(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099258
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】窯炉排ガス再生装置、システム及び方法、並びに窯炉システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20240718BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240718BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20240718BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240718BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240718BHJP
【FI】
B01D53/22
H01M8/04 Z
C01B3/00 A
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003071
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508243145
【氏名又は名称】マイクロコントロールシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】黒嶋 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】吉野 祐翔
(72)【発明者】
【氏名】三竹 晃司
(72)【発明者】
【氏名】田上 勝通
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 元広
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 壮一
【テーマコード(参考)】
4D006
4G140
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006JA52Z
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4D006PB66
4D006PC80
4G140AA12
5H126BB04
5H126BB05
5H126BB06
5H127AA03
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA02
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5H127BA40
5H127BA62
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもってこの金属から吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、貴ガスと吸蔵ガスとを含む混合ガスを、再利用可能なガスに再生する窯炉排ガス再生装置を提供する。
【解決手段】本窯炉排ガス再生装置は、上記の窯炉より排出された、貴ガスと吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取り、吸蔵ガスと貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、受け取った混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにする貴ガス抽出手段を有する。ここで、貴ガスはアルゴンガスであることも好ましい。また、本窯炉排ガス再生装置は、貴ガス濃度の増大したガスを、上記の雰囲気として再利用させるべく、窯炉又は窯炉用のガス貯蔵器へ送る貴ガス送出手段を更に有することも好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取り、当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにする貴ガス抽出手段を有することを特徴とする窯炉排ガス再生装置。
【請求項2】
当該貴ガスはアルゴンガスであることを特徴とする請求項1に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項3】
当該貴ガス濃度の増大したガスを、当該雰囲気として再利用させるべく、前記窯炉又は前記窯炉用のガス貯蔵器へ送る貴ガス送出手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項4】
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタと、当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口の後段に設けられた当該燃料電池とを用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることを特徴とする請求項1に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項5】
前記貴ガス抽出手段は、ガス圧縮器を用い、大気圧を超える高圧をもって当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、さらに大気圧を超える高圧をもって、当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口から取り出したガスを当該燃料電池の燃料ガス室に導入して当該吸蔵ガスを酸化させることを特徴とする請求項4に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項6】
前記貴ガス抽出手段は、当該燃料電池の燃料ガス室の後段に設けられた、当該吸蔵ガス及び当該貴ガスについて透過する度合いの異なる別のフィルタを更に用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることを特徴とする請求項4に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項7】
前記貴ガス抽出手段は、当該燃料電池と、当該燃料電池の燃料ガス室の後段に設けられた当該フィルタとを用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることを特徴とする請求項1に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項8】
前記貴ガス抽出手段は、ガス圧縮器を用い、大気圧を超える高圧をもって、当該混合ガスを当該燃料電池の当該燃料ガス室に導入して当該吸蔵ガスを酸化させ、さらに大気圧を超える高圧をもって、当該燃料電池の当該燃焼ガス室から取り出したガスを当該フィルタに作用させることを特徴とする請求項7に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項9】
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、残留吸蔵ガス濃度が小さくなるとして設定された値のガス流量、又は残留吸蔵ガス濃度が小さくなるとして設定されたガス流量値範囲内にあるガス流量をもって、当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタから当該貴ガス濃度の増大したガスを取り出すことを特徴する請求項1から8のいずれか1項に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項10】
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、当該貴ガスの回収率が高くなるとして設定された値のガス圧力、又は当該貴ガスの回収率が高くなるとして設定されたガス圧力値範囲内にあるガス圧力をもって、当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタから当該貴ガス濃度の増大したガスを取り出すことを特徴する請求項1から8のいずれか1項に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項11】
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、当該フィルタに係るフィルタリング条件としてのガス圧力及び/又はガス流量であって、受け取った当該混合ガスにおける当該貴ガス又は当該吸蔵ガスの濃度に応じて決定されたガス圧力及び/又はガス流量をもって当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタから当該貴ガス濃度の増大したガスを取り出すことを特徴する請求項1に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項12】
受け取った当該混合ガスにおける当該貴ガス若しくは当該吸蔵ガスの濃度に基づき、予め設定された時間スケジュールに基づき、又は外部からの指示に基づき、当該フィルタ及び当該燃料電池のうちで用いるものを決定する制御手段を更に有し、
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタ及び当該燃料電池を備えており、決定された当該フィルタ及び/又は当該燃料電池を用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることを特徴する請求項1に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項13】
前記制御手段は、受け取った当該混合ガスにおける当該貴ガス若しくは当該吸蔵ガスの濃度に基づき、予め設定された時間スケジュールに基づき、又は外部からの指示に基づき、当該フィルタとその後段の当該燃料電池とを結ぶ流路パターン、当該燃料電池とその後段の当該フィルタとを結ぶ流路パターン、及び当該フィルタを含み当該燃料電池を含まない流路パターンを含む流路パターンセットのうちから、用いる流路パターンを選択し、
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタ、当該燃料電池、及び、当該流路パターンセットに含まれる各流路パターンを具現させる流路切替バルブを備えており、選択された当該用いる流路パターンを具現させて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることを特徴する請求項12に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項14】
前記制御手段は、最初に、当該燃料電池とその後段の当該フィルタとを結ぶ流路パターンを選択し、その後、当該フィルタとその後段の当該燃料電池とを結ぶ流路パターンを選択することを特徴とする請求項13に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項15】
前記貴ガス抽出手段が受け取る、前記窯炉より排出された当該混合ガスは、当初、当該吸蔵ガスの濃度が当該貴ガスの濃度よりも高く、その後、当該貴ガスの濃度が当該吸蔵ガスの濃度よりも高くなる混合ガスであることを特徴する請求項1、2、3、4、5、6、7、8,11、12、13又は14に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項16】
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口から、当該吸蔵ガス濃度の増大したガスを取り出すことを特徴する請求項1、2、3、4、5、6、7、8,11、12、13又は14に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項17】
前記貴ガス抽出手段は、順次接続された複数の当該フィルタであって、2番目以降の当該フィルタの入口が、1つ前の当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口に接続されている複数の当該フィルタを用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8,11、12、13又は14に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項18】
前記貴ガス抽出手段は、前記ガス圧縮器の前段に、当該混合ガスを一時的に貯めるバッファタンク、及び当該混合ガスを前記バッファタンクに送るブロアを更に備えていることを特徴とする請求項5又は8に記載の窯炉排ガス再生装置。
【請求項19】
吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取り、当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにする貴ガス抽出手段を有することを特徴とする窯炉排ガス再生システム。
【請求項20】
吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉と、
前記窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取り、当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにする貴ガス抽出手段と、
当該貴ガス濃度の増大したガスを、当該雰囲気として再利用させるべく、前記窯炉又は前記窯炉用のガス貯蔵器へ送る貴ガス送出手段と
を有することを特徴とする窯炉システム。
【請求項21】
吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取るステップと、
当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにするステップと
を有することを特徴とする窯炉排ガス再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯炉から排出されるガスを処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネオジム-鉄-ボロン(Nd-Fe-B)磁石等の希土類磁石は、電気自動車用電動モータ等の電気駆動系の製造には欠かせない重要な材料となっており、来るカーボンニュートラル社会において、その需要はさらに増大することが期待される。
【0003】
この希土類磁石は一般に、溶融法で生成した希土類元素、金属元素及びホウ素を含む原料合金塊を、(a)粗粉砕してから(b)ジェットミル等によって合金粉末にし(微粉砕し)、その後、この合金粉末を(c)磁場中で圧縮成形して、この成形体に対し(d)焼結・熱処理、及び(e)各種加工を施すことによって製造される。ここで上記(a)の原料合金塊の粉砕(粗粉砕)には相当に手間がかかり、その結果、全体の生産性を低減させてしまう問題が生じてしまう。
【0004】
この問題に対し、例えば特許文献1には、上記の原料合金塊に対し水素を吸蔵させ、次いでこれに熱処理を施して粉砕させることにより、粗粉砕を行った合金粉末を製造する装置が開示されている。一般に、希土類元素を含む希土類合金は、水素を多量に吸蔵する性質を有する。このように多量の水素を吸蔵した原料合金塊を加熱すると、水素原子の介在によって金属原子間の結合力が弱まっている中、さらなる膨張が生じ、これにより、原料合金塊にクラックが生じて自己崩壊的に合金粉末化が進行するのである。
【0005】
ここで、特許文献1に開示された合金粉末の製造装置は、水素吸蔵した合金粉末を加熱し脱水素化する回転可能な熱処理部を備えており、この熱処理部は、処理時に内部にアルゴンガスを導入するためのガス供給機構を有している。合金粉末製造の際は、この熱処理部を回転させるとともに、熱処理部内にアルゴンガスを導入しながら水素吸蔵した合金粉末を加熱し脱水素化させる。これにより、合金粉末から放出された水素はアルゴンガスとともに速やかに排出され、効率的な脱水素化が実現するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、希土類磁石の合金粉末の製造においては、特許文献1に開示されたような「水素吸蔵」→「加熱による合金粉末化・脱水素化」が採用されている。具体的には、キルン(窯炉)内において、水素吸蔵した原料合金塊を粗粉砕したものを、導入したアルゴンガス雰囲気(非酸化雰囲気)で数百℃にまで加熱して、水素ガスを放出させつつ粗粉砕し、次いで放出された水素ガスを、アルゴンガスとともにキルン外へ排出するのである。ちなみに粗粉砕された合金塊、すなわち合金粉末は、非酸化性雰囲気の下で次の工程に移送される。
【0008】
ここで、水素ガスとともに排出されるアルゴンガスは、水素ガスと混じった混合ガスの状態となっている。したがってこのアルゴンガスは、再利用が困難であり、従来、窒素ガス等で希釈されて外部に排出され廃棄されるのが実情であった。またそれ故、アルゴンガスは貴ガスであって非常に高価であるにもかかわらず、製造の度に新たなアルゴンガスを導入する必要が生じてしまい、このことが製造コスト低減の大きな障害となってきたのである。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような窯炉より排出された、貴ガスと吸蔵ガスとを含む混合ガスを、再利用可能なガスに再生する窯炉排ガス再生装置、システム及び方法を提供することを目的とする。また、そのように再生されたガスを再利用する窯炉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取り、当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにする貴ガス抽出手段を有する窯炉排ガス再生装置が提供される。ここで、当該貴ガスはアルゴンガスであることも好ましい。
【0011】
また本発明による窯炉排ガス再生装置は、当該貴ガス濃度の増大したガスを、当該雰囲気として再利用させるべく、窯炉又は窯炉用のガス貯蔵器へ送る貴ガス送出手段を更に有することも好ましい。
【0012】
さらに、本発明による窯炉排ガス再生装置の一実施形態として、貴ガス抽出手段は、当該フィルタと、当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口の後段に設けられた当該燃料電池とを用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることも好ましい。
【0013】
また上記の実施形態において、貴ガス抽出手段は、ガス圧縮器を用い、大気圧を超える高圧をもって当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、さらに大気圧を超える高圧をもって、当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口から取り出したガスを当該燃料電池の燃料ガス室に導入して当該吸蔵ガスを酸化させることも好ましい。
【0014】
さらに上記の実施形態において、貴ガス抽出手段は、当該燃料電池の燃料ガス室の後段に設けられた、当該吸蔵ガス及び当該貴ガスについて透過する度合いの異なる別のフィルタを更に用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることも好ましい。
【0015】
また、本発明による窯炉排ガス再生装置の他の実施形態として、貴ガス抽出手段は、当該燃料電池と、当該燃料電池の燃料ガス室の後段に設けられた当該フィルタとを用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることも好ましい。
【0016】
さらに上記の(燃料電池の燃料ガス室の後段にフィルタが設けられた)実施形態において、貴ガス抽出手段は、ガス圧縮器を用い、大気圧を超える高圧をもって、当該混合ガスを当該燃料電池の当該燃料ガス室に導入して当該吸蔵ガスを酸化させ、さらに大気圧を超える高圧をもって、当該燃料電池の当該燃焼ガス室から取り出したガスを当該フィルタに作用させることも好ましい。
【0017】
また、本発明に係るフィルタリング処理の一実施形態として、貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、残留吸蔵ガス濃度が小さくなるとして設定された値のガス流量、又は残留吸蔵ガス濃度が小さくなるとして設定されたガス流量値範囲内にあるガス流量をもって、当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタから当該貴ガス濃度の増大したガスを取り出すことも好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係るフィルタリング処理の他の実施形態として、貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、当該貴ガスの回収率が高くなるとして設定された値のガス圧力、又は当該貴ガスの回収率が高くなるとして設定されたガス圧力値範囲内にあるガス圧力をもって、当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタから当該貴ガス濃度の増大したガスを取り出すことも好ましい。
【0019】
また、本発明に係るフィルタリング処理の更なる他の実施形態として、前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、当該フィルタに係るフィルタリング条件としてのガス圧力及び/又はガス流量であって、受け取った当該混合ガスにおける当該貴ガス又は当該吸蔵ガスの濃度に応じて決定されたガス圧力及び/又はガス流量をもって当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタから当該貴ガス濃度の増大したガスを取り出すことも好ましい。
【0020】
さらに、本発明による窯炉排ガス再生装置の更なる他の実施形態として、受け取った当該混合ガスにおける当該貴ガス若しくは当該吸蔵ガスの濃度に基づき、予め設定された時間スケジュールに基づき、又は外部からの指示に基づき、当該フィルタ及び当該燃料電池のうちで用いるものを決定する制御手段を更に有し、
前記貴ガス抽出手段は、当該フィルタ及び当該燃料電池を備えており、決定された当該フィルタ及び/又は当該燃料電池を用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることも好ましい。
【0021】
また、この更なる他の実施形態において、制御手段は、受け取った当該混合ガスにおける当該貴ガス若しくは当該吸蔵ガスの濃度に基づき、予め設定された時間スケジュールに基づき、又は外部からの指示に基づき、当該フィルタとその後段の当該燃料電池とを結ぶ流路パターン、当該燃料電池とその後段の当該フィルタとを結ぶ流路パターン、及び当該フィルタを含み当該燃料電池を含まない流路パターンを含む流路パターンセットのうちから、用いる流路パターンを選択し、
貴ガス抽出手段は、当該フィルタ、当該燃料電池、及び、当該流路パターンセットに含まれる各流路パターンを具現させる流路切替バルブを備えており、選択された当該用いる流路パターンを具現させて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることも好ましい。
【0022】
さらにここで、制御手段は、最初に、当該燃料電池とその後段の当該フィルタとを結ぶ流路パターンを選択し、その後、当該フィルタとその後段の当該燃料電池とを結ぶ流路パターンを選択することも好ましい。
【0023】
また、本発明に係る貴ガス抽出手段が受け取る、窯炉より排出された当該混合ガスは、当初、当該吸蔵ガスの濃度が当該貴ガスの濃度よりも高く、その後、当該貴ガスの濃度が当該吸蔵ガスの濃度よりも高くなる混合ガスとすることができる。
【0024】
さらに、本発明による窯炉排ガス再生装置の更なる他の実施形態として、貴ガス抽出手段は、当該フィルタを備えており、当該混合ガスを当該フィルタに作用させ、当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口から、当該吸蔵ガス濃度の増大したガスを取り出すことも好ましい。
【0025】
また、本発明による窯炉排ガス再生装置の更なる他の実施形態として、貴ガス抽出手段は、順次接続された複数の当該フィルタであって、2番目以降の当該フィルタの入口が、1つ前の当該フィルタにおけるフィルタリングされたガスの出口に接続されている複数の当該フィルタを用いて、当該混合ガスを当該貴ガス濃度の増大したガスにすることも好ましい。
【0026】
さらに、本発明に係る貴ガス抽出手段は、ガス圧縮器の前段に、当該混合ガスを一時的に貯めるバッファタンク、及び当該混合ガスを前記バッファタンクに送るブロアを更に備えていることも好ましい。
【0027】
本発明によれば、また、吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取り、当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにする貴ガス抽出手段を有する窯炉排ガス再生システムが提供される。
【0028】
本発明によれば、さらに、吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉と、
窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取り、当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにする貴ガス抽出手段と、
当該貴ガス濃度の増大したガスを、当該雰囲気として再利用させるべく、窯炉又は窯炉用のガス貯蔵器へ送る貴ガス送出手段と
を有する窯炉システムが提供される。
【0029】
本発明によれば、さらにまた、吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもって当該金属から当該吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、当該貴ガスと当該吸蔵ガスとを含む混合ガスを受け取るステップと、
当該吸蔵ガスと当該貴ガスとについて透過する度合いの異なるフィルタ、及び/又は、当該吸蔵ガスを酸化させる燃料電池を用いて、当該混合ガスを貴ガス濃度の増大したガスにするステップと
を有する窯炉排ガス再生方法が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の窯炉排ガス再生装置、システム及び方法によれば、吸蔵ガスを吸蔵した金属を加熱し、貴ガスを含む雰囲気をもってこの金属から吸蔵ガスを放出させる窯炉より排出された、貴ガスと吸蔵ガスとを含む混合ガスを、再利用可能なガスに再生することができる。また本発明の窯炉システムによれば、そのように再生されたガスを再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による窯炉排ガス再生装置・システム及び窯炉システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】本発明に係るフィルタリング処理の一実施例を説明するためのグラフである。
【
図3】
図2の実施例において水素側出口での水素濃度を測定した結果を示すテーブルである。
【
図4】本発明に係るフィルタリング処理における他の実施例を説明するためのグラフである。
【
図5】本発明に係るフィルタリングユニット(U)におけるガスフィルタ配置についての種々の実施形態を説明するための模式図である。
【
図6】本発明による窯炉排ガス再生装置・システムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図7】本発明による窯炉排ガス再生装置・システムの更なる他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この後述べるガス圧力の値は、1気圧(大気圧)を約0.1メガパスカル(MPa)とした絶対ガス圧値となっている。
【0033】
[窯炉排ガス再生装置・システム,窯炉システム]
図1は、本発明による窯炉排ガス再生装置・システム及び窯炉システムの一実施形態を示す模式図である。
【0034】
図1に示した本発明の一実施形態としての窯炉排ガス再生装置1は、希土類磁石の合金粉末を製造するキルン(窯炉)91から排出された窯炉排ガスを、再利用可能な形に再生する装置となっている。ここで、希土類磁石は例えば、ネオジム磁石(Nd-Fe-B系永久磁石)といったようなR-T-B系永久磁石とすることができる。このR-T-B系永久磁石は、R
2T
14B型結晶構造の結晶粒子、及びその間の粒界で構成されている。また、R-T-B系永久磁石における‘R’は、希土類元素の少なくとも1種を表す。さらに‘T’は、鉄(Fe)、あるいは鉄(Fe)及びコバルト(Co)を表すが、鉄(Fe)やコバルト(Co)以外の遷移金属元素から選択される少なくとも1種を更に含むことを表すものであってもよい。また‘B’は、ホウ素(B)、あるいはホウ素(B)及び炭素(C)を表す。さらに、R-T-B系永久磁石は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等を含んでいてもよい。このような元素の添加によって、高保磁力化、高耐食性化、又は磁気特性における温度特性の改善が可能となる。
【0035】
またキルン91は、上述したような希土類磁石の合金粉末を製造する窯炉であり、具体的に、
(a-1)希土類磁石の原料合金塊に吸蔵ガス(本実施形態では水素(H2)ガス)を吸蔵させ、この原料合金塊に対し、導入した貴ガス(本実施形態ではアルゴン(Ar)ガス)の雰囲気下で数百℃の加熱処理を施して、吸蔵ガス(水素ガス)を放出させ、これにより、原料合金塊を自己崩壊させる形で粗粉砕し、
(a-2)次いで放出された吸蔵ガス(水素ガス)を、貴ガス(アルゴンガス)とともにキルン91外へ「窯炉排ガス」として排出する。
【0036】
ちなみに、上記(a-1)で粗粉砕された原料合金塊は、例えば数百マイクロメートル(μm)径の合金粉末となっているが、この合金粉末は、本実施形態においてキルン外に設けられた合金粉末回収容器93で回収される。次いで、この回収された合金粉末に対し微粉砕処理を施し、さらに磁場中圧縮成形処理や、焼結・熱処理等を施すことによって、希土類磁石が製造されるのである。なお、キルン91から取り出された合金粉末は、合金粉末回収容器93を経ずに直接、微粉砕処理用の装置へ移送されるようにすることも可能である。
【0037】
一方、上記(a-2)で排出された「窯炉排ガス」は、微粉トラップユニット(U)92へ移送されて、そこで自らの中に残留する合金粉末の分離・除去処理を施され、その後、微粉トラップU92から排出される。この排出された「窯炉排ガス」は、上述したように吸蔵ガス(水素ガス)と貴ガス(アルゴンガス)とを含む混合ガスとなっている。窯炉排ガス再生装置1は、このような「窯炉排ガス」を、貴ガス(アルゴンガス)濃度の増大したガス(以後、「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」とも称する)に再生するのである。
【0038】
そのため、窯炉排ガス再生装置1は具体的に、
(A)キルン91から排出された、貴ガス(アルゴンガス)と吸蔵ガス(水素ガス)とを含む混合ガスである「窯炉排ガス」を受け取り、「ガスフィルタ」113F及び「燃料電池」116Cのいずれか一方又は両方(
図1では両方)を用いて、「窯炉排ガス」を「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」にする貴ガス抽出部(アルゴンガス抽出部)11
を有している。
【0039】
ここで、「ガスフィルタ」113Fは、後に詳細に説明するが、吸蔵ガス(水素ガス)と貴ガス(アルゴンガス)とについて透過する度合いの異なるフィルタとなっている。「窯炉排ガス」をこの「ガスフィルタ」113Fへ導入することによって、貴ガス(アルゴンガス)から吸蔵ガス(水素ガス)の少なくとも一部を分離し、これにより「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」を取り出すことができる。
【0040】
また「燃料電池」116Cは、これも後に詳述するが、吸蔵ガス(水素ガス)を酸化させる(例えば酸化物(水)にしたりプラスイオン(H+)にしたりする)発電デバイスとなっている。「窯炉排ガス」をこの「燃料電池」116Cへ導入することによって、「窯炉排ガス」から吸蔵ガス(水素ガス)の少なくとも一部を酸化させて除外し、これにより「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」を取り出すことができる。
【0041】
さらに、このような「ガスフィルタ」113F及び「燃料電池」116Cの両方を用いれば、後に
図1、
図7や
図8を用いて詳細に説明するように、より効果的に、例えばより高い回収率をもって「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」を生成することもできる。いずれにしても、窯炉排ガス再生装置1は、キルン91から排出された、貴ガス(アルゴンガス)と吸蔵ガス(水素ガス)とを含む混合ガスである「窯炉排ガス」を、再利用可能なガス(「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」)に再生することができるのである。
【0042】
また本実施形態の窯炉排ガス再生装置1は、さらに、
(B)取り出した「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」を、合金粉末製造時の貴ガス(アルゴンガス)雰囲気として再利用させるべく、キルン91又はキルン91用のガス貯蔵器(例えばキルン91へのガス供給用タンク)へ送る貴ガス送出部(アルゴンガス送出部)12
も有している。
【0043】
これにより、従来、一度利用されれば窒素ガス等で希釈されて外部に排出され廃棄されるのが実情であった高価な貴ガス(アルゴンガス)を、再利用することができる。またその結果、新たな貴ガス(アルゴンガス)や希釈用の窒素ガス等の使用を縮小又は不要化し、希土類磁石の合金粉末を製造するコストの低減を図ることも可能となる。なおこの場合、窯炉排ガス再生装置1(貴ガス抽出部(アルゴンガス抽出部)11,貴ガス送出部(アルゴンガス送出部)12)と、キルン91と(場合によっては更に微粉トラップU92及び合金粉末回収容器93と)は、本発明による窯炉システムの一実施形態を構成することになる。この窯炉システムでは、再生された貴ガス(貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス)を再利用可能となっているのである。
【0044】
また、キルン91において「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」を再利用するにあたり、この「貴ガス(アルゴン)濃度増大ガス」を、よりアルゴン濃度の高い(より水素濃度の低い)ガスとすることにより、原料合金塊からの水素の離脱(脱水素)をより促進させて、キルン91での処理時間を短縮し、より効率的な合金粉末製造処理を実施することも可能となる。さらに、このような再利用において、必要とされる高い純度のアルゴンガスを得るべく、上記の「アルゴン濃度増大ガス」に対し、準備しておいた高価な純アルゴンガスを混合する場合においても、その純アルゴンガスの使用量をより低減することが可能となるのである。
【0045】
また、「ガスフィルタ」113Fと「燃料電池」116Cとの両方を用いる場合において、それぞれ別の装置内に設けられている形態をとることも可能である。また、貴ガス送出部(アルゴンガス送出部)12も、貴ガス抽出部(アルゴンガス抽出部)11とは別の装置の構成部となっていてもよい。いずれにしてもこのような場合、これらの装置全体をもって、本発明による窯炉排ガス再生システムの一実施形態が構成されるのである。以下、本実施形態の窯炉排ガス再生装置(システム)1の構成について、より詳細に説明する。
【0046】
[装置・システム構成,窯炉排ガス再生方法]
同じく
図1に示したように、本実施形態の窯炉排ガス再生装置(システム)1は、アルゴンガス抽出部(貴ガス抽出部)11と、アルゴンガス送出部(貴ガス送出部)12と、全体制御ユニット(U)13とを有している。このうちアルゴンガス送出部12は、タンクU121と、送出制御U122とを有している。
【0047】
また、アルゴンガス抽出部11は本実施形態において、
(a)触媒毒除去ユニットU111と、
(b)ブロア112aa及びバッファタンク112abを備えたブロアU112aと、ガス圧縮U112bと、タンクU112cと、
(c)ガスフィルタ113Fを備えたフィルタリングU113と、
(d)圧力制御U114aと、バッファタンクU114bと、Ar用圧縮U114cと、
(e)バッファタンクU115aと、ガス圧縮U115bと、タンクU115cと、ガス圧縮U115dと、
(f)燃料電池116Cを備えた燃料電池U116と、
(g)圧力制御U117aと、除湿U117bと、圧力制御U117cと、
(h)ガスフィルタ118Fを備えたフィルタリングU118と、
(i)圧力制御U119aと、バッファタンクU119bと、Ar用圧縮U119cと
を有している。
【0048】
さらに、これらの構成部を有する窯炉排ガス再生装置(システム)1と、キルン(窯炉)91と、微粉トラップU92と、合金粉末回収容器93とによって、本実施形態の窯炉システムが構成されているのである。ちなみに、
図1の装置・システム構成図における構成部間を矢印で接続して示した物質・エネルギーの移動や実施される処理の流れは、本発明による窯炉排ガス再生方法の一実施形態としても理解される。
【0049】
また本実施形態とは別になるが、アルゴンガス抽出部11は、フィルタリングU113及びフィルタリングU113の前後に設けられた構成部(111~114c)を有しており、一方、燃料電池U116及び燃料電池U116の前後に設けられた構成部(115a~119c,
図1の灰色の範囲)を有していない(省略した)ものであってもよい。このような実施形態においても、窯炉排ガスを、再利用可能なアルゴン濃度増大ガスに再生することが可能となる。
【0050】
<貴ガス抽出手段:フィルタリングU113の前段>
同じく
図1において、触媒毒除去ユニットU111は、キルン91(微粉トラップU92)から排出された窯炉排ガス(アルゴンガス(貴ガス)と水素ガス(吸蔵ガス)とを含む混合ガス)に対し、後に使用される燃料電池116Cの触媒を被毒する触媒毒の除去処理を施す。具体的に、触媒毒除去ユニットU111は本実施形態では、酸化触媒や選択酸化触媒を用いて、窯炉排ガスから、触媒毒となる一酸化炭素(CO)ガスを除去する。実際、田中貴金属工業社製の金属ハニカム(型式D3PT2S40C)を用いて温度90℃の下、窯炉排ガスから一酸化炭素(CO)ガスが概ね除去されることを確認している。また、触媒毒除去ユニットU111は、ガスフィルタ113Fにとって有害となる物質を除去するデバイスを更に備えていてもよい。
【0051】
ここで、触媒毒除去ユニットU111の前段に、窯炉排ガス中に残留する希土類磁石の微粉を除去するための微粉トラップ機構又は微粉フィルタ機構が更に設けられることも好ましい。これにより、この後実施されるフィルタリング処理や燃料電池反応処理に対し、当該微粉が悪影響を及ぼす事態を回避することができる。
【0052】
同じく
図1に示したように、ブロアU112aは本実施形態において、触媒毒が除去された窯炉排ガスを、ブロア112aaを用いて静圧(>0.1MPa)用のバッファタンク112abに一先ず貯め、その後、ガス圧縮U112bへ移送する。このように、窯炉排ガスを、ブロア112aaを介しバッファタンク112abに一時的に貯めることによって、キルン91内における(混合ガスの)ガス圧力の変動を抑制することが可能となる。
【0053】
ここで実際に、キルン91内のガス圧力が大きく変動すると、生成される合金粉末の粒度や粉砕性が変化し、この後の微粉砕処理、成形処理や焼結・熱処理を安定して実施することが困難になってしまうことが分かっている。これに対し、窯炉排ガスを、ブロア112aaを介しバッファタンク112abに一先ず貯めることによって、キルン91(微粉トラップU92)から排出される窯炉排ガスの出口圧力を概ね一定値となるように安定させ、これによりキルン91内のガス圧力の変動を抑制することができるのである。
【0054】
ちなみに、キルン91(微粉トラップU92)の出口圧力は、例えば0.080~0.110MPa(約0.790~約1.086気圧)内の値に設定されてもよい。また、この設定された値からの変動分は、±0.02MPa以内に抑えられることが好ましく、±0.01MPa以内に抑えられることがより好ましく、また±0.005MPa以内に抑えられることがさらにより好ましい。
【0055】
ここで具体的に、ブロア112aaは、窯炉排ガスの出口圧力を上記のように極力一定に保つべく、キルン91(微粉トラップU92)から排出される窯炉排ガスの流量の変動に対応してブロア能力を調整可能なインバータ制御方式のブロアであることも好ましい。また、ブロア能力の異なる複数台のブロア(例えば3m3/分以上のブロア能力を有する大型ブロア及び0.5m3/分以上のブロア能力を有する小型ブロアの2台)を、窯炉排ガスの流量に応じて切り替えて使用することも好ましい。また勿論、これらのブロアもインバータ制御方式のブロアとしてもよい。
【0056】
同じく
図1において、ガス圧縮U112bは、ブロアU112a(のバッファタンク112ab)から受け取った窯炉排ガスを、備えられた(水素ガス及びアルゴンガス対応の)コンプレッサを用いて高圧の状態にした上で、タンクU112cに備えられた混合ガスタンクに移送する。これにより、窯炉排ガスは本実施形態において、この混合ガスタンク内に、例えば1.1MPa又はそれを若干下回る程度の高圧のガス圧力をもって貯蔵される。なお、ガス圧縮U112bのコンプレッサが負圧に対応していて、さらに入口流量の変動に対応可能なインバータ制御方式のコンプレッサであるならば、上述したブロアU112aは省略することができる。
【0057】
また、タンクU112cは本実施形態において、混合ガスタンクに貯蔵された窯炉排ガス(アルゴンガスと水素ガスとを含む混合ガス)を、備えられたガスレギュレータとマスフローコントローラ(又はフロースイッチ)で流量を調整しつつ、フィルタリングU113へ移送する。ここで、フィルタリングU113へ導入される際のガス圧力は、後述する(フィルタリングU113後段の)圧力制御U114aによって、本実施形態では0.3~0.9MPaに制御される。なお、タンクU112cは、混合ガスタンクに貯蔵された混合ガスの水素濃度(又はアルゴン濃度)を計測可能な水素濃度計(又はアルゴン濃度計)ArHを備えていることも好ましい。ここで計測される水素濃度(アルゴン濃度)は、例えば後に説明するガスフィルタ113Fによるフィルタリング処理におけるフィルタリング条件の設定に使用される。
【0058】
<貴ガス抽出手段:フィルタリングU113>
同じく
図1において、フィルタリングU113は、備えられたガスフィルタ113Fを用いて、導入された窯炉排ガスを、再利用可能なアルゴン濃度増大ガス、本実施形態では高純度アルゴンガスに変換する。
【0059】
ここで、ガスフィルタ113Fは本実施形態において、
(a)受け取った高圧(本実施形態では0.3~0.9MPa)の窯炉排ガス(アルゴンガスと水素ガスとを含む混合ガス)を取り入れて、次に述べる中空糸繊維113Fd中へ導入するためのフィルタ入口113Fcと、
(b)アルゴン(Ar)と水素(H2)とについて透過する度合いの異なる中空糸繊維113Fdと、
(c)中空糸繊維113Fd中を通り抜けてきたガス(本実施形態では高純度アルゴンガス)の取り出し口であるアルゴン側出口113Faと、
(d)中空糸繊維113Fdを透過したガス、すなわち「フィルタリングされたガス」の取り出し口である水素側出口113Fbと
を備えている。
【0060】
このうち上記(b)の中空糸繊維113Fdは、アルゴン原子(Ar)よりも水素分子(H2)をより優先して透過させる中空糸の高分子繊維である。高圧(0.3~0.9MPa)の窯炉排ガスが、フィルタ入口113Fcからこの中空糸繊維113Fd中を流れていく間に、水素分子が選択的にこの高分子繊維を透過し出ていくので、最終的にアルゴン側出口113Faから、再利用可能なアルゴン濃度増大ガス、本実施形態では高純度アルゴンガスを取り出すことができるのである。
【0061】
ちなみに(アルゴンガスフィルタである)ガスフィルタ113Fとして、窒素ガスフィルタではあるがUBE(旧宇部興産)社製の芳香族ポリイミド中空糸を用いたUBE N2セパレーターや、ポリプラ・エボニック社製の同じく芳香族ポリイミド中空糸を用いたN2 メンブランモジュール・窒素ガスフィルタ等が、使用可能であることを確認している。
【0062】
以下、
図2~4を用いて、窯炉排ガス相当の混合ガスからの水素のフィルタリング処理の実施例を説明する。なお
図2~4に示す実施例では、ガスフィルタ113Fとして、上記のUBE N
2セパレーター(2インチ径)を使用している。
【0063】
ここで、キルン91から排出される窯炉排ガスは通常、当初、水素ガス(吸蔵ガス)の濃度がアルゴンガスの濃度よりも高く、その後、アルゴンガスの濃度が水素ガス(吸蔵ガス)の濃度よりも高くなるような混合ガスとなっている。実際、キルン91内では当初、粗粉砕された原料合金塊から吸蔵された水素が多量に放出される。その結果、窯炉排ガス中での水素ガスの濃度(割合)は、90体積%(vol%)以上となる(すなわちアルゴンガスは10vol%以下となる)。
【0064】
その後、水素の放出が少なくなると、原料合金塊から水素をさらに追い出すためのアルゴンガスの導入量が増加し、最終的には窯炉排ガス中での水素ガスの濃度(割合)は、10vol%以下となる(すなわちアルゴンガスは90vol%以上となる)。
【0065】
このように、時間とともに水素ガス濃度(水素濃度)が変動する窯炉排ガスから、好適にアルゴンガスを抽出すべく、フィルタリング処理におけるフィルタリング条件(ガス圧力やガス流量等)が工夫されるのである。以下の実施例では、この好適なフィルタリング条件を具体的に示す。
【0066】
図2は、本発明に係るフィルタリング処理の一実施例を説明するためのグラフである。
【0067】
図2(A1)~(C2)には、
(a)ガスフィルタ113Fのフィルタ入口113Fcに、(キルン91内処理の)前半に排出される窯炉排ガスを想定した「アルゴンガス(Ar):水素ガス(H
2)=30vol%:70vol%」の混合ガス、及び後半に排出される窯炉排ガスを想定した「アルゴンガス(Ar):水素ガス(H
2)=70vol%:30vol%」の混合ガスを導入し、
(b)各混合ガスに対し、出口圧力(アルゴン側出口113Faでのガス圧力)が0.4MPa及び0.7MPaの各値となり、出口流量(アルゴン側出口113Faでのガス流量)が1.0リットル(L)/分、3.0L/分、及び5.0L/分の各値となる条件下で、当該混合ガスを中空糸繊維113Fdに作用させるフィルタリング処理を行い、
(c)アルゴン側出口113Faから取り出されたガスにおける水素濃度である残留水素濃度(ppm,体積百万分率)の処理経過時間依存性を調べた
結果が示されている。
【0068】
図2(A1)、(B1)及び(C1)によれば、出口圧力が0.4MPaの場合に、いずれの混合ガスについても、出口流量が小さいほど、残留水素濃度の処理時間経過による漸近値(水素濃度漸近値)は小さくなる。またいずれの出口流量の場合でも、「Ar:H
2=70vol%:30vol%」の混合ガスの方が、「Ar:H
2=30vol%:70vol%」の混合ガスと比べて、より小さい水素濃度漸近値を示している。ちなみに出口流量が1.0L/分の場合、「Ar:H
2=70vol%:30vol%」の混合ガスの水素濃度漸近値は、濃度計ArHの測定限界を下回っており計測できなかった。
【0069】
また、
図2(A2)、(B2)及び(C2)によれば、出口圧力が0.7MPaの場合においても、両混合ガスについて出口流量が小さいほど水素濃度漸近値は小さくなる。またこの水素濃度漸近値は、上述した出口圧力が0.4MPaであって同じ出口流量の場合と比較して、より小さな値となっている(すなわち、出口圧力が大きいほど残留水素濃度も小さくなる)。
【0070】
さらに、この出口圧力が0.7MPaの場合、上記の出口圧力が0.4MPaの場合とは異なり、各出口流量において、「Ar:H2=30vol%:70vol%」の混合ガスの水素濃度漸近値と、「Ar:H2=70vol%:30vol%」の混合ガスの水素濃度漸近値とは概ね一致している。ちなみに出口流量が1.0L/分の場合、両混合ガスの水素濃度漸近値は、濃度計ArHの測定限界を下回っており計測できなかった。
【0071】
以上の結果から、1つのフィルタリング条件として、
(ア1)出口圧力が比較的小さい(例えば上記の0.4MPaの)設定の場合に、窯炉排ガスの水素濃度が高い当初は、目標とする(又は要求された)十分低い残留水素濃度を達成するべく、できるだけ小さい出口流量をもってフィルタリング処理を行い、
(ア2)その後、窯炉排ガスにおける低下していく水素濃度の値に合わせて(又は処理時間が経過するにつれて)、目標とする(又は要求された)十分低い残留水素濃度を達成可能な範囲で、出口流量を、所望の十分に大きな値に向けて段階的に(又は連続的に)大きくしていく
ことも好ましいことが分かる。
【0072】
さらに、これとは別のフィルタリング条件として、
(イ)出口圧力が十分に大きい(例えば上記の0.7MPaの)設定の場合に、窯炉排ガスの水素濃度の変動にかかわらず、目標とする(又は要求された)十分低い残留水素濃度を達成可能な範囲で、出口流量を、所望の十分に大きな値に設定する
ことも好ましいことが分かる。またいずれにしても、出口圧力は、設定可能な範囲でより大きい値に設定されることも好ましい。
【0073】
以上説明したように、フィルタリングU113は、受け取った窯炉排ガスにおけるアルゴンガス又は水素ガスの(時間変化する)濃度に応じて、フィルタリング条件としての出口圧力及び/又は出口流量を決定し、決定した出口圧力及び/又は出口流量をもって、窯炉排ガスに対しフィルタリング処理を実施して、目標とする(又は要求された)十分低い残留水素濃度の高純度アルゴンガスを生成することができるのである。
【0074】
また言い換えれば、フィルタリングU113は、残留水素濃度が小さくなるとして設定された値のガス流量をもって、又は残留水素濃度が小さくなるとして設定されたガス流量値範囲内にあるガス流量(のうち所望の十分に大きいガス流量)をもって、窯炉排ガスに対しフィルタリング処理を実施して、目標とする(又は要求された)十分低い残留水素濃度の高純度アルゴンガスを生成することができる。またこのフィルタリング処理において、出口圧力は、設定可能な範囲でより大きい値に設定されることも好ましいのである。
【0075】
ちなみに本実施例においては、例えば出口圧力が0.4MPaに設定されている場合、キルン91内処理の前半(例えば、窯炉排ガスの水素濃度が70vol%である際)は、出口流量を3.0L/分前後に抑え、また後半(例えば、窯炉排ガスの水素濃度が30vol%である際)は、出口流量を5.0L/分前後にまで増加させることにより、一貫して残留水素濃度が103ppm台の高純度アルゴンガスを生成することができる。また、例えば出口圧力が0.7MPaに設定されている場合、一貫して出口流量を5.0L/分と大きな値にしても、残留水素濃度が101ppm台の高純度アルゴンガスを生成することができるのである。
【0076】
図3は、
図2の実施例において水素側出口113Fbでの水素濃度を測定した結果を示すテーブルである。ここで、ガスフィルタ113Fの水素側出口113Fbからは、上述したように、中空糸繊維113Fdを透過したガス、すなわち「フィルタリングされたガス」が排出される。
図3(A)には、(アルゴン側)出口圧力が0.4MPaの場合におけるこの「フィルタリングされたガス」の水素濃度が示されている。また
図3(B)には、(アルゴン側)出口圧力が0.7MPaの場合におけるこの「フィルタリングされたガス」の水素濃度が示されている。
【0077】
図3(A)によれば、「Ar:H
2=30vol%:70vol%」の混合ガスから生成された「フィルタリングされたガス」の水素濃度は、出口圧力が0.4MPaの条件下、(アルゴン側)出口流量が0、1.0、2.0、3.0、5.0及び10.0L/分の順に増加するにつれて、(元の混合ガスの70vol%と概ね一致する)70.7vol%から92.0vol%にまで増大している。また、「Ar:H
2=30vol%:70vol%」の混合ガスから生成された「フィルタリングされたガス」の水素濃度も、(アルゴン側)出口流量の増加に対し同様の傾向を示している。
【0078】
さらに
図3(B)に示したように、出口圧力が0.7MPaの条件下においても、両「フィルタリングされたガス」の水素濃度は、(アルゴン側)出口流量の増加に対し同様の傾向を示している。ちなみに、
図3(A)及び(B)における(アルゴン側)出口流量が“0”は、ガスフィルタ113Fのアルゴン側出口113aを塞いで、混合ガスをガスフィルタ113Fに導入したことを意味している。なお、各「フィルタリングされたガス」の水素濃度は、出口圧力が0.7MPaの場合の方が、0.4MPaの場合よりも、同じ出口流量においてより小さくなっている。
【0079】
以上、
図3(A)及び(B)に示された結果によれば、「フィルタリングされたガス」の水素濃度は、元の混合ガスの値(70vol%,30vol%)と比べて、水素が中空糸繊維113Fdを選択的に透過した結果としてより大きくなっており、またその差は、出口流量が大きいほど大きくなっている。しかしながら、中空糸繊維113Fd(ガスフィルタ113F)の特性上、「フィルタリングされたガス」にはアルゴンガスも相当に含まれていることも分かる。そこで本実施形態では、この「フィルタリングされたガス」に含まれたアルゴンガスもさらに回収すべく、後に詳しく説明するように燃料電池U116を用いるのである。
【0080】
ここでは以下、
図4を用いて、「フィルタリングされたガス」中のアルゴン濃度を低減させるフィルタリング条件を求めて実施した実施例を説明する。
図4は、本発明に係るフィルタリング処理における他の実施例を説明するためのグラフである。
【0081】
ここで、
図4(A1)及び(B)はそれぞれ、「アルゴン側出口113Faからのアルゴンガス排出割合」の(アルゴン側)出口流量及び(アルゴン側)出口圧力依存性を示すグラフとなっている。フィルタ入口113Fcから中空糸繊維113Fdに導入された(混合ガス中の)アルゴンガスは、「アルゴン側出口113Fa」及び「水素側出口113Fb」のいずれかから排出される。「アルゴン側出口113Faからのアルゴンガス排出割合」は、そのうちの「アルゴン側出口113Fa」から排出される割合を意味する。
【0082】
また、
図4(C2)の「水素側出口113Fbからの水素ガス排出割合」は、(混合ガス中の)水素ガスが「水素側出口113Fb」から排出される割合である。さらに残りのグラフの「排出割合」も、これらと同様にして把握される量となっている。ちなみに本実施例では、ガスフィルタ113Fに導入する混合ガスとして、「Ar:H
2=50vol%:50vol%」の混合ガスが使用されている。
【0083】
図4(A1)によれば、「アルゴン側出口113Faからのアルゴンガス排出割合」は、出口流量が大きいほど高くなる。また、出口圧力が0.4、0.5、0.6及び0.7MPaの場合のうち、0.5Mpaの場合に最も高くなる。一方当然ではあるが、「水素側出口113Fbからのアルゴンガス排出割合」は、
図4(A2)に示すように上記の裏返しの結果となっている。
【0084】
ここで、「アルゴン側出口113Faからのアルゴンガス排出割合」は出口圧力が0.5Mpaの場合に最も高くなる様子を、
図4(B)に示す。ちなみに同図では、出口流量が10.3L/分となっているが、
図4(A1)から分かるように、(0.1L/分の場合を除く)他の出口流量値の場合でも概ね同様のグラフとなる。
【0085】
図4(B)によれば、「アルゴン側出口113Faからのアルゴンガス排出割合」は、出口流量が10.3L/分の条件下、出口圧力が0.5Mpaの場合に、100%となることが分かる。すなわち、このような条件の場合には、アルゴンガスをアルゴン側出口113Faから(概ね)100%回収することができるのである。また、出口流量が10.3L/分前後の「所定範囲」であって出口圧力が0.5MPa前後の「所定範囲」であれば、アルゴンガスのアルゴン側出口113Faからの回収率が例えば99%以上になる、といったような「所定範囲」を規定・設定することも可能であることが分かる。
【0086】
またさらに、上述したような出口流量・出口圧力の条件下では、水素側出口113Fbから排出される「フィルタリングされたガス」は、水素ガスが(概ね)100%のガス、又は排出割合にして例えば1%以下のアルゴンガスが混合した高純度の水素ガス、となっている。したがってこの場合、水素側出口113Fbから(高純度の)水素ガスを回収し、例えば原料合金塊に吸蔵させる吸蔵ガスとして再利用することもできるのである。
【0087】
またキルン91において、より水素濃度の高い(よりアルゴン濃度の低い)「フィルタリングされたガス」を再利用することにより、原料合金塊への水素の吸蔵(吸水素)をより促進させて、キルン91での処理時間を短縮し、より効率的な合金粉末製造処理を実施することも可能となる。さらに、このような再利用において、必要とされる高い純度の水素ガスを得るべく、上記の「フィルタリングされたガス」に対し、準備しておいた高価な純水素ガスを混合する場合においても、その純水素ガスの使用量をより低減することが可能となるのである。
【0088】
以上まとめると、フィルタリングU113は、アルゴンガスの回収率(アルゴン側出口113Faから排出される割合)が高くなるとして設定された値のガス圧力をもって、又はアルゴンガスの回収率が高くなるとして設定されたガス圧力値範囲内にあるガス圧力をもって、窯炉排ガスに対しフィルタリング処理を実施することにより、目標とする(又は要求された)十分に高い回収率で、アルゴンガスを回収することができる(アルゴン濃度の増大したガスを取り出すことができる)。またこの場合、出口流量をできるだけ大きくすることによって、例えば100%近くの高いアルゴンガス回収率を達成することも可能となるのである。
【0089】
さらに、フィルタリングU113は、窯炉排ガスを、ガスフィルタ113Fに作用させ、水素側出口113bから、水素濃度の増大したガスを取り出すこともできる。またこの場合、特に、上述したアルゴンガスの回収率が高くなるフィルタリング条件でフィルタリング処理を実施することによって、再利用可能な高純度の水素ガスを回収することも可能となるのである。
【0090】
次に、
図4(C1)及び(C2)を用いて、水素ガスの(アルゴン側出口113Faと水素側出口113Fbとにおける)排出割合について説明する。
図4(C1)によれば、「アルゴン側出口113Faからの水素ガス排出割合」は、出口流量が小さいほど、また出口圧力が大きいほど、より低くなっている。一方当然ではあるが、「水素側出口113Fbからの水素ガス排出割合」は、
図4(C2)に示すように上記の裏返しの結果となっている。
【0091】
したがって、出口流量を増加させると、
図4(A1)及び(A2)の結果から分かるように(アルゴン側出口113Faからの)アルゴンガスの回収率は高くなるが、一方で、アルゴン側出口113Faから排出される水素ガスの量は増加する。また出口圧力に関しても、アルゴンガスの回収率が最高となる出口圧力において、アルゴン側出口113Faから排出される水素ガスの量が最小になるわけではないのである。
【0092】
以上のことからフィルタリング条件として、例えば、
(a)アルゴン側出口113Faからのアルゴンガスの回収率を極大化する圧力範囲(例えば
図4(B)に示した0.5MPa前後の範囲)の出口圧力の下で、
(b)アルゴン側出口113Faから排出されるガスの水素濃度が、目標とする(又は要求された)上限値(例えば1.0×10
3ppm)を下回るような出口流量のうちの最大の出口流量をもって
フィルタリング処理を行うことによって、できるだけ多くの高純度アルゴンガスを、高い回収率をもって生成することも可能になることが分かる。
【0093】
また本実施形態のように、この後燃料電池116Cを用いて、アルゴンガスをさらに回収する場合、フィルタリングU113では水素濃度の低減化を優先させ、できるだけ高い出口圧力の下、上記(b)の出口流量をもってフィルタリング処理を実施することも好ましい。一方、燃料電池116Cは用いず、ガスフィルタ113Fだけでアルゴンガスを回収する別の実施形態においては、回収率の向上を優先させ、上記(a)の出口圧力の下、できるだけ大きい出口流量をもってフィルタリング処理を実施することも可能である。
【0094】
図5は、本発明に係るフィルタリングU113におけるガスフィルタ配置についての種々の実施形態を説明するための模式図である。
【0095】
図5(A)には、(以上説明してきたように)1つのガスフィルタ133Fが配置された様子が示されている。フィルタリングU113は、このように1つのガスフィルタ133Fを用いてフィルタリング処理を実施してもよいが、より多く(の流量)の窯炉排ガスに対しフィルタリング処理を施すべく、
図5(B)に示すように、2つ又は3つ以上のガスフィルタを並列に配置・接続してフィルタリング処理を実施することも好ましい。
【0096】
具体的に
図5(B)の実施形態においては、3つのガスフィルタ113F1、113F2及び113F3が設けられており、(高圧の)窯炉排ガスを、各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3)へ分けて導入し、各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3)のアルゴン側出口から取り出されたガスをまとめて、アルゴン濃度増大ガス、本実施形態では高純度アルゴンガスとしている。ここで各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3)の水素側出口から排出されたガスも、取りまとめられて以後、上述した「フィルタリングされたガス」として取り扱われる。
【0097】
このように、並列に配置された複数のガスフィルタを用いて窯炉排ガスのフィルタリング処理を実施することによって、全体として所望の大きな出口流量を確保しつつ、各ガスフィルタにおける出口流量をより小さくし、これによりアルゴン側出口から排出されたガスの水素濃度を、目標とする(又は要求された)小さな値に抑え込むことも可能となる。
【0098】
ここで、この
図5(B)の実施形態に関連して実施した実施例について説明する。
図2~4に示した実施例では、上述したように、2インチ径の芳香族ポリイミド中空糸繊維を備えたガスフィルタ(UBE N
2セパレーター)が使用された。これに対し、
図5(B)のガスフィルタの並列配置と同様の効果を奏し得るガスフィルタとして、4インチ径の芳香族ポリイミド中空糸繊維を備えたガスフィルタ(ポリプラ・エボニック社製の窒素ガスフィルタ)を用いて、窯炉排ガス相当の混合ガスからの水素のフィルタリング処理を行った。具体的には、4インチ径の((ポリプラ・エボニック社製の)ガスフィルタ113Fに、「Ar:H
2=70vol%:30vol%」の混合ガスを導入し、アルゴン側出口113Faから排出されたガス(高純度アルゴンガス)の水素濃度を測定した。
【0099】
その結果、この水素濃度は上述した(
図2の)実施例と同様、出口圧力が大きくなるほど、また出口流量が小さくなるほど低くなることが分かった。ただし大口径(4インチ径)の中空糸繊維113Fdを使用していることから、例えば、0.28MPaといった比較的小さな(アルゴン側)出口圧力であって、10L/分といった比較的大きな(アルゴン側)出口流量の下でも、アルゴン側出口113Faから、水素濃度が約1ppmと非常に低い高純度アルゴンガスを取り出すことができた。
【0100】
さらに他の実施形態として、
図5(C)に示すように、2つ又は3つ以上の(
図5(C)では4つの)ガスフィルタを多段のカスケード状に連結してフィルタリング処理を実施することも可能である。具体的に
図5(C)の実施形態においては、窯炉排ガスを第1段のガスフィルタ113F1へ導入し、次いでこのガスフィルタ113F1の水素側出口から排出されたガス(フィルタリングされたガス)を、第2段のガスフィルタ113F2へ導入し、さらにこのガスフィルタ113F2の水素側出口から排出されたガス(フィルタリングされたガス)を、第3段のガスフィルタ113F3へ導入し、さらにまた、このガスフィルタ113F3の水素側出口から排出されたガス(フィルタリングされたガス)を、第4段のガスフィルタ113F4へ導入し、このガスフィルタ113F4の水素側出口から排出されたガスを、上述した「フィルタリングされたガス」として取り扱うのである。
【0101】
また、各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)のアルゴン側出口から取り出されたガスは取りまとめられ、アルゴン濃度増大ガス、本実施形態では高純度アルゴンガスとなる。このように、カスケード状に配置された複数のガスフィルタを用いて窯炉排ガスのフィルタリング処理を実施することによって、より大きな出口流量の下、又は水素濃度が目標とする(又は要求された)上限値を下回るような出口流量のうちの最大の出口流量の下、水素側出口より排出されたガスから、アルゴンガスをさらに取り出し(抽出し)、結果的に、アルゴンガスの窯炉排ガスからの回収率を高めることが可能となる。
【0102】
ここで、この
図5(C)の実施形態を採用した場合における、アルゴンガスの回収率の具体例を説明する。ちなみに以下、アルゴンガスの回収率は、(a)アルゴンガスのアルゴン側出口流量(=(アルゴン側出口でのガス流量)×(アルゴン側出口でのアルゴン濃度))と、(b)アルゴンガスの入口流量(=(入口でのガス流量)×(入口でのアルゴン濃度))との比として算出されている。
【0103】
最初に、
図5(C)の実施形態における各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)として、上述したポリプラ・エボニック社製の4インチ径窒素ガスフィルタを用いた具体例を説明する。この窒素ガスフィルタでは、例えば入口圧力が0.32MPaであってアルゴンガスの入口流量が所定範囲内である場合に、アルゴンガスの回収率が約0.34(約34%)となることが分かっている。そこで本具体例では、各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)における入口圧力及び入口流量を、ガスフィルタ前後に設けられたバッファタンク及び圧縮機(コンプレッサ)により調整して、各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)のアルゴンガスの回収率が約34%となるように設定している。
【0104】
この場合、ガスフィルタ113F1に導入されたアルゴンガスのうち、計4段のガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)のアルゴン側出口から回収されるアルゴンガスの割合、すなわち本4段構成の回収率は、約81%に達する。
【0105】
次に、本4段構成の各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)として、上述した2インチ径のUBE N2セパレーターを用いた具体例を説明する。この窒素ガスフィルタでは、所定条件下において、アルゴンガスの回収率が約60%となることが分かっている。そこで本具体例においても、各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)における入口圧力及び入口流量を、ガスフィルタ前後に設けられたバッファタンク及び圧縮機(コンプレッサ)により調整して、各ガスフィルタ(113F1,113F2,113F3,113F4)のアルゴンガスの回収率が約60%となるように設定している。
【0106】
この場合、本4段構成の回収率は、約97%に達する。さらに、同じ窒素ガスフィルタ(2インチ径のUBE N2セパレーター)を用いた3段構成及び2段構成の回収率も、それぞれ約94%及び約84%といった高い値となるのである。ここで、段数が少ない構成ほど、導入コストがより低くなり、また圧力・流量調整もより容易となる。
【0107】
以上、多段カスケード構成のガスフィルタを用いてアルゴンガスの回収率を高める具体例について説明を行った。ここで、目標とする(又は要求された)回収率(例えば90%)が達成されない場合、この後説明するように、本多段カスケード構成から取り出された「フィルタリングされたガス」から、燃料電池U116を用いて、アルゴンガスを更に抽出・回収することも好ましいのである。
【0108】
<貴ガス抽出手段:フィルタリングU113の後段>
図1に戻って、フィルタリングU113の後段に設けられた圧力制御U114aは本実施形態において、背圧弁及び圧力計を備えており、ガスフィルタ113Fのアルゴン側出口113Faから排出されたアルゴン濃度増大ガス(本実施形態では高純度アルゴンガス)の出口圧力、ひいてはフィルタリングU113へ導入される窯炉排ガスのガス圧力、を制御する。
【0109】
ここで、圧力制御U114aを経た高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)は、この後、バッファタンクU114bに備えられた(タンク内圧力が例えば約0.2MPaの)アルゴンガスバッファタンクに一先ず保存され、さらにAr用圧縮U114cに備えられた(アルゴンガス対応の)コンプレッサによって昇圧された上で、タンクU121に備えられたアルゴンガスタンクに移送され、そこで貯蔵される。
【0110】
以上、フィルタリングU113における水素ガスのフィルタリング処理について説明してきたが、以下、燃料電池116Cを用いて、ガスフィルタ113Fから取り出した「フィルタリングされたガス」を、アルゴン濃度増大ガス(以下の実施形態では高純度アルゴンガス)に変換する処理について説明を行う。
【0111】
<貴ガス抽出手段:燃料電池U116の前段>
同じく
図1において、ガスフィルタ113Fの水素側出口113Fbから排出された「フィルタリングされたガス」(アルゴンガスと水素ガスとを含む混合ガス)は、バッファタンクU115aに備えられた混合ガス用バッファタンク(タンク内圧力:例えば約0.2MPa)に一先ず保存され、さらにガス圧縮U115bに備えられた(アルゴンガス及び水素ガス対応の)コンプレッサによって昇圧された上で、タンクU115cに備えられた混合ガス用ガスタンクに移送され、そこで貯蔵される。
【0112】
その後、この貯蔵された混合ガスは、本実施形態において0.2~1.0MPaの高いガス圧力をもって、燃料電池U116の燃料ガス室側入口へ移送される。ここで、このガス圧力は、後述する(燃料電池U116後段の)圧力制御U117aによって制御される。また、燃料ガス室側入口へ移送される際のガス流量は、タンクU115cに備えられたガスレギュレータとマスフローコントローラ(又はフロースイッチ)によって制御される。
【0113】
同じく
図1において、ガス圧縮U115dは本実施形態において、例えば大気中から空気を取り入れ、備えられたコンプレッサによって、空気を、本実施形態において0.2~1.0MPaの高いガス圧力をもって、燃料電池U116の酸化ガス室側入口へ移送する。また勿論、圧縮された空気は、備えられた空気タンクに一先ず貯蔵されてから燃料電池U116へ移送されてもよい。
【0114】
<貴ガス抽出手段:燃料電池U116>
同じく
図1において、燃料電池U116は、燃料電池116Cを用いて、燃料ガス室に導入された(アルゴンガスと水素ガスとを含む)混合ガスの中の水素(H
2)を酸化させて(例えば水(H
2O)にしたりプラスイオン(H
+)にしたりして)、導入された混合ガスをアルゴン濃度増大ガス(又は高純度アルゴンガス)に変換する。
【0115】
より具体的に、本実施形態の燃料電池U116は、
(a)タンクU115cから移送された、アルゴンガスと水素ガスとを含む混合ガス(フィルタリングされたガス)を、0.2~1.0MPaの高いガス圧力をもって、燃料電池116Cの燃料ガス室に取り込み、一方、
(b)ガス圧縮U115dから移送された空気を、同じく0.2~1.0MPaの高いガス圧力であって上記(a)の混合ガスと同等のガス圧力をもって、燃料電池116Cの酸化ガス室に取り込んで、
(c)燃料ガス室と酸化ガス室との間に設けられた電解質層を介した、上記(a)の混合ガスに含まれる水素と上記(b)の空気に含まれる酸素との燃料電池反応を引き起こす。
【0116】
次いでこの燃料電池反応の結果として、燃料電池U116は、
(d)燃料電池116Cの燃料ガス室側(水素極)出口から排出される、水素濃度の低減した排ガス(すなわちアルゴン濃度増大ガス)と、
(e)燃料電池116Cの酸化ガス室側(酸素極)出口から排出される、酸素濃度の低減した排ガスと、
(f)燃料ガス室の水素極と酸化ガス室の酸素極との間に生じる電力(起電力)と、
(g)燃料電池反応によって生じた、化学反応熱としての熱(熱量)と
を出力するのである。
【0117】
このうち上記(f)の電力はキルン91に提供され、キルン91における例えば加熱処理用の電力として使用することもできる。また上記(g)の熱も、熱交換手段を用いてキルン91に提供され、キルン91における例えば加熱処理のベースとなる熱分として使用されてもよい。
【0118】
ここで本実施形態においては、上記(a)の混合ガスに含まれる水素も、上記(b)の空気に含まれる酸素も、上述したように0.2~1.0MPaの高い圧力をもって、すなわちより高い物理的密度をもって、電解質層を介した燃料電池反応に参加する。その結果、燃料電池反応の効率が向上して、これにより上記(a)の排ガスは、水素濃度のより低減した(したがってアルゴン濃度のより増大した)アルゴン濃度増大ガスとなる。
【0119】
勿論、燃料電池U116は、上記のような高圧ではない通常の条件下で燃料電池反応を進めるものであってもよい。しかしながら、大気圧(約0.1MPa)を超える圧力、より好ましくは0.2MPa以上の圧力をもって、上記(a)の混合ガスと上記(b)の空気とを燃料電池116Cに導入することにより、水素濃度のより低減したアルゴン濃度増大ガス(又は高純度アルゴンガス)を取り出すことも可能となるのである。
【0120】
また燃料電池116Cは、公知の構成のものとすることができ、例えば、空気極(酸素極,陰極,カソード)と水素極(燃料極,陽極,アノード)とで電解質層を挟み込んだ構造を有するセルが、間にセパレータを介して複数スタック(積層)したような構成を有していてもよい。この場合、各セルは、空気極側の酸化ガス室と水素極側の燃料ガス室とが電解質層を挟むようにして設けられた構造となる。
【0121】
さらに燃料電池116Cは、本実施形態において固体高分子型燃料電池(PEFC)とすることができる。PEFCは、比較的低温で稼働し、電池サイズもコンパクト化可能であることから、例えば多くの燃料電池自動車にも採用されている。ただし勿論、燃料電池116Cとして、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)や、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)等を採用することも可能である。このうちSOFCは、発電効率が高く、通常約700~約1000℃で稼働し、相当に高温の排ガス、すなわちアルゴン濃度増大ガスを供給することも可能となる。
【0122】
ちなみに、燃料電池116Cにおいては、燃料電池反応に寄与しない(酸化されない)アルゴンが燃料ガス室内に混じっていても、燃料ガス室内の水素の量と酸化ガス内の酸素の量とに応じた電力が生成されることを確認している。すなわち混合ガス中のアルゴンは、例えその濃度が70vol%程度であったとしても燃料電池反応に概ね悪影響を与えないことが分かっている。またこの事実により、燃料電池116C本来の機能をもって、混合ガス中の水素を酸化させ、アルゴン濃度増大ガス(又は高純度アルゴンガス)を生成することが可能となるのである。
【0123】
<貴ガス抽出手段:燃料電池U116の後段>
同じく
図1に示したように、燃料電池116Cの燃料ガス室側出口から排出される、水素濃度の低減した排ガス、すなわちアルゴン濃度増大ガス(又は高純度アルゴンガス)は、この後、ドレインDaで結露水をある程度取り除かれ、背圧弁及び圧力計を備えた圧力制御U117aによって(燃料電池116Cの背圧としての)ガス圧力の制御を受けた上で、除湿U117bで除湿処理を受けた後、本実施形態において、この後述べるフィルタリングU118へ移送される。
【0124】
ここで除湿U117bは本実施形態において、水蒸気透過性の中空糸膜を有するドライフィルタを用いて、混合ガス中の水分や水蒸気分を低減若しくは除去するユニットとなっている。この場合、ドライフィルタへ導入されるアルゴン濃度増大ガスのガス圧力(本実施形態では0.3~0.9MPa)は、後に説明する(フィルタリングU118後段の)圧力制御U119aによって制御される。なお変更態様として、除湿U117bは、シリカゲル又はゼオライトを含む除湿器、加圧機構を備えた除湿デバイスや、気液分離器等を用いて、混合ガス中の水分や水蒸気分を低減若しくは除去するユニットであってもよい。
【0125】
一方、酸化ガス室から排出される(低酸素空気としての)排ガスは、この後、ドレインDbで結露水をある程度取り除かれ、背圧弁及び圧力計を備えた圧力制御U117cによって(燃料電池116Cの背圧としての)ガス圧力の制御を受けた上で、本実施形態において大気中へ廃棄(放出)される。
【0126】
なお他の実施形態として、除湿U117bで除湿処理を受けた(燃料ガス室側出口から排出された)ガスは、この後述べるフィルタリングU118を経ることなく、アルゴン濃度増大ガス(又は高純度アルゴンガス)として、後述する圧力制御U119aを介してバッファタンク119b、さらにはタンクU121へ移送されてもよい。例えば、燃料電池U116での処理によって、目標とする(又は要求された)高いアルゴン濃度を有するアルゴン濃度増大ガスが得られる場合、このような実施形態をとることも好ましいのである。
【0127】
<貴ガス抽出手段:フィルタリングU118>
同じく
図1において、フィルタリングU118は、備えられたガスフィルタ118Fを用いて、燃料電池116Cの燃料ガス室から排出され圧力制御U117a及び除湿U117bを経て導入されたアルゴン濃度増大ガスを、さらにアルゴン濃度の増大したアルゴン濃度増大ガス、本実施形態では高純度アルゴンガスに変換する。
【0128】
ここで本実施形態において、ガスフィルタ118Fは、上述したガスフィルタ113Fと同様のものとすることができる。フィルタリングU118は、そのようなガスフィルタ118Fを用い、導入されたアルゴン濃度増大ガスの残留水素濃度に基づき設定されたフィルタリング条件であって、ガスフィルタ113Fについて(
図2~4を用いて)説明したのと同様のフィルタリング条件(出口圧力,出口流量等)をもって、フィルタリング処理を行うことも好ましい。また、ガスフィルタ118Fへのガス流量は本実施形態において、除湿U117bに備えられたガスレギュレータとマスフローコントローラ(又はフロースイッチ)によって制御される。
【0129】
さらにフィルタリングU118も、複数のガスフィルタ118Fを、
図5(B)や
図5(C)に示された構成と同様に配置・接続して用い、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成してもよい。また、ガスフィルタ118Fの水素側出口から排出された「フィルタリングされたガス」は、バッファタンクU115a(の直前)に戻されて、再度、燃料電池U116で処理されることも好ましい。これにより、「フィルタリングされたガス」中の水素ガス分をより低減させることができ、また、廃棄(放出)するアルゴンガスの量を減らし、最終的なアルゴンガスの回収率を高めることも可能となる。
【0130】
いずれにしても、フィルタリングU118は本実施形態において、上述したフィルタリングU113と同様、ガスフィルタ118Fのアルゴン側出口から、例えば残留水素濃度が101~103ppm台の高純度アルゴンガスを出力することも可能となるのである。
【0131】
<貴ガス抽出手段:フィルタリングU118の後段>
同じく
図1において、フィルタリングU118の後段に設けられた圧力制御U119aは本実施形態では、背圧弁及び圧力計を備えており、ガスフィルタ118Fのアルゴン側出口から排出された高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)の出口圧力、ひいてはフィルタリングU118へ導入されるアルゴン濃度増大ガスのガス圧力、を制御する。なお本実施形態において圧力制御U119aは、フィルタリングU118の前段の除湿U117b(本実施形態ではドライフィルタを含む)へ導入されるアルゴン濃度増大ガスのガス圧力も、合わせて制御するものとなっている。
【0132】
ここで圧力制御U119aを経た高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)は本実施形態において、この後、バッファタンクU119bに備えられたアルゴンガスバッファタンクに一先ず保存され、さらに必要であればAr用圧縮U119cに備えられた(アルゴンガス対応の)コンプレッサによって昇圧された上で、タンクU121に備えられたアルゴンガスタンクに移送され、そこで貯蔵される。
【0133】
以上詳述したように、本実施形態のアルゴンガス抽出部11によれば、フィルタリングU113(に備えられたガスフィルタ113Fの水素側出口113Fb)の後段に設けられた燃料電池U116を(さらに本実施形態ではフィルタリングU118も合わせて)用いることによって、窯炉排ガスからのアルゴンガスの回収率をより高めることも可能となるのである。
【0134】
また、本実施形態のアルゴンガス抽出部11において、処理対象の窯炉排ガス(混合ガス)のガス圧力は、フィルタリングU113では0.3~0.9MPaであって、その後段の燃料電池U116では0.2~1.0MPaであり、さらにその後段のフィルタリングU118でも0.3~0.9MPaとなっている。またその間のユニットや流路においても大気圧(約0.1MPa)を超えるガス圧力、本実施形態では(燃料電池U116、(ドライフィルタを備えた)除湿U117b及びフィルタリングU118を含め)0.2MPa以上の高圧のガス圧力が保たれている。すなわち、本実施形態のアルゴンガス抽出部11は、一連の高圧ガス処理系となっているのである。
【0135】
これにより、アルゴンガスの抽出・回収の要であるフィルタリング処理や燃料電池反応を促進させ、アルゴン濃度のより高いアルゴン濃度増大ガス(高純度アルゴンガス)を、より多く(例えばより大きいガス流量で)生成することも可能となる。また、最終的なアルゴンガスの(窯炉排ガスからの)回収率をより高めることも可能となるのである。ただし勿論、すでに述べたように、燃料電池116Cを通常の(本実施形態のように高圧でない)状態で稼働させることも可能である。この場合、フィルタリングU118の直前にガス圧縮Uが設けられることになる。
【0136】
<貴ガス送出手段:タンクU,送出制御U>
同じく
図1において、タンクU121は、(a)Ar用圧縮U114cから移送された高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)と、(b)Ar用圧縮U119cから移送された高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)とを、所定のガス圧力をもって貯蔵する。ここで、この所定のガス圧力は本実施形態において、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)をキルン91に供給する際の、設定された(又は要求される)供給ガス圧力に応じて設定される。
【0137】
同じく
図1において、送出制御U122は、ガスレギュレータとマスフローコントローラ(又はフロースイッチ)とを備えており、タンクU121から取り出した高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を、設定された(又は要求される)所定のガス流量をもって、キルン91に供給するためのユニットである。
【0138】
<全体制御手段>
同じく
図1において、全体制御U13は本実施形態では、全体制御プログラムを保存しているメモリとプロセッサ(コンピュータ)とを搭載しており、さらに、アルゴンガス抽出部11及びアルゴンガス送出部12に備えられた所定のユニットと通信可能な通信通信インタフェースを備えていて、
(a)タンクU112c及びバッファタンクU114bに備えられた水素濃度計(又はアルゴン濃度計)ArHから受け取ったモニタ信号の内容(水素濃度又はアルゴン濃度)に基づき、フィルタリングU113及びその前後の所定のユニットに制御信号を送って、フィルタリング処理の際のフィルタリング条件(出口圧力,出口流量等)を設定・調整したり、
(b)燃料電池U116における燃料電池反応の開始及び終了を制御し、燃料電池U116及びその前後の所定のユニットに制御信号を送って、燃料電池反応の各種条件(燃料電池116Cにおける導入ガス流量,導入ガス圧力等)を設定・調整したり、
(c)除湿U117b及びバッファタンクU119bに備えられた水素濃度計(又はアルゴン濃度計)ArHから受け取ったモニタ信号の内容(水素濃度又はアルゴン濃度)に基づき、フィルタリングU118及びその前後の所定のユニットに制御信号を送って、フィルタリング処理の際のフィルタリング条件(出口圧力,出口流量等)を設定・調整したり、
(d)外部から高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)の供給指示を受けて、送出制御U122に対し制御信号を送り、指定されたガス流量の高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を、キルン91へ送出(提供)させたり
することができる。
【0139】
ここで上記(a)~(d)の制御処理は、全体制御U13に搭載されたプロセッサ(コンピュータ)が上記の全体制御プログラムを実行することによって具現する処理となっている。
【0140】
[窯炉排ガス再生装置・システムの他の実施形態]
図6は、本発明による窯炉排ガス再生装置・システムの他の実施形態を示す模式図である。
【0141】
図6に示したように、本実施形態の窯炉排ガス再生装置(システム)2は、キルン91(微粉トラップU92)から排出された窯炉排ガスを、最初に燃料電池U216で処理してアルゴン濃度増大ガス(高純度アルゴンガス)に変換する。次いで、このアルゴン濃度増大ガス(高純度アルゴンガス)を、(燃料電池U216に備えられた)燃料電池216Cの燃料ガス室側(水素極側)出口の後段に設けられたフィルタリングU213で処理して、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成する。
【0142】
具体的に、窯炉排ガス再生装置(システム)2は、アルゴンガス抽出部(貴ガス抽出部)21と、アルゴンガス送出部(貴ガス送出部)22と、全体制御U23とを有している。このうちアルゴンガス送出部22は、タンクU221と、送出制御U222とを有している。また、アルゴンガス抽出部21は本実施形態において、
(a)触媒毒除去ユニットU211と、
(b)バッファタンクU215aと、ガス圧縮U215bと、タンクU215cと、ガス圧縮U215dと、
(c)燃料電池216Cを備えた燃料電池U216と、
(d)圧力制御U217aと、除湿U217bと、圧力制御U217cと、
(e)ガスフィルタ213Fを備えたフィルタリングU213と、
(f)圧力制御U214aと、バッファタンクU214bと、Ar用圧縮U214cと
を有している。
【0143】
ここで、以上に述べた構成部:「(名称)2**(*)」(*は数字又は英文字)は、
図1に示した窯炉排ガス再生装置(システム)1の構成部:「(名称)1**(*)」のうち、(名称)及び(**(*))が同一のものと同様の構造及び同様の機能を有する構成部とすることができる。例えば、燃料電池216C及び燃料電池U216はそれぞれ、燃料電池116C(
図1)及び燃料電池U116(
図1)と同様の構造及び同様の機能を有するものであってよい。ただし、バッファタンクU215aは本実施形態において、バッファタンク(215ab)だけでなく、ブロア215aaも備えたユニットとなっている。ここで、これらのブロア215aa及びバッファタンク215abはそれぞれ、ブロアU112a(
図1)のブロア112aa及びバッファタンク112abと同様の構造及び同様の機能を有している。
【0144】
このような窯炉排ガス再生装置(システム)2によっても、窯炉排ガスを、再利用可能なアルゴン濃度増大ガス、本実施形態では高純度アルゴンガスに再生することができるのである。
【0145】
また本実施形態において、フィルタリングU213に備えられたガスフィルタ213Fの水素側出口213Fbから排出された「フィルタリングされたガス」は、バッファタンクU215a(の直前)に戻されて、再度、燃料電池U216で処理されることも好ましい。これにより、廃棄(放出)するアルゴンガスの量を減らし、最終的なアルゴンガスの回収率を高めることも可能となる。
【0146】
さらに、本実施形態のアルゴンガス抽出部21においても、処理対象の窯炉排ガス(混合ガス)のガス圧力は、燃料電池U216では0.2~1.0MPaであって、その後段のフィルタリングU213でも0.3~0.9MPaとなっている。またその間のユニットや流路においても大気圧(約0.1MPa)を超えるガス圧力、本実施形態では(燃料電池U216、(ドライフィルタを備えた)除湿U217b及びフィルタリングU213を含め)0.2MPa以上の高圧のガス圧力が保たれている。すなわち、本実施形態のアルゴンガス抽出部21も、一連の高圧ガス処理系となっているのである。
【0147】
これにより、アルゴンガスの抽出・回収の要であるフィルタリング処理や燃料電池反応を促進させ、アルゴン濃度のより高いアルゴン濃度増大ガス(高純度アルゴンガス)を、より多く(例えばより大きいガス流量で)生成することも可能となる。また、最終的なアルゴンガスの(窯炉排ガスからの)回収率をより高めることも可能となるのである。ただし勿論、すでに述べたように、燃料電池216Cを通常の(本実施形態のように高圧でない)状態で稼働させることも可能である。この場合、フィルタリングU213の直前にガス圧縮Uが設けられることになる。
【0148】
図7は、本発明による窯炉排ガス再生装置・システムの更なる他の実施形態を示す模式図である。
【0149】
図7に示したように、本実施形態の窯炉排ガス再生装置(システム)3は、キルン91(微粉トラップU92)から排出された窯炉排ガスにおけるアルゴン濃度若しくは水素濃度に基づき、予め設定された時間スケジュールに基づき、又は外部からの指示に基づき、フィルタリングU313及び燃料電池U316(さらにはフィルタリングU318)のうちで使用するものを決定し、決定したフィルタリングU313及び/又は燃料電池U316(さらにはフィルタリングU318)を用いて、受け取った窯炉排ガスを、再利用可能なアルゴン濃度増大ガス、本実施形態では高純度アルゴンガスに再生する。
【0150】
この窯炉排ガス再生装置(システム)3は本実施形態において、各々が窯炉排ガス再生装置(システム)1(
図1)の各構成部:「(名称)1**(*)」(*は数字又は英文字)と対応する複数の構成部:「(名称)3**(*)」を有しており、構成部:「(名称)3**(*)」は、(名称)及び(**(*))が同一の構成部:「(名称)1**(*)」と同様の構造及び同様の機能を有するものとすることができる。
【0151】
ただし、バッファタンクU315aは本実施形態において、バッファタンク(315ac)だけでなく、ブロア315aa及びバッファタンク315abも備えたユニットとなっている。ここで、これらのブロア315aa及びバッファタンク315abはそれぞれ、ブロアU112a(
図1)のブロア112aa及びバッファタンク112abと同様の構造及び同様の機能を有するものとなっており、また、バッファタンク315acは、バッファタンクU115(
図1)のバッファタンクと同様の構造及び同様の機能を有するものとなっている。さらに本実施形態において、バッファタンクU315aは、この後説明する<流路1>の場合にはバッファタンク315acを使用し、一方、この後説明する<流路2>の場合にはブロア315aa及びバッファタンク315abを使用することが可能となるように流路を切り替える流路切替バルブも備えている。
【0152】
また本実施形態の窯炉排ガス再生装置(システム)3は、さらに、
(a)触媒毒除去U311とブロアU312aとの間に設けられており、触媒毒除去U311から移送されたガスを、ブロアU312a及び後述する流路切替バルブSW3のうちの決定された一方へ移送させることが可能な流路切替バルブSW1と、
(b)タンクU312cとフィルタリングU313との間に設けられており、タンクU312c及び後述する流路切替バルブSW4のうちの決定された一方から移送されたガスを、フィルタリングU313へ移送させることが可能な流路切替バルブSW2と、
(c)(フィルタリングU313に備えられた)ガスフィルタ313Fの水素側出口313FbとバッファタンクU315aとの間に設けられており、ガスフィルタ313F及び上述した流路切替バルブSW1のうちの決定された一方から移送されたガスを、バッファタンクU315aへ移送させることが可能な流路切替バルブSW3と、
(d)除湿U317bとフィルタリングU318との間に設けられており、除湿U317bから移送されたガスを、フィルタリングU318及び上述した流路切替バルブSW2のうちの決定された一方へ移送させることが可能な流路切替バルブSW4と
を有している。
【0153】
ここで本実施形態では、全体制御U33が、
(a)触媒毒除去U311に備えられた水素濃度計(若しくはアルゴン濃度計)ArHから受け取ったモニタ信号の内容(水素濃度若しくはアルゴン濃度)に基づき、
(b)予め設定された切り替え時間スケジュールに基づき、又は
(c)受け取った外部からの指示の内容(以下に示した流路1~3のうちの1つを指定する内容)に基づき、
流路切替バルブSW1~SW4の切替制御に係る制御信号を決定し、この制御信号を流路切替バルブSW1~SW4へ送って、以下に示した流路(流路パターン)1~3のうちの1つを適宜、具現させるのである。
【0154】
<流路1>キルン91(微粉トラップ92)→触媒毒除去U311~タンクU312c→「フィルタリングU313」→圧力制御U314a~Ar用圧縮U314c→タンクU321→送出制御U322、及び、「フィルタリングU313」→バッファタンクU315a(のバッファタンク315ac)~タンクU315c→「燃料電池U316」→圧力制御U317a→除湿U317b→「フィルタリングU318」→圧力制御U319a~Ar用圧縮U319c→タンクU321→送出制御U322
<流路2>キルン91(微粉トラップ92)→触媒毒除去U311→バッファタンクU315a(のブロア315aa及びバッファタンク315ab)~タンクU315c→「燃料電池U316」→圧力制御U317a→除湿U317b→「フィルタリングU313」→圧力制御U314a~Ar用圧縮U314c→タンクU321→送出制御U322(この場合、流路切替バルブSW3は水素側出口313Fbからのガスのみを放出(廃棄)する)
<流路3>キルン91(微粉トラップ92)→触媒毒除去U311~タンクU312c→「フィルタリングU313」→圧力制御U314a~Ar用圧縮U314c→タンクU321→送出制御U322(燃料電池U316は使用せず)
【0155】
なお変更態様として、上記の<流路1>において、フィルタリングU318は設けない(省略する)ことも可能である。この場合、燃料電池U316の後段の除湿U317bから移送されたアルゴン濃度増大ガス(高純度アルゴンガス)は、流路切替バルブSW4を経て、圧力制御U319aを介し、例えばバッファタンクU319bへ移送されることになる。
【0156】
ここで全体制御U33は、例えば、
(ア)受け取った窯炉排ガスの水素濃度が所定閾値(例えば50vol%)よりも大きい場合、
まず水素濃度を十分に低減させるべく、燃料電池反応処理を最初に実施する<流路2>を具現させて、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成し、
(イ)受け取った窯炉排ガスの水素濃度が所定閾値(例えば50vol%)以下である場合、水素濃度の絶対値がより小さい、すなわちアルゴンの(絶対的な)純度がより高いアルゴンガスを生成すべく、フィルタリング処理を最初に実施する<流路1>を具現させて、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成する
といった制御を行うことも好ましい。
【0157】
ちなみに、上記(ア)の窯炉排ガスは、キルン91における合金粉末製造処理の前半(例えば処理開始から数十分の期間)に排出されるものに相当する。この前半では、キルン91内での加熱処理によって、吸蔵された水素が大量に放出され、また、キルン91に導入されるアルゴンガスの流量は、(この後述べる後半に比べて)まだ小さいので、この前半での窯炉排ガスは、水素濃度の高い(例えば60~90vol%の)ガスとなっている。
【0158】
一方、上記(イ)の窯炉排ガスは、キルン91における合金粉末製造処理の後半(例えば処理開始より数十分が経過した時点から、処理終了までの期間)に排出されるものに相当する。この後半では、導入されるアルゴンガスの流量が大幅に増大し(例えば、前半に比べて数倍から十数倍となり)、吸蔵された水素の放出が完了に向かうので、この窯炉排ガスは、水素濃度の低い(例えば30vol%以下の)ガスとなっている。
【0159】
したがって、全体制御U33は、キルン91(微粉トラップU92)から窯炉排ガスを受け取った当初は、上記(ア)の<流路2>を選択し、次いで、窯炉排ガスの水素濃度が所定閾値(例えば50vol%)以下となった時点で、または<流路2>の選択から所定時間(例えば数十分)が経過した時点で、上記(イ)の<流路1>を選択する制御を行うことも好ましい。このような制御を行うことによって、キルン91から排出される窯炉排ガスの水素濃度(アルゴン濃度)は大きく変遷するにもかかわらず、目標とする(又は要求される)高いアルゴン濃度の高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を、一貫して安定的に生成することも可能となるのである。
【0160】
また、以上に述べたような制御に合わせ、バッファタンク312ab及びバッファタンク315abはいずれも、合金粉末製造処理の前半に排出された窯炉排ガスを貯めるための前半用タンク、及び後半に排出された窯炉排ガスを貯めるための後半用タンクを備えていて、前半(後半)に排出された窯炉排ガスを受け取った場合は、この窯炉排ガスを前半用タンク(後半用タンク)に貯める設定となっていることも好ましい。ここで、後半用タンクは、後半のより大きな窯炉排ガス流量に対応すべく、前半用タンクと比較して、例えば数倍から十数倍のより大きい容量を有することも好ましい。
【0161】
このようなバッファタンク312abやバッファタンク315abを用いることにより、キルン91における合金粉末製造処理の後半における窯炉排ガス流量の増大にも好適に対応して、より効率的に高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成することができる。また、キルン91内におけるガス圧力の安定化を図り、効率的な若しくは低コストの合金粉末製造処理の実施に貢献することも可能となる。ちなみに当然とはなるが、バッファタンク112ab(
図1)やバッファタンク215ab(
図6)も、上述したような前半用タンク及び後半用タンクを備えていて、これらのタンクを、上述したように切り替えて使い分ける設定となっていてもよい。
【0162】
また、流路(流路パターン)選択に係る他の実施形態として、全体制御U33は、窯炉排ガスの水素濃度を変化させた予めの実験によって、各流路(流路パターン)の場合に生成されるアルゴン濃度増大ガスのアルゴン濃度、ガス流量や回収率(における窯炉排ガスの水素濃度依存性)を決定しておき、この決定内容を用いて、受け取った窯炉排ガスの水素濃度(及び要求されるアルゴン濃度増大ガスのスペック)に基づき、流路(流路パターン)を選択し具現させるものであってもよい。
【0163】
さらに全体制御U33は、フィルタリングU313のみの使用で目標とする(要求された)アルゴン濃度(純度)、ガス流量や回収率等が達成できる場合に、<流路3>を指定する内容の外部からの指示を受けて、<流路3>を具現させ、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成するように設定されていてもよい。またこのような場合、上述した実施形態の上記(イ)において、<流路1>の代わりに<流路3>を選択する設定となっていてもよい。さらに全体制御U33は、メンテナンス、試験や、ユニットの故障等の理由によって所定の流路を指定する内容の外部からの指示を受けて、この所定の流路(流路パターン)を具現させ、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成するように設定されていてもよい。
【0164】
なお、燃料電池U316を含む流路(流路パターン)を選択する場合において、燃料電池316Cの燃料ガス室側出口から排出され、除湿U317bで除湿処理を受けた排ガス(アルゴン濃度増大ガス)は、バッファタンクU315a(の直前)に戻されて、再度、燃料電池U316で処理されることも好ましい。これにより、当該排ガス中の水素ガス分をより低減させることができ、最終的なアルゴンガスの回収率を高めることも可能となる。
【0165】
ここで具体的に、除湿U317bの直後及びバッファタンクU315aの直前に、流路切替バルブを設けておき、これらの流路切替バルブを適切に切り替え、さらにバッファタンクU315aからのガス移送を適切に制御することによって、当該排ガスを所定回数(所定期間)だけバッファタンクU315a(の直前)に戻す処理を実施してもよい。ちなみに当然とはなるが、燃料電池U116(
図1)や燃料電池U216(
図6)における燃料ガス室側出口からの排ガスに対しても、上記と同様の処理を実施し、当該排ガス中の水素ガス分をより低減させてもよいのである。
【0166】
また、以上述べたように排ガスを燃料電池U316に戻すことによって、目標とする(又は要求される)高いアルゴン濃度若しくは高い回収率が実現されるならば、上記の流路2において「フィルタリングU313(及び圧力制御U314a)」を省略した流路パターンである<流路4>を具現させ、この<流路4>を用いて、高純度アルゴンガス(アルゴン濃度増大ガス)を生成することも可能となる。
【0167】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、窯炉より排出された、貴ガスと吸蔵ガスとを含む混合ガス(窯炉排ガス)を、再利用可能なガスに再生することができる。さらに、そのように再生されたガスを再利用する窯炉システムを提供することもできる。また、生成された貴ガス(アルゴン)濃度増大ガスは、窯炉以外にも様々な分野で利用することが可能である。
【0168】
また、燃料電池を使用する実施形態の場合とはなるが、燃料電池は、窯炉を用いて製造される例えばネオジム(Nd-Fe-B)磁石とともに、二酸化炭素の排出を抑える社会的要請が高まる中、その需要がさらに増大することが予想される。すなわち燃料電池と、窯炉を用いて製造される希土類磁石とは、来るカーボンニュートラル社会に対し、ともにマッチした相性のよいものとなっている。またそれ故、本発明における燃料電池を用いて窯炉排ガスを処理する実施形態は、今後益々高まる上記の社会的要請に好適に応えるものとなっているのである。
【0169】
なお、以上に述べた実施形態は全て、本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は、他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0170】
1 窯炉排ガス再生装置(窯炉排ガス再生システム)
111、211、311 触媒毒除去ユニット(U)
112a、312a ブロアU
112aa、215aa、312aa、315aa ブロア
112ab、215ab、312ab、315ab、315ac バッファタンク
112b、312b ガス圧縮U
112c、312c タンクU
113、118、213、313、318 フィルタリングU
113F、113F1、113F2、113F3、113F4、118F、213F、313F、318F ガスフィルタ
114a、214a、314a 圧力制御U
114b、214b、314b バッファタンクU
114c、214c、314c Ar用圧縮U
115a、215a、315a バッファタンクU
115b、215b、315b ガス圧縮U
115c、215c、315c タンクU
115d、215d、315d ガス圧縮U
116、216、316 燃料電池U
116C、216C、316C 燃料電池
117a、217a、317a 圧力制御U
117b、217b、317b 除湿U
117c、217c、317c 圧力制御U
119a、319a 圧力制御U
119b、319b バッファタンクU
119c、319c Ar用圧縮U
121、221、321 タンクU
122、222、322 送出制御U
13、23、33 全体制御U
91 キルン(窯炉)
92 微粉トラップU
93 合金粉末回収容器