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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099214
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20240718BHJP
【FI】
A61M25/10 510
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002991
(22)【出願日】2023-01-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】508303324
【氏名又は名称】富士システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 篤志
(72)【発明者】
【氏名】根本 健一
(72)【発明者】
【氏名】村上 良太
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB03
4C267BB05
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC26
(57)【要約】
【課題】バルーンの偏膨張を抑制することができるバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】本体チューブ12の外周に沿ってバルーン16が取り付けられたバルーンカテーテル10であって、バルーン16は、収縮しているときには円筒状に形成され、流体が送り込まれることによって本体チューブ12の径方向外側へ向けて膨張可能な膨張部16a、16d、16eと、膨張部16a、16d、16eの内周面において本体チューブ12の周方向に沿って形成され、本体チューブ12の軸方向に沿った幅及び本体チューブ12の径方向に沿った高さを有するリブ40と、を備え、膨張部16a、16d、16eの肉厚は、本体チューブ12の軸方向における中央部16aから本体チューブ12の先端側16d及び後端側16eへ向かうにつれて厚く形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル本体の外周に沿ってバルーンが取り付けられたバルーンカテーテルであって、前記バルーンは、
収縮しているときには円筒状に形成され、流体が送り込まれることによって前記カテーテル本体の径方向外側へ向けて膨張可能な膨張部と、
前記膨張部の内周面において前記カテーテル本体の周方向に沿って形成され、前記カテーテル本体の軸方向に沿った幅及び前記カテーテル本体の径方向に沿った高さを有するリブと、を備え、
前記膨張部の肉厚は、前記カテーテル本体の軸方向における中央部から前記カテーテル本体の先端側及び後端側へ向かうにつれて厚く形成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記リブは、前記カテーテル本体の軸方向に沿って複数形成され、
前記カテーテル本体の先端側及び後端側の前記リブの幅は、前記中央部の側の前記リブの幅よりも広くなるように形成されている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記カテーテル本体の先端側及び後端側の前記リブの高さは、前記中央部の側の前記リブの高さよりも高くなるように形成されている、請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテル本体の軸方向に沿って隣り合う前記リブの間隔は、前記カテーテル本体の先端側及び後端側における間隔が、前記中央部の側の間隔よりも狭くなるように形成されている、請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルに設けられたバルーンは、カテーテルの留置固定及び血管や消化管等の管腔の閉塞のために使用されている。例えば、排尿障害がある患者や全身麻酔を行う患者の尿路確保及び排尿目的のために膀胱留置カテーテル(通称:フォーリーカテーテル)が使用されている。具体的には、膀胱留置カテーテルを外導尿口から挿入し、尿道を経由して膀胱内へとカテーテル先端を到達させ、カテーテル先端に取り付けられたバルーンを膀胱内で膨張させることによって、膀胱留置カテーテルが膀胱内から滑脱することを防いで、これを留置固定する。これによって、カテーテル先端側に形成された導尿用の側孔からカテーテル内を通じて尿を体外に排出させることができる。
【0003】
カテーテル先端に取り付けられたバルーンは、空気や液体といった流体を送りこむことによってチューブ状から球状へと膨張する。このとき、バルーンは、カテーテル本体の外周側に全体的に均一に膨張するのではなく、一部分だけが偏って大きく膨張する、いわゆる、偏膨張が生じる場合がある。偏膨張が発生すると、カテーテル本体の中心軸線と偏膨張したバルーンの中心軸線との間にズレが生じるため、カテーテルの留置固定が不安定になる。この結果、カテーテルが滑脱し、バルーンによる管腔閉鎖が不完全となることに起因する液漏れが生じる場合がある。
【0004】
特許文献1には、シャフトチューブの先端部付近にバルーンチューブを備えたカテーテルにおいて、シャフトチューブの外径より小さい内径を持ったバルーンチューブをシャフトチューブに弾性的に嵌装し、バルーンチューブの両端部にバルーンチューブとシャフトチューブとの間への接着剤の浸入を阻止するための密着部分を備え、この密着部分とシャフトチューブの外周部とを外部接着部によって密閉結合したバルーン付きカテーテルが開示されている。これによって、バルーンチューブとシャフトチューブとの間に接着剤が流れ込むことを抑制し、シャフトチューブとの境界部分となるバルーンチューブの端部に凸凹が生じることを抑制することができるため、バルーンを膨張させたときの偏りを抑制してバルーンを均一に膨張させることができる。しかしながら、血管や消化管等の管腔に挿入できる程度に小型のバルーンの肉厚を均一に成形することは容易ではなく、シャフトチューブとの接着部分を均一に形成したとしても、バルーン自体の肉厚のばらつきによって偏膨張を生じさせ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7-51065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を考慮して、バルーンの偏膨張を抑制することができるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、カテーテル本体の外周に沿ってバルーンが取り付けられたバルーンカテーテルであって、バルーンは、収縮しているときには円筒状に形成され、流体が送り込まれることによってカテーテル本体の径方向外側へ向けて膨張可能な膨張部と、膨張部の内周面においてカテーテル本体の周方向に沿って形成され、カテーテル本体の軸方向に沿った幅及びカテーテル本体の径方向に沿った高さを有するリブと、を備え、膨張部の肉厚は、カテーテル本体の軸方向における中央部からカテーテル本体の先端側及び後端側へ向かうにつれて厚く形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本開示の一態様では、リブは、カテーテル本体の軸方向に沿って複数形成され、カテーテル本体の先端側及び後端側のリブの幅は、中央部の側のリブの幅よりも広くなるように形成されてもよい。
【0009】
さらに、本開示の一態様では、カテーテル本体の先端側及び後端側のリブの高さは、中央部の側のリブの高さよりも高くなるように形成されてもよい。
【0010】
また、本開示の一態様では、カテーテル本体の軸方向に沿って隣り合うリブの間隔は、カテーテル本体の先端側及び後端側における間隔が、中央部の側の間隔よりも狭くなるように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、バルーンカテーテルのバルーンは、収縮しているときには円筒状に形成され、流体が送り込まれることによってカテーテル本体の径方向外側へ向けて膨張可能な膨張部と、膨張部の内周面においてカテーテル本体の周方向に沿って形成され、カテーテル本体の軸方向に沿った幅及びカテーテル本体の径方向に沿った高さを有するリブと、を備える。このため、カテーテル本体の径方向に沿った高さを有するリブによって膨張部とカテーテル本体とが密着することを防止又は抑制することができ、バルーンの膨張部を安定して膨張させることができる。また、膨張部の肉厚は、カテーテル本体の軸方向における中央部からカテーテル本体の先端側及び後端側へ向かうにつれて厚く形成されている。このため、カテーテル本体の先端側及び後端側の膨張部に比べてバルーンへ送り込まれる流体の圧力に対する曲げ剛性が低くなる中央部を先端側及び後端側よりも先に変形させる、すなわち、膨張させることができる。これによって、バルーンの偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0012】
また、本開示の一態様によれば、リブは、カテーテル本体の軸方向に沿って複数形成され、カテーテル本体の先端側及び後端側のリブの幅は、中央部の側のリブの幅よりも広くなるように形成されている。このため、カテーテル本体の先端側及び後端側の膨張部における曲げ剛性を中央部の曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーンへ送り込まれる流体の圧力によって中央部を先端側及び後端側よりも先に膨張させることができ、バルーンの偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0013】
さらに、本開示の一態様によれば、カテーテル本体の先端側及び後端側のリブの高さは、中央部の側のリブの高さよりも高くなるように形成されている。このため、カテーテル本体の先端側及び後端側の膨張部における曲げ剛性を中央部の曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーンへ送り込まれる流体の圧力によって中央部を先端側及び後端側よりも先に膨張させることができ、バルーンの偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0014】
また、本開示の一態様によれば、カテーテル本体の軸方向に沿って隣り合うリブの間隔は、カテーテル本体の先端側及び後端側における間隔が、中央部の側の間隔よりも狭くなるように形成されている。このため、カテーテル本体の先端側及び後端側の膨張部においてリブの数を増やすことができ、これらの側における曲げ剛性を中央部の曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーンへ送り込まれる流体の圧力によって中央部を先端側及び後端側よりも先に膨張させることができ、バルーンの偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図を示す。
図2図2は、図1のバルーンカテーテルの先端側の軸方向に沿った断面図を示す。
図3図3は、図1のバルーンの軸方向に沿った断面図を示す。
図4図4は、第1変形例に係るバルーンの軸方向に沿った断面図を示す。
図5図5は、第2変形例に係るバルーンの軸方向に沿った断面図を示す。
図6図6は、第3変形例に係るバルーンの軸方向に沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るバルーンカテーテルを説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテル10の側面図を示す。ここでは、一例として膀胱留置カテーテルとして使用されるバルーンカテーテル10を示す。バルーンカテーテル10は、使用者の外導尿口から挿入し、その先端を膀胱へと到達させるためのカテーテル本体としての本体チューブ12と、本体チューブ12の先端側に取り付けられ、液体又は気体といった流体が送り込まれることによって膨張可能に形成されたバルーン16と、本体チューブ12の後端側と接続され、バルーン16に流体を送り込むと共に、使用者の膀胱内の尿を排出するための端末部14と、を備える。
【0018】
本体チューブ12は、使用者の外導尿口に挿入できる程度に小さい外径の細長形状を有し、樹脂等によって弾性変形可能に形成されている。図2に示すように、本体チューブ12は、その内部において軸方向に沿って管状に形成され、膀胱から導入された尿を通過させるためのメインルーメン32を備える。また、本体チューブ12は、その内部においてメインルーメン32と並行して管状に形成され、バルーン16を膨張又は収縮させるためにバルーン16へ流体を送り込む、又は、バルーン16から流体を吸い出すためのサブルーメンとしてのバルーンルーメン34を備える。このように、本体チューブ12は、メインルーメン32とバルーンルーメン34とを備えるマルチルーメンチューブとして構成されている。
【0019】
図1に示すように、端末部14には、メインルーメン32(図2参照)の後端部と接続されると共に、その後端に蓄尿バッグの採尿チューブ(何れも図示省略)が接続される尿排出口22を有する尿排出ライン18が形成されている。また、端末部14には、バルーンルーメン34(図2参照)の後端部と接続され、その後端部に、本体チューブ12のサイズを視認するためのカラーコード24と、バルーンルーメン34に流体(滅菌水)を送るためのシリンジやポンプ等の器具(図示省略)を連結するための弁26を備えたバルーンライン20が形成されている。弁26は、シリンジ等の器具を差し込むと開放し、器具を抜くと閉鎖するように構成されている。このように構成することによって、弁26に差し込んだ器具(シリンジ)からバルーン16内に滅菌水を注入してバルーンを膨張させ、シリンジを抜くことによってバルーン16を膨張した状態に保つことができる。
【0020】
図2に示すように、本体チューブ12の先端側の側部には、メインルーメン32と連通し、膀胱から導入される尿を通過させるための導尿用側孔28が形成されている。また、本体チューブ12の先端には、外側形状が本体チューブ12の外径と同一の外径を有する半球状に形成されたラウンドチップ30が取り付けられている。ラウンドチップ30は、メインルーメン32及びバルーンルーメン34の先端を閉塞するように本体チューブ12に取り付けられており、バルーンルーメン34側にはこの先端を閉塞するための目止め部30aを有する。ラウンドチップ30の外側形状を本体チューブ12の外径と同一の外径を有する半球状に形成することによって、本体チューブ12を尿道内で移動させる際の抵抗が増加することを抑制し、本体チューブ12をスムーズに挿入することができる。
【0021】
本体チューブ12は、その内部にメインルーメン32及びバルーンルーメン34と並行に形成された細長棒状の造影ライン36を有する。造影ライン36は、造影剤の成分を含む樹脂によって形成されている。このため、バルーンカテーテル10が挿入された使用者をレントゲン撮影すると、造影ライン36を白く映し出すことができる。これによって、使用者の体内におけるバルーンカテーテル10の位置を適切に把握することができる。
【0022】
本体チューブ12の導尿用側孔28よりも後端側の側部には、バルーンルーメン34と連通する1つ又は複数のバルーン用側孔38が形成されている。バルーン用側孔38を複数形成する場合は、本体チューブ12の軸方向の同じ位置においてその周方向に沿ってバルーン用側孔38を複数形成することが好適である。バルーン16は、収縮している状態では薄肉の円筒チューブ状に形成され、バルーン用側孔38を覆うように本体チューブ12の外側に取り付けられている。
【0023】
バルーン16は、円筒チューブ状の外筒部17を備え、外筒部17は、その軸方向先端側及び後端側において本体チューブ12に接着するための先端接着部16b及び後端接着部16cを有する。先端接着部16b及び後端接着部16cの内周面は、接着剤42、44を介して本体チューブ12の外周面に接着固定される。ここで、接着された本体チューブ12と先端接着部16b及び後端接着部16cとの境目に段差が生じないように、先端側の接着剤42及び後端側の接着剤44の接着後の外周形状が、それぞれ本体チューブ12の先端側及び後端側へ向けてテーパ状となるように形成されている。これによって、本体チューブ12及びバルーン16を尿道内で移動させる際の抵抗が増加することを抑制し、本体チューブ12及びバルーン16を膀胱へとスムーズに移動させることができる。
【0024】
図3に示すように、外筒部17は、また、先端接着部16bと後端接着部16cとの間に形成された、膨張部16a、16d、16eを有する。膨張部16a、16d、16eは、バルーン用側孔38を通じて滅菌水が送り込まれることによって、本体チューブ12の径方向外側へ向けて膨張可能に形成されている。バルーンの膨張部16a、16d、16eにおける肉厚は、本体チューブ12及びバルーン16の軸方向における中央部16aからバルーン16の先端側及び後端側へ向かうにつれて、先端側及び後端側の膨張部16d、16eの肉厚T2、T3が中央部16aの肉厚T1よりも徐々に厚くなるように形成されている。具体的には、中央部16aの肉厚T1を、膨張部16d、16eの最先端及び最後端における肉厚の1/2から3/4とすることが好適である。
【0025】
バルーン16の製造方法は様々あるが、後述するリブ40を設けるバルーン16では、コンプレッション成形やトランスファー成形が好適である。これらの成形では、下金型、上金型及びピンを用いてバルーン16が製造される。この際に、ピンの位置がずれることを防止するために、ピンの一端又は両端は下金型及び上金型に固定される。しかしながら、ピンの中心部は固定することができないため、特に小型で肉厚が均一な一般的なバルーンでは、成型に用いる比較的小さなピンは原料の圧力によって湾曲しやすい場合がある。この結果、ピンが湾曲した部分のバルーンはピンの湾曲方向に偏り、肉厚が変化する場合があるため、尿道等の管腔に挿入できる程度に小型のバルーンの肉厚を均一に成形することは容易ではない。一方、本発明では、湾曲しやすいピンの中心部を太くすることができるため、一般的なバルーンのためのピンよりも湾曲が生じにくく、バルーン16の寸法精度を確保することができる。また、中央部16aへ向かうにつれて肉厚が薄くなるような金型を用いてバルーン16の成型を行うことによって、中央部16aの肉厚T1に一定程度のばらつきが生じる場合であっても、肉厚T1がバルーン16の先端側及び後端側の肉厚T2、T3以下になる様に肉厚を成型することができる。これによって、バルーン16を偏膨張させること無く、バルーン16の中央部16aから先端側及び後端側へ向かう順番で均一に膨張させることができる。
【0026】
バルーン16は、また、膨張部16a、16d、16eの内周面においてバルーン16の内周方向、すなわち、本体チューブ12の外周方向に沿って形成されたリング形状のリブ40a、40b、40cを備える。リブ40a、40b、40cは、本体チューブ12の軸方向かつ径方向に沿って、すなわち周方向に直交する方向に沿って切断した断面が半円形状に形成されており、本体チューブ12及びバルーン16の軸方向に沿った幅BC、BM、BS及び本体チューブ12及びバルーン16の径方向に沿った高さHC、HM、HSを有する。バルーン16は、リブ40a、40b、40cを備えることによって、膨張部16a、16d、16eの内周面と本体チューブ12の外側面とが密着することを抑制又は防止することができる。なお、ここでは、リブ40a、40b、40cの断面形状は、半円形状であるとして説明するが、これに限らず、例えば、高さと幅を有する断面三角形状や断面四角形状に形成されてもよい。
【0027】
リブ40は、バルーン16の軸方向に沿って複数形成されている。具体的には、中央部16a側のリブ40aと、先端側16d及び後端側16eのリブ40cと、これらの間に位置する中間部分Mのリブ40bとが中央部16aに対して前後対称、すなわち、先端側16dと後端側16eとが対称になるように配置されている。ここで、中央部16a側のリブ40aと中間部分Mのリブ40bとの間隔は、中央部16aに近い2つのリブ40aの間隔よりも狭くなるように形成されている。また、中間部分Mのリブ40bと先端側16d又は後端側16eのリブ40cとの間隔は、中央部16a側のリブ40aと中間部分Mのリブ40bとの間隔よりも狭くなるように形成されている。このため、先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおけるリブ40の数を増やすことができ、これらの膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16a側を先端側16d及び後端側16eよりも先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0028】
さらに、リブ40a、40b、40cの幅BC、BM、BSは、膨張部16a、16d、16eの中央部16a側から先端側16d及び後端側16eへ向かうにつれて幅広になるように形成されている(BC<BM<BS)。このため、先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16a側を先端側16d及び後端側16eよりも先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0029】
また、リブ40a、40b、40cの高さHC、HM、HSは、膨張部16a、16d、16eの中央部16a側から先端側16d及び後端側16eへ向かうにつれて高くなるように形成されている(HC<HM<HS)。このため、先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16a側を先端側16d及び後端側16eよりも先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。また、先端側16d及び後端側16eのリブ40cの幅BSを広くし、かつ、高さHSを高くすることによって、バルーン16の先端接着部16b及び後端接着部16cを本体チューブ12の外周面に接着する際に先端側の接着剤42及び後端側の接着剤44が膨張部16a、16d、16eの側へ入り込むのを抑制又は防止することができると共に、接着代を均一化させることができる。
【0030】
続いて、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の作用及び効果を説明する。
【0031】
本実施形態によれば、バルーンカテーテル10のバルーン16は、収縮しているときには円筒状に形成され、滅菌水が送り込まれることによって本体チューブ12の径方向外側へ向けて膨張可能な膨張部16a、16d、16eと、膨張部16a、16d、16eの内周面において本体チューブ12の周方向に沿って形成され、本体チューブ12の軸方向に沿った幅BC、BM、BS及び本体チューブ12の径方向に沿った高さHC、HM、HSを有するリブ40a、40b、40cと、を備える。このため、本体チューブ12の径方向に沿った高さを有するリブ40a、40b、40cによって膨張部16a、16d、16eと本体チューブ12とが密着することを防止又は抑制することができ、バルーン16の膨張部16a、16d、16eを安定して膨張させることができる。
【0032】
さらに、本実施形態によれば、バルーン16の膨張部16a、16d、16eの肉厚は、本体チューブ12の軸方向における中央部16aから本体チューブ12の先端側16d及び後端側16eへ向かうにつれて厚く形成されている(T2、T3>T1)。このため、本体チューブ12の先端側及び後端側の膨張部16d、16eに比べてバルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力に対する曲げ剛性が低くなる中央部16aを先に変形させる、すなわち、膨張させることができる。これによって、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。一般的には、バルーンは一定程度膨張すると、偏膨張が改善されていく。しかしながら、バルーンの偏膨張が改善される程度にまで膨張させると、バルーンの強度は低下し破裂しやすくなる。これに対して、本実施形態に係るバルーン16であれば、偏膨張を抑制することができるため、膨張した状態でもバルーン16の強度に余裕を持たせることができ、破裂のリスクを低減することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、リブ40a、40b、40cは、本体チューブ12の軸方向に沿って複数形成され、本体チューブ12の先端側16d及び後端側16eのリブ40b、40cの幅BM、BSは、中央部16aの側のリブ40aの幅BCよりも広くなるように形成されている。このため、本体チューブ12の先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16aを先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、本体チューブ12の先端側16d及び後端側16eのリブ40b、40cの高さHM、HSは、中央部16aの側のリブ40aの高さHCよりも高くなるように形成されている。このため、本体チューブ12の先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる流体の圧力によって中央部16aを先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、中央部16a側のリブ40aと中間部分Mのリブ40bとの間隔は、中央部16aに近い2つのリブ40aの間隔よりも狭くなるように形成されている。また、中間部分Mのリブ40bと先端側16d又は後端側16eのリブ40cとの間隔は、中央部16a側のリブ40aと中間部分Mのリブ40bとの間隔よりも狭くなるように形成されている。このため、先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16a側を先端側16d及び後端側16eよりも先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0036】
以上の説明のとおり、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、バルーン16の偏膨張を抑制して、これを均一に膨張させることができる。
【0037】
(第1変形例)
以下、本実施形態に係るバルーン16の第1変形例から第3変形例について説明する。これらの変形例では、リブ60、70、80の形状及び配置だけが異なる。本実施形態と同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
図4には、第1変形例に係るバルーン16を示す。ここでは、リブ60は、中央部16a側のリブ60aと、先端側16d及び後端側16eのリブ60dと、これらの間に位置する中間部分M1、M2の2箇所に形成されたリブ60b、60cとが中央部16aに対して先端側16dと後端側16eとが対称になるように配置されている。ここで、中間部分M1、M2の2箇所のリブ60b、60cの間隔は、中央部16aのリブ60aと中間部分M1、M2のうち中央部16aに近い側のリブ60bとの間隔よりも狭くなるように形成されている。また、先端側16d又は後端側16eのリブ60dと中間部分M1、M2のうちこれらに近い側のリブ60cとの間隔は、中間部分M1、M2の2箇所のリブ60b、60cの間隔よりも狭くなるように形成されている。
【0039】
さらに、リブ60a、60b、60c、60dの幅BC、BM1、BM2、BSは、膨張部16a、16d、16eの中央部16a側から先端側16d及び後端側16eへ向かうにつれて幅広になるように形成されている(BC<BM1<BM2<BS)。また、リブ60a、60b、60c、60dの高さHC、HM1、HM2、HSは、膨張部16a、16d、16eの中央部16a側から先端側16d及び後端側16eへ向かうにつれて高くなるように形成されている(HC<HM1<HM2<HS)。第1変形例に係るバルーン16によれば、先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16a側を先端側16d及び後端側16eよりも先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0040】
(第2変形例)
図5には、第2変形例に係るバルーン16を示す。本実施形態と同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第1変形例と同様に、リブ70は、中央部16a側のリブ70aと、先端側16d及び後端側16eのリブ70dと、これらの間に位置する中間部分M1、M2の2箇所に形成されたリブ70b、70cとが中央部16aに対して先端側16dと後端側16eとが対称になるように配置されている。ここで、中間部分M1、M2の2箇所のリブ70b、70cの間隔は、中央部16aのリブ70aと中間部分M1、M2のうち中央部16aに近い側のリブ70bとの間隔よりも狭くなるように形成されている。また、先端側16d又は後端側16eのリブ70dと中間部分M1、M2のうちこれらに近い側のリブ70cとの間隔は、中間部分M1、M2の2箇所のリブ70b、70cの間隔よりも狭くなるように形成されている。
【0041】
さらに、リブ70a、70b、70c、70dの幅BC、BM1、BM2、BSは、膨張部16a、16d、16eの中央部16a側から先端側16d及び後端側16eへ向かうにつれての幅広になるように形成されている(BC<BM1<BM2<BS)。一方、リブ70a、70b、70c、70dの高さHAは、全てのリブ70a、70b、70c、70dで同一に形成されている。第2変形例に係るバルーン16によれば、先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16a側を先端側16d及び後端側16eよりも先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0042】
(第3変形例)
図6には、第3変形例に係るバルーン16を示す。本実施形態と同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。ここでは、リブ80a、80b、80cは、中央部16a側のリブ80aと、先端側16d及び後端側16eのリブ80cと、これらの間に位置する中間部分Mのリブ80bとが中央部16aに対して前後対称、すなわち、先端側16dと後端側16eとが対称になるように配置されている。ここで、中央部16a側のリブ80aと中間部分Mのリブ80bとの間隔は、中央部16aに近い2つのリブ80aの間隔よりも狭くなるように形成されている。また、中間部分Mのリブ80bと先端側16d又は後端側16eのリブ80cとの間隔は、中央部16a側のリブ80aと中間部分Mのリブ80bとの間隔よりも狭くなるように形成されている。一方、リブ80a、80b、80cの幅BA及び高さHAは、全てのリブ80a、80b、80cで同一に形成されている。
【0043】
第3変形例に係るバルーン16によれば、先端側及び後端側の膨張部16d、16eにおける曲げ剛性を中央部16aの曲げ剛性よりも高くすることができる。これによって、バルーン16へ送り込まれる滅菌水の圧力によって中央部16a側を先端側16d及び後端側16eよりも先に膨張させることができ、バルーン16の偏膨張を抑制して均一に膨張させることができる。
【0044】
なお、ここでは、バルーンカテーテル10は、1本の本体チューブ12にメインルーメン32及びバルーンルーメン34を設けたマルチルーメン型カテーテルであるとして説明したが、これに限らず、例えば、サイズの異なる2本のチューブを同軸上に配置したコアキシャル型カテーテルとされてもよい。
【0045】
以上、バルーンカテーテル10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【符号の説明】
【0046】
10 バルーンカテーテル
12 本体チューブ(カテーテル本体)
16 バルーン
16a 膨張部
16d 膨張部
16e 膨張部
40a-c リブ
60a-d リブ
70a-d リブ
80a-c リブ
BC 幅
BM1 幅
BM2 幅
BS 幅
HC 高さ
HM1 高さ
HM2 高さ
HS 高さ
T1 肉厚
T2 肉厚
T3 肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル本体の外周に沿ってバルーンが取り付けられたバルーンカテーテルであって、前記バルーンは、
収縮しているときには円筒状に形成され、流体が送り込まれることによって前記カテーテル本体の径方向外側へ向けて膨張可能な膨張部と、
前記膨張部の内周面において前記カテーテル本体の周方向に沿って形成され、前記カテーテル本体の軸方向に沿った幅及び前記カテーテル本体の径方向に沿った高さを有するリブと、を備え、
前記膨張部の肉厚は、前記カテーテル本体の軸方向における中央部から前記カテーテル本体の先端側及び後端側へ向かうにつれて厚く形成され、
前記リブは、前記カテーテル本体の軸方向に沿って複数形成され、
前記カテーテル本体の先端側及び後端側の前記リブの幅は、前記中央部の側の前記リブの幅よりも広くなるように形成され、
前記カテーテル本体の先端側及び後端側の前記リブの高さは、前記中央部の側の前記リブの高さよりも高くなるように形成されている、ことを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記カテーテル本体の軸方向に沿って隣り合う前記リブの間隔は、前記カテーテル本体の先端側及び後端側における間隔が、前記中央部の側の間隔よりも狭くなるように形成されている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。