(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099212
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】電子棚札用取付具及び電子棚札取付システム
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
A47F5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002986
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000145068
【氏名又は名称】株式会社寺岡精工
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓之
【テーマコード(参考)】
3B118
【Fターム(参考)】
3B118FA15
(57)【要約】
【課題】
電子棚札のプライスレールへの取付を確実なものとし、使い勝手の良い電子棚札用取付具及び電子棚札取付システムを提供することを課題とする。
【解決手段】
商品棚に設けられたプライスレールを把持する把持部と、前記把持部よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部と、前記プライスレールに取り付けられた状態での前記把持部の下方への移動を規制する規制部を備えることを特徴とする電子棚札用取付具によって、上記課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品棚に設けられたプライスレールを把持する把持部と、
前記把持部よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部と、
前記プライスレールに取り付けられた状態での前記把持部の下方への移動を規制する規制部を備える
ことを特徴とする電子棚札用取付具。
【請求項2】
前記把持部は、前記プライスレールを下から挟み込むように形成され、
前記規制部は、前記把持部の背面から正面視後方へ突出する突出部であり、該突出部が、前記商品棚の正面視前方に配置される上下の延設部の中、少なくとも一つに当接することによって、前記把持部の下方への移動が規制される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子棚札用取付具。
【請求項3】
前記把持部は、前記プライスレールを下から挟み込むように形成され、前記規制部は、前記把持部の内面から突出する突出部であり、該突出部が、前記プライスレールの前面又は背面に設けられた凸部と係合することによって、前記把持部の下方への移動が規制される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子棚札用取付具。
【請求項4】
前記把持部は、前記プライスレールに対して上から係合する第1係合部および下から係合する第2係合部を有し、前記第1係合部が前記規制部としても機能する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子棚札用取付具。
【請求項5】
シート状媒体を保持可能な媒体保持部を、さらに備え、
前記媒体保持部は、前記把持部よりも正面視前方であり、かつ前記電子棚札装着部よりも正面視後方に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子棚札用取付具。
【請求項6】
商品棚に設けられたプライスレールを把持する把持部と、前記把持部よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部と、前記把持部の内面から突出する突出部を備えた電子棚札用取付具と、
前面又は背面から突出する凸部を備えたプライスレール、
との組み合わせにより構成される電子棚札取付システムであって、
前記突出部が前記凸部と係合することによって、前記把持部の下方への移動が規制される電子棚札取付システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子棚札用取付具及び電子棚札取付システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、量販店等において、商品を陳列するための商品棚の前端部には、商品価格の表示等を行うための値札(棚札)やPOP広告を差し込むためのプライスレールと呼ばれる部材が取り付けられている。
図10は、この様子を説明する図である。
図10(a)及び
図10(b)は、プライスレールPRが取り付けられていない商品棚Sの側面図及び斜視図であり、
図10(c)及び
図10(d)は、プライスレールPRが取り付けられた後の商品棚Sの側面図及び斜視図である。
図10(c)及びその一部拡大図に示されるように、商品がこぼれ落ちるのを防止するために、商品棚Sの前方側上面に設けられたこぼれ止め壁Wに係合されることによって、プライスレールPRが配設されている。そして、
図10(d)に示されるように、値札(棚札)やPOP広告は、プライスレールPRの上方から差し込まれる形で固定される。
【0003】
ところで、近年、量販店等の店舗では、このような旧態の値札(棚札)を用いた価格表示の手法に代えて、商品入替等に適した電子棚札(特許文献1)を用いる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電子棚札は、商品棚に固定されて設けられているので、既設の商品棚に取り付けるのは困難である。また、普通の棚札の取付のように、プライスレールPRの上方から差し込もうとしても、電子棚札には相応の厚みがあるため、それもできない。そこで、適宜の取付部材(アタッチメント)を介して、電子棚札をプライスレールPRに取り付けることが考えられる。
図10(c)の一部拡大図に示されるように、プライスレールPRの前方部分は、上方から下端部が垂下される格好となっているため、自由になっているプライスレールPRの下端を下方から銜え込むように、プライスレールPRを把持する把持部を有する取付部材で電子棚札を取付けるようにするのである。
【0006】
しかし、不用意に電子棚札に触れると、下から把持しているだけでは、取付部がずれて左右に傾いてしまったり、酷い場合には脱落してしまう虞がある。また、商品棚には、宣伝用のPOP広告を取付けることも少なくない。従前のように、プライスレールPRにPOP広告が挟まれている状態で、プライスレールPRを把持する把持部を有する取付部材で電子棚札を取付けると、POP広告が良く見えなくなってしまう。POP広告が良く見えるように、電子棚札が取り付けられている状態でPOP広告を上から一緒に差し込もうとすると、当然ながら、脱落の危険性が高まることになる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、電子棚札のプライスレールへの取付を確実なものとし、使い勝手の良い電子棚札用取付具及び電子棚札取付システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子棚札用取付具は、少なくとも以下の構成を具備するものである。
商品棚に設けられたプライスレールを把持する把持部と、前記把持部よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部と、前記プライスレールに取り付けられた状態での前記把持部の下方への移動を規制する規制部を備えることを特徴とする電子棚札用取付具である。
【0009】
また、本発明の電子棚札取付システムは、少なくとも以下の構成を具備するものである。
商品棚に設けられたプライスレールを把持する把持部と、前記把持部よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部と、前記把持部の内面から突出する突出部を備えた電子棚札用取付具と、前面又は背面から突出する凸部を備えたプライスレール、との組み合わせにより構成される電子棚札取付システムであって、前記突出部が前記凸部と係合することによって、前記把持部の下方への移動が規制される電子棚札取付システムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具を示す図であり、(a)は電子棚札用取付具の側面図、(b)は電子棚札用取付具の斜視図、(c)はプライスレールを把持している状態での電子棚札用取付具の側面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具がプライスレールを介して商品棚に取り付けられている様子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具がプライスレールを介して商品棚に取り付けられており、さらに、電子棚札が取り付けられている様子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係る電子棚札用取付具を示す図であり、(a)は電子棚札用取付具の側面図、(b)は電子棚札用取付具の斜視図、(c)はプライスレールを把持している状態での電子棚札用取付具の側面図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係る電子棚札用取付具が商品棚に取り付けられている様子を示す側断面図である。
【
図6】本発明の第三の実施形態に係る電子棚札用取付具を示す図であり、(a)は電子棚札用取付具の側面図、(b)は電子棚札用取付具の斜視図、(c)はプライスレールを把持している状態での電子棚札用取付具の側面図である。
【
図7】本発明の第三の実施形態に係る電子棚札用取付具にPOP広告が差し込まれた状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第一及び第二の実施形態に係る電子棚札用取付具が、凸部有りのプライスレールと係り合う場合の様子を示した側面図である。
【
図9】本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具及び第二の実施形態に係る電子棚札用取付具の変形例を示す側面図である。
【
図10】商品を陳列するための商品棚の前端部に、商品価格の表示等を行うための棚札を差し込むためのプライスレールが取り付けられている様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る電子棚札用取付具は、通常のプライスレールに取り付けることで安定して固定できるものであるが、前面又は背面に凸部を有するプライスレールに取付けることによって、より安定した固定を実現できるものである。その意味で、実施形態の電子棚札用取付具と凸部を有するプライスレールは、電子棚札取付システムを構成するものといえる。
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明するが、以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。また、説明のため、部材を意図的に大きくまたは小さく図示している場合があり、正確な縮尺を示す図面ではない。また、本発明の実施形態は図示の内容を含むが、これのみに限定されるものではない。尚、以後の各図の説明で、既に説明した部位と共通する部分は同一符号を付して重複説明を一部省略する。
【0013】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具を示す図であり、(a)は電子棚札用取付具の側面図、(b)は電子棚札用取付具の斜視図、(c)はプライスレールを把持している状態での電子棚札用取付具の側面図である。
図2は、本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具がプライスレールを介して商品棚に取り付けられている様子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
図3は、本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具がプライスレールを介して商品棚に取り付けられており、さらに、電子棚札が取り付けられている様子を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【0014】
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1は、下方に把持部11を備え、当該把持部11を基準にして、正面視手前に電子棚札装着部12が形成され、正面視奥側に下当接部13が形成されている。また、把持部11の内面には、前方に突出する突出部14と、突出部14を上下に挟む格好で、後方に突出する2つの凸部(引き出し線は示されていない)が形成されている。
【0015】
図2に示されるように、プライスレールPRは、商品棚Sの前方側上面に設けられたこぼれ止め壁Wに係合されることによって、その下端部が上方から垂下される格好で、商品棚Sに取り付けられている。これに対して、
図1(c)に示されるように、電子棚札用取付具1は、プライスレールPRの自由端となる下端を下方から把持部11が銜え込むことによって、プライスレールPRに固定される。
なお、ここでの例では、こぼれ止め壁Wに係合されることで、プライスレールPRが固定されているが、プライスレールPRの一部が商品棚S自体に設けられた溝に嵌入される等して固定がされる構造であっても良い。この場合、こぼれ止め壁は必須のものとはならなくなる。
【0016】
電子棚札装着部12は、上方に設けられた二つの係合部と下方に設けられた一つの係合部とから構成されており、これら係合部が、
図3(a)の一部拡大図に示されるように、電子棚札EPの上下に設けられた大小の係合爪や電子棚札EPの凹凸形状に係合することによって、電子棚札装着部12は、電子棚札EPを保持する。
【0017】
本発明の第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1において、把持部11の内面には、前方に突出する突出部14と、突出部14を上下に挟む格好で、後方に突出する2つの凸部(引き出し線は示されていない)が形成されている。また、把持部11にはその内面が近接する方向に向かうように適度な弾性力が与えられている。このため、
図1(c)に示されるように、把持部11は、十分な把持力を持ってプライスレールPRに固定される。この状態のままでも、常態であれば、電子棚札用取付具1は、プライスレールPRに対して固定状態を十分に保つものではある。しかし、顧客や店員が、不用意に、電子棚札用取付具1に触れてしまったり、電子棚札用取付具1に対して、プライスレールPRを銜え込んでいる僅かな隙間にPOP広告を併せて挟み込ませるようにすると、電子棚札用取付具1がずれて左右に傾いてしまったり、脱落してしまう恐れがある。そこで、プライスレールPRに取り付けられた状態での把持部11の下方への移動を規制する規制部が備えられている。
【0018】
第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1において、規制部は、下当接部13である。
図2(a)及びその一部拡大図(ただし、拡大図は断面図として示されている)に示されるように、下当接部13は、商品棚Sの下延設部S2の上面に当接しているので、上方から不用意な押圧力がかかっても十分に対抗することができる。なお、商品棚Sのこぼれ止め壁Wに係合されているプライスレールPRは、上方の薄肉部で回動できる構造となっているため、プライスレールPRを手前に捲り上げた状態で、電子棚札用取付具1を把持させてから、プライスレールPRを元の位置に戻すことによって、簡単に、
図2(a)の状態となるようにセッティングすることができる。
【0019】
図1(c)から理解されるように、電子棚札用取付具1の全体の高さは、プライスレールPRの高さ(上下幅)の半分程度とされている。換言すれば、電子棚札EPは、プライスレールPRの高さの半分程度の高さに収まるようにされている。プライスレールPR内にPOP広告を挟み込むようにしても、表示箇所を上半分程度とすることで、POP広告に対する良好な視認性を確保することが可能である。
【0020】
(第二の実施形態)
図4は、本発明の第二の実施形態に係る電子棚札用取付具を示す図であり、(a)は電子棚札用取付具の側面図、(b)は電子棚札用取付具の斜視図、(c)はプライスレールを把持している状態での電子棚札用取付具の側面図である。
図5は、本発明の第二の実施形態に係る電子棚札用取付具が商品棚に取り付けられている様子を示す側断面図(商品棚Sの前端部がR形状となっていることを示すために、断面図とされている。)である。
【0021】
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、本発明の第二の実施形態に係る電子棚札用取付具2は、下方に把持部21を備え、当該把持部21を基準にして、正面視手前に電子棚札装着部22が形成され、正面視奥側に一体当接部23が形成されている。また、把持部21の内面には、前方に突出する突出部24と、突出部24を上下に挟む格好で、後方に突出する2つの凸部(引き出し線は示されていない)が形成されている。
【0022】
プライスレールPRが、商品棚Sの前方側上面に設けられたこぼれ止め壁Wに係合されることによって、その下端部が上方から垂下される格好で、商品棚Sに取り付けられている点は、第一の実施形態と何ら変わるものではない。
図4(c)に示されるように、電子棚札用取付具2が、プライスレールPRの自由端となる下端を下方から把持部21が銜え込むことによって、プライスレールPRに固定される点も、第一の実施形態と同様である。
【0023】
電子棚札装着部22は、上方に設けられた二つの係合部と下方に設けられた一つの係合部とから構成されており、これら係合部が、電子棚札EPの上下に設けられた大小の係合爪や電子棚札EPの凹凸形状に係合することによって、電子棚札装着部22は、電子棚札EPを保持する(不図示、
図3を参照)。
【0024】
第二の実施形態においても、プライスレールPRに取り付けられた状態での把持部21の下方への移動を規制する規制部が備えられているが、第一の実施形態とは形状ないし構造が異なる。すなわち、第二の実施形態に係る電子棚札用取付具2において、規制部は、一体当接部23である。
図5に示されるように、一体当接部23は、商品棚Sの上延設部S1及び下延設部S2の双方に挟まれる形で両者に当接することになる。このため、上方から不用意な押圧力がかかっても十分に対抗することができる。また、電子棚札用取付具2の下部に正面から押圧力がかかっても、
図5のように一体当接部23の上部が上延設部S1に下から当接するので、電子棚札が左右に傾くことを防止できる。この他、図示とは異なるが、一体当接部23の下端が下延設部S2に引っ掛かる形状であってもよい。この場合、より電子棚札用取付具2が脱落し難くなる。
なお、商品棚Sのこぼれ止め壁Wに係合されているプライスレールPRは、上方の薄肉部で回動できる構造となっているため、プライスレールPRを手前に捲り上げた状態で、電子棚札用取付具2を把持させてから、プライスレールPRを元の位置に戻すことによって、簡単に、セッティングすることができる。
【0025】
図4(c)から理解されるように、電子棚札用取付具1の全体の高さは、プライスレールPRの高さ(上下幅)の半分程度とされている。換言すれば、電子棚札EPは、プライスレールPRの高さの半分程度の高さに収まるようにされている。プライスレールPR内にPOP広告を挟み込むようにしても、表示箇所を上半分程度とすることで、POP広告に対する良好な視認性を確保することが可能である。
【0026】
(第三の実施形態)
図6は、本発明の第三の実施形態に係る電子棚札用取付具を示す図であり、(a)は電子棚札用取付具の側面図、(b)は電子棚札用取付具の斜視図、(c)はプライスレールを把持している状態での電子棚札用取付具の側面図である。
図7は、本発明の第三の実施形態に係る電子棚札用取付具にPOP広告が差し込まれた状態を示す斜視図である。
【0027】
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、本発明の第三の実施形態に係る電子棚札用取付具3は、下方に下把持部31を備えるとともに、上方に上把持部33を備えている。また、正面視手前に電子棚札装着部32が形成され、当該電子棚札装着部32と下把持部31から立ち上がる部材との前後方向の間には、スリット形状の媒体保持部34が設けられている。
【0028】
プライスレールPRが、商品棚Sの前方側上面に設けられたこぼれ止め壁Wに係合されることによって、その下端部が上方から垂下される格好で、商品棚Sに取り付けられている点は、第一及び第二の実施形態と何ら変わるものではない。ただし、第一及び第二の実施形態では、プライスレールPRの下端を把持部11や把持部21が銜え込むことによって、プライスレールPRへの固定がされるのに対して、第三の実施形態では、上把持部33と下把持部31がプライスレールPRを上下から挟み込むことによって、プライスレールPRへの固定がされる点で、先の二つの実施形態とは異なる。
【0029】
第三の実施形態に係る電子棚札用取付具3においては、プライスレールPRに取り付けられた状態から下方への移動を規制する規制部は、上把持部33である。すなわち、第三の実施形態に係る電子棚札用取付具3において、プライスレールPRを把持する把持部である上把持部33と下把持部31の中、前者は規制部としても機能するものである。なお、上把持部33は、プライスレールPRの湾曲した上部全体(商品棚Sのこぼれ止め壁Wに係合する部分から、前端を回動可能とするための薄肉部にかけての上部全体)を把持できるように、下把持部31よりも前後方向(奥行方向)のサイズが大きく設定されている。
【0030】
電子棚札装着部32は、上方に設けられた二つの係合部と下方に設けられた一つの係合部とから構成されており、これら係合部が、電子棚札EPの上下に設けられた大小の係合爪や電子棚札EPの凹凸形状に係合することによって、電子棚札装着部32は、電子棚札EPを保持する(不図示、
図3を参照)。
【0031】
第三の実施形態に係る電子棚札用取付具3において、下把持部31から立ち上がる部材は、上把持部33まで延びており、プライスレールPRの上下幅と同等以上の長さを有している。第三の実施形態に係る電子棚札用取付具3においては、媒体保持部34が設けられている。媒体保持部34は、電子棚札装着部32と下把持部31から立ち上がる部材との前後方向の間に配設されるものであり、上方からPOP広告等の媒体を差し込めるように、スリット形状とされている。このことから、
図7に示されるように、安定してPOP広告を保持することが可能であるし、電子棚札とPOP広告を一度に取り付けることができることから、店舗における作業の効率化を図ることが可能となる。また、取り付けられた電子棚札用取付具3は、プライスレールPRを上下から挟み込んでいることから、不用意に脱落したり、左右に傾いたりすることが確実に防止されている。さらに、電子棚札用取付具3がプライスレールPRの上下幅分を覆い隠すことを考慮して、POP広告を媒体保持部34で保持するようにしているところ、このことは、プライスレールの汚れや擦れなどで視認性が損なわれがちなPOP広告を、視認性を確保した上で保持できるというメリットも生じさせている。
【0032】
図1,4の側面図と
図6の側面図を見比べると理解されるように、第一及び第二の実施形態では、把持部11や把持部21のサイズにより、対象となるプライスレールPRの厚みが制限されてしまう(薄ければ把持力が弱まるし、厚ければ差し込めない)のであるが、第三の実施形態では、プライスレールPRの厚さが多少異なっていても、対応することが可能である。また、仮に、商品棚Sの側面形状が、下延設部S2が設けられていないような平坦なものであっても、安定した固定をすることが可能となる。
【0033】
図6及び7から理解されるように、スリット形状の媒体保持部34により、POP広告を安定して保持することができる。なお、このスリットに適宜、突状部等を設けることで、POP広告の保持をさらに安定させたものとすることができるし、POP広告の下端を媒体保持部34のスリットの最奥まで差し込まなくても保持できることから、POP広告の高さ調整を行うことも可能となる。なお、媒体保持部34の形状は、上下のスリット形状に限定されることなく、任意のものを採用することができる。例えば、電子棚札用取付具3の電子棚札装着部32の上部に前後方向に貫かれる係合孔や係合溝を設け、一方、POP広告の下端には前後方向に延びる突起を有する補助部材を取り付けて、係合孔や係合溝と突起を前後に嵌め合わせることでPOP広告を固定するといった態様も採用可能である。
【0034】
(電子棚札用取付具に適したプライスレールの構造)
第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1及び第二の実施形態に係る電子棚札用取付具2に適した凸部P1が形成されたプライスレールPR’の構造について、説明する。
図8は、プライスレールPR’を説明するための図であり、(a)は、第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1と背面に凸部P1が形成されたプライスレールPR’が係合した様子を示しており、(b)は、第二の実施形態に係る電子棚札用取付具2と背面に凸部P1が形成されたプライスレールPR’が係合した様子を示している。図に示されるように、当該凸部P1の上に、第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1の突出部14若しくは第二の実施形態に係る電子棚札用取付具2の突出部24が被さる格好で係合するようにされている。これにより、電子棚札用取付具1や電子棚札用取付具2に対して、上方から不用意な押圧力がかかった場合のずれや脱落防止の効果をより高めることができる。
なお、ここでの例は、プライスレールPR’の背面に後方に突出する凸部P1が形成される態様とされているが、プライスレールPR’の前面に前方に突出する凸部P1を形成するように構成しても良い。
【0035】
このように、第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1及び第二の実施形態に係る電子棚札用取付具2は、プライスレールPR’と組み合わせることによって、より確実な電子棚札の固定を実現する電子棚札取付システムを構成するものとなる。
【0036】
(付記)
第三の実施形態において示された媒体保持部34については、POP広告を安定して保持することができるという点で、別の観点の発明思想として捉えることが可能である。すなわち、本発明の電子棚札用取付具はプライスレールPRに取付けることを前提としたものであったが、係合手段を特定せずに、例えば、プライスレールPRの取り付けられていない商品棚Sに取り付け可能な係合手段を有する電子棚札用取付具であって、媒体保持部を設ける電子棚札用取付具というものを観念することができる。当該発明思想について、付記しておく。
<付記1>
商品棚に取り付け可能な係合部と、前記係合部よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部と、シート状媒体を保持可能な媒体保持部を、備え、前記媒体保持部は、前記係合部よりも正面視前方であり、かつ前記電子棚札装着部よりも正面視後方に形成されていることを特徴とする電子棚札用取付具。
<付記2>
商品棚に取り付け可能な係合部と、前記係合部よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部と、シート状媒体を保持可能な媒体保持部を、備え、前記媒体保持部は、スリット形状であり、スリット内に突状部が形成されていることを特徴とする電子棚札用取付具。
【0037】
<実施形態の総括>
[技術分野]
本発明は、電子棚札用取付具、プライスレール及び電子棚札取付システムに関する。
[背景技術]
従来、量販店等において、商品を陳列するための商品棚の前端部には、商品価格の表示等を行うための値札(棚札)やPOP広告を差し込むためのプライスレールと呼ばれる部材が取り付けられている。
図10は、この様子を説明する図である。
図10(a)及び
図10(b)は、プライスレールPRが取り付けられていない商品棚Sの側面図及び斜視図であり、
図10(c)及び
図10(d)は、プライスレールPRが取り付けられた後の商品棚Sの側面図及び斜視図である。
図10(c)及びその一部拡大図に示されるように、商品がこぼれ落ちるのを防止するために、商品棚Sの前方側上面に設けられたこぼれ止め壁Wに係合されることによって、プライスレールPRが配設されている。そして、
図10(d)に示されるように、値札(棚札)やPOP広告は、プライスレールPRの上方から差し込まれる形で固定される。
ところで、近年、量販店等の店舗では、このような旧態の値札(棚札)を用いた価格表示の手法に代えて、商品入替等に適した電子棚札(特許文献1)を用いる傾向にある。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2015-157085号公報
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
特許文献1に記載の電子棚札は、商品棚に固定されて設けられているので、既設の商品棚に取り付けるのは困難である。また、普通の棚札の取付のように、プライスレールPRの上方から差し込もうとしても、電子棚札には相応の厚みがあるため、それもできない。そこで、適宜の取付部材(アタッチメント)を介して、電子棚札をプライスレールPRに取り付けることが考えられる。
図10(c)の一部拡大図に示されるように、プライスレールPRの前方部分は、上方から下端部が垂下される格好となっているため、プライスレールPRを下端から銜え込むように、プライスレールPRを把持する把持部を有する取付部材で電子棚札を取付けるようにするのである。
しかし、不用意に電子棚札に触れると、下から把持しているだけでは、取付部がずれて左右に傾いてしまったり、酷い場合には脱落してしまう虞がある。また、商品棚には、宣伝用のPOP広告を取付けることも少なくない。従前のように、プライスレールPRにPOP広告が挟まれている状態で、プライスレールPRを把持する把持部を有する取付部材で電子棚札を取付けると、POP広告が良く見えなくなってしまう。POP広告が良く見えるように、電子棚札が取り付けられている状態でPOP広告を上から一緒に差し込もうとすると、当然ながら、脱落の危険性が高まることになる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、電子棚札のプライスレールへの取付を確実なものとし、使い勝手の良い電子棚札用取付具及び電子棚札取付システムを提供することを課題とするものである。
[課題を解決するための手段]
(1)以上説明したように、本実施形態の一態様は、商品棚(S)に設けられたプライスレール(PR)を把持する把持部(11,21,31及び33)と、前記把持部(11,21,31及び33)よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部(12,22,32)と、前記プライスレール(PR)に取り付けられた状態での前記把持部(11,21,31及び33)の下方への移動を規制する規制部(13,23,33)を備えることを特徴とする電子棚札用取付具(1,2,3)である。
【0038】
上記構成によれば、電子棚札のプライスレールへの取付を確実なものとすることができる。
【0039】
(2)本実施形態の一態様は、(1)に記載の電子棚札用取付具において、前記把持部(11,21)は、前記プライスレール(PR)を下から挟み込むように形成され、前記規制部は、前記把持部背面から正面視後方へ突出する突出部(下当接部13、一体当接部23)であり、該突出部(下当接部13、一体当接部23)が、前記商品棚(S)の正面視前方に配置される上下の延設部(上延設部S1、下延設部S2)の中、少なくとも一つに当接することによって、前記把持部(11,21)の下方への移動が規制される。
【0040】
上記構成によれば、商品棚(S)の形状を利用して、電子棚札のプライスレールへの取付を確実なものとすることができる。
【0041】
(3)本実施形態の一態様は、(1)に記載の電子棚札用取付具において、前記把持部(11,21)は、前記プライスレール(PR’)を下から挟み込むように形成され、前記規制部は、前記把持部(11,21)の内面から突出する突出部(14,24)であり、該突出部(14,24)が、前記プライスレール(PR’)の前面又は背面に設けられた凸部(P1)と係合することによって、前記把持部(11,21)の下方への移動が規制される。
【0042】
上記構成によれば、電子棚札のプライスレールへの取付をより強固なものとすることができる。
【0043】
(4)本実施形態の一態様は、(1)に記載の電子棚札用取付具において、前記把持部は、前記プライスレールに対して上から係合する第1係合部(上把持部33)および下から係合する第2係合部(下把持部31)を有し、前記第1係合部(上把持部33)が前記規制部としても機能する。
【0044】
上記構成によれば、プライスレールPRの厚さが多少異なっていても、対応することが可能である。また、商品棚Sの側面形状が、下延設部S2が設けられていないような平坦なものであっても、安定した固定が可能となる。
【0045】
(5)本実施形態の一態様は、(1)~(4)の何れか一に記載の電子棚札用取付具において、シート状媒体を保持可能な媒体保持部(34)を、さらに備え、前記媒体保持部(34)は、前記把持部(11,21,31)よりも正面視前方であり、かつ前記電子棚札装着部(12,22,32)よりも正面視後方に形成されている。
【0046】
上記構成によれば、POP広告等の媒体を安定して保持することができる。
【0047】
(6)本実施形態の一態様は、商品棚に設けられたプライスレール(PR’)を把持する把持部(11,21)と、前記把持部(11,21)よりも正面視手前に形成された電子棚札装着部(12,22)と、前記把持部(11,21)の内面から突出する突出部(14,24)を備えた電子棚札用取付具(1,2)と、前面又は背面から突出する凸部(P1)を備えたプライスレール(PR’)、との組み合わせにより構成される電子棚札取付システムであって、前記突出部(14,24)が前記凸部(P1)と係合することによって、前記把持部(11,21)の下方への移動が規制される電子棚札取付システムである。
【0048】
上記構成によれば、電子棚札用取付具とプライスレールとの協働により、電子棚札の固定をより確実とするシステムを提供することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、媒体保持部34は、第三の実施形態の電子棚札用取付具3に設けられるものとして説明したが、第一の実施形態に係る電子棚札用取付具1や第二の実施形態に係る電子棚札用取付具2に設けることもできる。この様子を示したものが、
図9であり、媒体保持部15や媒体保持部25が設けられた態様が示されている。この他、第二の実施形態の電子棚札用取付具2の規制部としては、商品棚Sの上下の延設部に一体当接部23が接するように構成されているものとして説明したが、上下に別体としての上当接部及び下当接部を独立して設け、これらの当接部が商品棚Sの上下の延設部にそれぞれ接するように構成することが可能である。さらには、上当接部及び下当接部につき、それぞれ上方及び下方への付勢力が与えられるように、両者が平行でなく拡開する向きに延びて、商品棚Sの上下の延設部に強固に嵌り込むようにしても良い。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることや、逆に一部構成を削除することが可能である。
例えば、突出部14を規制部として機能させることによって、下当接部13を設けないことも可能ではある。ただし、通常のプライスレールPRにも対応可能とさせるために、下当接部13と突出部14は併設させることが望ましいものではある。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
特に、本発明は、プライスレールや商品棚からの固定が不用意に外れないようにするという点に基本的思想を置く発明である。したがって、本発明は、実施形態として説明された構造的な特徴にて限定されるべきものではなく、その機能も踏まえた上で、上位概念での発明思想として広く捉えられるべきものである。
【符号の説明】
【0050】
1…………電子棚札用取付具
11………把持部
12………電子棚札装着部
13………下当接部
14………突出部
15………媒体保持部
2…………電子棚札用取付具
21………把持部
22………電子棚札装着部
23………一体当接部
24………突出部
25………媒体保持部
3…………電子棚札用取付具
31………下把持部
32………電子棚札装着部
33………上把持部
34………媒体保持部
EP………電子棚札
PR………プライスレール
PR’……プライスレール
P1………凸部
S…………商品棚
S1………上延設部
S2………下延設部