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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099187
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】電源装置および加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/10 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
B23K9/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002940
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝典
(72)【発明者】
【氏名】田島 弘恒
(72)【発明者】
【氏名】宮部 浩一
(72)【発明者】
【氏名】下菊 秀記
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰範
(72)【発明者】
【氏名】堀江 建尊
【テーマコード(参考)】
4E082
【Fターム(参考)】
4E082AA01
4E082AA08
4E082BA01
4E082CA01
4E082DA01
4E082EA13
(57)【要約】
【課題】省電力化を図った電源装置および加工システムを提供する。
【解決手段】溶接電源装置A1は、複数の制御回路30を含む制御部3と、複数の動作電圧を生成する複数の電源(制御電源部2)と、導通状態と遮断状態とが切り替わるスイッチ部5と、を備える。複数の制御回路30は、マイコンを含んで構成された第1制御回路31を含む。複数の電源は、第1制御回路31の動作電圧である第1動作電圧を生成する第1電源を含む。第1制御回路31は、通常モードと省エネモードとを切り替えるモード切替部311、および、スイッチ部5の導通状態と遮断状態とを切り替えるスイッチ制御部312を含む。スイッチ制御部312は、通常モードにおいて複数の電源から複数の動作電圧の全てが出力されるようにスイッチ部5を導通状態にし、省エネモードにおいて複数の電源のうち第1電源から第1動作電圧のみが出力されるようにスイッチ部5を遮断状態にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工を行う加工部に、加工用電力を供給する電源装置であって、
前記電源装置の制御を行う複数の制御回路を含む制御部と、
前記電源装置の制御に必要な複数の動作電圧を生成する複数の電源と、
導通状態と遮断状態とが切り替わるスイッチ部と、
を備え、
前記複数の制御回路は、マイコンを含んで構成された第1制御回路を含み、
前記複数の電源は、前記第1制御回路の動作電圧である第1動作電圧を生成する第1電源を含み、
前記第1制御回路は、通常モードと省エネモードとを切り替えるモード切替部、および、前記スイッチ部の前記導通状態と前記遮断状態とを切り替えるスイッチ制御部を含み、
前記スイッチ制御部は、前記通常モードにおいて前記複数の電源から前記複数の動作電圧の全てが出力されるように前記スイッチ部を前記導通状態にし、前記省エネモードにおいて前記複数の電源のうち前記第1電源から前記第1動作電圧のみが出力されるように前記スイッチ部を前記遮断状態にする、電源装置。
【請求項2】
前記複数の動作電圧をそれぞれ個別に供給するための複数の電力伝送線をさらに備え、
前記複数の電力伝送線は、前記第1電源と前記第1制御回路とに接続された第1電力線を含み、
前記スイッチ部は、前記第1電力線には配置されず、且つ前記複数の電力伝送線のうちの前記第1電力線以外の電力伝送線に配置される、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
温度検出用素子をさらに備え、
前記複数の制御回路は、前記温度検出用素子の電気的な変化に応じて周囲温度を検出する検出制御回路を含み、
前記モード切替部は、前記通常モードにおいて、前記加工用電力の供給が停止した後、前記周囲温度が閾値以下に低下した際に、前記省エネモードに切り替える、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電源装置と、
前記加工部と
前記電源装置と通信可能な通信部を含む外部装置と、
前記第1制御回路と前記外部装置とを接続する信号線と、
を備え、
前記複数の制御回路は、前記通信部と通信を行う通信制御回路を含み、
前記複数の電源は、前記通信制御回路の動作電圧である第2動作電圧を生成する第2電源を含み、
前記外部装置は、操作者の操作を受け付ける操作装置を備え、当該操作装置が操作された時に前記信号線を介して前記第1制御回路に復帰信号を出力し、
前記モード切替部は、前記省エネモード中に前記復帰信号が前記第1制御回路に入力されると、前記通常モードに切り替える、加工システム。
【請求項5】
前記外部装置は、加工用ロボット、前記加工用ロボットの制御を行うロボット制御装置を備え、
前記ロボット制御装置は、前記通信部を含み、
前記操作装置は、前記加工用ロボットの動作指示を入力するものである、請求項4に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置および加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接や切断などの加工を行うための加工システムがある。このような加工システムには、電源装置が用いられる。電源装置は、加工用の加工部(例えば溶接トーチ)への電力供給および加工制御(例えば溶接制御)を行う。特許文献1には、アーク溶接機に用いられる電源装置の一例が開示されている。特許文献1に記載の電源装置(溶接用電源装置)は、電源回路、制御回路、冷却ファン、温度センサおよび報知手段を備える。電源回路は、インバータ回路、変圧器および整流回路などを備え、溶接トーチに溶接電力を供給する。制御回路は、電源回路(先述のインバータ回路)の制御、温度センサ(例えばサーミスタ)からの信号に応じた温度検出、冷却ファンの制御、および、報知手段への報知などを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-140886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、エネルギーの安定供給の確保および地球温暖化の防止などの観点から、電源装置においても、省電力化が求められる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、省電力化を図った電源装置および加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される電源装置は、加工を行う加工部に、加工用電力を供給する電源装置であって、前記電源装置の制御を行う複数の制御回路を含む制御部と、前記電源装置の制御に必要な複数の動作電圧を生成する複数の電源と、導通状態と遮断状態とが切り替わるスイッチ部と、を備え、前記複数の制御回路は、マイコンを含んで構成された第1制御回路を含み、前記複数の電源は、前記第1制御回路の動作電圧である第1動作電圧を生成する第1電源を含み、前記第1制御回路は、通常モードと省エネモードとを切り替えるモード切替部、および、前記スイッチ部の前記導通状態と前記遮断状態とを切り替えるスイッチ制御部を含み、前記スイッチ制御部は、前記通常モードにおいて前記複数の電源から前記複数の動作電圧の全てが出力されるように前記スイッチ部を前記導通状態にし、前記省エネモードにおいて前記複数の電源のうち前記第1電源から前記第1動作電圧のみが出力されるように前記スイッチ部を前記遮断状態にする。
【0007】
前記電源装置の好ましい実施の形態において、前記複数の動作電圧をそれぞれ個別に供給するための複数の電力伝送線をさらに備え、前記複数の電力伝送線は、前記第1電源と前記第1制御回路とに接続された第1電力線を含み、前記スイッチ部は、前記第1電力線には配置されず、且つ前記複数の電力伝送線のうちの前記第1電力線以外の電力伝送線に配置される。
【0008】
前記電源装置の好ましい実施の形態において、温度検出用素子をさらに備え、前記複数の制御回路は、前記温度検出用素子の電気的な変化に応じて周囲温度を検出する検出制御回路を含み、前記モード切替部は、前記通常モードにおいて、前記加工用電力の供給が停止した後、前記周囲温度が閾値以下に低下した際に、前記省エネモードに切り替える。
【0009】
本開示の第2の側面によって提供される加工システムは、第1の側面によって提供される電源装置と、前記加工部と前記電源装置と通信可能な通信部を含む外部装置と、前記第1制御回路と前記外部装置とを接続する信号線と、を備え、前記複数の制御回路は、前記通信部と通信を行う通信制御回路を含み、前記複数の電源は、前記通信制御回路の動作電圧である第2動作電圧を生成する第2電源を含み、前記外部装置は、操作者の操作を受け付ける操作装置を備え、当該操作装置が操作された時に前記信号線を介して前記第1制御回路に復帰信号を出力し、前記モード切替部は、前記省エネモード中に前記復帰信号が前記第1制御回路に入力されると、前記通常モードに切り替える。
【0010】
前記加工システムの好ましい実施の形態において、前記外部装置は、加工用ロボット、前記加工用ロボットの制御を行うロボット制御装置を備え、前記ロボット制御装置は、前記通信部を含み、前記操作装置は、前記加工用ロボットの動作指示を入力するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電源装置では、複数の制御回路は、マイコンを含んで構成された第1制御回路を含み、複数の電源は、第1制御回路の動作電圧である第1動作電圧を生成する第1電源を含む。第1制御回路は、通常モードと省エネモードとを切り替えるモード切替部、および、スイッチ部の導通状態と遮断状態とを切り替えるスイッチ制御部を含む。そして、スイッチ制御部は、通常モードにおいて複数の電源から複数の動作電圧の全てが出力されるようにスイッチ部を導通状態にし、省エネモードにおいて複数の電源のうち第1電源から第1動作電圧のみが出力されるようにスイッチ部を遮断状態にする。この構成によれば、省エネモードにおいて、通常モードに復帰する時に必要な動作電圧(第1動作電圧)以外の電力供給を遮断できるので、溶接作業を行わない待機時において、消費電力を極力抑制することができる。つまり、本開示の電源装置によれば、省電力化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る溶接システムを示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る溶接システムの制御電源部の詳細な構成例を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るモード切替処理を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る溶接システムを示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係るモード切替処理を示すフローチャートである。
図6】変形例に係る制御電源部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の電源装置および加工システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る溶接システムS1の全体構成例を示している。溶接システムS1は、溶接電源装置A1および溶接部B1を備える。溶接システムS1は、特許請求の範囲に記載の「加工システム」の一例である。溶接電源装置A1は、特許請求の範囲に記載の「電源装置」の一例である。溶接部B1は、特許請求の範囲に記載の「加工部」の一例である。図示された溶接システムS1は、一例であって、これに限定されない。例えば溶接システムS1は、溶接部B1(溶接トーチ81)からシールドガスを放出するためのガスタンク、および、溶接部B1(溶接トーチ81)を冷却する冷却水を循環させる冷却水循環装置などを備えている場合もある。
【0015】
溶接部B1は、溶接電源装置A1から溶接電力を供給され、溶接を行うものである。溶接部B1は、一対のパワーケーブル71,72を介して、溶接電力が供給される。溶接部B1は、溶接トーチ81およびワイヤ送給装置82を備える。
【0016】
溶接トーチ81は、溶接電源装置A1から溶接電力を供給される。溶接トーチ81は、被加工物Wとの間にアークを発生させて溶接を行う。
【0017】
ワイヤ送給装置82は、溶接トーチ81にワイヤ電極を送り出すものである。ワイヤ送給装置82は、送給モータ(図示略)を備える。ワイヤ送給装置82は、この送給モータを制御して、ワイヤ電極の送り出しを行う。ワイヤ送給装置82は、動作するための電力(後述の第4動作電圧)が溶接電源装置A1から供給される。ワイヤ送給装置82は、溶接電源装置A1と通信を行っており、溶接電源装置A1からの制御信号に応じて送給モータを制御する。なお、溶接システムS1がティグ溶接などの非消耗電極式の溶接システムである場合は、ワイヤ電極を送給するためのワイヤ送給装置82は必要ない。
【0018】
溶接電源装置A1は、溶接部B1(溶接トーチ81)に溶接電力を供給する。また、溶接電源装置A1は、溶接の開始および停止に合わせてワイヤ電極の送給の開始および停止を行うように、ワイヤ送給装置82に送給モータの駆動を制御する指示を行う。また、溶接電源装置A1は、溶接条件などに応じてワイヤ電極の送給速度を調整するために、送給モータの回転速度を制御する指示を行う。図1に示すように、溶接電源装置A1は、溶接電源部1、制御電源部2、制御部3、複数の電力伝送線4、スイッチ部5、表示部61、操作部62、冷却部63、通信部64およびセンサ65を備える。
【0019】
溶接電源部1は、電力系統Kから入力される三相交流電力を直流の溶接電力に変換し、溶接部B1に出力する。溶接電源部1は、整流回路11、インバータ回路12、トランス13および整流回路14を備える。
【0020】
整流回路11は、電力系統Kから入力される交流電力を直流電力に変換(整流)する。インバータ回路12は、例えば単相フルブリッジ型のPWM制御インバータであり、複数のスイッチング素子を備える。インバータ回路12は、制御部3から入力される駆動信号によって各スイッチング素子をスイッチングさせることで、整流回路11から入力される直流電力を高周波電力に変換して出力する。インバータ回路12は、直流電力を高周波電力に変換するものであればよく、例えばハーフブリッジ型であってもよいし、その他の構成のインバータ回路であってもよい。トランス13は、インバータ回路12が出力する高周波電圧を変圧して、整流回路14に出力する。トランス13は、一次巻線および二次巻線を備える。一次巻線の各端子は、インバータ回路12の各出力端子にそれぞれ接続される。二次巻線の各端子は、整流回路14の各入力端子にそれぞれ接続される。インバータ回路12の出力電圧は、一次巻線と二次巻線の巻き数比に応じて変圧されて、整流回路14に入力される。二次巻線は一次巻線に対して絶縁されているので、溶接部B1と電力系統Kの混触を防止し、作業者を感電の危険性から守る。整流回路14は、トランス13から入力される高周波電力を直流電力に変換して出力する。整流回路14から出力される直流電力が、先述の溶接電力に相当する。
【0021】
制御電源部2は、電力系統Kから入力される交流電力を用いて、溶接システムS1(溶接電源装置A1および溶接部B1)の制御に必要な制御電力を生成する。本実施形態では、制御電源部2は、制御電力として、デジタル制御回路用の電源である第1動作電圧と、制御用リレー(図示しない)の電源である第2動作電圧と、アナログ制御回路用の電源である第3動作電圧と、ワイヤ送給装置82の電源である第4動作電圧とを生成する。第1ないし第4動作電圧の各電圧値は、互いに異なる。例えば、第1動作電圧は、5Vであり、第2動作電圧は、24Vであり、第3動作電圧は、±15Vであり、第4動作電圧は、48Vである。なお、制御電力は、少なくとも2つの動作電圧(例えば第1動作電圧および第2動作電圧)を含んでいればよく、例示された4つの動作電圧よりも少なくてもよいし、例示された4つの動作電圧よりも多くてもよい。制御電源部2は、生成した複数の動作電圧を、複数の電力伝送線4を介して、制御部3に出力する。図2は、制御電源部2の詳細な構成例を示している。図2に示すように、制御電源部2は、トランス20、第1電源21、第2電源22、第3電源23および第4電源24を含む。
【0022】
トランス20は、電力系統Kから入力される交流電圧を変圧する。トランス20は、一次巻線201および2つの二次巻線202を含む。一次巻線201の各端子は、電力系統Kに接続される。一方の二次巻線202の各端子は、第2電源22の各入力端子にそれぞれ接続される。他方の二次巻線202の各端子は、第4電源24の各入力端子にそれぞれ接続される。電力系統Kから入力される交流電圧は、一次巻線201と各二次巻線202との巻き数比に応じて変圧される。
【0023】
第2電源22は、二次巻線202から入力される交流電圧を用いて、第2動作電圧(例えば24V)を生成する。第1電源21は、第2電源22が生成した第2動作電圧を用いて第1動作電圧(例えば5V)を生成する。第3電源23は、第2電源22が生成した第2動作電圧を用いて第3動作電圧(例えば±15V)を生成する。第4電源24は、二次巻線202から入力される交流電圧を用いて、第4動作電圧(例えば48V)を生成する。
【0024】
複数の電力伝送線4は、制御電源部2が生成した複数の動作電圧をそれぞれ個別に伝送する。本実施形態では、複数の電力伝送線4は、第1電力線41、第2電力線42、第3電力線43および第4電力線44を含む。第1電力線41は、第1電源21に接続され、第1動作電圧を伝送する。第2電力線42は、第2電源22に接続され、第2動作電圧を伝送する。第3電力線43は、第3電源23に接続され、第3動作電圧を伝送する。第4電力線44は、第4電源24に接続され、第4動作電圧を伝送する。
【0025】
スイッチ部5は、複数の電力伝送線4のうちの第1電力線41以外の電力伝送線4(本実施形態では、第2ないし第4電力線42~44)に配置される。図示された例では、スイッチ部5は、複数のスイッチ51~53を含む。複数のスイッチ51~53はそれぞれ、例えば半導体スイッチ(例えばMOSFET)あるいはリレーである。スイッチ51は、第2電力線42に配置され、スイッチ52は、第3電力線43に配置され、スイッチ53は、第4電力線44に配置される。各スイッチ51~53のオンとオフとは、制御部3(後述のスイッチ制御部312)から入力される開閉信号により切り替わる。スイッチ部5は、各スイッチ51~53がオンである時に導通状態となり、各スイッチ51~53がオフである時に遮断状態となる。スイッチ部5が遮断状態である時(各スイッチ51~53がオフである時)、第2ないし第4電力線42~44の各伝送経路が遮断され、制御電源部2から第2ないし第4動作電圧の各供給が停止される。なお、図1および図2では、スイッチ部5の各スイッチ51~53は、オフである状態を示している。
【0026】
表示部61は、各種表示を行う。表示部61は、例えば液晶ディスプレイ、7セグメントディスプレイおよび表示灯などのいずれか1つ以上を含む。表示部61は、制御部3からの指令に応じた表示を行う。
【0027】
操作部62は、作業者によって操作されるものである。操作部62は、例えば機械式スイッチ(プッシュスイッチ、トグルスイッチおよびロータリエンコーダなど)およびタッチパッドなどのいずれか1つ以上を含む。作業者は、操作部62の操作により、溶接条件などを設定する。操作部62への操作は、制御部3により検出される。例えば、表示部61の少なくとも一部(例えば液晶ディスプレイ)と操作部62の少なくとも一部(タッチパッド)とで、タッチパネルが構成される。
【0028】
冷却部63は、溶接電源装置A1を冷却する。冷却部63は、例えば冷却ファンおよび水冷装置などのいずれか1つ以上を含む。冷却部63は、制御部3からの指令に応じて、動作する。
【0029】
通信部64は、溶接電源装置A1のI/O(Input/Output)インタフェースである。通信部64は、例えば通信モジュールを含んで構成される。通信部64は、有線通信を行うものであってもよいし、無線通信を行うものであってもよいし、有線通信および無線通信の両方を行うものであってもよい。図1に示す例では、通信部64は、ワイヤ送給装置82と通信を行う。
【0030】
センサ65は、溶接電源装置A1の各部の状態を検出する。センサ65は、例えば、サーミスタ、熱電対あるいは測温抵抗体などの、温度検出用素子を含む。この温度検出用素子は、溶接電源装置A1の内部温度に応じて、例えば抵抗値が変化する。また、センサ65は、例えば溶接電力を制御するための電圧検出用素子および電流検出用素子(例えばシャント抵抗)を含む。
【0031】
制御部3は、溶接システムS1(溶接電源装置A1および溶接部B1)における各制御を行う。制御部3は、集積回路(マイクロコントローラを含む)、能動素子(トランジスタ、ダイオード、リレーを含む)、受動素子(抵抗器、キャパシタ、インダクタを含む)などの電子部品により構成される。制御部3には、複数の電力伝送線4を介して、制御電源部2から制御電力(本実施形態では第1ないし第3動作電圧)が入力される。また、制御部3は、通常モードと省エネモードとの切り替えを行う。通常モードは、制御電源部2からの制御電力の供給を制限しないモードである。省エネモードは、制御電源部2からの制御電力の供給を制限するモードである。
【0032】
図1に示すように、制御部3は、複数の制御回路30を含む。複数の制御回路30はそれぞれ、先述の電子部品のうちの1つで構成されてもよいし、先述の電子部品のうちの2つ以上で構成されてもよい。また、複数の制御回路30の2つ以上が、先述の電子部品のうちの1つで構成されてもよい。複数の制御回路30には、複数の動作電圧のいずれかが入力される。複数の制御回路30はそれぞれ、入力される動作電圧により動作する。なお、各制御回路30は、入力される動作電圧から他の動作電圧(例えば12V、3.3V、1.8Vなど)を生成する構成を含んでいてもよい。図1に示すように、本実施形態では、複数の制御回路30は、第1動作電圧により動作する第1制御回路31、第2動作電圧により動作する第2制御回路32、および、第3動作電圧により動作する第3制御回路33を含む。この例と異なり、複数の制御回路30は、第4動作電圧により動作するものを含んでいてもよい。
【0033】
第1制御回路31は、第1電源21から第1動作電圧(例えば5V)を供給される。第1制御回路31は、例えばマイコン(マイクロコントローラ)を含んで構成される。第1制御回路31は、表示部61および操作部62の各制御を行う。当該制御には、表示部61および操作部62への第1動作電圧の供給制御が含まれる。また、第1制御回路31は、ワイヤ送給装置82の送給モータへの制御信号の生成、インバータ回路12の駆動信号の生成などを行う。例えば、第1制御回路31は、表示部61への表示を表示制御回路、操作部62の操作に応じた指示を行う操作制御回路、送給モータへの制御信号を生成する送給制御回路、および、インバータ回路12の駆動信号を生成するドライブ回路などを含む。これらの回路は、例えばマイコンのソフトウェアで構成される。
【0034】
第2制御回路32は、第2電源22から第2動作電圧(例えば24V)を供給される。第2制御回路32は、冷却部63および通信部64の各制御などを行う。当該制御には、冷却部63および通信部64への第2動作電圧の供給制御が含まれる。例えば、第2制御回路32は、冷却部63のオンオフを行う冷却制御回路、および、通信部64を介してワイヤ送給装置82と通信を行う通信制御回路などを含む。なお、ワイヤ送給装置82の送給モータの制御においては、第1制御回路31が、送給モータの制御信号を生成し、第2制御回路32(通信制御回路)が、通信部64を介してワイヤ送給装置82に、当該制御信号を送信する。これにより、ワイヤ送給装置82は、受信する送給モータの制御信号により送給モータを制御する。
【0035】
第3制御回路33は、第3電源23から第3動作電圧(例えば±15V)を供給される。第3制御回路33は、例えばアナログ回路を含んで構成される。第3制御回路33は、例えばセンサ65の検出制御などを行う。例えば、第3制御回路33は、センサ65の温度検出用素子の電気的な変化に応じて、周囲温度を検出する検出制御回路を含む。なお、冷却部63の制御においては、第3制御回路33(検出回路)が検出した周囲温度に応じて、第2制御回路32が、冷却部63を制御する。
【0036】
第1制御回路31は、通常モードと省エネモードとのモード切替を行うとともに、設定されるモードに応じてスイッチ部5のオンとオフとの切り替えを行う。図1に示すように、第1制御回路31は、モード切替部311およびスイッチ制御部312を含む。モード切替部311およびスイッチ制御部312は、先述のマイコンのソフトウェアで構成される。
【0037】
モード切替部311は、通常モードと省エネモードとのモード切替を行う。溶接電源装置A1では、通常モードと省エネモードとの2つのモードがあり、モード切替部311は、通常モードと省エネモードとのいずれかのモードを設定する。よって、省エネモードを設定することは、通常モードから省エネモードに切り替えることに相当し、通常モードを設定することは、省エネモードから通常モードに切り替えることに相当する。モード切替部311は、例えば次のような状態を判断して、通常モードあるいは省エネモードを設定する。モード切替部311は、溶接部B1に溶接電力を供給している間(溶接作業中)は、通常モードを設定する。モード切替部311は、通常モードにおいて、溶接電力の供給が停止されてから、操作部62への無操作の状態が一定時間経過すると、省エネモードを設定する。一定時間は、例えば溶接電源装置A1の内部温度が冷却されるまでの時間(所定温度以下となるまでの時間)を目安に設定される。このため、モード切替部311は、図示しない計時手段を有する。一定時間は、予め制御部3(モード切替部311)に設定される。なお、モード切替部311は、溶接電力の供給が停止されてから、操作部62の操作の有無に関わらず、一定時間経過した際に、省エネモードに切り替える構成であってもよい。モード切替部311は、省エネモードにおいて、操作部62に何らかの操作がされると、省エネモードから通常モードに切り替える。操作部62への何らかの操作は、通常モードへの復帰を指示する専用ボタンの操作であってもよいし、他の機能が割り当てられたボタンの操作であってもよい。なお、通常モードと省エネモードとの各設定条件は、上記した例に限定されない。例えば、モード切替部311は、省エネモードに切り替わってから、所定時間経過すると、通常モードに切り替えてもよい。この場合、通常モードにおいて、上記のように、無操作の状態が一定時間経過すると、再度省エネモードが設定される。
【0038】
スイッチ制御部312は、設定されるモード(通常モードであるか省エネモードであるか)に応じて、スイッチ部5の導通状態と遮断状態とを切り替える。スイッチ制御部312は、通常モードである時、スイッチ部5を導通状態にし、省エネモードである時、スイッチ部5を遮断状態にする。本実施形態では、スイッチ制御部312は、スイッチ部5の各スイッチ51~53に共通の開閉信号を入力する。このため、スイッチ部5は、複数のスイッチ51~53のすべてがオンとなる場合(通常モードの時)と、複数のスイッチ51~53のすべてがオフとなる場合(省エネモードの時)とで切り替わる。
【0039】
次に、溶接電源装置A1における通常モードと省エネモードとのモード切替処理の一例を、図3を参照して説明する。図3に示すモード切替処理は、溶接電源装置A1の主電源がオンである間、繰り返し行われる。図3の開始時点では、溶接電源装置A1には、通常モードが設定されているものとする。
【0040】
まず、モード切替部311は、前回の操作から一定時間経過したか否かを判定する(S101)。前回の操作は、例えば溶接トーチ81のトーチスイッチの操作、ワイヤ送給装置82(または溶接トーチ81)のインチングスイッチの操作、あるいは、操作部62の操作などのいずれであってもよい。モード切替部311は、ステップS101の判定を行うために、図示しない計時手段によりカウントを行う。この計時手段は、前回の操作に応じた制御が終了してからカウントしてもよいし、前回の操作が入力されてからカウントしてもよい。
【0041】
モード切替部311は、ステップS101の判定において、一定時間経過していないと判定した場合には(S101:NO)、一定時間経過するまで、ステップS101の判定を繰り返す。一方、一定時間経過したと判定した場合には(S101:YES)、省エネモードを設定し、通常モードから省エネモードに切り替える(S102)。そして、スイッチ制御部312は、各スイッチ51~53をオンからオフにして、スイッチ部5を導通状態から遮断状態に切り替える(S103)。これにより、制御電源部2から、第1動作電圧以外の動作電圧(第2ないし第4動作電圧)の出力が停止される。なお、省エネモード中は、消費電力の低下のため、第1制御回路31は、表示部61への電力供給を停止する。
【0042】
次いで、モード切替部311は、操作部62に何らかの操作がされたか否かを判定する(S104)。操作部62に何らかの操作がされると、この操作部62への操作が第1制御回路31によって検出されるので、モード切替部311は、操作部62に何らかの操作がされたか否かを判定することができる。なお、第1制御回路31は、省エネモード中に初めにされる操作について、当該操作に応じた制御を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0043】
モード切替部311は、ステップS104の判定において、操作されていないと判定した場合には(S104:NO)、省エネモードの状態を継続し、操作部62に何らかの操作がされるまで、ステップS104の判定を繰り返す。一方、操作されたと判定した場合には(S104:YES)、通常モードを設定して、省エネモードから通常モードに切り替える(S105)。そして、省エネモードから通常モードの切り替えに伴い、スイッチ制御部312は、各スイッチ51~53をオフからオンにして、スイッチ部5を遮断状態から導通状態に切り替える(S106)。これにより、制御電源部2から、複数の動作電圧の全て(第1ないし第4動作電圧の全て)の出力が再開される。そして、ステップS101の処理(判定)に戻る。
【0044】
上記溶接電源装置A1では、制御電源部2は、溶接電源装置A1の制御に必要な複数の動作電圧を生成する。そして、省エネモードにおいて、スイッチ部5が遮断状態となることで、複数の動作電圧のうちの第1動作電圧のみが出力される。本実施形態では、スイッチ部5を、複数の電力伝送線4のうち、第1電力線41以外の電力伝送線4(第2ないし第4電力線42~44)に配置し、第1電力線41には配置しないことで、スイッチ部5が遮断状態のときに、第1動作電圧のみが出力されるように構成される。この構成では、省エネモードにおいて、第1制御回路31の動作に必要な動作電圧(第1動作電圧)のみが、制御電源部2から出力され、その他の動作電圧(第2ないし第4動作電圧)は、制御電源部2から出力されない。したがって、溶接電源装置A1では、省エネモードである時、通常モードに復帰するために必要な動作電圧(第1動作電圧)以外の電力供給が遮断される。これにより、溶接電源装置A1は、省エネモードにおいて、特定の機能(例えば冷却あるいは通信)のみを停止する場合よりも、消費電力を抑制できる。つまり、溶接電源装置A1は、溶接作業を行わない待機時において、省電力化できる。
【0045】
上記溶接電源装置A1では、スイッチ部5は、第2ないし第4動作電圧の出力線(第2ないし第4電力線42~44)に配置される。また、第1制御回路31は、マイコンを含んで構成される。この構成によれば、スイッチ部5の設置と第1制御回路31のソフトウェア変更(モード切替部311およびスイッチ制御部312の追加)によって、省エネモードによる省電力化を実現できる。しがたって、溶接電源装置A1では、少ない仕様変更で、溶接作業を行わない待機時において、省電力化できる。
【0046】
上記溶接電源装置A1では、操作部62にされた操作は、第1制御回路31によって検出される。この構成によれば、省エネモードであっても、操作部62の操作を検出できる。これにより、溶接電源装置A1は、操作者の操作によって、省エネモードから通常モードに復帰させることができる。
【0047】
図4は、第2実施形態に係る溶接システムS2を示している。溶接システムS2は、溶接システムS1と比較して、次の点で異なる。第1に、溶接システムS2は、溶接電源装置A1の代わりに、溶接電源装置A2を備える。第2に、溶接システムS2は、外部装置C1、信号線68およびリレー69をさらに備える。
【0048】
信号線68は、外部装置C1と第1制御回路31との間に接続される。リレー69は、信号線68に接続されており、外部装置C1と第1制御回路31との間に配置される。信号線68は、リレー69と外部装置C1とを接続する接続線681、および、リレー69と第1制御回路31とを接続する接続線682を含む。リレー69は、図示しない接点を有し、当該接点は、接続線682に接続される。リレー69は、外部装置C1から接続線681に信号(後述の操作信号)が入力されると、先述の接点がオンとなり、接続線682に電流が流れ、第1制御回路31に信号(後述の復帰信号)を出力する。図示された例では、リレー69は、溶接電源装置A2の内部に設けられるが、溶接電源装置A2の外部に設けられてもよい。なお、溶接システムS2は、リレー69の代わりに、フォトカプラ、フォトトランジスタあるいは絶縁アンプを備えていてもよい。
【0049】
図4に示すように、溶接電源装置A2は、溶接電源装置A1と比較して、通信部64がさらに外部装置C1(後述のロボット制御装置92)と通信を行う点で異なる。
【0050】
外部装置C1は、例えば溶接ロボットシステムである。この例とは異なり、外部装置C1は、例えばサブマージアーク溶接を行うための自動機であってもよい。図4に示すように、外部装置C1は、溶接ロボット91、ロボット制御装置92および操作装置93を備える。溶接ロボット91は、特許請求の範囲に記載の「加工用ロボット」に相当する。外部装置C1の各部が動作するための電力は、溶接電源装置A1と異なる電源から得られる。
【0051】
溶接ロボット91は、溶接作業のために溶接トーチ81を自動的に移動させる。溶接ロボット91は、例えばフロア等にベース部材が固定され、ベース部材に複数のアームが順に軸を介して連結されている。溶接トーチ81は、複数のアームのうちの最も先端側のアームに取り付けられている。ベース部材および各アームに設けられた各サーボモータが、ロボット制御装置92からの駆動信号に応じてそれぞれ回転することで、溶接ロボット91は、溶接トーチ81を移動させる。
【0052】
ロボット制御装置92は、溶接ロボット91を制御する。ロボット制御装置92は、予め教示されて記憶した位置情報に基づいて、溶接ロボット91に駆動信号を出力し、ロボット制御装置92の各サーボモータを回転駆動させる。これにより、ロボット制御装置92は、溶接トーチ81を移動させる。また、ロボット制御装置92は、溶接電源装置A1も制御する。図4に示すように、ロボット制御装置92は、制御部921および通信部922を含む。
【0053】
制御部921は、ロボット制御装置92の制御を行う。制御部921は、例えばマイクロコントローラなどによって実現される。制御部921は、図示しない記憶部に記憶された動作情報に基づいて、溶接ロボット91を制御する。動作情報は、例えば操作装置93により入力される。
【0054】
通信部922は、溶接電源装置A1(通信部64)と通信を行う。通信部922と溶接電源装置A1(通信部64)との通信方法は、有線通信であっても無線通信であってもよい。通信部922は、制御部921から入力される信号を変調して、通信信号として溶接電源装置A1(通信部64)に送信する。また、通信部922は、溶接電源装置A1(通信部64)から受信した通信信号を復調して、制御部921に出力する。
【0055】
操作装置93は、ロボット制御装置92に接続されている。操作装置93とロボット制御装置92とは、無線接続されていてもよいし、有線接続されていてもよい。操作装置93は、ロボット制御装置92を操作するためのものであり、溶接ロボット91の動作を教示するために用いられる。なお、操作装置93は、溶接ロボット91の動作を教示するだけでなく、溶接条件を教示してもよい。例えば、操作装置93はティーチングペンダントである。操作装置93は、例えば表示部および操作部を備える。表示部は、各種表示を行うものであり、例えば液晶ディスプレイ、7セグメントディスプレイおよび表示灯などのいずれか1つ以上を含む。操作部は、作業者によって操作されるものであり、例えばタッチパッドおよび操作ボタンのいずれか1つ以上を含む。操作部は、表示部に表示されたメニュー画面を選択したり、溶接作業を開始させたり、数値を入力するために用いられる。操作装置93の操作情報は、ロボット制御装置92に伝送される。
【0056】
本実施形態では、ロボット制御装置92は、操作装置93から操作情報を伝送されると、接続線681を介して、リレー69に操作信号を出力する。リレー69に操作信号が入力されると、リレー69の接点がオンとなり、復帰信号が、リレー69から、接続線682を介して、第1制御回路31に出力される。つまり、外部装置C1は、操作装置93の操作に応じて、信号線68およびリレー69を介して、第1制御回路31に復帰信号を出力する。これにより、第1制御回路31は、外部装置C1の操作を検出して、省エネモードから通常モードに切り替える。
【0057】
溶接電源装置A2の制御部3においては、先述の通り、第1制御回路31は、通信部64を介しては、外部装置C1(通信部922)と通信する。例えば、第1制御回路31は、通信部64を介して、ロボット制御装置92から溶接ロボット91の動作状況を受信する。そして、第1制御回路31は、受信する溶接ロボット91の動作状況に応じて、溶接電力の供給を行い、且つ、溶接ワイヤの送給を制御する。このように通信部64が外部装置C1と通信を行う構成では、省エネモードが設定されている間、外部装置C1と溶接電源装置A2との通信は、遮断される。これは、省エネモードにおいて、スイッチ部5(スイッチ52)がオフとなり、通信部64への第2動作電圧の供給が遮断されるからである。
【0058】
次に、溶接電源装置A2における通常モードと省エネモードとのモード切替処理の一例を、図5を参照して説明する。図5に示すモード切替処理は、溶接電源装置A2の主電源がオンである間、繰り返し行われる。図5の開始時点では、溶接電源装置A2には、通常モードが設定されているものとする。なお、図5において、図3に示す各処理と同一あるいは類似の処理には、同じ符号を付す。
【0059】
まず、溶接電源装置A2のモード切替部311は、溶接電源装置A1のモード切替部311と同様に、ステップS101~S103の各処理を行う。なお、溶接システムS2のステップS101においては、前回の操作として、操作装置93の操作をさらに含む。通常モードにおいて、操作装置93が操作されると、操作装置93からロボット制御装置92に操作情報が伝送され、当該操作情報に応じて、ロボット制御装置92から溶接電源装置A2(通信部64)に操作指示信号が送信される。よって、溶接電源装置A2は、受信する操作指示信号により、操作装置93の操作に応じた制御を行う。
【0060】
次いで、溶接電源装置A2のモード切替部311は、溶接電源装置A1のモード切替部311と同様に、ステップS104の判定(操作部62に何らかの操作がされたか否かの判定)を行う。モード切替部311は、ステップS104の判定において、操作されたと判定した場合には(S104:YES)、溶接電源装置A1のモード切替部311と同様に、ステップS105、S106の各処理(省エネモードから通常モードへの切り替えおよびスイッチ部5のオフからオンへの切り替え)を行う。一方、操作されていないと判定した場合には(S104:NO)、モード切替部311は、続いて、復帰信号が入力されたか否かを判定する(S201)。復帰信号は、操作装置93の操作が行われて、リレー69の接点がオンとなることで、モード切替部311に入力される。つまり、外部装置C1の操作装置93の操作が行われた場合に、モード切替部311に復帰信号が入力される。
【0061】
モード切替部311は、ステップS201の判定において、復帰信号が入力されていないと判定した場合には(S201:NO)、省エネモードの状態を継続して、ステップS104の判定に戻る。一方、復帰信号が入力されたと判定した場合には(S201:YES)、溶接電源装置A1のモード切替部311と同様に、ステップS105、S106の各処理(省エネモードから通常モードへの切り替えおよびスイッチ部5の遮断状態から導通状態への切り替え)を行う。よって、溶接電源装置A2においては、モード切替部311は、操作部62に何らかの操作がされるか、操作装置93に何らかの操作がされるまで、省エネモードを継続する。
【0062】
上記溶接電源装置A2では、溶接電源装置A1と同様に、制御電源部2は、溶接電源装置A1の制御に必要な複数の動作電圧を生成する。そして、省エネモードにおいて、スイッチ部5が遮断状態となることで、複数の動作電圧のうちの第1動作電圧のみが出力される。したがって、溶接電源装置A2では、溶接電源装置A1と同様に、省エネモードである時、通常モードに復帰するために必要な動作電圧(第1動作電圧)以外の電力供給が遮断される。つまり、溶接電源装置A2は、溶接作業を行わない待機時において、省電力化できる。
【0063】
上記溶接システムS2は、信号線68およびリレー69を備える。リレー69は、外部装置C1と第1制御回路31との間に接続される。リレー69は、外部装置C1(操作装置93)での操作に応じて操作信号が入力され、入力される操作信号に応じて復帰信号を出力する。そして、第1制御回路31のモード切替部311は、復帰信号が入力されると、省エネモードから通常モードに切り替える。溶接電源装置A2では、省エネモードにおいて、待機時の消費電力抑制のために、第2動作電圧の供給を停止する。この構成では、省エネモードが設定されている間、通信部64への電力供給が停止するため、制御部3は、外部装置C1(操作装置93)が操作されたか否かを判定することができない。そこで、溶接システムS2では、先述の信号線68およびリレー69を用いて、制御部3(第1制御回路31)が、外部装置C1(操作装置93)の操作の有無を検出できるようにした。したがって、溶接電源装置A2は、通信部64を介して外部装置C1と通信できない状態であっても、外部装置C1での操作によって、省エネモードから通常モードに復帰させることができる。これにより、溶接電源装置A2が外部装置C1から離れた場所に配置されている場合において、溶接電源装置A2の操作部62まで移動して操作する必要がない。
【0064】
第2実施形態では、信号線68にリレー69を接続した例を示したが、当該リレー69がなくてもよい。リレー69がない構成では、例えば、信号線68を、第1制御回路31(マイコン)の入力ポートに接続し、当該入力ポートに、外部装置C1から信号線68を介して復帰信号が入力されるようにすればよい。この例においても、外部装置C1での操作により、省エネモードから通常モードに復帰させることができる。
【0065】
第1および第2実施形態では、モード切替部311は、通常モードにおいて無操作時間が一定時間継続した場合に、省エネモードに切り替わる例を示したが、省エネモードへの移行条件は、これに限定されない。例えば、モード切替部311は、溶接作業後に、溶接電源装置A1の内部温度が閾値以下となった時に、通常モードから省エネモードに切り替えてもよい。溶接電源装置A1の内部温度は、先述の通り、温度検出用素子が接続された第3制御回路33によって検出される。
【0066】
第1および第2実施形態において、制御電源部2の構成は、図2に示す例に限定されず、例えば、図6に示す各構成であってもよい。図6(a)に示す例では、トランス20は、第1ないし第4電源21~24に対して、それぞれ個別に二次巻線202を含んでいる。そして、第1ないし第4電源21~24はそれぞれ、対応する二次巻線202から入力される交流電圧を用いて、第1ないし第4動作電圧をそれぞれ生成する。図6(b)に示す例では、スイッチ部5の複数のスイッチ51~53は、第2ないし第4電源22~24の入力側にそれぞれ配置されている。図6(b)に示す例では、スイッチ部5が遮断状態の時(スイッチ51~53がオフの時)、第2ないし第4電源22~24の待機電力も抑制できる。つまり、図6(b)に示す構成を採用することで、溶接作業を行わない待機時において、さらに、消費電力を抑制することができる。
【0067】
第1および第2実施形態においては、本開示の電源装置をアークなどの熱を利用して溶接を行う溶接システムに用いた例を示したが、この例とは異なり、トーチの先端に発生させたアークによって被加工物Wを切断するアーク切断システムや、被加工物Wに溝彫りを行うアークガウジングシステムなどにも用いることができる。また、本開示の電源装置は、アークによる熱加工に限定されず、ガス溶接や抵抗溶接などの加工を行う加工システムにも用いることができる。
【0068】
本開示に係る電源装置および加工システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電源装置および加工システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0069】
A1,A2:溶接電源装置(電源装置)、B1:溶接部(加工部)、C1:外部装置、S1,S2:溶接システム(加工システム)、1:溶接電源部、11:整流回路、12:インバータ回路、13:トランス、14:整流回路、2:制御電源部、20:トランス、201:一次巻線、202:二次巻線、21:第1電源、22:第2電源、23:第3電源、24:第4電源、3:制御部、30:制御回路、31:第1制御回路、311:モード切替部、312:スイッチ制御部、32:第2制御回路(通信制御回路)、33:第3制御回路(検出制御回路)、4:電力伝送線、41:第1電力線、42:第2電力線、43:第3電力線、44:第4電力線、5:スイッチ部、51~53:スイッチ、61:表示部、62:操作部、63:冷却部、64:通信部、65:センサ(温度検出用素子)、68:信号線、681,682:接続線、69:リレー、71,72:パワーケーブル、81:溶接トーチ、82:ワイヤ送給装置、91:溶接ロボット(加工用ロボット)、92:ロボット制御装置、921:制御部、922:通信部、93:操作装置、K:電力系統、W:被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6