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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099190
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】透明表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20240718BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20240718BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 5/373 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 5/02 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20240718BHJP
   G02F 1/133 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
G09G5/00 510G
H04N5/66 D
G02F1/13357
G09G3/36
G09G5/00 550C
G09G5/37 310
G09G5/373 100
G09G5/02 B
G09G5/00 530T
G09G3/34 J
G02F1/133 580
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002947
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 諒
【テーマコード(参考)】
2H193
2H391
5C006
5C058
5C080
5C182
【Fターム(参考)】
2H193ZG14
2H193ZG34
2H193ZH02
2H193ZH39
2H193ZQ13
2H193ZR20
2H391AA25
2H391AB05
2H391AD52
2H391AD55
2H391AD59
2H391CB03
2H391FA02
5C006AC25
5C006BA16
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BC16
5C006BF15
5C006EA01
5C058AA06
5C058AB01
5C058AB03
5C058BA17
5C058BA18
5C058BA20
5C058BA29
5C058BA35
5C058BB25
5C080AA10
5C080BB05
5C080EE01
5C080EE21
5C080EE26
5C080FF11
5C080GG07
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ06
5C080JJ07
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA22
5C182AB02
5C182AC02
5C182AC37
5C182BA14
5C182BA35
5C182BA56
5C182BA75
5C182CA32
5C182CB13
5C182CB34
5C182CB45
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】透明表示装置の用途を広げることができる技術を提供する。
【解決手段】透明表示装置1は、第1面s1を有する第1基板11と、第2面s2を有する第2基板12と、画素を有する表示層13と、第1基板11、第2基板12、および表示層13が重なる領域に設けられた表示領域(画面20)と、コントローラ2と、第1利用者U1の視点を検出するためのセンサデバイス3を備える。コントローラ2は、表示領域(画面20)に、個別に選択可能な複数の選択画像を第1利用者U1に向けて表示し、センサデバイス3の検出情報から第1利用者U1が注視している選択画像である注視画像を判別し、注視画像に基づく対応画像を、第1利用者U1とは反対側にいる第2利用者U2に対して表示するように、画素の状態を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1基板と、
前記第1面の反対側にある第2面を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、背景光を透過する透明状態と画像を表示する非透明状態との遷移が可能な画素を有する表示層と、
前記第1基板、前記第2基板、および前記表示層が重なる領域に設けられた表示領域と、
前記表示層の前記画素の状態を制御するコントローラと、を備え、
前記第1面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第2面側の背景が視認可能であり、前記第2面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第1面側の背景が視認可能である透明表示装置であって、
前記表示領域の前記第1面側にいる第1利用者の視点を検出するためのセンサデバイスを備え、
前記コントローラは、
前記表示領域に、個別に選択可能な複数の選択画像を前記第1利用者に向けて表示し、
前記センサデバイスの検出情報から前記第1利用者が注視している前記選択画像である注視画像を判別し、
前記注視画像に基づく対応画像を、前記表示領域の前記第1利用者とは反対側にいる第2利用者に対して表示するように、前記画素の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記対応画像が、前記注視画像を前記第2利用者側に向けて反転させた反転画像である、
透明表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記対応画像が、前記注視画像を拡大させた拡大画像である、
透明表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記対応画像が、前記注視画像の表示色を変化させた変色画像である、
透明表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記選択画像が、五十音の文字を含む文字画像である、
透明表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記選択画像が、予め登録された複数の文字画像を含む登録画像である、
透明表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記コントローラは、前記対応画像を、前記表示領域内の前記選択画像が表示された第1領域とは別の第2領域に表示させるように、前記画素の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記センサデバイスは、前記表示領域の前記第2面側にいる前記第2利用者の視点をさらに検出するためのものであり、
前記コントローラは、
前記選択画像として、前記第1利用者に向けた複数の第1選択画像と、前記第2利用者に向けた複数の第2選択画像とを前記表示領域に表示し、
前記センサデバイスの検出情報から前記第1利用者が注視している前記第1選択画像である第1注視画像を判別し、前記第1注視画像に基づく第1対応画像を、前記第2利用者に対して表示するように、前記画素の状態を制御し、
前記センサデバイスの検出結果から前記第2利用者が注視している前記第2選択画像である第2注視画像を判別し、前記第2注視画像に基づく第2対応画像を、前記第1利用者に対して表示するように、前記画素の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の透明表示装置において、
前記コントローラは、
前記表示領域に前記第1選択画像を表示する第1状態と、前記表示領域に前記第2選択画像を表示する第2状態と、を前記第1利用者または前記第2利用者の要求に応じて切り替えるように、前記画素の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記表示層は、液晶層であり、
前記表示領域に対し重ならない位置に、前記液晶層に光源光を供給する光源を備える、
透明表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明表示装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明表示装置(言い換えると、透明ディスプレイ)が開発・提供されている。透明表示装置は、液晶層などによって構成された光透過性を有する表示領域において画像(言い換えると映像等)を表示する。ユーザである人は、透明表示装置の表示画像を、背景と重ね合わせた状態で、前面側からも背面側からも視認可能である。
【0003】
この透明表示装置は、人と人とのコミュニケーションの際に利用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、透明表示装置を介してやり取りをする際、カメラによって人の視線を認識し、視線に対応する位置に画像を表示させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国公開第2018/0033171号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明表示装置は、人と人とのコミュニケーションに関する多くの用途に利用することができると考えられ、そのためのさらなる技術開発が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、透明表示装置の用途を広げることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1面を有する第1基板と、前記第1面の反対側にある第2面を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、背景光を透過する透明状態と画像を表示する非透明状態との遷移が可能な画素を有する表示層と、前記第1基板、前記第2基板、および前記表示層が重なる領域に設けられた表示領域と、前記表示層の前記画素の状態を制御するコントローラと、を備え、前記第1面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第2面側の背景が視認可能であり、前記第2面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第1面側の背景が視認可能である透明表示装置であって、前記表示領域の前記第1面側にいる第1利用者の視点を検出するための第1センサデバイスを備え、前記コントローラは、前記表示領域に、個別に選択可能な複数の選択画像を前記第1利用者に向けて表示し、前記センサデバイスの検出情報から前記利用者が注視している前記選択画像である注視画像を判別し、前記注視画像に基づく対応画像を、前記表示領域の前記第1利用者とは反対側にいる第2利用者に対して表示するように、前記画素の状態を制御する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の透明表示装置の概略構成を示す図である。
図2】実施の形態1の透明表示装置の基本的な特性を説明する図である。
図3】実施の形態1の透明表示装置のハードウェア構成例を示す斜視図である。
図4】実施の形態1の透明表示装置の断面図である。
図5】実施の形態1の透明表示装置の回路の構成例を示す図である。
図6】実施の形態1の透明表示装置のコントローラの構成例を示す図である。
図7】実施の形態1の透明表示装置における意思表示制御のフローを示す図である。
図8】実施の形態1における画面表示の一例を示す図である。
図9】実施の形態1における画面表示の一例を示す図である。
図10】実施の形態1における画面表示の一例を示す図である。
図11】実施の形態1の変形例における画面表示を示す図である。
図12】実施の形態1の変形例における画面表示を示す図である。
図13】実施の形態1の変形例における画面表示を示す図である。
図14】実施の形態1の変形例における画面表示を示す図である。
図15】実施の形態1の変形例における画面表示を示す図である。
図16】実施の形態2の透明表示装置の構成を示す図である。
図17】実施の形態2の透明表示装置における切替制御のフローを示す図である。
図18】実施の形態2における画面表示の一例を示す図である。
図19】実施の形態2における画面表示の一例を示す図である。
図20】実施の形態2における画面表示の一例を示す図である。
図21】実施の形態2の変形例における画面表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPU/MPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0011】
プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばメモリカードやディスクでもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クライアント・サーバシステム、クラウドコンピューティングシステム、IoTシステム等で構成されてもよい。各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で構成されるが、これに限定されない。識別情報、識別子、ID、名前、番号等の表現は互いに置換可能である。
【0012】
<実施の形態1>
図1図10を用いて、実施の形態1の透明表示装置について説明する。図1は、実施の形態1の透明表示装置の概略構成を示す図である。
【0013】
なお、説明上、座標系や方向として、図示の(X,Y,Z)や(x,y)を用いる場合がある。図1でのX軸・X方向およびY軸・Y方向は、直交する2つの水平方向であり、Z軸・Z方向は、鉛直方向である。X方向は、透明表示装置の利用者から見て左右方向であり、Z方向は、利用者から見て上下方向であり、Y方向は利用者から見て前後方向である。また、図1でのx方向は、透明表示装置の画面を構成する横方向(画面内水平方向)であり、y方向は、画面を構成する縦方向(画面内垂直方向)である。
【0014】
[透明ディスプレイの全体構成]
図1に示すように、実施の形態1の透明表示装置である透明ディスプレイ1は、第1利用者である第1ユーザU1および第2利用者である第2ユーザU2によって利用され、第1ユーザU1および第2ユーザU2は、透明ディスプレイ1の透明表示パネル10を挟んで対面する。図1には、透明ディスプレイ1を第1ユーザU1と第2ユーザU2との二人の利用者が利用する状況を模式的に示している。この例では、第1ユーザU1は、透明表示パネル10の前面である第1面s1側から透明ディスプレイ1を利用し、第2ユーザU2は、透明表示パネル10の背面である第2面s2側から透明ディスプレイ1を利用する。勿論、第1ユーザU1が、第2面s2側から透明ディスプレイ1を利用し、第2ユーザU2が、第1面s1側から透明ディスプレイ1を利用してもよい。
【0015】
透明ディスプレイ1は、光透過性を有する透明表示パネル10と、透明表示パネル10に接続または内蔵されるコントローラ2と、第1カメラ30を含むアイトラッキング装置3と、を備える。
【0016】
透明表示パネル10は、例えば、液晶表示パネルである。透明表示パネル10の画面20は、複数の部材によって構成されている。透明表示パネル10は、画面20を構成する部材として、例えば、第1基板11、第2基板12、および表示層13を有する。第1基板11は対向基板であり、第2基板12はアレイ基板であり、表示層13は液晶層である。表示層13の画素PIXは、全方向にわたって発光する。詳しくは後述するが、表示層13は、画面20の表示領域を構成する複数の画素PIXを有する(図3等参照)。勿論、第1基板11をアレイ基板とし、第2基板12を対向基板としてもよい。
【0017】
実施の形態1では、透明表示パネル10の表示層13として液晶層を有する透明ディスプレイ(言い換えれば、液晶ディスプレイ)1について説明する。なお、実施の形態1では、透明ディスプレイ1の透明表示パネル10として、画面20の表示領域の透明度合いを表す透過率が窓ガラスの透過率程度である84%以上を実現する液晶パネルを使用している。
【0018】
透明表示パネル10は、第1基板11側の第1面s1と、第2基板12側の第2面s2とを有する。説明上、第1面s1を前面(言い換えると表面)とし、第2面s2を背面(言い換えると裏面)とする。透明ディスプレイ1は、表示層13を制御することで、第1面s1側の第1ユーザU1に向けて画像を表示することもできるし、第2面s2側の第2ユーザU2に向けて画像を表示することもできる。透明ディスプレイ1は、表示層13の制御に対応して透明表示パネル10の画面20に画像が表示された場合、その画像は、第1面s1側にいる第1ユーザU1からも、第2面s2側にいる第2ユーザU2からも視認できる。なお、図1では、画面20の表示画像をドットパターンとして模式的に示している。
【0019】
コントローラ2は、透明表示パネル10に電気的に接続され、透明表示パネル10が備える表示層13を制御する。コントローラ2は、液晶層である表示層13の画素の表示の状態を制御することにより、画面20に画像を表示させる。コントローラ2は、透明表示パネル10に内蔵されてもよいし、透明表示パネル10の外部に接続されてもよい。例えば、第1基板11や第2基板12の一部に、駆動回路などの他、コントローラ2を構成する制御回路が実装されてもよい。コントローラ2は、透明表示パネル10に接続されるパーソナルコンピュータ(PC)等の外部コンピュータであってもよい。図示しないが、透明表示パネル10には、その他、マイクやスピーカ、ランプ等が設置・接続されてもよい。
【0020】
アイトラッキング装置3は、例えば、後述するように透明ディスプレイ1が第1ユーザU1と第2ユーザU2とのコミュニケーションツールとして利用される場合に使用される。アイトラッキング装置3は、透明表示パネル10の第1面s1側にいる第1利用者の視点を検出するためのセンサデバイスである。実施の形態1では、アイトラッキング装置3は、透明表示パネル10の第1面s1側にいる第1利用者である第1ユーザU1の視点を検出するセンサデバイスであり、第1ユーザU1の視点を検出するための画像を撮影する第1カメラ30を備える。第1カメラ30は、画面20の第1面s1側を向いて設置され、この第1カメラ30によって第1ユーザU1の目の動き(特に、瞳の動き)を特定するための画像を撮影する。第1カメラ30は、第1ユーザU1の顔を前方から撮影できるように、例えば、透明表示パネル10の上部に設けられている。
【0021】
第1カメラ30の設置場所は、第1ユーザU1の目の動きを撮影できる場所であれば特に限定されず、必ずしも透明表示パネル10上でなくてもよい。第1カメラ30は、本例ではCCDカメラ等であるが、これに限定されず、第1ユーザU1の目の動きを撮影できるものであればよい。また、本例では、第1カメラ30は、撮影した画像をコントローラ2に送信し、コントローラ2が、その撮影画像(言い換えるとカメラ画像)に基づいて、画像処理を行うことで、第1ユーザU1の視点を検出する。すなわちコントローラ2は、アイトラッキング装置3の一部としても機能する。
【0022】
なお、アイトラッキング装置3は、既存の装置を採用すればよく、その構成は特に限定されない。一例として、アイトラッキング装置3は、第1カメラ30によって撮影された画像を解析し、第1ユーザU1の目の動き(特に、瞳の動き)から第1ユーザU1の視点を検出する。また、アイトラッキング装置3は、例えば、赤外線の角膜反射を利用することで、第1ユーザU1の視点(言い換えれば、視線方向)を検出するものであってもよい。
【0023】
また、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の画面20の画素ごとに、少なくとも、背景を透過する透明状態と、画像を表示する非透明状態と、を切り替えることができる。言い換えると、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の透明化の制御として、透明化のオン状態である透明状態と、オフ状態である非透明状態と、を切り替えることができる。上記非透明状態とは、上記透明状態と比べて、背景よりも画面20に表示される画像をユーザが視認しやい状態であり、上記透明状態とは、上記非透明状態に比べて、画面20に表示される画像よりも背景をユーザが視認しやすい状態である。また、単に透明状態を画像非表示状態、非透明状態を画像表示状態と言い換えてもよく、後述するように透明状態を非散乱状態、非透明状態を散乱状態と言い換えてもよい。なお、透明ディスプレイ1による画面20の画素ごとの制御は、透明状態と非透明状態との間での透明度合い(透明度と記載する場合がある)をオン/オフの二値で変更するものに限られず、多値で変更するものであってもよい。
【0024】
このような透明ディスプレイ1は、任意の位置に設置して利用可能である。透明ディスプレイ1は、例えば人と人とが対面するカウンターや窓口、人と人との間のパーティション等に設置が可能である。また、透明ディスプレイ1は、必ずしも特定の場所に設置された状態での使用に限定されない。例えば、比較的小型の透明表示パネル10を採用することで、利用者が透明ディスプレイ1を手に持って使用することも可能である。
【0025】
詳しくは後述するが、この透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1と第2ユーザU2との間のコミュニケーションツールとして利用される。透明ディスプレイ1は、例えば、医療現場において、全身麻痺の患者である第1ユーザU1と、医者である第2ユーザU2との間のコミュニケーションに有効に利用できる。
【0026】
[透明ディスプレイの基本的な特性]
図2は、透明表示パネルをX方向に見た図であり、画面に表示される表示画像の状態を説明する図である。図2(A)には、透明ディスプレイ1の前面である第1面s1に対し前側(方向Y2)にいる第1ユーザU1が、画面20に表示された表示画像DGを視認する状態を示す。図2(B)は、逆に、透明ディスプレイ1の背面である第2面s2に対し前側(方向Y1)にいる第2ユーザU2が、画面20に表示された表示画像DGを視認する状態を示す。
【0027】
透明ディスプレイ1は、上述したように、透明表示パネル10の画面20に表示された表示画像DGを、画面20の第1面s1側から第1ユーザU1が視認できるとともに、画面20の第2面s2側から第2ユーザU2が視認できるディスプレイ装置である。
【0028】
透明表示パネル10は、第1面s1側にいる第1ユーザU1から、画面20に表示された表示画像DGおよび第2面s2側の第2ユーザU2を視認可能な特性を有する。また、透明表示パネル10は、第2面s2側にいる第2ユーザU2から、画面20に表示された表示画像DGおよび第1面s1側の第1ユーザU1を視認可能な特性を有する。透明ディスプレイ1において、画面20の表示領域に、第1面s1側の第1ユーザU1に向けて画像を表示した場合に、その画像は、第2面s2側にいる第2ユーザU2からも視認できる。
【0029】
例えば、図2に示すように、透明ディスプレイ1が、表示画像DGとして、第1面s1側に向けて「ABC」の文字画像を表示させたとする。第1ユーザU1は、透明表示パネル10の画面20を、第1面s1側から第2面s2側に向かう方向(方向Y1)で見る。このため、第1ユーザU1は、図2(A)に示すように、画面20の表示画像DG、例えば、画像光DGL1に対応した「ABC」の文字画像を視認できる。その際、第1ユーザU1は、画面20を介して第2面s2側にいる第2ユーザU2と、それに対応する背景光BGL1とを視認できる。
【0030】
一方、第2ユーザU2は、透明表示パネル10の画面20を第2面s2側から第1面s1側に向かう方向(方向Y2)で見る。第2ユーザU2は、図2(B)に示すように、画面20に表示された表示画像DG、例えば、画像光DGL2に対応した文字画像を視認できる。また、第2ユーザU2は、画面20を介して第1面s1側にいる第1ユーザU1と、それに対応する背景光BGL2とを視認できる。
【0031】
ただし、第2ユーザU2から見える表示画像DGは、あくまで画面20の第2面s2側から見た画像となり、第1面s1側から見た表示画像DGとは異なる。第2ユーザU2から見える表示画像DGは、図2(B)に示すように、「ABC」の文字を左右方向で反転させた像となる。
【0032】
なお、画面20の第1面s1のうち、少なくとも画像が表示される表示領域については、上記のような特性、言い換えると背景透過性などを有する。同様に、画面20の第2面s2のうち、少なくとも画像が表示される表示領域については、上記のような特性を有する。画面20の第1面s1および第2面s2のうち、表示領域以外の周辺領域(後述の図3等)については、表示領域と同様に上記特性を有する構成としてもよいし、背景を透過しない遮光性を有する構成としてもよい。
【0033】
[透明ディスプレイのハードウェア構成例]
図3図5を用いて、実施の形態1の透明ディスプレイ1のハードウェア構成例を説明する。図3は、透明ディスプレイの透明表示パネルの構成例の概要を示す斜視図であり、透明表示パネル10について、主に第1面s1を見た斜視図である。図4は、図3のA-A線に沿った断面図であり、透明ディスプレイの光源部から出射された光の経路等についても模式的に示している。図5は、透明ディスプレイに形成される回路の構成例を示している。
【0034】
図3では、図1の座標系に合わせて、透明表示パネル10の厚さ方向に沿った方向をY方向とし、Y方向に直交するX-Z平面において、透明表示パネル10の一辺の延在方向をX方向とし、X方向に交差する方向をZ方向としている。また、画面20内の座標系(x,y)として、X方向に対応したx方向が横方向(画面内水平方向)であり、Z方向に対応したy方向が縦方向(画面内垂直方向)である。本例では、画面20は、X方向(x方向)のサイズの方がZ方向(y方向)のサイズよりも大きい横長の画面としている。ただし、画面20の形状は、これに限定されない。
【0035】
図3および図4に示すように、透明表示パネル10は、上述の第1基板11、第2基板12および表示層13を有し、さらに光源部50および駆動回路70を有する。透明表示パネル10を構成する第1基板11、表示層13、および第2基板12は、Y方向において、前面である第1面s1側から、この順で配置されている。
【0036】
透明表示パネル10の第1面s1には、画面20に対応した表示領域DAおよび周辺領域PFAが設けられている。なお、本例では周辺領域PFAも画面20の一部としているが、表示領域DAのみを画面20としてもよい。画面20の表示領域DAは、第1基板11、第2基板12、および表示層13をY方向で平面視した場合に重なる領域にある。表示領域DAの外側に周辺領域PFAがある。図3中において表示領域DAと周辺領域PFAとの境界を二点鎖線で示している。
【0037】
表示領域DAは、外部から供給される入力信号に応じて画像が形成される領域である。表示領域DAは、平面視、例えばY方向で第1面s1を見た場合や第2面s2を見た場合に画像が表示される有効領域である。表示領域DAに対応する表示層13には、複数の画素PIXがマトリクス状に形成されている。周辺領域PFAは、表示領域DAの周囲にある四辺を含む領域、言い換えると額縁領域であり、画像は表示されない。
【0038】
本例では、第2基板12は、第1基板11よりも、X方向での幅が大きい。第2基板12は、X方向での一方側に延長された領域40を有する。その領域40に、光源部50および駆動回路70が搭載されている。
【0039】
光源部50は、本例では、図4に示すように、画面20に対し右辺の周辺領域PFAに沿って配置されている。光源部50は、表示層13での液晶表示のための光源光を発生し、表示層13に供給する。
【0040】
駆動回路70は、第1基板11、第2基板12、表示層13、および光源部50の駆動のための電気信号を発生し、それらを各部に供給する。図3には、透明表示パネル10が備える回路のうち、画素PIXに対応した液晶を駆動するための信号を伝送する信号配線の一部である後述するゲート線GLおよびソース線SLを、一点鎖線で模式的に示している。
【0041】
この透明表示パネル10は、図3および図4に示す構成要素の他に、例えば、フレキシブルプリント回路基板、筐体などを有する場合もある。筐体としては、例えば第1基板11、表示層13、および第2基板12を固定するものが挙げられる。図3および図4では、この要素については省略している。また、本例では表示領域DAは四角形であるが、これに限定されず、多角形や円形などの他の形状でもよい。また、本例では第2基板12の領域40に光源部50および駆動回路70が搭載されているが、光源部50および駆動回路70は、透明表示パネル10とは別の基板に搭載されていてもよい。例えば、透明表示パネル10の周辺領域PFAに、光源部50が搭載された光源用基板や、駆動回路70が搭載された駆動回路基板が取り付けられていてもよい。
【0042】
光源部50から出射された光の光路や、液晶の状態などについて図4を参照して説明する。透明表示パネル10は、表示層13としての液晶層LQLを介して対向するように貼り合わせられた第1基板11および第2基板12を有している。第1基板11と第2基板12とは、液晶層LQLを介して透明表示パネル10の厚さ方向であるY方向に配設されている。言い換えれば、第1基板11と第2基板12とは、Y方向において互いに対向して配置されている。
【0043】
アレイ基板である第2基板12は、液晶層LQLおよび第1基板11と対向する前面12fを有する。第1基板11である対向基板は、第2基板12の前面12fおよび液晶層LQLと対向する背面11bを有する。液晶を含む液晶層LQLは、第2基板12の前面12fと第1基板11の背面11bとの間にある。液晶層LQLは、言い換えると光学変調素子である。
【0044】
第2基板12は、後述のスイッチング素子(言い換えると能動素子)としての複数のトランジスタ(言い換えるとトランジスタ素子)がアレイ状に配置されたアレイ基板である。第1基板11は、アレイ基板である第2基板12に対向配置された基板という意味で、対向基板と言い換えることができる。
【0045】
透明表示パネル10は、上記スイッチング素子を介して液晶層LQLの周辺に形成される電界の状態を制御することにより、その液晶層LQLの液晶を通過する光を変調する機能を備えている。表示領域DAは、液晶層LQLと重畳する領域に設けられている。
【0046】
第1基板11と第2基板12とは、シール部(言い換えるとシール材)SLMを介して接着されている。シール部SLMは、表示領域DAの周囲を囲むように配置されている。シール部SLMの内側に液晶層LQLがある。シール部SLMは、第1基板11と第2基板12との間に液晶を封入する役割、および、第1基板11と第2基板12とを接着する接着材としての役割を果たす。
【0047】
光源部50は、第1基板11の一方の側面11s1と対向する位置に配置されている。図4中に、光源部50から出射された光である光源光L1を二点鎖線で模式的に示す。光源部50からX方向で出射された光源光L1は、図示のように、第2基板12の背面12bである第2面s2および第1基板11の前面11fである第1面s1で反射しながら、側面11s1から遠ざかる方向、本例では方向X2に伝搬する。光源光L1の伝搬経路において、第2基板12の背面12bおよび第1基板11の前面11fは、屈折率の大きな媒質と、屈折率の小さな媒質との界面である。このため、光源光L1が前面11fおよび背面12bに入射する入射角が臨界角よりも大きい場合、光源光L1は、前面11fおよび背面12bにおいて全反射する。
【0048】
液晶層LQLの液晶は、高分子分散型液晶であり、液晶性ポリマーと液晶分子を含んでいる。液晶性ポリマーは、筋状に形成され、液晶分子は、液晶性ポリマーの隙間に分散されている。液晶性ポリマーおよび液晶分子の各々は、光学異方性あるいは屈折率異方性を有している。液晶性ポリマーの電界に対する応答性は、液晶分子の電界に対する応答性よりも低い。液晶性ポリマーの配向方向は、電界の有無にかかわらず殆ど変化しない。
【0049】
一方、液晶分子の配向方向は、液晶に閾値以上の高い電圧が印加された状態では、電界に応じて変化する。液晶に電圧が印加されていない状態では、液晶性ポリマーおよび液晶分子のそれぞれの光軸は互いに平行であり、液晶層LQLに入射した光源光L1は、液晶層LQL内で殆ど散乱されることなく透過する。このような状態を透明状態(非散乱状態)と記載する場合がある。
【0050】
液晶に電圧が印加された状態では、液晶性ポリマーおよび液晶分子のそれぞれの光軸は互いに交差し、液晶に入射した光源光L1は、液晶層LQL内で散乱される。このような状態を散乱状態(言い換えると非透明状態)と記載する場合がある。
【0051】
透明表示パネル10に設けられる駆動回路70や、駆動回路70に接続される制御回路としてのコントローラ2は、光源光L1の伝搬経路における液晶の配向を制御することにより、画面20の表示状態を制御する。散乱状態において、光源光L1は、液晶により放出光L2として、前面11fである第1面s1側および背面12bである第2面s2側から透明表示パネル10の外部に出射される。
【0052】
また、背面12bである透明表示パネル10の第2面s2から入射した背景光L3は、第2基板12、液晶層LQL、および第1基板11を透過して、前面11fである透明表示パネル10の第1面s1から外部に出射される。前面11fである第1面s1から入射した背景光L4は、第1基板11、液晶層LQL、および第2基板12を透過して、背面12bである透明表示パネル10の第2面s2から外部に出射される。
【0053】
これらの放出光L2および背景光L3は、上述のように、前面である第1面s1側にいる第1ユーザU1から視認される。放出光L2は画像光DGL1と対応し、背景光L3は背景光BGL1と対応する。第1ユーザU1は、放出光L2と背景光L3とを組み合わせて認識することができる。言い換えると、第1ユーザU1は、背景光L3に放出光L2が重畳した状態を認識することができる。
【0054】
放出光L2および背景光L4は、上述のように、背面である第2面s2側にいる第2ユーザU2から視認される。放出光L2は画像光DGL2と対応し、背景光L4は背景光BGL2と対応する。第2ユーザU2は、放出光L2と背景光L4とを組み合わせて認識することができる。言い換えると、第2ユーザU2は、背景光L4に放出光L2が重畳した状態を認識することができる。
【0055】
図4に示す例では、透明表示パネル10の前面である第1面s1および背面である第2面s2の可視光透過性を確保するために、平面視で表示領域DAと重ならない位置に光源部50が配置されている。また、透明表示パネル10は、導光部材として機能する第1基板11および第2基板12と、周囲の空気層との屈折率差を利用して、光源光L1を反射させる。これにより、透明表示パネル10では、光源部50と対向する反対側の側面11s2まで光を届けることができる。
【0056】
図5を参照して、透明表示パネル10が備える回路の構成例について説明する。図5には、駆動回路70、光源部50、および表示領域DAの画素PIX(図3)の構成例を示している。
【0057】
図5に示すように、駆動回路70には、画像の表示を制御する制御回路を備える制御部90が接続されている。この制御部90は、実施の形態1ではコントローラ2に相当する。なお、制御部90(言い換えれば、コントローラ2)は、透明表示パネル10と別体である必要はなく、例えば、駆動回路70とともに透明表示パネル10に搭載されていてもよい。
【0058】
駆動回路70は、信号処理回路71、画素制御回路72、ゲート駆動回路73、ソース駆動回路74、コモン電位駆動回路75、および光源制御部52を備える。また、光源部50は、例えば発光ダイオード素子51r(例えば赤色)、発光ダイオード素子51g(例えば緑色)、および発光ダイオード素子51b(例えば青色)を備える。
【0059】
信号処理回路71は、入力信号解析部711、記憶部712、および信号調整部713を備える。信号処理回路71の入力信号解析部711には、制御部90から、図示しないフレキシブルプリント回路基板などの配線経路を介して、入力信号VSが入力される。入力信号解析部711は、入力された入力信号VSに基づいて解析処理を行い、入力信号VCSを生成する。入力信号VCSは、例えば、入力信号VSに基づいて、各画素PIX(図3)にどのような階調値を与えるかを定める信号である。
【0060】
信号調整部713は、入力信号解析部711から入力された入力信号VCSから入力信号VCSAを生成する。信号調整部713は、入力信号VCSAを画素制御回路72へ送出し、光源制御信号LCSAを光源制御部52へ送出する。光源制御信号LCSAは、例えば、画素PIXへの入力階調値に応じて設定される光源部50の光量の情報を含む信号である。
【0061】
画素制御回路72は、入力信号VCSAに基づいて、水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSを生成する。例えば、本実施例では、複数の画素PIXは、フィールドシーケンシャル方式で駆動される。そのため、画素制御回路72では、水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSが、光源部50が発光可能な色毎に生成される。
【0062】
ゲート駆動回路73は、水平駆動信号HDSに基づいて、1垂直走査期間内に透明表示パネルのゲート線GL(言い換えると信号配線)を順次選択する。ゲート線GLの選択の順番は任意である。図3に示すように、複数のゲート線GLは、X方向(x方向)に延び、かつ、Z方向(y方向)に沿って複数本が配列されている。
【0063】
ソース駆動回路74は、垂直駆動信号VDSに基づいて、1水平走査期間内に透明表示パネルの各ソース線SL(言い換えると信号配線)に各画素PIXの出力階調値に応じた階調信号を供給する。図3に示すように、複数のソース線SLは、Z方向(y方向)に延び、かつ、X方向(x方向)に沿って複数本が配列されている。ゲート線GLとソース線SLとの交差毎に、一つの画素PIXが形成されている。
【0064】
ゲート線GLとソース線SLとが交差する部分のそれぞれには、スイッチング素子Trが形成されている。複数のゲート線GLおよび複数のソース線SLは、図4の液晶層LQLの液晶を駆動するための駆動信号を伝送する複数の信号配線に相当する。
【0065】
スイッチング素子Trとしては例えば薄膜トランジスタが用いられる。薄膜トランジスタの種類は特に限定されない。スイッチング素子Trのソース電極およびドレイン電極のうちの一方はソース線SLに接続され、ゲート電極はゲート線GLに接続され、ソース電極およびドレイン電極のうちの他方は、高分子分散型液晶LC(図4の液晶層LQLの液晶に相当する)の容量の一端に接続されている。高分子分散型液晶LCの容量は、一端がスイッチング素子Trに画素電極PEを介して接続され、他端がコモン電極CEを介してコモン電位配線CMLに接続されている。また、画素電極PEと、コモン電位配線CMLに電気的に接続されている保持容量電極との間には、保持容量HCが生じる。コモン電位配線CMLは、コモン電位駆動回路75より供給される。図5のコモン電極CEに接続される配線経路は、例えば図3の第1基板11に形成されている。図5では、第1基板11に形成された配線を点線で図示している。
【0066】
図5に示す構成例では、光源制御部52が駆動回路70に含まれている。変形例として、光源制御部52が駆動回路70とは別に設けられている場合がある。前述のように、光源部50が第2基板12とは別の光源用基板に搭載されている場合、光源制御部52は、その光源用基板に形成されていてもよいし、その光源用基板に搭載された電子部品に形成されていてもよい。
【0067】
[コントローラ]
図6は、制御装置であるコントローラ2の構成例を示す機能ブロック図である。図6に示すように、コントローラ2は、プロセッサ1001、メモリ1002、通信インタフェース装置1003、入出力インタフェース装置1004等を備え、これらはバス等を介して相互に接続されている。プロセッサ1001は、制御プログラム1011に従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部などが実現される。プロセッサ1001により実現される機能や処理部としては、画像生成処理、表示処理などがある。
【0068】
また、上述のようにコントローラ2は、アイトラッキング装置3の一部としても機能する。すなわち、プロセッサ1001により実現される機能や処理部の一つとしては、第1ユーザU1の視点を検出する視点検出処理(言い換えれば、アイトラッキング処理)がある。
【0069】
メモリ1002には、制御プログラム1011、設定情報1012、画像データ1013、その他、処理に関するデータ・情報が格納されている。制御プログラム1011は、機能などを実現するコンピュータプログラムである。設定情報1012は、システム設定情報やユーザ設定情報である。画像データ1013は、画面20に画像・映像を表示させるためのデータである。通信インタフェース装置1003は、透明表示パネル10の駆動回路70や、アイトラッキング装置3を構成する第1カメラ30、その他の外部の機器などと接続され、所定の通信インタフェースで通信処理を行う。入出力インタフェース装置1004には入力デバイスや出力デバイスが接続可能である。
【0070】
[透明ディスプレイのコミュニケーションツールとしての利用]
透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1と第2ユーザU2との間でのコミュニケーションツールとして利用することができる。例えば、医療現場において、全身麻痺の患者である第1ユーザU1と、医者である第2ユーザU2とは、透明表示パネル10の画面20に表示された画像を介してコミュニケーションを図ることができる。
【0071】
以下、図7図10を参照して、透明ディスプレイ1のコミュニケーションツールとしての利用について詳しく説明する。図7は、透明ディスプレイにおける意思伝達処理の流れを説明するフローチャートである。図8図10は、透明表示パネルの画面に表示される画像の一例を説明する図である。なお、以下で説明する透明ディスプレイ1での各種処理は、上述したようにコントローラ2によって実行される。
【0072】
図7のフローチャートに示すように、透明ディスプレイ1は、電源がオンの状態になり意思伝達処理が開始されると、まず、透明表示パネル10の画面20に、個別に選択可能な複数の選択画像を第1ユーザU1に向けて表示する(ステップS1)。実施の形態1では、透明ディスプレイ1は、図8に示すように、選択画像の一例として、五十音の文字を含む複数の文字画像100を透明表示パネル10の画面20に表示させる。すなわち透明ディスプレイ1は、複数の文字画像100を透明表示パネル10の第1面s1側を前面として表示する。なお、選択画像は、特に限定されるものではなく、上記文字画像100の他、例えば、アルファベット、各種記号等の画像が挙げられる。
【0073】
この状態で、第1ユーザU1は、画面20に表示された選択画像である各文字画像100を第1面s1側から視認でき、また、文字画像100が表示された画面20を介して第2ユーザU2を視認することができる。第2ユーザU2は、画面20に表示された文字画像100を第2面s2側から視認でき、また、文字画像100が表示された画面20を介して第1ユーザU1を視認できる。ただし、第2ユーザU2から見える文字画像100は、あくまで画面20の第2面s2側から見た画像となる。つまり第2ユーザU2から見える文字画像100は、文字を左右方向で反転させた画像、いわゆる鏡文字の画像となる。
【0074】
ステップS2に進み、透明ディスプレイ1が備えるアイトラッキング装置3は、例えば、第1カメラ30によって撮影された第1ユーザU1の画像等に基づいて、第1ユーザU1の視点を検出する。すなわちアイトラッキング装置3は、画面20上で第1ユーザU1の視線がそそがれる先(言い換えれば、注視点)を検出する。第1ユーザU1の視点が検出されると、透明表示パネル10の画面20には、図9に示すように、アイトラッキング装置3による検出情報に基づいて第1ユーザU1の視点を示すカーソル(一例として、図中に丸印で示す)110が表示される。このカーソル110は、第1ユーザU1の視点の移動に伴って画面20内を移動する。
【0075】
ステップS3に進み、透明ディスプレイ1は、アイトラッキング装置3により検出された第1ユーザU1の視点から、第1ユーザU1が、複数の文字画像100の一つを注視しているか否かを判定する。言い換えれば、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1が文字画像100のうちの一つを選択しようとしているかを判定する。
【0076】
透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1の視点が、予め決定された所定時間(例えば、数秒程度)以上、一つの文字画像100に留まっている場合に(ステップS3:YES)、第1ユーザU1が、その文字画像100を注視していると判定する。より具体的には、図9に示すように、一つの文字画像100に対して設定された設定領域200に、上記所定時間以上、第1ユーザU1の視点が留まっている場合に、第1ユーザU1が、その文字画像100を注視していると判定する。なお、このように第1ユーザU1が注視していると判定された文字画像(選択画像ともいう)100を「注視画像」とも呼ぶ。
【0077】
言い換えれば、画面20に表示されているカーソル110が、一つの文字画像100に対応して設定された設定領域200内に移動し、その設定領域200に留まっている時間が上記所定時間以上になると(ステップS3:YES)、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1がその文字画像100を選択したと判定する。例えば、画面20に表示されているカーソル110が、一つの設定領域200と重なっている時間が上記所定時間以上になると、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1によってその文字画像100が選択されたと判定する。例えば、図9に示すように、透明表示パネル10の画面20において、カーソル110が「す」の文字画像100aに対応する設定領域200に重なっている状態が、上記所定時間以上継続すると、第1ユーザU1によって「す」の文字画像100aが選択されたと判定する。
【0078】
各文字画像100に対応する設定領域200は、本例では、各文字画像100が含まれる程度の範囲に設定されている。ただし、設定領域200は、任意の範囲に設定すればよく、文字画像100を形成していない画素を含む領域としてもよい。各文字画像100に対応する設定領域200は、各文字画像100が表示された範囲よりも広い範囲に設定されていてもよい。なお、設定領域200の図示は、図9以外では省略している。
【0079】
本例では、複数の文字画像100を、透明表示パネル10の画面20中の比較的広い範囲に表示するようにしている。このため、各文字画像100の間隔を比較的広くすることができ、各文字画像100に対応する設定領域200を比較的広い範囲に設定できる。これにより、第1ユーザU1が選択しようとしている文字画像100の検知精度を向上し易くなる。勿論、複数の文字画像100を、画面20中の比較的狭い範囲に表示するようにしてもよい。この場合、第1ユーザU1および第2ユーザU2は、透明表示パネル10を介して相手の表情を認識し易くなるというメリットがある。
【0080】
なお、設定領域200を設定する代わりに、例えば、画面20内に個別に設定した設定位置座標に、所定の文字サイズの各文字画像100をそれぞれ配置してもよい。この場合、透明ディスプレイ1は、例えば、各文字画像100の設定位置座標と、カーソル110の位置座標とに基づいて、第1ユーザU1が選択しようとしている文字画像100を判定すればよい。
【0081】
上述のようにステップS3で、第1ユーザU1が文字画像100の一つ、例えば、「す」の文字画像100aを注視していると判定した場合(ステップS3:YES)、ステップS4に進む。ステップS4では、透明ディスプレイ1は、注視画像である文字画像100aに対応する対応画像を、画面20の第1ユーザU1とは反対側にいる第2ユーザU2に対して表示する(図10参照)。
【0082】
ここで、「対応画像」とは、注視画像である文字画像100aの表示状態を適宜変化させた画像をいい、対応画像を「第2ユーザU2に対して表示する」とは、第1ユーザU1よりも第2ユーザU2が認識し易くなるように、対応画像を表示することをいう。言い換えれば、「対応画像を第2ユーザU2に対して表示する」とは、注視画像である文字画像100aの表示状態を第2ユーザU2が認識し易いように変化させたもの(対応画像)を、画面20に表示することをいう。
【0083】
透明ディスプレイ1は、上述のように、「す」の文字画像100aが第1ユーザU1によって注視されていると判定した場合、例えば、「す」の文字画像100aに対応する対応画像120を第2ユーザU2に対して表示する。すなわち、「す」の文字画像100aの表示状態を、第2ユーザU2が認識し易いように変化させた対応画像120を、画面20に表示させる。透明ディスプレイ1は、図10に示すように、対応画像120の一例として、「す」の文字画像100aの表示状態を変化させ、他の文字画像100よりも拡大し、さらに文字画像100aを左右方向で反転させた画像を透明表示パネル10の画面20に表示させる。
【0084】
図10(A)に示すように、第1ユーザU1に対しては、対応画像120(100a)を除く他の文字画像100は正しい向きで画面20に表示されるが、「す」の文字画像100aに対応する対応画像120だけは、いわゆる鏡文字として画面20に表示される。第2ユーザU2に対しては、図10(B)に示すように、「す」の文字画像100aに対応する対応画像120のみが正しい向きで画面20に表示され、対応画像120以外の文字画像100は、左右方向で反転した画像、いわゆる鏡文字の画像として画面20に表示される。
【0085】
なお、ステップS3で、第1ユーザU1が文字画像100の一つを注視していないと判定した場合は(ステップS3:NO)、ステップS2に戻り、第1ユーザU1の視点の検出を継続する。
【0086】
このように透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1によって選択画像である文字画像100の一つが注視された際、注視された文字画像(つまり、注視画像)に対応する対応画像120を第2ユーザU2に対して表示する。これにより、第1ユーザU1は、例えば、「す」の文字画像を選択したことを、第2ユーザU2に対して伝え易くなる。逆に言えば、第2ユーザU2は、第1ユーザU1が「す」の文字画像100aを選択したことを認識し易くなる。第2ユーザU2は、第1ユーザU1が伝えようとしている言葉や文章を認識し易くなる。
【0087】
以上のように、実施の形態1によれば、透明ディスプレイ1の新しい使い方が可能となり、第1ユーザU1と第2ユーザU2との間でコミュニケーションを図りやすくなる。第1ユーザU1と第2ユーザU2とは、対面でお互いの表情を見ながらコミュニケーションを図ることができ、意思疎通が容易となる。このように本発明によれば、透明ディスプレイ1である透明表示装置の用途を広げることができる技術を提供することができる。
【0088】
なお、透明ディスプレイ1は、スピーカ、音声合成システム等を備えていてもよい。その場合、透明ディスプレイ1は、例えば、透明表示パネル10の画面20にて、第1ユーザU1が選択画像である文字画像100の一つを注視した場合に、その文字画像100に対応した文字情報を音声に変換してスピーカから出力できる。これにより、第2ユーザU2は、画面20の文字画像とともに音声を聞きながら、第1ユーザU1とのコミュニケーションを図ることができる。
【0089】
また、上述の例において透明ディスプレイ1は、一つの文字画像100を所定時間以上、第1ユーザU1が注視していると判定した場合に、対応画像120を第2ユーザU2に対して表示するようにした。しかしながら、透明ディスプレイ1が対応画像120を第2ユーザU2に対して表示するタイミングは、これに限定されない。例えば、複数の文字画像100とは別に、例えば、文字画像100の選択を確定させる「確定ボタン」画像を画面20に表示させておく。そして、一つの文字画像100を所定時間以上、第1ユーザU1が注視していると判定した後、さらに、第1ユーザU1が、「確定ボタン」画像を注視して選択した場合に、透明ディスプレイ1が対応画像120を第2ユーザU2に対して表示するようにしてもよい。
【0090】
<実施の形態1の変形例>
上述の例では、透明ディスプレイ1が、注視画像に対応する対応画像120として、文字画像100aの表示状態を変化させて他の文字画像100よりも拡大し、且つ文字画像100aを左右方向で反転させた画像を透明表示パネル10の画面20に表示させる例を説明した。ただし、対応画像120は、このような画像に限定されるものではない。
【0091】
対応画像120は、例えば、図11に示すように、文字画像100aの表示状態を変化させて他の文字画像100よりも拡大した画像であってもよい。また例えば、図12に示すように、対応画像120は、文字画像100aを拡大することなく、文字画像100aを左右方向で反転させた画像としてもよい。また、対応画像120は、例えば、注視画像としての文字画像100aの表示色を変化させた変色画像であってもよい。対応画像120をこのような画像としても、第2ユーザU2は、第1ユーザU1が注視した注視画像を認識し易くなる。
【0092】
さらに対応画像120は、注視画像である文字画像100aを、その位置で変化させた画像でなくてもよい。対応画像120は、注視画像である文字画像100aを、画面20中の第1領域210とは別の第2領域220に表示させる画像であってもよい。
【0093】
例えば、第1ユーザU1が、「す」の文字画像100aを注視した場合、図13(A)に示すように、透明ディスプレイ1は、「す」の文字画像100aを、対応画像120として第2領域220に表示するようにしてもよい。さらに透明ディスプレイ1は、図13(B)に示すように、「す」の文字画像100aを左右方向で反転させた画像を、文字画像100aに対応する対応画像120として第2領域220に表示してもよい。何れにしても、画面20中の第1領域210とは別の第2領域220に対応画像120を表示することで、第2ユーザU2は、第1ユーザU1が視点により選択した文字画像をより認識し易くなる。
【0094】
さらに、例えば、図14に示すように、画面20中に、第1領域210とは別の第2領域220及び第3領域230を設け、対応画像120をこれら第2領域220及び第3領域230のそれぞれに表示するようにしてもよい。図14の例では、第2領域220に「す」の文字画像100aを、対応画像120として表示し、第3領域230に「す」の文字画像100aを左右方向で反転させた画像を、対応画像120として表示している。
【0095】
また、実施の形態1では、透明ディスプレイ1が、選択画像として複数の文字画像100を、透明表示パネル10の画面20に表示するようにしたが、選択画像は、文字画像100に限定されない。例えば、図15に示すように、選択画像は、予め登録された複数の文字画像100で構成される登録画像250であってもよい。図15の例では、「おはよう」の登録画像250を左右反転させた画像を、対応画像120として第2領域220に表示させている。これにより第1ユーザU1は、視線による注視の回数を減らして第2ユーザU2とのコミュニケーションを図ることができ、利便性が向上する。なお、登録画像250としては、例えば、所定の単語や定型文等が挙げられる。勿論、第1ユーザU1が、よく使う言葉や文章等の画像を登録することもできる。また、対応画像120は、選択画像である登録画像250を第1領域210内で拡大等した画像であってもよい。
【0096】
<実施の形態2>
図16図20を用いて、実施の形態2の透明ディスプレイについて説明する。実施の形態2の透明ディスプレイの基本的な構成は、実施の形態1と同様・共通であり、以下では、実施の形態2の透明ディスプレイにおける、実施の形態1とは異なる構成部分について主に説明する。
【0097】
図16は、実施の形態2の透明ディスプレイの概略構成を示す斜視図である。図17は、実施の形態2の透明ディスプレイにおける第1状態と第2状態とを切り替える切替制御の流れを説明するフローチャートである。図18図20は、実施の形態2の透明表示パネルの画面に表示される画像の一例を説明する図である。これら図18図20において、(A)は透明表示パネルの画面を第1ユーザ側から見た図であり、(B)は透明ディスプレイの画面を第2ユーザ側から見た図である。
【0098】
図16に示すように、実施の形態2では、透明ディスプレイ1を構成するアイトラッキング装置3が、実施の形態1と同様に第1カメラ30を備え、さらに、第2ユーザU2の視点を検出(言い換えれば、計測)するための第2カメラ31を備える。第2カメラ31は、例えば、透明表示パネル10の上部に、画面20の第2面s2側を向いて設置され、第2ユーザU2の目の動き(特に、瞳の動き)を撮影する。
【0099】
第2カメラ31の設置場所は、第1カメラ30と同様に、第2ユーザU2の目の動きを撮影可能な場所であれば特に限定されず、必ずしも透明表示パネル10上でなくてもよい。第2カメラ31は、本例ではCCDカメラ等であるが、これに限定されず、第2ユーザU2の目の動きを撮影できるものであればよい。また、本例では、第2カメラ31は、撮影した画像をコントローラ2に送信し、コントローラ2が、その撮影画像(言い換えるとカメラ画像)に基づいて、画像処理を行うことで、第2ユーザU2の視点を検出する。
【0100】
上述した実施の形態1の透明ディスプレイ1は、例えば、医療現場において、全身麻痺の患者である第1ユーザU1と、医者である第2ユーザU2とのコミュニケーションに利用される。実施の形態2の透明ディスプレイ1は、例えば、全身麻痺の患者である第1ユーザU1と、全身麻痺の患者である第2ユーザU2とのコミュニケーションにも利用することができる。つまり実施の形態2の透明ディスプレイ1は、例えば、全身麻痺の患者同士のコミュニケーションにも利用することができる。実施の形態1の透明ディスプレイ1では、画面20に表示される画像によって、第1ユーザU1から第2ユーザU2に対してのみ意思を伝えることができる。実施の形態2の透明ディスプレイ1では、画面20に表示される画像により、第1ユーザU1と第2ユーザU2との間の双方向で意思を伝えることができる。
【0101】
実施の形態2の透明ディスプレイ1では、選択画像(第1選択画像に相当)としての五十音の文字画像を、第1ユーザU1に向けて表示する第1状態と、選択画像(第2選択画像に相当)としての文字画像を第2ユーザU2に向けて表示する第2状態とを、第1ユーザU1または第2ユーザU2の要求に応じて切り替え可能としている。
【0102】
図17のフローチャートに示すように、透明ディスプレイ1は、電源がオンの状態になると、まずは、上記第1状態と上記第2状態とを切り替えるためのスイッチ画像を表示させる(ステップS11)。一例として、透明ディスプレイ1は、図18に示すように、透明表示パネル10の画面20に、上記スイッチ画像としての第1スイッチ画像310および第2スイッチ画像320を表示させる。第1スイッチ画像310は、図18(A)に示すように、第1ユーザU1に向けて表示され、第2スイッチ画像320は、図18(B)に示すように、第2ユーザU2に向けて表示される。第1スイッチ画像310は、「ON」画像311と「OFF」画像312とを含み、第2スイッチ画像320は、「ON」画像321と「OFF」画像322とを含む。
【0103】
この状態で、透明ディスプレイ1は、第1カメラ30および第2カメラ31を備えるアイトラッキング装置3により、第1ユーザU1および第2ユーザU2の視点を検出する(ステップS12)。次いで、透明ディスプレイ1は、その検出結果に基づいて、上記第1状態と上記第2状態との何れが選択されたかを判定する。すなわち、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1または第2ユーザU2によって、第1状態または第2状態の何れが要求されたかを判定する。まずステップS13で、例えば、第1ユーザU1または第2ユーザU2が、第1状態を選択したか否かを判定する。
【0104】
図19(A)に示すように、第1ユーザU1によって第1スイッチ画像310の「ON」画像311が注視され、注視時間が所定時間に達すると、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1が第1状態を選択したと判定する(ステップS13:YES)。あるいは、図19(B)に示すように、第2ユーザU2によって第2スイッチ画像320の「OFF」画像322が注視され、注視時間が所定時間に達すると、透明ディスプレイ1は、第2ユーザU2が第1状態を選択したと判定する(ステップS13:YES)。
【0105】
この場合、ステップS14に進み、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の表示を第1状態とし、図19に示すように、透明表示パネル10の画面20に、第1ユーザU1に向けて、選択画像(第1選択画像に相当)である複数の文字画像100を表示させる。すなわち、透明表示パネル10の画面20に、第1面s1側を前面として第1選択画像としての複数の文字画像100を表示させる。
【0106】
この第1状態では、第1ユーザU1は、図19(A)に示すように、画面20に表示された各文字画像100を第1面側s1側から視認でき、また、文字画像100が表示された画面20を介して第2ユーザU2を視認することができる。第2ユーザU2は、図19(B)に示すように、画面20に表示された文字画像100を第2面s2側から視認でき、また、文字画像100が表示された画面20を介して第1ユーザU1を視認できる。ただし、第2ユーザU2から見える文字画像100は、あくまで画面20の第2面s2側から見た画像となる。つまり第2ユーザU2から見える文字画像100は、文字を左右方向で反転させた画像、いわゆる鏡文字の画像となる。
【0107】
その後は、実施の形態1と同様、第1ユーザU1の視点に基づく意思伝達処理が開始される(図7のフローチャート等参照)。透明ディスプレイ1は、アイトラッキング装置3の検出結果から、第1ユーザU1が注視している一つの文字画像100である第1選択画像(第1注視画像に相当)を判別する。そして透明ディスプレイ1は、この第1注視画像としての文字画像100に対応する対応画像(第2対応画像に相当)120を、第1ユーザU1に対して表示する。
【0108】
一方、第1ユーザU1または第2ユーザU2が第1状態を選択しない場合(ステップS13:No)、ステップS15に進み、第1ユーザU1または第2ユーザU2が第2状態を選択したか否かを判定する。図20(A)に示すように、第1ユーザU1によって第1スイッチ画像310の「OFF」画像312が注視され、注視時間が所定時間に達すると、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1が第2状態を選択したと判定する(ステップS15:YES)。あるいは、図20(B)に示すように、第2ユーザU2によって第2スイッチ画像320の「ON」画像321が注視され、注視時間が所定時間に達すると、透明ディスプレイ1は、第2ユーザU2が第2状態を選択したと判定する(ステップS15:YES)。
【0109】
この場合、ステップS16に進み、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の表示を第2状態とし、図20に示すように、透明表示パネル10の画面20に、第2ユーザU2に向けて、選択画像(第2選択画像に相当)である複数の文字画像100を表示させる。すなわち、透明表示パネル10の画面20に、第2面s2側を前面として第2選択画像としての複数の文字画像100を表示させる。
【0110】
この第2状態では、第1ユーザU1は、図20(A)に示すように、画面20に表示された各文字画像100を視認でき、また文字画像100が表示された画面20を介して第2ユーザU2を視認することができる。ただし、第1ユーザU1から見える文字画像100は、あくまで画面20の第1面s1側から見た画像となる。つまり第1ユーザU1から見える文字画像100は、文字を左右方向で反転させた画像、いわゆる鏡文字の画像となる。第2ユーザU2は、図20(B)に示すように、画面20に表示された文字画像100を第2面s2側から視認でき、また文字画像100が表示された画面20を介して第1ユーザU1を視認できる。
【0111】
その後は、実施の形態1と同様の流れで、第2ユーザU2の視点に基づく意思伝達処理が実施される。すなわち、透明ディスプレイ1は、アイトラッキング装置3の検出結果から、第2ユーザU2が注視している一つの文字画像100である第2選択画像を判別する。そして透明ディスプレイ1は、この第2注視画像としての文字画像100に対応する対応画像(第2対応画像に相当)120を、第1ユーザU1に対して表示する。
【0112】
なお、第1ユーザU1の視点に基づく意思伝達処理が実行されている状態で、第1ユーザU1が第1スイッチ画像310の「OFF」画像312を注視した場合、透明表示パネル10の表示は、例えば、第1状態から第2状態に切り替えられる。すなわち、図20に示すように、透明表示パネル10には、第2ユーザU2に向けて複数の文字画像100が表示される。あるいは、この場合、透明表示パネル10の表示は、例えば、図19に示すように、第1状態と第2状態とを切り替えるための第1スイッチ画像310および第2スイッチ画像320を表示させた状態に切り替えられるようにしてもよい。
【0113】
また、第2ユーザU2の視点に基づく意思伝達処理が実行されている状態で、第2ユーザU2が第2スイッチ画像320の「OFF」画像322を注視した場合、透明表示パネル10の表示は、例えば、第2状態から第1状態に切り替えられる。すなわち、図19に示すように、透明表示パネル10には、第1ユーザU1に向けて複数の文字画像100が表示される。あるいは、透明表示パネル10の表示は、図18に示すように、第1状態と第2状態とを切り替えるための第1スイッチ画像310および第2スイッチ画像320を表示させた状態に切り替えられるようにしてもよい。
【0114】
以上説明した実施の形態2によれば、透明ディスプレイ1の新しい使い方が可能であり、第1ユーザU1と第2ユーザU2との間でコミュニケーションを図りやすくなる。実施の形態2の透明ディスプレイ1では、画面20に表示される画像による第1ユーザU1と第2ユーザU2との間の双方向での意思疎通が可能となる。したがって、透明ディスプレイ1の利用範囲が広がる。
【0115】
なお、上述の例において、ステップS13およびステップS14と、ステップS15およびステップS16とを実施する順序は、特に限定されず、ステップS15およびステップS16を先に実施してもよい。また、実施の形態2では、第1ユーザU1または第2ユーザU2の要求に応じて、透明表示パネル10の表示を第1状態と第2状態とで切り替える方法の一例について説明したが、この方法はあくまで一例に過ぎず、特に限定されるものではない。
【0116】
<実施の形態2の変形例>
実施の形態2では、第1ユーザU1および第2ユーザU2は、各種の入力や選択を行う入力手段としてアイトラッキング装置3を用いているが、入力手段は、これに限定されない。入力手段としては、例えば、物理的に操作するスイッチ(いわゆる物理スイッチ)やキーボード等の入力装置をアイトラッキング装置3と併用するようにしてもよい。第1ユーザU1および第2ユーザU2の手指がある程度動く場合には、物理スイッチ等を併用することで、操作性をさらに向上することができる。
【0117】
さらに、実施の形態2では、第1ユーザU1または第2ユーザU2の要求に応じて、第1ユーザU1が選択画像を選択できる第1状態と、第2ユーザU2が選択画像を選択できる第2状態とを切り替えるようにしたが、必ずしも第1状態と第2状態とを切り替えなくてもよい。すなわち第1ユーザU1と第2ユーザU2とが、同時に、選択画像を選択できるようにしてもよい。具体的には、図21に示すように、選択画像として、第1ユーザU1に向けた第1選択画像である複数の文字画像100Aと、第2ユーザU2に向けた第2選択画像である複数の文字画像100Bと、を表示領域である画面20に表示するようにしてもよい。
【0118】
この場合、透明ディスプレイ1は、アイトラッキング装置3の検出結果から、第1ユーザU1が注視している一つの文字画像100Aである第1選択画像(つまり第1注視画像)を判別する。そして透明ディスプレイ1は、この第1注視画像である文字画像100Aに基づく第1対応画像120Aを第2ユーザU2に対して表示する。一方で、透明ディスプレイ1は、アイトラッキング装置3の検出結果から、第2ユーザU2が注視している一つの文字画像100Bである第2選択画像(つまり第2注視画像)を判別する。そして透明ディスプレイ1は、第2注視画像である文字画像100Bに基づく第2対応画像120Bを、第1ユーザU1に対して表示する。このように第1ユーザU1と第2ユーザU2とが、同時に、選択画像を選択できるようにすることで、利便性をさらに向上することができる。
【0119】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は、前述の実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。各実施の形態は、必須構成要素を除き、構成要素の追加・削除・置換などが可能である。特に限定しない場合、各構成要素は、単数でも複数でもよい。本発明には、各実施の形態や変形例を組み合わせた形態も含まれる。
【0120】
上述の実施の形態では、本発明の透明表示装置の一例として、液晶表示装置である液晶ディスプレイについて説明したが、本発明は、有機EL装置などの、他の自発光型表示装置に適用することもできる。実施の形態で説明した機能は、透明状態と非透明状態との間での遷移が可能な表示層(画素)を備える表示装置であれば、同様に適用可能である。また、表示装置の画面のサイズは、小型から大型まで、特に限定せずに適用可能である。
【0121】
また、上述の実施の形態では、本発明の透明表示装置として、コントローラによって特徴的な制御を行う例について説明したが、本発明の透明表示装置の構成は、これに限定されず、透明表示装置のコントローラに対して外部に接続されるコンピュータシステムが、同様の特徴的な制御を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…透明ディスプレイ(透明表示装置)、2…コントローラ、3…アイトラッキング装置(センサデバイス)、10…透明表示パネル、11…第1基板、12…第2基板、13…表示層、20…画面、30…第1カメラ、31…第2カメラ、100…文字画像、110…カーソル、120…対応画像、200…設定領域、210…第1領域、220…第2領域、230…第3領域、250…登録画像、310…第1スイッチ画像、320…第2スイッチ画像、U1…第1ユーザ、U2…第2ユーザ。
図1
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