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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099213
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】昇降するキャブを備えた作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20240718BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240718BHJP
   B62D 33/063 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E02F9/16 A
E02F9/24 C
B62D33/063
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002990
(22)【出願日】2023-01-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田宮 和紀
(72)【発明者】
【氏名】堀江 哲史
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】田辺 節男
(72)【発明者】
【氏名】入枝 克哉
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015EA04
2D015GA02
2D015GB02
(57)【要約】
【課題】キャブの良好な作業視野を確保するとともに昇降中のキャブの落下を抑制する。
【解決手段】昇降するキャブ6を備えた油圧ショベル1である。キャブ6の後側にキャブ6を支えるサポート台20が設けられていて、キャブ6とサポート台20との間にキャブ6を昇降させる昇降機構30が介在している。昇降機構30に、キャブ6の落下を検知するキャブ落下検知手段50とブレーキ43とが付設されていて、キャブ6の昇降中にキャブ落下検知手段50がキャブ6の落下を検知した場合にブレーキ43が即時に制動される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降するキャブを備えた作業機械であって、
前記キャブの後側に当該キャブを支えるサポート台が設けられ、
前記キャブと前記サポート台との間に当該キャブを昇降させる昇降機構が介在し、
前記昇降機構に、前記キャブの落下を検知するキャブ落下検知手段とブレーキとが付設されていて、前記キャブの昇降中に前記キャブ落下検知手段が前記キャブの落下を検知した場合に前記ブレーキが即時に制動される作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ブレーキは、圧油の供給によって制動が解除されるネガティブ式であり、
前記キャブ落下検知手段が前記キャブの落下を検知した場合に、前記ブレーキへの圧油の供給が停止される作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記ブレーキが、
前記キャブおよび前記サポート台の一方に設けられて上下方向に延びるクランプ部と、
前記キャブおよび前記サポート台の他方に設けられて前記クランプ部を挟持するパッド部と、
を有し、
前記キャブの停止中に前記パッド部が前記クランプ部を挟持することにより、前記キャブの支持が前記ブレーキを介してサポートされている作業機械。
【請求項4】
請求項2または3に記載の作業機械において、
前記昇降機構は、
前記キャブを前記サポート台に連結して上下方向に案内するガイドレールと、
圧油の供給によって前記キャブを昇降させる油圧シリンダと、
を有し、
パイロット油圧の供給先の切り替えにより、前記油圧シリンダへの圧油の供給先を上昇側および下降側の双方に切り替える油圧方向制御弁を備え、
前記ブレーキへの圧油の供給が、前記パイロット油圧を供給する制御系油圧回路から分岐して行われる作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記キャブの内部に設置された操作手段と、
通電により前記パイロット油圧の供給が開始されて通電先の切り替えにより前記パイロット油圧の供給先が切り替わる電磁方向制御弁と、
前記操作手段の操作に応じて前記電磁方向制御弁への通電先を切り替えるコントローラと、
を更に備え、
前記キャブ落下検知手段が、前記コントローラと前記電磁方向制御弁との間の電気回路に設けられる通電遮断回路を有し、
前記キャブの落下が検知された場合に、前記通電遮断回路により前記電磁方向制御弁への通電が遮断される作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記キャブと前記サポート台との間に当該キャブの荷重を受け止める連結部位が介在し、
前記キャブ落下検知手段は、互いに分離可能な第1部材および第2部材を含む分離検出器を有し、
前記分離検出器が前記連結部位に設置されていて、前記第1部材と前記第2部材の分離により前記キャブの落下が検知される作業機械。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機械において、
前記第1部材および前記第2部材が物理的に接続されている作業機械。
【請求項8】
請求項6に記載の作業機械において、
前記昇降機構は、
前記キャブを前記サポート台に連結して上下方向に案内するガイドレールと、
圧油の供給によって前記キャブを昇降させる油圧シリンダと、
を有し、
前記キャブと前記油圧シリンダの上部とを連結している上側連結部、および、前記サポート台と前記油圧シリンダの下部とを連結している下側連結部の双方が前記連結部位を構成している作業機械。
【請求項9】
請求項8に記載の作業機械において、
前記分離検出器は、前記上側連結部に設置される上部コネクタと前記下側連結部に設置される下部コネクタとで構成され、
前記キャブ落下検知手段は、前記上部コネクタおよび前記下部コネクタの双方が接続される検知用ハーネスを有し、
前記検知用ハーネスの一端に前記上部コネクタが配置されるとともに当該検知用ハーネスの中間に前記下部コネクタが配置され、
前記検知用ハーネスが、前記上部コネクタで折り返して電流が流れる入力線および出力線を有し、
前記上部コネクタおよび前記下部コネクタの少なくともいずれか一方が分離して前記入力線および前記出力線を流れる電流が遮断されることにより、前記キャブの落下が検知される作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、昇降するキャブを備えた作業機械に関し、その中でも特にキャブの落下抑制技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降するキャブを備えた作業機械は、例えば特許文献1に開示されている。その作業機械では、キャブの後部の左右両側が一対のガイド支柱に上下方向にスライド可能な状態で連結されている。そして、キャブは、これらガイド支柱の間に配置された1つの昇降シリンダによって昇降し、高くした状態で支持できるように構成されている。
【0003】
そのキャブの前側に、振動防止用の支柱が設けられていて、キャブの前部下側に設けたディスクブレーキでその支柱を挟み付けるようにしている。それにより、その作業機械では、高くした状態で走行する時に発生するキャブの振動を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-285014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の作業機械の場合、キャブが上昇した位置に支持されていても、ディスクブレーキが支柱に圧着しているので、キャブの荷重を昇降シリンダとその支柱とに分散して受け止めることができる。従って、キャブの停止中はキャブを安定して支持できる。
【0006】
しかし、キャブが昇降している時には、ディスクブレーキは支柱から離れるので、キャブの荷重のほとんどは、油圧シリンダによって受け止められる。それにより、キャブの昇降中は、油圧シリンダの連結部位(ピン30,33やブラケット31,32)に比較的大きな負荷が加わる。
【0007】
通常、その連結部位は強度に優れるので、破損する可能性は低いが、その可能性が無くなることはない。そして、連結部位が破損するとすれば、大きな負荷が加わるキャブの昇降中である可能性が最も高い。キャブの昇降中に連結部位が破損すれば、キャブが一気に落下し、キャブの内部で運転しているオペレータにショックを与えるおそれがある。
【0008】
更に特許文献1の作業機械の場合、振動防止用の支柱は、ガイド支柱よりも短いが、キャブの前方にあって、その横幅中央に位置している。そのため、キャブが最上位に位置した状態でなければ、キャブの前方下側を見る場合、その視野に支柱が入るので、作業の邪魔になる。従って、作業が適切に行えるのは、キャブが最上位に位置した場合のみである。
【0009】
従って、ここに開示する技術では、最下位から最上位までキャブの良好な作業視野を確保するとともに、キャブの昇降中にキャブが落下するような状況になっても、その衝撃を抑制できる作業機械を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示する技術は、昇降するキャブを備えた作業機械に関する。前記キャブの後側に当該キャブを支えるサポート台が設けられ、前記キャブと前記サポート台との間に当該キャブを昇降させる昇降機構が介在し、前記昇降機構に、前記キャブの落下を検知するキャブ落下検知手段とブレーキとが付設されていて、前記キャブの昇降中に前記キャブ落下検知手段が前記キャブの落下を検知した場合に前記ブレーキが即時に制動される。
【0011】
すなわち、この作業機械によれば、キャブの落下を検知するキャブ落下検知手段とブレーキとが付設されていて、キャブの昇降中にキャブ落下検知手段がキャブの落下を検知した場合にブレーキが即時に制動される。従って、昇降中にキャブが落下するようなことが起きても、キャブ落下検知手段がそれを検知してブレーキが即時に制動されるので、その衝撃を抑制できる。
【0012】
そして、昇降するキャブの後側に、キャブを支えるサポート台やキャブを昇降させる昇降機構が配置されている。キャブ落下検知手段やブレーキもまた、その昇降機構に付設されているので、キャブの後方に位置している。従って、キャブの前方に視野の邪魔になるものが無く、最下位から最上位までキャブの良好な作業視野を確保できる。
【0013】
前記ブレーキは、圧油の供給によって制動が解除されるネガティブ式であり、前記キャブ落下検知手段が前記キャブの落下を検知した場合に、前記ブレーキへの圧油の供給が停止される、としてもよい。
【0014】
圧油の供給によってブレーキが作動するには、油圧回路を通じてブレーキに供給される圧油が所定以上に加圧される必要があるので、ブレーキの作動にある程度のタイムラグが生じる。それに対し、ネガティブ式のブレーキであれば、圧油の供給を停止し、減圧することによって作動するので、応答性に優れ、即時かつ円滑に制動できる。
【0015】
前記ブレーキが、前記キャブおよび前記サポート台の一方に設けられて上下方向に延びるクランプ部と、前記キャブおよび前記サポート台の他方に設けられて前記クランプ部を挟持するパッド部と、を有し、前記キャブの停止中に前記パッド部が前記クランプ部を挟持することにより、前記キャブの支持が前記ブレーキを介してサポートされている、としてもよい。
【0016】
上述した昇降機構だけでは、上昇したキャブの荷重のほとんどは、油圧シリンダとその周辺部位によって受け止められる。従って、その支持負担は大きい。それに対し、この作業機械であれば、キャブの停止中にブレーキが制動することにより、ブレーキを介してキャブの支持がサポートされるようになっているので、キャブの荷重を、ブレーキを介した支持にも分散させることができる。従って、油圧シリンダの支持負担を軽減でき、キャブが上昇しても安定して支持できる。
【0017】
前記昇降機構は、前記キャブを前記サポート台に連結して上下方向に案内するガイドレールと、圧油の供給によって前記キャブを昇降させる油圧シリンダと、を有し、パイロット油圧の供給先の切り替えにより、前記油圧シリンダへの圧油の供給先を上昇側および下降側の双方に切り替える油圧方向制御弁を備え、前記ブレーキへの圧油の供給が、前記パイロット油圧を供給する制御系油圧回路から分岐して行われる、としてもよい。
【0018】
キャブを昇降させる油圧シリンダへの圧油の供給先を切り替える油圧方向制御弁のパイロット油圧の制御系油圧回路から分岐してブレーキへの圧油を供給するので、キャブの昇降に先立ってブレーキの制動を解除させることができる。パイロット油圧なので、適度な圧力を得ることができ、キャブの昇降に応じて即時且つ円滑にブレーキを動作させることができる。
【0019】
前記キャブの内部に設置された操作手段と、通電により前記パイロット油圧の供給が開始されて通電先の切り替えにより前記パイロット油圧の供給先が切り替わる電磁方向制御弁と、前記操作手段の操作に応じて前記電磁方向制御弁への通電先を切り替えるコントローラと、を更に備え、前記キャブ落下検知手段が、前記コントローラと前記電磁方向制御弁との間の電気回路に設けられる通電遮断回路を有し、前記キャブの落下が検知された場合に、前記通電遮断回路により前記電磁方向制御弁への通電が遮断される、としてもよい。
【0020】
そうすれば、既存のキャブの昇降を制御する電気回路に、通電遮断回路を挟み込むだけで実現できる。簡単な電気回路で、キャブの落下の検知から即時にその落下を抑制できる。従って、安価かつ簡単でありながら、キャブの落下抑制を効果的に実行できる。
【0021】
前記キャブと前記サポート台との間に当該キャブの荷重を受け止める連結部位が介在し、前記キャブ落下検知手段は、互いに分離可能な第1部材および第2部材を含む分離検出器を有し、前記分離検出器が前記連結部位に設置されていて、前記第1部材と前記第2部材の分離により前記キャブの落下が検知される、としてもよい。
【0022】
そうすれば、連結部位が破断すれば、そこに設置されている第1部材と第2部材とが分離するので、連結部位の破断によるキャブの落下を漏れなく検知できる。
【0023】
前記第1部材および前記第2部材は物理的に接続されているようにするのが好ましい。
【0024】
そうすれば、第1部材と第2部材とが物理的に分離することでキャブの落下を検知するので、分離と同時にキャブの落下を検知でき、タイムラグをほとんど無くすことができる。
【0025】
前記昇降機構は、前記キャブを前記サポート台に連結して上下方向に案内するガイドレールと、圧油の供給によって前記キャブを昇降させる油圧シリンダと、を有し、前記キャブと前記油圧シリンダの上部とを連結している上側連結部、および、前記サポート台と前記油圧シリンダの下部とを連結している下側連結部の双方が前記連結部位を構成している、としてもよい。
【0026】
この場合、上側連結部および下側連結部の双方が破断の可能性が最も高い部位であり、その2箇所で破断を検知するので、キャブの落下を、確実性をもって抑制できる。
【0027】
前記分離検出器は、前記上側連結部に設置される上部コネクタと前記下側連結部に設置される下部コネクタとで構成され、前記キャブ落下検知手段は、前記上部コネクタおよび前記下部コネクタの双方が接続される検知用ハーネスを有し、前記検知用ハーネスの一端に前記上部コネクタが配置されるとともに当該検知用ハーネスの中間に前記下部コネクタが配置され、前記検知用ハーネスが、前記上部コネクタで折り返して電流が流れる入力線および出力線を有し、前記上部コネクタおよび前記下部コネクタの少なくともいずれか一方が分離して前記入力線および前記出力線を流れる電流が遮断されることにより、前記キャブの落下が検知される、としてもよい。
【0028】
そうすれば、1本の検知用ハーネスで、検知対象とされる離れた2箇所の分離を即時に検知できる。検知用ハーネスが1本であるので、長くても容易に配索できる。
【発明の効果】
【0029】
開示する技術によれば、最下位から最上位までキャブの良好な作業視野を確保でき、キャブの昇降中にキャブが落下するような状況になっても、その衝撃を抑制できる。従って、作業性および安全性に優れた作業機械を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】開示する技術を適用した油圧ショベル(キャブが上昇していない状態)を示す概略図である。
図2】最上位置までキャブが上昇した油圧ショベルを示す概略図である。
図3】キャブ昇降機の分解斜視図である。
図4図1で矢印線Aの方向から見た概略断面図である。
図5図4に対応した概略斜視図である。
図6】上側連結部を示す概略斜視図である。
図7】下側連結部を示す概略斜視図である。
図8】昇降機構の電気回路および油圧回路を示す図である。
図9図8においてキャブが上昇する時の状態を示した図である。
図10図8において昇降中にキャブが落下した時の状態を示した図である。
図11】キャブの落下抑制制御の一例を示すフローチャートである。
図12】(a)~(c)は分離検出器の別形態を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、開示する技術を説明する。ただし、以下の説明は本質的に例示に過ぎない。説明で用いる前後、左右、および、上下の方向は、各図に示すようにキャブ6を基準とする。
【0032】
<作業機械の全体構成>
図1に、開示する技術を適用した油圧ショベル1(作業機械の一例)を示す。この油圧ショベル1は、大略、下部走行体1aと上部旋回体1bとで構成されている。
【0033】
下部走行体1aは、その左右両側に一対のクローラ2を有している。これら各々のシューを前後双方に回転させることにより、油圧ショベル1は、前進、後退、旋回など、自在に走行する。なお、下部走行体1aはクローラ2ではなく車輪を有するホイール式であってもよい。
【0034】
上部旋回体1bは下部走行体1aの上に搭載されている。上部旋回体1bには、アッパーフレーム3、アタッチメント4、機械室5、キャブ6などが備えられている。アッパーフレーム3は、前後および左右の方向に拡がる台状の構造物からなり、旋回ベアリングを介して下部走行体1aに旋回自在に支持されている。アタッチメント4、機械室5、キャブ6は、アッパーフレーム3の上に設置されている。
【0035】
アタッチメント4は、アッパーフレーム3の前部における左右方向の中央部分に軸支されている。アタッチメント4は、ブーム、アーム、バケットなどで構成されていて、これら各々に付設された油圧シリンダの伸縮により、ブームが起伏するとともにアームおよびバケットが回動するように構成されている。
【0036】
機械室5は、アッパーフレーム3の後部に設置されている。機械室5の周囲は、パネルやボンネットなどで覆われていて、その内部にエンジンや後述する油圧ポンプ84などが収容されている。図示はしないが、アッパーフレーム3の右側部(右サイドデッキ)には燃料タンクや後述する作動油タンク85などが設置されている。
【0037】
キャブ6は、周囲がパネルやドアで覆われた箱形の運転室である。キャブ6は、アタッチメント4の左側に隣接した状態でアッパーフレーム3の左側部(左サイドデッキ)の前側に設置されていて、上部旋回体1bの左隅部に位置している。この油圧ショベル1では、キャブ6が昇降するように構成されている。
【0038】
具体的には、アッパーフレーム3の上にキャブ昇降機7が設置されている。そのキャブ昇降機7により、図1に示す位置(最下位置)と、図2に示す位置(最上位置)との間で、任意の高さの位置にキャブ6が昇降するように構成されている。
【0039】
<キャブ昇降機>
図3に、キャブ昇降機7の分解斜視図を示す。図4に、図1で矢印線Aの方向から見た概略断面図を示す。図5に、図4の概略斜視図を示す。図6に上側連結部を示し、図7に下側連結部を示す。
【0040】
図3に示すように、キャブ昇降機7は、キャブデッキ10、サポート台20、昇降機構30などで構成されている。昇降機構30は、一対のガイドレール31,31および4つのLMガイド32と、油圧シリンダ33とを有している。昇降機構30には更に、支持補助装置40やキャブ落下検知手段50などが付設されている。
【0041】
付設設備も含め、昇降機構30は、キャブ6とサポート台20との間に介在している。すなわち、キャブ6は、キャブ昇降機7の最も前側に配置されている。従って、キャブ6が昇降しても、キャブ昇降機7がキャブ6の前方の作業視野を妨げることはなく、作業性に優れる。
【0042】
キャブデッキ10は、キャブ6の下部を構成する構造物であり、アッパーフレーム3とは別に設けられている。キャブデッキ10の上側に、パネルやドアなどからなるキャブカバーを組み付けることで、キャブ6が構成される。
【0043】
キャブデッキ10の上面は、運転室の床面を構成する床パネル11で覆われている。床パネル11の上には、オペレータが着座するシート12や、オペレータが操作する走行レバー13、ペダルなどが設置されている。シート12の左右両側には、コンソールボックス14が設置されている。
【0044】
各コンソールボックス14の上部の前端部分には、アタッチメント4を操作する操作レバー15が設置されている。コンソールボックス14の上部にはまた、後述する切替スイッチ71および昇降ボタン72を含め、各種の操作手段が設置されている。シート12の後側には、図示しないシートスタンドが設置されていて、その内部に後述するコントローラ73などの電気機器が設置されている。
【0045】
サポート台20は、キャブ6を支える構造物である。サポート台20は、図1図2に示すように、キャブ6の後側に位置するように、機械室5の前側に隣接した状態でアッパーフレーム3の左側部に設置されている。サポート台20は、縦長な箱形状に形成されていて、図3図4に示すように、その左右両側部は、強度に優れた一対のプレート支柱21,21で構成されている。
【0046】
サポート台20の上部に左右方向に間隔を隔てて一対のケーブルベア22,22が取り付けられている。これらケーブルベア22,22は、サポート台20の前側に延びており、それらの端部はキャブデッキ10の後部の所定部位に取り付けられている。
【0047】
これらケーブルベア22,22に、キャブ6とサポート台20との間を繋ぐケーブルやホースなどが収容される。ケーブルベア22にケーブル等を収容することにより、キャブ6が昇降してもそれに応じてケーブル等を円滑に変位させることができ、外部からケーブル等を保護できる。
【0048】
図3図7に示すように、サポート台20の前面下部における左右方向の中央部分には、接合(溶接)することによって下側支持ブラケット23が取り付けられている。それにより、下側支持ブラケット23はサポート台20と一体化されている。
【0049】
ガイドレール31は、各プレート支柱21の前面に取り付けられて上下方向に延びている。LMガイド32は、ガイドレール31の各々に2つずつ取り付けられている。各LMガイド32は、ガイドレール31に沿って円滑かつ自在にスライドするように構成されている。
【0050】
これらLMガイド32は、キャブデッキ10の後部の所定位置に取り付けられている。それにより、キャブデッキ10は、LMガイド32および一対のガイドレール31,31を介してサポート台20と連結されている。
【0051】
キャブデッキ10の後部における左右方向の中央部分には、キャブデッキ10から上方に延びる支持ピラー16が設けられている。支持ピラー16は、図4図5に示すように、断面U形状に形成されていて、帯板状の主壁部16aと、主壁部16aの両側部から曲げられて対向する一対の側壁部16b,16bとを有している。
【0052】
支持ピラー16は、その側壁部16bの側を後方に向けた状態でキャブデッキ10の後部に取り付けられている。支持ピラー16の上端部における一対の側壁部16b,16bの間の部分には、図6に示すように、接合することによって上側支持ブラケット17が取り付けられている。それにより、上側支持ブラケット17は支持ピラー16と一体化されている。
【0053】
油圧シリンダ33は、シリンダ部33aと、シリンダ部33aの一端から出退するロッド部33bとを有している。シリンダ部33aから突出しているロッド部33bの突端部分には、可動側連結ブラケット34が設けられている。シリンダ部33aの他端には不動側連結ブラケット35が設けられている。
【0054】
可動側連結ブラケット34は、図6に示すように、ピン止めすることによって上側支持ブラケット17に連結されている。不動側連結ブラケット35は、図7に示すように、ピン止めすることによって下側支持ブラケット23に連結されている。
【0055】
それにより、油圧シリンダ33は、支持ピラー16の後側に、ロッド部33bの側を上方に向けた状態で上下方向に延びるように配置されている。可動側連結ブラケット34および上側支持ブラケット17は上側連結部を構成し、不動側連結ブラケット35および下側支持ブラケット23は、下側連結部を構成している。
【0056】
圧油の供給により、油圧シリンダ33は伸縮する。それにより、キャブデッキ10(キャブ6)は、ガイドレール31で上下方向に案内された状態で昇降する。具体的には、図3に仮想線で示すように、ロッド部33bが上方に延びることにより、上側支持ブラケット17および支持ピラー16が持ち上げられ、ガイドレール31に連結されているキャブ6が上昇する。
【0057】
キャブ6の荷重は、油圧シリンダ33を介してサポート台20に受け止められている。詳細には、支持ピラー16、可動側連結ブラケット34および上側支持ブラケット17、油圧シリンダ33、並びに、不動側連結ブラケット35および下側支持ブラケット23を介して、キャブ6の荷重はサポート台20に受け止められている。上側連結部および下側連結部は、キャブ6の荷重を受け止める連結部位を構成している。
【0058】
キャブ6はそれ自体が高重量なうえに、キャブ6には大小様々な衝撃が加わる。従って、キャブ6の荷重を受け止めて支持する油圧シリンダ33の周辺部分の負担は大きい。この油圧ショベル1には、そのような負担を軽減するために、支持補助装置40が設けられている。
【0059】
(支持補助装置)
上述したように、支持補助装置40は、昇降機構30に付設されており、図3に示すように、補助ピラー41、クランププレート42(クランプ部)、ディスクブレーキ43などで構成されている。
【0060】
補助ピラー41は、図3図5に示すように、断面U形状に形成されていて、帯板状の主面部41aと、主面部41aの両側部から曲げられて対向する一対の側面部41b,41bとを有している。補助ピラー41は、支持ピラー16よりも短く断面サイズは大きく形成されている。
【0061】
補助ピラー41は、その側面部41bの側を前方に向け、互いに突き合わせるようにして支持ピラー16に接合されている。それにより、補助ピラー41と支持ピラー16とが接合されている部分は、中空の角柱形状となっており、構造的に強度が強化されている。そして、その中に油圧シリンダ33が収容されて油圧シリンダ33の周囲が覆われた状態となっているので、油圧シリンダ33の保護も向上する。
【0062】
クランププレート42は、帯板状の部材からなり、後方に面している主面部41aに、上下方向に延びるように接合されている。ディスクブレーキ43は、ブレーキブラケット44を介してサポート台20の前面上部に設置されている。
【0063】
ディスクブレーキ43は、公知の装置であり、バネの付勢力でクランププレート42を挟持する一対のパッド部43a(図8等に模式的に図示)を有している。このディスクブレーキ43は、油圧で作動するネガティブ式ブレーキである。
【0064】
すなわち、ディスクブレーキ43に圧油が供給されていない状態で制動(パッド部43aがクランププレート42に圧着して挟持)し、ディスクブレーキ43に圧油が供給されることによって制動が解除される(パッド部43aがクランププレート42から離れる)ように構成されている。
【0065】
キャブ6が昇降すると、それに伴って支持ピラー16や補助ピラー41とともにクランププレート42も上下動する。任意の高さでキャブ6が停止しても、クランププレート42は上下方向に長いので、パッド部43aはクランププレート42を挟持できる。
【0066】
キャブ6の停止中にパッド部43aがクランププレート42を挟持することにより、ディスクブレーキ43、クランププレート42、補助ピラー41および支持ピラー16などを介して、キャブ6はサポート台20に支持される。それにより、停止しているキャブ6の支持が支持補助装置40によってサポートされており、油圧シリンダ33の支持負担が軽減されている。
【0067】
<昇降中のキャブの落下>
上述したように、この油圧ショベル1の場合、停止しているキャブ6は、油圧シリンダ33と支持補助装置40とによって支持されるので、安定して支持できる。
【0068】
しかし、キャブ6の昇降中は、ディスクブレーキ43の制動が解除されるので、キャブ6の荷重のほとんどが油圧シリンダ33やその連結部位に作用する。しかも、キャブ6が上下動するのでその衝撃も加わる。
【0069】
それに対し、通常、連結部位は強度に優れるので破損する可能性は低いものの、その可能性が無くなることはない。そして、連結部位が破損するとすれば、キャブ6の昇降中の可能性が最も高い。キャブ6の昇降中に連結部位が破損すれば、キャブ6が一気に落下して、キャブ6の内部で運転しているオペレータに衝撃を与えるおそれがある。
【0070】
それに対し、この油圧ショベル1では、昇降機構30に、キャブ6の落下を検知するキャブ落下検知手段50が付設されていて、キャブ6の昇降中にキャブ落下検知手段50がキャブ6の落下を検知した場合にディスクブレーキ43が即時に制動するように工夫されている。
【0071】
(キャブ落下検知手段)
上述したように、昇降中のキャブ6の落下は、油圧シリンダ33の上下の連結部位(上側連結部および下側連結部)の破損によって起きる可能性が高い。具体的には、上側支持ブラケット17のピン止め部分、または、下側支持ブラケット23のピン止め部分が破断する可能性が高い。可動側連結ブラケット34や不動側連結ブラケット35は、荷重が加わる上下方向に設けられているので、構造上これらよりも破損する可能性は低い。
【0072】
そこで、この油圧ショベル1では、これらが破損した場合にその破損を即時に検出できるように、キャブ落下検知手段50を構成する所定の分離検出器が上側連結部および下側連結部の各々に設置されている。本実施形態の分離検出器は、図6図7に示すように、互いに分離可能な第1部材51および第2部材52を含み、これら第1部材51および第2部材52が物理的に接続されている落下検知コネクタ53(上部コネクタ53aおよび下部コネクタ53b)によって構成されている。
【0073】
図6に示すように、上部コネクタ53aは上側連結部に設置されている。図7に示すように、下部コネクタ53bは下側連結部に設置されている。上部コネクタ53aは、上部取付ブラケット54を介して可動側連結ブラケット34に取り付けられている。下部コネクタ53bは、下部取付ブラケット55を介して不動側連結ブラケット35に取り付けられている。
【0074】
図6および図7の断面図に示すように、落下検知コネクタ53は、2本の電線(入力線56および出力線57)を有しており、第1部材51および第2部材52はこれら各々を物理的に接続している。上部コネクタ53aの第1部材51の上端部には、電線を折り返して入力線56と出力線57とを接続する第3部材58が取り付けられている。
【0075】
第1部材51は、径方向に張り出すフランジ部51aを有している。上部取付ブラケット54および下部取付ブラケット55の各々は、上下方向に面する取付座54a,55aを有している。上部コネクタ53aの第1部材51は、上部取付ブラケット54の取付座54aの上面にフランジ部51aが重なるように取り付けられている。下部コネクタ53bの第1部材51は、下部取付ブラケット55の取付座55aの下面にフランジ部51aが重なるように取り付けられている。
【0076】
キャブ落下検知手段50はまた、落下検知コネクタ53が接続される1本の検知用ハーネス59を有している。
【0077】
その検知用ハーネス59の一端に上部コネクタ53aが配置され、その検知用ハーネス59の中間に下部コネクタ53bが配置されている。検知用ハーネス59は、上部コネクタ53aから、サポート台20の内部、ケーブルベア22、支持ピラー16および補助ピラー41の間を通って下部コネクタ53bに接続されている。
【0078】
上部コネクタ53aの近傍に位置する検知用ハーネス59の下側部分は、所定の上部固定部材60で支持ピラー16に取り付けられている。下部コネクタ53bの近傍に位置する検知用ハーネス59の上側部分は、所定の下部固定部材61でサポート台20に取り付けられている。
【0079】
なお、これら検知用ハーネス59の支持は、第2部材52と、上側支持ブラケット17やサポート台20との位置関係が保持できればよく、検知用ハーネス59の固定位置や固定方法は仕様に応じて変更できる。検知用ハーネス59は構造上長くなるが、一本なので、その配索は比較的容易である。
【0080】
検知用ハーネス59は、上述した入力線56および出力線57を有しており、入力線56を通じて検知用ハーネス59に流入する電流が、上部コネクタ53aで折り返し、出力線57を通じて検知用ハーネス59から流出する。従って、検知用ハーネス59に通電した状態で、上部コネクタ53aおよび下部コネクタ53bの少なくともいずれか一方が分離すると、入力線56および出力線57を流れる電流が遮断される。
【0081】
上側支持ブラケット17のピン止め部分が破損し、キャブ6が落下するようになると、それに伴って、支持ピラー16(キャブ6)が、可動側連結ブラケット34(油圧シリンダ33)に対して下方に移動する。下側支持ブラケット23のピン止め部分が破損し、キャブ6が落下するようになると、それに伴って、不動側連結ブラケット35(油圧シリンダ33)が、サポート台20に対して下方に移動する。
【0082】
その結果、第1部材51と第2部材52とが即時に分離し、検知用ハーネス59を流れる電流が遮断される。その電流変化から、キャブ6の落下が即時に検知できる。
【0083】
更に、キャブ6の昇降中にキャブ落下検知手段50がキャブ6の落下を検知した場合に、ディスクブレーキ43が即時に制動するように、昇降機構30の電気回路70および油圧回路80が工夫されている。
【0084】
(昇降機構の電気回路および油圧回路)
図8に、支持補助装置40を含めた昇降機構30の電気回路および油圧回路を簡略化して示す。同図の左上に支持補助装置40を、同図の右上に昇降機構30を、それぞれ模式的に示す。
【0085】
油圧ショベル1には、油圧シリンダ33に圧油を供給する駆動系油圧回路81が備えられている。駆動系油圧回路81には、油圧方向制御弁82、スローリターン弁83などが設けられている。油圧方向制御弁82は、パイロット油圧の供給先の切り替えにより、油圧シリンダ33への圧油の供給先を上昇側および下降側の双方に切り替える。
【0086】
図8の油圧方向制御弁82は、中立位置に位置しており、パイロット油圧が供給されていない状態を表している。その状態では、油圧ポンプ84から供給される圧油は作動油タンク85に戻り、油圧シリンダ33を上昇させる側の油路(シリンダ側管路81a)および油圧シリンダ33を下降させる側の油路(ロッド側管路81b)のいずれも流路が遮断される。スローリターン弁83はシリンダ側管路81aに設置されていて、圧油の戻りを遅らせる。
【0087】
油圧ショベル1にはまた、油圧方向制御弁82にパイロット油圧を供給する制御系油圧回路86も備えられている。制御系油圧回路86には電磁方向制御弁87が設けられている。電磁方向制御弁87は、通電によりパイロット油圧の供給が開始され、通電先の切り替えによりパイロット油圧の供給先が切り替わる。
【0088】
図8の電磁方向制御弁87は、中立位置に位置しており、通電されていない状態を表している。そのPポートには、油圧ショベル1の運転中、パイロット油圧が供給される。そのAポートは、油圧方向制御弁82の一方にパイロット油圧を供給する第1パイロット管路86aに接続され、そのBポートは、油圧方向制御弁82の他方にパイロット油圧を供給する第2パイロット管路86bに接続されている。
【0089】
その状態では、Pポートが遮断され、AポートおよびBポートの双方は作動油タンク85と接続され、油圧方向制御弁82に供給されている圧油が作動油タンク85にリターンするように接続されている。
【0090】
ディスクブレーキ43への圧油の供給は、このパイロット油圧を供給する制御系油圧回路86から分岐して行われるように構成されている。すなわち、制御系油圧回路86に、第1パイロット管路86aおよび第2パイロット管路86bの各々から分岐した第1バイパス管路88および第2バイパス管路89が付設されている。パイロット油圧なので、適度な圧力をディスクブレーキ43に付与できる。
【0091】
第1バイパス管路88および第2バイパス管路89は、シャトル弁90を介してディスクブレーキ43に圧油を供給する合流管路91と接続されている。シャトル弁90は、圧油の流れに応じて、第1バイパス管路88および第2バイパス管路89の各々を合流管路91に接続する。
【0092】
従って、第1パイロット管路86aおよび第2パイロット管路86bのいずれか一方にパイロット油圧が供給されれば、それと同時にディスクブレーキ43にもパイロット油圧が供給される。そして、第1パイロット管路86aおよび第2パイロット管路86bの双方のパイロット油圧の供給が無くなれば、それと同時にディスクブレーキ43へのパイロット油圧の供給も無くなる。
【0093】
電磁方向制御弁87が中立位置の時には、油圧方向制御弁82へのパイロット油圧の供給は停止され、油圧方向制御弁82に供給されているパイロット油圧は作動油タンク85にリターンされる。従って、ディスクブレーキ43への圧油の供給も無くなり、ディスクブレーキ43は制動した状態となる。
【0094】
電磁方向制御弁87は、キャブ6の内部に設置されている切替スイッチ71および昇降ボタン72の操作によって作動する。すなわち、図8の左下側に示すように、キャブ6の内部には、これら切替スイッチ71および昇降ボタン72の操作に応じて電磁方向制御弁87への通電先を切り替えるコントローラ73が設置されており、このコントローラ73と電磁方向制御弁87とが所定の電気回路(昇降制御回路)を介して接続されている。
【0095】
昇降制御回路には、電磁方向制御弁87の上昇側ソレノイド87a(油圧シリンダ33を上昇させる側のソレノイド)への通電状態をオンオフする上昇側リレー74と、電磁方向制御弁87の下降側ソレノイド87b(油圧シリンダ33を下降させる側のソレノイド)への通電状態をオンオフする下降側リレー75とが設置されている。
【0096】
コントローラ73には、機能的な構成として、キャブ6の昇降を制御する昇降制御部73aが設けられている。コントローラ73(昇降制御部73a)は、これら上昇側リレー74および下降側リレー75の双方のオンオフを制御する。
【0097】
そして、この油圧ショベル1の場合、この昇降制御回路に、キャブ落下検知手段50を構成している通電遮断回路76が設けられている。通電遮断回路76には、上昇側リレー74と電磁方向制御弁87との間に介在する上昇側遮断リレー77と、下降側リレー75と電磁方向制御弁87との間に介在する下降側遮断リレー78とが設けられている。
【0098】
これら上昇側遮断リレー77および下降側遮断リレー78の各々は、検知用ハーネス59に接続されていて、これら上昇側遮断リレー77および下降側遮断リレー78の各々は、入力線56および出力線57の通電の有無によってそのオンオフが制御されるように構成されている。
【0099】
具体的には、入力線56および出力線57を電流が流れている時は、上昇側遮断リレー77および下降側遮断リレー78の双方はオン(昇降制御回路が通電可能な状態)となり、入力線56および出力線57を流れる電流が遮断された時は、上昇側遮断リレー77および下降側遮断リレー78の双方はオフ(昇降制御回路が通電不能な状態)となるように構成されている。
【0100】
このような通電遮断回路76によれば、既存の昇降制御回路に挟み込むだけで実現できる。簡単な電気回路で、キャブ6の落下の検知から即時にその落下を抑制できる。従って、安価かつ簡単でありながら、キャブ6の落下抑制を効果的に実行できる。
【0101】
(キャブの昇降)
図9に、キャブ6が上昇している時の状態を示す。入力線56および出力線57は、油圧ショベル1の運転中は常に通電されるように構成されている。従って、通常の状態では、上昇側遮断リレー77および下降側遮断リレー78の双方が作動してオンの状態となっている。
【0102】
上昇側リレー74がオンになると、上昇側ソレノイド87aに通電されるので、電磁方向制御弁87は中立位置から第1接続位置(パラレル接続)に切り替わり、パイロット油圧がAポートから第1パイロット管路86aに供給される。それに伴ってディスクブレーキ43にも第1バイパス管路88を通じて圧油が供給されるので、油圧シリンダ33の上昇に先立ってディスクブレーキ43の制動が解除される。
【0103】
油圧方向制御弁82は、そのパイロット油圧の供給により、中立位置から第2接続位置(クロス接続)に切り替わる。それにより、シリンダ側管路81aを通じて油圧シリンダ33に圧油が供給されて油圧シリンダ33が伸び、キャブ6は上昇する。
【0104】
一方、キャブ6が下降する時には、下降側リレー75がオン(上昇側リレー74はオフ)になって下降側ソレノイド87bに通電される。それにより、電磁方向制御弁87は中立位置から第1接続位置(クロス接続)に切り替わり、パイロット油圧はBポートから第2パイロット管路86bに供給される。それに伴ってディスクブレーキ43にも第2バイパス管路89を通じて圧油が供給される。油圧シリンダ33の下降に先立って、ディスクブレーキ43の制動が解除される。
【0105】
油圧方向制御弁82は、そのパイロット油圧の供給により、中立位置から第1接続位置に切り替わり、ロッド側管路81bを通じて油圧シリンダ33に圧油が供給される。それにより、油圧シリンダ33が縮んでキャブ6が下降する。
【0106】
(昇降中のキャブの落下)
図10に、昇降中にキャブ6が落下した時の状態を示す。図10は、キャブ6の上昇中に上側連結部が破損して上部コネクタ53aが分離した場合を示している。なお、キャブ6の下降中や、下側連結部が破損して下部コネクタ53bが分離した場合も、キャブ6の落下に対する対応は同じなので、その説明は省略する。
【0107】
上部コネクタ53aの分離と同時に、入力線56および出力線57を流れる電流が遮断される。それにより、直ちに上昇側遮断リレー77および下降側遮断リレー78の双方がオフになり、昇降制御回路の通電が遮断される。そして、電磁方向制御弁87は中立位置に切り替わる。
【0108】
その結果、第1パイロット管路86aおよび第2パイロット管路86bの双方のパイロット油圧の供給が無くなり、油圧方向制御弁82に供給されているパイロット油圧も作動油タンク85にリターンされる。それにより、ディスクブレーキ43への圧油の供給も無くなる。従って、ディスクブレーキ43は制動される。
【0109】
物理的に接続されている落下検知コネクタ53の分離による通電の遮断によって作動するので、キャブ6の落下の検知からディスクブレーキ43の作動開始までに時間的なロスはほとんどない。そして、油圧制御であっても、ディスクブレーキ43がネガティブ式であり、圧油を除くことで制動するので、作動開始から制動するまでの応答性に優れる。しかも、円滑に制動できるので、制動時の衝撃も抑制できる。
【0110】
従って、キャブ6が落下し始めると直ちにディスクブレーキ43の制動が始まるので、キャブ6が一気に落下するのを防止でき、落下による衝撃を抑制できる。オペレータの操作とは無関係で機械的に作動するので、落下開始から瞬時(例えば0.2秒)に、そして、正確に制動できる。
【0111】
<キャブの落下抑制制御の具体例>
図11に、キャブ6の落下抑制制御の具体例を示す。油圧ショベル1の主電源が投入されると(ステップS1)、それに伴って落下検知手段に通電される(ステップS2)。落下検知手段の通電は、主電源の投入に連動しており、油圧ショベル1の作動中は常時保持される。
【0112】
そうして、コントローラ73により、切替スイッチ71のオンオフが判定される(ステップS3)。常態の切替スイッチ71はオフであり、切替スイッチ71をオンに切り替えることでキャブ6の昇降が可能になる。アタッチメント4等の制御は、切替スイッチ71がオフの時に可能となる。
【0113】
そして、切替スイッチ71がオンの時に、コントローラ73により、昇降ボタン72の押下が判定される(ステップS4)。昇降ボタン72は、上昇または下降のいずれか一方を選択して操作するように構成されるとともに、押下によってオンになり、押下を解除、つまり昇降ボタン72から指を離すとオフになるように構成されている。
【0114】
昇降ボタン72が押下されると、コントローラ73により、電磁方向制御弁87が中立位置からキャブ6を上昇または下降させる昇降位置(第1位置または第2位置)に切り替えられる(ステップS5)。それに伴い、ディスクブレーキ43の制動が解除され(ステップS6)、油圧シリンダ33が伸縮してキャブ6の昇降が開始する(ステップS7)。
【0115】
昇降ボタン72の押下が継続されている間は、油圧シリンダ33は伸縮してキャブ6は昇降する(ステップS8でNo)。そして、昇降ボタン72の押下が解除されると(ステップS8でYes)、電磁方向制御弁87が昇降位置から中立位置に切り替わり、ディスクブレーキ43が制動して油圧シリンダ33の伸縮が停止する(ステップS9,S10,S11)。
【0116】
一方、キャブ6の昇降中にキャブ6の落下が発生すると(ステップS12でYes)、落下検知コネクタ53が分離する(ステップS13)。それにより、電磁方向制御弁87が昇降位置から中立位置に切り替わり、ディスクブレーキ43が制動して油圧シリンダ33の伸縮が停止する(ステップS9,S10,S11)。
【0117】
このとき、上述したように、ディスクブレーキ43が即時に制動するように工夫されているので、キャブ6の落下開始直後に制動でき、キャブ6の落下による衝撃を抑制できる。
【0118】
<分離検出器の別形態>
上述した実施形態では、分離検出器として、検知用ハーネス59で接続した落下検知コネクタ53を例示した。この構成は、1本のハーネスと物理的な電気的接続を利用しているので、利便性や機能性に優れるが、分離検出器はこれに限るものではない。分離検出器の別形態を例示する。
【0119】
図12の(a)に、近接センサの利用例を示す。図例では、可動側連結ブラケット34等の非落下側100に近接センサ103を取り付け、不動側連結ブラケット35等の落下側101にストライカ104を取り付けている(取り付けは逆であってもよい)。キャブ6の落下が発生し、ストライカ104が近接センサ103から離れることでそのキャブ6の落下を検知する。近接センサ103を利用した分離検出器によれば、非接触型であるので、多少ずれ等が生じても性能を維持できる。従って、耐久性に優れる。
【0120】
図12の(b)に、光電センサの利用例を示す。図例では、非落下側100に光電センサ105を取り付け、落下側101にストライカ106を取り付けている(取り付けは逆であってもよい)。光電センサ105は、近接センサ103よりもストライカ106の検知距離が長いので、光電センサ105とストライカ106との間の間隔を大きく設定できる。従って、ズレが大きくても性能を維持でき、衝撃や振動の影響を受け難い利点がある。
【0121】
図12の(c)に、リミットスイッチの利用例を示す。図例では、非落下側100にリミットスイッチ107を取り付け、落下側101にストライカ108を取り付けている(取り付けは逆であってもよい)。リミットスイッチ107は、落下検知コネクタ53と同様に接触型であるので、分離が即時に検出でき、機能性に優れる。リミットスイッチ107であれば、安価で多種多様なタイプが存在しており、設置し易い利点がある。
【0122】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0123】
例えば、実施形態では油圧ショベルを例示したが、作業機械はクレーンであってもよい。その用途も建設作業に限らない。アタッチメントを取り替えることにより、リサイクル作業など、他の用途に用いる作業機械にも開示する技術は適用できる。
【0124】
実施形態では、支持補助装置40のブレーキを利用したが、これとは別にキャブ落下抑制専用のブレーキを設置してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 油圧ショベル
6 キャブ
7 キャブ昇降機
10 キャブデッキ
16 支持ピラー
17 上側支持ブラケット
20 サポート台
23 下側支持ブラケット
30 昇降機構
31 ガイドレール
32 LMガイド
33 油圧シリンダ
33a シリンダ部
33b ロッド部
34 可動側連結ブラケット
35 不動側連結ブラケット
40 支持補助装置
41 補助ピラー
42 クランププレート(クランプ部)
43 ディスクブレーキ
43a パッド部
50 キャブ落下検知手段
51 第1部材
52 第2部材
53 落下検知コネクタ(分離検出器)
53a 上部コネクタ
53b 下部コネクタ
54 上部取付ブラケット
55 下部取付ブラケット
56 入力線
57 出力線
58 第3部材
59 検知用ハーネス
60 上部固定部材
61 下部固定部材
71 切替スイッチ
72 昇降ボタン
73 コントローラ
74 上昇側リレー
75 下降側リレー
76 通電遮断回路
77 上昇側遮断リレー
78 下降側遮断リレー
81 駆動系油圧回路
82 油圧方向制御弁
86 制御系油圧回路
86a 第1パイロット管路
86b 第2パイロット管路
87 電磁方向制御弁
87a 上昇側ソレノイド
87b 下降側ソレノイド
88 第1バイパス管路
89 第2バイパス管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12