(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099191
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】センサ素子及びガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
G01N27/409 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002952
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰光
(72)【発明者】
【氏名】青島 楓汰
(72)【発明者】
【氏名】古田 斉
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BG01
2G004BM07
(57)【要約】
【課題】電極に接続される基準リード部の空孔によるガスセンサの特性の変動を抑制したセンサ素子及びガスセンサを提供する。
【解決手段】検知電極106aおよび基準電極104aと、検知電極および基準電極にそれぞれ接続される1対のリード部と、を備え、検知電極および基準電極により被測定ガス中の対象成分を測定するセンサ素子100であって、1対のリード部のうち、基準電極と接続される基準リード部104bは、Pt、Pd、Rh及びAuの群から選ばれる1種以上の貴金属粒子151と、貴金属粒子より円相当径が大径のセラミック粒子153と、空孔G1、G2とを含んで構成され、基準リード部の長手方向に交差する断面を見たとき、リード部膜厚t<(セラミック粒子の最大粒径M×3)<リード部幅W、の関係を満たす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスと接触する検知電極および基準ガスと接触する基準電極と、
前記検知電極および前記基準電極にそれぞれ接続される1対のリード部と、を備え、前記検知電極および前記基準電極により被測定ガス中の対象成分を測定するセンサ素子であって、
前記1対のリード部のうち、前記基準電極と接続される基準リード部は、Pt、Pd、Rh及びAuの群から選ばれる1種以上の貴金属粒子と、前記貴金属粒子より円相当径が大径のセラミック粒子と、空孔とを含んで構成され、
前記基準リード部の長手方向に交差する断面を見たとき、リード部膜厚t<(前記セラミック粒子の最大粒径M×3)<リード部幅W、の関係を満たすことを特徴とするセンサ素子。
【請求項2】
前記断面において、前記空孔は、前記基準リード部の内部空孔G1と、前記基準リード部の両面にそれぞれ接する他部材との間の界面空孔G2とからなり、
G1とG2の合計面積に対し、G1の面積が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサ素子と、
前記センサ素子を保持する主体金具と、
を有することを特徴とするガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃焼器や内燃機関等の燃焼ガスや排気ガス中に含まれる特定ガスのガス濃度を検出するのに好適に用いられるセンサ素子及びガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス中に含まれる特定成分(酸素等)の濃度を検出するためのガスセンサが知られている。この種のガスセンサは、その内部に、細長く延びた板状のセンサ素子を備えている。センサ素子の先端部には、特定成分を検知するための検知部が設けられている(特許文献1参照)。
検知部は検知電極および基準電極と固体電解質体とで構成されており、各電極から後端側に向かってリード部が延びている。ここで、基準電極に接続される基準リード部には、内部に空孔が形成され、基準リード部を介して素子内外のガスが連通できる構造とすることで、基準電極周囲の基準ガスの圧力を調整するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基準リード部は導電性ペーストをスクリーン印刷等した後で焼成して形成されるが、その印刷厚みにはバラつきがあり、基準リード部の膜厚が厚くなると、ガスセンサの検出値(起電力)が大きく低下し、ガスセンサの特性、品質がバラつくという問題がある。これは、基準リード部の膜厚が厚くなるとリード部内部の空孔が大きくなり、被測定ガスが空孔から抜けやすくなるためと考えられる。
【0005】
本発明の目的は、電極に接続される基準リード部の空孔によるガスセンサの特性の変動を抑制したセンサ素子及びガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のセンサ素子は、被測定ガスと接触する検知電極および基準ガスと接触する基準電極と、前記検知電極および前記基準電極にそれぞれ接続される1対のリード部と、を備え、前記検知電極および前記基準電極により被測定ガス中の対象成分を測定するセンサ素子であって、前記1対のリード部のうち、前記基準電極と接続される基準リード部は、Pt、Pd、Rh及びAuの群から選ばれる1種以上の貴金属粒子と、前記貴金属粒子より円相当径が大径のセラミック粒子と、空孔とを含んで構成され、前記基準リード部の長手方向に交差する断面を見たとき、リード部膜厚t<(前記セラミック粒子の最大粒径M×3)<リード部幅W、の関係を満たすことを特徴とする。
【0007】
基準リード部内部の空孔が大きくなると、被測定ガスが空孔から抜けやすくなり、ガスセンサの特性が変化する傾向がある。
そして、リード部の空孔は、内部空孔と、リード部の両面にそれぞれ接する他部材との間の界面空孔とからなると考えられる。このうち、界面空孔の面積は、膜厚tが変化しても大きく変動しない。従って、t<M×3であれば膜厚tが薄いため、内部空孔の数は少なく、全空孔のうち界面空孔が大部分を占めるので、膜厚tが変化しても空孔の合計面積は大きく変動せず、ガスセンサの特性が変動することを抑制できる。
これに対し、t≧M×3になると膜厚tが厚いため、膜厚tが厚くなるにつれて内部空孔が増え、空孔の合計面積は膜厚tに応じて増大する。このため、膜厚tに応じてガスセンサの特性も変動する。
【0008】
本発明のセンサ素子は、前記断面において、前記空孔は、前記基準リード部の内部空孔G1と、前記基準リード部の両面にそれぞれ接する他部材との間の界面空孔G2とからなり、G1とG2の合計面積に対し、G1の面積が10%以下であってもよい。
このセンサ素子によれば、膜厚tが変化しても空孔G1,G2の合計面積の変動がさらに小さくなり、ガスセンサの特性が変動することをさらに抑制できる。
【0009】
本発明のガスセンサは、前記センサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、電極に接続される基準リード部の空孔によるガスセンサの特性の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】軸線方向に沿って切断されたガスセンサの断面図である。
【
図2】センサ素子を構成する検出素子部及びヒータ部を模式的に表した分解斜視図である。
【
図3】t<M×3のとき、リード部の長手方向に交差する断面の模式図である。
【
図4】t≧M×3のとき、リード部の長手方向に交差する断面の模式図である。
【
図5】リード部膜厚tと、ガスセンサの特性(起電力)との関係を示す図である。
【
図6】t<M×3のときのリード部の断面SEM像を示す図である。
【
図7】
図6を画像解析して抽出した空孔G1,G2を示す図である。
【
図8】t≧M×3のときのリード部の断面SEM像を示す図である。
【
図9】
図8を画像解析して抽出した空孔G1,G2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
先ず、本実施形態に係るセンサ素子100を含むガスセンサ(酸素センサ)1の構成について説明する。
図1は、軸線L方向に沿って切断されたガスセンサ1の断面図、
図2は、センサ素子100を構成する検出素子部300及びヒータ部200を模式的に表した分解斜視図である。なお、本明細書では、
図1に示されるガスセンサ1の下側を、「先端側」と称し、その反対側(
図1の上側)を、「後端側」と称する。
【0013】
ガスセンサ1は、
図1に示されるように、検出素子部300及びヒータ部200の積層体からなるセンサ素子100と、そのセンサ素子100等を内部に収容する形で保持する主体金具30と、その主体金具30の先端部に装着されるプロテクタ24を備えている。センサ素子100は、全体的には、細長く延びた板状をなしており、その長手方向が、軸線L方向に沿うように配置されている。なお、センサ素子100の先端側には、多孔質保護層20が形成されている。
【0014】
図2に示されるように、ヒータ部200は、全体的には、細長く延びた板状をなしており、アルミナを主体とする第1基体101及び第2基体103と、第1基体101と第2基体103とに挟まれ、白金を主体とする発熱体102とを有している。発熱体102は、先端側に位置する発熱部102aと、その発熱部102aから第1基体101の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる一対のヒータリード部102bとを有している。そして、ヒータリード部102bの末端は、第1基体101に設けられているヒータ側スルーホール101aに形成された導体を介してヒータ側パッド120と電気的に接続されている。
【0015】
検出素子部300は、ヒータ部200と同様、全体的には、細長く延びた板状をなしており、酸素濃度検出セル130と酸素ポンプセル140とを備えている。
酸素濃度検出セル130は、第1固体電解質体105と、その第1固体電解質体105の両面に形成された第1電極104及び第2電極106とから構成されている。第1電極104は、第1電極部104aと、その第1電極部104aから第1固体電解質体105の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第1リード部104bとから構成されている。第2電極106は、第2電極部106aと、その第2電極部106aから第1固体電解質体105の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第2リード部106bとから構成されている。
【0016】
第1リード部104bの末端は、第1固体電解質体105に設けられる第1スルーホール105a、後述する絶縁層107に設けられる第2スルーホール107a、第2固体電解質体109に設けられる第4スルーホール109a及び保護層111に設けられる第6スルーホール111aのそれぞれに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。第2リード部106bの末端は、後述する絶縁層107に設けられる第3スルーホール107b、第2固体電解質体109に設けられる第5スルーホール109b及び保護層111に設けられる第7スルーホール111bのそれぞれに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。
【0017】
第1電極部104a及び第2電極部106aが、それぞれ特許請求の範囲の「基準電極」、「検知電極」に相当し、第1リード部104bが特許請求の範囲の「基準リード部」に相当する。
【0018】
酸素ポンプセル140は、第2固体電解質体109と、その第2固体電解質体109の両面に形成された第3電極108及び第4電極110とから構成されている。第3電極108は、第3電極部108aと、この第3電極部108aから第2固体電解質体109の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第3リード部108bとから構成されている。第4電極110は、第4電極部110aと、この第4電極部110aから第2固体電解質体109の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第4リード部110bとから構成されている。
【0019】
第3リード部108bの末端は、第2固体電解質体109に設けられる第5スルーホール109b及び保護層111に設けられる第7スルーホール111bのそれぞれに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。第4リード部110bの末端は、保護層111に設けられる第8スルーホール111cに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。なお、第2リード部106bと第3リード部108bは同電位となっている。
【0020】
第1固体電解質体105及び第2固体電解質体109は、ジルコニア(ZrO2)に安定化剤としてイットリア(Y2O3)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成される。
発熱体102、第1電極104、第2電極106、第3電極108、第4電極110、ヒータ側パッド120及び検出素子側パッド121は、白金族元素で形成することができる。これらを形成する好適な白金族元素としては、Pt、Rh、Pd等が挙げられる。なお、これらの白金族元素は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記発熱体102等は、耐熱性及び耐酸化性の観点より、Ptを主体にして形成することが好ましい。また、上記発熱体102等は、主体となる白金族元素の他にセラミック成分を含有することが好ましい。このセラミック成分は、固着という観点より、積層される側の主体となる材料と同様の成分であることが好ましい。
【0022】
そして、上述した酸素ポンプセル140と酸素濃度検出セル130との間に、絶縁層107が形成されている。絶縁層107は、絶縁部114と拡散抵抗部115とからなる。この絶縁層107の絶縁部114には、第2電極部106a及び第3電極部108aに対応する位置に中空の測定室107cが形成されている。この測定室107cは、絶縁層107の幅方向で外部と連通しており、その連通した部分には、外部と測定室107cとの間のガス拡散を所定の律速条件下で実現する拡散抵抗部115が配置されている。
絶縁部114は、絶縁性を有するセラミック焼結体であれば限定されず、例えば、アルミナやムライト等の酸化物系セラミック等から構成される。
拡散抵抗部115は、アルミナからなる多孔質体であり、この多孔質体からなる拡散抵抗部115によって、検出ガスが測定室107cへ流入する際の速度が調整される。
【0023】
また、第2固体電解質体109の表面には、第4電極110を挟み込むようにして、保護層111が形成されている。この保護層111は、第4電極部110aを挟み込むようにして、第4電極部110aを被毒から防御するための多孔質の電極保護部113aと、第4リード部110bを挟み込むようにして、第2固体電解質体109を保護するための補強部112とからなる。なお、本実施形態のセンサ素子100は、酸素濃度検出セル130の電極間に生じる電圧(起電力)が所定の値(例えば、450mV)となるように、酸素ポンプセル140の電極間に流れる電流の方向及び大きさが調整され、酸素ポンプセル140に流れる電流に応じた被測定ガス中の酸素濃度をリニアに検出する酸素センサ素子となっている。
【0024】
ここで、軸線L方向に垂直なセンサ素子100の断面を見たとき、保護層111及び第1基体101からなる外縁が長辺をなし、積層方向に沿う2辺が短辺となる矩形状の断面をなす。
【0025】
図1に戻り、主体金具30は、SUS430製であり、ガスセンサ1を排気管に取り付けるための雄ねじ部31と、取り付け時に取り付け工具をあてがう六角部32とを備えている。また、主体金具30には、径方向内側に向かって突出する金具側段部33が設けられており、その金具側段部33はセンサ素子100を保持するための金属ホルダ34を支持している。そしてこの金属ホルダ34の内側にはセラミックホルダ35、滑石36が先端側から順に配置されている。
この滑石36は、金属ホルダ34内に配置される第1滑石37と、金属ホルダ34の後端に配置される第2滑石38とからなる。金属ホルダ34内で第1滑石37が圧縮充填されることによって、センサ素子100は金属ホルダ34に対して固定される。また、主体金具30内で第2滑石38が圧縮充填されることによって、センサ素子100の外面と主体金具30の内面との間のシール性が確保される。
【0026】
そして第2滑石38の後端側には、アルミナ製のスリーブ39が配置されている。このスリーブ39は多段の円筒状に形成されており、軸線Lに沿うように軸孔39aが設けられ、そのような軸孔39aを含むスリーブ39の内部にセンサ素子100が挿通される。そして、主体金具30の後端側にある加締め部30aが内側に折り曲げられており、そのような加締め部30aにより、スリーブ39がステンレス製のリング部材40を介して主体金具30の先端側に押圧されている。
【0027】
また、主体金具30の先端側外周には、金属製のプロテクタ24が溶接によって取り付けられている。プロテクタ24は、二重構造をなしており、外側には一様な外径を有する有底円筒状の外側プロテクタ41が配置され、内側には後端部42aの外径が先端部42bの外径よりも大きく形成された有底円筒状の内側プロテクタ42が配置されている。このようなプロテクタ24は、主体金具30の先端から突出するセンサ素子100の先端部を覆うと共に、複数のガス取り入れ孔24aを有する。
【0028】
主体金具30の後端側には、SUS430製の外筒25の先端側が挿入されている。外筒25は、先端側が拡径した先端部25aを備えており、その先端部25aが、主体金具30にレーザ溶接等で固定されている。外筒25の後端側の内部には、セパレータ50が配置されており、そのセパレータ50と外筒25との間で形成される隙間に、保持部材51が介在されている。保持部材51は、セパレータ50の周面から外側に盛り上がった突出部50aに係合しつつ、加締められた外筒25とセパレータ50との間で固定されている。
【0029】
また、セパレータ50には、検出素子部300用やヒータ部200用の各種のリード線11,12,13を挿入するための挿通孔50bが先端側から後端側に亘って貫通する形で設けられている。なお、
図1には、説明の便宜上、3本のリード線11,12,13のみが示され、それら以外のリード線の図示は、省略した。挿通孔50b内には、上記リード線11等と、検出素子部300の検出素子側パッド121及びヒータ部200のヒータ側パッド120とを接続する接続端子16が収容されている。各リード線11等は、外部において、図示されないコネクタに接続可能な構成となっており、そのようなコネクタを介してECU等の外部機器と各リード線11等との間で、電気信号の入出力が行われる。
【0030】
更に、セパレータ50の後端側には、外筒25の後端側の開口部25bを閉塞するための略円柱状のゴムキャップ52が配置されている。このゴムキャップ52は、外筒25の後端内に収容された状態で、外筒25が径方向内側に向かって加締められることにより、外筒25に固着される。また、ゴムキャップ52にも、リード線11等をそれぞれ挿入するための挿通孔52aが先端側から後端側に亘って貫通する形で設けられている。
【0031】
次に、本発明の特徴部分である第1リード部104bについて説明する。
図3はt<M×3のとき、第1リード部104bの長手方向に交差する断面の模式図である。
図3に示すように、第1リード部104bは、Pt、Pd、Rh及びAuの群から選ばれる1種以上の貴金属粒子151と、前記貴金属粒子より円相当径が大径のセラミック粒子153と、空孔G1、G2とを含んで構成され、ガス透過性の多孔質体からなる。
【0032】
第1リード部104bは、センサ素子100に設けられた連通孔(第1スルーホール105a、第2スルーホール107a、第4スルーホール109a及び第6スルーホール111a)に臨んで外部と連通している。第6スルーホール111aに電気的に接続される検出素子側パッド121もガス透過性の多孔質体からなる。
そして、外部の基準大気は、検出素子側パッド121、連通孔、及び第1リード部104bを経由して基準電極である第1電極部104aに供給されるようになっている。
なお、貴金属粒子151とセラミック粒子153の粒径は、第1リード部104bの長手方向に交差する断面図(SEM像など、
図3参照)にて、貴金属粒子151とセラミック粒子153の組成分析を行い、各粒子のコントラストに合う画像の円相当径をそれぞれ求める。
【0033】
ここで、
図3に示すように、リード部膜厚t<(セラミック粒子153の最大粒径M×3)<リード部幅W、の関係を満たす。
第1リード部104bの空孔は、内部空孔G1と、第1リード部104bの両面にそれぞれ接する他部材(第2基体103及び第1固体電解質体105)との間の界面空孔G2とからなる。このうち、界面空孔G2の面積は、膜厚tが変化しても大きく変動しない。
従って、t<M×3であれば膜厚tが薄いため、内部空孔G1の数は少なく(tが薄ければG1がゼロもあり得る)、空孔G1,G2のうち、界面空孔G2が大部分を占めるので、膜厚tが変化しても空孔G1,G2の合計面積は大きく変動せず、ガスセンサの検出値(起電力)が変動してガスセンサの特性が変動することを抑制できる。
【0034】
これに対し、
図4に示すように、t≧M×3になると膜厚tが厚いため、膜厚tが厚くなるにつれて内部空孔G1が増え、空孔G1,G2の合計面積は膜厚tに応じて増大する。このため、膜厚tに応じてガスセンサの検出値(起電力)が変動してガスセンサの特性も変動する。
【0035】
なお、M×3<Wと規定した理由は、tに比べてあまりにWが狭いと、空孔G1,G2のうち、界面空孔G2が占める割合が大きく減少し、t<M×3であっても膜厚tのバラつきに伴って空孔G1,G2の合計面積も変動するからである。
【0036】
G1とG2の合計面積に対し、G1の面積が10%以下であると、膜厚tが変化しても空孔G1,G2の合計面積の変動がさらに小さくなり、ガスセンサの特性が変動することをさらに抑制できる。
【0037】
第1リード部104bの膜厚tの測定方法は、
図6のような第1リード部104bを含む断面SEM像に基づいて行う。なお、
図6は後述する実施例の断面SEM像である。
まず、断面SEM像を画像解析して二値化し、所定の濃淡を空孔部分とみなして空孔G1,G2を抽出する(二値化ソフトウェア:ImageJ)。抽出結果を
図7に示す。
空孔G1,G2は断面SEM像の中で最も暗部であり、第1リード部104bを構成する貴金属粒子151が最も明部である。また、第1リード部104bを構成するセラミック粒子153は中間の明度である。
また、膜厚tは、第1リード部104bの3か所の幅の平均値とする。
【0038】
また、空孔G2は「第1リード部104bの両面(厚み方向の両端)にそれぞれ接する他部材(第2基体103及び第1固体電解質体105)との間の界面空孔」であるので、抽出した空孔G1,G2のうち第1リード部104bの外側に接する空孔をG2として数え上げ、それ以外を空孔G1として数え上げる(
図7)。個々の空孔は、上記二値化ソフトウェアのAnalyze Particleコマンドから計数し、さらに個々の空孔の面積を算出する。
これにより、G1の総面積、及びG2の総面積を算出できる。
【0039】
次に、空孔G2のうち貴金属粒子151に繋がるとともに第1リード部104bの厚み方向に最も外側(
図6の上下方向)の空孔G2の端部から、第1リード部104bの面方向(
図6の左右方向)に平行線BLを引く。平行線BLは、第1リード部104bの上側と、下側にそれぞれ引く。
そして、2つの平行線BLで囲まれた断面SEM像の領域を第1リード部104bとみなし、2つの平行線BLの厚み方向の間隔を膜厚tとして算出する。
なお、空孔のうち貴金属粒子151に繋がらない(つまり、平行線BLよりも貴金属粒子151から遠い)ものは、第1リード部104bに隣接する他の層の内部の巣(空隙)と考えられるので、排除する。
また、貴金属粒子151に繋がる空孔G2よりも、他の貴金属粒子151が厚み方向に最も外側に位置する場合は、その貴金属粒子151の位置を平行線BLとする。
【0040】
セラミック粒子153の最大粒径Mの測定方法は、上記断面SEM像から、2つの平行線BLで囲まれた第1リード部104bの領域内で、セラミック粒子153とみなした明度の部位のうち、外縁が判別できる閉じた部位の円相当径の最大値とする。例えば
図6の断面では、外縁が判別できるいくつかのセラミック粒子153のうち、セラミック粒子153Mの円相当径を最大粒径Mとした。
【0041】
本発明は上記実施形態に限定されない。センサ素子は、1対の電極と1対のリードとを有すればよく、本実施の形態の酸素センサ(酸素センサ素子)に適用することができるが、これらの用途に限られず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、酸素ポンプセルを有する全領域酸素センサ、被測定ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサ(NOxセンサ素子)や、HC濃度を検出するHCセンサ(HCセンサ素子)等に本発明を適用してもよい。又、センサ素子は筒型でも良いし、バイナリセンサでもリニアセンサでも良い。
【実施例0042】
<ガスセンサの特性(起電力)の評価>
図1、
図2に示す板状のセンサ素子(酸素センサ素子)100を製造した。ここで、第1リード部104bとして、Ptからなる貴金属粒子と、貴金属粒子より円相当径が大径のアルミナ粒子153とを含むペーストをセンサ素子の所定位置にスクリーン印刷した後、全体を焼成して形成した。印刷厚みを変化させて複数のセンサ素子サンプルを作製した。
【0043】
次に、上記センサ素子100をガスセンサ1に組み付け、ガスセンサを測定温度まで加熱し、測定対象雰囲気下にてガスセンサの特性(起電力)を評価した。、第1リード部104bの厚みが変動しても起電力の変動が小さいほど良好である。
得られた結果を
図5に示す。
図5はリード部膜厚tと、ガスセンサの特性(起電力)との関係を示す。
図5に示すように、t<M×3とすると、リード部膜厚tの変化に対し、ガスセンサの検出値(起電力)の変化が小さいことがわかった。一方、t≧M×3とすると、リード部膜厚tの変化に対し、ガスセンサの検出値(起電力)の変化が大きくなった。
【0044】
図6、
図8はそれぞれt<M×3、t≧M×3のときの第1リード部104bの断面SEM像を示す。また、
図7,
図9は、それぞれ
図6、
図8を画像解析して抽出した空孔G1,G2を示す。
図6に示す断面像から、画像解析によりG1とG2の合計面積に対し、G1の面積を算出すると0.6%であった。また、t<M×3の他の断面像(図示せず)では9.3%であった。
一方、
図8に示す断面像から、画像解析によりG1とG2の合計面積に対し、G1の面積を算出すると42.7%であった。また、t≧M×3の他の断面像(図示せず)では22.8%であった。
これより、G1とG2の合計面積に対し、G1の面積が10%以下であると好ましいことがわかる。