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特開2024-99296コンクリート供給システムとコンクリート供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099296
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】コンクリート供給システムとコンクリート供給方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20240718BHJP
   B60P 3/16 20060101ALI20240718BHJP
   F04B 15/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E04G21/04 ESW
B60P3/16 A
F04B15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003138
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修
(72)【発明者】
【氏名】吉井 康宏
【テーマコード(参考)】
2E172
3H075
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172BA05
2E172BA25
2E172CA04
2E172CA33
2E172CA44
3H075AA13
3H075BB24
3H075CC30
3H075CC36
3H075DA14
3H075DA24
3H075DB04
3H075DB10
3H075EE12
3H075EE17
(57)【要約】
【課題】作業員の常時監視や操作を不要にしながら、ホッパ内のコンクリートの貯留量の特定に際してコンクリートの高さを精度よく特定でき、ホッパ内のコンクリートの貯留量を適正に自動管理することのできるコンクリート供給システムとコンクリート供給方法を提供する。
【解決手段】コンクリート供給システム100であり、コンクリート圧送装置10は、ホッパ18内にあるコンクリートCの高さを連続的に検出自在なセンサ30、制御装置40、第1通信部50を備え、ミキサー車20は、ドラム21、ドラム21を回転させる油圧モータ66、油圧モータ66に対して作動油を供給する油圧ポンプ64、作動油の油量を調整する油量調整装置70、第2通信部80を備え、制御装置40は、センサ30による計測データに基づいてコンクリートの供給量を算定し、第1通信部50から第2通信部80に送信された供給量データに基づいて油量調整装置70を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置の備えるホッパに対して、ミキサー車からコンクリートを供給する、コンクリート供給システムであって、
前記コンクリート圧送装置は、前記ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサと、制御装置と、第1通信部とを備え、
前記ミキサー車は、コンクリートを撹拌して前記ホッパにコンクリートを供給するドラムと、該ドラムを回転させる油圧モータと、該油圧モータに対して油圧回路を介して作動油を供給する油圧ポンプと、該作動油の油量を調整する油量調整装置と、第2通信部とを備えており、
前記制御装置は、前記センサによる計測データに基づいて、前記ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、前記第1通信部から前記第2通信部に送信された供給量データに基づいて、前記油量調整装置が制御されることを特徴とする、コンクリート供給システム。
【請求項2】
コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置の備えるホッパに対して、ミキサー車からコンクリートを供給する、コンクリート供給システムであって、
前記コンクリート圧送装置は、前記ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサと、第1通信部を備え、
前記ミキサー車は、コンクリートを撹拌して前記ホッパにコンクリートを供給するドラムと、該ドラムを回転させる油圧モータと、該油圧モータに対して油圧回路を介して作動油を供給する油圧ポンプと、該作動油の油量を調整する油量調整装置と、制御装置と、第2通信部とを備えており、
前記センサによる計測データが、前記第1通信部から前記第2通信部に送信され、前記制御装置は、該第2通信部にて受信した該計測データに基づいて、前記ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、供給量データに基づいて該油量調整装置を制御することを特徴とする、コンクリート供給システム。
【請求項3】
前記油量調整装置はフロー制御バルブを含み、
前記制御装置により、前記フロー制御バルブの制御が実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート供給システム。
【請求項4】
前記制御装置では、随時受信する前記計測データに基づいて、前記ホッパ内に貯留するコンクリートの変化量もしくは変化速度を算定し、算定された該変化量もしくは該変化速度に基づいて前記油量調整装置をPID制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート供給システム。
【請求項5】
前記センサが、レーザ距離計、超音波距離計のいずれか一種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート供給システム。
【請求項6】
山岳トンネルにおいて吹付けコンクリートを施工する際に適用され、
前記ミキサー車から前記コンクリート圧送装置に対して、コンクリートの自動供給を実行することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート供給システム。
【請求項7】
コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置の備えるホッパに対して、ミキサー車からコンクリートを供給する、コンクリート供給方法であって、
前記ミキサー車は、コンクリートを撹拌して前記ホッパにコンクリートを供給するドラムと、該ドラムを回転させる油圧モータと、該油圧モータに対して油圧回路を介して作動油を供給する油圧ポンプと、該作動油の油量を調整する油量調整装置とを備え、前記コンクリート圧送装置と前記ミキサー車のいずれか一方が制御装置を備えており、
前記ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサにより検出する、A工程と、
前記制御装置において、前記センサによる計測データに基づいて、前記ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、算定された供給量に基づいて前記油量調整装置を制御しながらコンクリートを供給する、B工程とを有することを特徴とする、コンクリート供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート供給システムとコンクリート供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート打設においては、コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置のホッパに対してミキサー車からコンクリートが供給され、コンクリートの打設が行われる。このコンクリート圧送装置には、コンクリートポンプ車や、移動手段を備えていない定置式のコンクリートポンプ、山岳トンネルの施工に供されるコンクリート吹付け機等、様々な圧送装置が含まれる。
【0003】
コンクリート圧送装置の後方にあるホッパに対して、ミキサー車の後方に設けられているシュートを近接させて位置合わせし、ミキサー車のドラムを逆転させることにより、ホッパに対してコンクリートが吐出される。ここで、ドラムの内部には螺旋状ブレードが設けられており、コンクリート撹拌時はドラムを正転させ、コンクリート吐出時はドラムを逆転させる回転切替制御が実行されるようになっている。ホッパには、ピストン式では油圧式ピストンポンプ等が装備されており、ホッパ内に貯留されているコンクリートがピストンポンプにより圧送され、スクイーズ式ではポンピングチューブが復元する際に発生する負圧により圧送され、コンクリート圧送装置の備えるノズル等に供給されることにより、コンクリートの打設が実施される。
【0004】
上記するコンクリート圧送装置によるコンクリートの圧送の際には、コンクリート圧送装置によるコンクリートの圧送量や圧送速度の変化に応じて、ホッパ内にあるコンクリートの貯留量を作業員が都度確認し、ホッパ内の貯留量を適正な状態に維持するようにドラムの回転制御を行っている。すなわち、ホッパ内の貯留量が少な過ぎると、コンクリート圧送装置に対するコンクリートの供給不足の恐れがあり、ホッパ内の貯留量が多過ぎると、ホッパからコンクリートが溢れ出てしまう恐れがあることから、これらの課題を解消するためにドラムの回転制御が実行される。そのため、ミキサー車からコンクリート圧送装置のホッパ等に対してコンクリートが供給される際には、ホッパ内のコンクリートの貯留量を常時監視してドラムの回転速度を制御する作業員が必要になる。
【0005】
ここで、特許文献1,2には、ミキサー車からコンクリートポンプ車への自動的なコンクリート供給を実行するシステムやコンクリートポンプ車が提案されている。特許文献1に記載のコンクリートミキサー車とコンクリートポンプ車との連係システムは、コンクリートミキサー車の排出操作系統とコンクリートポンプ車の移送操作系統を連係して、排出量と移送量を同時調整可能にしたシステムである。このコンクリートポンプ車には、ホッパ内のコンクリート量を検出するためのセンサが設けられている。
一方、特許文献2に記載のコンクリートポンプ車は、コンクリートポンプの運転状態を検出する運転状態検出手段と、運転状態検出手段によって検出されたコンクリートポンプの運転状態から、ホッパ内への生コンクリートの要求供給量を求める要求供給量演算手段と、要求供給量演算手段によって求められた要求供給量にて生コンクリート供給装置からホッパへ生コンクリートを供給させるべく、生コンクリート供給装置へ運転指令を発信する発信手段とを有している。ここで、運転状態検出手段は、ホッパ内における生コンクリートの貯留量を検出するセンサである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59-161561号公報
【特許文献2】特開2002-206343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の連係システムと特許文献2に記載のコンクリートポンプ車を適用することにより、ホッパ内のコンクリートの貯留量を常時監視する作業員を不要にできる。ところで、いずれの技術もセンサにてコンクリートの貯留量を計測することとしているが、具体的なセンサに関する記載はない。
また、コンクリート圧送の作業環境が例えばトンネル内である場合は、トンネル内におけるコンクリート吹付け作業が高濃度粉塵環境下で行われ、屋外の場合は高温や低温の作業環境下で行われることから、上記する作業員による常時監視の際に作業員の受ける負担は極めて大きい。
【0008】
本発明は、コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置の備えるホッパに対して、ミキサー車からコンクリートを供給する、コンクリート供給システムと方法に関し、作業員の常時監視や操作を不要にしながら、ホッパ内のコンクリートの貯留量の特定に際してコンクリートの高さを精度よく特定でき、ホッパ内のコンクリートの貯留量を適正に自動管理することのできる、コンクリート供給システムとコンクリート供給方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明によるコンクリート供給システムの一態様は、
コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置の備えるホッパに対して、ミキサー車からコンクリートを供給する、コンクリート供給システムであって、
前記コンクリート圧送装置は、前記ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサと、制御装置と、第1通信部とを備え、
前記ミキサー車は、コンクリートを撹拌して前記ホッパにコンクリートを供給するドラムと、該ドラムを回転させる油圧モータと、該油圧モータに対して油圧回路を介して作動油を供給する油圧ポンプと、該作動油の油量を調整する油量調整装置と、第2通信部とを備えており、
前記制御装置は、前記センサによる計測データに基づいて、前記ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、前記第1通信部から前記第2通信部に送信された供給量データに基づいて、前記油量調整装置が制御されることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、コンクリート圧送装置が、ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサを備えていることにより、作業員の常時監視や操作を不要にしながら、ホッパ内のコンクリートの高さを高精度に測定することができ、このことによってホッパ内のコンクリートの貯留量を高精度に特定することができる。従って、例えば作業環境がトンネル内である場合においても、作業員の常時監視や操作が不要であることから、作業員が大きな負担を受けるといった課題は解消される。
さらに、ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサにて計測することにより、トンネル内の高粉塵環境下にあっても、ホッパ内のコンクリートの高さを高精度に測定することができ、このことによってホッパ内のコンクリートの貯留量を高精度に特定することができる。このセンサには、レーザ距離計や超音波距離計等が適用できる。尚、プローブ等を用いた測定では、粉塵の影響を受け易く、高精度な高さ測定は困難となる。
さらに、制御装置において、受信したホッパ内のコンクリートの高さに関する計測データに基づいて、ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、算定された供給量に基づいて油圧回路を形成する油量調整装置を制御することにより、様々に変化するコンクリート圧送装置からのコンクリートの圧送量や圧送速度に応じながら、ホッパ内のコンクリートの貯留量を適正に自動管理することができる。このようなコンクリートの貯留量の適正な自動管理により、ミキサー車のドラムの回転操作を行う作業員を不要にできる。
【0011】
また、本発明によるコンクリート供給システムの他の態様は、
コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置の備えるホッパに対して、ミキサー車からコンクリートを供給する、コンクリート供給システムであって、
前記コンクリート圧送装置は、前記ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサと、第1通信部を備え、
前記ミキサー車は、コンクリートを撹拌して前記ホッパにコンクリートを供給するドラムと、該ドラムを回転させる油圧モータと、該油圧モータに対して油圧回路を介して作動油を供給する油圧ポンプと、該作動油の油量を調整する油量調整装置と、制御装置と、第2通信部とを備えており、
前記センサによる計測データが、前記第1通信部から前記第2通信部に送信され、前記制御装置は、該第2通信部にて受信した該計測データに基づいて、前記ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、供給量データに基づいて該油量調整装置を制御することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、制御装置と油量調整装置の双方がミキサー車に装備され、制御装置にて算定された供給量データに基づいて油量調整装置がダイレクトに制御されることにより、油量調整装置に対する制御性を高めることができる。
【0013】
また、本発明によるコンクリート供給システムの他の態様において、
前記油量調整装置はフロー制御バルブを含み、
前記制御装置により、前記フロー制御バルブの制御が実行されることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、油圧回路に介在する油量調整装置に含まれるフロー制御バルブが、制御装置にて制御されることにより、ホッパ内に貯留するコンクリートの高さ(コンクリートの貯留量)に応じて、ドラムを回転させる油圧モータの回転速度を高精度に増減させることができ、ホッパ内のコンクリートの貯留量を適正に自動管理できる。ここで、フロー制御バルブには、作動油の一部を逃がすリリーフ制御バルブや、バルブの開度に応じて作動油の油量を調整する可変制御バルブ等が含まれている。また、可変制御バルブは、バルブの開度を調整する電磁比例弁アンプを備えていてもよい。
【0015】
また、本発明によるコンクリート供給システムの他の態様において、
前記制御装置では、随時受信する前記計測データに基づいて、前記ホッパ内に貯留するコンクリートの変化量もしくは変化速度を算定し、算定された該変化量もしくは該変化速度に基づいて前記油量調整装置をPID制御することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、制御装置が、ホッパ内に貯留するコンクリートの変化量もしくは変化速度を算定し、算定結果に基づいて油量調整装置をPID(Proportional Integral Differential)制御することにより、ハンチングに起因して制御量が一定にならないといった問題がなく、未来予測に基づく安定した制御を実現できる。PID制御では、現在状況と過去状況に応じたそれぞれの操作量の決定がP制御(比例制御)とI制御(積分制御)にて実行され、未来状況の予測に基づく操作量の決定がD制御(微分制御)にて実行される。
【0017】
また、本発明によるコンクリート供給システムの他の態様において、
前記センサが、レーザ距離計、超音波距離計のいずれか一種であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、センサが、レーザ距離計と超音波距離計のいずれか一種であることにより、例えばトンネル内の高粉塵環境下にあっても、ホッパ内のコンクリートの高さを高精度に測定することができて好ましい。
【0019】
また、本発明によるコンクリート供給システムの他の態様において、
山岳トンネルにおいて吹付けコンクリートを施工する際に適用され、
前記ミキサー車から前記コンクリート圧送装置に対して、コンクリートの自動供給を実行することを特徴とするる。
【0020】
本態様によれば、山岳トンネルにおいて吹付けコンクリートを施工する際に適用されることにより、例えば、ミキサー車のオペレータは、コンクリート圧送装置の一例であるコンクリート吹付け機に対してミキサー車を位置決めして本態様のコンクリート供給システムを稼働させた後、坑外にある吹付けコンクリートプラントへ戻り、別のミキサー車を運転してコンクリート吹付け機の近傍に待機させることができ、2台のミキサー車を用いたコンクリート吹付け機へのコンクリートの連続供給を、1人のオペレータのみで実現することが可能になる。
【0021】
また、本発明によるコンクリート供給方法の一態様は、
コンクリートを圧送するコンクリート圧送装置の備えるホッパに対して、ミキサー車からコンクリートを供給する、コンクリート供給方法であって、
前記ミキサー車は、コンクリートを撹拌して前記ホッパにコンクリートを供給するドラムと、該ドラムを回転させる油圧モータと、該油圧モータに対して油圧回路を介して作動油を供給する油圧ポンプと、該作動油の油量を調整する油量調整装置とを備え、前記コンクリート圧送装置と前記ミキサー車のいずれか一方が制御装置を備えており、
前記ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサにより検出する、A工程と、
前記制御装置において、前記センサによる計測データに基づいて、前記ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、算定された供給量に基づいて前記油量調整装置を制御しながらコンクリートを供給する、B工程とを有することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、A工程において、ホッパ内にあるコンクリートの高さを連続的に検出自在なセンサである、レーザ距離計や超音波距離計等にて検出することにより、作業員の常時監視や操作を不要にしながら、ホッパ内のコンクリートの高さを高精度に測定することができ、このことによってホッパ内のコンクリートの貯留量を高精度に特定することができる。
さらに、B工程において、制御装置にて、受信したホッパ内のコンクリートの高さに関する計測データに基づいて、ホッパへ供給するコンクリートの供給量を算定し、算定された供給量に基づいて油圧回路を形成する油量調整装置を制御することにより、様々に変化するコンクリート吹付け機からのコンクリートの吹付け量や吹付け速度に応じながら、ホッパ内のコンクリートの貯留量を適正に自動管理することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のコンクリート供給システムとコンクリート供給方法によれば、作業員の常時監視や操作を不要にしながら、ホッパ内のコンクリートの貯留量の特定に際してコンクリートの高さを精度よく特定でき、ホッパ内のコンクリートの貯留量を適正に自動管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係るコンクリート供給システムの一例の全体構成図である。
図2】実施形態に係るコンクリート供給システムの機能ブロック図である。
図3】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係るコンクリート供給システムとコンクリート供給方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0026】
[実施形態に係るコンクリート供給システムとコンクリート供給方法]
図1乃至図4を参照して、実施形態に係るコンクリート供給システムとコンクリート供給方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係るコンクリート供給システムの一例の全体構成図であり、図2は、実施形態に係るコンクリート供給システムの機能ブロック図である。尚、以下の説明では、コンクリート圧送装置としてコンクリート吹付け機を取り上げ、トンネル内におけるコンクリート吹付け施工を取り上げて説明するが、コンクリート圧送装置は、コンクリートポンプ車や定置式のコンクリートポンプ等であってよく、作業環境もトンネル以外の屋外等であってよい。
【0027】
コンクリート供給システム100は、山岳トンネルTの切羽Kや側面Wに対してコンクリートを吹付けるコンクリート吹付け機10(コンクリート圧送装置の一例)の備えるホッパ18に対して、ミキサー車20からコンクリートを供給するシステムである。
【0028】
山岳トンネルTの施工においては、所定延長の掘削とずり出し、造成されたトンネルTの側面Wと切羽Kに対するコンクリートの一次吹付け、不図示の支保工の建て込み、二次吹付けを一連の施工サイクルとし、この施工サイクルを繰り返しながら掘進していく。ここで、二次吹付けの後に、必要に応じて不図示のロックボルトを打設する施工方法もある。
【0029】
図1は、掘削とずり出しが終了し、吹付け面である切羽Kに対して、吹付けノズル13からコンクリートをX2方向に吹付けるとともに、ホッパ18に対してミキサー車20からコンクリートをX1方向に供給している状況を示している。
【0030】
コンクリート吹付け機10は、クローラ式の走行機構15とアウトリガ機構16を備えた吹付け機本体11と、吹付け機本体11に取り付けられている複数のブームとを有する。図示例のブームは、吹付けノズル13を先端に備えた吹付けノズルブーム12Aと、マンケージ14を回動自在に備えたマンケージブーム12Bである。ここで、コンクリート吹付け機10は、吹付けノズルブーム12Aを2基以上備えていてもよいし、支保工の組立てを行うエレクターブーム等を備えていてもよい。
【0031】
コンクリート吹付け機10の後方には、ミキサー車20から供給されるコンクリートが貯留されるホッパ18が設けられている。
【0032】
ここで、図示を省略するが、コンクリート吹付け機10には、ホッパ18に連通する輸送管と、ホッパ18からコンクリートを圧送する油圧式ピストンポンプが装備されており、圧送シリンダの駆動により、ホッパ18に貯留するコンクリートが輸送管を介して吹付けノズル13に供給されるようになっている。
【0033】
一方、ミキサー車20は、コンクリートを撹拌しながら、コンクリート吹付け機10のホッパ18にコンクリートを供給する、回転自在なドラム21を後方の荷台に備えている。ドラム21の後端部には吐出口22が設けられ、吐出口22から吐出されたコンクリートをホッパ18に案内するシュート23が設けられている。
【0034】
図2に示すように、ミキサー車20の備えるエンジン61の動力取出装置62(P.T.O:Power Take Off(パワー・テイク・オフ))には、ジョイント63を介して油圧ポンプ64が連結しており、ドラム21には、減速機24を介して油圧モータ66が連結している。
【0035】
油圧ポンプ64と油圧モータ66は、閉ループのメイン回路65A,65B(油圧回路)を介して接続されており、作動油を油圧モータ66に供給する側のメイン回路65Aには、油量調整装置70が介在し、油量調整装置70には第2通信部80が電気的に接続されている。
【0036】
油量調整装置70は、作動油の油量を調整するフロー制御バルブであり、フロー制御バルブには、作動油の一部を逃がすリリーフ制御バルブや、バルブの開度に応じて作動油の油量を調整する可変制御バルブ等が含まれる。尚、油圧ポンプ64が可変式であって、アクチュエータが油圧ポンプ64の吐出量(ドラム21の回転速度)を制御する形態もあり、この形態では可変式の油圧ポンプ64が油量調整装置の一例となり得るが、図示例のように油量調整装置70がフロー制御バルブである場合は、油圧回路の途中にフロー制御バルブ70を追加するだけでよく、様々な機種のミキサー車に対応可能であることから好ましい。
【0037】
図示例の油圧回路では、メイン回路65Aを油圧モータ66側へY1方向に流れる作動油の一部が、フロー制御バルブ70にてサブ回路65CへY2方向にリリーフされるようになっている。
【0038】
サブ回路65Cは、油圧モータ66から油圧ポンプ64へ作動油を戻すメイン回路65Bの途中に接続されており、油圧モータ66にY3方向に供給された作動油と、サブ回路65Cにリリーフされた作動油がメイン回路65Bに合流し、合流した作動油がメイン回路65BをY4方向へ流れて油圧ポンプ64に戻されるようになっている。
【0039】
ここで、フロー制御バルブ70による作動油のリリーフ量は、以下で詳説するように、制御装置40により算定されるホッパ18へ供給するコンクリートの供給量に基づいて設定される。
【0040】
油圧モータ66に供給される作動油の油量の増減に応じて、ドラム21の回転速度が増減され、この回転速度の増減によって、ホッパ18へのコンクリートの供給速度(供給量)が増減される。
【0041】
コンクリート吹付け機10におけるホッパ18の上方には超音波距離計30(センサの一例)が設置されており、超音波距離計30からホッパ18内に貯留するコンクリートCの表面に対してZ1方向に照射及び反射される超音波により、コンクリートCの高さが随時計測されるようになっている。尚、例えば屋外におけるコンクリート圧送の際には、超音波距離計に代わり、レーザ距離計が適用されてもよい。
【0042】
コンクリート吹付け機10は制御装置40をさらに備えており、超音波距離計30から送信される計測データは、制御装置40を構成する第1通信部50に対してZ2方向に送信され、制御装置40では随時送信されてくる計測データを格納する。ここで、超音波距離計30と制御装置40は、図示例の無線通信の他に、有線にて電気的に接続されていてもよい。
【0043】
制御装置40は、受信した計測データに基づいて、ホッパ18へ供給するコンクリートの供給量を算定し、供給量データを第1通信部50からミキサー車20の第2通信部80に対してZ3方向に送信する。
【0044】
ミキサー車20では、第2通信部80にて受信した供給量データに基づいて油量調整装置70を制御し、油圧モータ66に供給される作動油の油量を調整する。
【0045】
コンクリート供給システム100では、コンクリート吹付け機10が、ホッパ18内にあるコンクリートCの高さを検出する超音波距離計を備えていることにより、山岳トンネルT内の高粉塵環境下にあっても、ホッパ18内のコンクリートCの高さを高精度に測定することができ、このことによってホッパ18内のコンクリートの貯留量を高精度に特定することが可能になる。
【0046】
ここで、図示例は、コンクリート吹付け機10が制御装置40を備えている形態を示しているが、例えば、ミキサー車20が制御装置を備えている形態であってもよい。この形態では、超音波距離計30による計測データが第1通信部50を介して第2通信部80に送信され、第2通信部80を介して制御装置が計測データを取り込み、取り込んだ計測データに基づいて供給量を算定し、供給量データを油量調整装置70に送信して作動油の油量を調整する。
【0047】
次に、図3を参照して、制御装置40のハードウェア構成の一例を説明するとともに、図4を参照して、制御装置40の機能構成の一例を説明する。
【0048】
図3に示すように、制御装置40は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)やPLC(Programmable Logic Controller)等の情報処理装置により構成される。
【0049】
制御装置40を構成する情報処理装置は、接続バス46により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)41、主記憶装置42、補助記憶装置43、入出力IF(interface)44、及び通信IF45を備えている。主記憶装置42と補助記憶装置43は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0050】
CPU41は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU41は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU41は、コンピュータからなる制御装置40の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU41は、例えば、補助記憶装置43に記憶されたプログラムを主記憶装置42の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0051】
主記憶装置42は、CPU41が実行するコンピュータプログラムや、CPU41が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置42は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置43は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置43には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF45を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。制御装置40に対する外部装置等には、超音波距離計30や油量調整装置70に接続される第2通信部80が含まれる。
【0052】
補助記憶装置43は、例えば、主記憶装置42を補助する記憶領域として使用され、CPU41が実行するコンピュータプログラムや、CPU41が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置43は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置43として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0053】
入出力IF44は、制御装置40に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF44には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。制御装置40は、入出力IF44を介して、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0054】
また、入出力IF44には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。
【0055】
通信IF45は、制御装置40が接続するネットワークとのインターフェイスである。通信IF45は、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等、様々なネットワークを介して、超音波距離計30から計測データを受信し、同様にネットワークを介して、制御装置40にて算定された供給量データを第2通信部80に送信する。
【0056】
また、通信IF45はLPWA無線通信モジュールであってもよく、LPWAの主な通信方式(通信プロトコル)には、Sigfox、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)、NB-IoT等がある。ここで、LoRaWANは、920MHz帯のISMバンドを使用し、13dBm以下の低い出力でも遠距離通信を可能とする、LoRa変調を採用した通信方式である。上記するように、様々な通信プロトコルがある中で、例えばライセンスを必要とせず、携帯電話通信の波が届き難い山岳地帯でもトンネル坑内(工事現場の一例)に自営の基地局を設置することができ、低コストの通信システムを構築可能なプライベートLoRaを適用するのが好ましい。
【0057】
図4に示すように、制御装置40は、CPU41によるプログラムの実行により、少なくとも、第1通信部402、算定部404、制御部406,及び格納部408の各種機能を提供する。ここで、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0058】
第1通信部402では、超音波距離計30から発信された、ホッパ18内のコンクリートCの高さに関する計測データが随時受信され、格納部408に随時格納される。
【0059】
格納部408には、ホッパ18内のコンクリートCの高さに応じたコンクリートCの貯留量に関するデータベースが格納されている。さらに、格納部408には、施工管理者等により設定されている、ホッパ18内のコンクリートCの貯留量に関する基準値が格納されている。ここで、コンクリートCの高さに応じた貯留量の特定は、データベースを参照することの他に、算定部404にて算定してもよい。
【0060】
コンクリート吹付け機10によるコンクリートの吹付け量が一定の場合は、ミキサー車20からのコンクリートの供給量も一定に制御することにより、ホッパ18内のコンクリートCの貯留量をその基準値もしくは基準値近傍に安定的に維持することができる。一方、コンクリート吹付け機10によるコンクリートの吹付け量が都度変化する場合は、ホッパ18内のコンクリートCの貯留量の減少速度が変化することから、ミキサー車20からのコンクリートの供給速度も貯留量の減少速度に応じて変化させる必要がある。
【0061】
そこで、算定部404では、格納部408に随時格納される計測データを参照して、ホッパ18内に貯留するコンクリートCの変化量もしくは変化速度を算定する。
【0062】
制御部406は、算定部404にて算定された、ホッパ18内に貯留するコンクリートCの変化量もしくは変化速度に基づいて、油量調整装置70をPID制御するための供給量データを制御信号として第2通信部80に送信する。油量調整装置70は、受信した供給量データ(制御信号)に基づいて油圧モータ66へ供給する作動油の油量を調整し、ドラム21の回転速度が調整される。このドラム21の回転速度の調整により、例えば、ホッパ18へのコンクリートCの供給量と、ホッパ18から吹付けノズル13へ排出される排出量が一致もしくは略一致するように自動管理され、ホッパ18内のコンクリートCの貯留量が、基準値前後の一定量に安定的に維持される。
【0063】
コンクリート供給システム100によれば、制御装置40において、受信したホッパ18内のコンクリートCの高さに関する計測データに基づいて、ホッパ18へ供給するコンクリートCの供給量を算定し、算定された供給量に基づいて油圧回路65A,65Bを形成する油量調整装置70を制御することにより、様々に変化するコンクリート吹付け機10からのコンクリートの吹付け量や吹付け速度に応じながら、ホッパ18内のコンクリートCの貯留量を適正に自動管理することができる。
【0064】
実施形態に係るコンクリート供給方法は、以下のA工程とB工程を有する。
【0065】
A工程では、ホッパ18内にあるコンクリートCの高さを、超音波距離計30により検出する。
【0066】
B工程では、制御装置40において、超音波距離計30による計測データに基づいて、ホッパ18へ供給するコンクリートCの供給量を算定し、算定された供給量に基づいて油量調整装置70を制御しながらコンクリートCをホッパ18へ供給する。
【0067】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0068】
10:コンクリート吹付け機(コンクリート圧送装置)
11:吹付け機本体
12A:吹付けノズルブーム
12B:マンケージブーム
13:吹付けノズル
14:マンケージ
15:走行機構
16:アウトリガ機構
18:ホッパ
20:ミキサー車
21:ドラム
22:吐出口
23:シュート
24:減速機
30:超音波距離計(センサ)
40:制御装置
50:第1通信部
61:エンジン
62:動力取出装置(P.T.O)
63:ジョイント
64:油圧ポンプ
65A,65B:メイン回路(油圧回路)
65C:サブ回路(油圧回路)
66:油圧モータ
70:油量調整装置(フロー制御バルブ)
80:第2通信部
100:コンクリート供給システム
402:第1通信部
404:算定部
406:制御部
408:格納部
T:トンネル(山岳トンネル)
K:切羽
W:側面
C:コンクリート
図1
図2
図3
図4