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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099249
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240718BHJP
   F16H 57/033 20120101ALI20240718BHJP
【FI】
F16H57/04 G
F16H57/033
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003052
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貞弘 真吾
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AA04
3J063AB02
3J063AC04
3J063AC11
3J063BA15
3J063BB48
3J063CA10
3J063CC23
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD42
3J063XD47
3J063XD62
3J063XE14
3J063XE16
3J063XH23
3J063XH42
(57)【要約】
【課題】オイルクーラで冷却されるオイルの油量を調整でき、専用のオイルクーラでなくても適切にオイルの温度を調整できる車両用変速機を提供すること。
【解決手段】オイルをオイルポンプ40からモータ室に供給するオイル供給油路47は、オイルクーラ41と連通する上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42Bと、オイルクーラ41、上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42Bを迂回して、オイルポンプ40が吐出するオイルをモータ室に供給するバイパス油路45とを有する。上流側油路43と上流側オイルクーラ接続油路42Aとのなす挟角A1は、上流側油路43とバイパス油路45とのなす挟角A2よりも大きく、下流側油路44と下流側オイルクーラ接続油路42Bとのなす挟角A3は、下流側油路44とバイパス油路45とのなす挟角A4よりも大きい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機構、差動装置およびオイルポンプが収納されるギヤ室と、冷却対象が収納される冷却対象収容室とが形成された変速機ケースと、
前記変速機ケースの外部に取付けられたオイルクーラと、を備える車両用変速機であって、
前記冷却対象を冷却するオイルを前記オイルポンプから前記冷却対象収容室に供給するオイル供給油路を備え、
前記オイル供給油路は、
前記オイルクーラと連通する上流側オイルクーラ接続油路および下流側オイルクーラ接続油路と、
前記オイルクーラ、上流側オイルクーラ接続油路および下流側オイルクーラ接続油路を迂回して、前記オイルポンプが吐出するオイルを前記冷却対象収容室に供給するバイパス油路と、を有することを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記オイル供給油路は、
前記上流側オイルクーラ接続油路と前記バイパス油路との分岐部と、
前記下流側オイルクーラ接続油路と前記バイパス油路との集合部と、
前記オイルポンプから前記分岐部に至る上流側油路と、
前記集合部と前記冷却対象収容室とを連通する下流側油路と、を有し、
前記上流側油路と前記上流側オイルクーラ接続油路とのなす挟角は、前記上流側油路と前記バイパス油路とのなす挟角よりも大きく、
前記下流側油路と前記下流側オイルクーラ接続油路とのなす挟角は、前記下流側油路と前記バイパス油路とのなす挟角よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記オイル供給油路は、
前記上流側オイルクーラ接続油路と前記バイパス油路との分岐部と、
前記下流側オイルクーラ接続油路と前記バイパス油路との集合部と、
前記オイルポンプから前記分岐部に至る上流側油路と、
前記集合部と前記冷却対象収容室とを連通する下流側油路と、を有し、
前記上流側オイルクーラ接続油路の断面積は、前記バイパス油路の断面積よりも大きく、
前記下流側オイルクーラ接続油路の断面積は、前記バイパス油路の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項4】
前記変速機ケースは、
前記バイパス油路を内部に形成するように外方に畝状に突出し、前記バイパス油路と平行に延伸する畝状部と、
前記畝状部と同方向に突出し、前記上流側オイルクーラ接続油路が開口する上流側ボス部と、
前記畝状部と同方向に突出し、前記下流側オイルクーラ接続油路が開口する下流側ボス部と、を有し、
前記上流側ボス部および前記下流側ボス部は、前記畝状部よりも大きく突出していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動機が収納されるトランスアクスルハウジングと、電動機を冷却するオイルの流路となる油路と、トランスアクスルハウジングの側部に配置されるオイルクーラと、を有し、油路の少なくとも一部は、電動機の下方から上方に延び、上方に延びる油路の一部をオイルクーラが兼ねるようにした油路構造が記載されている。これにより、特許文献1に記載のものは、ケース体の外側に配されるパイプなどの部材を削減して、コスト増加を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-93867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、オイルの全量をオイルクーラに通過させて冷却しているので、変速機の発熱量に応じた冷却性能を有する専用のオイルクーラを用いる必要があり、冷却性能が適合しないオイルクーラを用いた場合は温度調整が困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、オイルクーラで冷却されるオイルの油量を調整でき、専用のオイルクーラでなくても適切にオイルの温度を調整できる車両用変速機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、変速機構、差動装置およびオイルポンプが収納されるギヤ室と、冷却対象が収納される冷却対象収容室とが形成された変速機ケースと、前記変速機ケースの外部に取付けられたオイルクーラと、を備える車両用変速機であって、前記冷却対象を冷却するオイルを前記オイルポンプから前記冷却対象収容室に供給するオイル供給油路を備え、前記オイル供給油路は、前記オイルクーラと連通する上流側オイルクーラ接続油路および下流側オイルクーラ接続油路と、前記オイルクーラ、上流側オイルクーラ接続油路および下流側オイルクーラ接続油路を迂回して、前記オイルポンプが吐出するオイルを前記冷却対象収容室に供給するバイパス油路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、オイルクーラで冷却されるオイルの油量を調整でき、専用のオイルクーラでなくても適切にオイルの温度を調整できる車両用変速機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の背面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の左側面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のライトケースの左側面図である。
図4図4は、図2のIV-IV方向の矢視断面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、変速機構、差動装置およびオイルポンプが収納されるギヤ室と、冷却対象が収納される冷却対象収容室とが形成された変速機ケースと、変速機ケースの外部に取付けられたオイルクーラと、を備える車両用変速機であって、冷却対象を冷却するオイルをオイルポンプから冷却対象収容室に供給するオイル供給油路を備え、オイル供給油路は、オイルクーラと連通する上流側オイルクーラ接続油路および下流側オイルクーラ接続油路と、オイルクーラ、上流側オイルクーラ接続油路および下流側オイルクーラ接続油路を迂回して、オイルポンプが吐出するオイルを冷却対象収容室に供給するバイパス油路と、を有することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、オイルクーラで冷却されるオイルの油量を調整でき、専用のオイルクーラでなくても適切にオイルの温度を調整できる。
【実施例0010】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。図1から図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機を示す図である。
【0011】
図1から図4において、上下前後左右方向は、車両に配置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0012】
図1図2に示すように、車両の図示しないエンジンルームには内燃機関としてのエンジン1と、エンジン1に連結される自動変速機2とが設けられている。本実施例の自動変速機2は、車両用変速機を構成する。
【0013】
自動変速機2は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両において、横置きに配置されるエンジン1に取付けられている。
【0014】
自動変速機2は、例えば、AMT(Automated Manual Transmission)から構成されている。自動変速機2は変速機ケース3を備えており、変速機ケース3は、レフトケース4とライトケース5を備えている。
【0015】
レフトケース4とライトケース5の合わせ面にはフランジ部4A、5Aが形成されており、レフトケース4とライトケース5は、フランジ部4Aとフランジ部5Aがボルト30Aによって締結されることにより、一体化されている。
【0016】
ライトケース5に関し、レフトケース4側に形成されているフランジ部5Aに対して反対側となるエンジン1側にはフランジ部5Bが形成されており、フランジ部5Bは、図示しないボルトによってエンジン1の図示しないシリンダブロックに締結されている。
【0017】
図3に示すように、ライトケース5には縦壁5Wが設けられている。変速機ケース3は、縦壁5Wによって、図示しない摩擦クラッチを収容するクラッチ室8A(図1参照)と、変速機構6を収容するギヤ室8B(図1参照)とに仕切られている。ギヤ室8Bは、レフトケース4とライトケース5とにより形成される。
【0018】
なお、縦壁5Wは、クラッチ室8Aとギヤ室8Bとを仕切る隔壁部分とフランジ部5Bの後方で隔壁に連絡される縦壁部分とを含んで構成されている。
【0019】
ギヤ室8Bには変速機構6および差動装置10が収容されている。差動装置10は、変速機構6の後方に配置されている。
【0020】
図1に示すように、レフトケース4には、変速機構6を上下方向および前後方向から取り囲む円筒状の周壁4Bが設けられている。周壁4Bは左方に膨出している。
【0021】
ライトケース5には、変速機構6を上下方向および前後方向から取り囲む円筒状の周壁5Cが設けられており、周壁5Cの左端部にはフランジ部5Aが形成されている。
【0022】
自動変速機2は、摩擦クラッチを介してエンジン1の駆動力を変速機構6に入力し、同期装置の作動により変速機構6において変速を行い、変速された回転(回転速度)を差動装置10により、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動輪に伝達する。
【0023】
図3に示すように、変速機構6は、それぞれ平行に延びる入力軸21、カウンタ軸22、リバース軸23および中間軸24を備えている。
【0024】
入力軸21は、摩擦クラッチを介してエンジン1の図示しないクランク軸に連結可能となっており、入力軸21にはエンジン1から摩擦クラッチを介して駆動力が伝達される。
【0025】
カウンタ軸22は、入力軸21よりも後斜め下方に配置されており、リバース軸23は、入力軸21の前斜め下方に配置されている。カウンタ軸22とリバース軸23は略同じ高さ位置に配置されている。
【0026】
入力軸21の左端部には、6速入力ギヤ21Fが設けられている。また、入力軸21には、図示しない1速入力ギヤ、2速入力ギヤ、3速入力ギヤ、4速入力ギヤ、5速入力ギヤおよびリバース入力ギヤが設けられている。
【0027】
カウンタ軸22の左端部には、6速カウンタギヤ22Fが設けられている。また、カウンタ軸22には、1速カウンタギヤ22Aと、図示しない2速カウンタギヤ、3速カウンタギヤ、4速カウンタギヤ、5速カウンタギヤ、リバースカウンタギヤおよびファイナルドライブギヤが設けられている。
【0028】
1速カウンタギヤ22Aから6速カウンタギヤ22Fは、同一の変速段を構成する1速入力ギヤから6速入力ギヤ21Fにそれぞれ常時噛み合っている。
【0029】
リバース軸23にはリバースアイドラギヤ23Aが設けられており、リバースアイドラギヤ23Aは、車両の後進時にリバース軸23に沿って軸方向に移動し、リバース入力ギヤとリバースカウンタギヤに噛み合う。
【0030】
変速機構6には、図示しない1-2速段用の同期装置、3-4速段用の同期装置、5-6速段用の同期装置が設けられている。これらの同期装置およびリバースアイドラギヤ23Aは、図示しないシフトフォークによって操作されることにより、入力軸21上の各入力ギヤ、カウンタ軸22上の各カウンタギヤ、リバース軸23上のリバースアイドラギヤ23Aを介するいずれか1つの所定の変速段を成立させる。
【0031】
AMTとしての自動変速機2には電気式または油圧式の図示しない変速用のアクチュエータとクラッチ用のアクチュエータが設けられている。
【0032】
変速用のアクチュエータは、運転者によって操作される図示しないシフトレバーがリバースポジション、ニュートラルポジションおよびドライブポジションの各ポジションに操作されると、図示しないECU(Electronic Control Unit)から出力される制御信号に基づいて、図示しないシフトアンドセレクト軸をシフト方向およびセレクト方向に操作する。
【0033】
シフトアンドセレクト軸は、セレクト方向に移動したときに、いずれか1つのシフタ軸に係合し、シフト方向に移動したときに係合したシフタ軸を入力軸21の軸方向に移動させて同期装置およびドグクラッチを操作することにより、所定の変速段を成立させる。
【0034】
クラッチ用のアクチュエータは、変速時に自動でクラッチを機械的に切断/締結してエンジン1からの駆動力の伝達状態を切り替える。さらに、自動でクラッチを切断/締結するだけでなく、運転者によって図示しないクラッチペダルが踏み込まれると、クラッチを機械的に切断させてエンジン1から入力軸21に入力される駆動力を遮断するようにしてもよい。
【0035】
また、クラッチ用のアクチュエータは、運転者によってクラッチペダルの踏み込みが解除されると、クラッチを機械的に締結してエンジン1から入力軸21に駆動力を伝達可能とするようにしてもよい。
【0036】
差動装置10は、リングギヤ11と、リングギヤ11が固定されたデフケース12とを有している。また、差動装置10は、図示しないピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに回転自在に支持された図示しない一対のピニオンギヤと、ピニオンギヤに噛み合う図示しない一対のサイドギヤとを有している。サイドギヤは、それぞれ左右のドライブシャフトに連結されている。
【0037】
差動装置10のリングギヤ11は、カウンタ軸22上のファイナルドライブギヤに噛み合っている。差動装置10は、左右の駆動輪の差動を許容しつつ、ファイナルドライブギヤからリングギヤ11に伝えられた回転を左右の駆動輪に伝達する。
【0038】
中間軸24にはファイナルドライブギヤ24Aと、モータ出力ギヤ24Bとが設けられている。ファイナルドライブギヤ24Aは、モータ出力ギヤ24Bよりも小径に形成されている。中間軸24のファイナルドライブギヤ24Aもカウンタ軸22のファイナルドライブギヤと同様に差動装置10のリングギヤ11と噛み合っている。
【0039】
リングギヤ11の下端部は、1速カウンタギヤ22A等の変速機ケース3に収容されたギヤの中で最も下方に位置している。
【0040】
ライトケース5の周壁5Cの後部には膨出壁5Fが設けられており、膨出壁5Fは、ライトケース5の前側の周壁5Cの上壁5Eよりも上方に湾曲するように膨出している。
【0041】
変速機ケース3の底部にはオイルが貯留されており、リングギヤ11はオイルに浸かっている。このため、車両の前進時にリングギヤ11が図3の反時計回りに回転すると、リングギヤ11によって掻き上げられたオイルは、矢印O1で示すように、後壁5Iから膨出壁5Fに沿って流れる。
【0042】
ライトケース5の周壁5Cは、上壁5Eおよび膨出壁5Fと、上下方向で上壁5Eおよび膨出壁5Fに対向する下壁5Gと、上壁5Eの前端部と下壁5Gの前端部とに連絡される前壁5Hと、膨出壁5Fの後端部と下壁5Gの後端部とに連絡される後壁5Iとを含んで構成されている。
【0043】
図1に示すように、ライトケース5の後部には筒状の収容部5Dが形成されており、収容部5Dは、縦壁5Wからレフトケース4と離れる方向(右方)に膨出している。収容部5Dの膨出方向の先端部(右端部)は、図示しない軸受を介してデフケース12(図3参照)の右端部を回転自在に支持している。
【0044】
レフトケース4の外周面の上部には、円筒状のモータ収容壁4Mが設けられている。モータ収容壁4Mは、レフトケース4の周壁4Bの上壁4Eよりも上側で、かつライトケース5の膨出壁5Fよりも上側に湾曲するように膨出している。モータ収容壁4Mの左端部には、ボルト30Gによってモータケース26が取付けられている。
【0045】
レフトケース4の上部には、図示しない隔壁が設けられている。この隔壁は、レフトケース4の上部におけるモータケース26と軸方向に対向する位置に設けられており、左側壁4Wとライトケース5の間に位置する中間軸24およびモータ軸27Bの左端部を回転自在に支持している。
【0046】
モータ収容壁4Mの左端部は、開口端となっており、モータ収容壁4Mの左端部は、モータケース26によって閉塞されている。モータ収容壁4Mの右端部は、隔壁により覆われている。
【0047】
レフトケース4の隔壁およびモータ収容壁4Mとモータケース26とに囲まれた空間は、モータ室8Cとなっている。冷却対象収容室としてのモータ室8Cには、冷却対象としてのモータジェネレータ27が収容されている。
【0048】
図3に示すように、モータジェネレータ27は、その軸線上に、モータ軸27Bと、モータ軸27Bの右端部に設けられたモータ入力ギヤ27Cとを有する。
【0049】
モータ入力ギヤ27Cは、モータ出力ギヤ24Bに噛み合っており、モータジェネレータ27によるモータ走行時、またはエンジン1とモータジェネレータ27とによるハイブリッド走行時に、モータジェネレータ27の駆動力は、モータ入力ギヤ27Cからモータ出力ギヤ24Bを介して中間軸24に伝達される。
【0050】
モータジェネレータ27の駆動力は、中間軸24からファイナルドライブギヤ24Aを介してリングギヤ11に伝達される。
【0051】
また、モータジェネレータ27は、車両減速時に差動装置10のリングギヤ11によって駆動されることにより、図示しないバッテリに充電する電力を生成する発電機としても機能する。
【0052】
図3に示すように、ギヤ室8Bの底部には機械式のオイルポンプ40が収納されている。詳細には、オイルポンプ40は、カウンタ軸22の下方に配置されており、差動装置10の前方に配置されている。図4に示すように、オイルポンプ40は、差動装置10のリングギヤ11と噛み合って回転する入力ギヤ40Aを有しており、リングギヤ11から伝達された動力によって作動する。オイルポンプ40は、モータジェネレータ27を冷却するオイルをモータ室8Cに供給する。
【0053】
自動変速機2はオイルクーラ41を備えている。オイルクーラ41は、変速機ケース3の外部に取付けられており、変速機ケース3との間で循環するオイルを外気との熱交換により冷却する。具体的には、オイルクーラ41は、オイルポンプ40が送り出すモータジェネレータ27を冷却するオイルを冷却する。オイルクーラ41は、周壁4Bの下方に配置され、周壁4Bの下面によってオイルクーラ41に向かう様に案内されて周壁4Bの下面に沿って流れる走行風を受けるように配置されている。
【0054】
自動変速機2はオイル供給油路47を備えており、オイル供給油路47は、モータジェネレータ27を冷却するオイルをオイルポンプ40からモータ室8Cに供給する。
【0055】
図4に示すように、オイル供給油路47は、上流側油路43、上流側オイルクーラ接続油路42A、オイルクーラ41、下流側オイルクーラ接続油路42B、下流側油路44、分岐部43A、集合部44Aを有している。上流側油路43は、オイルポンプ40から分岐部43Aに至る油路である。上流側オイルクーラ接続油路42Aは、分岐部43Aからオイルクーラ41に至る油路である。下流側オイルクーラ接続油路42Bは、オイルクーラ41から集合部44Aに至る油路である。下流側油路44は、集合部44Aからモータ室8Cに至る油路である。
【0056】
さらに、オイル供給油路47は、オイルクーラ41、上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42Bを迂回して、オイルポンプ40が吐出するオイルをオイルクーラ41を通過させずにモータ室8Cに供給するバイパス油路45を有する。つまり、オイル供給油路47は、分岐部43Aと集合部44Aを連通するバイパス油路45を有している。
【0057】
オイル供給油路47は、オイルパイプ46を有している。オイルパイプ46は、下流側油路44の一部を構成しており、集合部44Aから受け入れたオイルをモータ室8Cに供給する。モータ室8Cに供給されたオイルは、モータジェネレータ27の上部に滴下されることでモータジェネレータ27を冷却する。
【0058】
上流側オイルクーラ接続油路42A、下流側オイルクーラ接続油路42Bおよびバイパス油路45は、変速機ケース3のレフトケース4に形成されている。オイルパイプ46は、ギヤ室8Bに収納されている。
【0059】
自動変速機2において、オイルポンプ40が吐出するオイルは、上流側オイルクーラ接続油路42A、オイルクーラ41および下流側オイルクーラ接続油路42Bを通過した後、オイルパイプ46を流れてモータ室8Cに供給される。また、オイルポンプ40が吐出するオイルは、バイパス油路45を通過した後、オイルパイプ46を流れてモータ室8Cに供給される。モータ室8Cに供給されたオイルは、モータジェネレータ27等を冷却した後、モータ室8Cの隔壁に形成されている図示しない排出孔を通ってギヤ室8Bに戻され、再びオイルポンプ40に汲み上げられる。つまり、モータ室8Cに供給されるオイルは、オイルクーラ41を通過して冷却されたオイルとオイルクーラ41を流れず冷却されないオイルとが集合部44Aで混ざり合い、モータジェネレータ27の冷却に適した温度に調整されたものとなっている。
【0060】
このように、変速機ケース3には、オイルクーラ41を通過する第1系統の油路(上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42B)と、オイルクーラ41を迂回する第2系統の油路(バイパス油路45)とが形成されており、2つの系統を通過するオイルの量の比率によってオイルの温度が調整され、モータジェネレータ27への冷却性能が決定される。このように、モータジェネレータ27を冷却するオイルの温度を調整することができるので、他の車両に使用されている冷却性能の高すぎるオイルクーラ41を使用しても、モータジェネレータ27が過冷却になることなく最適な状態を実現することができる。さらには、バイパス油路45が変速機ケース3に設けられているので、オイルクーラ41を取付けずともオイルポンプ40からモータ室8Cに至るオイル供給油路47を構成することができる。この場合、後述する上流側オイルクーラ接続油路42Aと下流側オイルクーラ接続油路42Bを構成する配管41A、41Bを接続する孔加工をしないようにすればよい。
【0061】
オイル供給油路47は、上流側オイルクーラ接続油路42Aとバイパス油路45との分岐部43Aと、下流側オイルクーラ接続油路42Bとバイパス油路45との集合部44Aと、オイルポンプ40から分岐部43Aに至る上流側油路43と、集合部44Aとモータ室8Cとを連通する下流側油路44と、を有している。
【0062】
上流側油路43と上流側オイルクーラ接続油路42Aとのなす挟角A1は、上流側油路43とバイパス油路45とのなす挟角A2よりも大きく設定されている。本実施例では、上流側油路43と上流側オイルクーラ接続油路42Aとのなす挟角A1は180°に設定され、上流側油路43とバイパス油路45とのなす挟角A2は90°に設定されている。このため、上流側油路43から分岐部43Aに流れ込んだオイルは、バイパス油路45よりもその流れ方向に配置され開口している上流側オイルクーラ接続油路42Aの方に流れやすくなり、所定の分配比率で配分されて流れていく。
【0063】
下流側油路44と下流側オイルクーラ接続油路42Bとのなす挟角A3は、下流側油路44とバイパス油路45とのなす挟角A4よりも大きく設定されている。本実施例では、下流側油路44と下流側オイルクーラ接続油路42Bとのなす挟角A3は180°に設定され、下流側油路44とバイパス油路45とのなす挟角A4は90°に設定されている。このため、下流側オイルクーラ接続油路42Bから集合部44Aに流れ込んだオイルは、バイパス油路45よりもその流れ方向に配置され開口している下流側油路44に優先的に流れることとなり、オイルクーラ41からのオイルの流れがスムーズになる。
【0064】
また、上流側オイルクーラ接続油路42Aの断面積S1は、バイパス油路45の断面積S3よりも大きく設定されている。また、下流側オイルクーラ接続油路42Bの断面積S2は、バイパス油路45の断面積S3よりも大きく設定されている。このため、上流側油路43から分岐部43Aに流れ込んだオイルは、バイパス油路45よりも断面積の大きな上流側オイルクーラ接続油路42Aの方に流れやすくなり、所定の分配比率で配分されて流れていく。
【0065】
図2図4において、変速機ケース3のレフトケース4における底部かつ左端部の表面には、畝状部48が形成されている。畝状部48は、周壁4Bの下方でバイパス油路45を内部に形成するように外方(左方)に畝状(リブ状)に突出し、バイパス油路45と平行に延伸している。
【0066】
また、変速機ケース3のレフトケース4における底部かつ左端部の表面には、畝状部48と同方向に突出し、畝状部48の両端部には上流側ボス部49Aと下流側ボス部49Bとが形成されている。上流側ボス部49Aには、上流側オイルクーラ接続油路42Aを構成する配管41Aが取り付けられる孔が形成され、下流側ボス部49Bには、下流側オイルクーラ接続油路42Bを構成する配管41Bが取り付けられる孔が形成されている。
【0067】
上流側ボス部49Aおよび下流側ボス部49Bは、畝状部48の延伸方向の端部に設けられている。言い換えれば、上流側ボス部49Aおよび下流側ボス部49Bは、畝状部48によって接続されて補強されている。
【0068】
上流側ボス部49Aおよび下流側ボス部49Bは、畝状部48よりも大きく突出している。上流側ボス部49Aおよび下流側ボス部49Bには、オイルクーラ41の配管41A、41Bがそれぞれ接続されている。つまり、上流側ボス部49Aおよび下流側ボス部49Bは、ボス高さが高くなるように形成され、ボスに挿入接続される配管41A、41Bの接続をより確実なものにしている。
【0069】
以上のように、本実施例では、モータジェネレータ27を冷却するオイルをオイルポンプ40からモータ室8Cに供給するオイル供給油路47を備え、オイル供給油路47は、オイルクーラ41と連通する上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42Bと、オイルクーラ41、上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42Bを迂回して、オイルポンプ40が吐出するオイルをモータ室8Cに供給するバイパス油路45と、を有する。
【0070】
これにより、オイルポンプ40が吐出するオイルは、オイルクーラ41を流れるオイルとバイパス油路45を流れるオイルとの両方が混ざり合ってモータ室8Cに供給される。つまり、自動変速機2には、オイルクーラ41を通過する油路である上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42Bと、オイルクーラ41を迂回する油路であるバイパス油路45との2系統が設けられている。
【0071】
このため、2系統の油路の流れやすさを調整することにより、2系統の油路を通過するオイルの量の配分を決定でき、オイルクーラ41で冷却されるオイルの量を容易に調整することができる。また、製造時に上流側オイルクーラ接続油路42Aおよび下流側オイルクーラ接続油路42Bを閉塞するまたは形成しないことにより、オイルクーラ41を設けない変速機と変速機ケース3を共用することができる。
【0072】
この結果、オイルクーラで冷却されるオイルの油量を調整でき、専用のオイルクーラでなくても適切にオイルの温度を調整できる。
【0073】
また、本実施例では、オイル供給油路47は、上流側オイルクーラ接続油路42Aとバイパス油路45との分岐部43Aと、下流側オイルクーラ接続油路42Bとバイパス油路45との集合部44Aと、オイルポンプ40から分岐部43Aに至る上流側油路43と、集合部44Aとモータ室8Cとを連通する下流側油路44と、を有している。
【0074】
そして、上流側油路43と上流側オイルクーラ接続油路42Aとのなす挟角A1は、上流側油路43とバイパス油路45とのなす挟角A2よりも大きく設定されている。
【0075】
これにより、分岐部43Aにおいて、オイルが上流側油路43から上流側オイルクーラ接続油路42Aを通過してオイルクーラ41に流れやすくすることができ、オイルの圧力損失を抑制しながら冷却効率を向上させることができる。
【0076】
また、下流側油路44と下流側オイルクーラ接続油路42Bとのなす挟角A3は、下流側油路44とバイパス油路45とのなす挟角A4よりも大きく設定されている。
【0077】
これにより、集合部44Aにおいて、オイルが下流側オイルクーラ接続油路42Bから下流側油路44を通過してモータ室8Cに流れやすくすることができ、オイルの圧力損失を抑制しながら冷却効率を向上させることができる。
【0078】
また、本実施例では、オイル供給油路47は、上流側オイルクーラ接続油路42Aとバイパス油路45との分岐部43Aと、下流側オイルクーラ接続油路42Bとバイパス油路45との集合部44Aと、オイルポンプ40から分岐部43Aに至る上流側油路43と、集合部44Aとモータ室8Cとを連通する下流側油路44と、を有している。
【0079】
そして、上流側オイルクーラ接続油路42Aの断面積S1は、バイパス油路45の断面積S3よりも大きく設定されている。
【0080】
これにより、分岐部43Aにおいて、オイルが上流側油路43から上流側オイルクーラ接続油路42Aを介してオイルクーラ41に流れやすくすることができ、オイルの圧力損失を抑制しながら冷却効率を向上させることができる。
【0081】
また、下流側オイルクーラ接続油路42Bの断面積S2は、バイパス油路45の断面積S3よりも大きく設定されている。
【0082】
これにより、集合部44Aにおいて、オイルが下流側オイルクーラ接続油路42Bから下流側油路44を介してモータ室8Cに流れやすくすることができ、オイルの圧力損失を抑制しながら冷却効率を向上させることができる。
【0083】
また、本実施例では、変速機ケース3は、バイパス油路45を内部に形成するように外方に畝状に突出し、バイパス油路45と平行に延伸する畝状部48と、畝状部48と同方向に突出し、上流側オイルクーラ接続油路42Aが開口する上流側ボス部49Aと、畝状部48と同方向に突出し、下流側オイルクーラ接続油路42Bが開口する下流側ボス部49Bと、を有している。
【0084】
そして、上流側ボス部49Aおよび下流側ボス部49Bは、畝状部48よりも大きく突出している。
【0085】
これにより、畝状部48により変速機ケース3を補強することができ、変速機ケース3内にバイパス油路45を形成したことによる剛性低下を抑制することができる。
【0086】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0087】
2...自動変速機(車両用変速機)、3...変速機ケース、6...変速機構、8B...ギヤ室、8C...モータ室(冷却対象収容室)、10...差動装置、27...モータジェネレータ(冷却対象)、40...オイルポンプ、41...オイルクーラ、42A...上流側オイルクーラ接続油路、42B...下流側オイルクーラ接続油路、43...上流側油路、43A...分岐部、44...下流側油路、44A...集合部、45...バイパス油路、47...オイル供給油路、48...畝状部、49A...上流側ボス部、49B...下流側ボス部、A1,A2,A3,A4...挟角、S1,S2,S3,S4...断面積
図1
図2
図3
図4