(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099193
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ガス化装置
(51)【国際特許分類】
C10J 3/72 20060101AFI20240718BHJP
F23G 5/027 20060101ALI20240718BHJP
F23G 5/20 20060101ALI20240718BHJP
F23J 3/04 20060101ALI20240718BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20240718BHJP
F23J 1/02 20060101ALI20240718BHJP
F27B 7/08 20060101ALI20240718BHJP
F27B 7/18 20060101ALI20240718BHJP
F27B 7/34 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C10J3/72 J
C10J3/72 G
F23G5/027 Z
F23G5/20 A
F23J3/04
F23G5/44 B
F23J1/02 Z
F27B7/08
F27B7/18
F27B7/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002954
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 枝里子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】平間 道郎
【テーマコード(参考)】
3K065
3K161
3K261
4K061
【Fターム(参考)】
3K065AA07
3K065AC01
3K065AC02
3K065AC17
3K161AA04
3K161AA16
3K161CA03
3K161DA33
3K161EA01
3K161EA02
3K161EA22
3K161EA32
3K161EA41
3K161GA25
3K161HA22
3K161HA32
3K161HA42
3K161LA03
3K161LA13
3K261DA02
3K261DA03
3K261DA05
3K261DA16
3K261JA09
3K261JA12
4K061AA08
4K061DA01
4K061EA03
4K061EA07
4K061FA04
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で回転筒状部から排出されて下流へと導かれる粒子の量を低減する。
【解決手段】被処理物をガス化するガス化装置は、回転筒状部11と、回転筒状部11内の被処理物を加熱する加熱部と、回転筒状部11内に設けられた攪拌部と、回転筒状部11の排出口112から排出されるガスおよび残存物を、ガスと残存物とに分離する分離部16とを備える。分離部16は、排出口112から下方へと向かう下方流路を形成する下方流路形成部61と、下方流路の下流側に位置し、上方へと向かう上方流路を形成する上方流路形成部62と、下方流路と上方流路との間の位置から導かれる残存物を貯留する残存物貯留部とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物をガス化するガス化装置であって、
中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に被処理物の供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、
前記回転筒状部を加熱することにより、前記回転筒状部内の前記被処理物を加熱する加熱部と、
前記回転筒状部内に設けられ、前記回転筒状部が回転することにより前記被処理物を攪拌する攪拌部と、
前記加熱部による前記被処理物の加熱および前記攪拌部による前記被処理物の攪拌により生成されて前記排出口から排出されるガスおよび残存物を、前記ガスと前記残存物とに分離する分離部と、
を備え、
前記分離部が、
前記排出口から水平方向に対して下方へと向かう下方流路を形成する下方流路形成部と、
前記下方流路の下流側に位置し、水平方向に対して上方へと向かう上方流路を形成する上方流路形成部と、
前記下方流路と前記上方流路との間の位置から導かれる前記残存物を貯留する残存物貯留部と、
を備えることを特徴とするガス化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化装置であって、
気流の流れ方向に垂直な断面における前記下方流路の断面積が、前記排出口の面積よりも大きいことを特徴とするガス化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス化装置であって、
前記攪拌部が、前記被処理物を前記供給口から前記排出口へと向かう方向に移動させる順送り構造と、前記被処理物を前記排出口から前記供給口へと向かう方向に移動させる逆送り構造とを含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガス化装置であって、
前記攪拌部が、前記供給口から前記排出口に向かって順に、熱分解部と、改質部とを含み、
前記改質部が、前記順送り構造と、前記逆送り構造とを含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス化装置であって、
前記熱分解部が、前記被処理物を前記供給口から前記排出口へと向かう方向に移動させる他の順送り構造と、前記被処理物を前記排出口から前記供給口へと向かう方向に移動させる他の逆送り構造とを含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のガス化装置であって、
前記下方流路形成部が、前記排出口の外側から前記中心軸に沿って見た場合に前記排出口の外側において前記排出口の50%以上と重なる邪魔板を含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項7】
請求項6に記載のガス化装置であって、
前記排出口の外側から前記中心軸に沿って見た場合に前記邪魔板が前記排出口の全体と重なることを特徴とするガス化装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載のガス化装置であって、
前記残存物貯留部から前記残存物が導かれ、前記残存物を燃焼することにより熱エネルギーを回収する残存物燃焼部をさらに備えることを特徴とするガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物をガス化するガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転筒状部(ロータリーキルン)の内部において、バイオマス等の被処理物を加熱することにより、熱分解ガスおよびチャーを生成するガス化装置が用いられている。また、当該回転筒状部の内部において、さらに水蒸気改質を行う手法も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような装置では、改質用の装置を個別に製造する場合に比べて、装置の製造コストの削減、および、エネルギー効率の向上を図ることが可能である。なお、特許文献2では、乾燥ゾーンと熱分解ゾーンとを設けた外熱キルン炉において、熱分解ゾーンの入口側端部の近傍位置の内面に、堰を取り付ける手法が開示されている。当該キルン炉では、乾燥ゾーンでの廃棄物の滞留時間を堰の高さで調整することが可能である。
【0003】
一方、特許文献3では、乾留用ロータリーキルンの直後にバグフィルタを設け、乾留用ロータリーキルンから排出される乾留ガスからバグフィルタによりダストを除去する技術が開示されている。バグフィルタはダストを付着させることによりガスからダストを除去するため、ダストをバグフィルタから除去する作業が頻繁に必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-169309号公報
【特許文献2】特開2008-249212号公報
【特許文献3】特開平11-264525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転筒状部の排出部からは、熱分解による可燃性のガスと共に、チャー、タール、不燃物等の残存物が排出される。残存物には小さな粒子になったものも存在し、粒子はガスと共に下流へと導かれる。特に、回転筒状部内に被処理物を長時間滞留させる構造の場合、排出される粒子は多量となる。粒子が下流へと導かれると、配管閉塞防止等の下流の装置におけるメンテナンスコストが増大する。そのため、下流に導かれる粒子の量はできる限り少ないことが望ましい。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、簡単な構造で回転筒状部から排出されて下流へと導かれる粒子の量を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、被処理物をガス化するガス化装置であって、中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に被処理物の供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、前記回転筒状部を加熱することにより、前記回転筒状部内の前記被処理物を加熱する加熱部と、前記回転筒状部内に設けられ、前記回転筒状部が回転することにより前記被処理物を攪拌する攪拌部と、前記加熱部による前記被処理物の加熱および前記攪拌部による前記被処理物の攪拌により生成されて前記排出口から排出されるガスおよび残存物を、前記ガスと前記残存物とに分離する分離部とを備え、前記分離部が、前記排出口から水平方向に対して下方へと向かう下方流路を形成する下方流路形成部と、前記下方流路の下流側に位置し、水平方向に対して上方へと向かう上方流路を形成する上方流路形成部と、前記下方流路と前記上方流路との間の位置から導かれる前記残存物を貯留する残存物貯留部とを備える。
【0008】
本発明の態様2は、態様1のガス化装置であって、気流の流れ方向に垂直な断面における前記下方流路の断面積が、前記排出口の面積よりも大きい。
【0009】
本発明の態様3は、態様1または2のガス化装置であって、前記攪拌部が、前記被処理物を前記供給口から前記排出口へと向かう方向に移動させる順送り構造と、前記被処理物を前記排出口から前記供給口へと向かう方向に移動させる逆送り構造とを含む。
【0010】
本発明の態様4は、態様3のガス化装置であって、前記攪拌部が、前記供給口から前記排出口に向かって順に、熱分解部と、改質部とを含み、前記改質部が、前記順送り構造と、前記逆送り構造とを含む。
【0011】
本発明の態様5は、態様4のガス化装置であって、前記熱分解部が、前記被処理物を前記供給口から前記排出口へと向かう方向に移動させる他の順送り構造と、前記被処理物を前記排出口から前記供給口へと向かう方向に移動させる他の逆送り構造とを含む。
【0012】
本発明の態様6は、態様1または2(態様1ないし5のいずれか1つであってもよい。)のガス化装置であって、前記下方流路形成部が、前記排出口の外側から前記中心軸に沿って見た場合に前記排出口の外側において前記排出口の50%以上と重なる邪魔板を含む。
【0013】
本発明の態様7は、態様6のガス化装置であって、前記排出口の外側から前記中心軸に沿って見た場合に前記邪魔板が前記排出口の全体と重なる。
【0014】
本発明の態様8は、態様1または2(態様1ないし7のいずれか1つであってもよい。)のガス化装置であって、前記残存物貯留部から前記残存物が導かれ、前記残存物を燃焼することにより熱エネルギーを回収する残存物燃焼部をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構造で回転筒状部から排出されて下流へと導かれる粒子の量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図7】下方流路形成部および上方流路形成部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るガス化装置1の構成を示す図である。ガス化装置1は、外熱式ロータリーキルン(間接加熱式ロータリーキルン)を有し、一般廃棄物である被処理物をガス化して、可燃性ガスである改質ガスを生成する装置である。改質ガスは、例えば、ガスエンジン等での発電に利用される。被処理物は、一般廃棄物には限定されず、産業廃棄物、下水汚泥、木質バイオマス等であってもよい。
【0018】
ガス化装置1は、回転筒状部11と、加熱部12と、被処理物供給部13と、混合ガス導入部14(
図2参照)と、攪拌部15と、分離部16と、ガス精製部17と、回転部18(
図2参照)と、制御部(図示省略)とを備える。制御部は、例えば、CPU等を備えるコンピュータであり、ガス化装置1の全体制御を担う。回転筒状部11は筒状であり、例えば金属または合金等により形成される(回転筒状部11内に設けられる他の構成において同様)。加熱部12は、外筒部121と、残存物燃焼部122とを含む。残存物燃焼部122からの高温のガスは、回転筒状部11と外筒部121との間の空間に導かれ、回転筒状部11が加熱される。被処理物供給部13は、回転筒状部11の中心軸方向の一方側に設けられ、分離部16は他方側に設けられる。攪拌部15は回転筒状部11内に設けられる。分離部16は、流路形成部161と、残存物貯留部162とを有する。ガス精製部17には流路形成部161からのガスが導かれる。
【0019】
図2は、回転筒状部11、外筒部121、被処理物供給部13、混合ガス導入部14、攪拌部15および回転部18を示す図である。
図2では、回転筒状部11の中心軸J1を含む面における断面を示している。
図2の例では、回転筒状部11の中心軸J1は水平または略水平である。ガス化装置1の設計によっては、中心軸J1が水平方向に対して傾斜してもよい。
【0020】
回転筒状部11において、中心軸J1に平行な方向(以下、「軸方向」という。)における一方側の端部開口は供給口111であり、他方側の端部開口は排出口112である。後述するように、回転筒状部11の内部では、供給口111から排出口112に向かって熱分解部151、中間制限部113および改質部152が順に設けられる。回転筒状部11の内部において供給口111の近傍には、供給側環状部114が設けられる。供給側環状部114は、中心軸J1を中心とする周方向の全周に亘って回転筒状部11の内周面から突出する環状部材である。回転筒状部11の内周面からの供給側環状部114の高さ(回転筒状部11の内周面に垂直な方向における供給側環状部114の内周面の高さ)は、全周に亘ってほぼ一定である。
【0021】
回転筒状部11の内部において排出口112の近傍には、排出側環状部115が設けられる。排出側環状部115は、周方向の全周に亘って回転筒状部11の内周面から突出する環状部材である。回転筒状部11の内周面からの排出側環状部115の高さ(回転筒状部11の内周面に垂直な方向における排出側環状部115の内周面の高さ)は、排出口112に近づくに従って漸次小さくなる。すなわち、排出側環状部115の内周面は、排出口112に近づくに従って直径が大きくなる円錐台面である。後述する残存物は、排出側環状部115の内周面により排出口112へと案内される。軸方向の各位置では、排出側環状部115の高さは全周に亘ってほぼ一定である。
【0022】
回転部18は、回転筒状部11を中心軸J1を中心に回転する。回転筒状部11の供給口111側の端部には、フランジ部116が設けられる。フランジ部116は、中心軸J1を中心とする円環状の板部材である。フランジ部116の下方には、回転部18の一対のローラ181が設けられる。一対のローラ181は、
図2の紙面に垂直な方向に離間する。フランジ部116は、一対のローラ181により回転可能に支持される。
【0023】
また、回転筒状部11の外周面において、排出口112側の端部近傍には、フランジ部117が設けられる。フランジ部116と同様に、フランジ部117も、中心軸J1を中心とする円環状の板部材であり、一対のローラ182により回転可能に支持される。ガス化装置1では、モータおよび減速機を有する回転機構183がローラ181に接続されており、回転部18の回転機構183がローラ181を回転することにより、回転筒状部11が中心軸J1を中心として連続的に回転する。回転筒状部11の回転速度は、例えば一定である。回転筒状部11を回転する構造は適宜変更されてよい。
【0024】
加熱部12の外筒部121は、中心軸J1を中心とする筒状であり、例えば金属または合金等により形成される。外筒部121は、回転しない固定体である。外筒部121は、2個のフランジ部116,117の間において回転筒状部11の周囲を囲み、回転筒状部11の外周面との間に筒状空間120を形成する。中心軸J1を中心とする径方向における、回転筒状部11と外筒部121との間の幅、すなわち筒状空間120の幅は、全長に亘ってほぼ一定である。軸方向における外筒部121の両端部には、環状壁21,22が設けられる。各環状壁21,22は、中心軸J1を中心とする円環状の部材であり、外筒部121から回転筒状部11に向かって突出する。環状壁21,22における回転筒状部11側の端面は、例えば摺動部材を介して回転筒状部11の外周面と接する。これにより、環状壁21,22と回転筒状部11との間に、シール構造が形成される。
【0025】
外筒部121には、流出口23および流入口24が形成される。流出口23は、供給口111側の環状壁21の近傍に設けられ、筒状空間120に接続する。流入口24は、排出口112側の環状壁22の近傍に設けられ、筒状空間120に接続する。流入口24には、
図1の残存物燃焼部122から高温ガスが供給される。流入口24における高温ガスの温度は、例えば900~1100℃である。高温ガスは、筒状空間120を流れて、流出口23から排出される。筒状空間120を流れる高温ガスにより回転筒状部11の外周面が加熱される。なお、ガス化装置1の設計によっては、環状壁21,22の間に、もう1つの環状壁が設けられ、軸方向において筒状空間120が2つの空間に分割されてもよい。この場合、各空間に流入口および流出口が設けられ、高温ガスが当該空間を流れる。これにより、回転筒状部11の供給口111側の半分と、排出口112側の半分とを個別に加熱することが可能となる。筒状空間120は、3以上の空間に分割されてもよい。
【0026】
被処理物供給部13は、ホッパ131と、スクリューフィーダ132とを備える。ホッパ131には、被処理物が貯留される。スクリューフィーダ132は、回転機構31と、スクリュー32とを備える。スクリュー32は、ホッパ131の内部から回転筒状部11の供給口111まで中心軸J1に沿って延びる。回転機構31は、モータおよび減速機を有し、スクリュー32を回転する。これにより、ホッパ131内の被処理物が供給口111から回転筒状部11の内部に供給される。被処理物供給部13による回転筒状部11内への被処理物の供給は、連続的であっても、断続的であってもよい。スクリュー32のスクリュー軸321は中空である。スクリュー軸321の中空部には、後述の導入管141が配置される。導入管141は中心軸J1に沿って延びる。
【0027】
攪拌部15は、回転筒状部11内に設けられる。攪拌部15は、回転筒状部11に対して固定される。すなわち、回転筒状部11が中心軸J1を中心に回転すると、攪拌部15も回転する。攪拌部15は、熱分解部151と、改質部152とを有する。熱分解部151は、供給口111側に設けられ、改質部152は、排出口112側に設けられる。
【0028】
熱分解部151は、仕切板41と、ガイド部42とを備える。仕切板41は、中心軸J1に平行な板部材であり、中心軸J1上に配置される。中心軸J1に垂直な方向における仕切板41の両端部は、回転筒状部11の内周面に固定される。中心軸J1に沿って見た場合における回転筒状部11の内部空間は、仕切板41により二等分される。仕切板41の板厚(主面間の厚さ)は、比較的大きく、中心軸J1上に貫通孔411が設けられる。貫通孔411内には導入管141が挿入される。
【0029】
ガイド部42は、複数の線状突起421を備える。一部の線状突起421は、仕切板41の一方の主面から突出し、残りの線状突起421は、仕切板41の他方の主面から突出する。仕切板41の各主面に設けられる線状突起421は、互いに平行である。
図2の例では、仕切板41の各主面上において全ての線状突起421が軸方向に対して傾斜した同一方向に延びる。
図2では、仕切板41を中心軸J1を中心として180度回転させた場合に、手前側に配置される線状突起421を二点鎖線で示している。二点鎖線の線状突起421の傾斜方向は、実線の線状突起421の傾斜方向と逆向き(中心軸J1に対して反転した方向)となる。すなわち、複数の突起421は、仕切板41に対して面対称に配置される。
【0030】
仕切板41は、回転筒状部11の回転に伴って、中心軸J1を中心として回転する。仕切板41の回転において、仕切板41の一方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上の被処理物が線状突起421に沿って滑り落ちるようにして供給口111側へと送られる。すなわち、当該主面およびその上の線状突起421は、被処理物を排出口112から供給口111へと向かう方向に移動させる逆送り構造である。なお、回転筒状部11内の被処理物は処理途上の被処理物であり、最終的に残存物として排出口112から排出されるが、以下の説明において、処理途上の被処理物も「被処理物」と表現する。被処理物の供給口111側への移動が繰り返されることにより、当該被処理物は、回転筒状部11の下部(軸方向に垂直な断面における下の部位)において供給側環状部114と衝突し、仕切板41の近傍に留まる。
【0031】
また、仕切板41の他方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際には、当該主面上の被処理物が線状突起421に沿って滑り落ちるようにして供給口111とは反対側(排出口112側)へと送られる。すなわち、当該主面およびその上の線状突起421は、被処理物を供給口111から排出口112へと向かう方向に移動させる順送り構造である。被処理物の排出口112側への移動が繰り返されることにより、当該被処理物は、後述の中間制限部113と衝突し、仕切板41の近傍に留まりやすくなる。以上のように、ガイド部42では、回転筒状部11の一の回転角度範囲において一部の被処理物が供給口111側に向かって送られ、回転筒状部11の他の回転角度範囲において他の一部の被処理物が供給口111とは反対側に向かって送られる。その結果、軸方向における仕切板41の両端部近傍の間で被処理物が往復(循環)しつつ、熱分解部151において被処理物が滞留する。
【0032】
既述のように、筒状空間120を流れる高温ガスにより回転筒状部11は加熱されている。熱分解部151では、被処理物を、例えば400℃以上の温度(好ましくは、700℃以下)で加熱することにより、熱分解が発生し、熱分解ガスと、チャー、タール、不燃物等の残存物が生成される。図示省略の誘引ファン等により排出口112は減圧されており、熱分解ガスは、排出口112に向かって流れる。熱分解ガスには残存物の粒子(チャーの粒子や不燃の煤塵等)も混在する。熱分解ガスに含まれない処理途上の被処理物は、熱分解部151にて滞留する。被処理物供給部13から被処理物が供給されることにより、熱分解部151にて滞留する被処理物の一部は、中間制限部113を越えて改質部152側(排出口112側)へと押し出される。
【0033】
図3は、熱分解部151側から改質部152に向かって中心軸J1に沿って見た場合における中間制限部113を示す図である。中間制限部113の奥に位置する改質部152の後述の仕切板51および線状突起521も示しているが、導入管141の図示を省略している。既述のように、中間制限部113は、回転筒状部11の内部において熱分解部151と改質部152との間に設けられる。中間制限部113は、環状部材であり、例えば金属またはセラミックにより形成される。中間制限部113の外周縁は、全周に亘って回転筒状部11の内周面に固定される。中間制限部113は、周方向の全周に亘って回転筒状部11の内周面から突出する。回転筒状部11の内周面からの中間制限部113の高さ(回転筒状部11の内周面に垂直な方向における中間制限部113の内周面の高さ)は、全周に亘ってほぼ一定である。
図2の例では、中間制限部113の高さは、供給側環状部114の高さ以下であり、排出側環状部115の高さ以上である。
【0034】
軸方向における中間制限部113の位置では、回転筒状部11の内部における熱分解ガスおよび被処理物の移動経路が、中間制限部113の内側の円形領域に制限される。換言すると、回転筒状部11の下部において中間制限部113が堰となることにより、熱分解部151から改質部152への被処理物の移動が制限される。既述のように、回転筒状部11の中心軸J1は水平であっても、傾斜してもよく、いずれの場合であっても、回転筒状部11の下部において、中間制限部113が形成する堰の上端の上下方向における位置が、供給側環状部114が形成する堰の上端の位置以下であることが好ましい。さらに好ましくは、回転筒状部11の下部において、中間制限部113が形成する堰の上端の上下方向における位置が、供給側環状部114が形成する堰の上端の位置未満である。これにより、熱分解部151において過度な量の被処理物が滞留して、被処理物供給部13による被処理物の供給が阻害されることが抑制される。
【0035】
既述のように、改質部152は、回転筒状部11の内部において中間制限部113と排出口112との間に設けられる。改質部152は、例えば熱分解部151と同様の構造を有し、仕切板51と、ガイド部52とを備える。ガイド部52は、複数の線状突起521を備える。一部の線状突起521は、仕切板51の一方の主面から突出し、残りの線状突起521は、仕切板51の他方の主面から突出する。仕切板51の回転において、仕切板51の一方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上の被処理物が線状突起521に沿って滑るようにして落下し、熱分解部151側(供給口111側)へと送られる。このとき、回転筒状部11の下部において中間制限部113が堰となることにより、中間制限部113と改質部152との間の空間においてある程度の量の被処理物が滞留する。仕切板51の当該主面および当該主面上の線状突起521は、被処理物を排出口112から供給口111へと向かう方向に移動させる逆送り構造である。
【0036】
また、仕切板51の他方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上の被処理物が線状突起521により熱分解部151とは反対側(排出口112側)へと送られる。このとき、回転筒状部11の下部において排出側環状部115が堰となることにより、排出側環状部115と改質部152との間の空間においてある程度の量の被処理物が滞留する(貯留される)。仕切板51の当該主面および当該主面上の線状突起521は、被処理物を供給口111から排出口112へと向かう方向に移動させる順送り構造である。
【0037】
以上のように、ガイド部52では、回転筒状部11の一の回転角度範囲において被処理物が熱分解部151側に向かって送られ、回転筒状部11の他の回転角度範囲において被処理物が熱分解部151とは反対側に向かって送られる。その結果、軸方向における仕切板51の両端部近傍の間で被処理物が往復(循環)しつつ、改質部152において被処理物が滞留する。実際には、熱分解部151から被処理物が改質部152に順次供給されるため、余剰の被処理物は、排出側環状部115を超えて最終的な残存物として排出口112から排出される。ガス化装置1は、回転筒状部11内に被処理物を順送りおよび逆送りする構造を有する水平型機械式内部循環流動方式となっている。
【0038】
既述のように、回転筒状部11の中心軸J1は水平であっても、傾斜してもよく、いずれの場合であっても、回転筒状部11の下部において、排出側環状部115が形成する堰の上端の上下方向における位置が、中間制限部113が形成する堰の上端の位置以下であることが好ましい。さらに好ましくは、回転筒状部11の下部において、排出側環状部115が形成する堰の上端の上下方向における位置が、中間制限部113が形成する堰の上端の位置未満である。これにより、改質部152において過度な量の被処理物が滞留することが抑制される。なお、仕切板51の排出口112側の端部において、回転筒状部11の回転に伴って、被処理物を仕切板51の主面上に取り入れる構造が設けられてもよい(仕切板51の熱分解部151側の端部、並びに、仕切板41において同様)。
【0039】
図2に示すように、混合ガス導入部14は、導入管141と、混合ガス供給部142とを備える。既述のように、導入管141は、スクリュー軸321の中空部、および、仕切板41の貫通孔411を貫通する。混合ガス供給部142は、回転筒状部11の外部において導入管141の一端に接続される。回転筒状部11の内部において改質部152の近傍に配置される導入管141の他端には、下方に向かって屈曲する屈曲部が設けられる。屈曲部の先端には、噴出口143が設けられる。例えば、噴出口143は、軸方向に関して中間制限部113と改質部152との間に配置される。好ましいガス化装置1では、噴出口143は、中間制限部113と改質部152との間に滞留する被処理物内に位置する。すなわち、導入管141が、中間制限部113と改質部152との間において被処理物に向かって開口する。導入管141では、屈曲部が省略され、噴出口143が改質部152に向かって開口してもよい。
【0040】
混合ガス供給部142が、酸素含有ガスおよび水蒸気を含む混合ガスを導入管141に供給することにより、噴出口143から混合ガスが噴出される。酸素含有ガスは、例えば空気または酸素富化空気であり、本実施の形態では、予熱された高温の空気である。混合ガスの温度は、例えば200~300℃である。混合ガスは、噴出口143から被処理物内に噴出される。改質部152では、排出口112に向かって流れる熱分解ガスと、混合ガスおよびチャーとが混合(攪拌)される。これにより、熱分解ガスに含まれる可燃性のガスや、タールの蒸気が部分燃焼する(すなわち、一部の熱分解ガスが燃焼する。)。また、被処理物も部分燃焼する。なお、酸素含有ガスの加熱および水蒸気の生成には、ガス化装置1で生成される改質ガスや、改質ガスを利用するガスエンジンの排ガス等の熱が用いられてよい。
【0041】
熱分解ガスおよび被処理物の部分燃焼により、改質部152を流れる熱分解ガス、および、仕切板51の周囲の被処理物が高温となっている。また、混合ガスには、水蒸気が含まれる。その結果、熱分解ガスに含まれる炭化水素ガス等が、水蒸気改質反応により、水素(H2)や一酸化炭素(CO)等のガスに転換される(すなわち、水蒸気改質される)。熱分解ガスに含まれるタールおよび粉体のチャー、並びに、仕切板51の周囲のチャーも、水蒸気改質される。なお、仕切板51の周囲に、十分な量のチャーが存在している場合には、改質部152を流れる熱分解ガスの一部のタール、および、粉体のチャーが、仕切板51の周囲のチャーの細孔等に捕集(トラップ)される。
【0042】
以上のように、熱分解部151から熱分解ガスおよび被処理物が送られる改質部152では、熱分解ガスの部分燃焼を伴って熱分解ガスおよび被処理物に含まれるチャーを水蒸気改質することにより、改質ガスが生成される。改質部152における熱分解ガスおよびチャーの温度は、例えば700℃以上であり、好ましくは800℃以上であり、より好ましくは900℃以上である。当該温度は、例えば1100℃以下である。改質ガスは、排出口112を介して回転筒状部11から排出される。
【0043】
図1に示すように、排出口112には、分離部16が接続される。分離部16の流路形成部161から改質ガスが上方に向かって導出され、ガス精製部17にて精製された後、回収される。精製後のガスは、ガスエンジン式の発電機に供給されてもよい。また、排出口112から排出された残存物は、流路形成部161から下方に落下し、残存物貯留部162にて回収される。チャーを含む残存物は、残存物貯留部162から残存物燃焼部122に送られ、残存物燃焼部122にてチャーが燃焼される。残存物燃焼部122ではチャーの燃焼による熱を利用して高温ガスが生成され、既述のように高温ガスは回転筒状部11の加熱に利用される。残存物の燃焼後に残る不燃物は、残存物燃焼部122から排出される。
【0044】
以上に説明したように、ガス化装置1では、回転筒状部11の内部において、供給口111側に熱分解部151が設けられ、熱分解部151と排出口112との間に改質部152が設けられる。また、熱分解部151と改質部152との間に中間制限部113が設けられ、中間制限部113により、熱分解部151と改質部152との間における被処理物の移動が制限される(すなわち、被処理物の移動量が制限される)。これにより、熱分解部151における被処理物の滞留時間を長くすることができ、被処理物のガス化率(被処理物がガス化される割合)を向上することができる。
【0045】
また、ガス化装置1の改質部152では、軸方向における仕切板51の両端部近傍の間で被処理物を往復させつつ、被処理物の水蒸気改質が行われる。これにより、ガス化装置1における被処理物のガス化率をさらに向上することが可能となる。
【0046】
また、ガス化装置1では、熱分解部151と改質部152との間の中間制限部113により、改質部152における高温の被処理物が熱分解部151に戻されることが抑制される。その結果、熱分解部151の温度が不必要に高くなることを防止または抑制して(すなわち、熱分解部151の温度が改質部152に比べて低くなる好ましい温度分布を実現して)、ガス化装置1におけるエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0047】
ガス化装置1では、回転筒状部11の下部において、排出側環状部115が形成する堰の上端の上下方向における位置が、中間制限部113が形成する堰の上端の位置以下である。これにより、改質部152において過度な量の非処理物が滞留することを防止または抑制することができる。また、回転筒状部11の下部において、中間制限部113が形成する堰の上端の上下方向における位置が、供給側環状部114が形成する堰の上端の位置以下である。これにより、熱分解部151において過度な量の被処理物が滞留して、被処理物供給部13による被処理物の供給が阻害されることを抑制することができる。
【0048】
図4および
図5は分離部16の流路形成部161の構造を示す図である。分離部16は、加熱部12による被処理物の加熱および攪拌部15による被処理物の攪拌により生成されて排出口112から排出されるガスおよび残存物を、ガスと残存物とに分離する。
図4は、回転筒状部11の中心軸J1を含み、法線が水平方向を向く面での流路形成部161の縦断面を示す図である。
図5は、
図4の右側から左方向に向かって見た場合の流路形成部161の縦断面であり、後述の邪魔板65を示す。
【0049】
流路形成部161は、外本体64の内部に邪魔板65を取り付けた構造を有する。外本体64は流路形成部161の外形を形成し、下部に残存物排出口641、上部にガス排出口642を有する。邪魔板65は、
図4および
図5に示すように、回転筒状部11の排出口112と中心軸J1方向に対向する対向板651と、対向板651と排出口112との間において排出口112の上方を塞ぐ上板652とを有する。上板652は、
図5において略逆U字状である。
図5における対向板651の左右は外本体64に接続される。すなわち、
図5において排出口112と対向板651との間の左右は、外本体64により塞がれる。邪魔板65と外本体64の排出口112の周囲の部位とにより、
図4の矢印91に示すように排出口112から下方へと向かう下方流路が形成される。すなわち、邪魔板65および外本体64の排出口112の周囲の部位は、下方流路形成部61である。
【0050】
邪魔板65の排出口112とは反対側(以下、「後ろ側」ともいう。)の空間は、矢印93にて示すように、ガスが下方から上方へと導かれる上方流路である。すなわち、邪魔板65と、外本体64のうち邪魔板65よりも後ろ側の部位とは、上方流路を形成する上方流路形成部62である。
【0051】
排出口112から排出されるガスは、矢印91にて示すように下方流路を下降し、矢印92にて示すように流路形成部161の下部にて流路方向が上方へと反転し、矢印93にて示すように、上方流路を上昇してガス排出口642から排出される。流路形成部161内を流れるガスは、回転筒状部11内で生成された改質ガスを含むガスである。排出口112から排出される残存物の大部分は、矢印91,94にて示すように、下方流路を経由して残存物排出口641へと落下し、
図1の残存物貯留部162に蓄積される。すなわち、残存物貯留部162は、下方流路と上方流路との間の位置63から導かれる残存物を貯留する。
【0052】
排出口112から排出され、ガスと共に搬送される残存物の粒子(以下、「残存物粒子」という。)のうち、比較的大きなものは、下方流路と上方流路との間において、重力(いわゆる、重力沈降)および慣性(いわゆる、慣性除塵)により、ガスから分離されて下方へと導かれ、下方流路と上方流路との間の位置63に位置する残存物排出口641を経由して残存物貯留部162に導かれる。これにより、上方流路へと導かれる残存物粒子は非常に小さなもののみとなる。その結果、簡単な構造で分離部16におけるガスと残存物との分離効率を向上することができ、下流へと導かれる粒子の量を低減することができる。分離部16においてガスから効率よく残存物粒子が分離されるため、配管閉塞の回避等により、分離部16よりも下流に設けられる装置、例えば、粒子をさらに除去する装置、冷却塔、吸着塔等のメンテナンスコストを削減することができる。また、長期的な運用におけるトラブルも低減することができる。さらに、残存物燃焼部122によるエネルギー回収効率も向上する。
【0053】
下方流路における気流の流れ方向に垂直な断面における下方流路の断面積は、排出口112の面積よりも大きい。これにより、排出口112から排出されるガスの速度が下方流路において低減され、ガスからの残存物粒子の分離効率が向上する。加えて、下方流路と上方流路との間の位置63において、流路の断面積がさらに大きくなるため、ガスからの残存物粒子の分離効率がさらに向上する。後述の
図6および
図7における流路形成部161においても同様である。なお、「気流の流れ方向」は、気流全体の流れの平均的な方向を意味する。
【0054】
図6は、邪魔板65の他の例を示す図である。
図6において
図4と同様の構成要素には同符号を付している。
図6の邪魔板65は、対向板651と上板652との間に傾斜板653を有する。傾斜板653は、対向板651と上板652とを斜めに接続する。これにより、下方流路におけるガスの流れの乱れが抑制される。
図6の例では、下方流路内に整流板65aがさらに設けられる。整流板65aは、上下方向に伸びる垂直板654と、垂直板654の上端から排出口112に向かって傾斜しつつ上方へと伸びる傾斜板655とを有する。整流板65aは
図6の紙面に垂直な方向における両端が外本体64に固定される。整流板65aを上方流路中に設けることにより、下方流路におけるガスの流れの乱れがさらに抑制される。
【0055】
傾斜板653や整流板65aを設けることにより、下方流路においてガスが下方へと安定して流れる。これにより、下方流路と上方流路との間の位置63において、重力および慣性を利用してより効率的にガスと共に流れる残存物粒子を残存物貯留部162へと導くことができる。なお、傾斜板653の
図6における断面形状は、対向板651および上板652に滑らかに接続される円弧状でもよい。傾斜板655の断面形状も垂直板654に滑らかに接続される円弧状でもよい。傾斜板653および整流板65aの一方のみが流路形成部161に適用されてもよい。
【0056】
図7は、下方流路形成部61および上方流路形成部62の他の例を示す図である。
図5と同様の構成要素には同符号を付している。
図7において下方流路形成部61および上方流路形成部62は、管状である。下方流路形成部61および上方流路形成部62の流路に垂直な方向の断面は、矩形でも円形でもよい。下方流路形成部61は、排出口112から下方へと向かうように湾曲する。上方流路形成部62は、下方流路形成部61の後ろ側において上下方向に伸びる。下方流路形成部61と上方流路形成部62とは下部で接続され、接続される位置63において流路が下方から上方へと切り替わる。位置63には、
図5と同様に、残存物を残存物貯留部162へと導く残存物排出口641が設けられる。
【0057】
図7のように、下方流路形成部61および上方流路形成部62は、管状の部材として設けられてもよい。流路の方向が下方から上方へと切り替わる位置から残存物貯留部162へと残存物が導かれることにより、大きな残存物のみならず、ガスと共に流れる残存物粒子の一部を重力および慣性を利用して残存物貯留部162へと導くことができ、分離部16におけるガスと残存物との分離効率を向上することができる。
【0058】
図4ないし
図7に例示するように、排出口112から下方流路および上方流路を順に設け、下方流路と上昇流路との間から残存物を下方へと導く構造は、被処理物が残存物粒子を発生しやすい性質を有する場合や、
図2のように、中間制限部113、供給側環状部114、排出側環状部115を設けたり、被処理物が熱分解部151や改質部152にて前後に行き来することにより、被処理物が回転筒状部11内にて長時間攪拌されて残存物粒子が発生しやすい場合に特に適している。このような場合にできるだけ多くの残存物粒子をガスから分離することにより、下流の装置のメンテナンスコストを削減することができる。
【0059】
被処理物をガス化するガス化装置1は、様々に変形可能である。回転筒状部11の中心軸J1は好ましくは水平であるが、回転筒状部11の中心軸J1を中心とする回転により内部で被処理物が攪拌されるのであれば、中心軸J1はある程度傾斜していてもよい。中心軸J1の水平方向に対する傾斜角は好ましくは10°以下である。回転筒状部11は中心軸J1を中心とする筒状であればよく、円筒状には限定されない。回転筒状部11の被処理物の供給口111は、中心軸J1に平行な軸方向における一方側の端部に設けられるのであれば様々な態様にて設けられてよい。好ましくは、供給口111は中心軸J1上に設けられる。排出口112も回転筒状部11の軸方向の他方側の端部に設けられるのであれば、様々な態様にて設けられてよい。好ましくは、排出口112は中心軸J1上に設けられる。
【0060】
上記実施の形態では、加熱部12の残存物燃焼部122が、残存物貯留部162から導かれる残存物を燃焼することにより熱エネルギーを回収し、この熱エネルギーで高温ガスを生成して回転筒状部11が加熱される。残存物燃焼部122にて回収される熱エネルギーは他の手法により回転筒状部11の加熱に利用されてもよい。例えば、残存物燃焼部122を回転筒状部11の下方に配置し、燃焼熱が直接回転筒状部11の加熱に用いられてもよい。また、残存物燃焼部122にて回収された熱エネルギーは他の用途に利用されてもよい。すなわち、残存物燃焼部122は加熱部12から独立した構成要素であってもよい。この場合、回転筒状部11は、残存物燃焼部122と関連することなく他の加熱装置により加熱される。さらには、回転筒状部11の加熱は、残存物燃焼部122から得られる熱エネルギーの一部のみが利用されてもよい。回転筒状部11内の被処理物を加熱する加熱部12は、様々な形態にて設けることができる。
【0061】
上記実施の形態では、熱分解部151および改質部152の双方において、筒状空間120を流れる高温ガスによる間接加熱が行われるが、熱分解ガスの部分燃焼の熱を利用する改質部152では、高温ガスによる間接加熱が省略されてもよい。間接加熱のみにより改質部152において必要な温度が確保される場合には、改質部152において部分燃焼が省略されてもよい。
【0062】
改質部152では、改質触媒(例えば、ニッケル系改質触媒)を設置して、熱分解ガス中のタールを分解する改質を実施してもよい。改質触媒(例えば、ニッケル系改質触媒)を設置する場合、水蒸気を供給しなくてもよい。
【0063】
上記ガス化装置は、攪拌部15が、供給口111から排出口112に向かって順に、熱分解部151と改質部152とを含むが、攪拌部15は、明瞭に熱分解部151と改質部152とに区分けされる必要はない。攪拌部15は、回転筒状部11内にて被処理物を攪拌する機能を有すればよいが、好ましくは、攪拌部15は回転筒状部11内に固定され、回転筒状部11が回転することによる攪拌部15の回転および重力を利用して被処理物を攪拌する。被処理物を供給口111から排出口112へと向かう方向に移動させる攪拌部15の順送り構造は上記形態には限定されない。排出口112から供給口111へと向かう方向に移動させる逆送り構造も上記形態に限定されない。順送り構造および逆送り構造が攪拌部15に設けられる場合、被処理物が長時間回転筒状部11内に存在し、残存物粒子が多量に発生するため、下方流路および上方流路を有する分離部16が設けられることが好ましい。
【0064】
特に、排出口112に近い改質部152が、順送り構造と逆送り構造とを含む場合に、残存物粒子が多く発生するため、上記分離部16が設けられることが好ましい。もちろん、さらに好ましくは熱分解部151も、順送り構造と逆送り構造とを含む。順送り構造と逆送り構造の複数の組み合わせが存在する場合、残存粒子の発生量がさらに多くなる。
【0065】
中間制限部113は、被処理物の移動を制限するのであれば、円環状には限定されない。例えば、中間制限部113は、周方向に部分的に設けられる複数の部材であってもよい。さらに、中間制限部113のような被処理物の移動を制限する移動制限部は、回転筒状部11内に複数設けられてもよい。複数の移動制限部は、熱分解部151に設けられてもよく、改質部152に設けられてもよい。
【0066】
分離部16は、排出口112から排出されるガスおよび残存物を、ガスと残存物とに分離する。分離部16の下方流路形成部61は、排出口112から水平方向に対して下方へと向かう下方流路を形成するのであればどのように設けられてもよい。上方流路形成部62も、下方流路の下流側に位置し、水平方向に対して上方へと向かう上方流路を形成するのであればどのように設けられてもよい。下方流路の下流側に上方流路が設けられることにより、下方流路と上方流路との間で重力および慣性を利用してガスから残存物粒子が分離する効率を向上することができる。好ましくは、下方流路では、ガス全体が水平方向に対して下方へと向かう方向へと流れ、上方流路では、ガス全体が水平方向に対して上方へと向かう方向へと流れる。
【0067】
図4および
図5の分離部16では、外本体64に邪魔板65を設ける簡単な構造で下方流路形成部61および上方流路形成部62が設けられる。下方流路においてガスを確実に下方へと導くために、排出口112の外側から中心軸J1に沿って見た場合に邪魔板65(特に、対向板651)は排出口112の全体と重なる、すなわち、排出口112全体を覆うことが好ましい。なお、「排出口112の全体と重なる」とは、邪魔板65が中心軸J1方向において排出口112全体と完全に重なることを意味するのではなく、気流の方向に影響を与えない程度で邪魔板65に小さな孔が開いている場合を含む。例えば、回転筒状部11内の温度を測定する温度計を排出口112から回転筒状部11内に挿入するために、邪魔板65に小さな開口が設けられてもよい。混合ガスを導入する
図2の導入管141に代えて、排出口112および改質部152を貫通する導入管が設けられてもよく、この場合も、邪魔板65に導入管を挿入する開口が設けられてよい。もちろん、好ましくは、邪魔板65には孔は設けられず、邪魔板65は中心軸J1方向において排出口112全体と完全に重なる。
【0068】
また、排出口112の外側から中心軸J1に沿って見た場合に、邪魔板65は排出口112の外側において排出口112の50%以上と重なるのみでもよい。邪魔板65が排出口112と完全に重ならない場合であっても、下方流路を形成することができる。好ましくは、排出口112の外側から中心軸J1に沿って見た場合に、邪魔板65は排出口112の外側において排出口112の少なくとも上半分と重なる。さらに好ましくは、排出口112の外側から中心軸J1に沿って見た場合に、邪魔板65は排出口112の外側において排出口112の下端まで重なる。
【0069】
既述のように、下方流路のおけるガスの速度を低下させるために、下方流路における気流の流れ方向に垂直な断面における下方流路の断面積は、排出口112の面積よりも大きいことが好ましい。「気流の流れ方向」は、気流全体の流れの平均的な方向を示すのであれば、その具体的な定義は様々に定めることができる。例えば、一定の領域を定め、その領域中の多数の位置における流れの方向の平均(速度を重みとする重み付け平均が好ましい。)がその領域の重心における流れの方向と定められてよい。あるいは、流路を横断する平面を定め、その平面上の多数の位置における流れの方向の(重み付け)平均がその平面の重心における流れの方向と定められてもよい。「排出口112の面積」は、排出口112においてガスが実際に通る開口の面積であり、
図2の例の場合、排出側環状部115の内周面の最も分離部16側の開口面積を指す。また、排出口112の開口面積と比較される「気流の流れ方向に垂直な断面における下方流路の断面積」は、下方流路の断面積のうち最も小さい断面積である。
【0070】
残存物粒子をさらに効率よくガスから分離するために、より好ましくは、下方流路と上方流路との間における流路の断面積は、下方流路の断面積よりも大きいことが好ましい。これにより、下方流路と上方流路との間においてガスの流速がさらに低下し、より小さな残存物粒子を残存物貯留部162へと導くことができる。
【0071】
分離部16では、大きな残存物は下方流路内を下方に落下する。残存物粒子のうち比較的大きなものは、下方流路と上方流路との間において重力および慣性を利用して下方へと導かれる。このように、残存物は下方流路と上方流路との間に導かれる。残存物貯留部162は、下方流路と上方流路との間の位置から残存物が導かれるのであれば、様々な形態にて設けられてよい。好ましくは、残存物貯留部162は、下方流路と上方流路との間の位置の下方に設けられることにより、残存物が重力(および慣性)を利用して残存物貯留部162に導かれる。しかし、例えば、下方流路と上方流路との間の位置にコンベアを設け、コンベアの搬送先に残存物貯留部162が設けられてもよい。
【0072】
混合ガス導入部14では、酸素含有ガスと水蒸気とが異なる(別々の)導入管を介して回転筒状部11の内部に導入されてもよい。改質部152において部分燃焼を効率よく生じさせるには、少なくとも酸素含有ガスを噴出する導入管の噴出口が、改質部152、または、改質部152と熱分解部151との間に配置されることが好ましい。
【0073】
ガス化装置1により得られる改質ガスは、ガスエンジン以外に、ガスタービン式、または、燃料電池(固体酸化物形燃料電池(SOFC)等)式の発電装置において用いられてもよい。また、改質ガスは、燃料ガスとして様々な用途に用いられてよく、さらに、液体に変換することにより液体燃料として用いられてもよい。
【0074】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ガス化装置
11 回転筒状部
12 加熱部
15 攪拌部
16 分離部
41,51 仕切板(順送り構造,逆送り構造の一部)
61 下方流路形成部
62 上方流路形成部
65 邪魔板
111 供給口
112 排出口
122 残存物燃焼部
151 熱分解部
152 改質部
162 残存物貯留部
421,521 線状突起(順送り構造,逆送り構造の一部)
J1 中心軸