからショルダーブロック60のサイプ62のタイヤ軸方向外側の端に対応する位置P2までのタイヤ軸方向に沿った長さは、赤道CLから位置P1までのタイヤ軸方向に沿った長さに等しく、赤道位置と位置P2の高さの差はHpと等しい。
【0066】
本明細書において、高さの差Hpとは、プロファイル面α上の赤道CLの位置からP1までのタイヤ径方向に沿った長さを意味する。高さの差Hpは、12.0mm以上14.0mm以下がより好ましく、12.0mm以上13.0mm以下が特に好ましい。位置P1,P2間のタイヤ軸方向に沿った長さTWは、例えば、130mm以上136mm以下である。長さTWの好適な一例は133mmである。
【0067】
プロファイル面αは、位置P1から赤道位置に向かって、第1の曲率半径R1を有する第1の領域、第2の曲率半径R2を有する第2の領域、および第3の曲率半径R3を有する第3の領域を含む。曲率半径の大きさはR1<R2<R3であり、位置P1から赤道位置に向かってプロファイル面αの湾曲の程度が段階的に緩やかになっている。位置P1から赤道位置の範囲において、プロファイル面αは、第4の曲率半径を有する第4の領域を有していてもよいが、曲率半径の変化は三段階であることが好ましく、第1~第3の領域のみを有する。なお、プロファイル面αは、位置P2から赤道位置に向かって上記第1~第3の領域を含む。
【0068】
上記第1~第3の曲率半径には、それぞれ好適な範囲が存在する。第1の曲率半径R1は、100mm以上120mm未満が好ましく、105mm以上115mm以下がより好ましい。第2の曲率半径R2は、120mm以上180mm以下が好ましく、150mm以上170mm以下がより好ましい。第3の曲率半径R3は、450mm以上750mm以下が好ましく、480mm以上550mm以下がより好ましい。
【0069】
上記高さの差Hpが11.5mm以上14.5mm以下であり、かつプロファイル面αが上記第1~第3の領域を含み、その曲率半径が上記範囲内であれば、プロファイル面αを適切にラウンド化でき、ノイズ性能が向上する。プロファイル面αがラウンド化すると、路面に接地する面積が減少して路面からの入力が小さくなるため、ノイズが効果的に低減されると考えられる。
【0070】
一方で、プロファイル面αをラウンド化すると、トレッドのセンター領域が摩耗しやすくなり、またショルダーブロックの接地面積の減少による操縦安定性の低下が問題となり得る。このため、空気入りタイヤ1では、上記のように、各ブロックの接地幅、溝面積比率、サイプ形状、および主溝の深さなどを適切な状態、範囲に調整することにより、良好な耐摩耗性と操縦安定性を確保している。即ち、空気入りタイヤ1は、操縦安定性、ノイズ性能、および耐摩耗性のバランスに優れる。
【0071】
本実施形態において、プロファイル面αの上記第1の領域にはショルダーブロック50,60が配置されている。また、プロファイル面αの上記第2および第3の領域には、メディエイトブロック30,40が配置されている。即ち、メディエイトブロック30の路面に接地する接地面には、曲率半径が異なる2つの湾曲面が含まれる(メディエイトブロック40についても同様)。メディエイトブロック30は、例えば、副溝31で区切られた領域A1,A2で曲率半径が異なり、領域A1の接地面の曲率半径がR3、領域A2の接地面の曲率半径がR2であってもよい。
【0072】
図6は、空気入りタイヤ1の軸方向断面の一部を示す図である。
図6中のβは、赤道位置を示す仮想線であって、タイヤ径方向に延びて赤道CLに直交する。空気入りタイヤ1は、上記のように、第1のベルト16と、ベルト16のタイヤ径方向外側に配置された第2のベルト17と、ベルト16,17を覆ってベルト17のタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライ18とを備える。ベルト16はベルト17よりも幅広に形成され、さらに、キャッププライ18はベルト16よりも幅広に形成されている。キャッププライ18は、カーカス15と共に2枚のベルトを挟み、2枚のベルトの全体を覆っている。
【0073】
トレッド10の上記TWが130mm以上136mm以下である場合に、ベルト16のベルト端16Eは、赤道位置(仮想線β)からタイヤ軸方向に沿った長さW16が62mm以上66mm以下の範囲に位置することが好ましい。左右のベルト端16Eは、赤道位置から等距離にある。このため、好適なベルト16の幅は、124mm以上132mm以下(W16×2)である。また、ベルト17のベルト端17Eは、赤道位置からタイヤ軸方向に沿った長さが56mm以上60mm以下の範囲に位置することが好ましい。ベルト17についても同様に、左右のベルト端17Eは赤道位置から等距離にある。好適なベルト17の幅は、112mm以上120mm以下(W17×2)である。
【0074】
キャッププライ18のプライ端18Eは、赤道位置からタイヤ軸方向に沿った長さが65mm以上69mm以下の範囲に位置することが好ましい。左右のプライ端18Eは赤道位置から等距離にあり、好適なキャッププライ18の幅は130mm以上138mm以下(W18×2)である。ベルト端16E、ベルト端17E、およびプライ端18Eの位置関係が当該条件を満たす場合、プロファイル面αの適切なラウンド化が容易になる。なお、空気入りタイヤ1は、本発明の目的を損なわない範囲で、キャッププライ18を覆う追加の補強部材を有していてもよい。
【0075】
本実施形態において、プライ端18Eは、位置P1,P2よりも赤道CL側に位置している。また、ベルト端17Eは、接地端E1,E2とタイヤ径方向に重なるか、又は接地端E1,E2よりも赤道CL側に位置している。この場合、プロファイル面αの適切なラウンド化が容易になる。
【0076】
ベルト16,17を構成するベルトコードは、上記のように、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列していることが好ましい。タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角度の好適な一例は、プロファイル面αのラウンド化等の観点から、23°以上25°以下である。この場合、ベルト16,17による適切な拘束力が得られる。また、ビードフィラー14の高さH14は、26mm以上34mm以下であることが好ましい。この場合、タイヤの剛性が向上し、操縦安定性および路面からの入力に対する減衰性が向上する。なお、高さH14とは、ビードフィラー14のタイヤ径方向内側端から外側端までのタイヤ径方向に沿った長さである。
【0077】
トレッド10の接地面は、赤道CL上におけるタイヤ周方向に沿った長さである接地長(L1)に対する、接地端近傍の接地長(L2)の比率である矩形率(L2/L1)が、0.74以上0.85以下であることが好ましく、0.80以上0.83以下がより好ましい。ここで、接地長(L1)とは、未使用の空気入りタイヤを正規リムに装着して、所定の内圧となるように空気を充填した状態で、正規荷重の70.4%に相当する荷重を加えたときの接地面の赤道CL上のタイヤ周方向に沿った長さである。接地長(L2)とは、上記測定条件で求めた接地面のタイヤ軸方向両端から10mmタイヤ軸方向内側の位置における接地面のタイヤ周方向に沿った長さである。
【0078】
上記測定条件における所定の内圧とは、タイヤの扁平率が60%以上である場合は、200kPaであり、扁平率が60%未満である場合は、220kPaである。また、Extra Loadと記載されたタイヤにおいては、上記測定条件における所定の内圧とは、扁平率が60%以上である場合は、240kPaであり、扁平率が60%未満である場合は、260kPaである。
【0079】
上記実施形態のトレッドパターン(
図1~
図4参照)を有する空気入りタイヤについて、プロファイル面αの上記第1~第3の領域の曲率半径、および上記高さの差Hpを表1に示すように変化させて、CP特性およびノイズ性能の評価を行った。また、各タイヤの矩形率を算出した。なお、いずれの実施例、比較例のタイヤも、TWが133mm、トレッドの接地幅が115mmであり、
図6に示す内部構造を有する。
【0080】
CP特性およびノイズ性能の評価方法は、下記の通りである。
【0081】
[コーナリングパワー(CP)の評価]
直径が2500mmのドラム試験機を使用し、内圧240kPa、ロードインデックスの最大荷重の70%で荷重を与えた175/65R18 82Hの各実施例、比較例のタイヤに発生するコーナリングフォースを測定し、スリップ角1度におけるコーナリングパワーを求めることにより、コーナリングパワーについて評価試験を行った。実施例1の結果を100として指数評価した。
【0082】
[ノイズ性能の評価]
各実施例、比較例のタイヤを試験車両に装着し、乾燥状態の平坦なアスファルト路面を80km/hで走行した時のノイズレベルを官能評価した。表1の〇はノイズが小さいことを意味し、×は〇の場合と比べてノイズが大きいことを意味する。
【0083】
【0084】
表1に示すCPの値が100以上であるタイヤは、良好な操縦安定性を有していると言える。即ち、いずれの実施例のタイヤも良好な操縦安定性を実現できる。比較例1,2のタイヤについては、CP特性は良好である一方、実施例1~6のタイヤと比較して、タイヤから発生するノイズが大きくなっている。これに対し、実施例1~6のタイヤは、良好な操縦安定性とノイズ性能を両立できている。
【0085】
以上のように、上記構成を備えた空気入りタイヤ1によれば、良好な操縦安定性を確保しつつ、タイヤから発生するノイズを低減し、耐摩耗性を向上させることができる。空気入りタイヤ1は、操縦安定性、ノイズ性能、および耐摩耗性のバランスが良く、高い走行性能が求められる高機能サマータイヤとして好適である。
【0086】
なお、上記実施形態は本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では、副溝31、サイプ32,33が形成された、車両外側に配置される第1のメディエイトブロック30を例示したが、第1のメディエイトブロックは、これらの少なくとも1つを有さないブロックであってもよい。また、タイヤの内部構造は、
図6に例示する構造に限定されない。
【符号の説明】
【0087】
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 サイドウォール、12 ビード、13 ビードコア、14 ビードフィラー、15 カーカス、16,17 ベルト、16E,17E ベルト端、18 キャッププライ、18E プライ端、19 インナーライナー、20,21,22 主溝、30,40 メディエイトブロック、31 副溝、32,33,52,62,63 サイプ、32a,33a 湾曲部、32b,33b 第1直線部、32c,33c 第2直線部、34,35,36 斜面、41 スリット、50,60 ショルダーブロック、51,61 横溝、CL 赤道、E1,E2 接地端