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特開2024-99189実態評価通知装置、実態評価通知システム、申告装置および通知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099189
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】実態評価通知装置、実態評価通知システム、申告装置および通知方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/64 20180101AFI20240718BHJP
   F24F 11/50 20180101ALI20240718BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20240718BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240718BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240718BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20240718BHJP
   F24F 110/30 20180101ALN20240718BHJP
   F24F 120/20 20180101ALN20240718BHJP
   F24F 120/00 20180101ALN20240718BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/50
F24F11/70
G06N20/00
F24F110:10
F24F110:20
F24F110:30
F24F120:20
F24F120:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002944
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 眞由美
(72)【発明者】
【氏名】小谷 俊太郎
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AA04
3L260BA01
3L260BA75
3L260CA01
3L260CA08
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA15
3L260EA02
3L260EA04
3L260EA28
3L260GA11
(57)【要約】
【課題】居住者の環境感の実態に合った評価を行うために、より有効な申告情報を収集できるように改善する。
【解決手段】実態評価通知装置1は、居住者の周囲環境に関する環境情報を取得する居住環境情報取得部10と、環境情報または環境情報から算出される温熱快適性指標と居住者の温冷感を示す実態評価値との関係をモデル化した温冷感モデルを予め記憶する学習済モデル保持部11と、温冷感モデルを用いて、環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出する実態評価演算部12と、実態評価演算部12によって算出された実態評価値を居住者に通知する実態評価通知指示部13とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住者の周囲環境に関する環境情報を取得するように構成された居住環境情報取得部と、
前記環境情報または前記環境情報から算出される環境快適性指標と居住者の環境感を示す実態評価値との関係をモデル化した環境感モデルを予め記憶するように構成された学習済モデル保持部と、
前記環境感モデルを用いて、前記環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出するように構成された実態評価演算部と、
前記実態評価演算部によって算出された実態評価値を居住者に通知するように構成された実態評価通知指示部とを備えることを特徴とする実態評価通知装置。
【請求項2】
請求項1記載の実態評価通知装置において、
前記環境情報と居住者からの環境感の申告情報とに基づいて前記環境感モデルを生成・更新するように構成されたモデル生成部をさらに備えることを特徴とする実態評価通知装置。
【請求項3】
請求項2記載の実態評価通知装置において、
前記モデル生成部は、
前記申告情報と、前記申告情報を取得したタイミングに最も近い時刻の前記環境情報とを関連付けて統合データを生成するように構成されたデータ統合部と、
前記統合データを蓄積するように構成されたデータ保持部と、
前記データ保持部に蓄積された統合データが前記環境感モデルを構築する所定の条件を満たしているときに前記統合データから学習データを抽出するように構成されたモデル構築判定部と、
前記学習データに基づいて前記環境感モデルを生成して前記学習済モデル保持部に格納するように構成されたモデル生成処理部とを備えることを特徴とする実態評価通知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の実態評価通知装置と、
居住者が環境感を申告するための申告装置とを備え、
前記申告装置は、
居住者からの環境感の申告情報に基づいて機器の制御を行う外部のシステムに、取得した前記申告情報を送信するように構成された申告取得部と、
前記実態評価通知指示部から送信された実態評価値を居住者に通知するように構成された実態評価値通知部とを備えることを特徴とする実態評価通知システム。
【請求項5】
請求項4記載の実態評価通知システムにおいて、
前記実態評価値通知部は、居住者が前記申告情報を入力するための申告入力画面を通じて居住者に前記実態評価値を通知することを特徴とする実態評価通知システム。
【請求項6】
請求項4記載の実態評価通知システムにおいて、
前記実態評価値通知部は、発光素子の点灯、振動または音によって居住者に前記実態評価値を通知することを特徴とする実態評価通知システム。
【請求項7】
居住者の周囲環境に関する環境情報を取得するように構成された居住環境情報取得部と、
前記環境情報または前記環境情報から算出される環境快適性指標と居住者の環境感を示す実態評価値との関係をモデル化した環境感モデルを予め記憶するように構成された学習済モデル保持部と、
前記環境感モデルを用いて、前記環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出するように構成された実態評価演算部と、
前記実態評価演算部によって算出された実態評価値を居住者に通知するように構成された実態評価通知指示部と、
居住者からの環境感の申告情報に基づいて機器の制御を行う外部のシステムに、取得した前記申告情報を送信するように構成された申告取得部とを備えることを特徴とする申告装置。
【請求項8】
請求項7記載の申告装置において、
前記申告情報と、前記申告情報を取得したタイミングに最も近い時刻の前記環境情報とを関連付けて統合データを生成するように構成されたデータ統合部と、
前記統合データを蓄積するように構成されたデータ保持部とをさらに備え、
前記統合データに基づいて前記環境感モデルを生成する外部のモデル生成装置によって生成された前記環境感モデルが前記学習済モデル保持部に格納されることを特徴とする申告装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の申告装置において、
居住者が前記申告情報を入力するための申告入力画面を通じて居住者に前記実態評価値を通知するように構成された実態評価値通知部をさらに備えることを特徴とする申告装置。
【請求項10】
請求項7または8記載の申告装置において、
発光素子の点灯、振動または音によって居住者に前記実態評価値を通知するように構成された実態評価値通知部をさらに備えることを特徴とする申告装置。
【請求項11】
居住者の周囲環境に関する環境情報を取得する第1のステップと、
前記環境情報または前記環境情報から算出される環境快適性指標と居住者の環境感を示す実態評価値との関係をモデル化した環境感モデルを用いて、前記環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出する第2のステップと、
前記第2のステップで算出した実態評価値を居住者に通知する第3のステップとを含むことを特徴とする実態評価通知方法。
【請求項12】
請求項11記載の実態評価通知方法において、
前記環境情報と居住者からの環境感の申告情報とに基づいて前記環境感モデルを生成・更新する第4のステップをさらに含むことを特徴とする実態評価通知方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の実態評価通知方法において、
前記第3のステップは、居住者が環境感を申告するための申告装置を通じて前記実態評価値を居住者に通知するステップを含むことを特徴とする実態評価通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住者の環境感の推定に効果的なデータ収集の改善が期待できる実態評価通知装置、実態評価通知システム、申告装置および通知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
居住者の温冷感申告に応じて空調制御を行う申告型空調制御システムの例を図17に示す。図17に示すように、対象とする2つの空調ゾーンA,Bにそれぞれ居住者2名が在席する申告型空調制御システムの例で説明する。申告型空調制御システムについては、例えば非特許文献1、2に開示されている。
【0003】
図17において、100は居住者、A,Bは空調ゾーン(居住者の在席空間)、101は温冷感申告を受ける建物管理装置、102-A,102-Bは空調ゾーンA,Bの温度と湿度とを計測する温湿度センサ、103-A,103-Bは空調ゾーンA,B毎に設けられた室内機、104-A,104-Bは空調ゾーンA,B毎に設けられた室外機、105-A,105-Bは空調ゾーンA,B毎に設けられた空調制御装置である。
【0004】
空調制御装置105-A,105-Bは、それぞれ温湿度センサ102-A,102-Bによって計測された温度が室温設定値と一致し、温湿度センサ102-A,102-Bによって計測された湿度が湿度設定値と一致するように空調機器(室内機103-A,103-Bおよび室外機104-A,104-B)を空調ゾーンA,B毎に制御する。
【0005】
空調や照明などの室内の環境制御は、居住者の快適性や生産性を過度に犠牲にしないウェルネス環境に配慮しながら設備管理者により運用されている。室内の温熱環境を制御する空調の運用では、例えば、快適性指標であるPMV(Predicted Mean Vote)や、PMVを用いて計算される不満足者率PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied)などの評価結果を利用しながら運用を行う。設備管理者は、建物管理装置101を用いて空調制御装置105-A,105-Bに対して運転指令を発する。
【0006】
PMV、PPDはISO-7730で国際規格化された指標である。PMVは-3から+3の間の数値で定義され、PPDはPMVに対応する温熱環境の不満足者率を示す。PMVおよびPPDと居住者の温冷感の感じ方(言語表現や数値表現)との対応関係は国際標準では図18のように定義されている。PMVは、人の周囲環境のパラメータである空気温度と相対湿度と平均放射温度と風速の4要素、および人体側のパラメータである代謝量と着衣量の2要素の計6つのパラメータによって計算される。PMVと同様に利用される温熱環境の評価指標としては、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)の標準に定められているSET(Standard new Effective Temperature)などがある。
【0007】
国際規格化された指標は、大人数を前提とした統計処理による平均的な指標であり、個々人の居住者の感じ方とは必ずしも一致しない。よって、暑い/寒いなどの居住者の温冷感を申告する申告情報を取得し、取得した申告情報と、申告情報発生時の居住環境情報(温度等)との関係を学習した学習済みモデルを構築して、居住者の温冷感の実態に合った快適性や不満足者の評価を行う方法が提案されている(特許文献1、2)。また、居住者の感じ方の実態に合った評価に近づけるために、申告数が少ない場合には居住者に温冷感申告を督促して申告数を増やす方法が提案されている(特許文献3)。
【0008】
地球温暖化防止やカーボンニュートラルなどへのニーズ増大により、徹底的な省エネルギー余地の抽出が求められており、個々人の温冷感をより精度良く把握する居住環境評価が必要とされている。しかしながら、特許文献1~3に開示された方法では、居住者の温冷感の推定精度が不十分であり、居住者の温冷感の実態により近くなるようにモデルを補正することが常に求められている。さらにこのことについては、温冷感に限らず明暗感などの環境感についても求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05-322258号公報
【特許文献2】特開2019-100657号公報
【特許文献3】特開2016-223704号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】立岩一真,村澤達,“次世代空調システムに向けた「8つのトライ」 -クラウドを利用した温冷感申告型空調システムの検討-”,空気調和・衛生工学会学術講演論文集III,pp.37-40,2016年9月
【非特許文献2】大曲康仁他,“温冷感申告対応空調システムの実証試験”,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,pp.41-44,2016年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、居住者の環境感の実態に合った評価を行うために、より有効な申告情報を収集できるように改善することができる実態評価通知装置、実態評価通知システム、申告装置および通知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実態評価通知装置は、居住者の周囲環境に関する環境情報を取得するように構成された居住環境情報取得部と、前記環境情報または前記環境情報から算出される環境快適性指標と居住者の環境感を示す実態評価値との関係をモデル化した環境感モデルを予め記憶するように構成された学習済モデル保持部と、前記環境感モデルを用いて、前記環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出するように構成された実態評価演算部と、前記実態評価演算部によって算出された実態評価値を居住者に通知するように構成された実態評価通知指示部とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の実態評価通知装置の1構成例は、前記環境情報と居住者からの環境感の申告情報とに基づいて前記環境感モデルを生成・更新するように構成されたモデル生成部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の実態評価通知装置の1構成例において、前記モデル生成部は、前記申告情報と、前記申告情報を取得したタイミングに最も近い時刻の前記環境情報とを関連付けて統合データを生成するように構成されたデータ統合部と、前記統合データを蓄積するように構成されたデータ保持部と、前記データ保持部に蓄積された統合データが前記環境感モデルを構築する所定の条件を満たしているときに前記統合データから学習データを抽出するように構成されたモデル構築判定部と、前記学習データに基づいて前記環境感モデルを生成して前記学習済モデル保持部に格納するように構成されたモデル生成処理部とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の実態評価通知システムは、前記実態評価通知装置と、居住者が環境感を申告するための申告装置とを備え、前記申告装置は、居住者からの環境感の申告情報に基づいて機器の制御を行う外部のシステムに、取得した前記申告情報を送信するように構成された申告取得部と、前記実態評価通知指示部から送信された実態評価値を居住者に通知するように構成された実態評価値通知部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の実態評価通知システムの1構成例において、前記実態評価値通知部は、居住者が前記申告情報を入力するための申告入力画面を通じて居住者に前記実態評価値を通知することを特徴とするものである。
また、本発明の実態評価通知システムの1構成例において、前記実態評価値通知部は、発光素子の点灯、振動または音によって居住者に前記実態評価値を通知することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の申告装置は、居住者の周囲環境に関する環境情報を取得するように構成された居住環境情報取得部と、前記環境情報または前記環境情報から算出される環境快適性指標と居住者の環境感を示す実態評価値との関係をモデル化した環境感モデルを予め記憶するように構成された学習済モデル保持部と、前記環境感モデルを用いて、前記環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出するように構成された実態評価演算部と、前記実態評価演算部によって算出された実態評価値を居住者に通知するように構成された実態評価通知指示部と、居住者からの環境感の申告情報に基づいて機器の制御を行う外部のシステムに、取得した前記申告情報を送信するように構成された申告取得部とを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の申告装置の1構成例は、前記申告情報と、前記申告情報を取得したタイミングに最も近い時刻の前記環境情報とを関連付けて統合データを生成するように構成されたデータ統合部と、前記統合データを蓄積するように構成されたデータ保持部とをさらに備え、前記統合データに基づいて前記環境感モデルを生成する外部のモデル生成装置によって生成された前記環境感モデルが前記学習済モデル保持部に格納されることを特徴とするものである。
また、本発明の申告装置の1構成例は、居住者が前記申告情報を入力するための申告入力画面を通じて居住者に前記実態評価値を通知するように構成された実態評価値通知部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の申告装置の1構成例は、発光素子の点灯、振動または音によって居住者に前記実態評価値を通知するように構成された実態評価値通知部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の実態評価通知方法は、居住者の周囲環境に関する環境情報を取得する第1のステップと、前記環境情報または前記環境情報から算出される環境快適性指標と居住者の環境感を示す実態評価値との関係をモデル化した環境感モデルを用いて、前記環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出する第2のステップと、前記第2のステップで算出した実態評価値を居住者に通知する第3のステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の実態評価通知方法の1構成例は、前記環境情報と居住者からの環境感の申告情報とに基づいて前記環境感モデルを生成・更新する第4のステップをさらに含むことを特徴とするものである。
また、本発明の実態評価通知方法の1構成例において、前記第3のステップは、居住者が環境感を申告するための申告装置を通じて前記実態評価値を居住者に通知するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、環境感モデルを使用して推定した、居住者の環境感を示す実態評価値を居住者に通知することにより、実態評価値と居住者の環境感との乖離が大きい場合に居住者の申告行動が促進されることが期待でき、環境感モデルの補正に有効なデータを取得し易くなることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る実態評価通知装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る実態評価通知装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、温熱快適性指標と実態評価値との相関関係の1例を示す図である。
図4図4は、機械学習した温冷感モデルにより、温度と湿度の環境情報から実態評価値を推定した結果の1例を示す図である。
図5図5は、従来の申告装置の入力画面の例を示す図である。
図6図6は、図5の申告装置の構成を示すブロック図である。
図7図7は、従来の申告装置の別の構成例を示す外観図である。
図8図8は、図7の申告装置の構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第2の実施例に係る申告装置の構成を示すブロック図である。
図10図10は、本発明の第2の実施例に係る申告装置による実態評価値の表示例を示す図である。
図11図11は、本発明の第2の実施例に係る申告装置の別の構成を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の第3の実施例に係る実態評価通知システムの構成を示すブロック図である。
図13図13は、本発明の第3の実施例に係るモデル生成部の動作を説明するフローチャートである。
図14図14は、本発明の第4の実施例に係る申告装置の構成を示すブロック図である。
図15図15は、本発明の第4の実施例に係る申告装置の外観図である。
図16図16は、本発明の第1~第4の実施例に係る実態評価通知装置、申告装置、モデル生成装置、通知機器を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図17図17は、従来の申告型空調制御システムの構成を示すブロック図である。
図18図18は、PMVとPPDと温冷感の対応を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の原理]
上記のように、居住者の温冷感の実態に近づけるための評価方法としては、実際に収集された居住者の温冷感などの環境感の申告情報と、申告情報発生時の室内環境(温度や湿度、照度等の環境要素の値、あるいは、作用温度、PMVなど複数の環境要素の複合量)との関係を学習して学習済みの環境感モデルを構築する方法が一般的である。特許文献1、2に開示された方法では、PMVやPPDを基本関数として、実際に収集したデータでこの基本関数を補正してモデルを構築するが、同様のデータを用いてAI(Artificial Intelligence)技術によりモデルを構築する手法もある。
【0021】
ここで、モデルの構築に利用する申告情報と室内環境情報との収集を行う建物では、季節や天候など建物外環境が刻々と変化する中で、居住者が不快にならないよう配慮しながら設備管理者が運用している点に留意する必要がある。つまり、このような運用下で、室内環境要素(例えば、温度、湿度、照度等)を広い幅で意図的かつ網羅的に変化させて居住者の申告を収集することは困難である。
【0022】
したがって、時系列で不規則に追加される居住者からの申告情報をモデルの補正データとして適宜使用し、モデルの更新を繰り返すことで、評価結果をより居住者の実態に近付けるのが現実的である。このとき、モデルを居住者の実態に近付けるために効果が高いのは、補正に使用するデータ数が多いことよりもむしろ、モデルの評価結果と実態との乖離が大きい室内環境領域での申告情報の取得であるという点に、発明者は着眼した。
【0023】
また、モデルの評価結果は、室温等の設定値の変更操作を行う設備管理者やオペレータが参照したり、設定値を自動で決定するアルゴリズムの演算過程で利用されたりするなど、実際に申告を行う居住者がこの評価結果を認識する機会が少ないのが一般的である。しかしながら、モデルの評価結果の妥当性を判定できるのは居住者自身であり、設備管理者やオペレータが判定することは困難である。
【0024】
室内環境が不快となる要因は、モデルと居住者の温冷感との乖離が大きい(学習済みモデルの妥当性が低い)、という要因以外に、設備側の要因、例えば設定値を決定する演算手法が不適切であったり、空調の制御性(設定値への追従性など)が悪かったりするなど、様々な要因が考えられる。設備管理者は、居住者の不快感などを解消するために、設備側の要因をひとつひとつ確認し、改善することができる。しかしながら、モデルの評価結果と実態とが異なることが主要因である場合には、設備管理者の行為がすべて無駄になってしまうこともあり得る。
【0025】
そこで、発明者は、モデルの評価結果(以下、実態評価値と記述)を居住者が認識し易くすることで、評価結果が実態と異なる場合の居住者の気づきを促進することに想到した。これにより、モデルの評価結果と居住者の環境感との乖離が大きい場合の申告行動が促進され、このような室内環境領域の申告情報、つまりはモデルの補正に、より有効なデータが取得し易くなる。
【0026】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。居住者の環境感としては、代表的なものとして、温熱環境に関する温冷感、満足感、光環境に関する明暗感、光の色温度に対する色温度感などがあるが、本実施例では温冷感の事例で説明する。 図1は本発明の第1の実施例に係る実態評価通知装置の構成を示すブロック図である。実態評価通知装置1は、居住環境情報取得部10と、学習済モデル保持部11と、実態評価演算部12と、実態評価通知指示部13とを備えている。
【0027】
図2は実態評価通知装置1の動作を説明するフローチャートである。居住環境情報取得部10は、居住者の居住空間に設置されたセンサによって居住者の周囲環境に関する環境情報を取得して保持し(図2ステップS100)、実態評価演算部12に環境情報を定期的に送信するか、または実態評価演算部12からの要求に応じて送信する(図2ステップS101)。
【0028】
環境情報は、実態評価演算部12の演算処理において必要とされる環境計測値である。環境情報の種類や、使用するセンサ、計測周期、実態評価演算部12への送信周期、送信前の環境情報に対するデータ処理の内容等が、予めサービスプロバイダや設備管理者によって設定されている。
【0029】
例えば、実態評価演算部12の演算処理過程で周囲環境のPMVを演算する場合、周囲環境の物理量として空気温度、相対湿度、風速、平均放射温度が必要となる。このため、居住環境情報取得部10は、空気温度と、相対湿度と、風速を取得すると共に、平均放射温度の演算に必要な計測値であるグローブ温度を取得する。取得する環境情報は、計4種類である。着衣量と代謝量については一般的な代表値を使用すればよい。また、風速と平均放射温度の値として予め定められた固定値を用いる場合は、居住環境情報取得部10で取得する環境情報は空気温度と相対湿度の計2種類である。
【0030】
計測周期と実態評価演算部12へのデータの送信周期とは一致していなくてもよい。例えば計測周期を2分、データの送信周期を10分とし、10分間に5回計測した値の平均値を10分おきに送信してもよい。この場合は、5回の計測値の平均値を演算する処理が送信前のデータ処理として登録されている。計測周期と送信周期とを同一の値とし、計測値をそのまま送信する場合には、送信前のデータ処理は不要である。
【0031】
学習済モデル保持部11には、環境情報または環境情報から算出される温熱快適性指標(環境快適性指標)と、居住者の温冷感(環境感)を示す実態評価値との関係をモデル化した温冷感モデル(環境感モデル)が予め記憶されている。
【0032】
例えば特許文献1、2には、環境情報から算出されるPMVやPPD等の温熱快適性指標と環境情報を取得したときに居住者が感じた温冷感申告情報とに基づいて、温冷感モデルの基本関数式の定数を補正して温冷感モデルを構築する技術が開示されている。このようにして構築された温冷感モデルは、温熱快適性指標を入力として、居住者の温冷感を示す実態評価値(実態温冷感、実態不満足度など)を推定可能なモデルとなる。
【0033】
また、温冷感モデルには、例えば図3に示すように、温熱快適性指標(PMV)を実態評価値EVrに変換する関数式T(PMV)をモデルの数式とするものもある。図3の例では、実態評価値EVrが高い値になるほど居住者が暑く感じ、実態評価値EVrが低い値になるほど居住者が寒く感じることを示している。EVr=PMVのラインよりも実態評価値EVrが高い値になるほど居住者は標準のPMVでの感じ方より暑く感じ、EVr=PMVのラインよりも実態評価値EVrが低い値になるほど居住者は標準のPMVの感じ方より寒く感じることを示している。
【0034】
また、環境情報または環境情報から算出される温熱快適性指標と、環境情報を取得したときに居住者が感じた温冷感申告情報とを学習データとして、環境情報または温熱快適性指標と、実態評価値との関係を機械学習した温冷感モデルもある。図4は、機械学習した温冷感モデルにより、温度と湿度の環境情報から実態評価値を推定した結果の1例を示す図である。図4の例では、400は暑いという推定結果が得られたことを示し、401は快適という推定結果が得られたことを示し、402は寒いという推定結果が得られたことを示している。
【0035】
実態評価演算部12は、居住環境情報取得部10から環境情報を取得し、学習済モデル保持部11に記憶された学習済の温冷感モデルを用いて、環境情報に対応する居住者の実態評価値を算出する(図2ステップS102)。実態評価演算部12は、温冷感モデルの入力として、温熱快適性指標が必要な場合には、環境情報から温熱快適性指標を算出して温冷感モデルに入力する。実態評価演算部12は、算出した実態評価値を実態評価通知指示部13に送信する(図2ステップS103)。
【0036】
実態評価通知指示部13は、実態評価演算部12から受信した実態評価値を居住者に通知するための通知指示情報を生成する(図2ステップS104)。実態評価通知指示部13は、居住者への通知を行う通知機器14に通知指示情報を送信する(図2ステップS105)。
【0037】
通知機器14は、受信した通知指示情報に従って居住者へ実態評価値を通知する(図2ステップS106)。通知の形式や、通知に必要なパラメータ、パラメータ決定方法等が、サービスプロバイダや設備管理者によって予め設定されている。
【0038】
予め設定されている通知の形式としては、文字や画像等の表示情報によって実態評価値を通知する形式、照度や色等によって実態評価値を通知する形式、振動によって実態評価値を通知する形式、音階やメロディー等の音によって実態評価値を通知する形式などがある。文字や画像等の表示情報によって実態評価値を通知する場合、実態評価値の数字そのものを通知する方法、実態評価値を複数の階級に分類して階級を通知する方法、実態評価値を文書やアイコンで通知する方法がある。
【0039】
予め設定されているパラメータとしては、実態評価値を複数の階級に分類したときの各階級を表す代表値や画像、各階級を表す照度や色や点滅パターン、各階級を表す振動のパターンや強度、各階級を表す音階やメロディー等がある。パラメータ決定方法としては、実態評価値を複数の階級に分類するための演算処理やルールが設定されている。
【0040】
通知機器14としては、居住者のPC(Personal Computer)やスマートフォン、卓上装置などがある。また、後述の実施例のように申告装置と通知機器14とを一体化しても構わない。
【0041】
以上のように、本実施例では、温冷感モデルを使用して推定した、居住者の温冷感を示す実態評価値を居住者に通知することにより、実態評価値と居住者の温冷感との乖離が大きい場合に居住者の申告行動が促進されることが期待でき、温冷感モデルの補正に有効なデータを取得し易くなることが期待できる。
【0042】
[第2の実施例]
本実施例も温冷感の事例で説明する。 第1の実施例で説明したように通知機器によって本発明の通知機能を実現することも可能であるが、実態評価値が自身の実感と異なることに居住者が気づくことにより、居住者の申告行動が起き易くなるため、居住者が温冷感申告を行う申告装置に通知機能を付加することが好ましい。
【0043】
図5(A)~図5(C)は従来の申告装置の申告入力画面の例を示す図である。ここでは、申告装置がスマートフォンの場合を示している。図5(A)の例では、申告装置のタッチパネル式の表示装置の申告入力画面40に、「暑い」と「寒い」という2種類の選択ボタン41,42が表示されている。居住者は、温冷感を申告するときに、選択ボタン41,42のうちどちらか一方に触れるようにすればよい。
【0044】
図5(B)の例では、申告入力画面40に、「寒い」から「暑い」までの温冷感の階級別の選択ボタン43~49が表示されている。居住者は、温冷感を申告するときに、選択ボタン43~49のうちいずれか1つに触れるようにすればよい。
【0045】
図5(C)の例では、申告入力画面40に、選択中の温冷感の階級を示すスライダ50と、OKボタン51とが表示されている。居住者は、温冷感を申告するときに、スライダ50に触れてスライダ50を動かすように操作して温冷感の数値を選択し、OKボタン51に触れるようにすればよい。
【0046】
図6図5(A)~図5(C)の申告装置の構成を示すブロック図である。申告装置2は、図5(A)~図5(C)に示したような申告入力画面40を生成する申告入力画面生成部30と、申告入力画面40を操作した居住者からの温冷感の申告情報を取得して、空調制御装置や建物管理装置、モデル生成装置等に送信する申告取得部31とを備えている。
【0047】
なお、図6では、スマートフォンの機能を実現する周知の構成については記載を省略している。図17に示したような申告型空調制御システムについては、例えば非特許文献1、2、特開2013-2748号公報、特開2017-219259号公報に開示されている。モデル生成装置については後述する。
【0048】
図7は従来の申告装置の別の構成例を示す図である。ここでは、申告装置2が携帯装置の場合を示している。図7の例では、申告装置2に「寒い」と「快適」と「暑い」という3種類の選択ボタン52~54が設けられている。居住者は、温冷感を申告するときに、選択ボタン52~54のうちいずれか1つを押下すればよい。
【0049】
図8図7の申告装置の構成を示すブロック図である。図8の例では、申告装置2は、居住者による選択ボタン52~54の操作結果に応じて温冷感の申告情報を取得して、空調制御装置や建物管理装置、モデル生成装置等に申告情報を送信する申告取得部32を備えている。
【0050】
例えば図6に示した申告装置に第1の実施例の通知機器14の機能を持たせる場合の構成を図9に示す。申告装置2aの申告入力画面生成部30a(実態評価値通知部をさらに含む)は、実態評価通知装置1から受信した通知指示情報に従って、申告入力画面40上に実態評価値を文字や画像等の表示情報によって表示すればよい。実態評価値を複数の階級に分類したときの各階級を表す代表値や画像、実態評価値を複数の階級に分類するための演算処理やルールは、サービスプロバイダや設備管理者によって予め設定されている。
【0051】
図10(A)~図10(C)は、申告装置2aによる実態評価値の表示例を示す図である。図10(A)では、暑いという推定結果が得られたことを示す実態評価値を受信した例を示しており、図5(A)と同様の申告入力画面40に、「暑い」という推定結果が得られたことを示すアイコン55が表示されている。
【0052】
図10(B)では、-3~+3の階級のうち-2の階級(寒い)の推定結果が得られたことを示す実態評価値を受信した例を示しており、図5(B)と同様の申告入力画面40上において、-2の階級の推定結果が得られたことを示すマーク56が表示されている。
【0053】
図10(C)では、0~10の階級のうち7の階級(暑い)の推定結果が得られたことを示す実態評価値を受信した例を示しており、図5(C)と同様の申告入力画面40上において、7の階級の推定結果が得られたことを示すマーク57が表示されている。
【0054】
図7図8に示した申告装置に第1の実施例の通知機器14の機能を持たせ、実態評価値に応じて点灯するLED58(発光素子)を変えたり、点灯するLED58の明るさを変えたり、色の異なるLED58を点灯させたり、LED58の点滅パターンを変えたりするようにしてもよい。この場合の申告装置2aの構成を図11に示す。
【0055】
申告装置2aの点灯制御部33(実態評価値通知部)は、実態評価通知装置1から受信した通知指示情報に従って、LED58の点灯を制御する。実態評価値を複数の階級に分類したときの各階級を表す照度や色や点滅パターン、実態評価値を複数の階級に分類するための演算処理やルールは、サービスプロバイダや設備管理者によって予め設定されている。
また、実態評価値通知部は、上記のように発光素子の点灯以外に、振動または音によって居住者に実態評価値を通知するようにしてもよい。
【0056】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例も温冷感の事例で説明する。図12は本実施例に係る実態評価通知システムの構成を示すブロック図である。実態評価通知システムは、実態評価通知装置1aと、申告装置2aとから構成される。
【0057】
実態評価通知装置1aは、居住環境情報取得部10と、学習済モデル保持部11と、実態評価演算部12と、実態評価通知指示部13と、学習データ生成部15と、学習処理部16とを備えている。
【0058】
図12の例では、第2の実施例で説明した申告装置2aを用いる場合について記載しているが、第1の実施例のように通知機器14と申告装置(図6または図8の申告装置2)とが別々の構成であってもよい。
居住環境情報取得部10と実態評価演算部12と実態評価通知指示部13の動作は第1の実施例で説明したとおりである。
【0059】
学習データ生成部15と学習処理部16と学習済モデル保持部11とは、モデル生成部17を構成している。学習データ生成部15は、データ統合部150と、データ保持部151とから構成される。学習処理部16は、モデル構築判定部160と、モデル生成処理部161とから構成される。
【0060】
本実施例では、第1の実施例の図2で説明した実態評価通知動作と、居住者からの申告情報を取得して温冷感モデルを生成・更新する動作と、申告情報に基づいて室温設定値を変更する申告型の空調制御システムの動作とが、各々の動作タイミングで並行して実施される。申告型の空調制御システムについては、一般的なものでよく、例えば非特許文献1、2、特開2013-2748号公報、特開2017-219259号公報などに開示されているので、説明は省略する。
【0061】
図13はモデル生成部17の動作を説明するフローチャートである。データ統合部150は、申告装置2aを通じて居住者からの申告情報を取得する(図13ステップS200)。データ統合部150は、申告情報と、申告情報を取得したタイミングに最も近い時刻の環境情報とを関連付けて統合データを生成し、データ保持部151に送信する(図13ステップS201)。
【0062】
申告情報と関連付ける環境情報の取得タイミングは、サービスプロバイダ等により予め設定されている。データ統合部150は、例えば申告情報を取得したタイミングの直前あるいは直後に居住環境情報取得部10により取得された環境情報を申告情報と関連付ける。
【0063】
データ保持部151は、データ統合部150から送信された統合データを記憶する(図13ステップS202)。データ統合部150とデータ保持部151とがステップS200~S202の処理を継続的に実行することにより、データ保持部151に統合データが蓄積される。
【0064】
次に、モデル構築判定部160は、データ保持部151に蓄積された統合データが、温冷感モデルを構築する条件を満たすか否かを判定する(図13ステップS203)。モデル構築判定部160は、データ保持部151に蓄積された統合データが、温冷感モデルを構築する条件を満たしている場合には、統合データから学習データを抽出してモデル生成処理部161に送信する(図13ステップS204)。
【0065】
温冷感モデルを構築する条件や、学習データの抽出ルールは、予めサービスプロバイダ等によって設定されている。温冷感モデルを構築する条件としては、モデルを前回構築した日時からの経過期間の閾値(2週間、1ヶ月等)や、モデルを前回構築した日時以降に新規に蓄積された統合データの数の閾値などがある。
【0066】
モデル構築判定部160は、経過期間の閾値が設定されている場合、モデルを前回構築した日時から閾値以上の時間が経過しているときに、条件を満たしていると判定する。また、モデル構築判定部160は、データ数の閾値が設定されている場合、モデルを前回構築した以降に新規に蓄積された統合データの数が閾値以上のときに、条件を満たしていると判定する。
【0067】
統合データの抽出ルールとしては、例えばモデルを前回構築した日時以降に新規に蓄積された統合データの全てを学習データとするというルール、モデルを前回構築した日時にかかわらず、直近の過去3ケ月間に蓄積された統合データを学習データとするというルールなどがある。モデル構築判定部160は、データ保持部151に蓄積された統合データが、温冷感モデルを構築する条件を満たしている場合には、学習データとモデルの生成指示とをモデル生成処理部161に送信する。
【0068】
モデル生成処理部161は、学習データに基づいて温冷感モデルを生成する(図13ステップS205)。上記のとおり、学習データは統合データから抽出され、統合データは申告情報と環境情報とを関連付けたものである。モデル生成処理部161は、学習データに含まれる環境情報とこれに対応する申告情報との関係をモデル化した温冷感モデル、あるいは学習データに含まれる環境情報から算出した温熱快適性指標と、温熱快適性指標の算出元となった環境情報に対応する申告情報との関係をモデル化した温冷感モデルを生成する。
【0069】
温冷感モデルの生成方法(学習方法)としては、機械学習がある。機械学習方法については、ディープラーニングなどが知られている。また、PMVを用いて計算される不満足者率PPDをモデルの基本関数として、この基本関数に居住者からの申告情報を反映させて関数を修正したものを温冷感モデルとしてもよい。このような手法は、例えば特許文献1、2、特開2021-4691号公報に開示されている。
【0070】
モデル生成処理部161は、生成した温冷感モデルの数式を学習済モデル保持部11に格納する(図13ステップS206)。過去に生成された温冷感モデルが学習済モデル保持部11が記憶されている場合には、新たに生成された温冷感モデルに更新されることになる。なお、システム利用開始時などにおいて温冷感モデルが未生成の場合に、初期に適用する温冷感モデルを予めサービスプロバイダ等によって設定しておくようにしてもよい。
【0071】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例として第3の実施例の別の構成例について説明する。本実施例も温冷感の事例で説明する。図14は本実施例に係る申告装置の構成を示すブロック図であり、図12と同様の構成には同一の符号を付してある。申告装置2bは、居住環境情報取得部10と、学習済モデル保持部11と、実態評価演算部12と、実態評価通知指示部13と、学習データ生成部15と、環境計測部18と、申告入力画面生成部30a(実態評価値通知部)と、申告取得部31とを備えている。
【0072】
本実施例では、卓上などに設置される申告装置2bと外部のモデル生成装置3とによって、第3の実施例の実態評価通知装置1aと申告装置2aの機能を実現する。
環境計測部18は、居住者の周囲環境に関する環境情報を計測する。ただし、環境計測部18については申告装置2bの外部に設けるようにしてもよい。
【0073】
居住環境情報取得部10と学習済モデル保持部11と実態評価演算部12と実態評価通知指示部13の動作は第1の実施例で説明したとおりであり、申告入力画面生成部30aと申告取得部31の動作は第1、第2の実施例で説明したとおりであり、学習データ生成部15の動作は第3の実施例で説明したとおりである。
【0074】
本実施例では、第3の実施例で説明した学習処理部16の機能をモデル生成装置3によって実現している。申告装置2bとモデル生成装置3とはネットワークを介して接続されている。
【0075】
図15は本実施例の申告装置2bの外観図である。図15の例では、申告装置2bの申告入力画面生成部30aは、申告入力画面40上に、環境計測部18と居住環境情報取得部10とによって取得された環境情報を表示する。また、申告入力画面生成部30aは、申告入力画面40上に、「暑い」という選択ボタン41と「快適」という選択のボタン59と、「寒い」という選択ボタン42とを表示する。第2の実施例と同様に、居住者は、温冷感を申告するときに、選択ボタン41,42,59のうちいずれか1つに触れるようにすればよい。
【0076】
また、申告入力画面生成部30aは、実態評価通知指示部13から受信した通知指示情報に従って、申告入力画面40上に実態評価値を文字や画像等の表示情報によって表示するか、または色の変更によって実態評価値を表現する。例えば暑いという推定結果が得られたことを示す実態評価値を受信した場合には申告入力画面40を赤色にし、寒いという推定結果が得られたことを示す実態評価値を受信した場合には申告入力画面40を青色にする。
【0077】
図14の例では、図9に示した申告装置2aの構成を用いているが、図11に示した申告装置2aの構成を用いてもよい。また、図14の例では、申告装置2aを基本構成とする場合について記載しているが、申告装置2bから通知機器の機能を外して、第1の実施例のように申告装置と通知機器14とを別々の構成にしてもよい。
【0078】
また、第1~第4の実施例では、環境感モデルとして温冷感モデルを構築し、居住者からの申告情報を空調制御装置や建物管理装置に送信して、室内の温熱環境を制御する場合について説明しているが、これに限るものではなく、照度などの環境情報または環境情報から算出される環境快適性指標と、居住者の明暗感を示す実態評価値との関係をモデル化した明暗感モデルを構築し、居住者からの申告情報を建物管理装置に送信して、室内の照明機器を制御するようにしてもよい。
【0079】
第1~第4の実施例で説明した実態評価通知装置1,1a、申告装置2a,2b、モデル生成装置3、通知機器14のそれぞれは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図16に示す。
【0080】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。実態評価通知装置1の場合、I/F202にはセンサや通知機器14との通信のための通信装置のハードウェア等が接続される。実態評価通知装置1aの場合、I/F202にはセンサや申告装置2aとの通信のための通信装置のハードウェア等が接続される。
【0081】
申告装置2aの場合、I/F202には実態評価通知装置1aとの通信のための通信装置のハードウェア等が接続される。申告装置2bの場合、I/F202にはモデル生成装置3との通信のための通信装置のハードウェア等が接続される。モデル生成装置3の場合、I/F202には申告装置2bとの通信のための通信装置のハードウェア等が接続される。通知機器14の場合、I/F202には実態評価通知装置1との通信のための通信装置のハードウェア等が接続される。
【0082】
このようなコンピュータにおいて、本発明の実態評価通知方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。各々の装置のCPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1~第4の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、申告型の空調制御システム等に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,1a…実態評価通知装置、2a,2b…申告装置、3…モデル生成装置、10…居住環境情報取得部、11…学習済モデル保持部、12…実態評価演算部、13…実態評価通知指示部、14…通知機器、15…学習データ生成部、16…学習処理部、17…モデル生成部、18…環境計測部、30,30a…申告入力画面生成部、31,32…申告取得部、33…点灯制御部、150…データ統合部、151…データ保持部、160…モデル構築判定部、161…モデル生成処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18