(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099253
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】軟質ウレタン微粉末の製造装置及び軟質ウレタン微粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
B02C 19/22 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
B02C19/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003056
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】519367706
【氏名又は名称】株式会社エコ・マイニング
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】相田 辰
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 英博
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 拓
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CB03
4D067CB08
4D067EE50
4D067GA16
(57)【要約】
【課題】粒径が異なる軟質ウレタン微粉末を製造することができる軟質ウレタン微粉末の製造装置を提供する。
【解決手段】二軸破砕機20は、螺旋状に延びるノーマル羽根32の先端にカウンター羽根33を備えている。二軸破砕機20は、さらに、カウンター羽根33と向かい合うノーマル羽根32Eとの間に給水する給水ノズル51、及び水の量を調節する給水弁54を備えている。給水弁54で水の量を第1水量に調節することで、排出口28からセルを内包する微粉末が排出される。第1水量より小さな第2水量に水量を調節することで、排出口28から鳥足状の微粉末が排出される。鳥足状の微粉末はセルを内包する微粉末より小径である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が異なる軟質ウレタン微粉末を製造する軟質ウレタン微粉末の製造装置であって、
主軸と、この主軸に固定され前記主軸の基部から先端に向かって延び螺旋状を呈するノーマル羽根と、このノーマル羽根に対してリード角が負とされ前記ノーマル羽根の先端に連続するようにして前記主軸に固定されるカウンター羽根と、からなる破砕スクリューを平行に2本備え、一方の前記破砕スクリューに対して他方の前記破砕スクリューを逆回転させることで、前記軟質ウレタンフォームを破砕し、得られた小径破砕物を前記カウンター羽根でせき止めつつ摺り合せることで前記軟質ウレタン微粉末を得る二軸破砕機と、
前記カウンター羽根とこのカウンター羽根に向かい合う前記ノーマル羽根との間の領域へ給水する給水ノズル及びこの給水ノズルへ向かう水の量を調整する給水弁と、からなることを特徴とする軟質ウレタン微粉末の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の軟質ウレタン微粉末の製造装置、及び複数個の前記軟質ウレタンフォームを準備する工程と、
前記水の量を変化させ、異なる前記水の量毎に、前記軟質ウレタン微粉末の製造装置で前記軟質ウレタンフォームを破砕し摺り合せて得られた前記軟質ウレタン微粉末を顕微鏡で観察する工程と、
観察した前記軟質ウレタン微粉末が、セルを内包する微粉末と鳥足状の微粉末の何れであるかを区別する工程と、
この区別に基づいて、前記セルを内包する微粉末が得られる前記水の量を第1水量と定め、前記鳥足形状の微粉末が得られる前記水の量を第2水量と定める工程と、
前記給水弁の開度を前記第1水量になるように調整して前記セルを内包する微粉末を製造する、又は前記給水弁の開度を前記第2水量になるように調整して前記セルを内包する微粉末より小径で且つ鳥足状の微粉末を製造する通常運転工程とからなる軟質ウレタン微粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ウレタン微粉末の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
[用語の説明]
ウレタンは、ポリウレタンの略称である。
フォーム(Foam)は、日本語で泡を意味する。
ウレタンフォームは、発泡性ウレタンとも呼ばれる。
発泡性ウレタン(ウレタンフォーム)は、硬質ウレタンフォームと軟質ウレタンフォームとの総称である。
【0003】
硬質ウレタンフォームは、クローズドセルであって、独立セル構造を有する。セル内の空気がセル間を移動することはなく、セルが外に開放されてもいない。
空気が閉じ込められているため断熱性能が高く、建築断熱板や、自動販売機や冷蔵庫などの電機品断熱材として盛んに利用される。
【0004】
軟質ウレタンフォームは、オープンセルであって、セル内の空気がセル間を移動し、セルが外に開放されている。
軟質ウレタンフォームは、クッション、ソファー、ベッド、マットなどの生活用品や工業用品に盛んに利用される。
【0005】
硬質ウレタンフォームは、比較的破砕が容易である。一方、軟質ウレタンフォームは、硬質ウレタンフォームより嵩比重が大きくて弾性変形性が大きい。そのため、硬質ウレタンフォームに比べて、軟質ウレタンフォームの破砕は格段に難しい。
【0006】
しかし、破砕が難しいとされる軟質ウレタンフォームを対象とする破砕技術は、各種提案されてきた。各種提案のうちの一つが、破砕機による破砕法である。
破砕機として、一軸破砕機と二軸破砕機が、広く知られている。(例えば、特許文献1(
図1)参照)。
【0007】
一軸破砕機は、回転歯と、この回転歯に対向して配置される固定歯と、回転歯を囲うように配置されるスクリーンとを主たる構成要素とする。
被破砕物は、固定歯と回転歯とのせん断作用により破砕される。
一定の径以下の小さな破砕物はスクリーンを通過して排出される。
【0008】
一定の径を超える大きな破砕物は、スクリーンに沿って移動し、固定歯と回転歯とで再度破砕される。すなわち、大きな破砕物は、一定の径以下になるまで、移動と破砕とが繰り返えされる。結果として一定の径以下になった破砕物はスクリーンを通過して排出される。
【0009】
よって、一軸破砕機は、スクリーンの存在により、破砕物の粒径を揃えることができる(特許文献1、段落番号0011)。
ただし、被破砕物が極めて大きいときは、この大きな被破砕物は、回転歯と固定歯の上で踊った状態となり、回転歯と固定歯とになかなか噛み込まない(特許文献1、段落番号0012)。
【0010】
二軸破砕機は、2本の回転軸を備え、各回転軸に回転歯を備えている。2本の回転軸を互いに逆方向に回す。被破砕物は、一方の回転軸の回転歯と他方の回転軸の回転歯とによるせん断作用によって破砕される。
【0011】
仮に、2本の回転軸の下にスクリーンを配置した場合、破砕物はスクリーンに直角に衝突する。スクリーンに沿って移動することはあまり期待できない。結果、回転歯とスクリーンの間に破砕物が滞留し詰まる。
滞留対策や詰まり対策を講じることは容易でないために、二軸破砕機ではスクリーンを設けないことが、当業者の常識になっている。
【0012】
すなわち、二軸破砕機は、2本の回転軸を互いに逆方向に回転させるため、大きな被破砕物でも噛み込む(特許文献1、段落番号0009)。
ただし、先に述べたように、スクリーンを備えていないので、破砕物の粒径を揃えることはできない。
【0013】
特許文献1では、二軸破砕機で粗い破砕を行い、一軸破砕機で細かい破砕を行うことで、噛み込み性を高めつつ、破砕物の粒径を揃える。
ただし、二軸破砕機と一軸破砕機との両方を配置するため、設備コストが嵩むと共に設備の設置面積が大きくなる。
【0014】
本発明者らは、二軸破砕機のみで、細かい破砕を行う技術を提案した(特許文献2参照)。
すなわち、特許文献2は、軟質ウレタンフォームの廃材を二軸破砕機で破砕し且つ破砕物同士を擦り合わせることで、平均粒径が1.0mm以下の軟質微粉末を製造する技術を提供する。
【0015】
特許文献1に比較して特許文献2は、二軸破砕機のみで済むため、設備コストが低減でき且つ設備の設置面積が小さくなるという利点がある。
ただし、スクリーンを備えていないため、特許文献2の技術であっても、破砕物の粒径を揃えることはできない。
【0016】
設備コストの低減が求められる中、従来、粒径の制御ができないとされてきた二軸破砕機を改良することを前提とし、粒径が異なる軟質ウレタン微粉末を製造することができる製造技術が切望されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002-355575号公報
【特許文献2】特開2019-077177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、粒径が異なる軟質ウレタン微粉末を製造することができる軟質ウレタン微粉末の製造技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
2本の破砕スクリューを内蔵する破砕機は、正しくは「二軸スクリュー式破砕機」と呼ばれる。以下、二軸スクリュー式破砕機を「二軸破砕機」と略記する。
【0020】
本発明者らは、二軸破砕機を用いて、軟質ウレタンフォームを破砕する研究を進める過程で、特異な現象を見出した。この特異な現象を
図1に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、二軸破砕機は、主ケース21と、この主ケース21に収納された2本の破砕スクリュー30、35(ただし、破砕スクリュー35は破砕スクリュー30の奥に配置されている。)とを主要素とする。
破砕スクリュー30、35は、回転する主軸31と、この主軸31に設けられた螺旋状のノーマル羽根32とからなる。
【0022】
一方の破砕スクリュー30と、他方の破砕スクリュー35は互いに逆方向に回される。
軟質ウレタンフォームの破砕片38は、一方の破砕スクリュー20のノーマル羽根32と他方の破砕スクリュー30のノーマル羽根32とのせん断作用により、破砕される。
加えて、破砕片38は、主ケース21の内面とノーマル羽根32との間で圧壊され、破砕される。
結果、破砕された微粉末39が得られる。
【0023】
ところで、あるときに通常より大径の微粉末39が得られた。調べてみると、そのときの破砕片38は、かなり湿っていた。そのときの軟質ウレタンフォームは屋外に置かれ、降雨により中心まで濡れていたことが分かった。
【0024】
本発明者らは、濡れた破砕片38の表面に水膜ができ、この水膜がノーマル羽根32に接し、ノーマル羽根32と破砕片38との間の摩擦係数を低下させ、破砕片38がノーマル羽根32上をスリップする。そして、このスリップによりせん断作用が弱められ、微粉末39の径が小さくならなかったと推定した。加えて、濡れた破砕片38同士がスリップし、このスリップによりせん断作用が弱められ、微粉末39の径が小さくならなかったと推定した。
【0025】
この推定を確かめるために、二軸破砕機に、給水機構を付設した。そして給水機構で被破砕物の湿り度合いを変化させる実験を行った。すると、給水量が多いと微粉末39の径が大きくなり、給水量が少ないと微粉末39の径が小さくなった。この実験を踏まえて完成した発明は以下の通りである。
【0026】
請求項1に係る発明は、粒径が異なる軟質ウレタン微粉末を製造する軟質ウレタン微粉末の製造装置であって、
主軸と、この主軸に固定され前記主軸の基部から先端に向かって延び螺旋状を呈するノーマル羽根と、このノーマル羽根に対してリード角が負とされ前記ノーマル羽根の先端に連続するようにして前記主軸に固定されるカウンター羽根と、からなる破砕スクリューを平行に2本備え、一方の前記破砕スクリューに対して他方の前記破砕スクリューを逆回転させることで、前記軟質ウレタンフォームを破砕し、得られた小径破砕物を前記カウンター羽根でせき止めつつ摺り合せることで前記軟質ウレタン微粉末を得る二軸破砕機と、
前記カウンター羽根とこのカウンター羽根に向かい合う前記ノーマル羽根との間の領域へ給水する給水ノズル及びこの給水ノズルへ向かう水の量を調整する給水弁と、からなることを特徴とする。
【0027】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の軟質ウレタン微粉末の製造装置、及び複数個の前記軟質ウレタンフォームを準備する工程と、
前記水の量を変化させ、異なる前記水の量毎に、前記軟質ウレタン微粉末の製造装置で前記軟質ウレタンフォームを破砕し摺り合せて得られた前記軟質ウレタン微粉末を顕微鏡で観察する工程と、
観察した前記軟質ウレタン微粉末が、セルを内包する微粉末と鳥足状の微粉末の何れであるかを区別する工程と、
この区別に基づいて、前記セルを内包する微粉末が得られる前記水の量を第1水量と定め、前記鳥足形状の微粉末が得られる前記水の量を第2水量と定める工程と、
前記給水弁の開度を前記第1水量になるように調整して前記セルを内包する微粉末を製造する、又は前記給水弁の開度を前記第2水量になるように調整して前記セルを内包する微粉末より小径で且つ鳥足状の微粉末を製造する通常運転工程とからなる軟質ウレタン微粉末の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る発明では、カウンター羽根を有する二軸破砕機に、給水ノズル及び給水弁を付設することで、粒径が異なる軟質ウレタン微粉末が製造可能となる。
すなわち、本発明により、粒径が異なる軟質ウレタン微粉末を製造することができる軟質ウレタン微粉末の製造装置が提供される。
【0029】
請求項2に係る発明では、給水弁の開度を第1水量になるように調整することでセルを内包する微粉末を製造する。又は給水弁の開度を第2水量になるように調整することでセルを内包する微粉末より小径で且つ鳥足状の微粉末を製造する。
本発明により、粒径が異なる軟質ウレタン微粉末を製造することができる軟質ウレタン微粉末の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本発明に係る軟質ウレタン微粉末の製造装置の基本構成を説明する図である。
【
図8】軟質ウレタン微粉末の製造装置の変更例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0032】
[軟質ウレタン微粉末の製造装置]
図2に示すように、軟質ウレタン微粉末の製造装置10は、二軸破砕機20と、給水機構50とを主たる構成要素とする装置である。
以下、各構成要素を詳しく説明する。
【0033】
[二軸破砕機]
図3は二軸破砕機20の平面図である。
図3に示すように、二軸破砕機20は、例えば、互いに平行に配置した2本の破砕スクリュー30、35と、これらの破砕スクリュー30、35を回転自在に収納する主ケース21と、一方の破砕スクリュー30の基部に取り付けられた第1ギヤ22と、第1ギヤ22を回しつつ一方の破砕スクリュー30を回す減速機23付き電動機24と、第1ギヤ22に噛み合いつつ他方の破砕スクリュー35の基部に取り付けられた第2ギヤ25と、からなる。
【0034】
第1ギヤ22と第2ギヤ25は同径であり、ギヤケース26に収納される。
一方の破砕スクリュー30は、主軸31と、この主軸31に固定され主軸31の基部から先端に向かって連続的にピッチが小さくなるノーマル羽根32と、このノーマル羽根32のリード角θ1が正の場合にリード角θ2が負となるようなカウンター羽根33と、からなる。
【0035】
カウンター羽根33は、ノーマル羽根32の先端に連続すると共に主軸31に固定される。
螺旋状のノーマル羽根32のうち、カウンター羽根33に向かい合う部位を、ノーマル羽根32Eとして、位置を明確にする。
【0036】
他方の破砕スクリュー35は、一方の破砕スクリュー30と同様な構造であるため、符号を流用し、詳細な説明は省略する。
主ケース21は、基部にホッパー27を有し、先端に排出口28を有する。
【0037】
電動機24で、一方の破砕スクリュー30を所定方向に回すと、第1ギヤ22及び第2ギヤ25を介して他方の破砕スクリュー35は逆方向に回る。
【0038】
[二軸破砕機の作用]
以上に述べた二軸破砕機20の作用を、
図4に基づいて説明する。
図4(a)に示すように、軟質ウレタンフォーム36を、ホッパー27から主ケース21内へ投入する。
軟質ウレタンフォーム36は、ノーマル羽根32で砕かれると共にノーマル羽根32と主ケース21内面とで圧壊され中径破砕片37となる。
【0039】
また、ノーマル羽根32は連続的にピッチが小さくなっているため、中径破砕片37同士が圧縮され、圧壊される。結果、先端では小径破砕片38が得られる。
この小径破砕片38は、先端のノーマル羽根32Eにより前進し、このノーマル羽根32Eに続くカウンター羽根33で押し戻される。
【0040】
図4(b)は、
図4(a)のb部拡大図であり、矢印(1)のように前進し、矢印(2)のように戻されると、小径破砕片38は、滞留し、見かけ上、矢印(3)、(4)のように摺り合わされる。結果、小径破砕片38は、局部的に欠け、この欠けが更に摺り合わされ、結果として軟質ウレタン微粉末39が得られる。
【0041】
[給水機構]
図2に示すように、給水機構50は、カウンター羽根33とこのカウンター羽根33に向かい合うノーマル羽根32Eとの間の領域Wに給水するように主ケース21の上部に取り付けられる給水ノズル51と、この給水ノズル51へ水を供給する給水源52と、この給水源52から給水ノズル51に到る水管53と、この水管53に設けられる給水弁54及び流量計55とからなる。
【0042】
好ましくは、水管53に、温度計56及び圧力計57を設ける。また、二軸破砕機20の周囲の見やすい所に、大気湿度(相対湿度)を測る湿度計58を設ける。
【0043】
[給水ノズル]
給水ノズル51は、先端に多孔板を有する散水ノズルやシャワーノズルのような構造のノズルで差し支えない。水圧により多孔板の孔からシャワー水のように水が吹き出る。
給水ノズル51は、水のみが供給されるタイプの他、水及び空気(高圧空気、圧縮空気)が供給される噴霧ノズルであってもよい。噴霧ノズルでは空気で水を霧にするため、好ましい形状のスプレーパターンが得られる。ただし、空気源を別途準備する必要があるため、この実施例では水のみによる給水ノズル51を採用した。
【0044】
[給水源]
給水源52は、公共の水道管で差し支えないが、水槽及びポンプであってもよい。
【0045】
[給水弁]
給水弁54は、ボール弁や玉形弁が好ましいが、タイプは任意である。また、手動弁と自動弁の何れであってもよい。
【0046】
[流量計]
流量計55は、タイプは任意であるが、例えば、目盛りが付いた透明なテーパー管に円錐台状の浮子を上下動自在に収納し、テーパー管の下部に入口、上部に出口を設けてなる面積式流量計が好ましい。この種の流量計は、安価であり且つ入手が容易である。
水の流量が小さいときは浮子がテーパー管の下部に留まり、水の流量が増すと浮子が上昇する。浮子の位置を目盛りで読むことで、視覚的に水の流量を知ることができる。
【0047】
[温度計]
温度計56は、タイプは任意であるが、例えば、安価で入手が容易な棒状温度計やダイヤル式温度計で差し支えない。
本発明における給水は、スリップ促進作用の他に、主ケース21内の破砕片や微粉末を冷却する作用を発揮する。
夏場の昼間は大気温度の上昇に伴って水の温度も上がる。温度が上がるにつれて冷却作用が低下する。そのため、温度計56で水の温度を監視し、一定温度以下であれば運転を継続し、一定温度を超えたら対策を講じるようにする。対策として、装置の休止が有効である。
【0048】
[圧力計]
圧力計57は、タイプは任意であるが、例えば、安価で入手が容易なブルドン管式圧力計で差し支えない。
【0049】
以上に述べたように、本発明に係る軟質ウレタン微粉末の製造装置10は、次に述べる構成要素からなる。
すなわち、軟質ウレタン微粉末の製造装置10は、
図3に示すような主軸31と、この
固定され前記主軸31の基部から先端に向かって延び螺旋状を呈するノーマル羽根32と、このノーマル羽根32に対してリード角が負とされ前記ノーマル羽根32の先端に連続するようにして前記主軸31に固定されるカウンター羽根33と、からなる破砕スクリュー30、35を平行に2本備え、一方の前記破砕スクリュー30に対して他方の前記破砕スクリュー35を逆回転させることで、
図4に示す前記軟質ウレタンフォーム36を破砕し、得られた小径破砕物38を前記カウンター羽根33でせき止めつつ摺り合せることで軟質ウレタン微粉末39を得る二軸破砕機20と、
前記カウンター羽根33とこのカウンター羽根33に向かい合うノーマル羽根32Eとの間の領域Wへ給水する給水ノズル(
図2、符号51)及びこの給水ノズルへ向かう水の量を調整する給水弁(
図2、符号54)と、からなる。
【0050】
以上に述べた軟質ウレタン微粉末の製造装置10を用いて実施する軟質ウレタン微粉末の製造方法を次に説明する。
【0051】
[準備する工程]
図2に示す軟質ウレタン微粉末の製造装置10を準備すると共に、同質で同寸法の軟質ウレタンフォーム36を、例えば5枚準備する。
【0052】
また、流量計55で計測する水の量が、Q1、このQ1より増量したQ2、このQ2より増量したQ3、このQ3より増量したQ4、このQ4より増量したQ5の何れかになるように、給水弁54の弁開度を人為的(又は自動的)に調節することにする。
また、5枚の軟質ウレタンフォーム36を処理するとき、破砕スクリュー30、35の回転速度は同一にする。
【0053】
[観察する工程]
水の量をQ1として、軟質ウレタンフォーム36を軟質ウレタン微粉末の製造装置10へ投入し、軟質ウレタン微粉末(
図4、符号39)を得た。
このときの軟質ウレタン微粉末39を顕微鏡で拡大しつつ観察したところ、軟質ウレタン微粉末39は、大小の粒径の混合物ではあるが、概ね70%が、
図5に示すような0.3mm×0.3mmの大きさの鳥足状の微粉末39であった。
【0054】
鳥足状の微粉末39は、樹脂へ添加する添加材として有益である。微粉末39を添加することで、樹脂の所要量を大幅に低減することができる。
加えて、鳥足状の微粉末39は、濡れ性がよいため、樹脂と結合し、樹脂製品の強度を高める作用を発揮する。
【0055】
さらに加えて、鳥足状の微粉末39は、セルを有しないため、表面積が大きくなる。表面積が大きい薬品などとの反応性がよくなる。
よって、鳥足状の微粉末39は、有効活用が図れる。
【0056】
次に水の量を増やし、水の量をQ2として、軟質ウレタンフォーム36を軟質ウレタン微粉末の製造装置10へ投入し、軟質ウレタン微粉末39を得た。
このときの軟質ウレタン微粉末39を顕微鏡で拡大しつつ観察したところ、軟質ウレタン微粉末39は、大小の粒径の混合物ではあるが、概ね70%が、
図6に示すような1.0mm×0.7mmの大きさの鳥足状の微粉末39であった。
【0057】
次に、Q1<Q2<Q3<Q4<Q5における上から2番目のQ4に水の量を設定し、軟質ウレタンフォーム36を軟質ウレタン微粉末の製造装置10へ投入し、軟質ウレタン微粉末39を得た。
このときの軟質ウレタン微粉末39を顕微鏡で拡大しつつ観察したところ、軟質ウレタン微粉末39は、大小の粒径の混合物ではあるが、概ね70%が、
図7に示す形状で、2.0mm×2.0mm程度の大きさのセル41を内包する微粉末39であった。
【0058】
セル41を内包する微粉末39は、樹脂へ充填する充填材として有益である。微粉末39をコアにして樹脂をスキン(表皮)にすることで、樹脂の所要量を大幅に低減することができる。得られた樹脂製品は、セル41の存在により、軽量で且つ断熱性能が高い。よって、セル41を内包する微粉末39は、各種の用途に供される。
【0059】
次に、Q1<Q2<Q3<Q4<Q5における最大のQ5に水の量を設定し、軟質ウレタンフォーム36を軟質ウレタン微粉末の製造装置10へ投入し、軟質ウレタン微粉末39を得た。
このときの軟質ウレタン微粉末39を顕微鏡で拡大しつつ観察したところ、軟質ウレタン微粉末39は、大小の粒径の混合物ではあるが、概ね70%が、
図7に示す形状のセル41を内包する微粉末39であった。微粉末39の大きさは4.0mm×4.0mm程度であった。
【0060】
次に、Q1<Q2<Q3<Q4<Q5における中間のQ3に水の量を設定し、軟質ウレタンフォーム36を軟質ウレタン微粉末の製造装置10へ投入し、軟質ウレタン微粉末39を得た。
このときの軟質ウレタン微粉末39を顕微鏡で拡大しつつ観察したところ、軟質ウレタン微粉末39は、
図6に示す鳥足状の微粉末39と、
図7に示すセル41を内包する微粉末39の混合物であった。
【0061】
以上の観察から、供給する水の量が多いときには、
図1で説明したように、スリップ現象が顕著となり、破砕や摺り合せが不十分となり、
図7に示すようなセル41を内包する微粉末39の割合が多くなる。
【0062】
供給する水の量が少ないときには、スリップ現象が抑制され、十分な破砕と摺り合せがなされ、結果、
図5や
図6に示す鳥足状の微粉末39の割合が多くなる。
【0063】
図7に示すセル41を内包する微粉末39が、4個に分割されると、
図6に示す鳥足状の微粉末39となることが理解できる。また、
図6に示す鳥足状の微粉末39が分割されると、
図5に示す小さな鳥足状の微粉末39となることが理解できる。
【0064】
[区別する工程]
次の表1に示すように、水量毎に微粉末の主たる形状を区別する。
【0065】
【0066】
[水量を定める工程]
【0067】
【0068】
表2の水の量Q4とQ5に注目すると、水の量がQ4又はQ5であれば、セルを内包する微粉末が得られる。そこで、Q4、Q5及びこれらの平均値である(Q4+Q5)/2の何れかを、第1水量と定める。
【0069】
また、表2の水の量Q1とQ2に注目すると、水の量がQ1又はQ2であれば、鳥足状の微粉末が得られる。そこで、Q1、Q2及びこれらの平均値である(Q1+Q2)/2の何れかを、第2水量と定める。
【0070】
第1水量は、Q4、Q5又はこれらの平均値の3つから選択するため、選択の幅があり、弾力的に運用ができるという利点がある。反面、選択に迷うという欠点もある。第2水量についても同様である。
その対策の一つを表3で提供する。
【0071】
【0072】
大気湿度を指標に加える。大気湿度は相対湿度であり、湿度計(
図2、符号58)から情報を得る。また、大気湿度は気象庁から随時発表されるので、この情報を利用してもよい。
【0073】
冬季などの乾燥期には、大気湿度が35%未満になることがある。このときには、第1水量をQ5に設定し、第2水量をQ2に設定する。すなわち、多めに水を供給することで、給水不足を防止する。
また、梅雨時などには、大気湿度が70%以上になることがある。このときには、第1水量をQ4に設定し、第2水量をQ1に設定する。すなわち、少なめに水を供給することで給水過多を防止する。
【0074】
また、大気湿度が35%~69%の範囲にあるときには、第1水量を(Q4+Q5)/2に設定し、第2水量を(Q1+Q2)/2に設定する。
表3によれば、第1水量と第2水量とが一義的に定まるため、装置の運転や管理が容易になる。
【0075】
なお、Q1には0(ゼロ)を含めてもよい。給水弁54を全閉にすることで、0にすることができる。
【0076】
[通常運転工程]
図2において、セルを内包する微粉末を製造するときには、給水ノズル51に供給する水の量が、第1水量になるように給水弁54の開度を調節する。
軟質ウレタンフォーム36は、一対の破砕スクリュー30、35で破砕されつつ、排出口28へ向かう。その間、カウンター羽根33とノーマル羽根32Eとの間の領域Wで、給水ノズル51からの給水を受けて破砕片が濡れてカウンター羽根33やノーマル羽根32Eとの間でスリップする。このスリップにより、破砕や摺り合せが抑制され、結果的にセルを内包する微粉末(
図7、符号39)が、排出口23から排出される。
【0077】
また、
図2において、鳥足状の微粉末を製造するときには、給水ノズル51に供給する水の量が、第2水量になるように給水弁54の開度を調節する。
軟質ウレタンフォーム36は、一対の破砕スクリュー30、35で破砕されつつ、排出口28へ向かう。その間、カウンター羽根33とノーマル羽根32Eとの間の領域Wで、給水ノズル51からの給水を受けて破砕片が濡れてカウンター羽根33やノーマル羽根32Eとの間で僅かにスリップする。
しかし、このスリップは許容できるほどに小さいため、所定の破砕や摺り合せが為され、結果的に鳥足状の微粉末(
図5、
図6、符号39)が、排出口23から排出される。
【0078】
給水ノズル51で供給する水は、次に述べる役割を果たす。
第1の役割は、二軸破砕機であるにも拘わらず、大きな粒径の微粉末(セルを内容する微粉末)と小さな粒径の微粉末(鳥足状の微粉末)を選択的に製造することである。
【0079】
第2の役割は、冷却作用である。
本発明では破砕片同士を摺り合せるため、摩擦により発熱する。放置すると火災を誘発する。水で冷却することで、火災の発生を防止することできる。
【0080】
第3の役割は、静電気対策である。
本発明では破砕片同士を摺り合せるため、静電気が発生する。放置すると爆発を誘発する。静電気は乾燥と摩擦の2つの条件が重なると発生するため、水で濡らすことで乾燥を無くすると、静電気の発生が抑制される。
【0081】
なお、水は、水道水などの単なる水の他、ある種の物質を添加した水溶液であってもよい。ある種の物質として、本発明で製造された軟質ウレタン微粉末39が保管中に凝集して塊になることを防止する分散剤や、軟質ウレタン微粉末39を改質する添加剤が挙げられる。
ある種の物質が水溶液に占める割合は、上記第1~第3の役割が発揮されることを条件に、任意に設定することができるが、数%以下に留め、大部分を水とするが望ましい。
【0082】
また、
図2に示す軟質ウレタン微粉末の製造装置10において、作業員が流量計55を目視しつつ給水弁54を操作することは差し支えないが、省力化(無人化)を目的に一層の自動化を図るようにしてもよい。一層の自動化を図った実施例を、
図8に基づいて説明する。
【0083】
図8に示すように、軟質ウレタン微粉末の製造装置10は、二軸破砕機20と、給水機構50と、制御部70とを主たる構成要素とする装置である。
二軸破砕機20については、
図2と同じであるため、
図2の符号を流用して、詳細な説明は省略する。
【0084】
給水機構50は、カウンター羽根33とこのカウンター羽根33に向かい合うノーマル羽根32Eとの間の領域Wに臨むように主ケース21の上部に取り付けられる給水ノズル51と、この給水ノズル51へ水を供給する給水源52と、この給水源52から給水ノズル51に到る水管53と、この水管53に設けられる給水弁54及びオリフィス61と、水管53に設けられる温度センサ62及び圧力センサ63とからなる。
二軸破砕機20の周囲に、大気湿度(相対湿度)を測る湿度センサ64を設ける。
【0085】
給水弁54は、手動に切換え可能な自動弁が好ましい。
オリフィス61は、上流側と下流側に圧力差を発生させる穴開き板である。水の流量が大きいほど差圧は大きくなる。差圧は、差圧/流量変換器65により、流量信号に変換され、この流量信号が制御部70に提供される。
制御部70は流量情報を含む諸情報を、モニター66に送り表示させる。
【0086】
温度センサ62は、水管53内を流れる水の温度を温度信号の形態で制御部70へ提供する。
圧力センサ63は、水管53内を流れる水の圧力を圧力信号の形態で制御部70へ提供する。
湿度センサ64は、大気湿度を湿度信号の形態で制御部70へ提供する。
【0087】
本発明の軟質ウレタン微粉末の製造方法中、観察する工程及び区別する工程においては、給水弁54を手動に切換え、モニター66からそのときの水の量の情報を取得する。すなわち、給水弁54を手動に切換えることで、本発明の軟質ウレタン微粉末の製造方法中の観察する工程及び区別する工程を実施する。
【0088】
本発明の軟質ウレタン微粉末の製造方法中、水量を定める工程は、次の要領で実施する。
(1)第1水量及び第2水量の絞り込み:
制御部70は、湿度センサ64から湿度信号を取得する。そして、そのときの湿度を、上述の「表3」に適用し、この表3に基づいて、そのときの第1水量と第2水量とを定める。
【0089】
本発明の軟質ウレタン微粉末の製造方法中、通常運転工程は、次の要領で実施する。
(2)通常運転工程では、上位コンピュータなどから制御部70へセル内包又は鳥足の製造指令が与えられる。
(3)制御部70に、セルを内包の微粉末を製造する指令が与えられたとき:
制御部70は、差圧/流量変換器65から得られる流量情報が第1水量になるように給水弁54の開度を調節する。これにより、排出口28から、セルを内包の微粉末を主とする軟質ウレタン微粉末が排出される。
【0090】
(4)制御部70に、鳥足状の微粉末を製造する指令が与えられたとき:
制御部70は、差圧/流量変換器65から得られる流量情報が第2水量になるように給水弁54の開度を調節する。これにより、排出口28から、鳥足状の微粉末を主とする軟質ウレタン微粉末が排出される。
【0091】
(5)通常運転中の水温監視:
水の温度が一定値を超えて上昇すると、冷却作用が低下して、破砕片や微粉末が高温になり、発火する。
制御部70は、温度センサ62により常に水の温度を監視し、水の温度が一定値以下であれば、通常運転を継続し、水の温度が一定値を超えたら警報を発する。警報と共に電動機24を減速又は停止させるようにいてもよい。好ましくは停止して、二軸破砕機20を冷却する。十分に冷却したら通常運転を再開する。
【0092】
(6)通常運転中の水圧監視:
水の圧力が一定値を超えると、給水ノズル51の目詰まり詰まりが懸念される。
制御部70は、圧力センサ63により常に水の圧力を監視し、水の圧力が一定値以下であれば、通常運転を継続し、水の圧力が一定値を超えたら警報を発する。警報と共に電動機24を停止させるようにいてもよい。そして、給水ノズル51を交換する又は清掃するなどの処置を講じる。その後に、通常運転を再開する。
【0093】
なお、表3に基づいて第1水量及び第2水量を制御部70が定める他、上記コンピュータ又は人手で制御部70へ第1水量情報及び第2水量情報を与え、これらの情報を優先させるようにしてもよい。
【0094】
モニター66には、水の流量の他、水の温度、水の圧力、大気湿度、第1水量、第2水量などが時系列的に表示するようにしてもよい。また、モニター66は、情報が印字されている記録紙に変更してもよい。
【0095】
[給水ノズルの数]
図9に示すように、給水ノズル51は、複数個であってもよい。
【0096】
[領域Wの長さ]
図9に示すように、給水ノズルで給水する領域は、カウンター羽根33と向かい合うノーマル羽根32Eとの間の領域Wが最も好ましい。この領域Wにおいて、小径破砕片(
図4(b)、符号38)の摺り合せが顕著となり、この摺り合せ中に給水することでスリップを促すことが、最小の水で最大のスリップ効果が得られるからである。
【0097】
しかし、
図10に示すように、給水ノズル51で給水する領域を、領域WWに拡張することは許容される。要は、領域WWに領域Wが含まれていればよい。
ただし、領域Wよりもホッパー27側の領域は、破砕が主であり摺り合せ中のスリップは期待できない。すなわち、領域を広げ且つ給水ノズル51を増やした割に、スリップ効果の増加は見込めない。
【0098】
そのため、領域WWは、領域Wの3倍以内とし、好ましくは領域Wの2倍に留める。
領域WWを、領域Wの2倍にすると、冷却作用が強化でき、静電対策が強化できる。
領域WWを、領域Wの3倍にすると、冷却作用がさらに強化でき、静電対策がさらに強化できる。
【0099】
よって、給水スプレー51で給水する領域は、領域Wの3倍までは許容され、好ましくは領域Wの2倍とし、さらに好ましくは領域Wとする。
10…軟質ウレタン微粉末の製造装置、20…二軸破砕機、30…破砕スクリュー(一方の破砕スクリュー)、31…主軸、32…ノーマル羽根、32E…カウンター羽根に向かい合うノーマル羽根、33…カウンター羽根、35…破砕スクリュー(他方の破砕スクリュー)、36…軟質ウレタンフォーム、38…小径破砕片、39…軟質ウレタン微粉末(微粉末、セルを内包する微粉末、鳥足状の微粉末)、41…セル、50…給水機構、51…給水ノズル、54…給水弁、W…カウンター羽根とこのカウンター羽根に向かい合うノーマル羽根との間の領域。