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特開2024-99210光コヒーレンストモグラフィ装置、その制御方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099210
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィ装置、その制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240718BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002983
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏太
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059HH01
2G059KK04
4C316AA03
4C316AA09
4C316AA26
4C316AB02
4C316AB11
4C316FA08
4C316FA09
4C316FA10
4C316FA18
4C316FB29
4C316FY01
4C316FY02
4C316FY05
4C316FY06
4C316FZ02
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】フルレンジ画像を取得するための新たな技術を提供する。
【解決手段】光コヒーレンストモグラフィ装置は、光スキャナと、干渉光学系と、分解能変更部と、制御部と、を含む。干渉光学系は、光源からの光を参照光と測定光とに分割し、光スキャナにより偏向された測定光を被測定物に照射し、被測定物からの戻り光と参照光との干渉光を検出する。分解能変更部は、被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、測定光のBスキャン方向の光学的分解能を変更する。制御部は、光スキャナ及び分解能変更部を制御すると共に、Bスキャン中に参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように干渉光学系を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光スキャナと、
光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
前記被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、前記測定光の前記Bスキャン方向の光学的分解能を変更する分解能変更部と、
前記光スキャナ及び前記分解能変更部を制御すると共に、Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する制御部と、
を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項2】
前記Aスキャン位置の間隔をΔxとし、前記被測定物における前記測定光の光束径をdとしたとき、前記制御部は、(Δx/d<π/8)を満たすように前記分解能変更部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項3】
前記分解能変更部は、前記測定光の光束径を変更する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項4】
前記分解能変更部は、前記測定光の光路に配置され、焦点距離を変更可能なズームレンズを含み、
前記制御部は、前記ズームレンズを制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項5】
前記分解能変更部は、前記測定光の光路に配置され、当該光路に沿って移動可能な可変焦点レンズを含み、
前記制御部は、前記可変焦点レンズを制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項6】
前記分解能変更部は、互いに焦点距離が異なる複数のレンズを含み、
前記制御部は、前記複数のレンズの1つを前記測定光の光路に選択的に配置するように前記分解能変更部を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項7】
前記複数のレンズは、前記Bスキャン方向に直交する方向の曲率が実質的にゼロである円柱レンズを含む
ことを特徴とする請求項6に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項8】
前記分解能変更部は、前記測定光の絞りサイズを変更可能な可変絞りを含み、
前記制御部は、前記可変絞りを制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項9】
前記分解能変更部は、前記測定光の光路に配置され、当該光路に沿って移動可能な合焦レンズを含み、
前記制御部は、前記合焦レンズを制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項10】
光スキャナと、
光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
前記測定光のBスキャン方向の光学的分解能に基づいて前記被測定物において前記Bスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔を変更するように前記光スキャナを制御すると共に、Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する制御部と、
を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項11】
前記Aスキャン位置の間隔をΔxとし、前記被測定物における前記測定光の光束径をdとしたとき、前記制御部は、(Δx/d<π/8)を満たすように前記光スキャナを制御する
ことを特徴とする請求項10に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項12】
前記干渉光の検出結果に基づいて、前記被測定物の画像を形成する画像形成部を含む
ことを特徴とする請求項1、2、10、11のいずれか一項に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項13】
光スキャナと、
光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、を含む光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法であって、
前記被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、前記測定光の前記Bスキャン方向の光学的分解能を変更する分解能変更ステップと、
前記光スキャナを制御すると共に、Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する制御ステップと、
を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項14】
前記Aスキャン位置の間隔をΔxとし、前記被測定物における前記測定光の光束径をdとしたとき、前記分解能変更ステップは、(Δx/d<π/8)を満たすように前記光学的分解能を変更する
ことを特徴とする請求項13に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項15】
光スキャナと、
光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法であって、
前記測定光のBスキャン方向の光学的分解能に基づいて前記被測定物において前記Bスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔を変更するように前記光スキャナを制御する第1制御ステップと、
Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する第2制御ステップと、
を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項16】
前記Aスキャン位置の間隔をΔxとし、前記被測定物における前記測定光の光束径をdとしたとき、前記第1制御ステップは、(Δx/d<π/8)を満たすように前記光スキャナを制御する
ことを特徴とする請求項15に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項17】
コンピュータに、請求項13~請求項16のいずれか一項に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法の各ステップを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光コヒーレンストモグラフィ装置、その制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザー光源等からの光ビームを用いて被測定物の表面形態や内部形態を表す画像を形成する光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)が注目を集めている。OCTは、X線CT(Computed Tomography)のような人体に対する侵襲性を持たないことから、特に医療分野や生物学分野における応用の展開が期待されている。例えば眼科分野においては、眼底や角膜等の画像を形成したり、眼軸長等の眼内距離を計測したりするOCT装置が実用化されている。
【0003】
このようなOCTにより取得された被測定物の画像(断層画像、OCT画像)には、様々なアーチファクトが描出されることが知られている。特に、スペクトラルドメインOCT(Spectral Domain OCT:SD-OCT)、スウェプトソースOCT(Swept Source OCT:SS-OCT)等のフーリエドメイン(Fourier Domain OCT:FD-OCT)を用いて取得された画像には、複素共役アーチファクト(ゴーストイメージ、ミラーイメージ)が描出される。複素共役アーチファクトは、被測定物に照射された測定光の光路長が参照光の光路長と等しいゼロディレイ位置に対して実像の反対側に現れる虚像である。複素共役アーチファクトにより、観察可能な深さ方向のレンジが制限される。複素共役アーチファクトを除去することで、被測定物の深部の観察や広角の観察が可能になる。
【0004】
このような複素共役アーチファクトを除去する方法の1つに、位相シフト法を用いて複素干渉スペクトルを復元するフルレンジOCTがある。このような位相シフト法を用いたフルレンジOCTを実現する手法が、例えば、非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y.Yasuno et al., “Simultaneous B-M-mode scanning method for real-time full-range Fourier domain optical coherence tomography”, APPLIED OPTICS, 2006年3月10日, Vol.45, No.8, pp.1861-1865
【非特許文献2】B.Baumann et al., “Full range complex spectral domain optical coherence tomography without additional phase shifters”, OPTICS EXPRESS, 2007年10月1日, Vol.15, No.20, pp.13375-13387
【非特許文献3】S.Makita et al., “Full-range, high-speed, high-resolution, 1-μm spectral-domain optical coherence tomography using BM-scan for volumetric imaging of the human posterior eye”, OPTICS EXPRESS, 2008年6月9日, Vol.16, No.12, pp.8406-8420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1~非特許文献3に開示されている位相シフト法を用いたフルレンジOCTを実現する場合、被測定物に照射する撮影光(測定光)の横分解能より細かい間隔でラテラル方向にAスキャンを実行する必要がある。
【0007】
しかしながら、位相変調が十分ではない場合、スキャンデータのサイズが大きくなるだけで複素共役アーチファクトを十分に除去できない場合がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、フルレンジ画像を取得するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の1つの態様は、光スキャナと、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、前記被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、前記測定光の前記Bスキャン方向の光学的分解能を変更する分解能変更部と、前記光スキャナ及び前記分解能変更部を制御すると共に、Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する制御部と、を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置である。
【0010】
実施形態の別の態様は、光スキャナと、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、前記測定光のBスキャン方向の光学的分解能に基づいて前記被測定物において前記Bスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔を変更するように前記光スキャナを制御すると共に、Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する制御部と、を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置である。
【0011】
実施形態の更に別の態様は、光スキャナと、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、を含む光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法である。光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法は、前記被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、前記測定光の前記Bスキャン方向の光学的分解能を変更する分解能変更ステップと、前記光スキャナを制御すると共に、Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する制御ステップと、を含む。
【0012】
実施形態の更に別の態様は、光スキャナと、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記光スキャナにより偏向された前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法である。光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法は、前記測定光のBスキャン方向の光学的分解能に基づいて前記被測定物において前記Bスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔を変更するように前記光スキャナを制御する第1制御ステップと、Bスキャン中に前記参照光の光路長と前記測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように前記干渉光学系を制御する第2制御ステップと、を含む。
【0013】
実施形態の更に別の態様は、コンピュータに、上記の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フルレンジ画像を取得するための新たな技術を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置の構成例の概要を表す概略図である。
図2】実施形態に係るOCT装置の動作の概要を表す概略図である。
図3】実施形態に係るOCT装置の動作説明図である。
図4】実施形態に係るOCT装置の動作説明図である。
図5】実施形態に係るOCT装置の動作説明図である。
図6】実施形態に係るOCT装置の動作説明図である。
図7】実施形態に係るOCT装置の動作説明図である。
図8】第1実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す概略図である。
図9】第1実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す概略図である。
図10】第1実施形態に係る眼科装置の処理系の構成の一例を示す概略図である。
図11】第1実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図12】第1実施形態に係る眼科装置の動作説明図である。
図13】第1実施形態に係る眼科装置の処理系の構成の一例を示す概略図である。
図14】第1実施形態に係る眼科装置の処理系の構成の一例を示す概略図である。
図15】第1実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図である。
図16】第1実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図である。
図17】第2実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図である。
図18】第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図19】第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
図20】第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置の動作説明図である。
図21】第1実施形態の第2変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図22】第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図23】第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
図24】第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図25】第1実施形態の第4変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図26】第1実施形態の第5変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図27】第1実施形態の第6変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図28】第1実施形態の第7変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図29】第1実施形態の第8変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図30】第1実施形態の第9変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図31】第1実施形態の第9変形例に係る眼科装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
図32】第1実施形態の第10変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図33】第1実施形態の第11変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図34】第1実施形態の第12変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図35】第1実施形態の第13変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図36】第1実施形態又は第2実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
図37】第1実施形態の第13変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法、及びプログラムの実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0017】
実施形態に係るOCT装置は、被測定物に対してOCT(SD-OCT、SS-OCT等のFD-OCT)を実行することが可能である。OCT装置は、光スキャナと、干渉光学系とを含み、光スキャナにより測定光を偏向することにより、Aスキャン、Bスキャン等のOCTスキャンを実行可能である。ここで、干渉光学系は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被測定物に測定光を照射し、被測定物からの戻り光と参照光路を経由した参照光との干渉光を検出する。いくつかの実施形態では、OCT装置は、Cスキャンを実行可能である。
【0018】
OCT装置は、被測定物における、Bスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、測定光のBスキャン方向の光学的分解能を変更することが可能である。OCT装置は、Bスキャン中に参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように干渉光学系を制御することで、Aスキャン毎に位相をシフトし、ラテラル方向に周波数変調を行う(位相シフト法)。
【0019】
光学的分解能の変更の例として、被測定物に入射する測定光の光束(断面)の直径(光束径)の変更、デフォーカスなどがある。例えば、干渉光学系により生成された測定光の光路中において測定光の光束の直径を変更することで、被測定物に入射する測定光のスポット径(光束の直径)を変更することが可能である。例えば、干渉光学系により生成された測定光の焦点位置を、被測定物を基準に物体側又は像側にシフトした位置に移動させることで、デフォーカスを行うことができる。
【0020】
被測定物の例として、眼内の組織、皮膚の内部組織、歯、口内の組織、臓器の組織などの生体組織、非破壊検査の検査対象物などがある。
【0021】
いくつかの実施形態では、OCT装置は、測定光のBスキャン方向の光学的分解能に基づいて、被測定物における、Bスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔を変更することが可能である。OCT装置は、Bスキャン中に参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように干渉光学系を制御することで、Aスキャン毎に位相をシフトし、ラテラル方向に周波数変調を行う(位相シフト法)。
【0022】
実施形態に係るOCT装置の制御方法は、上記のOCT装置の機能を実現する1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、実施形態に係るOCT装置の制御方法の各ステップをコンピュータ(プロセッサ)に実行させる。実施形態に係る記録媒体は、実施形態に係るプログラムが記録されたコンピュータにより取り可能な非一時的な記録媒体(記憶媒体)である。
【0023】
本明細書において、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を含む。プロセッサは、例えば、記憶回路又は記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。記憶回路又は記憶装置がプロセッサに含まれていてよい。また、記憶回路又は記憶装置がプロセッサの外部に設けられていてよい。
【0024】
Aスキャン毎に位相をシフトすることでラテラル方向に周波数変調するスキャンの例として、非特許文献1~非特許文献3に開示されたBMスキャンがある。以下の実施形態では、被測定物に対してBMスキャンを実行する場合について説明する。しかしながら、実施形態に係る構成はBMスキャンに限定されるものではない。
【0025】
まず、実施形態に係るBMスキャンについて説明する。以下では、光学系(干渉光学系)の光軸方向に直交する方向(左右方向、水平方向)をx方向とし、当該光軸方向に直交する方向(上下方向、垂直方向)をy方向とし、当該光軸方向をz方向とする。また、「測定光の光束の直径」は、「測定光の光束径」又は「測定光のビーム径」であってよい。
【0026】
<BMスキャン>
BMスキャンは、干渉光学系を用いてフルレンジOCTを実現するスキャンの1つである。干渉光学系は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、測定光を被測定物に照射し、被測定物からの測定光の戻り光と参照光との干渉光を検出する。このとき、測定光を光スキャナで偏向することで、被測定物における測定光の入射位置(Aスキャン位置)をラテラル方向に移動する。BMスキャンは、被測定物に対してBスキャンを実行する間に、Aスキャン毎に位相をシフトすることでラテラル方向に位相変調(周波数変調)を行う。
【0027】
以下、説明の便宜上、ラテラル方向をx方向とするが、特に、言及しない限り、ラテラル方向はy方向であってもよい。ここで、スキャン位置x、波数kにおける測定光から出力される電界をE(x,k)とし、波数kにおける参照光から出力される電界をE(k)とする。Aスキャンのスキャン位置xに応じた干渉光の位相シフト量を、記号ψ(psi)を用いてψ(x)とすると、干渉光を検出する検出器の出力I(x,k)は、式(1)のように表される。
【0028】
【数1】
【0029】
式(1)において、E (x,k)はE(x,k)の複素共役を表し、E (k)はE(k)の複素共役を表す。exp(iψ(x))は、スキャン位置xにおける位相シフトの影響を表す。式(1)の右辺の第1項は、測定光の信号成分を表し、第2項は、参照光の信号成分を表す。第3項及び第4項の一方は、観察対象の干渉光の信号成分(干渉信号成分)を表し、他方はゴーストイメージ(ミラーイメージ)の信号成分を表す。第3項と第4項とを比較すると、観察対象の干渉信号成分とゴーストイメージの信号成分は、互いに異なる向きに位相シフトされた成分であることがわかる。BMスキャンは、Aスキャン毎に位相をシフトさせながら上記のような干渉信号成分を取得するOCTスキャンである。
【0030】
BMスキャンを実行することによって取得された式(1)に示す検出器の出力I(x,k)をラテラル方向(空間方向、x方向)に沿ってフーリエ変換すると、式(2)のように表される。
【0031】
【数2】
【0032】
式(2)において、FT{}は、x方向(ラテラル方向)に沿ったフーリエ変換を表す。スキャン位置xは、時間tの経過と共に変化する時間tを変数とする関数であるため、x方向はt方向であってもよい。
【0033】
以下、説明の便宜上、BMスキャンの位相シフト量ψ(x)がスキャン位置xに応じて一定の割合で増加する場合について説明する。この場合、干渉信号の位相変化量Φを用いて、位相シフト量ψ(x)=Φxと表すことができる。このとき、式(2)の右辺の第3項は、式(3)のように変形することができる。
【0034】
【数3】
【0035】
式(3)において、演算子「*」は、u方向(時間周波数方向、空間周波数方向)に沿った畳み込み積分演算を表し、δはデルタ関数を表す。測定光と参照光との相互相関の項E(x,k)E (k)をx方向にフーリエ変換した項FT{E(x,k)E (k)}をB(u,k)と置くと、式(3)は、式(4)のように表される。
【0036】
【数4】
【0037】
すなわち、式(2)の右辺の第3項を示す式(3)は、B(u,k)をu方向に沿って位相変化量(変調量)Φだけ平行移動した成分である。
【0038】
同様に、式(2)の右辺の第4項は、式(5)のように表すことができる。
【0039】
【数5】
【0040】
式(5)において、B(u,k)は、B(u,k)の複素共役を表す。
【0041】
式(4)と式(5)とを用いて、式(2)は、式(6)のように表すことができる。
【0042】
【数6】
【0043】
すなわち、位相変化量Φを付与しつつ干渉信号を取得することで、観察対象のOCTの干渉信号成分Bと、ゴーストイメージの信号成分Bとを空間周波数領域(時間周波数領域)において互いに異なる向きにシフトさせることできる。
【0044】
ここで、信号成分B(又は信号成分B)のみを抽出するように窓関数でスペクトルに重み付けしてu方向に逆フーリエ変換すると、式(7)のように表される。窓関数の例として、ヘヴィサイドステップ関数(Heaviside step function)、ガウス窓関数、ハン窓関数、ハミング窓関数、レイズドコサインフィルタなどがある。式(7)では、窓関数として、ヘヴィサイドステップ関数が用いられている。
【0045】
【数7】
【0046】
式(7)は、観察対象のOCTの干渉信号だけを有する複素数値の干渉信号I′(x,k)を表す。この干渉信号I′(x,k)に対して、公知のフーリエドメインOCTと同様に、波数kの方向に沿ってフーリエ変換することで、ゴーストイメージが除去されたフルレンジのOCT画像を再構築することができる。
【0047】
ここで、測定光と参照光との相互相関の空間スペクトル(広がり)は、上記のB(u,k)により表される。E(k)とE(x,k)に位相シフトの影響がなく、被測定物の散乱空間スペクトル(分布)S(x,k)に対して測定光の広がりh(x)が被測定物の深さ方向に依存しないものと仮定すると、E(x,k)は、被測定物の散乱空間スペクトルS(x,k)と測定光の広がりh(x)との畳み込み積分として式(8)のように表される。
【0048】
【数8】
【0049】
式(8)に示すE(x,k)をx方向にフーリエ変換すると、式(9)のように表される。
【0050】
【数9】
【0051】
式(9)において、H(u)は、測定光の空間スペクトル分布を表す。測定光の広がりh(x)の空間スペクトルH(u)は、OCT光学系(撮影系)の光学的なパラメータに基づいて求めることが可能である。
【0052】
B(u,k)はFT{E(x,k)E (k)}として定義され、参照光路で発生する電場E (k)がスキャン位置xに依存しない。従って、B(u,k)のu方向の空間スペクトルの分布は、測定光の広がりh(x)の空間スペクトルH(u)と被測定物の散乱空間スペクトルS(x,k)とに依存する。
【0053】
空間スペクトルH(u)は、例えば、測定光の光束(断面)の直径によって定められる。測定光の広がり(強度の空間分布)h(x)がガウス分布に従うと仮定すると、強度がピーク強度の(1/e)倍になる位置での測定光の光束の直径がdのとき、空間スペクトルH(u)の強度がピーク強度の(1/e)倍になる位置でのバンド幅をfは、式(10)のように表される(非特許文献3参照)。
【0054】
【数10】
【0055】
式(10)において、fはBスキャン中のAスキャンの本数(Aスキャン位置の数)を表し、Δxは、Aスキャン位置の間隔を表す。すなわち、測定光の空間スペクトルH(u)のバンド幅fは、測定光の光束(断面)の直径dと、Bスキャン中のAスキャンの本数fと、Aスキャン位置の間隔Δxとにより一意に定まる。
【0056】
上記のように、被測定物が同じ(同一の散乱空間スペクトルS(x,k))場合、測定光の空間スペクトルH(u)に応じてB(u,k)が変化することから、測定光の空間スペクトルH(u)のバンド幅fは、B(u,k)により表される空間スペクトルの広がりの指標の1つである。
【0057】
式(10)に示すバンド幅fは、空間周波数領域(時間周波数領域)での広がりを表す。ゴーストイメージを十分に抑制するためには、理論的にはスキャン密度を表す(Δx/d)が(Δx/d)<(π/8)の条件を満たすようにバンド幅fを小さくする必要がある。式(10)に示すように、バンド幅fを小さくするために、被測定物における測定光の光束の直径(光束径)dを大きくするか、被測定物におけるAスキャン位置の間隔Δxを小さくする必要がある。
【0058】
そこで、Aスキャン位置の間隔Δxがあらかじめ決められている場合、実施形態に係るOCT装置は、Aスキャン位置の間隔Δxに応じてx方向の光学的分解能を変更するように測定光の光束の直径dを大きくして、上記のように位相変調を行うBMスキャンを実行する。Aスキャン位置の間隔Δxは、x方向(ラテラル方向)に隣り合うAスキャン位置の間隔、又は、Bスキャンのサンプリング間隔に相当する。x方向は、ラテラル方向又はBスキャン方向に相当する。測定光の光束は、少なくともx方向の直径が変更されればよい。このとき、(Δx/d)<(π/8)=~0.39を満たすように、測定光の光束の直径dが変更される。測定光の光束の直径dは、光学的分解能の一例である。
【0059】
これにより、所定のAスキャン位置の間隔Δxに応じて敢えて光学的分解能を低下させることで、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、BMスキャンのスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。なお、Aスキャン位置の間隔Δxによっては光学的分解能を向上させる(例えば、測定光の光束の直径dを小さくする)ことも可能である。この場合、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、より高精細のフルレンジ画像を取得することが可能になる。
【0060】
いくつかの実施形態では、測定光の光束の直径dがあらかじめ決められている場合、実施形態に係るOCT装置は、測定光の光学的分解能(例えば、被測定物における測定光の光束の直径d(x方向の直径d))に応じて被測定物におけるAスキャン位置の間隔Δxを変更して、上記のようにBMスキャンを実行する。このとき、(Δx/d)<(π/8)を満たすように、Aスキャン位置の間隔Δxが変更される。
【0061】
これにより、所定の測定光の光学的分解能(測定光の光束の直径d)に応じてAスキャン位置の間隔Δxを大きくすることで、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、BMスキャンのスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。なお、測定光の光束の直径dによってはAスキャン位置の間隔Δxを小さくすることも可能である。この場合、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、より高精細のフルレンジ画像を取得することが可能になる。
【0062】
次に、実施形態に係る構成及び方法について説明する。
【0063】
<OCT装置>
図1に、実施形態に係る情報処理装置が適用されたOCT装置の構成例のブロック図を示す。
【0064】
実施形態に係るOCT装置500は、干渉光学系510と、光スキャナ520と、スキャンデータ生成部530と、制御部540と、情報処理部600とを含む。いくつかの実施形態では、情報処理部600は、情報処理装置としてOCT装置500の外部に設けられる。この場合、情報処理部600は、公知の通信手段を用いて、OCT装置500により生成されたスキャンデータを取得することが可能である。いくつかの実施形態では、情報処理部600は、スキャンデータ生成部530の機能を含む。
【0065】
干渉光学系510は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、光スキャナ520を介して測定光を被測定物700に照射し、被測定物700からの測定光の戻り光と参照光との干渉光を検出する。被測定物700は、OCTスキャンにより断層画像を取得可能であれば任意の物体であってよい。光スキャナ520は、干渉光学系510からの測定光を偏向して被測定物700に導くと共に、被測定物700からの測定光の戻り光を干渉光学系510に導く。光スキャナ520は、制御部540の制御を受け、被測定物700における測定光の入射位置(Aスキャン位置)が所定のラテラル方向に移動するように測定光を順次に偏向する。スキャンデータ生成部530は、干渉光学系510により得られた干渉光の検出結果に基づいてBスキャンデータを生成する。スキャンデータ生成部530の機能は、後述するように、1以上のプロセッサにより実現される。
【0066】
制御部540は、干渉光学系510、光スキャナ520、スキャンデータ生成部530、及び情報処理部600の各部を制御する。特に、制御部540は、光スキャナ520に対する偏向制御に同期して、参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更する(位相変調する)ように干渉光学系510を制御することでBMスキャンを実行することが可能である。これにより、スキャンデータ生成部530は、Aスキャン毎に位相をシフトすることでラテラル方向に周波数変調(位相変調)されたBスキャンデータを生成することが可能である。制御部540の機能は、後述するように、1以上のプロセッサにより実現される。
【0067】
情報処理部600は、あらかじめ決められたスキャンの間隔Δxに応じてx方向の光学的分解能(例えば、測定光の光束の直径d)を変更して、干渉光学系510等を制御することでBMスキャンを実行させる。或いは、情報処理部600は、あらかじめ決められた測定光の光学的分解能(例えば、測定光の光束の直径d)に応じてAスキャン位置の間隔Δxを変更するように光スキャナ520等を制御することでAスキャン位置の密度を変更してBMスキャンを実行させる。情報処理部600は、実施形態に係る情報処理装置の機能を実現する。情報処理部600の機能は、後述するように、1以上のプロセッサにより実現される。情報処理部600の機能は、制御部540により実現されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、情報処理部600は、スキャンデータ生成部530により生成されたBスキャンデータからラテラル方向(Bスキャン方向)の冗長度を特定する。情報処理部600は、空間周波数領域(時間周波数領域)における空間スペクトルに基づいて冗長度を特定することが可能である。このとき、情報処理部600は、空間スペクトルに基づいてAスキャンのスキャン密度を特定し、所定の基準スキャン密度と特定されたスキャン密度とに基づいて冗長度を特定する。或いは、情報処理部600は、空間周波数方向における空間スペクトルの幅に基づいて冗長度を特定する。例えば、情報処理部600は、空間スペクトルに対して関数のフィッティング処理を施し、フィッティング処理により得られた関数に基づいて空間スペクトルの幅を特定する。情報処理部600は、特定された冗長度に基づいてBスキャンデータをラテラル方向に縮小することで、データサイズをリサイズすることが可能である。例えば、情報処理部600は、データサイズが変更されたBスキャンデータに基づいて被測定物700の断層画像を形成する。これにより、情報量を落とすことなく冗長度を低減するようにスキャンデータを最適化することが可能になり、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果を得ることができる。
【0069】
図2図7に、図1のOCT装置500の動作例を示す。図2は、図1のスキャンデータ生成部530と情報処理部600の動作の概要を模式的に表したものである。図3図7は、図2の処理SQ3~SQ7の動作を説明する図を表す。図3図7では、被測定物700としてのミラー工具に対してOCTスキャンを実行した場合の図を表す。この場合、z方向(深さ方向)におけるほぼ一定のz位置(深さ位置)で測定光が反射される。
【0070】
OCT装置500は、図2に示す処理SQ1~SQ7を順番に実行する。いくつかの実施形態では、処理SQ4において得られた処理結果を用いて冗長度が算出され、算出された冗長度を用いて、処理SQ7において得られたBスキャンデータのデータサイズがx方向(ラテラル方向、Bスキャン方向)にリサイズされる。
【0071】
(SQ1:光学的分解能又はAスキャン位置の間隔を変更)
まず、BMスキャンのスキャン条件が設定されると、制御部540は、スキャン条件を解析し、光学的分解能又はAスキャン位置の間隔を変更すべきか否かを判定する。
【0072】
例えば、被測定物の所望の観察条件等に起因してAスキャン位置の間隔Δxがあらかじめ決められている場合、制御部540は、Aスキャン位置の間隔Δxに応じてx方向の光学的分解能を変更するように測定光の光束の直径dを変更する。このとき、(Δx/d)<(π/8)を満たすように、測定光の光束の直径dが変更される。
【0073】
或いは、例えば、光学系の構造や配置等に起因して測定光の光束の直径dがあらかじめ決められている場合、制御部540は、測定光の光束の直径d(x方向の直径d)に応じてAスキャン位置の間隔Δxを変更する。このとき、(Δx/d)<(π/8)を満たすように、Aスキャン位置の間隔Δxが変更される。
【0074】
(SQ2:OCTスキャン)
次に、制御部540は、処理SQ1において変更された光学的分解能又はAスキャン位置の間隔を用いて、干渉光学系510及び光スキャナ520を制御して、被測定物700に対してOCTスキャンを実行する。
【0075】
具体的には、制御部540は、処理SQ1において変更された光学的分解能又はAスキャン位置の間隔が適用されたスキャン条件に従って、あらかじめ設定されたx方向に測定光が偏向するように光スキャナ520を制御しつつ、Aスキャン毎に参照光の光路長と測定光の光路長との差を変更する(位相変調する)ように干渉光学系510を制御する。これにより、Aスキャン毎に位相をシフトすることでラテラル方向に周波数変調された複数のAスキャンデータが取得される。
【0076】
(SQ3:リスケーリング)
続いて、制御部540は、スキャンデータ生成部530を制御して、干渉光学系510により得られたAスキャンデータに対してリスケーリング処理を実行させる。リスケーリング処理は、波長(λ)空間のスキャンデータを波数(k)空間のスキャンデータに変換する。例えば、処理SQ3では、式(1)に示すスキャンデータが得られる。
【0077】
図3に、処理SQ3において得られたスキャンデータを模式的に表す。横軸は、x方向を表し、縦軸は、波数方向を表す。
【0078】
上記のように、被測定物700としてのミラー工具に対して、Aスキャン毎に参照光の光路長と測定光の光路長との差を変更するAスキャンがx方向に順次に実行されるため、図3に示すように、x方向に縞模様(濃淡は強度の差を表す)がシフトする。
【0079】
(SQ4:x方向にフーリエ変換)
次に、制御部540は、スキャンデータ生成部530を制御して、処理SQ3により得られたリスケーリング処理後のスキャンデータに対してx方向にフーリエ変換を実行させる。スキャンデータ生成部530は、例えば、式(2)~式(6)に示すように処理を実行する。
【0080】
図4に、処理SQ4において得られたスキャンデータを模式的に表す。横軸は、u(空間周波数、時間周波数)軸の原点を中心にプラスのu方向とマイナスのu方向を表し、縦軸は、波数方向を表す。
【0081】
図4に示すように、u軸の原点を基準に、+u方向に信号成分Bと、-u方向に信号成分Bと複素共役である信号成分Bとが描出される(式(2)を変形した式(6)を参照)。
【0082】
(SQ5:u方向に窓関数を乗算)
次に、制御部540は、スキャンデータ生成部530を制御して、処理SQ4により得られたフーリエ変換処理後のスキャンデータに対して、u方向に窓関数を乗算させることで、式(6)で示す式から例えば+u方向の信号成分Bを抽出する。
【0083】
例えば、窓関数として、上記のように、ヘヴィサイドステップ関数が用いられる。ヘヴィサイドステップ関数は、正の引数uに対して関数値「1」を出力し、0以下の負の引数uに対して「0」を出力するステップ関数である。
【0084】
図5に、処理SQ5において得られたスキャンデータを模式的に表す。横軸は、u軸の原点を中心に+u方向と-u方向を表し、縦軸は、波数方向を表す。
【0085】
図5に示すように、処理SQ4により得られたフーリエ変換処理後のスキャンデータに対してヘヴィサイドステップ関数をu方向に乗算することで、+u方向の信号成分Bだけが出力される。このとき、u=0のスキャンデータも除去されるため、すべてのAスキャンデータに重畳されるパターンノイズを除去することができる。実用的には、すべてのAスキャンに重畳されるパターンノイズの成分がu=0の周りで幅を持つ場合があることを考慮して、ヘヴィサイドステップ関数の代わりに+u方向にシフトさせたヘヴィサイドステップ関数を用いてもよい。
【0086】
(SQ6:u方向に逆フーリエ変換)
次に、制御部540は、スキャンデータ生成部530を制御して、処理SQ5により得られた窓関数処理後のスキャンデータに対して、式(7)に示すように、u方向に逆フーリエ変換を実行させる。
【0087】
図6に、処理SQ6において得られたスキャンデータを模式的に表す。図6は、逆フーリエ変換処理後のスキャンデータの実部と虚部とを分けて図示したものである。図6に示す実部と虚部のそれぞれについて、横軸はx方向を表し、縦軸は波数方向を表す。
【0088】
図6では判別が難しいが、実部に対して、Aスキャン毎にシフトした位相シフト量だけ縞模様がx方向にシフトしている。
【0089】
(SQ7:k方向にフーリエ変換)
次に、制御部540は、スキャンデータ生成部530を制御して、処理SQ6により得られた逆フーリエ変換処理後のスキャンデータに対して、k方向にフーリエ変換処理を実行させる。
【0090】
図7に、処理SQ7において得られたBスキャンデータを模式的に表す。横軸はx方向を表し、縦軸はz方向を表す。
【0091】
図7に示すように、z方向においてほぼ一定のz位置(深さ位置)に配置されたミラー工具(反射面)が描出される。
【0092】
いくつかの実施形態では、処理SQ7において得られたBスキャンデータは、Aスキャンがx方向に過度にオーバーラップするように実行されるため、スキャンデータのx方向の冗長度が高くなる。そこで、実施形態では、処理SQ4で得られたスキャンデータに基づいて冗長度を算出し、算出された冗長度に応じて、処理SQ7において得られたBスキャンデータをx方向にリサイズする。
【0093】
この場合、制御部540は、情報処理部600を制御して、処理SQ4で得られたフーリエ変換処理後のスキャンデータに基づいて冗長度を算出させる。例えば、情報処理部600は、算出された冗長度Rに基づいて、処理SQ7において得られたフーリエ変換後のBスキャンデータをx方向にリサイズする。情報処理部600は、フーリエ変換後のBスキャンデータのデータサイズを(1/R)倍にリサイズする。具体的には、情報処理部600は、フーリエ変換後のBスキャンデータのデータサイズをx方向に(1/R)倍にリサイズする。
【0094】
情報処理部600は、処理SQ7により得られたBスキャンデータ(又は、リサイズ後のBスキャンデータ)をフルレンジOCTのスキャンデータとして出力する。制御部540は、出力されたフルレンジOCTのスキャンデータを用いて、図示しない表示手段に表示させることが可能である。
【0095】
次に、実施形態に係るOCT装置500について具体的に説明する。
【0096】
<眼科装置>
以下では、実施形態に係るOCT装置500が眼科装置に適用された場合(すなわち、被測定物が眼である場合)について説明するが、実施形態に係るOCT装置が適用される装置は眼科装置に限定されるものではない。
【0097】
眼科装置は、実施形態に係るOCT装置に加えて、眼科撮影装置と、眼科測定装置と、眼科治療装置とのうちのいずれか1つ以上を含んでよい。いくつかの実施形態の眼科装置に含まれる眼科撮影装置は、例えば、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡、スリットランプ検眼鏡、手術用顕微鏡等のうちのいずれか1つ以上である。また、いくつかの実施形態の眼科装置に含まれる眼科測定装置は、例えば、眼屈折検査装置、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザ、視野計、マイクロペリメータ等のうちのいずれか1つ以上である。また、いくつかの実施形態の眼科装置に含まれる眼科治療装置は、例えば、レーザー治療装置、手術装置、手術用顕微鏡等のうちのいずれか1つ以上である。
【0098】
以下の実施形態に係る眼科装置は、OCT計測が可能なOCT装置と眼底カメラとを含むものとする。
【0099】
以下では、被検眼の眼底に対するOCT計測が可能な眼科装置を例に説明するが、実施形態に係る眼科装置は、被検眼の前眼部に対してOCT計測が可能であってよい。いくつかの実施形態では、測定光の焦点位置を変更するレンズを移動することで、OCT計測の範囲や計測部位を変更する。いくつかの実施形態では、1以上のアタッチメント(対物レンズ、前置レンズ等)を加えることで、眼底に対するOCT計測と、前眼部に対するOCT計測と、眼底及び前眼部を含む全眼球に対するOCT計測とが可能な構成である。いくつかの実施形態では、眼底計測用の眼科装置において、対物レンズと被検眼との間に前置レンズを配置することで平行光束にされた測定光を被検眼に入射させることで前眼部に対するOCT計測を行う。
【0100】
この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。
【0101】
以下、実施形態では、OCTを用いた計測又は撮影においてスウェプトソースタイプのOCTの手法を用いる場合について特に詳しく説明する。しかしながら、他のタイプ(例えば、スペクトラルドメインタイプ)のOCTを用いる眼科装置に対して、実施形態に係る構成を適用することも可能である。
【0102】
以下の実施形態において、x方向は、対物レンズの光軸方向に直交する方向(左右方向、水平方向)であり、y方向は、対物レンズの光軸方向に直交する方向(上下方向、垂直方向)であり、z方向は、対物レンズ(干渉光学系、後述のOCTユニット)の光軸方向である。
【0103】
<第1実施形態>
[構成]
(光学系の構成)
図8、及び図9に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラと略同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底(又は前眼部)のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
【0104】
〔眼底カメラユニット2〕
図8に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底画像)を取得するための光学系が設けられている。眼底画像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、例えば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。撮影画像は、例えば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、又は近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像であってもよい。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、例えばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
【0105】
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが設けられている。更に、眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30とが設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの測定光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した測定光をOCTユニット100に導く。
【0106】
照明光学系10の観察光源11は、例えばハロゲンランプを含む。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー48を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。なお、観察光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いることも可能である。
【0107】
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー48を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この眼底反射光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、例えば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のピントが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。
【0108】
撮影光源15は、例えばキセノンランプを含む。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
【0109】
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用視標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための視標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
【0110】
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔部を通過した光は、ダイクロイックミラー48を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0111】
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、例えば、従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。また、固視標の表示位置を任意に変更することも可能である。
【0112】
更に、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0113】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53及びリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔部を通過した光は、ダイクロイックミラー48を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
【0114】
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー48及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過する。ハーフミラー33Aを透過した角膜反射光は、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様の操作を行ってアライメントを実施する。また、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行ってもよい(オートアライメント機能)。
【0115】
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射される。ミラー65により反射された光は、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー48を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
【0116】
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。演算制御ユニット200は、従来と同様に、スプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31及びフォーカス光学系60を移動させてピント合わせを行う(オートフォーカス機能)。また、スプリット指標を視認しつつ手動でピント合わせを行ってもよい。
【0117】
ダイクロイックミラー48は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー48は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメートレンズユニット40と、ズームレンズ81、電気光学変調素子(Electro-Optic Modulation element:EOM)80と、リトロリフレクタ41と、光スキャナ42と、レンズ43と、ミラー44と、OCT合焦レンズ45と、フィールドレンズ(リレーレンズ)46とが設けられている。
【0118】
コリメートレンズユニット40は、OCTユニット100からの後述の光ファイバ127の出射端を保持すると共に、この出射端に対向して配置されるコリメートレンズを含む。コリメートレンズ40によって保持される光ファイバ127の出射端は、被検眼Eの眼底Efと光学的に略共役な位置に配置される。
【0119】
ここで、光ファイバ127がシングルモード光ファイバであるものとすると、光ファイバ127のモードフィールド径(Mode Field Diameter:MFD)とコリメートレンズの焦点距離f1とから、コリメートレンズにより平行光束とされた測定光LSの半径r1は、r1=λ0×f1/{π×(MFD/2)}により求められる。ここで、λ0は、測定光LSの中心波長である。
【0120】
被検眼Eの虹彩(瞳孔)と光学的に略共役な位置に配置される光スキャナ42から虹彩位置までの光学倍率をβとすると、虹彩位置における測定光LSの光束の半径r2は、r2=β×r1より求められる。
【0121】
被検眼Eの焦点距離をf3とすると、眼底EfにおけるOCTユニット100からの測定光の結像スポットの半径r3は、r3=λ0×f3/(π×r2)=λ0×f3/(π×β×r1)より求められる。すなわち、λ0とβが固定されている場合、r3を変更するためにr1を変更することによって眼底Ef上の測定光の結像スポット径(式(10)の光束の直径dに相当)を変更することができる。或いは、MFDが固定されている場合、f1を変更することで、r1を変更することも可能である。
【0122】
ズームレンズ81は、焦点距離を変更する。いくつかの実施形態では、ズームレンズ81は、焦点位置の移動が生じないように焦点距離を変更可能に構成される。ズームレンズ81は、後述の演算制御ユニット200からの制御を受け、焦点距離を変更する。ズームレンズ81は、コリメートレンズユニット40により平行光束とされた測定光の光路に配置される。ズームレンズ81は、コリメートレンズユニット40と光スキャナ42との間の任意の位置に配置可能である。ズームレンズ81は、コリメートレンズユニット40内のコリメートレンズとして配置されてもよい。ズームレンズ81は、実施形態に係る「分解能変更部」の一例である。
【0123】
EOM80は、ズームレンズ81とリトロリフレクタ41との間に配置される。EOM80は、後述の演算制御ユニット200から供給される制御信号(電圧)に応じて、屈折率を変更する。屈折率を変更することで、EOM80を通過する測定光LSの光路長を変更する。EOM80は、通過する測定光LSの光束断面に一様に屈折率を変更するように構成される。
【0124】
リトロリフレクタ41は、入射する測定光LSを、測定光LSの入射方向と平行で、且つ入射方向と反対の方向に折り返して反射する。リトロリフレクタ41は、図8に示す矢印の方向に移動可能に構成され、OCT計測用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0125】
光スキャナ42は、眼底撮影時には、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置(瞳孔共役位置)又はその近傍に配置される。なお、前眼部撮影時には、光スキャナ42は、被検眼の瞳孔と光学的に非共役な位置に配置される。光スキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する光(測定光)の進行方向を変更する。光スキャナ42は、後述の演算制御ユニット200からの制御を受け、測定光を1次元的又は2次元的に偏向することができる。
【0126】
光スキャナ42は、例えば、第1ガルバノミラーと、第2ガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含む。第1ガルバノミラーは、OCTユニット100に含まれる干渉光学系の光軸に直交する垂直方向(y方向)に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。y方向は、干渉光学系の光軸に垂直な平面における垂直方向である。第2ガルバノミラーは、干渉光学系の光軸に直交する水平方向(x方向)に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラーにより偏向された測定光LSを偏向する。x方向は、干渉光学系の光軸に垂直な平面における水平方向である。それにより、撮影部位を測定光LSでxy平面上の任意の方向に走査することができる。
【0127】
例えば、光スキャナ42に含まれる第1ガルバノミラーの向きと第2ガルバノミラーの向きを同時に制御することで、xy面上の任意の軌跡に沿って測定光の照射位置を移動刺させることが可能である。それにより、所望のスキャンパターンに従って撮影部位のスキャンを行うことができる。
【0128】
OCT合焦レンズ45は、測定光LSの光路(干渉光学系の光軸)に沿って移動可能である。OCT合焦レンズ45は、後述の演算制御ユニット200からの制御を受け、測定光LSの光路に沿って移動する。
【0129】
いくつかの実施形態では、OCT合焦レンズ45に代えて液晶レンズ又はアルバレツレンズが設けられる。液晶レンズ又はアルバレツレンズは、OCT合焦レンズ45と同様に、演算制御ユニット200により制御される。
【0130】
〔OCTユニット100〕
図9を参照しつつOCTユニット100の構成の一例を説明する。OCTユニット100には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、波長走査型(波長掃引型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、眼底Efを経由した測定光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系である。干渉光学系における干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0131】
光源ユニット101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長走査型(波長掃引型)光源を含んで構成される。光源ユニット101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
【0132】
光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏波状態(偏光状態)が調整される。偏波コントローラ103は、例えばループ状にされた光ファイバ102に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ102内を導かれる光L0の偏波状態を調整する。
【0133】
偏波コントローラ103により偏波状態が調整された光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0134】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束となる。平行光束となった参照光LRは、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRと測定光LSの光路長(光学距離)を合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSの分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
【0135】
コーナーキューブ114は、コリメータ111により平行光束となった参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ114に入射する参照光LRの光路と、コーナーキューブ114から出射する参照光LRの光路とは平行である。また、コーナーキューブ114は、参照光LRの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能とされている。この移動により参照光LRの光路(参照光路)の長さが変更される。
【0136】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換されて光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれて参照光LRの偏波状態が調整される。
【0137】
偏波コントローラ118は、例えば、偏波コントローラ103と同様の構成を有する。偏波コントローラ118により偏波状態が調整された参照光LRは、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて、演算制御ユニット200の制御の下で光量が調整される。アッテネータ120により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
【0138】
ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれ、コリメートレンズユニット40により平行光束とされる。平行光束にされた測定光LSは、ズームレンズ81、EOM80、リトロリフレクタ41、光スキャナ42、レンズ43、ミラー44、OCT合焦レンズ45、及びフィールドレンズ46を経由してダイクロイックミラー48に到達する。そして、測定光LSは、ダイクロイックミラー48により反射され、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに照射される。測定光LSは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる測定光LSの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0139】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(例えば1:1)で、測定光LSと参照光LRとの干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ122から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123、124により検出器125に導かれる。
【0140】
検出器125は、例えば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。検出器125は、その検出結果(干渉信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。DAQ130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長掃引型光源により所定の波長範囲内で掃引(走査)される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、クロックKCに基づき、検出器125の検出結果をサンプリングする。DAQ130は、サンプリングされた検出器125の検出結果を演算制御ユニット200に送る。
【0141】
実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、例えばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。実施形態では、干渉光学系は、図9に示す構成に加えて、図8に示すコリメートレンズユニット40、ズームレンズ81、EOM80、リトロリフレクタ41、光スキャナ42、レンズ43、ミラー44、OCT合焦レンズ45、フィールドレンズ46を含んでもよい。
【0142】
〔演算制御ユニット200〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。
【0143】
図10図13、及び図14に、第1実施形態に係る眼科装置1の処理系(制御系)の構成例の機能ブロック図を示す。図13は、図10の画像形成部220の構成例の機能ブロック図を表す。図14は、図10のデータ処理部230の構成例の機能ブロック図を表す。図10図13及び図14のそれぞれにおいて、図8又は図9と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0144】
図11に、第1実施形態に係るズームレンズ81の動作説明図を示す。図12に、第1実施形態に係るEOM80に対する制御タイミングの一例を示す。
【0145】
演算制御ユニット200は、検出器125から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様である。
【0146】
図10に示すように、演算制御ユニット200は、制御部210を含み、眼底カメラユニット2、表示装置3の機能を有するユーザインターフェイス240、及びOCTユニット100の各部を制御する。例えば、演算制御ユニット200は、眼底EfのOCT画像(断層画像、3次元画像)を形成し、形成されたOCT画像を表示装置3に表示させる。
【0147】
眼底カメラユニット2の制御として、観察光源11、撮影光源15及びLED51、61の動作制御、CCDイメージセンサ35、38の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31の移動制御、OCT合焦レンズ45の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、リトロリフレクタ41の移動制御、光スキャナ42の動作制御、EOM80の駆動制御、ズームレンズ81の駆動制御などがある。
【0148】
OCTユニット100の制御として、光源ユニット101の動作制御、コーナーキューブ114の移動制御、検出器125の動作制御、DAQ130の動作制御、アッテネータ120の動作制御、偏波コントローラ103、118の動作制御などがある。
【0149】
演算制御ユニット200は、光学系の制御に加えて、画像の形成処理、各種データ処理を実行する。
【0150】
演算制御ユニット200は、例えば、従来のコンピュータと同様に、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、例えばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、演算制御ユニット200の機能は、1以上のプロセッサにより実現される。
【0151】
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100及び演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、2つ以上の筐体に別れて構成されていてもよい。
【0152】
制御部210は、主制御部211と、記憶部212とを含む。
【0153】
(主制御部211)
主制御部211は、前述の眼科装置1の各部に制御信号を出力することにより各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2に対して、CCDイメージセンサ35、38、LCD39、合焦駆動部31A、リトロリフレクタ駆動部41A、光スキャナ42、OCT合焦駆動部45A、EOM駆動部80A、及びズームレンズ駆動部81Aを制御する。更に、主制御部211は、OCTユニット100に対して、光源ユニット101、参照駆動部114A、偏波コントローラ103、118、アッテネータ120、検出器125、DAQ130を制御する。
【0154】
主制御部211は、CCDイメージセンサ35又はCCDイメージセンサ38の露光時間(電荷蓄積時間)、感度、フレームレート等を制御する。いくつかの実施形態では、主制御部211は、所望の画質の画像を取得するようにCCDイメージセンサ35又はCCDイメージセンサ38を制御する。
【0155】
主制御部211は、LCD39に対して固視標や視力測定用視標の表示制御を行う。それにより、被検眼Eに呈示される視標が切り替えられたり、視標の種別が変更されたりする。また、LCD39における視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eに対する視標呈示位置を変更することが可能である。
【0156】
合焦駆動部31Aは、合焦レンズ31を光軸方向に移動する。主制御部211は、合焦レンズ31が所望の合焦位置に配置されるように合焦駆動部31Aを制御する。それにより、撮影光学系30の合焦位置が変更される。
【0157】
例えば、主制御部211は、CCDイメージセンサ35により得られた受光像(スプリット指標)におけるスプリット指標の位置を解析して、合焦駆動部31A及びフォーカス光学系60を制御する。或いは、例えば、主制御部211は、被検眼Eのライブ画像を後述の表示部240Aに表示させながら、後述の操作部240Bに対してユーザが行った操作に応じて合焦駆動部31A及びフォーカス光学系60を制御する。
【0158】
リトロリフレクタ駆動部41Aは、リトロリフレクタ41を測定光LSの入射方向又は入射方向と反対方向に移動する。主制御部211は、リトロリフレクタ駆動部41Aを制御することによりリトロリフレクタ41を測定光LSの入射方向又は入射方向と反対方向に移動して測定光LSの光路長を変更する。それにより、測定光LSの光路長と参照光LRの光路長との差が変更される。
【0159】
例えば、主制御部211は、OCT計測により得られた干渉光LCの検出結果(又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像)を解析し、計測部位が所望の深さ位置になるようにリトロリフレクタ駆動部41Aを制御する。
【0160】
主制御部211は、光スキャナ42を制御する。光スキャナ42は、主制御部211からの制御を受け、測定光LSを1次元的又は2次元的に偏向する。主制御部211は、事前に設定されたスキャンモードに対応した偏向パターンに従って測定光LSを偏向するように光スキャナ42を制御する。このようなスキャンモードの例として、ラインスキャン、十字スキャン、サークルスキャン、ラジアルスキャン、同心円スキャン、マルチラインクロススキャン、らせん状スキャン、リサジュー(Lissajous)スキャン、3次元スキャンなどが挙げられる。
【0161】
上記のようなスキャンモードに対応した偏向パターンに従って測定光LSで撮影部位をスキャンすることにより、スキャンライン(スキャン軌跡)に沿う方向と眼底深度方向(z方向)とにより張られる面におけるOCT画像を取得することができる。
【0162】
OCT合焦駆動部45Aは、測定光LSの光路に沿ってOCT合焦レンズ45を移動する。主制御部211は、OCT合焦レンズ45が所望の合焦位置に配置されるようにOCT合焦駆動部45Aを制御する。それにより、測定光LSの合焦位置が変更される。測定光LSの合焦位置は、測定光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)に相当する。
【0163】
例えば、主制御部211は、OCT計測により得られた干渉光LCの検出結果の信号対雑音比、又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像の画質に対応した評価値(評価値の統計値を含む)に基づいてOCT合焦駆動部45Aを制御する。
【0164】
OCT合焦レンズ45に代えて液晶レンズ又はアルバレツレンズが設けられる場合、主制御部211は、OCT合焦駆動部45Aに対する制御と同様に、液晶レンズ又はアルバレツレンズを制御することが可能である。
【0165】
EOM駆動部80Aは、EOM80を駆動する。主制御部211は、EOM駆動部80Aを制御することによりEOM80の屈折率を変更することで測定光LSの光路長を変更する。
【0166】
ズームレンズ駆動部81Aは、ズームレンズ81を駆動する。主制御部211は、ズームレンズ駆動部81Aを駆動することにより、ズームレンズ81の焦点距離を変更する。例えば、図11に示すように、ズームレンズ81は、正の屈折力を有する第1レンズ811と、光軸方向に沿って移動可能な負の屈折力を有する第2レンズ812と、光軸方向に沿って移動可能な正の屈折力を有する第3レンズ813とを含む。コリメートレンズユニット40からEOM80の方向に沿って、第1レンズ811、第2レンズ812、及び第3レンズ813の順序で配置される。第1レンズ811は、正レンズ(凸レンズ)を含む。第2レンズ812は、負レンズ(凹レンズ)を含む。第3レンズ813は、正レンズ(凸レンズ)を含む。第1レンズ811、第2レンズ812、及び第3レンズ813の少なくとも1つは、2以上のレンズにより構成されていてもよい。なお、図11では、コリメートレンズユニット40内のコリメートレンズ401が図示されている。
【0167】
例えば、主制御部211は、ズームレンズ駆動部81Aを制御することにより、第1レンズ811に対して、第2レンズ812及び第3レンズ813を光軸方向に相対的に移動する。例えば、第1レンズ811に対して第2レンズ812及び第3レンズ813のそれぞれが所定の基準位置に配置されているとき、第3レンズ813からEOM80に向けて出射する測定光LSの光束の直径がdb0であるものとする。主制御部211は、ズームレンズ駆動部81Aを制御して、第2レンズ812をその基準位置から第1レンズ811に向けて近付けると共に、第3レンズ813をその基準位置から移動させる。それにより、焦点位置の移動を伴うことなく、第3レンズ813からEOM80に向けて出射する測定光LSの光束の直径がdb1(db0<db1)に変更される。また、主制御部211は、ズームレンズ駆動部81Aを制御して、第2レンズ812をその基準位置から第1レンズ811から遠ざけると共に、第3レンズ813をその基準位置から移動させる。それにより、焦点位置の移動を伴うことなく、第3レンズ813からEOM80に向けて出射する測定光LSの光束の直径がdb2(db2<db0)に変更される。
【0168】
主制御部211は、Aスキャン位置の間隔Δxに応じて、所定の光束径変更範囲内で(Δx/d)<(π/8)を満たす最小の光束の直径dとなるようにズームレンズ駆動部81Aを制御することで、光束分解能を変更する。これにより、光束分解能の低下を最小限に抑えつつ、複素共役アーチファクトを抑制することが可能になる。
【0169】
例えば、主制御部211又は記憶部212には、複数のAスキャン位置の間隔のそれぞれに測定光の光束の直径が関連付けられた制御情報が記憶されている。主制御部211は、この制御情報を参照することにより、Aスキャン位置の間隔に対応した測定光の光束の直径を特定し、特定された直径となるようにズームレンズ駆動部81Aを制御する。
【0170】
なお、ズームレンズ81を用いることなく、OCT合焦レンズ45を用いてデフォーカス制御を行うことで、眼底Ef(被測定物)における測定光の光束の直径を変更することが可能である。この場合、主制御部211は、Aスキャン位置の間隔Δxに応じて、所定の光束径変更範囲内で(Δx/d)<(π/8)を満たす最小の光束の直径dとなるようにOCT合焦駆動部45Aを制御することで、光束分解能を変更する。これにより、光束分解能の低下を最小限に抑えつつ、複素共役アーチファクトを抑制することが可能になる。
【0171】
例えば、主制御部211又は記憶部212には、複数のAスキャン位置の間隔のそれぞれに測定光の光束の直径が関連付けられた制御情報が記憶されている。主制御部211は、この制御情報を参照することにより、Aスキャン位置の間隔に対応した測定光の光束の直径を特定し、特定された直径となるようにOCT合焦駆動部45Aを制御する。
【0172】
主制御部211は、図12に示す制御タイミングに従ってEOM駆動部80Aに対して制御信号を出力することにより、Aスキャン毎に参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更して位相変調を行う(位相シフト法)。具体的には、主制御部211は、光スキャナ42の偏向制御に対応したAスキャンの開始タイミングに同期して、Aスキャン時間Tの間隔で位相シフト量Psが順次に付与されるように測定光LSの光路長を変更する。非特許文献3に記載されているように、Aスキャン毎にπ/2だけ位相がシフトするとき、ゴーストイメージを最も効果的に分離(除去)することができる。本実施形態では、Aスキャン中に測定光LSがEOM80を2回通過するため、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量Psがπ/4だけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力する。しかしながら、Aスキャン毎の位相シフト量はπ/2でなくてもよい。この場合、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量PsがVだけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力することで、Aスキャン毎に2×Vだけ位相をシフトすることができる。
【0173】
具体的には、主制御部211は、OCTスキャンを開始する際に計測部位が所望の深さ位置になるようにリトロリフレクタ駆動部41Aを制御する。そして、リトロリフレクタ駆動部41Aによりリトロリフレクタ41が所定の位置に配置された状態で実行されるBスキャン中に、主制御部211は、Aスキャン毎に測定光LSの光路長を変更するようにEOM駆動部80Aを制御する。これにより、Aスキャン毎に参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更することで位相変調が行われたスキャンデータが取得される。なお、Bスキャンは、ラインスキャンだけではなく、十字スキャン、サークルスキャン、ラジアルスキャン、同心円スキャン、マルチラインクロススキャン、らせん状スキャン、又はリサジュースキャンなどのAスキャン方向と交差する方向にスキャンを実行するものであってもよい。
【0174】
主制御部211は、光源ユニット101を制御する。光源ユニット101の制御には、光源の点灯と消灯の切り替え、出射光の強度制御、出射光の中心周波数の変更、出射光の掃引速度の変更、掃引周波数の変更、掃引波長範囲の変更などが含まれる。
【0175】
参照駆動部114Aは、参照光の光路に設けられたコーナーキューブ114を、この光路に沿って移動する。それにより、測定光LSの光路長と参照光LRの光路長との差が変更される。
【0176】
例えば、主制御部211は、OCT計測により得られた干渉光LCの検出結果(又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像)を解析し、計測部位が所望の深さ位置になるように参照駆動部114Aを制御する。いくつかの実施形態では、リトロリフレクタ41と参照駆動部114Aのいずれか一方だけが設けられる。
【0177】
主制御部211は、偏波コントローラ103、118を制御する。例えば、主制御部211は、OCT計測により得られた干渉光LCの検出結果の信号対雑音比、又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像の画質に対応した評価値(評価値の統計値を含む)に基づいて偏波コントローラ103、118を制御する。
【0178】
主制御部211は、アッテネータ120を制御する。例えば、主制御部211は、OCT計測により得られた干渉光LCの検出結果の信号対雑音比、又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像の画質に対応した評価値(評価値の統計値を含む)に基づいてアッテネータ120を制御する。
【0179】
主制御部211は、検出器125を制御する。検出器125の制御には、露光時間(電荷蓄積時間)、感度、フレームレート等の制御がある。
【0180】
主制御部211は、DAQ130を制御する。DAQ130の制御には、サンプリングタイミング等の制御がある。
【0181】
移動機構150は、被検眼Eに対して眼底カメラユニット2(OCTユニット100)を3次元的に相対的に移動する。例えば、主制御部211は、移動機構150を制御して、眼底カメラユニット2に設けられた光学系を3次元的に移動させることができる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとピント合わせが実行される。トラッキングは、被検眼Eを動画撮影して得られる画像に基づき被検眼Eの位置や向きに合わせて装置光学系をリアルタイムで移動させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0182】
マニュアルアライメントの場合、光学系に対する被検眼Eの変位がキャンセルされるようにユーザが後述のユーザインターフェイス240に対して操作することにより光学系と被検眼Eとを相対移動させる。例えば、主制御部211は、ユーザインターフェイス240に対する操作内容に対応した制御信号を移動機構150に出力することにより移動機構150を制御して光学系と被検眼Eとを相対移動させる。
【0183】
オートアライメントの場合、光学系に対する被検眼Eの変位がキャンセルされるように主制御部211が移動機構150を制御することにより光学系と被検眼Eとを相対移動させる。いくつかの実施形態では、主制御部211は、光学系の光軸が被検眼Eの軸に略一致し、かつ、被検眼Eに対する光学系の距離が所定の作動距離になるように制御信号を移動機構150に出力することにより移動機構150を制御して光学系と被検眼Eとを相対移動させる。ここで、作動距離とは、対物レンズ22のワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、光学系を用いた測定時(撮影時)における被検眼Eと光学系との間の距離に相当する。
【0184】
主制御部211は、眼底カメラユニット2等を制御することにより眼底撮影及び前眼部撮影を制御する。また、主制御部211は、眼底カメラユニット2及びOCTユニット100等を制御することによりOCT計測を制御する。主制御部211は、OCT計測を行う前に複数の予備的な動作を実行可能である。予備的な動作としては、アライメント、フォーカス粗調整、偏光調整、フォーカス微調整などがある。複数の予備的な動作は、所定の順序で実行される。いくつかの実施形態では、複数の予備的な動作は、上記の順序で実行される。
【0185】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、トラッキング制御により得られたトラッキング情報(被検眼Eの移動に対して光学系(干渉光学系)を追従することにより得られたトラッキング情報)に基づいて、OCT撮影のためのスキャン範囲(第2スキャン範囲)の位置をリアルタイムに補正する。主制御部211は、補正されたスキャン範囲を測定光LSでスキャンするように光スキャナ42を制御することが可能である。
【0186】
また、主制御部211は、各種情報を表示装置3(又は後述の表示部240A)に表示させる。表示装置3に表示される情報には、撮影結果(観察画像、OCT画像)、測定結果(測定値)、後述する撮影条件の変更結果を表す情報などがある。
【0187】
主制御部211は、上記のような表示装置3に対する表示制御に加えて、後述の画像形成部220により形成された画像の表示制御、後述のデータ処理部230により得られたデータ処理結果の表示制御などを行うことが可能である。
【0188】
例えば、本撮影(本計測)の前に、仮撮影(仮計測)が実行される。仮撮影において取得された干渉光LCの検出結果又は当該検出結果から形成されたOCT画像に基づいて、本撮影のための撮影条件が調整される。
【0189】
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0190】
(記憶部212)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば、OCT画像の画像データ、眼底画像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
【0191】
記憶部212に記憶された上記のデータの少なくとも一部は、眼科装置1の外部に設けられた記憶部に記憶されていてもよい。例えば、眼科装置1は、院内LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して、上記のデータの少なくとも一部を記憶する機能を有するサーバ装置と通信可能に接続される。ここで、眼科装置1とサーバ装置は、インターネット等のWAN(Wide Area Network)を介して接続されていてもよい。また、LANとWANとを組み合わせたネットワークを介して眼科装置1とサーバ装置を接続してもよい。
【0192】
(画像形成部220)
画像形成部220は、検出器125により検出されDAQ130によりサンプリングされた検出信号(干渉信号)に基づいて、断層画像の画像データを形成する。すなわち、画像形成部220は、干渉光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼EのOCT画像を形成する。この処理には、従来のスウェプトソースタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルター処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。
【0193】
図13に示すように、画像形成部220は、リスケーリング処理部221と、第1フーリエ変換処理部222と、窓関数処理部223と、逆フーリエ変換処理部224と、第2フーリエ変換処理部225とを含む。
【0194】
(リスケーリング処理部221)
リスケーリング処理部221は、OCTユニット100を用いて取得された波長空間におけるBスキャンデータを波数空間におけるBスキャンデータに変換するリスケーリング処理を行う。リスケーリング処理は、干渉光LCの検出結果をクロックKCにより時間軸上において等間隔でサンプリングすることにより得られたスキャンデータを、時間軸上において波数が線形的に(直線的に)変化するように並び替える処理である。リスケーリング処理部221は、図2における処理SQ3に相当する処理を実行することができる。
【0195】
(第1フーリエ変換処理部222)
第1フーリエ変換処理部222は、リスケーリング処理部221により実行されたリスケーリング処理後のBスキャンデータに対して、式(2)に示すようにx方向にフーリエ変換処理を行う。第1フーリエ変換処理部222は、図2における処理SQ4に相当する処理を実行することができる。
【0196】
(窓関数処理部223)
窓関数処理部223は、第1フーリエ変換処理部222により実行されたフーリエ変換処理後のBスキャンデータに対して、上記のようにu方向に窓関数処理を行って、+u方向の信号成分を抽出する。窓関数処理部223は、図2における処理SQ5に相当する処理を実行することができる。
【0197】
(逆フーリエ変換処理部224)
逆フーリエ変換処理部224は、窓関数処理部223により実行された窓関数処理後のBスキャンデータに対して、式(7)に示すようにu方向に逆フーリエ変換処理を行う。逆フーリエ変換処理部224は、図2における処理SQ6に相当する処理を実行することができる。
【0198】
(第2フーリエ変換処理部225)
第2フーリエ変換処理部225は、逆フーリエ変換処理部224により実行された逆フーリエ変換処理後のBスキャンデータに対して、k方向にフーリエ変換処理を行う。第2フーリエ変換処理部225は、図2における処理SQ7に相当する処理を実行することができる。
【0199】
画像形成部220の機能は、1以上のプロセッサにより実行される。いくつかの実施形態では、画像形成部220の機能は、単一のプロセッサにより実行される。
【0200】
画質を向上させるために、同じパターンでのスキャンを複数回繰り返して収集された複数のデータセット(スキャンデータ)を重ね合わせる(加算平均する)ことができる。
【0201】
画像形成部220は、例えば、前述の回路基板を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。また、眼底Efの部位とその画像とを同一視することもある。
【0202】
(データ処理部230)
データ処理部230は、干渉光LCの検出結果、又は画像形成部220により形成された画像に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部230は、干渉信号の信号対雑音比の解析、画像の輝度補正、光路長補正、光学倍率補正、分散補正等の各種補正処理を実行する。
【0203】
また、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底画像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0204】
データ処理部230は、断層画像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部240A等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
【0205】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層画像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層画像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層画像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0206】
データ処理部230は、取得された3次元データセット(ボリュームデータ、スタックデータ等)に各種のレンダリングを施すことで、任意断面におけるBモード画像(縦断面像、軸方向断面像)、任意断面におけるCモード画像(横断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどを形成することができる。Bモード画像やCモード画像のような任意断面の画像は、指定された断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データセットから選択することにより形成される。プロジェクション画像は、3次元データセットを所定方向(z方向、深さ方向、軸方向)に投影することによって形成される。シャドウグラムは、3次元データセットの一部(例えば、特定層に相当する部分データ)を所定方向に投影することによって形成される。Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラムのような、被検眼の正面側を視点とする画像を正面画像(en-face画像)と呼ぶ。
【0207】
データ処理部230は、OCTにより時系列に収集されたデータ(例えば、Bスキャン画像データ)に基づいて、網膜血管や脈絡膜血管が強調されたBモード画像や正面画像(血管強調画像、アンギオグラム)を構築することができる。例えば、被検眼Eの略同一部位を反復的にスキャンすることにより、時系列のOCTデータを収集することができる。
【0208】
いくつかの実施形態では、データ処理部230は、略同一部位に対するBスキャンにより得られた時系列のBスキャン画像を比較し、信号強度の変化部分の画素値を変化分に対応した画素値に変換することにより当該変化部分が強調された強調画像を構築する。更に、データ処理部230は、構築された複数の強調画像から所望の部位における所定の厚さ分の情報を抽出してen-face画像として構築することでOCTA像を形成する。
【0209】
データ処理部230により生成された画像(例えば、3次元画像、Bモード画像、Cモード画像、プロジェクション画像、シャドウグラム、OCTA像)もまたOCT画像に含まれる。
【0210】
図14に示すように、データ処理部230は、解析部231を含む。
【0211】
(解析部231)
解析部231は、少なくとも、干渉光LCの検出結果、画像形成部220により形成されたOCT画像を解析する。いくつかの実施形態では、解析部231は、干渉光LCの検出結果又はOCT画像を解析することによりOCT画像の画質(信号対雑音比)に対応した評価値(評価値の統計値を含む)を解析結果として出力する。主制御部211は、解析部231により得られた解析結果に基づいてOCT合焦駆動部45A、リトロリフレクタ41、偏波コントローラ103、118の少なくとも1つを制御することが可能である。
【0212】
例えば、解析部231は、OCT計測により得られた干渉光の検出結果を解析して、フォーカス微調整制御における測定光LSのフォーカス状態を判定する。例えば、主制御部211は、OCT合焦駆動部45Aを所定のアルゴリズムにしたがって制御しつつ、反復的なOCT計測を行う。解析部231は、OCT計測により繰り返し取得される干渉光LCの検出結果を解析することで、OCT画像の画質に関する所定の評価値を算出する。解析部231は、算出された評価値が閾値以下であるか否か判定する。いくつかの実施形態では、フォーカス微調整は、算出される評価値が閾値以下になるまで継続される。すなわち、評価値が閾値以下であるとき測定光LSのフォーカス状態が適正であると判断され、フォーカス微調整は、測定光LSのフォーカス状態が適正であると判断されるまで継続される。
【0213】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、上記のような反復的なOCT計測を行って干渉信号を取得しつつ、逐次に取得される干渉信号の強度(干渉強度、干渉感度)をモニタする。更に、このモニタ処理を行いながら、OCT合焦レンズ45を移動させることにより、干渉強度が最大となるようなOCT合焦レンズ45の位置を探索する。このようなフォーカス微調整によれば、干渉強度が最適化されるような位置にOCT合焦レンズ45を導くことができる。
【0214】
また、解析部231は、OCT計測により得られた干渉光の検出結果を解析して、測定光LS及び参照光LRの少なくとも一方の偏波状態を判定する。例えば、主制御部211は、偏波コントローラ103、118の少なくとも一方を所定のアルゴリズムにしたがって制御しつつ、反復的なOCT計測を行う。いくつかの実施形態では、主制御部211は、アッテネータ120を制御して、参照光LRの減衰量を変更する。解析部231は、OCT計測により繰り返し取得される干渉光LCの検出結果を解析することで、OCT画像の画質に関する所定の評価値を算出する。解析部231は、算出された評価値が閾値以下であるか否か判定する。この閾値はあらかじめ設定される。偏波調整は、算出される評価値が閾値以下になるまで継続される。すなわち、評価値が閾値以下であるとき測定光LSの偏波状態が適正であると判断され、偏波調整は、測定光LSの偏波状態が適正であると判断されるまで継続される。
【0215】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、偏波調整においても干渉強度をモニタすることが可能である。
【0216】
更に、解析部231は、OCT計測により得られた干渉光の検出結果、又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像に対して所定の解析処理を行う。所定の解析処理には、被検眼Eにおける所定の部位(組織、病変部)の特定;指定された部位間の距離(層間距離)、面積、角度、比率、密度の算出;指定された計算式による演算;所定の部位の形状の特定;これらの統計値の算出;計測値、統計値の分布の算出;これら解析処理結果に基づく画像処理などがある。所定の組織には、血管、視神経乳頭、中心窩、黄斑などがある。所定の病変部には、白斑、出血などがある。
【0217】
いくつかの実施形態では、解析部231は、セグメンテーション処理部として、取得された被検眼のデータに基づいてAスキャン方向の複数の層領域を特定する。この場合、解析部231は、3次元のOCTデータに対してセグメンテーション処理を施すことにより、被検眼の複数の組織に相当する複数の部分データセットを特定する。セグメンテーション処理は、特定の組織や組織境界を特定するための画像処理である。例えば、解析部231は、スキャンデータに含まれる各Aスキャン画像における画素値(輝度値)の勾配を求め、勾配が大きい位置を組織境界として特定する。なお、Aスキャン画像は、眼底の深さ方向にのびる1次元画像データである。なお、眼底の深さ方向は、例えば、z方向、測定光LSの入射方向、軸方向、干渉光学系の光軸方向などとして定義される。
【0218】
典型的な例において、解析部231は、眼底(網膜、脈絡膜等)及び硝子体を表す3次元のOCTデータを解析することにより、眼底の複数の層組織に相当する複数の部分データセットを特定する。各部分データセットは、層組織の境界によって画成される。部分データセットとして特定される層組織の例として、網膜を構成する層組織がある。網膜を構成する層組織には、内境界膜、神経繊維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層、RPEがある。解析部231は、ブルッフ膜、脈絡膜、強膜、硝子体等に相当する部分データセットを特定することができる。いくつかの実施形態では、解析部231は、病変部に相当する部分データセットを特定する。病変部の例として、剥離部、浮腫、出血、腫瘍、ドルーゼンなどがある。
【0219】
いくつかの実施形態では、解析部231は、RPEに対して強膜側の所定のピクセル数分の層組織をブルッフ膜として特定し、当該層組織に相当する部分データセットをブルッフ膜の部分データセットとして取得する。
【0220】
データ処理部230は、撮影光学系30を用いて取得された眼底画像とOCT画像との位置合わせを行うことができる。眼底画像とOCT画像とが並行して取得される場合には、双方の光学系が同軸であることから、同時(略同時)に取得された眼底画像とOCT画像とを、撮影光学系30の光軸を基準として位置合わせすることができる。また、眼底画像とOCT画像との取得タイミングに関わらず、OCT画像をxy平面に投影して得られる画像と眼底画像との位置合わせをすることにより、そのOCT画像とその眼底画像とを位置合わせすることも可能である。この位置合わせ手法は、眼底画像取得用の光学系とOCT計測用の光学系とが同軸でない場合においても適用可能である。また、双方の光学系が同軸でない場合であっても、双方の光学系の相対的な位置関係が既知であれば、この相対位置関係を参照して同軸の場合と同様の位置合わせを実行することが可能である。
【0221】
以上のように機能するデータ処理部230は、例えば、1以上のプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。
【0222】
(ユーザインターフェイス240)
ユーザインターフェイス240には、表示部240Aと操作部240Bとが含まれる。表示部240Aは、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部240Bは、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部240Bには、眼科装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。例えば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、操作部240Bは、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。また、表示部240Aは、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
【0223】
なお、表示部240Aと操作部240Bは、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部240Bは、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部240Bに対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部240Aに表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部240Bとを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
【0224】
情報処理部600、又は演算制御ユニット200(制御部210、画像形成部220、データ処理部230)は、実施形態に係る「情報処理装置」の一例である。OCT装置500、又はOCTユニット100及び光スキャナ42は、実施形態に係る「OCT装置」の一例である。x方向(t方向)又はBスキャン方向は、実施形態に係る「ラテラル方向」の一例である。制御部210、主制御部211は、実施形態に係る「表示制御部」の一例である。干渉光学系510、又はOCTユニット100から対物レンズ22までの測定光LSが通過する光学系は、実施形態に係る「干渉光学系」の一例である。スキャンデータ生成部530又は画像形成部220は、実施形態に係る「スキャンデータ生成部」の一例である。被測定物700又は被検眼Eは、実施形態に係る「被測定物」の一例である。表示装置3又は表示部240Aは、実施形態に係る「表示手段」の一例である。
【0225】
[動作例]
第1実施形態に係る眼科装置1の動作例について説明する。
【0226】
図15、及び図16に、第1実施形態に係る眼科装置1の動作例のフロー図を示す。図15は、第1実施形態に係る眼科装置1の動作例のフローチャートを表す。図16は、図15のステップS8の動作例のフローチャートを表す。記憶部212には、図15、及び図16に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図15、及び図16に示す処理を実行する。
【0227】
(S1:アライメント)
まず、所定の固視位置に固視標を提示した状態で、主制御部211は、被検眼Eに対する光学系のアライメント調整を行う。アライメント調整の例として、手動で行う場合と自動で行う場合とがある。
【0228】
アライメント調整を手動で行う場合、主制御部211は、アライメント光学系50により一対のアライメント指標を被検眼Eに投影する。表示部240Aには、これらアライメント指標の受光像として一対のアライメント輝点が表示される。また、主制御部211は、一対のアライメント輝点の移動目標となる位置を表すアライメントスケールを表示部240Aに表示させる。アライメントスケールは、例えば括弧型の画像である。
【0229】
被検眼Eと眼底カメラユニット2(対物レンズ22)との位置関係が適正である場合、公知の手法により、一対のアライメント輝点は、所定位置(例えば、角膜頂点と角膜曲率中心との中間位置)においてそれぞれ一旦結像して被検眼Eに投影されるようになっている。ここで、上記の位置関係が適正であるとは、被検眼Eと眼底カメラユニット2との間の距離(ワーキングディスタンス)が適正であり、且つ、眼底カメラユニット2の光学系の光軸と被検眼Eの眼軸(角膜頂点位置)とが一致(略一致)していることを意味する。検者(ユーザ)は、一対のアライメント輝点をアライメントスケール内に導くように眼底カメラユニット2を3次元的に移動させることにより、被検眼Eに対する光学系のアライメント調整を行うことが可能である。
【0230】
アライメント調整を自動で行う場合、眼底カメラユニット2を移動させるための移動機構150が用いられる。データ処理部230は、表示部240Aに表示される画面中の各アライメント輝点の位置を特定し、特定された各アライメント輝点の位置とアライメントスケールとの変位を求める。主制御部211は、この変位をキャンセルするように移動機構150により眼底カメラユニット2を移動させる。各アライメント輝点の位置の特定は、例えば、各アライメント輝点の輝度分布を求め、この輝度分布に基づいて重心位置を求めることにより実行できる。アライメントスケールの位置は一定であるので、例えばその中心位置と上記重心位置との変位を求めることにより、目的の変位を求めることが可能である。眼底カメラユニット2の移動方向及び移動距離は、あらかじめ設定されたx方向、y方向及びz方向の各方向における単位移動距離を参照して決定することが可能である。単位移動距離は、例えば、眼底カメラユニット2をどの方向にどれだけ移動させると、アライメント指標がどの方向にどれだけ移動するかを事前に計測した結果から特定される。主制御部211は、決定された移動方向及び移動距離に応じた信号を生成し、この信号を移動機構150に送信する。それにより、被検眼Eに対する光学系の位置が自動で調整される。
【0231】
(S2:スキャン条件を設定)
続いて、主制御部211は、被検眼Eの撮影部位、又は、疾患の種別に応じて、スキャン条件を設定する。スキャン条件には、スキャンモード、スキャン位置、スキャン範囲(スキャン開始位置、及びスキャン終了位置)が含まれる。
【0232】
例えば、主制御部211は、操作部240Bを用いてユーザにより指定されたスキャンモードを設定する。主制御部211は、操作部240Bを用いてユーザにより指定された、撮影部位に対応した撮影モードに基づいて、スキャンモードを設定してもよい。
【0233】
また、例えば、主制御部211は、操作部240Bを用いてユーザにより眼底Efの眼底画像上で指定されたスキャン位置及びスキャン範囲を設定する。眼底画像の例として、撮影光学系30を用いて取得された撮影画像、OCT計測により得られたライブOCT画像(プロジェクション画像、en-face画像)などがある。主制御部211は、操作部240Bを用いてユーザにより指定された、撮影部位に対応した撮影モードに基づいて、撮影モードにあらかじめ関連付けられた撮影部位にスキャン範囲を設定してもよい。
【0234】
以下、ステップS2において、スキャンモードにおいて指定されるスキャンがBスキャンを含むものとする。このとき、Bスキャン方向のスキャン長が定まり、装置固有のAスキャンのサンプリング間隔からAスキャン位置の間隔が一意に定まる。
【0235】
(S3:測定光の光束の直径を変更)
続いて、主制御部211は、ステップS2において一意に決定されたAスキャン位置の間隔Δxに応じて、所定の光束径変更範囲内で(Δx/d)<(π/8)を満たす最小の光束の直径dとなるようにズームレンズ駆動部81Aを制御する。
【0236】
例えば、主制御部211は、上記の制御情報を参照することにより、Aスキャン位置の間隔に対応した測定光の光束の直径を特定し、特定された直径となるようにズームレンズ駆動部81Aを制御する。これにより、測定光の光束の直径が変更される。
【0237】
いくつかの実施形態では、ステップS2及びステップS3の後に、ステップS1の処理が実行される。
【0238】
(S4:深さ位置を調整)
次に、主制御部211は、被検眼Eにおける注目部位に相当する画像領域が断層画像における所定の深さ範囲に入るように、注目部位に相当する画像領域が描出される深さ位置の調整を行う。
【0239】
例えば、主制御部211は、LCD39の所定位置にOCT計測用の固視標を表示させる。主制御部211は、眼底Efにおける光学系の光軸の位置に対応するLCD39の表示位置に固視標を表示させることが可能である。
【0240】
続いて、主制御部211は、OCTユニット100を制御してOCT仮計測を実行させ、深さ方向の計測範囲の基準位置を調整するための調整用断層画像を取得させる。具体的には、主制御部211は、光スキャナ42を制御することにより、光源ユニット101から出射された光L0に基づいて生成された測定光LSを偏向し、偏向された測定光LSで被検眼Eの眼底Efをスキャンさせる。測定光LSのスキャンにより得られた干渉光の検出結果は、クロックKCに同期してサンプリングされた後、画像形成部220に送られる。画像形成部220は、得られた干渉信号から被検眼Eの断層画像(OCT画像)を形成する。
【0241】
続いて、例えば、主制御部211は、得られた断層画像における所定の部位(例えば、強膜)を解析部231に特定させ、特定された所定の部位の位置に対して深さ方向に所定の距離だけ離れた位置を計測範囲の基準位置として設定する。主制御部211は、基準位置に対応して、リトロリフレクタ41及び参照駆動部114Aの少なくとも一方を制御する。また、測定光LSと参照光LRの光路長が略一致するようにあらかじめ決められた所定の位置が計測範囲の基準位置として設定されてもよい。
【0242】
(S5:フォーカス調整)
次に、主制御部211は、フォーカス調整制御を実行する。
【0243】
例えば、主制御部211は、OCT合焦駆動部45Aを制御してOCT合焦レンズ45を所定の距離だけ移動させた後、OCTユニット100を制御してOCT計測を実行させる。主制御部211は、上記のように、OCT計測により得られた干渉光の検出結果に基づいて測定光LSのフォーカス状態をデータ処理部230に判定させる。データ処理部230による判定結果に基づいて測定光LSのフォーカス状態が適正ではないと判断されたとき、主制御部211は、再びOCT合焦駆動部45Aの制御を行い、フォーカス状態が適正であると判断されるまで繰り返す。
【0244】
(S6:偏波調整)
次に、主制御部211は、偏波調整を実行する。
【0245】
例えば、主制御部211は、偏波コントローラ103、118の少なくとも一方を制御して光L0及び測定光LSの少なくとも一方の偏波状態を所定の量だけ変更した後、OCTユニット100を制御してOCT計測を実行させ、取得された干渉光の検出結果に基づくOCT画像を画像形成部220に形成させる。主制御部211は、上記のように、OCT計測により得られたOCT画像の画質をデータ処理部230に判定させる。データ処理部230による判定結果に基づいて測定光LSの偏波状態が適正ではないと判断されたとき、主制御部211は、再び偏波コントローラ103、118の制御を行い、偏波状態が適正であると判断されるまで繰り返す。
【0246】
(S7:OCTスキャン)
続いて、主制御部211は、光スキャナ42及びOCTユニット100等を制御することにより、ステップS1~ステップS6において調整された計測環境の下でOCTスキャンを実行させる。
【0247】
このとき、主制御部211は、上記のように、ステップS2において設定されたスキャンモードに対応した光スキャナ42に対する偏向制御に同期して、参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更する(位相変調する)ようにEOM駆動部80Aを制御することでBMスキャンを実行する。これにより、Aスキャン毎に位相をシフトすることでラテラル方向に周波数変調(位相変調)されたBスキャンデータが取得される。
【0248】
(S8:OCT画像を形成)
次に、主制御部211は、図13に示す画像形成部220の各部を制御して、上記のようにOCT画像(Bスキャンデータ)を生成させる。ステップS8の詳細は、後述する。
【0249】
(S9:表示)
次に、主制御部211は、表示制御部として、ステップS8において得られたBスキャンデータに基づいて被検眼Eの断層画像を表示部240Aに表示させる。
【0250】
以上で、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
【0251】
図15のステップS8では、例えば図16に示す処理が実行される。
【0252】
(S11:リスケーリング処理)
まず、主制御部211は、リスケーリング処理部221を制御して、図15のステップS7において取得された波長空間におけるBスキャンデータを波数空間におけるBスキャンデータに変換するリスケーリング処理を実行させる。
【0253】
(S12:x方向にフーリエ変換)
次に、主制御部211は、第1フーリエ変換処理部222を制御して、ステップS11において実行されたリスケーリング処理後のBスキャンデータに対して、式(2)に示すようにx方向にフーリエ変換処理を実行させる。
【0254】
(S13:窓関数処理)
次に、主制御部211は、窓関数処理部223を制御して、ステップS12において実行されたフーリエ変換処理後のBスキャンデータに対して、上記のようにu方向に窓関数処理を行って、+u方向の信号成分を抽出させる。
【0255】
(S14:u方向に逆フーリエ変換)
次に、主制御部211は、逆フーリエ変換処理部224を制御して、ステップS13において実行された窓関数処理後のBスキャンデータに対して、式(7)に示すようにu方向に逆フーリエ変換処理を実行させる。
【0256】
(S15:k方向にフーリエ変換)
続いて、主制御部211は、第2フーリエ変換処理部225を制御して、ステップS14において実行された逆フーリエ変換処理後のBスキャンデータに対して、k方向にフーリエ変換処理を実行させる。
【0257】
以上で、図15のステップS8の処理は終了である(エンド)。
【0258】
以上説明したように、第1実施形態によれば、眼底EfにおけるAスキャン位置の間隔に応じて眼底Efにおける測定光の光束の直径を変更し、Aスキャン毎に位相をシフトすることでラテラル方向に周波数変調されたBスキャンデータが取得される。それにより、所定のAスキャン位置の間隔Δxに応じて敢えて光学的分解能を低下させることで、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、BMスキャンのスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。
【0259】
<第2実施形態>
第1実施形態では、主に、あらかじめAスキャン位置の間隔Δxが決められている場合に測定光の光束の直径dを変更する場合について説明したが、実施形態に係る構成は、これに限定されるものではない。第2実施形態では、あらかじめ測定光の光束の直径dが決められている場合にAスキャン位置の間隔Δxを変更する。
【0260】
以下、第2実施形態に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0261】
第2実施形態に係る眼科装置の構成が眼科装置1の構成と異なる点は、眼科装置の構成からズームレンズ81及びズームレンズ駆動部81Aが省略された構成を有する点である。
【0262】
第2実施形態に係る眼科装置では、測定光の光束の直径dがあらかじめ決められている場合、測定光の光束の直径dに応じてAスキャン位置の間隔Δxが変更されるようにBMスキャンを実行する。
【0263】
図17に、第2実施形態に係る眼科装置の動作例のフロー図を示す。図17のステップS28では、第1実施形態と同様に、図16の処理が実行される。記憶部212には、図17、及び図16に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図17、及び図16に示す処理を実行する。
【0264】
(S21:アライメント)
主制御部211は、ステップS1と同様に、所定の固視位置に固視標を提示した状態で、主制御部211は、被検眼Eに対する光学系のアライメント調整を行う。
【0265】
(S22:測定光の光束の直径を決定)
次に、主制御部211は、被検眼Eの眼底Efにおける測定光の光束の直径を決定する。例えば、光学系の構造上、測定光の光束の直径が固定されている場合は、主制御部211は、装置の仕様で指定された直径を用いる。例えば、BMスキャンに用いる測定光の光束の直径が変更可能な場合、主制御部211は、操作部240B等を用いて指定された測定光の光束の直径を特定する。
【0266】
(S23:スキャン条件を設定)
続いて、主制御部211は、ステップS2と同様に、スキャン条件を設定する。更に、主制御部211は、ステップS22において決定された測定光の光束の直径dに応じて、所定のAスキャン間隔変更範囲内で(Δx/d)<(π/8)を満たす最大の間隔Δxを求め、求められた間隔Δxとなるようにスキャン条件を再設定する。
【0267】
例えば、主制御部211又は記憶部212には、複数の測定光の光束の直径のそれぞれにAスキャン位置の間隔が関連付けられた制御情報が記憶されている。主制御部211は、この制御情報を参照することにより、測定光の光束の直径に対応したAスキャン位置の間隔を特定し、特定されたAスキャン位置の間隔となるようにスキャン条件を変更する。
【0268】
いくつかの実施形態では、ステップS22及びステップS23の後に、ステップS21の処理が実行される。
【0269】
(S24:深さ位置を調整)
次に、主制御部211は、ステップS4と同様に、注目部位に相当する画像領域が描出される深さ位置の調整を行う。
【0270】
(S25:フォーカス調整)
次に、主制御部211は、ステップS5と同様に、フォーカス調整制御を実行する。
【0271】
(S26:偏波調整)
次に、主制御部211は、ステップS6と同様に、偏波調整を実行する。
【0272】
(S27:OCTスキャン)
続いて、主制御部211は、ステップS7と同様に、ステップS21~ステップS26において調整された計測環境の下でOCTスキャンを実行させる。
【0273】
このとき、主制御部211は、ステップS23において特定されたAスキャン位置の間隔に基づいて光スキャナ42の偏向面の偏向角度、及び、偏向速度を制御する。すなわち、主制御部211は、光スキャナ42の偏向面のx方向の偏向角度の変更タイミングを制御することにより、ステップS23において特定されたAスキャン位置の間隔となるように眼底Efを測定光でBMスキャンを実行させる。
【0274】
(S28:OCT画像を形成)
次に、主制御部211は、ステップS8と同様に、画像形成部220の各部を制御して、上記のようにOCT画像(Bスキャンデータ)を生成させる。ステップS28では、実施形態と同様に、図16の処理が実行される。
【0275】
(S29:表示)
次に、主制御部211は、ステップS9と同様に、表示制御部として、ステップS28において得られたBスキャンデータに基づいて被検眼Eの断層画像を表示部240Aに表示させる。
【0276】
以上で、第2実施形態に係る眼科装置の動作は終了である(エンド)。
【0277】
以上説明したように、第2実施形態によれば、眼底Efにおける測定光の光束の直径に応じて眼底EfにおけるAスキャン位置の間隔を変更し、Aスキャン毎に位相をシフトすることでラテラル方向に周波数変調されたBスキャンデータが取得される。それにより、所定の測定光の光束の直径dに応じてAスキャン位置の間隔Δxを大きくすることで、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、BMスキャンのスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。
【0278】
<変形例>
実施形態に係る構成は、上記の実施形態で説明した構成に限定されるものではない。以下、実施形態の種々の変形例について、実施形態との相違点を中心に説明する。
【0279】
(第1変形例)
第1実施形態に係る眼科装置1では、ズームレンズ81を用いて測定光の光束の直径を変更する場合について説明したが、実施形態に係る構成は、これに限定されるものではない。第1実施形態の第1変形例では、コリメートレンズユニット40におけるコリメートレンズを可変焦点レンズとすることで、測定光の光束の直径を変更する。
【0280】
以下、第1実施形態の第1変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0281】
図18に、第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す。図18において、図8と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0282】
第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置1aの光学系の構成が第1実施形態に係る眼科装置1の光学系の構成と異なる点は、眼科装置の構成からズームレンズ81及びズームレンズ駆動部81Aが省略された点と、コリメートレンズユニット40に代えてコリメートレンズユニット40aが設けられている点と、演算制御ユニット200に代えて演算制御ユニット200aが設けられている点である。
【0283】
図19に、第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置1aの処理系の構成例のブロック図を示す。図19において、図10又は図18と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0284】
本変形例に係る眼科装置1aの処理系の構成が眼科装置1の処理系の構成と異なる点は、ズームレンズ駆動部81Aに代えてコリメートレンズ駆動部40Aが設けられている点と、制御部210に代えて制御部210aが設けられている点である。
【0285】
制御部210aは、主制御部211aと、記憶部212aとを含む。主制御部211がズームレンズ駆動部81Aに対して制御するのに対して主制御部211aがコリメートレンズ駆動部40Aに対して制御する点を除いて、主制御部211aは、主制御部211と同様の制御処理を実行する。記憶部212がズームレンズ駆動部81Aを制御するための情報を記憶するのに対して記憶部212aがコリメートレンズ駆動部40Aを制御するための情報を記憶する点を除いて、記憶部212aは、記憶部212と同様の情報を記憶する。
【0286】
コリメートレンズユニット40aは、焦点距離を可変に構成され、且つ、その光軸上の位置を変更可能な可変焦点レンズとしての液体レンズ40bを含む。コリメートレンズ駆動部40Aは、可変焦点レンズとしての液体レンズ40bを駆動することで、液体レンズ40bの焦点距離を変更したり、液体レンズ40bの光軸上の位置を変更したりする。
【0287】
図20に、第1実施形態の第1変形例に係るコリメートレンズユニット40aの動作説明図を示す。
【0288】
例えば、所定の基準位置における液体レンズ40bの焦点距離が基準焦点距離のとき、液体レンズ40bからEOM80に向けて出射する測定光LSの光束の直径がdb0であるものとする。主制御部211aは、コリメートレンズ駆動部40Aを制御して、液体レンズ40bをEOM80側に移動させると共に、液体レンズ40bの焦点距離を長くする。それにより、焦点位置の移動を伴うことなく、液体レンズ40bからEOM80に向けて出射する測定光LSの光束の直径がdb1(db0<db1)に変更される。また、主制御部211aは、コリメートレンズ駆動部40Aを制御して、液体レンズ40bを光ファイバ127の出射端側に移動させると共に、液体レンズ40bの焦点距離を短くする。それにより、焦点位置の移動を伴うことなく、液体レンズ40bからEOM80に向けて出射する測定光LSの光束の直径がdb2(db2<db0)に変更される。
【0289】
主制御部211aは、Aスキャン位置の間隔Δxに応じて、所定の光束径変更範囲内で(Δx/d)<(π/8)を満たす最小の光束の直径dとなるようにコリメートレンズ駆動部40Aを制御することで、光束分解能を変更する。これにより、光束分解能の低下を最小限に抑えつつ、複素共役アーチファクトを抑制することが可能になる。
【0290】
例えば、主制御部211a又は記憶部212aには、複数のAスキャン位置の間隔のそれぞれに測定光の光束の直径が関連付けられた制御情報が記憶されている。主制御部211aは、この制御情報を参照することにより、Aスキャン位置の間隔に対応した測定光の光束の直径を特定し、特定された直径となるようにコリメートレンズ駆動部40Aを制御する。
【0291】
なお、本変形例では、可変焦点レンズとして液体レンズ40bを例に説明したが、実施形態に係る構成は、これに限定されるものではない。液体レンズ40bに代えて、1以上の正レンズと1以上の負レンズとを組み合わせた可変焦点レンズ系、アルバレツレンズ、又は液晶レンズ等の公知の可変焦点レンズが設けられていてもよい。
【0292】
(第2変形例)
第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置1aでは、液体レンズ40bを用いて測定光の光束の直径を変更する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。第1実施形態の第2変形例では、焦点距離が互いに異なる複数のレンズが測定光の光路に選択的に配置可能に構成される。
【0293】
以下、第1実施形態の第2変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置1aの構成との相違点を中心に説明する。
【0294】
第1実施形態の第2変形例に係る眼科装置の構成が第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置1aの構成と異なる点は、コリメートレンズユニット40aにおいて、液体レンズ40bに代えて、焦点距離と、測定光の光路上に配置されたときの光ファイバ127の出射端に対するレンズの相対位置とが互いに異なる複数のレンズが測定光の光路に選択的に配置可能な部材が設けられている点である。
【0295】
図21に、第1実施形態の第2変形例に係るコリメートレンズユニット40aの構成例を示す。
【0296】
コリメートレンズユニット40aは、焦点距離と、測定光の光路上に配置されたときの光ファイバ127の出射端に対する相対位置とが互いに異なるレンズ411、412、413を、光ファイバ127の出射端から出射される測定光の光路に選択的に配置可能である。図21では、レンズ411の焦点距離は、図20において測定光の光束の直径がdb1となるときの液体レンズ40bの焦点距離と同一であり、測定光の光束の直径がdb1となるときの液体レンズ40bの測定光の光路上の位置と同じ位置に配置可能である。同様に、レンズ412の焦点距離は、図20において測定光の光束の直径がdb0となるときの液体レンズ40bの焦点距離と同一であり、測定光の光束の直径がdb0となるときの液体レンズ40bの測定光の光路上の位置と同じ位置に配置可能である。また、レンズ413の焦点距離は、図20において測定光の光束の直径がdb2となるときの液体レンズ40bの焦点距離と同一であり、測定光の光束の直径がdb2となるときの液体レンズ40bの測定光の光路上の位置と同じ位置に配置可能である。
【0297】
レンズ411、412、413は、主制御部211aからの制御を受けてコリメートレンズ駆動部40Aにより移動可能な保持部材41bに保持される。このような保持部材41bの例として、測定光の光路に交差する方向にスライド可能な保持部材、測定光の光路に平行な回動軸を中心に回動可能なターレットなどがある。
【0298】
主制御部211aは、Aスキャン位置の間隔Δxに応じて、所定の光束径変更範囲内で(Δx/d)<(π/8)を満たす最小の光束の直径dとなるようにコリメートレンズ駆動部40Aを制御することで、レンズ411、412、413のいずれかを測定光の光路に配置させる。
【0299】
例えば、主制御部211a又は記憶部212aには、複数のAスキャン位置の間隔のそれぞれに測定光の光束の直径が関連付けられた制御情報が記憶されている。主制御部211aは、この制御情報を参照することにより、Aスキャン位置の間隔に対応した測定光の光束の直径を特定し、特定された直径となるようにコリメートレンズ駆動部40Aを制御する。
【0300】
(第3変形例)
第1実施形態又はその変形例では、ズームレンズ、可変焦点レンズ、又は、複数のレンズを用いて測定光の光束の直径を変更する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。第1実施形態の第3変形例では、測定光の光路に絞りを設けると共に当該絞りの絞り径(開口部)のサイズ(絞りサイズ)を変更することで、測定光の光束の直径を変更する。
【0301】
以下、第1実施形態の第3変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0302】
図22に、第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置の光学系の構成の一例を示す。図22において、図8と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0303】
第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置1bの光学系の構成が眼科装置1の光学系の構成と異なる点は、ズームレンズ81に代えて可変絞り82が設けられている点と、演算制御ユニット200に代えて演算制御ユニット200bが設けられている点である。
【0304】
図23に、第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置1bの処理系の構成例のブロック図を示す。図23において、図10又は図22と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0305】
第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置1bの処理系の構成が第1実施形態に係る眼科装置1の処理系の構成と異なる点は、ズームレンズ駆動部81Aに代えて可変絞り駆動部82Aが設けられている点と、制御部210に代えて制御部210bが設けられている点である。
【0306】
制御部210bは、主制御部211bと、記憶部212bとを含む。主制御部211がズームレンズ駆動部81Aに対して制御するのに対して主制御部211bが可変絞り駆動部82Aに対して制御する点を除いて、主制御部211bは、主制御部211と同様の制御処理を実行する。記憶部212がズームレンズ駆動部81Aを制御するための情報を記憶するのに対して記憶部212bが可変絞り駆動部82Aを制御するための情報を記憶する点を除いて、記憶部212bは、記憶部212と同様の情報を記憶する。
【0307】
可変絞り82は、コリメートレンズユニット40とEOM80との間に配置され、平行光束とされた測定光が通過する絞りの絞り径のサイズを変更可能に構成される。可変絞り駆動部82Aは、主制御部211bからの制御を受け、可変絞り82の絞り径のサイズを変更する。このような可変絞り82の例として、公知の絞り径が可変の絞り機構を有する可変絞りがある。
【0308】
また、可変絞り82は、絞り径のサイズが異なる複数の絞りを測定光の光路に選択的に配置可能な部材であってもよい。
【0309】
図24に、第1実施形態の第3変形例に係る可変絞り82の構成例を示す。図24において、図11と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0310】
可変絞り82は、絞り径(開口部のサイズ)が異なる複数の絞り82a~82dを保持する保持部材を含む。このような保持部材の例として、測定光の光路に交差する方向にスライド可能な保持部材、測定光の光路に平行な回動軸を中心に回動可能なターレットなどがある。可変絞り駆動部82Aは、可変絞り82を駆動することで、測定光の光路に複数の絞り82a~82dを選択的に配置することで、測定光が通過する絞りの絞り径のサイズを変更する。
【0311】
例えば、測定光の光路に絞り82aが配置されたとき、測定光の光束の直径がdb1となるものとする。保持部材を測定光の光路に交差する方向に移動させて、測定光の光路に絞り82bが配置されたとき、測定光の光束の直径がdb0となり、同様に測定光の光路に絞り82cが配置されたとき、同様に測定光の光束の直径がdb2となり、同様に測定光の光路に絞り82dが配置されたとき、測定光の光束の直径がdb3(db3<db2)となる。
【0312】
主制御部211bは、Aスキャン位置の間隔Δxに応じて、所定の光束径変更範囲内で(Δx/d)<(π/8)を満たす最小の光束の直径dとなるように可変絞り82Aを制御することで、光束分解能を変更する。これにより、光束分解能の低下を最小限に抑えつつ、複素共役アーチファクトを抑制することが可能になる。
【0313】
例えば、主制御部211b又は記憶部212bには、複数のAスキャン位置の間隔のそれぞれに測定光の光束の直径が関連付けられた制御情報が記憶されている。主制御部211bは、この制御情報を参照することにより、Aスキャン位置の間隔に対応した測定光の光束の直径を特定し、特定された直径となるように可変絞り駆動部82Aを制御する。
【0314】
(第4変形例)
第1実施形態に係るOCT装置では、測定光の光束の直径をラテラル方向(Bスキャン方向)だけ変更するように構成されてもよい。第1実施形態の第4変形例では、第1実施形態に係るズームレンズ81を構成する第1レンズ811、第2レンズ812、及び第3レンズ813は、ラテラル方向の曲率が所定の曲率を有し、ラテラル方向に直交する方向の曲率が実質的にゼロであるレンズである。このようなレンズの例として、円柱レンズ、又は、扁平な絞り(長方形状、楕円形状)がある。
【0315】
図25に、第1実施形態の第4変形例に係るズームレンズ81の構成例を示す。図25において、図11と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図25において、説明の便宜上、y方向をラテラル方向(Bスキャン方向)とする。
【0316】
図25では、第1レンズ811~第3レンズ813のそれぞれのy方向(ラテラル方向、Bスキャン方向)の断面構造と、第1レンズ811~第3レンズ813のそれぞれのx方向(Bスキャン方向に直交する方向)の断面構造とが模式的に表されている。
【0317】
本変形例に係る眼科装置の動作は、第1実施形態に係る眼科装置1の動作と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0318】
本変形例によれば、Bスキャン方向にだけ測定光の光束の直径を変更するようにしたので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる上に、第1実施形態と比較して、光束の直径の変更に伴う影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0319】
(第5変形例)
第1実施形態の第1変形例に係るOCT装置においても、測定光の光束の直径をラテラル方向(Bスキャン方向)だけ変更するように構成されてもよい。第1実施形態の第5変形例では、液体レンズ40bは、ラテラル方向の曲率だけが変更可能であり、ラテラル方向に直交する方向の曲率が実質的にゼロである可変焦点レンズである。本変形例に係る液体レンズ40bは、第1変形例と同様に、光軸方向に移動可能である。
【0320】
図26に、第1実施形態の第5変形例に係るコリメートレンズユニット40aの構成例を示す。図26において、図20と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図26において、説明の便宜上、y方向をラテラル方向(Bスキャン方向)とする。
【0321】
図26では、液体レンズ40bのy方向(ラテラル方向、Bスキャン方向)の断面構造と、液体レンズ40bのx方向(Bスキャン方向に直交する方向)の断面構造とが模式的に表されている。
【0322】
本変形例に係る眼科装置の動作は、第1実施形態の第1変形例に係る眼科装置1aの動作と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0323】
本変形例によれば、Bスキャン方向にだけ測定光の光束の直径を変更するようにしたので、第1実施形態の第1変形例と同様の効果を得ることができる上に、第1実施形態の第1変形例と比較して、光束の直径の変更に伴う影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0324】
(第6変形例)
第1実施形態の第2変形例に係るOCT装置においても、測定光の光束の直径をラテラル方向(Bスキャン方向)だけ変更するように構成されてもよい。第1実施形態の第6変形例では、第1実施形態の第2変形例に係るレンズ411、412、413のそれぞれは、第1実施形態の第4変形例と同様に、ラテラル方向の曲率が所定の曲率を有し、ラテラル方向に直交する方向の曲率が実質的にゼロであるレンズである。このようなレンズの例として、円柱レンズ、又は、扁平な絞り(長方形状、楕円形状)がある。
【0325】
図27に、第1実施形態の第6変形例に係るコリメートレンズユニット40aの構成例を示す。図27において、図21と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図27において、説明の便宜上、y方向をラテラル方向(Bスキャン方向)とする。
【0326】
図27では、レンズ411~413のそれぞれのy方向(ラテラル方向、Bスキャン方向)の断面構造と、レンズ411~413のそれぞれのx方向(Bスキャン方向に直交する方向)の断面構造とが模式的に表されている。
【0327】
本変形例に係る眼科装置の動作は、第1実施形態の第2変形例に係る眼科装置の動作と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0328】
本変形例によれば、Bスキャン方向にだけ測定光の光束の直径を変更するようにしたので、第1実施形態の第2変形例と同様の効果を得ることができる上に、第1実施形態の第2変形例と比較して、光束の直径の変更に伴う影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0329】
(第7変形例)
第1実施形態の第3変形例に係るOCT装置においても、測定光の光束の直径をラテラル方向(Bスキャン方向)だけ変更するように構成されてもよい。第1実施形態の第7変形例では、絞り82a~82dのそれぞれは、ラテラル方向(本変形例では、y方向)の絞りサイズが所定のサイズを有し、ラテラル方向に直交する方向(本変形例では、x方向)の絞りサイズが異なる。
【0330】
図28に、第1実施形態の第7変形例に係る可変絞り82の構成例を模式的に示す。図28において、図24と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図28において、説明の便宜上、y方向をラテラル方向(Bスキャン方向)とする。
【0331】
図28では、絞り82a~82dのそれぞれのx方向(Bスキャン方向に直交する方向)及びy方向(ラテラル方向)の絞りサイズが模式的に表されている。
【0332】
本変形例に係る眼科装置の動作は、第1実施形態の第3変形例に係る眼科装置1bの動作と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0333】
本変形例によれば、Bスキャン方向にだけ測定光の光束の直径を変更するようにしたので、第1実施形態の第3変形例と同様の効果を得ることができる上に、第1実施形態の第3変形例と比較して、光束の直径の変更に伴う影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0334】
(第8変形例)
第1実施形態又はその変形例では、EOM80がコリメートレンズユニット40とリトロリフレクタ41との間の測定光LSの光路に配置されていたが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
【0335】
以下、第1実施形態の第8変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0336】
図29に、第1実施形態の第8変形例に係る眼科装置1cの光学系の構成例を示す。図29において、図8と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0337】
第1実施形態の第8変形例に係る眼科装置1cの光学系の構成が図8に示す眼科装置1の光学系の構成と異なる点は、EOM80の配置である。図8では、EOM80がコリメートレンズユニット40とリトロリフレクタ41との間の光路に配置される。これに対して、図29では、EOM80がコリメートレンズユニット40とリトロリフレクタ41との間の光路とリトロリフレクタ41と光スキャナ42との間の光路とに配置される。EOM80は、コリメートレンズユニット40と光スキャナ42との間の光路に配置されてもよい。また、光スキャナ42とレンズ43と間の光路に配置されてもよい。
【0338】
本変形例では、第1実施形態と同様に、主制御部211は、図12に示す制御タイミングに従ってEOM駆動部80Aに対して制御信号を出力することで、Aスキャン毎に参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更することで位相変調を行う。この場合、主制御部211は、光スキャナ42の偏向制御に対応したAスキャンの開始タイミングに同期して、Aスキャン時間Tの間隔で位相シフト量Psが順次に付与されるように測定光LSの光路長を変更する。しかしながら、本変形例では、Aスキャン中に測定光LSがEOM80を4回通過する。従って、ゴーストイメージを最も効果的に分離(除去)するようにAスキャン毎にπ/2だけ位相をシフトさせるために、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量Psがπ/8だけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力する。
【0339】
なお、第1実施形態と同様に、本変形例においても、Aスキャン毎の位相シフト量はπ/2でなくてもよい。この場合、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量PsがVだけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力することで、Aスキャン毎に4×Vだけ位相をシフトすることができる。
【0340】
上記を除いて、本変形例に係る眼科装置1cの構成及び動作は、第1実施形態に係る眼科装置1の構成及び動作と同様である。
【0341】
本変形例によれば、屈折率の変更量が小さいEOM80を用いて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0342】
なお、本変形例に係る構成を第2実施形態に適用することが可能である。
【0343】
(第9変形例)
上記の実施形態又はその変形例では、EOM80を用いて位相変調を行う場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
【0344】
以下、第1実施形態の第9変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0345】
図30に、第1実施形態の第9変形例に係る眼科装置1dの光学系の構成例を示す。図30において、図8と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0346】
第1実施形態の第9変形例に係る眼科装置1dの光学系の構成が図8に示す眼科装置1の光学系の構成と異なる点は、EOM80に代えて、リトロリフレクタ41に取り付けられたピエゾ素子(piezoelectric element、圧電素子)90が設けられている点と、演算制御ユニット200に代えて演算制御ユニット200dが設けられている点である。ピエゾ素子90は、制御部210(主制御部211)からの制御信号を受けて、リトロリフレクタ41を図30に示す矢印方向に移動する。なお、ピエゾ素子90の機能は、リトロリフレクタ駆動部41Aにより実現されてもよい。
【0347】
図31に、第1実施形態の第9変形例に係る眼科装置1dの処理系の構成例のブロック図を示す。図31において、図10と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0348】
第1実施形態の第9変形例に係る眼科装置1dの処理系の構成が図10に示す眼科装置1の処理系の構成と異なる点は、EOM駆動部80Aに代えてピエゾ素子駆動部90Aが設けられている点である。演算制御ユニット200dにおける主制御部211dは、記憶部212dに記憶されたプログラムを読み出し、図12に示す制御タイミングに従ってピエゾ素子駆動部90Aに対して制御信号を出力することで、Aスキャン毎に参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更することで位相変調を行う。この場合、主制御部211dは、光スキャナ42の偏向制御に対応したAスキャンの開始タイミングに同期して、Aスキャン時間Tの間隔で位相シフト量Psが順次に付与されるように測定光LSの光路長を変更する。本変形例では、リトロリフレクタ41の移動量の2倍だけ光路長が変化し、Aスキャン中に測定光LSがリトロリフレクタ41を2回経由する。従って、ゴーストイメージを最も効果的に分離(除去)するようにAスキャン毎にπ/2だけ位相をシフトさせるために、主制御部211dは、Aスキャン毎に位相シフト量Psがπ/8だけシフトするように制御信号をピエゾ素子駆動部90Aに対して順次に出力する。
【0349】
なお、第1実施形態と同様に、本変形例においても、Aスキャン毎の位相シフト量はπ/2でなくてもよい。この場合、主制御部211dは、Aスキャン毎に位相シフト量PsがVだけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力することで、Aスキャン毎に2×Vだけ位相をシフトすることができる。
【0350】
上記を除いて、本変形例に係る眼科装置1dの構成及び動作は、第1実施形態に係る眼科装置1の構成及び動作と同様である。
【0351】
本変形例によれば、EOM80を設けることなく、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0352】
なお、本変形例に係る構成を第2実施形態に適用することが可能である。
【0353】
(第10変形例)
上記の実施形態又はその変形例では、測定光LSの光路長を変更することにより位相変調を行う場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
【0354】
以下、第1実施形態の第10変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0355】
図32に、第1実施形態の第10変形例に係る眼科装置のOCTユニット100eの光学系の構成例を示す。図32において、図9と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0356】
第1実施形態の第10変形例に係るOCTユニット100eの光学系の構成が図9に示すOCTユニット100の光学系の構成と異なる点は、分散補償部材113とコーナーキューブ114との間のコーナーキューブ114に入射する参照光LRの光路にEOM80が配置されている点である。
【0357】
本変形例では、第1実施形態と同様に、主制御部211は、図12に示す制御タイミングに従ってEOM駆動部80Aに対して制御信号を出力することで、Aスキャン毎に参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更することで位相変調を行う。この場合、主制御部211は、光スキャナ42の偏向制御に対応したAスキャンの開始タイミングに同期して、Aスキャン時間Tの間隔で位相シフト量Psが順次に付与されるように参照光LRの光路長を変更する。本変形例では、Aスキャン中に参照光LRがEOM80を1回通過する。従って、ゴーストイメージを最も効果的に分離(除去)するようにAスキャン毎にπ/2だけ位相をシフトさせるために、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量Psがπ/2だけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力する。
【0358】
なお、第1実施形態と同様に、本変形例においても、Aスキャン毎の位相シフト量はπ/2でなくてもよい。この場合、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量PsがVだけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力することで、Aスキャン毎にVだけ位相をシフトすることができる。
【0359】
上記を除いて、本変形例に係る眼科装置の構成及び動作は、第1実施形態に係る眼科装置1の構成及び動作と同様である。
【0360】
本変形例によれば、測定光LSの光路長を変更することなく、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0361】
なお、本変形例に係る構成を第2実施形態に適用することが可能である。
【0362】
(第11変形例)
第10変形例では、EOM80がコーナーキューブ114に入射する参照光LRの光路に配置されていたが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
【0363】
以下、第1実施形態の第11変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態の第10変形例に係る眼科装置の構成との相違点を中心に説明する。
【0364】
図33に、第1実施形態の第11変形例に係る眼科装置のOCTユニット100fの光学系の構成例を示す。図33において、図32と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0365】
第1実施形態の第11変形例に係るOCTユニット100fの光学系の構成が第1実施形態の第10変形例に係るOCTユニット100eの光学系の構成と異なる点は、EOM80の配置である。図32では、EOM80がコーナーキューブ114に入射する参照光LRの光路に配置される。これに対して、図33では、EOM80がコーナーキューブ114に入射する参照光LRの光路とコーナーキューブ114から出射する参照光LRの光路とに配置される。
【0366】
本変形例では、第10変形例と同様に、主制御部211は、図12に示す制御タイミングに従ってEOM駆動部80Aに対して制御信号を出力することで、Aスキャン毎に参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更することで位相変調を行う。この場合、主制御部211は、光スキャナ42の偏向制御に対応したAスキャンの開始タイミングに同期して、Aスキャン時間Tの間隔で位相シフト量Psが順次に付与されるように参照光LRの光路長を変更する。しかしながら、本変形例では、Aスキャン中に参照光LRがEOM80を2回通過する。従って、ゴーストイメージを最も効果的に分離(除去)するようにAスキャン毎にπ/2だけ位相をシフトさせるために、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量Psがπ/4だけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力する。
【0367】
なお、第1実施形態と同様に、本変形例においても、Aスキャン毎の位相シフト量はπ/2でなくてもよい。この場合、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量PsがVだけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力することで、Aスキャン毎に2×Vだけ位相をシフトすることができる。
【0368】
上記を除いて、本変形例に係る眼科装置の構成及び動作は、第10変形例に係る眼科装置の構成及び動作と同様である。
【0369】
本変形例によれば、屈折率の変更量が小さいEOM80を用いて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0370】
なお、本変形例に係る構成を第2実施形態に適用することが可能である。
【0371】
(第12変形例)
第10変形例及び第11変形例では、EOM80を用いて位相変調を行う場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
【0372】
以下、第1実施形態の第12変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0373】
図34に、第1実施形態の第12変形例に係る眼科装置のOCTユニット100gの光学系の構成例を示す。図34において、図9と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0374】
第1実施形態の第12変形例に係るOCTユニット100gの光学系の構成が図9に示すOCTユニット100の光学系の構成と異なる点は、EOM80に代えて、コーナーキューブ114に取り付けられたピエゾ素子90が設けられている点である。ピエゾ素子90は、制御部210(主制御部211)からの制御信号を受けて、コーナーキューブ114を図34に示す矢印方向に移動する。なお、ピエゾ素子90の機能は、参照駆動部114Aにより実現されてもよい。
【0375】
第12変形例に係る眼科装置の処理系は、図31と同様に、ピエゾ素子駆動部90Aを含む。主制御部211は、図12に示す制御タイミングに従ってピエゾ素子駆動部90Aに対して制御信号を出力することで、Aスキャン毎に参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更することで位相変調を行う。この場合、主制御部211は、光スキャナ42の偏向制御に対応したAスキャンの開始タイミングに同期して、Aスキャン時間Tの間隔で位相シフト量Psが順次に付与されるように参照光LRの光路長を変更する。第12変形例では、Aスキャン中に参照光LRがコーナーキューブ114を1回経由する間にコーナーキューブの移動量の2倍だけ位相がシフトする。従って、ゴーストイメージを最も効果的に分離(除去)するようにAスキャン毎にπ/2だけ位相をシフトさせるために、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量Psがπ/4だけシフトするように制御信号をピエゾ素子駆動部90Aに対して順次に出力する。
【0376】
なお、第1実施形態と同様に、第12変形例においても、Aスキャン毎の位相シフト量はπ/2でなくてもよい。この場合、主制御部211は、Aスキャン毎に位相シフト量PsがVだけシフトするように制御信号をEOM駆動部80Aに対して順次に出力することで、Aスキャン毎にVだけ位相をシフトすることができる。
【0377】
上記を除いて、第12変形例に係る眼科装置の構成及び動作は、第1実施形態に係る眼科装置1の構成及び動作と同様である。
【0378】
本変形例によれば、EOM80を設けることなく、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0379】
なお、本変形例に係る構成を第2実施形態に適用することが可能である。
【0380】
(第13変形例)
上記の実施形態又はその変形例では、EOM80又はピエゾ素子90を用いて位相変調を行う場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
【0381】
以下、第1実施形態の第13変形例に係るOCT装置としての眼科装置の構成について、第1実施形態に係る眼科装置1の構成との相違点を中心に説明する。
【0382】
図35に、第1実施形態の第13変形例に係る眼科装置1hの光学系の構成例を示す。図35において、図8と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0383】
第1実施形態の第13変形例に係る眼科装置1hの光学系の構成が図8に示す眼科装置1の光学系の構成と異なる点は、光スキャナ42に代えて光スキャナ42hが設けられている点である。
【0384】
まず、第1実施形態(又はその第1変形例~第12変形例)、又は、第2実施形態に係る光スキャナ42について説明する。
【0385】
図36に、第1実施形態又は第2実施形態に係る光スキャナ42の構成例を模式的に示す。
【0386】
光スキャナ42は、第1光スキャナとしての第1ガルバノミラー421と、第2光スキャナとしての第2ガルバノミラー422とを含む。第1ガルバノミラー421は、OCTユニット100の光軸Oに直交するy方向に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラー422は、OCTユニット100の光軸Oに直交するx方向に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラー421により偏向された測定光LSを偏向する。
【0387】
第1ガルバノミラー421のスキャン回転中心は、平行光束とされた測定光LSが進行する光軸O上に配置される。同様に、第2ガルバノミラー422のスキャン回転中心SCもまた、光軸O上に配置される。これにより、第1ガルバノミラー421及び第2ガルバノミラー422のそれぞれの偏向面の回転角度に応じた光路長の差を発生させることなく、撮影部位におけるxy平面上を測定光LSでスキャンすることができる。
【0388】
図37に、第1実施形態の第13変形例に係る光スキャナ42hの構成例を模式的に示す。図37において、図36と同様の部分には同一符号を付して、適宜説明を省略する。
【0389】
光スキャナ42hは、第1光スキャナとしての第1ガルバノミラー421と、第2光スキャナとしての第2ガルバノミラー423とを含む。第1ガルバノミラー421は、OCTユニット100の光軸Oに直交するy方向に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラー423は、OCTユニット100の光軸Oに直交するx方向に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラー421により偏向された測定光LSを偏向する。
【0390】
しかしながら、第1ガルバノミラー421のスキャン回転中心は、平行光束とされた測定光LSが進行する光軸O上に配置されるのに対して、第2ガルバノミラー423のスキャン回転中心SCは、光軸Oから偏心した位置に配置される。このような第2ガルバノミラー423の配置については、例えば、非特許文献2に開示されている。光軸Oに対するスキャン回転中心SCの偏位量をs、偏向角度をΔβ、Bスキャン中のAスキャンの数をN、測定光LSの中心周波数をλとすると、x方向に隣り合う2つAスキャンの間の位相変化量Φは、式(11)のように表される(非特許文献2参照)。
【0391】
【数11】
【0392】
上記を除いて、第13変形例に係る眼科装置の構成及び動作は、第1実施形態に係る眼科装置1の構成及び動作と同様である。
【0393】
本変形例によれば、第2ガルバノミラー423の偏向面の回転角度に応じて測定光LSの光路長を変更することができるので、EOM80又はピエゾ素子90を用いることなく、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0394】
なお、本変形例において、第1ガルバノミラー421のスキャン回転中心を光軸Oから偏心した位置に配置し、第2ガルバノミラー423のスキャン回転中心を光軸O上に配置するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、光軸Oに対する第2ガルバノミラー423のスキャン回転中心の相対位置を変更可能に構成される。
【0395】
いくつかの実施形態では、上記のOCT装置の制御方法、又は上記の実施形態又はその変形例で説明した情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な非一時的な(non-transitory)任意の記録媒体に記憶させることができる。記録媒体は、磁気、光、光磁気、半導体などを利用した電子媒体であってよい。典型的には、記録媒体は、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブなどである。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
【0396】
[作用]
実施形態に係るOCT装置、その制御方法、及びプログラムについて説明する。
【0397】
実施形態の第1態様は、光スキャナ(520、42、42h)と、干渉光学系(510、OCTユニットから対物レンズまでの測定光LSが通過する光学系)と、分解能変更部(ズームレンズ81、液体レンズ40b、保持部材41b、可変絞り82)と、制御部(540、210、210a、210b)と、を含むOCT装置(500、OCTユニット及び光スキャナ)である。干渉光学系は、光源(光源ユニット101)からの光(L0)を参照光(LR)と測定光(LS)とに分割し、光スキャナにより偏向された測定光を被測定物(700、被検眼E、眼底Ef)に照射し、被測定物からの戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出する。分解能変更部は、被測定物においてBスキャン方向(ラテラル方向)に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、測定光のBスキャン方向の光学的分解能を変更する。制御部は、光スキャナ及び分解能変更部を制御すると共に、Bスキャン中に参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように干渉光学系を制御する。
【0398】
このような態様によれば、Aスキャン位置の間隔に応じて敢えて光学的分解能を低下させることで、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、位相シフト法で得られたスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。
【0399】
実施形態の第2態様では、第1態様において、Aスキャン位置の間隔をΔxとし、被測定物における測定光の光束径(測定光の光束(断面)の直径)をdとしたとき、制御部は、(Δx/d<π/8)を満たすように分解能変更部を制御する。
【0400】
このような態様によれば、敢えて光学的分解能を低下させたとしても、複素共役アーチファクトを除去し、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現することが可能になる。
【0401】
実施形態の第3態様では、第1態様又は第2態様において、分解能変更部は、測定光の光束径(光束の直径、光束断面の直径、ビーム径)を変更する。
【0402】
このような態様によれば、Aスキャン位置の間隔に応じて、敢えて被測定物への入射位置における測定光の光束の直径を変更することで光学的分解能を低下させることができるため、簡素な構成及び制御で、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制することができるようになる。
【0403】
実施形態の第4態様では、第3態様において、分解能変更部は、測定光の光路に配置され、焦点距離を変更可能なズームレンズ(81)を含む。制御部は、ズームレンズを制御する。
【0404】
このような態様によれば、ズームレンズを用いて測定光の光束の直径を変更するようにしたので、簡素な構成及び制御で、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制することができるようになる。
【0405】
実施形態の第5態様では、第3態様において、分解能変更部は、測定光の光路に配置され、当該光路に沿って移動可能な可変焦点レンズ(液体レンズ40b)を含む。制御部は、可変焦点レンズを制御する。
【0406】
このような態様によれば、可変焦点レンズを用いて測定光の光束の直径を変更するようにしたので、簡素な構成及び制御で、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制することができるようになる。
【0407】
実施形態の第6態様では、第3態様において、分解能変更部は、互いに焦点距離が異なる複数のレンズ(レンズ411、412、413)を含む。制御部は、複数のレンズの1つを測定光の光路に選択的に配置するように分解能変更部を制御する。
【0408】
このような態様によれば、互いに焦点距離が異なる複数のレンズを測定光の光路に選択的に配置することで測定光の光束の直径を変更するようにしたので、簡素な構成及び制御で、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制することができるようになる。
【0409】
実施形態の第7態様では、第6態様において、複数のレンズは、Bスキャン方向に直交する方向の曲率が実質的にゼロである円柱レンズ(レンズ411~413)を含む。
【0410】
このような態様によれば、Bスキャン方向にだけ測定光の光束の直径を変更するようにしたので、光束の直径の変更に伴う影響を抑えることが可能になる。
【0411】
実施形態の第8態様では、第3態様において、分解能変更部は、測定光の絞りサイズを変更可能な可変絞り(82)を含む。制御部は、可変絞りを制御する。
【0412】
このような態様によれば、絞りサイズが異なる可変絞りを測定光の光路に配置することで測定光の光束の直径を変更するようにしたので、簡素な構成及び制御で、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制することができるようになる。
【0413】
実施形態の第9態様では、第3態様において、分解能変更部は、測定光の光路に配置され、当該光路に沿って移動可能な合焦レンズ(OCT合焦レンズ45)を含む。制御部は、合焦レンズを制御する。
【0414】
このような態様によれば、測定光の光路に配置された合焦レンズを用いてデフォーカスを行うことで測定光の光束の直径を変更するようにしたので、簡素な構成及び制御で、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制することができるようになる。
【0415】
実施形態の第10態様は、光スキャナ(520、42、42h)と、干渉光学系(510、OCTユニットから対物レンズまでの測定光LSが通過する光学系)と、制御部(540、210、210a、210b)と、を含むOCT装置(500、OCTユニット及び光スキャナ)である。干渉光学系は、光源(光源ユニット101)からの光(L0)を参照光(LR)と測定光(LS)とに分割し、光スキャナにより偏向された測定光を被測定物(700、被検眼E、眼底Ef)に照射し、被測定物からの戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出する。制御部は、測定光のBスキャン方向の光学的分解能(光束の直径)に基づいて被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔を変更するように光スキャナを制御すると共に、Bスキャン中に参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように干渉光学系を制御する。
【0416】
このような態様によれば、測定光のBスキャン方向の光学的分解能に応じてAスキャン位置の間隔を変更するようにしたので、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、位相シフト法で得られたスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。
【0417】
実施形態の第11態様では、第10態様において、Aスキャン位置の間隔をΔxとし、被測定物における測定光の光束径をdとしたとき、制御部は、(Δx/d<π/8)を満たすように光スキャナを制御する。
【0418】
このような態様によれば、光スキャナを制御することでAスキャン位置の間隔を変更することで、複素共役アーチファクトを除去し、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現することが可能になる。
【0419】
実施形態の第12態様では、第1態様、第2態様、第10態様、及び第11態様のいずれかに係るOCT装置は、干渉光の検出結果に基づいて、被測定物の画像を形成する画像形成部(220)を含む。
【0420】
このような態様によれば、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトが抑制され、高精細なフルレンジ画像を形成することが可能になる。
【0421】
実施形態の第13態様は、光スキャナ(520、42、42h)と、干渉光学系(510、OCTユニットから対物レンズまでの測定光LSが通過する光学系)と、を含むOCT装置(500、OCTユニット及び光スキャナ)の制御方法である。干渉光学系は、光源(光源ユニット101)からの光(L0)を参照光(LR)と測定光(LS)とに分割し、光スキャナにより偏向された測定光を被測定物(700、被検眼E、眼底Ef)に照射し、被測定物からの戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出する。OCT装置の制御方法は、分解能変更ステップと、制御ステップと、を含む。分解能変更ステップは、被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔に基づいて、測定光のBスキャン方向の光学的分解能を変更する。制御ステップは、光スキャナを制御すると共に、Bスキャン中に参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように干渉光学系を制御する。
【0422】
このような態様によれば、Aスキャン位置の間隔に応じて敢えて光学的分解能を低下させることで、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、位相シフト法で得られたスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。
【0423】
実施形態の第14態様では、第13態様において、Aスキャン位置の間隔をΔxとし、被測定物における測定光の光束径をdとしたとき、分解能変更ステップは、(Δx/d<π/8)を満たすように光学的分解能を変更する。
【0424】
このような態様によれば、敢えて光学的分解能を低下させたとしても、複素共役アーチファクトを除去し、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現することが可能になる。
【0425】
実施形態の第15態様は、光スキャナ(520、42、42h)と、干渉光学系(510、OCTユニットから対物レンズまでの測定光LSが通過する光学系)と、を含むOCT装置(500、OCTユニット及び光スキャナ)の制御方法である。干渉光学系は、光源(光源ユニット101)からの光(L0)を参照光(LR)と測定光(LS)とに分割し、光スキャナにより偏向された測定光を被測定物(700、被検眼E、眼底Ef)に照射し、被測定物からの戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出する。OCT装置の制御方法は、第1制御ステップと、第2制御ステップと、を含む。第1制御ステップは、測定光のBスキャン方向の光学的分解能(光束の直径)に基づいて被測定物においてBスキャン方向に隣接するAスキャン位置の間隔を変更するように光スキャナを制御する。第2制御ステップは、Bスキャン中に参照光の光路長と測定光の光路長との差をAスキャン毎に変更するように干渉光学系を制御する。
【0426】
このような態様によれば、測定光のBスキャン方向の光学的分解能に応じてAスキャン位置の間隔を変更するようにしたので、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、位相シフト法で得られたスキャンデータのデータサイズの増大を抑えることができる。従って、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現しつつ、処理時間の短縮及びリソースの節約等の副次的効果が得られるようになる。
【0427】
実施形態の第16態様では、第15態様において、Aスキャン位置の間隔をΔxとし、被測定物における測定光の光束径をdとしたとき、第1制御ステップは、(Δx/d<π/8)を満たすように光スキャナを制御する。
【0428】
このような態様によれば、光スキャナを制御することでAスキャン位置の間隔を変更することで、複素共役アーチファクトを除去し、フルレンジOCTによる深さ方向に長いレンジでの観察を実現することが可能になる。
【0429】
実施形態の第17態様は、コンピュータに、第13態様~第16態様のいずれかの光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【0430】
このような態様によれば、Aスキャン位置の間隔に応じて敢えて光学的分解能を低下させることで、ミラーイメージ等の複素共役アーチファクトを抑制しつつ、位相シフト法で得られたスキャンデータのデータサイズの増大を抑えるプログラムを提供することができる。
【0431】
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。適用される構成は、例えば目的に応じて選択される。また、適用される構成に応じ、当業者にとって自明の作用効果や、本明細書において説明された作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0432】
1、1a、1b、1c、1d、1h 眼科装置
40、40a コリメートレンズユニット
40b 液体レンズ
42、42h、520 光スキャナ
80 EOM
81 ズームレンズ
82 可変絞り
90 ピエゾ素子
100、100e、100f、100g OCTユニット
200、200a、200b、200d 演算制御ユニット
210、210a、210b、540 制御部
211、211a、211b、211d 主制御部
212、212a、212b、212d 記憶部
220 画像形成部
221 リスケーリング処理部
222 第1フーリエ変換処理部
223 窓関数処理部
224 逆フーリエ変換処理部
225 第2フーリエ変換処理部
230 データ処理部
240A 表示部
240B 操作部
500 OCT装置
510 干渉光学系
530 スキャンデータ生成部
600 情報処理部
700 被測定物
E 被検眼
Ef 眼底
LC 干渉光
LR 参照光
LS 測定光
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