(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099298
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20240718BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003141
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 陽太
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】合併症の危険度を正当に評価する。
【解決手段】実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、第1推定部と、第2推定部と、第3推定部と、を持つ。取得部は、少なくとも1つの背景疾患を有する患者に関する患者情報を取得する。第1推定部は、前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第1の関連疾患に関する第1の予測モデルとに基づいて、前記第1の関連疾患に関する第1の推定結果を算出する。第2推定部は、前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第2の関連疾患に関する第2の予測モデルとに基づいて、前記第2の関連疾患に関する第2の推定結果を算出する。第3推定部は、前記第1の推定結果と、前記第2の推定結果とに基づいて、前記第1の関連疾患と前記第2の関連疾患との併発に関する第3の推定結果を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの背景疾患を有する患者に関する患者情報を取得する取得部と、
前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第1の関連疾患に関する第1の予測モデルとに基づいて、前記第1の関連疾患に関する第1の推定結果を算出する第1推定部と、
前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第2の関連疾患に関する第2の予測モデルとに基づいて、前記第2の関連疾患に関する第2の推定結果を算出する第2推定部と、
前記第1の推定結果と、前記第2の推定結果とに基づいて、前記第1の関連疾患と前記第2の関連疾患との併発に関する第3の推定結果を算出する第3推定部と、を備える、
医用情報処理装置。
【請求項2】
前記第3推定部は、前記第3の推定結果として、前記第1の推定結果と前記第2の推定結果との少なくとも一方が補正された推定結果を出力する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記第3の推定結果として前記第1の関連疾患と前記第2の関連疾患とが併発した場合の前記背景疾患に関する推定結果を出力する併発推定部を更に備える、
請求項1または2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記患者情報は、性別、年齢、血液検査値、呼吸機能検査値、心機能検査値、画像、画像所見、前記背景疾患の名称、または前記背景疾患の重症度もしくは緊急度のうち少なくともいずれか1つを含む、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記第1推定部は、前記患者に対する介入に関する介入情報に更に基づいて、前記第1の推定結果を算出する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記介入情報は、手術、前記手術による切除情報、切除位置、または手技のうち少なくともいずれか1つを含む、
請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記第3推定部は、前記背景疾患の危険度を更に推定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記第3の推定結果を表示部に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータが、
少なくとも1つの背景疾患を有する患者に関する患者情報を取得し、
前記患者情報と、前記背景疾患に関する第1の関連疾患に関する第1の予測モデルとに基づいて、前記第1の関連疾患に関する第1の推定結果を算出し、
前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第2の関連疾患に関する第2の予測モデルとに基づいて、前記第2の関連疾患に関する第2の推定結果を算出し、
前記第1の推定結果と、前記第2の推定結果とに基づいて、前記第1の関連疾患と前記第2の関連疾患との併発に関する第3の推定結果を算出する、
医用情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
少なくとも1つの背景疾患を有する患者に関する患者情報を取得し、
前記患者情報と、前記背景疾患に関する第1の関連疾患に関する第1の予測モデルとに基づいて、前記第1の関連疾患に関する第1の推定結果を算出し、
前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第2の関連疾患に関する第2の予測モデルとに基づいて、前記第2の関連疾患に関する第2の推定結果を算出し、
前記第1の推定結果と、前記第2の推定結果とに基づいて、前記第1の関連疾患と前記第2の関連疾患との併発に関する第3の推定結果を算出する、ことを行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
合併症の発症を予測する際に、複数の合併症の併発を考慮する技術がある。例えば、2つ目の合併症の発症をスコアで表すモデルが提案されている。このモデルでは、1つの合併症から2つ目の合併症が発症するまでの期間が長いほど小さな値となり、その期間が長いほど大きな値となるスコアを予測する。
【0003】
患者を治療した後に複数の合併症が併発した際に、合併症の組み合わせによっては、合併症のいずれかが単体で発症している場合と比べて悪化することがある。例えば、肺炎が慢性閉塞性肺炎疾患の予後不良と関連している事例や、糖尿病が心不全の予後不良を関連している事例を示すものがある。
【0004】
複数の合併症が併発する場合の危険度を判定する際に、それぞれの合併症単体についての危険度を予測するモデルの結果を単純に集めただけでは合併症の併発による症状の悪化を考慮できない。このため、治療に伴う合併症の危険度を過小評価してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、合併症の危険度を正当に評価することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、第1推定部と、第2推定部と、第3推定部と、を持つ。取得部は、少なくとも1つの背景疾患を有する患者に関する患者情報を取得する。第1推定部は、前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第1の関連疾患に関する第1の予測モデルとに基づいて、前記第1の関連疾患に関する第1の推定結果を算出する。第2推定部は、前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第2の関連疾患に関する第2の予測モデルとに基づいて、前記第2の関連疾患に関する第2の推定結果を算出する。第3推定部は、前記第1の推定結果と、前記第2の推定結果とに基づいて、前記第1の関連疾患と前記第2の関連疾患との併発に関する第3の推定結果を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の病院内システム1の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態の医用情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図。
【
図3】第1の実施形態の医用情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】複数の関連疾患の組み合わせに応じた補正関数の対応の一例を示す図。
【
図5】危険度が表示されたディスプレイ130の画面の一例を示す。
【
図6】危険度が表示されたディスプレイ130の画面の一例を示す。
【
図7】危険度が表示されたディスプレイ130の画面の一例を示す。
【
図8】第1の実施形態の医用情報処理装置100における情報の流れを説明する図。
【
図9】第2の実施形態の医用情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図。
【
図10】第2の実施形態の医用情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】第2の実施形態の医用情報処理装置100における情報の流れを説明する図。
【
図12】関連疾患を併発する発症率の一例を示すグラフ。
【
図13】第3の実施形態の医用情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図。
【
図14】第3の実施形態の医用情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャートの一部。
【
図15】第3の実施形態の医用情報処理装置100における情報の流れを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用情報処理装置、医用情報処理方法、及びプログラムについて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の病院内システム1の構成の一例を示すブロック図である。第1の実施形態の病院内システム1は、例えば、病院情報システム(Hospital Information System:以下、HIS)10と、放射線科情報システム(Radiology Information System:以下、RIS)20と、医用画像診断装置(モダリティ)30と、画像保存通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)40と、医用情報処理装置100とを備える。
【0011】
HIS10は、病院内での業務支援を行うコンピュータシステムである。具体的には、HIS10は、各種サブシステムを有する。各種サブシステムとしては、例えば、電子カルテシステム、医療会計システム、診療予約システム、来院受付システム、入退院管理システムが含まれる。
【0012】
HIS10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、ディスプレイ、入力インターフェース及び通信インターフェースを備えるサーバ装置やクライアント端末等のコンピュータを含む。
【0013】
ユーザは、HIS10に含まれる電子カルテシステムを用いて、患者に関する情報(以下、患者情報)及び治療など患者に対する介入に関する情報(以下、介入情報)を入力したり参照したりする。ユーザは、HIS10に対して画像検査オーダーを発行する。患者は、例えば、少なくとも1つの背景疾患を有する。HIS10は、画像検査オーダーに応じたオーダー情報をRIS20などの他のシステムに転送する。
【0014】
HIS10は、ユーザによる入力インターフェースの入力操作に応じて患者情報を生成し、メモリに格納して保存する。HIS10は、医用情報処理装置100の要求に応じて、保存している患者情報及び介入情報を医用情報処理装置100に提供する。患者情報は、患者ごとに作成されている。患者情報は、例えば、患者の性別、年齢、血液検査値、呼吸機能検査値、心機能検査値、画像、及び画像所見を含む。
【0015】
ユーザは、患者に対する介入が行われるごとに、患者情報及び介入情報を生成するための入力操作を実行する。HIS10は、入力操作に応じた患者情報及び介入情報を生成してメモリに保存する。介入情報は、例えば、手術、手術による切除情報、切除位置、または手技のうち少なくともいずれか1つを含む。例えば、介入が肺がん患者の手術である場合、介入情報のうち、切除情報は、区域切除、肺葉切除、片肺全摘、または楔状切除であるかの情報を含む。切除する位置は、例えば、切除する区域あるいは肺葉の位置を含み、手技は、例えば、開胸手術あるいは胸腔鏡手術のいずれかを含む。
【0016】
RIS20は、画像診断部門での業務支援を行うコンピュータシステムである。RIS20は、HIS10と連携した画像検査オーダーの予約管理のほか、検査機器への予約情報連携、検査情報の管理などを行う。RIS20は、例えば、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、ディスプレイ、入力インターフェース及び通信インターフェースを備えるサーバ装置やクライアント端末等のコンピュータを含む。
【0017】
モダリティ30は、例えば、画像検査指示等に基づき決定される撮影条件(撮影プロトコル)に従い撮像(撮影)を実行する。モダリティ30としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置、X線診断装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、核医学診断装置等が挙げられる。モダリティ30は、例えば、医師(放射線科医)や診療放射線技師等のオペレータにより操作される。モダリティ30の撮像により生成された医用画像(画像データ)はPACS40に送信される。
【0018】
PACS40は、モダリティ30により送信された医用画像を受信してデータベースに保存するコンピュータシステムである。PACS40は、クライアントからのリクエストに応じて、データベースに保存された医用画像を送信(転送)する。PACS40は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ、ディスプレイ、入力インターフェース、通信インターフェースを含むサーバ・コンピュータを含む。
【0019】
病院内システム1の構成は上記に限定されない。病院内システム1は、例えば、読影レポート作成装置等を含んでいてもよい。また、病院内システム1のいくつかの要素が統合されていてもよい。例えば、HIS10とRIS20とが1個のシステムに統合されていてもよい。
【0020】
医用情報処理装置100は、背景疾患を有する患者に発症する合併症の危険度を推定する装置である。医用情報処理装置100は、合併症の危険度を推定するにあたり、患者の患者情報をHIS10に要求し、HIS10により送信される患者情報を受信する。医用情報処理装置100は、受信した患者情報やその他の情報を用いて、患者の合併症の危険度を推定する。
【0021】
図2は、第1の実施形態の医用情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。医用情報処理装置100は、例えば、通信インターフェース110と、入力インターフェース120と、ディスプレイ130と、処理回路140と、メモリ150と、を備える。医用情報処理装置100における通信インターフェース110、入力インターフェース120、及びディスプレイ130は、HIS10が備える通信インターフェース、入力インターフェース及びディスプレイとは別個に設けられているが、これらが共通していてもよい。
【0022】
通信インターフェース110は、例えば、LAN(Local Area Network)などのネットワークNWを介してRIS20、モダリティ30、PACS40等の外部装置と通信する。通信インターフェース110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等の通信インターフェースを含む。ネットワークNWは、LANに代えてまたは加えて、インターネット、セルラー網、Wi-Fi網、WAN(Wide Area Network)等を含んでもよい。
【0023】
入力インターフェース120は、診療医等のユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路140に出力する。入力インターフェース120は、例えば、ユーザにより入力操作が行われた場合に、入力操作に応じた情報を生成する。入力インターフェース120は、生成した入力操作に応じた情報を処理回路140に出力する。
【0024】
入力インターフェース120は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等を含む。入力インターフェース120は、例えば、マイク等の音声入力を受け付けるユーザインターフェースであってもよい。入力インターフェース120がタッチパネルである場合、入力インターフェース120は、ディスプレイ130の表示機能を兼ね備えるものであってもよい。
【0025】
なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0026】
ディスプレイ130は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ130は、処理回路140によって生成された画像や、操作者からの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。例えば、ディスプレイ130は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ130は、表示部の一例である。
【0027】
処理回路140は、例えば、取得機能141と、第1推定機能142と、第2推定機能143と、第3推定機能144と、表示制御機能145とを備える。処理回路140は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ(記憶回路)150に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0028】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA)などの回路(circuitry)を意味する。
【0029】
メモリ150にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ150に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が医用情報処理装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ150にインストールされてもよい。
【0030】
ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。医用情報処理装置100におけるハードウェアプロセッサやメモリ等は、HIS10のハードウェアプロセッサやメモリ等とは別個に設けられているが、これらが共通していてもよい。
【0031】
メモリ150は、例えば、予測モデルデータベース(以下、DB)151及び補正モデルDB152を記憶する。予測モデルDB151は、複数の予測モデルを含む。予測モデルは、患者情報と、背景疾患に関する疾患(例えば合併症、以下、関連疾患ともいう)に関するモデルである。予測モデルは、例えば、患者情報及び治療方法を入力として関連疾患の危険度を推定結果として算出し、関連疾患の危険度(以下、関連疾患危険度)を出力する。
【0032】
予測モデルは、背景疾患及び関連疾患の組み合わせごとにそれぞれ設けられる。以下の説明では、複数の予測モデルを第1の予測モデル(以下、第1予測モデル)及び第2の予測モデル(以下、第2予測モデル)とし、それぞれ第1の関連疾患(以下、第1関連疾患)及び第2の関連疾患(以下、第2関連疾患)の危険度を算出するものとする。例えば、背景疾患が肺がんであり、関連疾患が肺炎である場合の予測モデルを第1予測モデルとする。
【0033】
この場合、第1予測モデルは、背景疾患(肺がん)を患った患者の患者情報を入力とし、その患者に関する第1関連疾患(肺炎)の危険度(以下、第1関連疾患危険度)を算出して出力とする。疾患の危険度は、疾患が患者に与える影響の度合いを示す指標であり、例えば、重症度、緊急度、発症率、検査値の変化やQOL(Quality of life)の変化などの項目を含む。第1予測モデルは、例えば、肺がんを患った患者の患者情報が入力された場合に、その患者の肺炎の重症度、緊急度、または発症率のうち少なくとも1つを出力する。第1関連疾患危険度は、第1の推定結果の一例である。
【0034】
また、例えば、背景疾患が肺がんであり、第2関連疾患が肺塞栓症である予測モデルを第2予測モデルとする。この場合、第2予測モデルは、背景疾患(肺がん)を患った患者の患者情報を入力とし、その患者に関する第2関連疾患(肺塞栓症)の危険度(以下、第2関連疾患危険度)のうち重症度、緊急度、または発症率のうち少なくとも1つを出力する。背景疾患を肺がんとした場合の関連疾患は、肺炎、肺塞栓症のほか、例えば、呼吸機能低下、COPD、糖尿病、心不全が挙げられる。第2関連疾患危険度は、第2の推定結果の一例である。
【0035】
補正モデルDB152は、複数の補正モデルを含む。補正モデルは、複数の疾患の危険度と、複数の疾患の組み合わせに応じた危険度の補正値に関するモデルである。補正モデルは、例えば、複数の疾患の危険度を入力として複数の疾患の組み合わせに応じて各疾患の危険度を補正して出力するモデルである。補正モデルに利用される疾患は、背景疾患でもよいし関連疾患でもよい。
【0036】
取得機能141は、患者における合併症(関連疾患)の危険度を推定するにあたり、患者情報及び介入情報をHIS10に要求する。HIS10は、要求に応じて、患者情報及び介入情報を医用情報処理装置100に送信する。取得機能141は、HIS10により送信され、通信インターフェース110により受信された患者情報及び介入情報を取得する。取得機能141は、取得部の一例である。
【0037】
第1推定機能142は、背景疾患がある患者の第1関連疾患危険度を求めるために、メモリ150に格納された予測モデルDB151に含まれる第1予測モデルを読み出す。第1推定機能142は、読み出した第1予測モデルに、取得機能141により取得された患者情報及び介入情報を入力する。第1推定機能142は、第1予測モデルを利用して、第1関連疾患危険度を出力し、推定結果として算出する。第1推定機能142は、第1推定部の一例である。
【0038】
第1関連疾患は、例えば、背景疾患に対して、発症率が高く、例えば、発症率が所定の閾値以上となる疾患である。第1推定機能142により危険度を推定される第1関連疾患は、どのように決定されてもよい。第1関連疾患は、例えば、背景疾患または患者情報のうち少なくとも一方に応じてあらかじめ決定されていてもよいし、ユーザによる入力インターフェース120に対する入力操作に応じて決定されてもよい。第1関連疾患は、単数でもよいし複数でもよい。
【0039】
第2推定機能143は、背景疾患がある患者の第2関連疾患危険度を求めるために、メモリ150に格納された予測モデルDB151に含まれる第2予測モデルを読み出す。第2推定機能143は、読み出した第2予測モデルに、取得機能141により取得された患者情報及び介入情報を入力する。第2推定機能143は、第2予測モデルを利用して、第2関連疾患危険度を出力し、推定結果として算出する。第2推定機能143は、第2推定部の一例である。
【0040】
第2関連疾患は、第1関連疾患のほか、例えば、背景疾患に対して、発症率が所定の閾値以上となる疾患である。第2推定機能143により危険度を推定される第2関連疾患は、どのように決定されてもよい。第2関連疾患は、例えば、背景疾患または患者情報のうち少なくとも一方に応じてあらかじめ決定されていてもよいし、ユーザによる入力インターフェース120に対する入力操作に応じて決定されてもよい。第2関連疾患は、単数でもよいし複数でもよい。
【0041】
第3推定機能144は、複数の関連疾患危険度に基づいて、複数の関連疾患の併発に関して、関連疾患危険度を補正した補正危険度を算出する。第3推定機能144は、例えば、第1関連疾患危険度と、第2関連疾患危険度に基づいて、第1関連疾患と第2関連疾患との併発に関し、第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度を補正する。第3推定機能144は、第1関連疾患と第2関連疾患の組み合わせに応じて、第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度を補正する。補正された第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度は、第3の推定結果の一例である。
【0042】
第3推定機能144は、例えば、第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度を補正するために、メモリ150に格納された補正モデルDB152に含まれる補正モデルを読み出す。補正モデルは、第1関連疾患と第2関連疾患の組み合わせごとに設けられている。第3推定機能144は、読み出した補正モデルに、第1推定機能142により算出された第1関連疾患危険度及び第2推定機能143により算出された第2関連疾患危険度を入力する。補正モデルは、2つの疾患に関するモデルである。補正モデルは、3つ以上の疾患に関するモデルでもよい。
【0043】
第3推定機能144は、補正モデルを利用して、第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度を補正して、推定結果として算出する。補正された第1関連疾患危険度(以下、第1補正危険度)及び第2関連疾患危険度(以下、第2補正危険度)は、第3の推定結果の一例である。第3推定機能144は、第3推定部の一例である。
【0044】
第3推定機能144は、背景疾患にさらに基づいて、関連疾患危険度を補正したり、背景疾患の危険度(以下、背景疾患危険度)を算出したりする。この場合、第3推定機能144は、関連疾患危険度と背景疾患危険度の両方を算出してもよいし、関連疾患危険度を算出することなく背景疾患危険度を算出してもよい。
【0045】
表示制御機能145は、第1推定機能142及び第2推定機能143により算出された第1関連疾患及び第2関連疾患危険度及び第3推定機能144により補正された補正危険度をディスプレイ130に表示させる。表示制御機能145は、第1関連疾患及び第2関連疾患危険度及び補正危険度を単独で表示させてもよいし、複合的に表示させてもよい。表示制御機能145は、ディスプレイ130に表示させる画像のデータを、通信インターフェース110を利用して、病院内システム1内におけるHIS10、RIS20等の外部機器に送信し、外部機器におけるディスプレイなどに表示できるようにしてもよい。表示制御機能145は、表示制御部の一例である。
【0046】
次に、医用情報処理装置100における処理について説明する。
図3は、第1の実施形態の医用情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャートである。医用情報処理装置100は、まず、取得機能141において、関連疾患危険度の算出の対象となる患者の患者情報及びその患者に関する介入情報をHIS10に要求する。患者情報は、例えば、介入前の患者情報である。患者情報は、介入後の患者情報を含んでもよい。取得機能141は、HIS10により送信され通信インターフェース110により受信される患者情報及び介入情報を取得する(ステップS101)。
【0047】
次に、第1推定機能142は、入力インターフェース120に対する入力操作等に基づいて、第1関連疾患を決定する(ステップS103)。続いて、第2推定機能143は、入力インターフェース120に対する入力操作等に基づいて、第2関連疾患を決定する(ステップS105)。
【0048】
続いて、第1推定機能142は、第1関連疾患に応じた第1予測モデルを読み出す。第1推定機能142は、取得機能141により取得された患者情報に基づいて、第1予測モデルを用いて第1関連疾患危険度を算出する(ステップS107)。続いて、第2推定機能143は、第2関連疾患に応じた第2予測モデルを読み出す。第2推定機能143は、取得機能141により取得された患者情報に基づいて、第2予測モデルを用いて第2関連疾患危険度を算出する(ステップS109)。
【0049】
第1予測モデル及び第2予測モデルは、例えば、患者情報及び介入情報を入力とし、それぞれ第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度を出力するモデルである。介入情報には、例えば、介入に関する治療方法が含まれる。第1予測モデル及び第2予測モデルは、例えば、回帰問題として重回帰分析やサポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどにより実現される。
【0050】
第1予測モデル及び第2予測モデルの出力は、例えば、重症度及び緊急度である。重症度及び緊急度は、例えば、0~100の間の数値(スコア)で表される。重症度及び緊急度は、例えば閾値によって段階的に分けられ、例えば、重症度であれば、重篤、重症、中等症、軽症の段階に分けられる。
【0051】
第1予測モデル及び第2予測モデルは、他のモデルでもよい。第1予測モデル及び第2予測モデルは、例えば、合併症の進行度、および、進行度に対応する重症度、緊急度を一意に決まるよう定義することで、合併症の危険度を予測する回帰問題を、合併症の進行度を予測する分類問題に置き換えたモデルでもよい。
【0052】
この場合の第1予測モデル及び第2予測モデルは、例えば、患者情報と治療方法を入力として受け取り、合併症の進行度ごとの発症率を出力するモデルである。第1予測モデル及び第2予測モデルは、例えば合併症の進行度の分類問題としてロジスティック回帰やサポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどにより実現される。例えば、第1予測モデルでは、肺炎の危険度を予測するため、(進行度1、確率=3.0%)、(進行度2、確率=7.0%)、(進行度3、確率=1.0%)、(進行度4、確率=0.5%)、(発症無し、確率=88.5%)というような予測結果が出力される。
【0053】
続いて、第3推定機能144は、第1関連疾患及び第2関連疾患の組み合わせに応じた補正モデルを読み出す。第3推定機能144は、第1推定機能142及び第2推定機能143の推定結果である第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度の組み合わせに基づいて、補正モデルを用いて第1補正危険度及び第2補正危険度を算出する。
【0054】
第3推定機能144は、例えば、補正モデルを用いて、第1関連疾患及び第2関連疾患の重症度、緊急度を補正した補正危険度を算出する(ステップS111)。補正モデルは、例えば、特定の組み合わせの関連疾患を有する集団と、単体の関連疾患を有する集団の症例データを用いて、回帰問題として重回帰分析やサポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどにより実現される。
【0055】
補正モデルの入力は、例えば、「第1関連疾患の重症度=40、緊急度=30」、「第2関連疾患の重症度=40、緊急度=50」を入力とし、「第1関連疾患及び第2関連疾患併発時の第1関連疾患の重症度=50、緊急度=40」、「第1関連疾患及び第2関連疾患併発時の第2関連疾患の重症度=45、緊急度=55」が出力されるようなモデルである。補正モデルは、例えば、第1関連疾患及び第2関連疾患の組ごとに用意される。
【0056】
第3推定機能144は、補正モデルを用いる以外の態様で第1補正危険度及び第2補正危険度を算出してもよい。第3推定機能144は、例えば、複数の関連疾患の組みごとに重症度、緊急度を補正する補正関数をルールベースで予め定めておき、第1関連疾患及び第2関連疾患に応じた補正関数を選択し、選択した補正関数を用いて、合併症の重症度、緊急度を補正してもよい。
図4は、複数の関連疾患の組み合わせに応じた補正関数の対応の一例を示す図である。
【0057】
続いて、表示制御機能145は、第1推定機能142により算出された第1関連疾患危険度、第2推定機能143により算出された第2関連疾患危険度、及び第3推定機能144により算出された補正危険度をディスプレイ130に表示させる(ステップS113)。表示制御機能145は、第1関連疾患危険度、第2関連疾患危険度、及び補正危険度をどのように表示させてもよい。こうして、医用情報処理装置100は、
図4に示す処理を終了する。
【0058】
表示制御機能145は、例えば、第1関連疾患危険度及び第2関連疾患危険度のスコア(1~100の数値)を含めるようにしてもよいし、閾値により判定された危険度の度合いを含めるようにして表示させてもよい。表示制御機能145は、表示させる内容に、併発することが予想される疾患の名称や、発症・併発することが予測される疾患に応じた応急処置方法等のメッセージを含めてもよい。
【0059】
表示制御機能145は、単体での危険度が高い合併症や、併発することによって危険度が大きく上昇する疾患について、文字の太さ、文字の色、文字背景の色、マークなどにより強調表示させてもよいし、冒頭に優先的に表示させてもよい。表示制御機能145は、複数の疾患を表示させる場合、表示させる疾患の順番は、ユーザによって設定された順番としてもよい。
【0060】
図5~
図7は、いずれも危険度が表示されたディスプレイ130の画面の一例を示す図である。
図5の左図は、第1関連疾患、ここでは例えば肺炎の重症度、緊急度、及び発症率を円画像で示すグラフを示す。
図5において、例えば、第1円画像W11~第4円画像W14により肺炎が発症する場合、緊急度及び重症度がどの程度となる肺炎が発症するかの発症率を示している。
図5において、重症度は縦軸、緊急度は横軸に沿って表示され、発症率は、円の大きさ(面積)によって表され、円が大きいほど発症率が高くされている。
【0061】
これに対して、
図5の右図は、第3推定機能144により算出された肺炎の第1関連疾患危険度が補正されて補正危険度が追加されたグラフである。
図5における第1ラインL1、第2ラインL2、及び第3ラインL3は、それぞれ重篤、重症、中等症、軽症の判定の基準となる閾値を示すことで、重症度及び緊急度がどう変化するかを視覚的に示している。さらに、
図5の右図では、左図と比較して、第1追加円画像W22が追加されている。第1追加円画像W22は、肺炎についての補正危険度を示すことにより、合併症の併発により重症度、緊急度がどう変化するかを視覚的に示している。このように、円形などの形状により各関連疾患の危険度を示してもよい。
【0062】
あるいは、
図6の左図に示すように、画面の色(濃度)により発症率を表現してもよいし、
図6の中図に示すように、第1関連疾患の危険度を等高線により表してもよい。さらに、
図6の右図に示すように、
図6の左図と中図を合わせて色(濃度)と等高線の両方で第1関連疾患の危険度を表示してもよい。また、
図5及び
図6に示した態様で第2関連疾患の危険度を表示してもよい。
【0063】
さらに、
図7に示すように、複数の関連疾患(第1関連疾患及び第2関連疾患)の危険度を合わせて表示させてもよい。
図7の左図においては、1つの第1関連疾患(肺炎)の危険度と、3つの第2関連疾患(肺塞栓症、呼吸機能低下、COPD)の危険度を示している。危険度としては、重症度及び緊急度を二次元で示している。例えば、肺炎の危険度を第1マークM1、肺塞栓症の危険度を第2マークM2、呼吸機能低下の危険度を第3マークM3、COPDの危険度を第4マークM4で示している。さらに、各関連疾患の重症度及び緊急度をそれぞれ一次元で示したものを合わせてまたは単独で表示させてもよい。
【0064】
このような表示態様に対して、
図7の右図に示すように、第2疾患の呼吸機能低下及びCOPDの危険度について、破線で示す補正前の表示(関連疾患危険度)を補正後の表示(補正危険度)に代えて、実線で示す態様で表示させてもよい。さらに、他の関連疾患についても補正危険度を表示させてもよいし、関連危険度と補正危険度をともに表示させてもよい。
【0065】
図5~
図7の例では、関連疾患についての関連疾患危険度及び補正危険度の表示について説明しているが、表示制御機能145は、ディスプレイ130にその他の情報を表示させてもよい。表示制御機能145は、例えば、背景疾患の情報や危険度を表示させてもよいし、患者情報、あるいは背景疾患、関連疾患の名称などの背景疾患、関連疾患に関連する情報をディスプレイ130に表示させてもよい。
【0066】
次に、第1の実施形態の医用情報処理装置100における具体的な情報の流れについて、背景疾患を肺がん、第1関連疾患を肺炎、第2関連疾患を肺塞栓症及び呼吸機能低下として説明する。ここでは、医用情報処理装置100は、背景疾患についてもディスプレイ130に表示させるものとする。
【0067】
図8は、第1の実施形態の医用情報処理装置100における情報の流れを説明する図である。医用情報処理装置100では、まず、HIS10により送信される患者情報及び介入方法を含む情報(以下、患者情報等)R1を取得機能141により取得する。医用情報処理装置100は、取得機能141により取得した患者情報等R1を第1推定機能142における肺炎推定モデル、第2推定機能143における肺塞栓症予測モデル、及び呼吸機能低下予測モデルに入力する。取得機能141は、患者情報に含まれる背景疾患R6を表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0068】
第1推定機能142において、肺炎予測モデルは、肺炎危険度R2を出力し、第1推定機能142は、肺炎危険度R2を第3推定機能144により読み出された補正モデルに入力するとともに、表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。第2推定機能143において、肺塞栓症予測モデルは、肺塞栓症危険度R3を出力し、呼吸機能低下予測モデルは、呼吸機能低下危険度R4を出力する。第2推定機能143は、肺塞栓症危険度R3及び呼吸機能低下危険度R4を第3推定機能144により読み出された補正モデルに入力するとともに、表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0069】
第3推定機能144において、補正モデルは、入力された肺炎危険度R2、肺塞栓症危険度R3、及び呼吸機能低下危険度R4に基づいて、肺炎、肺塞栓症、及び呼吸機能低下の合併症が生じた場合の補正危険度R5を出力する。表示制御機能145は、補正モデルにより出力された補正危険度R5をディスプレイ130に表示させる。ディスプレイ130には、患者情報等R1、肺炎危険度R2、肺塞栓症危険度R3、呼吸機能低下危険度R4、補正危険度R5、及び背景疾患R6が表示される。
【0070】
第1の実施形態に医用情報処理装置100は、関連疾患について、複数の関連疾患が発症する、いわゆる合併症が発症する場合を考慮して、関連疾患の危険度を求めて、ディスプレイ130に表示させている。このため、合併症の危険度を正当に評価し、ユーザに知らせることができる。
【0071】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の医用情報処理装置100について説明する。
図9は、第2の実施形態の医用情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。第2の実施形態の医用情報処理装置100は、処理回路140が併発推定機能146を備える点、メモリ150に併発危険度予測モデルDB153が格納されている点で、第1の実施形態の医用情報処理装置100と主に異なる。以下、第1の実施形態との相違点を中心として、第2の実施形態の医用情報処理装置100について説明する。
【0072】
医用情報処理装置100におけるメモリ150に格納された併発危険度予測モデルDB153は、複数の併発危険度予測モデルを含む。併発危険度予測モデルは、患者情報と、複数の関連疾患が併発する可能性に関するモデルである。併発危険度予測モデルは、背景疾患及び併発する関連疾患の組み合わせごとにそれぞれ設けられる。
【0073】
併発推定機能146は、複数の関連疾患についての併発危険度を求めるために、メモリ150に格納された併発危険度予測モデルDB153に含まれる併発危険度予測モデルを読み出す。併発推定機能146は、読み出した併発危険度予測モデルに、取得機能141により取得された患者情報及び介入情報を入力する。併発推定機能146は、併発危険度予測モデルを利用して、併発危険度を出力し、推定結果として算出する。併発推定機能146は、併発推定部の一例である。
【0074】
次に、第2の実施形態の医用情報処理装置100における処理について説明する。
図10は、第2の実施形態の医用情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャートの一部である。第2の実施形態の医用情報処理装置100では、
図3に示す第1の実施形態における医用情報処理装置100のステップS101~ステップS109と同様の処理を行う。
【0075】
続いて、第2の実施形態の医用情報処理装置100は、第2推定機能143において第2関連疾患危険度を算出した後、第3推定機能144において、複数の関連疾患が発症する合併危険度を算出する(ステップS201)。合併危険度を算出するにあたり、第3推定機能144は、併発する可能性のある複数の関連疾患に応じた併発危険度予測モデルを読み出す。
【0076】
第3推定機能144は、読み出した併発危険度予測モデルに、取得機能141により取得された患者情報及び介入情報を入力し、併発危険度予測モデルは、関連疾患併発危険度を出力する。併発危険度予測モデルは、例えば、患者情報及び治療方法を入力として関連疾患が併発する可能性を推定結果として算出し、関連疾患が併発することによる危険度(以下、関連疾患併発危険度)を出力するモデルである。併発危険度予測モデルは、例えば分類問題としてロジスティック回帰やサポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどにより実現される。
【0077】
第1予測モデル及び第2予測モデルの出力は、例えば、重症度及び緊急度である。重症度及び緊急度は、例えば、0~100の間の数値(スコア)で表される。重症度及び緊急度は、例えば閾値によって段階的に分けられ、例えば、重症度であれば、重篤、重症、中等症、軽症の段階に分けられる。
【0078】
併発モデルは、他のモデルでもよい。併発モデルは、例えば、疾患の組ごとに、介入前患者情報、介入方法、併発危険度予測モデルからの情報を入力に、疾患が併発する可能性を出力するモデルでもよい。このモデルは、例えば分類問題としてロジスティック回帰やサポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどにより実現される。併発危険度予測モデルからの情報としては、併発危険度予測モデルの出力である重症度、緊急度、発症率を用いてもよいし、併発危険度予測モデルがニューラルネットワークなどによって実装されており、特徴抽出部と予測部に分けられてもよい。この場合、特徴抽出部によって患者情報及び介入情報の特徴を抽出し、抽出した特徴を用いて予測部で併発危険度を予測してもよい。
【0079】
第3推定機能144は、第1推定機能142により算出された第1関連疾患危険度、第2推定機能143により算出された第2関連疾患危険度、及び算出した関連疾患併発危険度に基づいて、補正危険度を算出する(ステップS111)。以後、第1の実施形態の医用情報処理装置100と同様の処理を実行して、
図10に示す処理を終了する。
【0080】
次に、第2の実施形態の医用情報処理装置100における具体的な情報の流れについて説明する。
図11は、第2の実施形態の医用情報処理装置100における情報の流れを説明する図である。医用情報処理装置100では、まず、HIS10により送信される患者情報及び介入方法を含む患者情報等R1を取得機能141により取得する。
【0081】
医用情報処理装置100は、取得機能141により取得した患者情報等R1を第1推定機能142における肺炎推定モデル、第2推定機能143における肺塞栓症予測モデル、呼吸機能低下予測モデル、及び併発危険度予測モデルに入力する。取得機能141は、患者情報に含まれる背景疾患R6を表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0082】
第1推定機能142において、肺炎予測モデルは、肺炎危険度R2を出力し、第1推定機能142は、肺炎危険度R2を第3推定機能144における補正モデルに入力するとともに、表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。第2推定機能143において、肺塞栓症予測モデルは、肺塞栓症危険度R3を出力し、呼吸機能低下予測モデルは、呼吸機能低下危険度R4を出力する。第2推定機能143は、肺塞栓症危険度R3及び呼吸機能低下危険度R4を第3推定機能144における補正モデルに入力するとともに、表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0083】
併発推定機能146において、併発危険度予測モデルは、併発危険度R7を出力し、併発推定機能146は、併発危険度R7を第3推定機能144により読み出された補正モデルに入力する。第3推定機能144において、補正モデルは、第1推定機能142及び第2推定機能143により入力された肺炎危険度R2、肺塞栓症危険度R3、及び呼吸機能低下危険度R4に加えて、併発推定機能146により入力された併発危険度R7に基づいて、肺炎、肺塞栓症、及び呼吸機能低下の合併症が生じた場合の補正危険度R5を出力する。
【0084】
表示制御機能145は、補正モデルにより出力された補正危険度R5及び併発危険度予測モデルにより出力された併発危険度R7ディスプレイ130に表示させる。ディスプレイ130には、患者情報等R1、肺炎危険度R2、肺塞栓症危険度R3、呼吸機能低下危険度R4、補正危険度R5、及び背景疾患R6に加えて、併発危険度が表示される。
【0085】
第2の実施形態に医用情報処理装置100は、第1の実施形態に医用情報処理装置100と同様の作用効果を奏する。第2の実施形態に医用情報処理装置100は、さらに、関連疾患の危険度を求めて、ディスプレイ130に表示させているにあたり、関連疾患が併発する併発危険度を求めている。このため、合併症が併発する場合を考慮して合併症の危険度を正当に評価し、ユーザに知らせることができる。
【0086】
図12は、関連疾患を併発する発症率の一例を示すグラフである。
図12において、第1関連疾患X1、第2関連疾患X2、及び第3関連疾患X3が背景疾患に対して併発する発症率を示している。
図12の左図は、併発危険度を考慮せずに算出した発症率であり、第1関連疾患X1、第2関連疾患X2、及び第3関連疾患X3のそれぞれが単独で背景疾患と併発する発症率を示している。
図12の右図は、併発危険度を考慮して算出した発症率であり、第1関連疾患X1と第2関連疾患X2、第2関連疾患X2と第3関連疾患X3、第3関連疾患X3と第1関連疾患X1が背景疾患に対して併発する発症率を示している。ここでは、発症率が所定の閾値(基準値)L11を超えるときに関連疾患が併発する可能性が高いと判定するものとする。
【0087】
例えば、併発危険度を考慮しない場合には、
図12の左図に示すように、第1関連疾患X1と第3関連疾患X3が併発する可能性が高いと判定される。これに対して、併発危険度を考慮し場合には、第2関連疾患X2と第3関連疾患X3、第3関連疾患X3と第1関連疾患X1が背景疾患に対して併発する可能性が高いと判定される。したがって、複数の関連疾患が併発する可能性を適切に判定することができる。
【0088】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の医用情報処理装置100について説明する。
図13は、第3の実施形態の医用情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。第3の実施形態の医用情報処理装置100は、処理回路140抽出機能148を備える点で、第2の実施形態の医用情報処理装置100と主に異なる。以下、第2の実施形態との相違点を中心として、第3の実施形態の医用情報処理装置100について説明する。
【0089】
第3の実施形態において、関連疾患の危険度を予測する予測モデル(第1予測モデル及び第2予測モデル)は、例えば、特徴抽出部と予測部とを含んで構成されている。特徴抽出部は、入力された情報の特徴を抽出する。予測部は、特徴抽出部により抽出された特徴に基づいて、危険度を算出し、推定結果として予測する。
【0090】
抽出機能148は、患者情報及び介入情報の特徴を抽出するために、メモリ150に格納された予測モデルDB151に含まれる第1予測モデル及び第2モデルを読み出す。抽出機能148は、読み出した第1予測モデル及び第2予測モデルに、取得機能141により取得された患者情報及び介入情報を入力する。抽出機能148は、第1予測モデル及び第2予測モデルの特徴抽出部を利用して、患者情報及び介入情報の特徴を抽出する。
【0091】
患者情報の特徴は、例えば、患者の血液検査値、呼吸機能検査値、心機能検査値、画像、及び画像所見を含む。介入情報の特徴は、例えば、手術、手術による切除情報、切除位置、または手技を含む。患者情報及び介入情報は、これらの詳細な情報またはこれらに関連する情報でもよい。患者情報及び介入情報は、これらの情報以外の情報でもよい。
【0092】
次に、第3の実施形態の医用情報処理装置100における処理について説明する。
図14は、第3の実施形態の医用情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャートの一部である。第3の実施形態の医用情報処理装置100では、
図3に示す第1の実施形態における医用情報処理装置100のステップS101~ステップS105と同様の処理を行う。
【0093】
続いて、第3の実施形態の医用情報処理装置100は、抽出機能148において、患者情報及び介入情報の特徴を抽出する(ステップS301)。医用情報処理装置100は、第2関連疾患を決定した後、抽出機能148において、患者の患者情報及び介入情報の特徴を抽出する(ステップS301)。以後、第1の実施形態の医用情報処理装置100と同様の処理を実行する。
【0094】
第3の実施形態の医用情報処理装置100においては、ステップS107における第1関連疾患危険度の算出、ステップS109における第2関連疾患危険度の算出にあたり、ステップS301において抽出機能148により抽出された特徴用いる。さらに、
図10に示すステップS201における併発危険度を算出する際に、ステップS301において抽出機能148により抽出された特徴用いる。その他は、上記第2の実施形態と同様の処理を行い、
図10に示す処理を終了する。
【0095】
次に、第3の実施形態の医用情報処理装置100における具体的な情報の流れについて説明する。
図15は、第3の実施形態の医用情報処理装置100における情報の流れを説明する図である。医用情報処理装置100では、まず、HIS10により送信される患者情報及び介入方法を含む患者情報等R1を取得機能141により取得する。取得機能141は、患者情報に含まれる背景疾患R6を表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0096】
医用情報処理装置100は、取得機能141により取得した患者情報等R1を抽出機能148に入力する。抽出機能148は、肺炎予測モデルの特徴抽出部により、肺炎の発症に関する患者情報及び介入情報の特徴(以下、肺炎特徴)R11を抽出する。抽出機能148は、肺塞栓症予測モデルの特徴抽出部により、肺塞栓症の発症に関する患者情報及び介入情報の特徴(以下、肺塞栓症特徴)R12を抽出する。抽出機能148は、呼吸機能低下予測モデルの特徴抽出部により、呼吸機能低下の発症に関する患者情報及び介入情報の特徴(以下、呼吸機能低下特徴)R13を抽出する。
【0097】
抽出機能148において肺炎予測モデルの特徴抽出部により抽出された肺炎特徴R11は、第1推定機能142において、肺炎予測モデルの予測部に入力される。肺炎予測モデルの予測部は、肺炎危険度R2を出力し、第1推定機能142は、肺炎危険度R2を第3推定機能144における補正モデルに入力するとともに、表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0098】
抽出機能148において肺塞栓症予測モデルの特徴抽出部により抽出された肺塞栓症特徴R12は、第2推定機能143において、肺塞栓症予測モデルの予測部に入力される。肺塞栓症予測モデルの予測部は、肺塞栓症危険度R3を出力し、第2推定機能143は、肺塞栓症危険度R3を第3推定機能144における補正モデルに入力するとともに、表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0099】
抽出機能148において呼吸機能低下予測モデルの特徴抽出部により抽出された呼吸機能低下栓症特徴R12は、第2推定機能143において、呼吸機能低下予測モデルの予測部に入力される。呼吸機能低下予測モデルの予測部は、呼吸機能低下危険度R4を出力し、第2推定機能143は、呼吸機能低下危険度R4を第3推定機能144における補正モデルに入力するとともに、表示制御機能145によりディスプレイ130に表示させる。
【0100】
併発推定機能146において、併発危険度予測モデルは、入力された肺炎特徴R11、肺塞栓症特徴R12、及び呼吸機能低下特徴R13に基づいて、肺炎、肺塞栓症、及び呼吸機能低下の合併症が併発する併発危険度R14を出力する。併発推定機能146は、併発危険度予測モデルにより出力された併発危険度R14を第3推定機能144により読み出された補正モデルに入力する。
【0101】
第3推定機能144において、補正モデルは、第1推定機能142により入力された肺炎危険度R2、第2推定機能143により入力された肺塞栓症危険度R3及び呼吸機能低下危険度R4に加えて、併発推定機能146により入力された併発危険度R14に基づいて、肺炎、肺塞栓症、及び呼吸機能低下の合併症が生じた場合の補正危険度R5を出力する。表示制御機能145は、併発危険度予測モデルにより出力された併発危険度R14をディスプレイ130に表示させる。ディスプレイ130には、患者情報等R1、肺炎危険度R2、肺塞栓症危険度R3、呼吸機能低下危険度R4、補正危険度R5、背景疾患R6及び併発危険度R14が表示される。ディスプレイ130には、疾患情報などの他の情報が表示されてもよい。
【0102】
第3の実施形態に医用情報処理装置100は、第2の実施形態に医用情報処理装置100と同様の作用効果を奏する。第3の実施形態に医用情報処理装置100は、さらに、複数の関連疾患が併発する併発危険度を求めるにあたり、関連疾患に応じた患者情報及び介入情報の特徴を抽出する。このため、演算量の低減を図るとともに、推定精度を向上させることができる。
【0103】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの背景疾患を有する患者に関する患者情報を取得する取得部と、前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第1の関連疾患に関する第1の予測モデルとに基づいて、前記第1の関連疾患に関する第1の推定結果を算出する第1推定部と、前記患者情報と、前記背景疾患に関連する第2の関連疾患に関する第2の予測モデルとに基づいて、前記第2の関連疾患に関する第2の推定結果を算出する第2推定部と、前記第1の推定結果と、前記第2の推定結果とに基づいて、前記第1の関連疾患と前記第2の関連疾患との併発に関する第3の推定結果を算出する第3推定部と、を持つことにより、合併症の危険度を正当に評価することができる。
【0104】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
1…病院内システム
10…HIS(病院情報システム)
20…RIS(放射線科情報システム)
30…モダリティ(医用画像診断装置)
40…PACS(画像保存通信システム)
100…医用情報処理装置
110…通信インターフェース
120…入力インターフェース
130…ディスプレイ
140…処理回路
141…取得機能
142…第1推定機能
143…第2推定機能
144…第3推定機能
145…表示制御機能
146…併発推定機能
148…抽出機能
150…メモリ
151…予測モデルDB
152…補正モデルDB
153…併発危険度予測モデルDB