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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099231
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240718BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003025
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手操 亮裕
(72)【発明者】
【氏名】玉井 伸三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊行
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03Y
(57)【要約】
【課題】電力変換器の出力電流における定常偏差をなくすことができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電流制御部8は、交流電流指令値に対する電流検出器5の検出値の偏差を補償するためのフィードバック制御によって、三相交流電圧指令値を生成する。電流制御部8は、正相d軸電流指令値と逆相d軸電流指令値とを合成してd軸電流指令値を生成するとともに、正相q軸電流指令値と逆相q軸電流指令値とを合成してq軸電流指令値を生成する手段と、d軸電流指令値およびq軸電流指令値に対する電流検出器5の検出値の偏差に対して比例積分制御演算を行う手段と、電流検出器5の検出値の偏差を逆相座標系に変換する手段と、逆相座標系に変換された電流検出器の検出値の偏差に対して積分制御演算を行う手段と、比例積分制御演算による演算値と、積分制御演算による演算値とを用いて三相交流電圧指令値を生成する手段とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を三相交流電圧に変換して三相交流電力系統または三相交流負荷に出力する電力変換器と、
前記電力変換器の出力電流を検出する電流検出器と、
前記電力変換器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
交流電流指令値に対する前記電流検出器の検出値の偏差を補償するためのフィードバック制御によって、三相交流電圧指令値を生成する電流制御部と、
前記三相交流電圧指令値に基づいて前記電力変換器の制御信号を生成することにより、前記電力変換器をPWM制御するPWM回路とを含み、
前記交流電流指令値は、正相d軸電流指令値および正相q軸電流指令値、ならびに、逆相d軸電流指令値および逆相q軸電流指令値を含み、
前記電流制御部は、
前記正相d軸電流指令値と前記逆相d軸電流指令値とを合成してd軸電流指令値を生成するとともに、前記正相q軸電流指令値と前記逆相q軸電流指令値とを合成してq軸電流指令値を生成する手段と、
前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に対する前記電流検出器の検出値の偏差に対して比例積分制御演算を行う手段と、
前記電流検出器の検出値の偏差を逆相座標系に変換する手段と、
前記逆相座標系に変換された前記電流検出器の検出値の偏差に対して積分制御演算を行う手段と、
前記比例積分制御演算による演算値と、前記積分制御演算による演算値とを用いて前記三相交流電圧指令値を生成する手段とを含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記電流制御部は、
前記電流検出器により検出される前記出力電流を正相d軸電流および正相q軸電流に変換する第1の座標変換器と、
前記逆相d軸電流指令値および前記逆相q軸電流指令値を正相座標系に変換する第2の座標変換器と、
前記正相d軸電流指令値と前記第2の座標変換器による前記逆相d軸電流指令値とを加算して前記d軸電流指令値を生成するとともに、前記正相q軸電流指令値と前記第2の座標変換器による前記逆相q軸電流指令値とを加算して前記q軸電流指令値を生成する加算器と、
前記d軸電流指令値に対する前記正相d軸電流の偏差および前記q軸電流指令値に対する前記正相q軸電流の偏差に対して比例制御演算を行う第1の補償器と、
前記正相d軸電流の偏差および前記正相q軸電流の偏差に対して積分制御を行う第2の補償器と、
前記正相d軸電流の偏差および前記正相q軸電流の偏差を前記逆相座標系に変換する第3の座標変換器と、
前記逆相座標系に変換された前記正相d軸電流の偏差および前記正相q軸電流の偏差に対して積分制御演算を行う第3の補償器と、
前記第3の補償器による演算値を前記正相座標系に変換する第4の座標変換器と、
前記第1の補償器による演算値と、前記第2の補償器による演算値と、前記第4の座標変換器による演算値との和を二相三相変換することにより、前記三相交流電圧指令値を生成する第5の座標変換器とを含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電流制御部は、
前記電流検出器により検出される前記出力電流を正相d軸電流および正相q軸電流に変換する第1の座標変換器と、
前記逆相d軸電流指令値および前記逆相q軸電流指令値を正相座標系に変換する第2の座標変換器と、
前記正相d軸電流指令値と前記第2の座標変換器による前記逆相d軸電流指令値とを加算して第1のd軸電流指令値を生成するとともに、前記正相q軸電流指令値と前記第2の座標変換器による前記逆相q軸電流指令値とを加算して第1のq軸電流指令値を生成する第1の加算器と、
前記第1のd軸電流指令値に対する前記正相d軸電流の偏差および前記第1のq軸電流指令値に対する前記正相q軸電流の偏差に対して比例制御演算を行う第1の補償器と、
前記正相d軸電流指令値および前記正相q軸電流指令値の各々の高周波成分を減衰させる第1のフィルタと、
前記逆相d軸電流指令値および前記逆相q軸電流指令値の各々の高周波成分を減衰させる第2のフィルタと、
前記第2のフィルタを通過した前記逆相d軸電流指令値および前記逆相q軸電流指令値を前記正相座標系に変換する第3の座標変換器と、
前記第1のフィルタを通過した前記正相d軸電流指令値と前記第3の座標変換器による前記逆相d軸電流指令値とを加算して第2のd軸電流指令値を生成するとともに、前記第1のフィルタを通過した前記正相q軸電流指令値と前記第3の座標変換器による前記逆相q軸電流指令値とを加算して第2のq軸電流指令値を生成する第2の加算器と、
前記第2のd軸電流指令値に対する前記正相d軸電流の偏差および前記第2のq軸電流指令値に対する前記正相q軸電流の偏差に対して積分制御演算を行う第2の補償器と、
前記第2のd軸電流指令値に対する前記正相d軸電流の偏差および前記第2のq軸電流指令値に対する前記正相q軸電流の偏差を前記逆相座標系に変換する第4の座標変換器と、
前記逆相座標系に変換された前記正相d軸電流の偏差および前記正相q軸電流の偏差に対して積分制御演算を行う第3の補償器と、
前記第3の補償器による演算値を前記正相座標系に変換する第5の座標変換器と、
前記第1の補償器による演算値と、前記第2の補償器による演算値と、前記第5の座標変換器による演算値との和を二相三相変換することにより、前記三相交流電圧指令値を生成する第6の座標変換器とを含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電流制御部は、
前記逆相d軸電流指令値および前記逆相q軸電流指令値を正相座標系に変換する第1の座標変換器と、
前記正相d軸電流指令値と前記第1の座標変換器による前記逆相d軸電流指令値とを加算して前記d軸電流指令値を生成するとともに、前記正相q軸電流指令値と前記第1の座標変換器による前記逆相q軸電流指令値とを加算して前記q軸電流指令値を生成する第1の加算器と、
前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値を三相交流電流指令値に変換する第2の座標変換器と、
前記三相交流電流指令値に対する前記電流検出器により検出される前記出力電流の偏差に対して比例制御演算を行う第1の補償器と、
前記三相交流電流指令値に対する前記電流検出器により検出される前記出力電流の偏差を正相d軸電流の偏差および正相q軸電流の偏差に変換する第3の座標変換器と、
前記正相d軸電流の偏差および前記正相q軸電流の偏差に対して積分制御演算を行う第2の補償器と、
前記第2の補償器による演算値を二相三相変換する第4の座標変換器と、
前記三相交流電流指令値に対する前記電流検出器により検出される前記出力電流の偏差を逆相d軸電流の偏差および逆相q軸電流の偏差に変換する第5の座標変換器と、
前記逆相d軸電流の偏差および前記逆相q軸電流の偏差に対して積分制御演算を行う第3の補償器と、
前記第3の補償器による演算値を二相三相変換する第6の座標変換器と、
前記第1の補償器による演算値と、前記第4の座標変換器による演算値と、前記第6の座標変換器による演算値とを加算することにより、前記三相交流電圧指令値を生成する第2の加算器とを含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第2の補償器および前記第3の補償器の少なくとも一方は、積分制御特性に加えて直流以外の成分を減衰させるフィルタ特性を有する、請求項2から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-234298号公報(特許文献1)には、三相電圧指令値に従って三相交流電力を交流電力系統に供給する電力変換器を制御する制御装置が開示されている。この制御装置は、三相交流電流を基準位相に基づいてd軸電流およびq軸電流に変換するdq変換器と、d軸電流指令値に対するd軸電流の偏差に基づいてd軸電圧指令値を生成する電流制御器と、q軸電流指令値に対するq軸電流の偏差に基づいてq軸電圧指令値を生成する電流制御器とを備え、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を補正基準位相に従って逆dq変換して三相電圧指令値を生成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-234298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される制御装置は、正相座標系でのd軸電流の偏差およびq軸電流の偏差を補償するための制御演算を行うことによって三相電圧指令値を生成するように構成されている。
【0005】
一方で、交流電力系統の系統電圧が過渡的に変動したことにより系統電圧が三相不平衡状態となった場合には、正相成分に加えて、逆相成分が発生する。したがって、三相不平衡を取り扱うためには、正相成分の他に、逆相成分を考慮する必要がある。しかしながら、特許文献1では、電力変換器の出力電流の正相成分のみを制御するように構成されるため、出力電流の逆相成分については制御されない。その結果、逆相成分の定常偏差が残ってしまうという問題がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、電力変換器の出力電流における定常偏差をなくすことができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電力変換装置は、直流電圧を三相交流電圧に変換して三相交流電力系統または三相交流負荷に出力する電力変換器と、電力変換器の出力電流を検出する電流検出器と、電力変換器を制御する制御装置とを備える。制御装置は、交流電流指令値に対する電流検出器の検出値の偏差を補償するためのフィードバック制御によって、三相交流電圧指令値を生成する電流制御部と、三相交流電圧指令値に基づいて電力変換器の制御信号を生成することにより、電力変換器をPWM制御するPWM回路とを含む。交流電流指令値は、正相d軸電流指令値および正相q軸電流指令値、ならびに、逆相d軸電流指令値および逆相q軸電流指令値を含む。電流制御部は、正相d軸電流指令値と逆相d軸電流指令値とを合成してd軸電流指令値を生成するとともに、正相q軸電流指令値と逆相q軸電流指令値とを合成してq軸電流指令値を生成する手段と、d軸電流指令値およびq軸電流指令値に対する電流検出器の検出値の偏差に対して比例積分制御演算を行う手段と、電流検出器の検出値の偏差を逆相座標系に変換する手段と、逆相座標系に変換された電流検出器の検出値の偏差に対して積分制御演算を行う手段と、比例積分制御演算による演算値と、積分制御演算による演算値とを用いて三相交流電圧指令値を生成する手段とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電力変換器の出力電流における定常偏差をなくすことができる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2図1に示した電力変換器の構成例を示す回路図である。
図3】実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図4】実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
図5】参考例に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分について同一符号を付して、その説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0011】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。実施の形態1に係る電力変換装置は、例えば、三相交流電力系統1の無効電力を補償する無効電力補償装置として使用される。あるいは、実施の形態1に係る電力変換装置は、図示しない三相交流負荷に電力を供給する給電装置として使用される。
【0012】
図1に示すように、実施の形態1に係る電力変換装置は、リアクトル2と、電力変換器3と、電圧検出器4と、電流検出器5と、制御装置7とを備える。電力変換器3の3つの交流端子は、リアクトル2を介して、U相、V相、W相を有する三相交流電力系統1の三相送電線に接続されている。なお、図1では、電力変換器3はリアクトル2を介して三相交流電力系統1に接続されているが、三相変圧器を介して三相交流電力系統1に接続される構成としてもよい。
【0013】
電力変換器3の直流端子は、バッテリまたはコンデンサなど直流電力を蓄える電力貯蔵装置、あるいは直流電力を発生する直流電源に接続されている。図2は、図1に示した電力変換器3の構成例を示す回路図である。
【0014】
図2に示すように、電力変換器3は、自己消弧型のスイッチング素子を有する。図2の例では、スイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。電力変換器3は、IGBT素子Q1~Q6と、ダイオードD1~D6とを有する。IGBT素子Q1,Q3,Q5のコレクタはともに直流正母線PLに接続され、それらのエミッタはそれぞれ交流端子Tu,Tv,Twに接続される。IGBT素子Q2,Q4,Q6のコレクタはそれぞれ交流端子Tu,Tv,Twに接続され、それらのエミッタは直流負母線NLに接続される。ダイオードD1~D6は、それぞれIGBT素子Q1~Q6に逆並列に接続される。
【0015】
IGBT素子Q1~Q6は、制御装置7から与えられる制御信号(ゲートパルス)によってオンオフが制御される。本実施の形態では、IGBT素子Q1~Q6の制御方式として、PWM(Pulse Width Modulation)制御を適用することができる。
【0016】
電力変換器3は、制御装置7から与えられるゲートパルスに従って、直流電力を三相交流電力に変換する。電力変換器3によって生成された三相交流電力はリアクトル2を介して三相交流電力系統1に供給される。
【0017】
図1に戻って、電圧検出器4は、三相交流電力系統1の三相交流電圧を検出し、その検出値を示す信号を制御装置7に与える。三相交流電圧は、U相電圧Vu、V相電圧VvおよびW相電圧Vwを有する。
【0018】
電流検出器5は、三相交流電力系統1の出力電流(三相交流電流)を検出し、その検出値を示す信号を制御装置7に与える。三相交流電力系統1の出力電流は、U相電流iu、V相電流ivおよびW相電流iwを有する。
【0019】
制御装置7は、位相検出器9と、dq変換器10と、電流制御部8と、加算器11,12と、逆dq変換器13とを含む。
【0020】
位相検出器9は、周知のPLL(Phase Locked Loop)回路またはDFT(Discrete Fourier Transform)回路などを用いて、電圧検出器4の出力信号に基づいて、基準位相θを生成する。基準位相θは、三相交流電力系統1の系統電圧の正相電圧位相である。
【0021】
dq変換器10は、電圧検出器4により検出される三相交流電圧Vu,Vv,Vwを、基準位相(正相電圧位相)θを用いたdq変換(三相二相変換)を行い、正相回転方向に座標変換したd軸電圧Vd(以下、「正相d軸電圧Vd」とも称する)と、正相回転方向に座標変換したq軸電圧Vq(以下、「正相q軸電圧Vq」とも称する)とを算出する。dq変換器10は、三相交流電力系統1の正相電圧と同期した方向に座標変換した正相dqベクトル座標系として構成したものである。以後、正相dqベクトル座標系を、単に「正相座標系」とも称する。固定座標系から正相座標系への座標変換は次式(1)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
電流制御部8は、交流電流指令値に対する電流検出器5の検出値の偏差を小さくするための制御演算により、フィードバック制御量を算出する。交流電流指令値は、正相電流指令値id*,iq*と、逆相電流指令値idn*,iqn*とを含む。正相電流指令値は、正相d軸電流指令値id*および正相q軸電流指令値iq*から構成される。逆相電流指令値は、逆相d軸電流指令値idn*および逆相q軸電流指令値iqn*から構成される。
【0024】
交流電流指令値は、三相交流電力系統1の系統電圧を一定に維持するため、あるいは、電力変換器3に入力される直流電圧を一定に制御するために生成される。交流電流指令値は、一般に、上位コントローラで生成される。電力変換装置により三相交流電力系統1の電圧制御を行う場合には、系統制御系が上位コントローラとされる。
【0025】
電流制御部8は、加算器21,22,25~28と、減算器23,24と、第1補償器CP11,CP12と、第2補償器CP21,CP22と、第3補償器CP31,CP32と、逆dq変換器29,31と、dq変換器30とを含む。
【0026】
逆dq変換器29は、基準位相(正相電圧位相)θを用いた逆dq変換を行うことにより、逆相電流指令値idn*,iqn*を正相座標系へ座標変換する。逆相座標系から正相座標系への座標変換は次式(2)で表される。
【0027】
【数2】
【0028】
加算器21は、次式(3)を用いて、正相d軸電流指令値id*と逆相d軸電流指令値idn*とを加算することにより、d軸電流指令値idpn*を生成する。加算器22は、次式(4)を用いて、正相q軸電流指令値iq*と逆相q軸電流指令値iqn*とを加算することにより、q軸電流指令値iqpn*を生成する。
【0029】
【数3】
【0030】
dq変換器32は、電流検出器5により検出される三相交流電流iu,iv,iwを、式(1)を用いて固定座標系から正相座標系への座標変換(三相二相変換)を行い、正相d軸電流idおよび正相q軸電流iqを算出する。
【0031】
減算器23は、d軸電流指令値idpn*に対する正相d軸電流idの偏差Δid(以下、「正相d軸偏差Δid」とも称する)を算出する(Δid=idpn*-id)。減算器24は、q軸電流指令値iqpn*に対する正相q軸電流iqの偏差Δiq(以下、「正相q軸偏差Δiq」とも称する)を算出する(Δiq=iqpn*-iq)。
【0032】
第1補償器CP11,CP12は、比例要素を持つ補償器である。第1補償器CP11,CP12は、正相d軸偏差Δidおよび正相q軸偏差Δiqを小さくするための比例制御演算を行い、比例制御量を算出する。具体的には、第1補償器CP11は、正相d軸偏差Δidに基づいて、比例制御量Kp・Δidを算出する。第1補償器CP12は、正相q軸偏差Δiqに基づいて、比例制御量Kp・Δiqを算出する。Kpは比例ゲインである。第1補償器CP11,CP12は「第1の補償器」の一実施例に対応する。
【0033】
第2補償器CP21,CP22は、積分要素を持つ補償器である。第2補償器CP21,CP22は、正相d軸偏差Δidおよび正相q軸偏差Δiqを小さくするための積分制御演算を行い、積分制御量を算出する。第2補償器CP21は、正相d軸偏差Δidに基づいて、積分制御量Σ(Ki・Δid)を算出する。第2補償器CP22は、正相q軸偏差Δiqに基づいて、積分制御量Σ(Ki・Δiq)を算出する。Kiは積分ゲインである。なお、第2補償器CP21,CP22は、直流成分以外の周波数成分を除去するためのフィルタ(移動平均フィルタなど)をさらに有していてもよい。第2補償器CP21,CP22は「第2の補償器」の一実施例に対応する。
【0034】
加算器25は、第1補償器CP11からの比例制御量Kp・Δidと、第2補償器CP21からの積分制御量Σ(Ki・Δid)とを加算することにより、正相d軸偏差Δidを低減するためのフィードバック制御のために要求される、正相d軸電圧指令値Vdp*を生成する。加算器28は、第1補償器CP12からの比例制御量Kp・Δiqと、第2補償器CP22からの積分制御量Σ(Ki・Δiq)とを加算することにより、正相q軸偏差Δiqを低減するためのフィードバック制御のために要求される、正相q軸電圧指令値Vqp*を生成する。
【0035】
dq変換器30は、基準位相(正相電圧位相)θと逆方向に回転する逆相電圧位相(-θ)を用いてdq変換を行い、逆相回転方向に座標変換したd軸偏差Δidn(以下、「逆相d軸偏差Δidn」とも称する)と、逆相回転方向に座標変換したq軸偏差Δiqn(以下、「逆相q軸偏差Δiqn」とも称する)とを算出する。dq変換器30は、三相交流電力系統1の逆相電圧と同期した方向に座標変換した逆相dqベクトル座標系として構成したものである。以降、逆相dqベクトル座標系を、単に「逆相座標系」とも称する。正相座標系から逆相座標系への座標変換は次式(5)で表される。
【0036】
【数4】
【0037】
第3補償器CP31,CP32は、積分要素を持つ補償器である。第3補償器CP31,CP32は、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnを小さくするための積分制御演算を行い、積分制御量を算出する。具体的には、第3補償器CP31は、逆相d軸偏差Δidnに基づいて、積分制御量Σ(Ki・Δidn)を算出する。第3補償器CP32は、逆相q軸偏差Δiqnに基づいて、積分制御量Σ(Ki・Δiqn)を算出する。Kiは積分ゲインである。なお、第3補償器CP31,CP32は、直流成分以外の周波数成分を除去するためのフィルタ(移動平均フィルタなど)をさらに有していてもよい。第3補償器CP31,CP32は「第3の補償器」の一実施例に対応する。
【0038】
逆dq変換器31は、式(2)を用いた逆dq変換を行うことにより、第3補償器CP31,CP32による演算値である積分制御量Σ(Ki・Δidn),Σ(Ki・Δiqn)を、逆相座標系から正相座標系へ座標変換する。
【0039】
加算器27は、加算器25からの正相d軸電圧指令値Vdp*に、逆dq変換器31からの積分制御量Σ(Ki・Δidn)を加算することにより、正相成分および逆相成分を含むd軸電圧指令値Vd*を生成する。加算器28は、加算器26からの正相q軸電圧指令値Vqp*に、逆dq変換器31からの積分制御量Σ(Ki・Δiqn)を加算することにより、正相成分および逆相成分を含むq軸電圧指令値Vq*を生成する。
【0040】
加算器11は、加算器27からのd軸電圧指令値Vd*にdq変換器10からのd軸電圧Vdを加算する。加算器12は、加算器28からのq軸電圧指令値Vq*にdq変換器10からのq軸電圧Vqを加算する。
【0041】
逆dq変換器13は、加算器11からのd軸電圧指令値Vd*および加算器12からのq軸電圧指令値Vq*を、逆dq変換(二相三相変換)を行うことにより、三相電圧指令値(U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*およびW相電圧指令値Vw*)を生成する。正相座標系から固定座標系への座標変換(二相三相変換)は次式(6)で表される。三相交流電圧指令値は、PWM回路14に与えられる。
【0042】
【数5】
【0043】
PWM回路14は、三相交流電圧指令値と搬送波(例えば三角波)との比較に基づいて、ゲートパルスを生成する。なお、PWM回路14は、電圧指令値に比例する成分が電力変換器3の交流電圧に含まれるようにゲートパルスが生成できれば良く、搬送波を用いてゲートパルスを生成する方法以外に、予め定められたテーブルを参照して三相交流電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に応じたゲートパルスを生成する方法、または、三相交流電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*の振幅および位相を用いた演算処理によってゲートパルスを生成する方法などを用いることができる。電力変換器3は、ゲートパルスに従って三相交流電力を、リアクトル2を介して三相交流電力系統1に供給する。
【0044】
なお、実施の形態1に係る電力変換装置において、dq変換器32は「第1の座標変換器」に対応し、逆dq変換器29は「第2の座標変換器」に対応し、dq変換器30は「第3の座標変換器」に対応し、逆dq変換器31は「第4の座標変換器」に対応し、逆dq変換器13は「第5の座標変換器」に対応する。加算器21,22は「加算器」に対応する。
【0045】
又、逆dq変換器29および加算器21,22は「d軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する手段」の一実施例に対応する。第1補償器CP11,CP12および第2補償器CP21,CP22は「d軸電流指令値およびq軸電流指令値に対する電流検出器の検出値の偏差に対して比例積分制御を行う手段」の一実施例に対応する。dq変換器30は「電流検出器の検出値の偏差を逆相座標系に変換する手段」の一実施例に対応する。第3補償器CP31,CP32は「逆相座標系に変換された電流検出器の検出値の偏差に対して積分制御演算を行う手段」の一実施例に対応する。加算器25~28は「比例積分制御演算による演算値と積分制御演算による演算値とを用いて三相交流電圧指令値を生成する手段」の一実施例に対応する。
【0046】
以下に、実施の形態1に係る電力変換装置が奏する作用効果について、参考例としての電力変換装置(図5参照)と比較しながら説明する。
【0047】
図5は、参考例に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
【0048】
図5に示すように、参考例に係る電力変換装置は、電力変換器3と、電圧検出器4と、電流検出器5と、制御装置7Aとを備える。参考例に係る電力変換装置は、基本的には図1に示した実施の形態1に係る電力変換装置と同様の構成を備えるが、制御装置7に代えて制御装置7Aを備える点が実施の形態1に係る電力変換装置とは異なっている。
【0049】
制御装置7Aは、位相検出器9と、dq変換器10と、電流制御部8Aと、加算器11,12と、逆dq変換器13と、PWM回路14とを含む。
【0050】
位相検出器9は、電圧検出器4の出力信号に基づいて、基準位相θ(正相電圧位相)を生成する。
【0051】
dq変換器10は、電圧検出器4によって検出される三相交流電圧Vu,Vv,Vwを、式(1)を用いた正相座標系でのdq変換(三相二相変換)により、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに変換する。
【0052】
電流制御部8Aは、交流電流指令値に対する電流検出器5の検出値の偏差を小さくするための制御演算により、フィードバック制御量を算出する。交流電流指令値は、正相d軸電流指令値id*と、正相q軸電流指令値iq*とを含む。
【0053】
電流制御部8Aは、dq変換器70と、減算器71,72と、比例器73,76と、積分器74,77と、加算器75,78とを含む。
【0054】
dq変換器70は、電流検出器5によって検出される三相交流電流iu,iv,iwを、式(1)を用いて固定座標系から正相座標系への座標変換(三相二相変換)を行い、正相d軸電流idおよび正相q軸電流iqを算出する。
【0055】
減算器71は、正相d軸電流指令値id*に対する正相d軸電流idの偏差(正相d軸偏差)Δidを算出する。減算器72は、正相q軸電流指令値iq*に対する正相q軸電流iqの偏差(正相q軸偏差)Δiqを算出する。
【0056】
比例器73は、正相d軸偏差Δidに対する比例制御演算を行い、比例制御量Kp・Δidを算出する。比例器76は、正相q軸偏差Δiqに対する比例制御演算を行い、比例制御量Kp・Δiqを算出する。なお、Kpは比例ゲインである。
【0057】
積分器74は、正相d軸偏差Δidに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δid)を算出する。積分器77は、正相q軸偏差Δiqに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δiq)を算出する。なお、Kiは積分ゲインである。
【0058】
加算器75は、比例器73からの比例制御量Kp・Δidと、積分器74からの積分制御量Σ(Ki・Δid)とを加算することにより、正相d軸偏差Δidを低減するためのフィードバック制御のために要求される、d軸電圧指令値Vd*を生成する。加算器78は、比例器76からの比例制御量Kp・Δiqと、積分器77からの積分制御量Σ(Ki・Δiq)とを加算することにより、正相q軸偏差Δiqを低減するためのフィードバック制御のために要求される、q軸電圧指令値Vq*を生成する。
【0059】
加算器11は、加算器75からのd軸電圧指令値Vd*にdq変換器10からのd軸電圧Vdを加算する。加算器12は、加算器78からのq軸電圧指令値Vq*にdq変換器10からのq軸電圧Vqを加算する。
【0060】
逆dq変換器13は、加算器11からのd軸電圧指令値Vd*および加算器12からのq軸電圧指令値Vq*を、式(6)を用いて正相座標系から固定座標系への座標変換(二相三相変換)を行うことにより、三相交流電圧指令値(U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*およびW相電圧指令値Vw*)を生成する。三相交流電圧指令値は、PWM回路14に与えられる。
【0061】
PWM回路14は、三相交流電圧指令値と搬送波との比較に基づいて、ゲートパルスを生成する。電力変換器3は、ゲートパルスに従って三相交流電力を、リアクトル2を介して三相交流電力系統1に供給する。
【0062】
図5に示すように、参考例に係る電力変換装置では、制御装置7Aは、正相座標系でのd軸偏差Δidおよびq軸偏差Δiqを補償するための制御演算によってd軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*を算出し、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*に基づいて三相交流電圧指令値を生成するように構成されている。
【0063】
一方で、三相交流電力系統1の系統電圧が過渡的に変動することによって、系統電圧が三相不平衡状態となる場合がある。なお、三相平衡状態とは、各相電圧の振幅が等しく、かつ、位相が120°ずつずれている状態である。これに対し、三相不平衡状態とは、各相電圧の振幅が異なる状態、および/または、各相電圧の位相のずれが120°ではない状態である。
【0064】
三相不平衡状態になると、正相成分に加えて、逆相成分および零相成分が発生する。即ち、三相不平衡を取り扱うためには、正相成分の他に、逆相成分および零相成分を考慮する必要がある。ただし、電力変換器3はリアクトル2を介して三相交流電力系統1に接続されているため、電力変換器3は零相電流を出力することができない。そのため、正相成分および逆相成分を制御する必要がある。
【0065】
参考例に係る電力変換装置は、上述したように、電力変換器3の出力電流の正相成分のみを制御するように構成されるため、出力電流の逆相成分については制御されない。その結果、逆相成分の定常偏差が残ってしまうという問題がある。
【0066】
これに対して、実施の形態1に係る電力変換装置では、制御装置7は、正相電流指令値id*,iq*および逆相電流指令値idn*,iqn*を合成して電流指令値を生成するとともに、当該電流指令値に対する正相d軸偏差Δidおよび正相q軸偏差Δiqを、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnに変換し、かつ、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnを補償するための積分制御演算を実行する構成となっている。これによると、逆相電流指令値idn*,iqn*に対する定常偏差をなくすことができる。その結果、三相不平衡状態においても、電流指令値に一致した電力変換器3の出力電流を得ることができる。
【0067】
また、電流検出器5の検出値(三相交流電流)に対して座標変換以外の演算を行わずに、当該検出値をフィードバック制御量の算出に使用するため、三相交流電流の過渡的な検出遅れが発生することなく、高速に制御することができる。さらに、電流検出器5の検出値(三相交流電流)を正相および逆相に分離する処理を必要としないため、制御装置7における演算負荷を小さくすることができる。
【0068】
[実施の形態2]
図3は、実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
【0069】
図3に示すように、実施の形態2に係る電力変換装置は、基本的には図1に示した実施の形態1に係る電力変換装置と同様の構成を備えるが、制御装置7の構成が実施の形態1に係る電力変換装置とは異なっている。
【0070】
制御装置7は、位相検出器9と、電流制御部8と、加算器15と、PWM回路14とを含む。
【0071】
位相検出器9は、電圧検出器4の出力信号に基づいて、基準位相θ(正相電圧位相)を生成する。
【0072】
電流制御部8は、交流電流指令値に対する電流検出器5の検出値の偏差を小さくするための制御演算により、フィードバック制御量を算出する。交流電流指令値は、正相電流指令値id*,iq*と、逆相電流指令値idn*,iqn*とを含む。
【0073】
逆dq変換器29は、式(2)を用いた逆dq変換を行うことにより、逆相電流指令値idn*,iqn*を正相座標系へ変換する。
【0074】
加算器21は、式(3)を用いて、正相d軸電流指令値id*と逆相d軸電流指令値idn*とを加算することにより、d軸電流指令値idpn*を生成する。加算器22は、式(4)を用いて、正相q軸電流指令値iq*と逆相q軸電流指令値iqn*とを加算することにより、q軸電流指令値iqpn*を生成する。
【0075】
固定座標変換器33は、d軸電流指令値idpn*およびq軸電流指令値iqpn*を、式(6)を用いて正相座標系から固定座標系へ座標変換(二相三相変換)することにより、三相電流指令値に変換する。三相交流電流指令値は、電力変換器3の出力電流指令値であり、U相電流指令値iu*、V相電流指令値iv*およびW相電流指令値iw*を有する。
【0076】
減算器34は、U相電流指令値iu*と、電流検出器5によって検出されるU相電流iuとの偏差Δiuを算出する(Δiu=iu*-iu)。減算器35は、V相電流指令値iv*と、電流検出器5によって検出されるV相電流ivとの偏差Δivを算出する(Δiv=iv*-iv)。減算器35は、W相電流指令値iw*と、電流検出器5によって検出されるW相電流iwとの偏差Δiwを算出する(Δiw=iw*-iw)。
【0077】
第1補償器CP11~CP13は、比例要素を有しており、三相交流電流指令値に対する三相交流電流の偏差を小さくするための比例制御演算を行い、比例制御量を算出する。具体的には、第1補償器CP11は、偏差Δiuに基づいて、比例制御量Kp・Δiuを算出する。第1補償器CP12は、偏差Δivに基づいて、比例制御量Kp・Δivを算出する。第1補償器CP13は、偏差Δiwに基づいて、比例制御量Kp・Δiwを算出する。なお、Kpは比例ゲインである。
【0078】
dq変換器39は、偏差Δiu,Δiv,Δiwを、式(1)を用いて固定座標系から正相座標系へdq変換(三相二相変換)することにより、正相d軸偏差Δidpおよび正相q軸偏差Δiqpに変換する。
【0079】
第2補償器CP21,CP22は、積分要素を有しており、正相d軸偏差Δidpおよび正相q軸偏差Δiqpを小さくするための積分制御演算により、積分制御量を算出する。具体的には、第2補償器CP21は、正相d軸偏差Δidpに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δidp)を算出する。第2補償器CP22は、正相q軸偏差Δiqpに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δiqp)を算出する。Kiは積分ゲインである。なお、第2補償器CP21,CP22は、直流以外の成分を除去するためのフィルタ(移動平均フィルタなど)をさらに有していてもよい。
【0080】
逆dq変換器40は、第2補償器CP21,CP22からの積分制御量を、式(6)を用いて正相座標系から固定座標系へ逆dq変換(二相三相変換)することにより、三相分の積分制御量に変換する。
【0081】
加算器37は、第1補償器CP11~CP13による演算値である三相分の比例制御量と、逆dq変換器40による正相成分の積分制御量とを加算することにより、電流偏差Δiu,Δiv,Δiwを低減するためのフィードバック制御のために要求される、三相交流電圧指令値Vup*,Vvp*,Vwp*を生成する。
【0082】
dq変換器41は、偏差Δiu,Δiv,Δiwを固定座標系から逆相座標系へdq座標変換(三相二相変換)することにより、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnに変換する。固定座標系から逆相座標系への座標変換は次式(7)で表される。
【0083】
【数6】
【0084】
第3補償器CP31,CP32は、積分要素を有しており、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnを小さくするための積分制御演算により、積分制御量を算出する。具体的には、第3補償器CP31は、逆相d軸偏差Δidnに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δidn)を算出する。第3補償器CP32は、逆相q軸偏差Δiqnに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δiqn)を算出する。Kiは積分ゲインである。なお、第3補償器CP31,CP32は、直流以外の成分を除去するためのフィルタ(移動平均フィルタなど)をさらに有していてもよい。
【0085】
逆dq変換器42は、第3補償器CP31,CP32からの積分制御量を、逆相座標系から固定座標系へ逆dq変換(二相三相変換)することにより、三相分の積分制御量に変換する。逆相座標系から固定座標系への座標変換は次式(8)で表される。
【0086】
【数7】
【0087】
加算器38は、加算器37からの正相成分の三相交流電圧指令値Vup*,Vvp*,Vwp*と、逆dq変換器42による逆相成分の三相分の積分制御量とを加算することにより、正相成分および逆相成分の電流偏差Δiu,Δiv,Δiwを低減するためのフィードバック制御のために要求される、三相交流電圧指令値(U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、W相電圧指令値Vw*)を生成する。
【0088】
加算器15は、加算器38からの三相電圧指令値に電圧検出器4により検出される三相交流電圧を加算し、三相電圧指令値を生成する。三相交流電圧指令値は、PWM回路14に与えられる。
【0089】
PWM回路14は、三相交流電圧指令値と搬送波との比較に基づいて、ゲートパルスを生成する。なお、PWM回路14は、電圧指令値に比例する成分が電力変換器3の交流電圧に含まれるようにゲートパルスが生成できれば良く、搬送波を用いてゲートパルスを生成する方法以外に、予め定められたテーブルを参照して三相交流電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に応じたゲートパルスを生成する方法、または、三相交流電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*の振幅および位相を用いた演算処理によってゲートパルスを生成する方法などを用いることができる。電力変換器3は、ゲートパルスに従って三相交流電力を、リアクトル2を介して三相交流電力系統1に供給する。
【0090】
なお、実施の形態2に係る電力変換装置において、逆dq変換器29は「第1の座標変換器」に対応し、固定座標変換器33は「第2の座標変換器」に対応し、dq変換器39は「第3の座標変換器」に対応し、逆dq変換器40は「第4の座標変換器」に対応し、dq変換器41は「第4の座標変換器」に対応し、逆dq変換器42は「第5の座標変換器」に対応する。加算器21,22は「第1の加算器」に対応し、加算器37,38は「第2の加算器」に対応する。
【0091】
又、逆dq変換器29および加算器21,22は「d軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する手段」の一実施例に対応する。固定座標変換器33、減算器34~36、第1補償器CP11~CP13、dq変換器39、第2補償器CP21,CP22および逆変換器40は「d軸電流指令値およびq軸電流指令値に対する電流検出器の検出値の偏差に対して比例積分制御を行う手段」の一実施例に対応する。dq変換器41は「電流検出器の検出値の偏差を逆相座標系に変換する手段」の一実施例に対応する。第3補償器CP31,CP32は「逆相座標系に変換された電流検出器の検出値の偏差に対して積分制御演算を行う手段」の一実施例に対応する。加算器37,38は「比例積分制御演算による演算値と積分制御演算による演算値とを用いて三相交流電圧指令値を生成する手段」の一実施例に対応する。
【0092】
以上説明したように、実施の形態2に係る電力変換装置では、制御装置7は、正相電流指令値id*,iq*および逆相電流指令値idn*,iqn*を合成した電流指令値idpn*,iqqn*を、三相交流電流指令値iu*,iv*,iw*に座標変換し、かつ、この三相交流電流指令値iu*,iv*、iw*に対する三相交流電流iu,iv,iwの偏差Δiu,Δiv,Δiwを逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnに変換する。そして、制御装置7は、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnを補償するための積分制御演算を実行する構成となっている。したがって、実施の形態2に係る電力変換装置においても、実施の形態1に係る電力変換装置と同様に、逆相電流指令値idn*,iqn*に対する定常偏差をなくすことができる。
【0093】
さらに、実施の形態2に係る電力変換装置では、三相交流電流指令値iu*,iv*、iw*に対する三相交流電流iu,iv,iwの偏差Δiu,Δiv,Δiwの各々に対して比例制御が実行される。このようにすると、各相電流を個別に制御することができるため、電力変換器3の交流端子Tu,Tv,Tvの各々に生じている外乱に対して適当に対応することが可能となる。
【0094】
また、実施の形態2に係る電力変換装置においても、実施の形態1に係る電力変換装置と同様に、電流検出器5の検出値(三相交流電流)に対して座標変換以外の演算を行わずに、当該検出値をフィードバック制御量の算出に使用するため、三相交流電流の過渡的な検出遅れが発生することなく、高速に制御することができる。
【0095】
なお、偏差Δiu,Δiv,Δiwは交流量であるため、当該偏差を時間積分する積分制御では定常偏差をなくすことができない。そのため、積分制御については、正相成分のd軸偏差およびq軸偏差Δid,Δiq、および逆相成分のd軸偏差Δidnおよびq軸偏差Δiqnに対して実行する構成としている。
【0096】
[実施の形態3]
図4は、実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
【0097】
図4に示すように、実施の形態3に係る電力変換装置は、基本的には図1に示した実施の形態1に係る電力変換装置と同様の構成を備えるが、制御装置7の構成が実施の形態1に係る電力変換装置とは異なっている。
【0098】
制御装置7は、位相検出器9と、電流制御部8と、加算器11,12と、逆dq変換器13と、PWM回路14とを含む。
【0099】
位相検出器9は、電圧検出器4の出力信号に基づいて、基準位相θ(正相電圧位相)を生成する。
【0100】
dq変換器10は、電圧検出器4により検出される三相交流電圧Vu,Vv,Vwを、正相座標系を用いたdq座標変換(三相二相座標変換)により、正相d軸電圧Vdおよび正相q軸電圧Vqに変換する。
【0101】
電流制御部8は、交流電流指令値に対する電流検出器5の検出値の偏差を小さくするための制御演算により、フィードバック制御量を算出する。交流電流指令値は、正相電流指令値id*,iq*と、逆相電流指令値idn*,iqn*とを含む。
【0102】
電流制御部8は、加算器21,22,55,56,62~65と、減算器23,24,58,59と、逆dq変換器29,57と、フィルタ51~54と、第1補償器CP11,CP12と、第2補償器CP21,CP22と、第3補償器CP31,CP32と、dq変換器60と、逆dq変換器61とを含む。
【0103】
逆dq変換器29は、基準位相(正相電圧位相)θを用いて逆dq座標変換を行い、逆相電流指令値idn*,iqn*を正相座標系へ変換する。
【0104】
加算器21は、式(3)を用いて、正相d軸電流指令値id*と逆相d軸電流指令値idn*とを加算することにより、d軸電流指令値idpn*を生成する。加算器22は、式(4)を用いて、正相q軸電流指令値iq*と逆相q軸電流指令値iqn*とを加算することにより、q軸電流指令値iqpn*を生成する。
【0105】
dq変換器32は、電流検出器5によって検出される三相交流電流iu,iv,iwを、式(1)を用いて固定座標系から正相座標系への座標変換(三相二相変換)を行い、正相d軸電流idおよび正相q軸電流iqを算出する。
【0106】
減算器23は、d軸電流指令値idpn*に対する正相d軸電流idの偏差(正相d軸偏差)Δidを算出する。減算器24は、q軸電流指令値iqpn*に対する正相q軸電流iqの偏差(正相q軸偏差)Δiqを算出する。
【0107】
第1補償器CP11,CP12は、正相d軸偏差Δidおよび正相q軸偏差Δiqを小さくするための比例制御演算を行い、比例制御量Kp・Δid,Kp・Δiqを算出する。Kpは比例ゲインである。
【0108】
フィルタ51は、正相d軸電流指令値id*のうち所定の周波数以上の高周波成分を除去する。フィルタ52は、正相q軸電流指令値iq*のうち所定の周波数以上の高周波成分を除去する。フィルタ51,52には、例えば低域通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)または変化率リミッタが用いられる。
【0109】
フィルタ53は、逆相相d軸電流指令値idn*のうち所定の周波数以上の高周波成分を除去する。フィルタ54は、逆相q軸電流指令値iqn*のうち所定の周波数以上の高周波成分を除去する。フィルタ53,54には、例えばLPFまたは変化率リミッタが用いられる。
【0110】
逆dq変換器57は、式(2)を用いて基準位相(正相電圧位相)θを用いた逆dq座標変換を行い、逆相電流指令値idn*,iqn*を正相座標系へ変換する。
【0111】
加算器55は、式(3)を用いて、正相d軸電流指令値id*と逆相d軸電流指令値idn*とを加算することにより、d軸電流指令値idpn*を生成する。加算器56は、式(4)を用いて、正相q軸電流指令値iq*と逆相q軸電流指令値iqn*とを加算することにより、q軸電流指令値iqpn*を生成する。
【0112】
減算器58は、d軸電流指令値idpn*に対する正相d軸電流idの偏差(正相d軸偏差)Δidを算出する。減算器59は、q軸電流指令値iqpn*に対する正相q軸電流iqの偏差(正相q軸偏差)Δiqを算出する。
【0113】
第2補償器CP21,CP22は、正相d軸偏差Δidおよび正相q軸偏差Δiqを小さくするための積分制御演算により、積分制御量Σ(Ki・Δid),Σ(Ki・Δiq)を算出する。Kiは積分ゲインである。なお、第2補償器CP21,CP22は、直流以外の成分を除去するためのフィルタ(移動平均フィルタなど)をさらに有していてもよい。
【0114】
dq変換器60は、式(5)を用いて正相座標系から逆相座標系への座標変換を行い、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnを算出する。
【0115】
第3補償器CP31,CP32は、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnを小さくするための積分制御演算を行い、積分制御量を算出する。具体的には、第3補償器CP31は、逆相d軸偏差Δidnに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δidn)を算出する。第3補償器CP32は、逆相q軸偏差Δiqnに対する積分制御演算を行い、積分制御量Σ(Ki・Δiqn)を算出する。Kiは積分ゲインである。
【0116】
逆dq変換器61は、式(2)を用いた逆dq変換を行うことにより、第3補償器CP31,CP32による演算値である積分制御量Σ(Ki・Δidn),Σ(Ki・Δiqn)を、逆相座標系から正相座標系へ座標変換する。
【0117】
加算器62は、第2補償器CP21からの正相分の積分制御量Σ(Ki・Δid)と、逆dq変換器61からの逆相分の積分制御量Σ(Ki・Δidn)とを加算する。加算器63は、第2補償器CP22からの正相分の積分制御量Σ(Ki・Δiq)と、逆dq変換器61からの逆相分の積分制御量Σ(Ki・Δiqn)とを加算する。
【0118】
加算器64は、第1補償器CP11からの比例制御量Kp・Δidと、加算器62からの積分制御量Σ(Ki・Δid)+Σ(Ki・Δidn)とを加算することにより、正相d軸偏差Δidおよび逆相d軸偏差Δidnを低減するためのフィードバック制御のために要求される、d軸電圧指令値Vd*を生成する。加算器65は、第1補償器CP12からの比例制御量Kp・Δiqと、加算器63からの積分制御量Σ(Ki・Δiq)+Σ(Ki・Δiqn)とを加算することにより、正相q軸偏差Δiqおよび逆相q軸偏差Δiqnを低減するためのフィードバック制御のために要求される、q軸電圧指令値Vq*を生成する。
【0119】
加算器11は、加算器64からのd軸電圧指令値Vd*にdq変換器10からのd軸電圧Vdを加算する。加算器12は、加算器65からのq軸電圧指令値Vq*にdq変換器10からのq軸電圧Vqを加算する。
【0120】
逆dq変換器13は、加算器11からのd軸電圧指令値Vd*および加算器12からのq軸電圧指令値Vq*を正相座標系で逆dq座標変換(二相三相変換)を行うことにより、三相電圧指令値(U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*およびW相電圧指令値Vw*)を生成する。三相交流電圧指令値は、PWM回路14に与えられる。
【0121】
PWM回路14は、三相交流電圧指令値と搬送波(例えば三角波)との比較に基づいて、ゲートパルスを生成する。なお、PWM回路14は、電圧指令値に比例する成分が電力変換器3の交流電圧に含まれるようにゲートパルスが生成できれば良く、搬送波を用いてゲートパルスを生成する方法以外に、予め定められたテーブルを参照して三相交流電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に応じたゲートパルスを生成する方法、または、三相交流電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*の振幅および位相を用いた演算処理によってゲートパルスを生成する方法などを用いることができる。電力変換器3は、ゲートパルスに従って三相交流電力を、リアクトル2を介して三相交流電力系統1に供給する。
【0122】
なお、実施の形態3に係る電力変換装置において、dq変換器32は「第1の座標変換器」に対応し、逆dq変換器29は「第2の座標変換器」に対応し、逆dq変換器57は「第3の座標変換器」に対応し、dq変換器60は「第4の座標変換器」に対応し、逆dq変換器61は「第5の座標変換器」に対応し、逆dq変換器13は「第6の座標変換器」に対応する。加算器21,22は「第1の加算器」に対応し、加算器55.56は「第2の加算器」に対応する。
【0123】
又、逆dq変換器29,57、フィルタ51~54および加算器21,22,55,56は「d軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する手段」の一実施例に対応する。第1補償器CP11,CP12および第2補償器CP21,CP22は「d軸電流指令値およびq軸電流指令値に対する電流検出器の検出値の偏差に対して比例積分制御を行う手段」の一実施例に対応する。dq変換器60は「電流検出器の検出値の偏差を逆相座標系に変換する手段」の一実施例に対応する。第3補償器CP31,CP32は「逆相座標系に変換された電流検出器の検出値の偏差に対して積分制御演算を行う手段」の一実施例に対応する。加算器62~65は「比例積分制御演算による演算値と積分制御演算による演算値とを用いて三相交流電圧指令値を生成する手段」の一実施例に対応する。
【0124】
以上説明したように、実施の形態3に係る電力変換装置では、上述した実施の形態1に係る電力変換装置と同様に、制御装置7は、正相電流指令値id*,iq*および逆相電流指令値idn*,iqn*を合成して電流指令値を生成するとともに、当該電流指令値に対する正相d軸偏差Δidおよび正相q軸偏差Δiqを、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnに変換し、かつ、逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnを補償するための積分制御演算を実行する構成となっている。これによると、逆相電流指令値idn*,iqn*に対する定常偏差をなくすことができる。
【0125】
さらに、実施の形態3に係る電力変換装置においては、積分制御演算を行う第2補償器CP21,CP22および第3補償器CP31,CP32に入力されるd軸偏差およびq軸偏差は、フィルタ51~54を用いて高周波成分が除去された電流指令値と、電流検出器5の検出値とに基づいて算出される。これによると、正相成分の積分制御と、逆相成分の積分制御との間の干渉を抑制することができる。具体的には、正相電流指令値id*,iq*がステップ状に(すなわち、不連続に)変化した場合を想定する。この場合、d軸電流指令値idpn*およびq軸電流指令値iqpn*もステップ状に変化することになる。これを受けて、dq変換器60により演算される逆相d軸偏差Δidnおよび逆相q軸偏差Δiqnもステップ状に変化する。このステップ状に変化する電流偏差Δidn,Δiqnに対する積分制御演算が行われると、逆相成分の積分制御量に過渡応答が発生することがある。すなわち、正相成分の電流指令値の変化によって、逆相成分の積分制御に過渡応答が生じることがある。
【0126】
反対に、逆相電流指令値idn*,iqn*がステップ状に(すなわち、不連続に)変化した場合を想定する。この場合、d軸電流指令値idpn*およびq軸電流指令値iqpn*もステップ状に変化するため、正相d軸偏差Δidおよび正相q軸偏差Δiqもステップ状に変化する。そして、このステップ状に変化する電流偏差Δid,Δiqに対する積分制御演算において、正相成分の積分制御量に過渡応答が発生することがある。すなわち、逆相成分の電流指令値の変化によって、正相成分の積分制御に過渡応答が生じることがある。
【0127】
実施の形態3に係る電力変換装置では、フィルタ51~54によって正相電流指令値id*,iq*および逆相電流指令値idn*,iqn*から高周波成分が除去されるため、正相成分および逆相成分の一方の電流指令値の急激な変化が他方の積分制御に影響を及ぼすことを抑制することができる。すなわち、正相成分の積分制御と逆相成分の積分制御との干渉を抑制することができる。
【0128】
なお、実施の形態3に係る電力変換装置では、正相成分および逆相成分の比例制御については、フィルタを用いることなく、交流電流指令値idpn*,iqpn*に対する電流偏差Δid,Δiqの比例制御演算が実行される。これは、上述した積分制御とは異なり、比例制御には、出力電流の動揺を抑えるために、偏差の大きさに比例して高速に応答することが求められるためである。比例制御にはフィルタを用いないことによって、高速な応答を確保しながら、正相成分と逆相成分との間の電流制御の干渉を抑制することができる。
【0129】
また、実施の形態3に係る電力変換装置においても、実施の形態1に係る電力変換装置と同様に、電流検出器5の検出値(三相交流電流)に対して座標変換以外の演算を行わずに、当該検出値をフィードバック制御量の算出に使用するため、三相交流電流の過渡的な検出遅れが発生することなく、高速に制御することができる。
【0130】
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0131】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1 三相交流電力系統、2 リアクトル、3 電力変換器、4 電圧検出器、5 電流検出器、7,7A 制御装置、8,8A 電流制御部、9 位相検出器、10,30,32,39,41,60 dq変換器、11,12,15,21,22,25~28,37,38,55,56,62~65,75,78 加算器、13,29,31,40,42,57,61 逆dq変換器、14 PWM回路、23,24,34,35,58,59 減算器、33 固定座標変換器、51~54 フィルタ、73,76 比例器、74,77 積分器、CP11~CP13 第1補償器、CP21,CP22 第2補償器、CP31,CP32 第3補償器。
図1
図2
図3
図4
図5