(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099242
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】座席提案システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20230101AFI20240718BHJP
【FI】
G06Q10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003044
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】堤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 孝一
(72)【発明者】
【氏名】大竹 智輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康樹
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA11
5L049AA11
(57)【要約】
【課題】システム利用開始のハードルを下げる。
【解決手段】位置検出部15は、対象者の位置を検出する。座席提案部18は、対象者に対して、複数の座席のなかから着席する座席を提案する。着席判定部16は、位置検出部15が検出した対象者の位置に基づいて、座席提案部18が提案した座席に対象者が着席したか否かを判定する。傾向学習部17は、着席判定部16が判定した結果に基づいて、対象者の傾向を学習する。座席提案部18は、傾向学習部17が学習した対象者の傾向に基づいて、対象者に対して提案する座席を選択する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の位置を検出する位置検出部と、
対象者に対して、複数の座席のなかから着席する座席を提案する座席提案部と、
前記位置検出部が検出した前記対象者の位置に基づいて、前記座席提案部が提案した座席に前記対象者が着席したか否かを判定する着席判定部と、
前記着席判定部が判定した結果に基づいて、前記対象者の傾向を学習する傾向学習部と
を備え、
前記座席提案部は、前記傾向学習部が学習した前記対象者の傾向に基づいて、前記対象者に対して提案する座席を選択する、
座席提案システム。
【請求項2】
前記傾向学習部が学習する前記対象者の傾向は、前記対象者が着席を拒否した座席の近くの座席に着席していた他の対象者についての情報を含む、
請求項1の座席提案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象者が着席する座席を提案する座席提案システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユーザーの作業予定情報に基づき、ユーザーに対して提供する作業を行う場所を含む情報を生成し、ユーザーの私的な情報に基づき、生成された情報を更新する情報提供装置を開示している。
特許文献2は、ユーザーの希望と管理情報とに基づいて各空間の中から第1の空間を選択してユーザーへ提案する第1提案と、ユーザーの希望とは別の観点に基づいて第1の空間と異なる第2の空間を各空間の中から選択してユーザーへ提案する第2提案との少なくともいずれか一方を実行する空間案内システムを開示している。
特許文献3は、ユーザーの快適温度帯データと空席毎の室温データに基づいて、抽出した空席の中から当該ユーザーが快適と感じる温度範囲内または近傍の候補席を1以上選択する座席提案システムを開示している。
特許文献4は、ユーザーの好みの環境条件を満足する位置検知区分が存在すれば、ユーザー端末にお勧め位置として送信される快適環境選択支援装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-140365号公報
【特許文献2】特開2020-119252号公報
【特許文献3】特開2013-185798号公報
【特許文献4】特開2014-214975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の座席提案システムは、提案に必要な情報をあらかじめ詳細に入力しておく必要がある。このため、システム利用開始のハードルが高い。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
座席提案システムは、対象者の位置を検出する位置検出部と、対象者に対して、複数の座席のなかから着席する座席を提案する座席提案部と、前記位置検出部が検出した前記対象者の位置に基づいて、前記座席提案部が提案した座席に前記対象者が着席したか否かを判定する着席判定部と、前記着席判定部が判定した結果に基づいて、前記対象者の傾向を学習する傾向学習部とを備える。前記座席提案部は、前記傾向学習部が学習した前記対象者の傾向に基づいて、前記対象者に対して提案する座席を選択する。
【発明の効果】
【0006】
前記座席提案システムによれば、対象者が提案された座席に着席したか否かを位置検出部が検出した対象者の位置に基づいて判定し、その結果に基づいて対象者の傾向を学習するので、提案に必要な情報をあらかじめ詳細に入力しておく必要がない。これにより、システム利用開始のハードルを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、座席提案システムの対象となるオフィス80について説明する。
オフィス80には、例えば、複数の机81a~81jが配置されている。
机81aは、例えば、カウンターであり、六つの座席82a~87aが横並びに配置され、一人での作業に適している。机81b~81iは、四人掛けのテーブルであり、それぞれの机81b~81iに四つの座席82b~85iが向かい合わせに配置されている。このうち、机81bと机81cとは、隣接して配置され、例えば大人数での会議に適している。机81jは、二人掛けのテーブルであり、二つの座席82j及び83jが配置されている。机81k及び81lは、一人掛けのテーブルであり、それぞれの机81k及び81lに一つの座席82k及び82lが配置され、例えば役職者が座るのに適している。
なお、一つの部屋しか示していないが、オフィス80には、複数の部屋があってもよく、複数の部屋は、同一の階にあってもよいし、異なる階にあってもよいし、異なる建物にあってもよい。
【0009】
図2を参照して、座席提案システム10について説明する。
オフィス80は、例えばフリーアドレス制であり、オフィス80に勤務している対象者は、原則として、好きな座席に座って仕事をすることができる。
座席提案システム10は、オフィス80に入室してきた対象者に対して、その対象者にとって最適な座席を提案する。対象者は、座席提案システム10に提案された座席に着席することもできるし、提案を無視して違う座席に着席することもできる。
【0010】
座席提案システム10は、例えば、一つ以上のコンピュータを含む。コンピュータは、例えば、サーバ装置である。サーバ装置は、例えばオンプレミスに設置され、社内LAN(ローカルエリアネットワーク)を介して接続される。あるいは、サーバ装置は、インターネットなどのWAN(ワイドエリアネットワーク)を介して接続されたものであってもよく、クラウド上に仮想的に設置されたものであってもよい。あるいは、コンピュータは、対象者が携帯する携帯端末装置である。携帯端末装置は、例えば、スマートホン、ノートパソコン、タブレットなどである。コンピュータは、コンピュータプログラムを記憶し、記憶したコンピュータプログラムを実行することにより、以下に説明する機能ブロックを実現する。
座席提案システム10は、例えば、情報入力部11と、情報記憶部12と、環境検出部14と、位置検出部15と、着席判定部16と、傾向学習部17と、座席提案部18とを有する。
【0011】
情報入力部11は、対象者に最適な座席を提案するために使用される情報を入力する。例えば、対象者の年齢、性別、所属、役職、嗜好(例えば、暑がりか寒がりかなど室温に関する好み、明るめほうがよいか暗めのほうがよいかなど照明に関する好み、賑やかなほうがよいか静かなほうがよいかなど騒音に関する好みなど)、参加プロジェクト、スケジュールなどである。
例えば、サーバ装置が提供するウェブサービスに携帯端末装置を使ってアクセスすると、携帯端末装置の画面に情報入力フォームが表示され、このフォームに情報を入力して送信することにより、入力した情報をサーバ装置が取得する。情報を入力するのは、対象者本人であってもよいし、対象者の上司など対象者の情報を管理すべき立場にある者であってもよいし、座席提案システム10の管理者などであってもよい。権限のない者が対象者の情報を書き換えるのを防ぐため、例えば、情報入力フォームを表示する際、入力者を認証してもよい。
また、情報入力部11は、他のサーバ装置と通信することにより、情報を入力してもよい。例えば、スケジュール管理サービスを提供する外部サーバと通信して、対象者のスケジュールを取得してもよい。
【0012】
情報記憶部12は、情報入力部11が入力した情報を記憶する。例えば、サーバ装置が提供するデータベースサービスを利用して、ハードディスク装置などの記憶装置に情報を記憶する。
【0013】
環境検出部14は、オフィス80のなかの環境を検出する。例えば、室温、湿度、明るさなどである。例えば、オフィス80のなかに設置された温度計、湿度計、照度計などのセンサを用いて、環境を検出する。センサは、検出した環境を表すデータをサーバ装置などに対して送信し、これにより、オフィス80のなかの環境をサーバ装置が取得する。なお、オフィス80のなかの環境は一様ではないので、オフィス80のなかの複数の場所で環境を検出することが望ましく、座席ごとに環境を検出することが更に望ましい。
【0014】
位置検出部15は、オフィス80のなかにいる対象者の位置を検出する。例えば、オフィス80に設置された屋内測位システムを用いて、対象者が所持している携帯端末装置やタグなどの位置を測定する。あるいは、オフィス80に設置されたカメラの映像を解析することにより、対象者の位置を推定する。
【0015】
座席提案部18は、空席となっている座席のなかから対象者に最適な座席を提案する。例えば、対象者がオフィス80の入退室管理システムによって認証された時点で、対象者に最適な座席を選択し、対象者の携帯端末装置などに表示される認証完了画面などに、選択した座席を表示する。あるいは、対象者がオフィス80に入室したことを位置検出部15が検出した時点で、対象者に最適な座席を選択し、対象者に知らせる。例えば、対象者が所持している携帯端末装置などにプッシュ通知などにより、選択した座席を通知する。
提案する座席は、例えば、情報記憶部12が記憶した情報、環境検出部14が検出したオフィス80のなかの環境、位置検出部15が検出した他の対象者の位置、傾向学習部17が学習した対象者の傾向などに基づいて選択する。
提案する座席を選択するアルゴリズムは、例えば特許文献1~4に記載されたものを基本としもよいし、それ以外の公知のアルゴリズムを基本としてもよい。ただし、座席提案部18は、これら公知のアルゴリズムとは異なり、傾向学習部17が学習した対象者の傾向を考慮する。
【0016】
図3を参照して、座席提案画面90について説明する。座席提案画面90は、座席提案部18が提案した座席を対象者に提示するため、例えば、対象者の携帯端末装置の画面に表示される。座席提案画面90には、例えば、配置
図91、着席者92a~92h、提案座席93などが表示される。
配置
図91は、例えば、オフィス80のなかの座席の配置を表す。
着席者92a~92hは、配置
図91のなかで、既に着席している対象者がいる座席を表す。その座席に着席している対象者の名前を示す文字を表示してもよい。
提案座席93は、配置
図91のなかで、座席提案部18が提案する座席を表す。
座席提案画面90には、このほかに、在宅勤務者や出勤者の一覧、対象者のスケジュール、天気予報、公共交通機関の遅延情報などを表示してもよい。
【0017】
図2に戻り、座席提案システム10の説明を続ける。
着席判定部16は、座席提案部18が提案した座席に対象者が着席したか否かを判定する。例えば、位置検出部15が検出した対象者の位置に基づいて、対象者が着席した座席を判定する。そして、判定した座席が、位置検出部15がその対象者に提案した座席と一致している場合に、座席提案部18が提案した座席に対象者が着席したと判断する。
対象者が座席に着席したか否かの判定は、例えば、位置検出部15が検出した対象者の位置が、それぞれの座席に対応する所定の範囲内にあるか否かを判定し、一つの座席に対応する範囲内に所定の時間(例えば5分)以上留まっている場合に、その対象者がその座席に着席したと判断する。
【0018】
傾向学習部17は、対象者が着席する座席の傾向を機械学習する。機械学習に用いる教師データとしては、周囲の座席に着席していた他の対象者やオフィス80のなかの環境などを用いる。ここで、座席提案部18が提案した座席に対象者が着席した場合は、その座席を「正解」としてアノテーションし、逆に、座席提案部18が提案した座席とは異なる座席に対象者が着席した場合は、座席提案部18が提案した座席を「不正解」としてアノテーションする。
このようにして自動的にアノテーションされた教師データを用いて対象者の傾向を機械学習するので、対象者が座席提案システム10を利用するたびに学習が進み、座席提案の精度を向上することができる。
【0019】
機械学習の対象となるのは、例えば、座席提案部18が座席を提案する際に用いる様々な条件に対する重み付けである。
例えば、対象者が寒がりである場合、暖かい座席に座りたがる。また、対象者が静かな環境を好む場合、近くに人があまりいない座席に座りたがる。では、暖かいがうるさい座席と、涼しいが静かな座席とがある場合に、どちらの座席を提案すべきかは、対象者がどちらの条件を重視するかによる。そこで、実際にそのような選択が可能だったときに対象者がどちらの座席に座ったかを学習することにより、それぞれの条件に対する重み付けを変化させる。
【0020】
また、学習により座席提案の精度が向上していくので、対象者についての情報をあらかじめ詳細に入力する必要がない。このため、座席提案システム10の利用を開始するハードルを下げることができる。
例えば、対象者が暑がりか寒がりかをあらかじめ入力していない場合、座席提案システム10は、最初のうち、座席の周囲の温度にかかわらず、座席を提案する。しかし、対象者は、座席提案システム10に提案された座席に着席する義務がないので、例えば、暖かい座席を提案された場合は提案を受け入れ、涼しい座席を提案された場合は提案を拒否する。提案を受け入れるか拒否するかを入力する必要はなく、ただ単に、自分の好きな座席に着席するだけでよい。これを学習することにより、座席提案システム10は、徐々に、暖かい座席を提案するようになる。
【0021】
更に、対象者が座席提案システム10に提案された座席に着席する義務がなく、提案を受け入れるか否かを入力する必要もないので、そもそも座席提案システム10を利用していない対象者についても、その傾向を学習することができる。したがって、ある程度学習が進んでから座席提案システム10の利用を開始すれば、最初から、その対象者に最適な座席を提案できる。
【0022】
また、このようなシステムを導入する際には、それまで不要だった作業が増えることを嫌って反対する人がいる可能性がある。しかし、上述したとおり、座席提案システム10を利用しない対象者がいてもシステムとして成立するので、そのような人がシステムを利用しないのは、自由である。このため、システム導入のハードルを下げることができる。
【0023】
なお、単に、対象者が提案された座席に着席したか否かによって正解か不正解かを学習するのではなく、例えば提案された座席と対象者が実際に着席した座席との間の距離に基づいて、拒否の度合いを数値化して学習してもよい。また、対象者が提案された座席にいったん着席したがその後別の座席に移動した場合、その座席に何か不都合があったということなので、初めから別の座席に着席した場合よりも拒否の度合いが高いと判断してもよい。
【0024】
また、複数の対象者について学習をすることにより、個人の傾向だけでなく、全員に共通する傾向も把握することができる。これにより、例えば、人気のある座席や逆に人気のない座席を見つけることができ、オフィス80の環境改善に生かすことができる。
【0025】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0026】
オフィス等で使用する座席を勤務者へ提案するサービスにおいて、提案の受入可否を勤務者の位置情報を元に識別し、その結果を機械学習などで解析・学習し次回の提案内容に反映する。これにより、フリーアドレス制のオフィスにおいて、提案の受入や拒否結果を提案された勤務者が入力する必要がなく、勤務者の意に沿わない提案を防ぐことができる。
屋内測位で得られる位置データにより座席提案の受入結果を自動取得し、過去の着席位置データと合わせて機械学習することにより、勤務者へ最適な着席位置を提案する。そうすることで、フリーアドレス制の導入されたオフィスでの使用状況最適化と勤務者の利便性を向上する。
提案をした座席位置と受入結果、実際にユーザーが使った座席位置、オフィス内環境データ(温湿度といった環境データや全体座席利用状況など)をデータベースに保存する。
上記のデータを機械学習し席提案の重み付け係数を増減させる。
機械学習ではユーザーの着座位置の傾向を分析し、拒否される席の提案を避けつつ隣り合う人の平均化や過去と異なる席提案にするような重み付けに生かす処理を行う。
屋内測位ツールによる位置情報は座席単位でデータ化し、その情報を元に座席提案が受け入れられたかの判断をする。例えば、NFCやBLE、WiFiなどの複数手法を組み合わせて測位する。
例えばオフィスの入り口に設置されたデジタルサイネージなど、多数のユーザーが目にする情報表示部に、着席している他ユーザーの位置情報を表示してもよい。ユーザーは、情報表示部に表示された情報を例えば出勤時に目にすることにより、座席提案システムに頼らず、着席する座席を自分で決定してもよい。ユーザーが例えば認証操作をすると、情報表示部に座席提案システムからの提案を表示してもよい。また、情報表示部に、認証したユーザーと関わりのある他ユーザー(予定の重なる者同士、事前に設定されたお気に入り登録をもとに識別)の位置情報をハイライト表示してもよい。
システムは日々継続的に席提案位置アルゴリズムを自己学習することができる。
過去の着席位置のデータから、人気不人気席の要素を求めることができる。
着席位置の提案を受け入れることも拒否することも許容することができる。
このシステムを利用しないユーザーがいてもシステムが成り立つ。
情報表示部に席提案だけでなくユーザーの関心の高い情報を併せて表示することにより、システムが含蓄のある提案をしているように見せることができる他、ユーザーがシステムに好みを入力する際の要素となりえる。その情報は例えば同じ席に座っている人の位置をハイライトする、なども含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10 座席提案システム、11 情報入力部、12 情報記憶部、14 環境検出部、15 位置検出部、16 着席判定部、17 傾向学習部、18 座席提案部、
80 オフィス、81a~81l 机、82a~82l,83a~83j,84a~84i,85a~85i,86a,87a 座席、90 座席提案画面、91 配置図、92a~92h 着席者、93 提案座席。