(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099175
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】燃料タンク用弁装置
(51)【国際特許分類】
B60K 15/035 20060101AFI20240718BHJP
F16K 31/18 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
B60K15/035 A
F16K31/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002912
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢島 一樹
【テーマコード(参考)】
3D038
3H068
【Fターム(参考)】
3D038CA15
3D038CA22
3D038CB01
3H068AA01
3H068DD12
3H068GG07
(57)【要約】
【課題】満タン規制位置を上昇させながらも燃料タンク外への燃料漏れを規制できる、燃料タンク用弁装置を提供する。
【解決手段】この燃料タンク用弁装置10は、仕切壁30、開口33、燃料蒸気排出口55を有するハウジング15と、フロート弁70とを有し、通気室Rには、排出口55に連通する筒状壁60が延設され、筒状壁60の、延出方向先端部の下部には、切欠き部61が形成され、仕切壁30は、開口33が形成された天井壁31を有し、天井壁31周縁から下方に向けて周壁35が延出し、天井壁31の周縁の一部と、周壁35の一部とが、筒状壁60の軸方向及び弁軸方向から見たときに、切欠き部61を介して筒状壁60内に入り込むように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成されていると共に、前記通気室側の周面に燃料蒸気排出口が設けられた、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口に接離するフロート弁とを有しており、
前記通気室には、前記燃料蒸気排出口に連通して、該燃料蒸気排出口から前記通気室の内方に向けて延びる筒状壁が設けられ、該筒状壁の、延出方向の先端部の下部には、切欠き部が形成されており、
前記仕切壁は、前記開口が形成された天井壁を有し、該天井壁の周縁から下方に向けて周壁が延出しており、
前記天井壁の周縁の一部と、前記周壁の一部とが、前記筒状壁の軸方向及び弁軸方向から見たときに、前記切欠き部を介して前記筒状壁内に入り込むように構成されていることを特徴とする燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
前記筒状壁は、前記切欠き部を介して上方延出部が形成され、該上方延出部は、弁軸方向から見たときに、前記天井壁に重なるように配置されており、
前記通気室の天井面から前記天井壁に向けて、前記燃料蒸気排出口への燃料流入を規制する、流入規制壁が延出しており、
該流入規制壁は、前記通気室の天井面側から弁軸方向に見たときに、前記上方延出部の先端と、前記ハウジングの、前記フロート弁の軸心に一致する中心との間であって、且つ、前記上方延出部の先端と離間した位置に配置される請求項1記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
前記筒状壁の軸方向から見たときに、前記筒状壁の上部が、前記流入規制壁で覆われ、前記筒状壁の下部が、前記周壁で覆われるように構成されている請求項2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
前記周壁の下端外周縁から張り出し部が張り出しており、
前記筒状壁は、前記切欠き部を介して上方延出部及び下方延出部が形成されており、
前記張り出し部と前記下方延出部との間、及び、前記天井壁と前記上方延出部との間には、弁軸方向において、それぞれ隙間が形成されており、
前記天井壁と前記上方延出部との隙間は、前記張り出し部と前記下方延出部との隙間よりも小さく形成されている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料タンクへの過給油を防止したり、燃料タンク外への燃料流出を防止したりする、燃料タンク用弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、燃料タンク内の液面が、予め設定された満タン液面よりも上昇しないように、燃料タンク内への過給油を防止する弁装置(満タン規制バルブ)や、自動車が傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する弁装置(カットバルブ)が取付けられている。
【0003】
下記特許文献1には、弁室を形成するケーシング本体、及び、その上部に溶着され管体部を設けた蓋体を有するケーシングと、弁室に収納されるフロートを有するフロート機構とを備えた、燃料遮断弁が記載されている。
【0004】
前記ケーシングは、更に、弁収納ケースと、該弁収納ケースの上部を覆うとともに、接続通路を形成する内蓋とを備えている。また、接続通路を形成した内蓋は、前記管体部の管通路に至る高さとなるように配置されている(特許文献1の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料タンク内への燃料の供給量は、ハウジングの仕切壁に形成された、フロート弁が接離する、開口の高さによって設定される。つまり、仕切壁に形成した開口が高ければ、燃料タンク内への給油量を増やすことが可能となる。なお、燃料タンク内へ供給される燃料の満タン位置を規定する位置や箇所(開口がフロート弁で閉塞されるときの燃料高さ)を、満タン規制面や、ロックポイント、SOH(Shut Off Height)等という。
【0007】
特許文献1の燃料遮断弁の場合、上述したように、内蓋に形成された接続通路は、管体部の管通路に至る高さとなっており、上記SOHを高く設定しやすい。その反面、接続通路を通って、内蓋と蓋体との間で画成される空間内に入り込んだ燃料が、管体部の管通路内に流入しやすくなり、燃料タンク外に漏れやすくなるという不都合が生じ得る。
【0008】
したがって、本発明の目的は、満タン規制位置を上昇させながらも、燃料タンク外への燃料漏れを規制できる、燃料タンク用弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料タンク用弁装置は、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成されていると共に、前記通気室側の周面に燃料蒸気排出口が設けられた、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口に接離するフロート弁とを有しており、前記通気室には、前記燃料蒸気排出口に連通して、該燃料蒸気排出口から前記通気室の内方に向けて延びる筒状壁が設けられ、該筒状壁の、延出方向の先端部の下部には、切欠き部が形成されており、前記仕切壁は、前記開口が形成された天井壁を有し、該天井壁の周縁から下方に向けて周壁が延出しており、前記天井壁の周縁の一部と、前記周壁の一部とが、前記筒状壁の軸方向及び弁軸方向から見たときに、前記切欠き部を介して前記筒状壁内に入り込むように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天井壁の周縁の一部と、周壁の一部とが、筒状壁の軸方向及び弁軸方向から見たときに、切欠き部を介して筒状壁内に入り込むように構成されているので、仕切壁の開口を、ハウジング内部の上方に位置させることができ、満タン規制位置を上昇させることができる。
【0011】
その反面、開口から燃料蒸気排出口内に燃料が流入しやすくなるが、仕切壁を構成する周壁の一部が、筒状壁内に入り込むことで、排出口の開口面積を狭めることができるので、燃料が、排出口を通じて燃料蒸気配管内に流入しにくくなり、タンク外へ漏れにくくなる。
【0012】
よって、本発明の燃料タンク用弁装置においては、満タン規制位置の上昇と、燃料タンク外への燃料漏れ規制という、相反する効果を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図3】同燃料タンク用弁装置を構成する上部カバーの、
図1とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図5】本発明に係る燃料タンク用弁装置において、フロート弁が下降して、開口が開いた状態の断面図である。
【
図10】本発明に係る燃料タンク用弁装置において、フロート弁が上昇して、開口を閉じた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(燃料タンク用弁装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態について説明する。
【0015】
図1や
図5に示すように、この実施形態における燃料タンク用弁装置10(以下、単に「弁装置10」ともいう)は、仕切壁30を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室V、上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが設けられ、仕切壁30に弁室Vと通気室Rとを連通する開口33が形成されると共に、通気室R側の周面に燃料蒸気排出口55(以下、単に「排出口55」ともいう)が設けられた、ハウジング15と、弁室V内に昇降可能に収容されて、開口33を閉塞するフロート弁70と、該フロート弁70を付勢する付勢ばね17とを有している。
【0016】
また、この弁装置10は、ハウジング15の外側で、排出口55に連結される燃料蒸気配管57(以下、単に「配管57」ともいう)を有している。
【0017】
更に、この実施形態のハウジング15は、ハウジング本体20と、ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ40と、ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー50とを有している。
【0018】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。また、本発明における「弁軸方向」とは、フロート弁70の軸方向(フロート弁70の軸心C1に沿った方向)を意味する(以下の説明でも同様)。
【0019】
まず、ハウジング本体20について、
図1、
図5、
図6等を参照して説明する。
【0020】
このハウジング本体20は、略円筒状をなした本体周壁21を有しており、その上方に、仕切壁30が配置されている。また、本体周壁21の上方からは、略円環状をなしたフランジ部23が張り出している。このフランジ部23には、複数の挿通孔23aが形成されている。
【0021】
更に、本体周壁21の外周であって、軸方向下端部寄りの位置には、複数のキャップ側係合突部25が突設されている。更に、本体周壁21の外周の、フランジ部23寄りの箇所であって、前記挿通孔23aに整合した位置からは、複数のカバー側係合突部26が突設されている。
【0022】
また、本体周壁21の、仕切壁30寄りの箇所には、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる流通孔27が形成されている。この流通孔27は、車両が横転したり反転したりした場合や、燃料タンク内への給油時を除いて、液没しない状態が維持されるようになっており、弁室V内に燃料タンク内の空気を流入させる部分となっている。
【0023】
図1、
図6、
図8等に示すように、仕切壁30は、略円形板状をなした天井壁31と、該天井壁31の外周縁から下方に向けて延出した略円筒状をなした周壁35と、該周壁35の下端外周縁から径方向外方に向けて張り出した張り出し部37とを有している。
【0024】
なお、これらの天井壁31や、周壁35、張り出し部37は、
図3に示す筒状壁60の切欠き部61に関係する部材となっているが、この関係性については上部カバー50の説明で記載する。
【0025】
天井壁31の径方向中央部には、略円形孔状をなした開口33が形成されている。また、開口33の裏側(下側)周縁からは、略円形突起状をなした弁座33aが突設されている(
図6参照)。この弁座33aに、フロート弁70が接離することで(
図5,10参照)、開口33が開閉される。なお、開口33の内周には、略十字状をなしたリブ34が設けられている。このリブ34によって、開口33の表側内周縁からの、シール弁体75(
図5,6,10参照)の飛び出しが防止されるようになっている。
【0026】
また、
図6に示すように、張り出し部37の外側には、シールリング29を装着するための、リング装着部38が設けられており、該リング装着部38を介して、仕切壁30が本体周壁21の上方に連結されている。また、リング装着部38の外周縁部には、環状溝39が形成されている。
【0027】
次に、ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ40について説明する。
【0028】
この下部キャップ40は、略円形板状をなした底壁41と、該底壁41の外周縁から立設したキャップ周壁43とを有する、有底キャップ状をなしている。底壁41には、燃料タンク内と弁室V内とを連通させる通口42が複数形成されている。また、キャップ周壁43には、複数の係合孔43aが形成されている。
【0029】
なお、底壁41の径方向中央部からは、付勢ばね17の下端部を支持する、略十字突起状をなしたばね支持部45が突設されている。
【0030】
そして、下部キャップ40の各係合孔43aに、ハウジング本体20の、対応する各キャップ側係合突部25をそれぞれ係合させることで、ハウジング本体20の下方に下部キャップ40が装着される。その結果、仕切壁30を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンク内に連通する弁室Vが形成されるようになっている(
図5参照)。
【0031】
次に、ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー50について、
図1,3,4,6~9等を参照して説明する。
【0032】
この上部カバー50は、略円形板状をなしたカバー天井壁51と、該カバー天井壁51の外周縁から下方に延出した略円筒状をなしたカバー周壁52と、該カバー周壁52の下端外周縁から径方向外方に向けて張り出したカバー張り出し部53とを有する、下方が開口し上方が閉塞した略ハット状をなしている。
【0033】
また、カバー周壁52の下端部52aは、段部52bを介して、下端部52a以外の部分よりも拡径した円筒状をなしている(
図3参照)。更に、カバー天井壁51の内面、すなわち、カバー天井壁51の、仕切壁30に対向する面が、天井面51aをなしている。
【0034】
また、
図3に示すように、カバー張り出し部53の内周縁部(カバー周壁52の下端部52aの外周に近接する部分)からは、下方に向けて複数の係合片54が垂下している。各係合片54には、係合孔54aが形成されている。
【0035】
そして、上部カバー50の各係合片54を、ハウジング本体20の対応する挿通孔23aから挿出させ、その係合孔54aに、対応するカバー側係合突部26をそれぞれ係合させる。
【0036】
その結果、
図6に示すように、上部カバー50のカバー周壁52の下端部52aが、ハウジング本体20の環状溝39に挿入されると共に、カバー周壁52の下端部52aが、リング装着部38に外装されたシールリング29の外周に当接して、シールリング29が挟持された状態で、ハウジング本体20の上方に上部カバー50が装着される。
【0037】
こうして、仕切壁30を介して、その上方に燃料タンクの外部に連通する通気室Rが形成されるようになっている(
図5参照)。
【0038】
また、カバー周壁52の周方向の所定箇所には、略円形孔状をなした排出口55が、カバー周壁52を貫通して形成されている。更に、カバー周壁52の、排出口55の表側周縁から、配管57が所定長さで延出している。なお、この配管57は、排出口55に連通している。
【0039】
そして、通気室Rには、排出口55に連通して、該排出口55から通気室Rの内方に向けて延びる筒状壁60が設けられ、該筒状壁60の、延出方向の先端部の下部には、切欠き部61が形成されている。
【0040】
この実施形態における切欠き部61は、筒状壁60の底部側にて周方向に沿って湾曲する曲面状(円弧状)をなし、且つ、筒状壁60の延出方向に所定長さで延びており、筒状壁60の延出方向の先端部の底部側を切欠くものとなっている。
【0041】
具体的には、筒状壁60の、延出方向の先端部の下方部分、すなわち、筒状壁60の周方向の底部(天井面51aとは反対側に位置する部分)側の部分が、水平方向に沿った横切断面F1(
図3参照)で切欠かれると共に、筒状壁60の、延出方向の先端部の下方部分における、横切断面F1に隣接する部分が、横切断面F1に直交し且つ円弧状をなしたカバー周壁52の内周面に沿った縦切断面F2(
図4参照)で切欠かれている。
【0042】
すなわち、この実施形態の切欠き部61は、上記横切断面F1で切欠かれた横切欠き部分61a,61aと、上記縦切断面F2で切欠かれた縦切欠き部分61bとを有するものとなっている。
【0043】
また、筒状壁60は、一対の横切欠き部分61a,61a及び縦切欠き部分61bからなる切欠き部61を介して、延出方向の先端部の下方部分が開口した形状をなしている。
【0044】
更に、筒状壁60の、切欠き部61の一対の横切欠き部分61a,61aで切欠かれた部分よりも、天井面51a側の部分が、上方延出部63をなしている。また、筒状壁60の、切欠き部61の縦切欠き部分61bよりも、延出方向の基端部側の部分であって、筒状壁60の底部寄りの部分が、下方延出部64をなしている。
【0045】
更に、筒状壁60は次のように形成されている、とも言える。
【0046】
具体的には、排出口55の、通気室R側の内周縁から、通気室Rの内方に向けて、外面が互いに平行な面をなす一対の側壁65が延出していると共に、該一対の側壁65,65どうしが、天井面51aに連設され内周が円弧状をなした連結壁66により連結されている。
【0047】
そして、一対の側壁65,65の延出方向の先端部の底部寄りの部分が、横切断面F1で切欠かれることで、一対の側壁65,65の延出方向先端部の下端面に、切欠き部61の横切欠き部分61a,61aが位置すると共に、切欠き部61を介して、上方延出部63が形成される。
【0048】
つまり、上方延出部63は、一対の側壁65,65の延出方向先端部と、連結壁66の、一対の側壁65,65の延出方向先端部どうしを連結する部分とからなる。また、上方延出部63は、その延出方向の最先端、及び、仕切壁30の天井壁31に対向する底部が開口した形状となっている。
【0049】
更に、筒状壁60の延出方向の基端部の底部であって、上方延出部63を構成する一対の側壁65,65の延出方向先端部に隣接する箇所が、縦切断面F2で切欠かれることで、切欠き部61の縦切欠き部分61bを介して、円弧状をなした下方延出部64が形成される。
【0050】
また、この下方延出部64は、上方延出部63に対して、筒状壁60の軸方向に位置ずれし(筒状壁60の延出方向基端部側に位置する)、且つ、筒状壁60の径方向に対向する箇所に設けられている。
【0051】
そして、この弁装置10においては、天井壁31の周縁の一部と、周壁35の一部とが、筒状壁60の軸方向及び弁軸方向から見たときに、切欠き部61を介して筒状壁60内に入り込むように構成されている。
【0052】
この実施形態の場合、
図7に示すように、配管57の軸方向から見たときに、天井壁31の周縁部を含む周方向の所定部分、及び、当該部分における周壁35の所定部分(
図1の符号Mで示される、天井壁31の外周縁及び周壁35の周方向に沿った円弧及びその両端を結ぶ弦で囲まれた部分。以下の説明において「入り込み部分M」ともいう)が切欠き部61内に位置し、且つ、
図8に示すように、弁軸方向から見たときに、天井壁31及び周壁35の入り込み部分Mが切欠き部61内に位置している。
【0053】
その結果、天井壁31の一部であり且つ周壁35の一部である、上記入り込み部分Mが、筒状壁60の軸方向及び弁方向から見たときに(
図7及び
図8参照)、切欠き部61を介して筒状壁60内に入り込むようになっている。
【0054】
また、筒状壁60を構成する上方延出部63は、
図8に示すように、弁軸方向から筒状壁60を見たときに、仕切壁30を構成する天井壁31に重なるように(ラップするように)に配置されている。
【0055】
更に
図6に示すように、仕切壁30の張り出し部37と下方延出部64との間には、弁軸方向において、隙間S2が形成されている。具体的には、張り出し部37の上面と、下方延出部64の底部の下面との間に、隙間S2が形成されている(弁軸方向に所定間隔で隙間S2が形成されている)。
【0056】
同じく
図6に示すように、仕切壁30の天井壁31と上方延出部63との間には、弁軸方向において、隙間S1が形成されている。具体的には、天井壁31の上面と、上方延出部63を構成する一対の側壁65,65の下端面(横切欠き部分61aが位置する面)との間に、隙間S1が形成されている(弁軸方向に所定間隔で隙間S1が形成されている)。
【0057】
そして、天井壁31と上方延出部63との隙間S1は、張り出し部37と下方延出部64との隙間S2よりも小さく形成されている。
【0058】
また、
図3、
図5、
図6等に示すように、通気室Rの天井面51aから天井壁31に向けて、排出口55への燃料流入を規制する、流入規制壁68が延出している。
【0059】
この実施形態における流入規制壁68は、筒状壁60の延出方向最先端の開口、ここでは上方延出部63の先端開口を概ねカバー可能な面積で形成された、略長板状をなしており、上部カバー50のカバー天井壁51の天井面51aから、仕切壁30の天井壁31に向けて垂下している。
【0060】
また、上記流入規制壁68は、
図8に示すように、通気室Rの天井面51a側から弁軸方向に見たときに、上方延出部63の先端と、ハウジング15の、フロート弁70の軸心C1に一致する中心C2(仕切壁30の天井壁31の径方向中心とも言える)との間であって、且つ、上方延出部63の先端と離間した位置に配置されるようになっている。なお、
図8に示すように、通気室Rの天井面51a側から弁軸方向に見た状態では、上方延出部63の延出方向に対して、流入規制壁68が直交する向きで配置されている。
【0061】
更に
図9に示すように、筒状壁60の軸方向から見たときに、筒状壁60の上部が、流入規制壁68で覆われ、筒状壁60の下部が、仕切壁30の周壁35で覆われるように構成されている。
【0062】
より具体的には、
図9に示すように、配管57を延出方向先端側から通気室R内を見たときに、筒状壁60の上半部(筒状壁60の径方向中心よりも上方部分)及び径方向中央よりもやや下方に至る範囲が、流入規制壁68で覆われると共に、筒状壁60の下半部の所定範囲(筒状壁60の径方向中心よりも下方部分であって、流入規制壁68の下端面よりも下方の範囲)が、周壁35で覆われるようになっている。
【0063】
次に、弁室V内に昇降可能に収容されるフロート弁70について、
図1、
図5、
図6等を参照して説明する。
【0064】
図1や
図5に示すように、この実施形態のフロート弁70は、燃料浸漬時に浮力を発生させるフロート本体71と、該フロート本体71の上方に装着され、フロート本体71に対して相対的に昇降動作し、仕切壁30の開口33に接離するシール部材73とを有している。
【0065】
また、シール部材73の上方には、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料からなるシール弁体75が装着されている。シール弁体75の中央には、上方及び下方が開口した通気孔75aが貫通して形成されている。このシール弁体75が開口33の弁座33aに接離して、開口33を開閉することで、フロート弁70が満タン規制弁として機能する。
【0066】
更に、フロート本体71とシール部材73との間には、中間弁体77が傾動可能に支持されている。この中間弁体77は、常時はシール弁体75の下端部に当接して、通気孔75aを閉塞し(
図5,6参照)、フロート本体71がシール部材73に対して下降したときに、通気孔75aを開くようになっている。
【0067】
また、フロート弁70は、弁室V内において、下部キャップ40との間で、付勢ばね17を介在させた状態で昇降可能に収容配置され、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢ばね17の付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降するようになっている。
【0068】
(変形例)
本発明を構成するハウジング、該ハウジング本体を構成するハウジング本体、仕切壁、下部キャップ、上部カバー、筒状壁、フロート弁等の、形状や、構造、レイアウト等は、上記態様に限定されるものではない。
【0069】
また、上記実施形態におけるハウジング15は、ハウジング本体20と、下部キャップ40と、上部カバー50とから構成されているが、ハウジングとしては、少なくとも仕切壁を有する構造であればよい。
【0070】
更に、この実施形態におけるハウジング本体20の本体周壁21や、仕切壁30の周壁35、上部カバー50のカバー周壁52等は、略円筒状をなしているが、例えば、楕円筒状や角筒状等であってもよい。
【0071】
また、この実施形態におけるフロート弁70は、フロート本体71や、シール部材73、中間弁体77等からなる多部品構成となっているが、フロート弁としては、例えば、上方に弾性材料からなるシール部材を装着したフロート弁等であってもよく、開口33を開閉可能であればよい。
【0072】
更に、この実施形態では、ハウジング15内に形成された一つの弁室V内に、一つのフロート弁70が収容配置された構造となっているが、例えば、一つの弁室内に複数のフロート弁を収容配置したり(満タン規制弁のほか、燃料カット弁や圧力調整弁等として機能する)、ハウジング内に複数の弁室を画成して、各弁室内にフロート弁を収容配置したりしてもよい。
【0073】
また、この実施形態における仕切壁30は、天井壁31と、周壁35と、張り出し部37と、リング装着部38等を有し、その外周が天井壁31から下方に向けて段階状に拡径するような段差形状をなしているが、仕切壁としては、少なくとも天井壁と、周壁とを有していればよい。
【0074】
更に、この実施形態における筒状壁60の切欠き部61は、筒状壁60の底部側にて周方向に沿って湾曲する曲面状をなし、且つ、筒状壁60の延出方向に所定長さで延びる形状となっているが、切欠き部としては、例えば、筒状壁の底部側を、水平方向に沿った切断面のみで切欠いたり、円弧状の切断面で切欠いたり、水平方向の切断面や、円弧状の切断面、筒状壁の延出方向に対して斜めの切断面等を適宜組み合わせて、略台形状や、略コ字状、略U字状、略V字状等としてもよく、天井壁の周縁の一部及び周壁の一部が入り込み可能であれば、その形状は特に限定されない。
【0075】
また、この実施形態における流入規制壁68は、略長板状をなしているが、流入規制壁としては、例えば、半円形状や、台形状、矩形状等としたり、弁軸方向から見たときに略コ字枠状、略V字枠状等としたりしてもよく、排出口への燃料流入を規制可能な形状であればよい。
【0076】
(作用効果)
次に、上記構造からなる弁装置10の作用効果について説明する。
【0077】
図5に示すように、燃料タンク内へ燃料が十分に給油されておらず、フロート弁70が燃料に浸漬していない状態では、フロート弁70は自重で下降して、開口33が開くため、開口33を通じて弁室Vと通気室Rとが連通した状態となっている。
【0078】
この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、主として、燃料タンク内の空気が、下部キャップ40の通口42から、弁室V内に流入して、フロート弁70と、下部キャップ40のキャップ周壁43及びハウジング本体20の本体周壁21との隙間を通過して、上方へと流れていき、開口33から通気室R内に流入して、燃料タンク外のキャニスターへと排出される。このように、燃料タンク内の空気が、燃料タンク外へ排出されることで、燃料タンク内に燃料を給油可能となっている。
【0079】
上記の
図5に示す状態から、燃料タンク内に燃料が給油されていくと、燃料が、下部キャップ40の通口42から弁室V内に流入し、フロート弁70のフロート本体71に燃料が浸漬していく。
【0080】
そして、燃料が、予め設定されたSOH(ロックポイントや、満タン規制面等とも言える)に達したとき、すなわち、ハウジング本体20に設けた流通孔27が閉塞されて液没した状態となると、付勢ばね17の付勢力及びフロート弁70のフロート本体71自体の浮力によって、フロート弁70が急上昇して、シール弁体75が弁座33aに当接して、開口33が閉塞される。
【0081】
その結果、開口33を通じての、弁室Vと通気室Rとの空気流通が遮断される。すると、燃料タンク内の燃料が燃料タンクに設けた給油管を上昇して、給油口に差し込まれた給油ノズルの満タン検知センサに燃料が接触して満タンを検知するので、燃料タンク内への給油が停止されて満タン規制を図ることができる。
【0082】
このとき、この弁装置10においては、仕切壁30を構成する天井壁31の周縁の一部と周壁35の一部とが、
図7や
図8に示すように、筒状壁60の軸方向及び弁軸方向から見たときに、切欠き部61を介して筒状壁60内に入り込むように構成されている。そのため、仕切壁30に形成された開口33を、ハウジング15内部の、上方に位置させることができるので、満タン規制位置を上昇させることができる。
【0083】
その反面、開口33から排出口55内に燃料が流入しやすくなるが、仕切壁30を構成する周壁35の一部が、筒状壁60内に入り込むことで、排出口55の開口面積を狭めることができる。そのため、燃料が、排出口55を通じて配管57内に流入しにくくなり、タンク外へ漏れにくくなる。
【0084】
以上のように、この弁装置10においては、満タン規制位置の上昇と、燃料タンク外への燃料漏れ規制という、相反する効果を両立することができる。
【0085】
また、この実施形態においては、筒状壁60は、切欠き部61を介して上方延出部63が形成され、該上方延出部63は、弁軸方向から見たときに、天井壁31に重なるように配置されている(
図8参照)。更に、通気室Rの天井面51aから天井壁31に向けて、排出口55への燃料流入を規制する、流入規制壁68が延出しており、該流入規制壁68は、通気室Rの天井面51a側から弁軸方向に見たときに、上方延出部63の先端と、ハウジング15の、フロート弁70の軸心C1に一致する中心C2との間であって、且つ、上方延出部63の先端と離間した位置に配置される(
図8参照)。
【0086】
上記態様によれば、フロート弁70が上昇して開口33を閉じる前に、通気室R内に流入した燃料は、流入規制壁68に衝突して拡散した後、更に上方延出部63に衝突して落下するので、燃料が排出口55から配管57内に流入しにくくなり、燃料タンク外に燃料が漏れることを、より適切に規制できる。
【0087】
また、流入規制壁68と上方延出部63の先端とが離間しているため、通気性を維持することができる。そのため、燃料タンク内への燃料供給時における、燃料タンク内の空気の排出性能に支障がないうえ、開口33を形成した天井壁31をできるだけ、ハウジング15内部の上方に位置させることできる。
【0088】
したがって、満タン規制位置の上昇及びタンク外への燃料漏れ規制という効果をより高めることができる。
【0089】
更に、この実施形態においては、筒状壁60の軸方向から見たときに、筒状壁60の上部が、流入規制壁68で覆われ、筒状壁60の下部が、周壁35で覆わるように構成されている(
図9参照)。
【0090】
上記態様によれば、筒状壁60の軸方向から見たときに、筒状壁60の上部が、流入規制壁68で覆われ、筒状壁60の下部が、周壁35で覆わるように構成されているので、フロート弁70が上昇して開口33を閉じる前に、通気室R内に流入した燃料が、排出口55から配管57内に流入しにくくなり、燃料タンク外に燃料が漏れることを、より適切に規制できる。
【0091】
また、この実施形態においては、仕切壁30の周壁35の下端外周縁から張り出し部37が張り出しており、筒状壁60は、切欠き部61を介して上方延出部63及び下方延出部64が形成されており、張り出し部37と下方延出部64との間、及び、天井壁31と上方延出部63との間には、弁軸方向において、それぞれ隙間S2,S1が形成されており、天井壁31と上方延出部63との隙間S1は、張り出し部37と下方延出部64との隙間S2よりも小さく形成されている(
図6参照)。
【0092】
上記態様によれば、張り出し部37と下方延出部64との間に形成した隙間S2によって、通気室R内に流入した燃料を捕捉することができる。また、天井壁31と上方延出部63との隙間S1は、張り出し部37と下方延出部64との隙間S2よりも小さく形成されているので、張り出し部37と下方延出部64との隙間S2で捕捉した燃料を逃がしにくくして、燃料が排出口55から配管57内に流入しにくくなる。
【0093】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10 燃料タンク用弁装置(弁装置)
15 ハウジング
20 ハウジング本体
30 仕切壁
31 天井壁
33 開口
35 周壁
37 張り出し部
40 下部キャップ
50 上部カバー
51a 天井面
55 排出口
57 燃料蒸気配管(配管)
60 筒状壁
61 切欠き部
63 上方延出部
64 下方延出部
68 流入規制壁
70 フロート弁
R 通気室
V 弁室