(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099303
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】電力変換装置およびエレベータ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240718BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20240718BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/06 Z
B66B1/34 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003148
(22)【出願日】2023-01-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 光生
【テーマコード(参考)】
3F502
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
3F502NA14
5H006BB05
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H770BA01
5H770BA11
5H770CA02
5H770DA41
5H770QA25
(57)【要約】
【課題】高周波電流の流出を抑制し、且つ不要な電圧降下を回避できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、系統電源20から入力された入力電力を全波整流する全波整流回路12と、全波整流回路12の出力を交流電力に変換するインバータ回路14と、全波整流回路12の前段に設けられ、入力電力の高調波成分を抑制するリアクトル11とを備える。
リアクトル11のインダクタンス値は、系統電源20からの入力電流の転流角、系統電源20の電圧実効値、系統電源20の電気角周波数および入力電力を用いて下限値を規定する式と、系統電源20の電気角周波数、入力電力の最大値、インバータ回路14の直流側電圧制限値および系統電源20の電圧実効値を用いて上限値を規定する式とを満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相の系統電源から入力された入力電力を全波整流する全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記全波整流回路の前段に設けられ、前記入力電力の高調波成分を抑制するリアクトルとを備え、
前記系統電源からの入力電流の転流角をu[rad]、前記系統電源の電圧実効値をE[Vrms]、前記系統電源の電気角周波数をω
s[rad/s]、前記入力電力をP
in[W]、前記入力電力の上限値をP
in_max[W]、前記インバータ回路の直流側電圧制限値をV
dc_lim[V]としたときに、前記リアクトルのインダクタンス値L
ac[H]は、以下の式(1)及び式(2)を満たす電力変換装置。
【数1】
【請求項2】
前記全波整流回路と前記インバータ回路との間に接続され、前記インバータ回路の直流側の電圧を平滑化するDCリンクコンデンサを更に備える請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置から供給される交流電力によって駆動する電動機と、
前記電動機の駆動によって動作する巻上機と、
前記巻上機に掛けられた主索と、
前記主索の一端に取付けられた乗りかごと、
前記主索の他端に取付けられた釣合錘と、
前記電力変換装置に制御信号を伝送して、前記電動機の駆動を制御する制御装置とを備えるエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置およびエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器の普及に伴い高調波電流量が増加し、電力系統の品質の低下が指摘されている。そのため、各系統に接続される電力変換装置には、高調波対策として電源側に三相交流用のリアクトルを設置して、高調波電流の流出を抑制するものがあった。しかし、この電力変換装置は、リアクトルに対して通電電流量が増加すると、インバータ回路の直流側の電圧であるDCリンク電圧が大きく低下するといった問題を有していた。この問題に対して、例えば、特許文献1には、通電電流量が所定値以上になるとリアクトルのインダクタンスを低下させ、DCリンク電圧の降下を抑制する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、「通電電流量の上昇に伴ってリアクトルのインダクタンスを低下させる」としか記載されていない。このため、リアクトルのインダクタンスを低下させ過ぎた場合、高周波電流の流出を十分に抑制できないおそれがあった。また、リアクトルのインダクタンスを十分に低下させなかった場合、DCリンク電圧の降下を抑制できないおそれがあった。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、高周波電流の流出を抑制し、且つ不要な電圧降下を回避できる電力変換装置およびエレベータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力変換装置は、三相の系統電源から入力された入力電力を全波整流する全波整流回路と、全波整流回路の出力を交流電力に変換するインバータ回路と、全波整流回路の前段に設けられ、入力電力の高調波成分を抑制するリアクトルとを備え、
系統電源からの入力電流の転流角をu[rad]、系統電源の電圧実効値をE[Vrms]、系統電源の電気角周波数をωs[rad/s]、入力電力をPin[W]、入力電力の上限値をPin_max[W]、インバータ回路の直流側電圧制限値をVdc_lim[V]としたときに、リアクトルのインダクタンス値Lac[H]は、以下の式(1)及び式(2)を満たす。
【0007】
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電力変換装置およびエレベータ装置は、高周波電流の流出を抑制し、且つ不要な電圧降下を回避できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】系統電源からの入力電力とリアクトルのインダクタンス値との関係を示すグラフである。
【
図4】領域範囲内、領域範囲外および境界線におけるDCリンク電圧を示す表である。
【
図5】実施の形態2に係るエレベータ装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態2に係る電力変換装置が有する制御部のハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態に係る電力変換装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電力変換装置10は、リアクトル11と、全波整流回路12と、DCリンクコンデンサ13と、インバータ回路14とを備えている。
【0011】
電力変換装置10は、三相の系統電源20に接続されている。電力変換装置10は、系統電源20からの商用三相交流電力を、電動機30が要求する三相交流電力に変換することで、電動機30を駆動する。
全波整流回路12は、リアクトル11を介して系統電源20に接続されている。全波整流回路12は、系統電源20から入力された交流の入力電力を全波整流する。全波整流回路12は、ブリッジ接続された6個の整流ダイオードから構成されている。一方、インバータ回路14は、電動機30に接続されている。インバータ回路14は、全波整流回路12から出力された直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を電動機30に供給する。インバータ回路14は、6個の半導体スイッチング素子から構成されている。
【0012】
全波整流回路12とインバータ回路14との間には、DCリンクコンデンサ13が接続されている。DCリンクコンデンサ13は、インバータ回路14の直流側の電圧を平滑化させる。また、全波整流回路12の前段である系統電源20と全波整流回路12との間には、リアクトル11が接続されている。リアクトル11は、系統電源20から入力された交流の入力電力の高調波成分を抑制する。また、リアクトル11は、電力変換装置10の内部で発生した高周波電流の系統電源20への流出を抑制する。
【0013】
ここで、電力系統における近年の高調波電流量の増加に伴い、電力系統に接続される電気機器は高調波発生量に制限が設けられている。本実施の形態に係る電力変換装置10では、商用交流サイドである全波整流回路12の前段に三相交流用のリアクトル11を設けることにより、系統電源20側への高調波電流の流出を抑制している。
具体的には、電気機器の電源高周波電流の規制に関する国際規格であるIEC(International Electrotechnical Commission)6100-3-12の高周波電流に対する規格値を満たすために、リアクトル11は、以下の式(3)を満足するインダクタンス値Lacを有している。
【0014】
【0015】
式(3)は、IEC6100-3-12の規格値を満足するための最小のインダクタンス値を示す式である。従って、本実施の形態に係る電力変換装置10は、式(3)を満足するインダクタンス値Lacを有するリアクトル11を備えることにより、系統電源20側への高調波電流の流出を確実に抑制することができる。
【0016】
なお、式(3)におけるu[rad]は、系統電源20からの入力電流の転流角である。
図2に示すように、系統電源20からの入力電流の波形は、本来、電圧波形Aのような正弦波の波形であるが、入力電流には高周波が含まれることから、電流波形Bのような高周波波形となる。そして、
図2に図示したuが、電流波形Bの位相の遅れによる転流角である。なお、
図2の波形図の縦軸が電圧[V]、横軸が位相[rad]である。
また、IEC6100-3-12は、系統電源に接続された相あたり16A超75A以下の入力電流をもつ機器によって生成される高調波電流の限度値を規定する国際規格である。
【0017】
一方、三相交流用のリアクトルによる高周波抑制対策が施された従来の電気機器は、リアクトルに対して通電電流量が大きくなると、インバータ回路の直流側の電圧であるDCリンク電圧が大きく低下するといった課題を有していた。
本実施の形態に係る電力変換装置10は、上述した式(3)を満足すると共に、以下の式(4)を満足するインダクタンス値Lacを有する飽和特性を持ったリアクトル11を備えている。
【0018】
【0019】
ここで、式(4)は、DCリンク電圧の低下を許容できる最大のインダクタンス値を示す式である。従って、本実施の形態に係る電力変換装置10は、式(4)を満足するインダクタンス値Lacを有する飽和特性を持ったリアクトル11を備えることにより、DCリンク電圧の低下を確実に抑制することができる。
【0020】
図3は、系統電源20からの入力電力P
inとリアクトル11のインダクタンス値L
acとの関係を示すグラフである。
図3に示すように、11kW≦入力電力P
in≦18kWの範囲について式(3)から得られた値L
minをプロットした境界線40と、11kW≦入力電力P
in≦18kWの範囲について式(4)から得られた値L
maxをプロットした境界線41とで囲まれた領域42内に、リアクトル11のインダクタンス値L
acが収まっている。
【0021】
すなわち、入力電力Pinの電力量が14kWぐらいまでの間は、インダクタンス値Lacはほぼ一定である。しかし、入力電力Pinの電力量が14kWより増えると、インダクタンス値Lacが減少するような飽和特性をリアクトル11は有している。このため、11kW≦入力電力Pin≦18kWの範囲においてリアクトル11のインダクタンス値Lacが境界線41を超えることがない。その結果、電力変換装置10は、DCリンク電圧の低下を確実に抑制することができる。
また、上述したように、リアクトル11は、式(3)を満足するインダクタンス値Lacを有している。このため、リアクトル11のインダクタンス値Lacは、11kW≦入力電力Pin≦18kWの範囲において境界線40を下回ることはない。その結果、電力変換装置10は、系統電源20側への高調波電流の流出を確実に抑制することができる。
【0022】
なお、
図3では、入力電力P
inが11kWから18kWの範囲について説明したが、入力電力P
inが11kWから18kWの範囲外の場合も、式(3)および式(4)は有効である。ただし、入力電力P
inの電力帯にあった転流角uの値を決定するなど、入力電力P
inの電力帯にあった数値設計を再度行う必要がある。
【0023】
図4は、領域42の範囲内、範囲外および境界線41におけるDCリンク電圧を示す表である。
図4における測定点a1,a2,a3,b1,b2,b3は、
図3にプロットされた測定点a1,a2,a3,b1,b2,b3に対応する。このため、測定点a1,b1が領域42の範囲内の点であり、測定点a2,b2が境界線41上の点である。また、測定点a3,b3が領域42の範囲外の点である。
【0024】
図4における直流平均電圧は、シミュレータを用いて得られた電圧である。シミュレータとしては、Mywayプラス株式会社製の回路シミュレータPSIMを使用した。シミュレーションでは、系統電圧E=380[Vrms]、周波数Fs=50[Hz]における直流平均電圧を求めている。また、
図4における電圧降下量は、高調波対策用のリアクトルがない場合における交流電圧の最大値相当の電圧値である380×√2≒537.4[V]からシミュレーション結果の直流平均電圧値を減算した値である。
【0025】
図4に示すように、領域42の範囲内の測定点a1,b1および境界線41上の測定点a2,a3に比べて、領域42の範囲外の測定点a3,b3におけるDCリンク電圧の電圧降下量が大きいことが分かる。このように、領域42の範囲外においては、DCリンク電圧の電圧降下量が大きいことがシミュレーションによって確認できた。
本実施の形態に係る電力変換装置10では、式(4)を満足するインダクタンス値L
acを有する飽和特性を持ったリアクトル11を備えているので、リアクトル11のインダクタンス値L
acが境界線41を超えることがない。そのため、本実施の形態に係る電力変換装置10は、測定点a3,b3における電圧降下のようなDCリンク電圧の大きな低下が発生しない。よって、本実施の形態に係る電力変換装置10であれば、インバータ回路14が必要とする最低DCリンク電圧値を十分に確保することができる。
【0026】
以上のように、本実施の形態に係る電力変換装置10は、式(3)から得られるインダクタンス値Lacと、式(4)から得られるインダクタンス値Lacとを満足する飽和特性を有するリアクトル11を備えている。その結果、本実施の形態に係る電力変換装置10は、系統電源20側への高調波電流の流出を確実に抑制しつつ、最大電力時においてもDCリンク電圧の低下を緩和できるといった優れた効果を有する。
【0027】
さらに、
図3に示すような式(1)および式(2)を満足する飽和特性のリアクトルを適用できる場合、常にIEC6100-3-12記載の規格値とDCリンク電圧の低下を緩和することが可能となる。このため、従来であれば、定格電力毎に用意する必要のあったリアクトルの展開数を2または1に減らすことが可能となる。
【0028】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係るエレベータ装置50の構成を示すブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号を付し、当該部分の説明は省略する。
【0029】
図5に示すように、エレベータ装置50は、電力変換装置10と、電力変換装置10から供給される交流電力によって駆動する電動機30と、電動機30の駆動によって動作する巻上機51とを備えている。また、エレベータ装置50は、巻上機51に掛けられた主索52と、主索52の一端に取付けられた乗りかご53と、主索52の他端に取付けられた釣合錘54とを備えている。さらに、エレベータ装置50は、電力変換装置10のインバータ回路14に制御信号を伝送して、電動機30の駆動を制御する制御装置60を備えている。
ここで、エレベータ装置50の昇降動作時に取り扱う電力量は動作状態に応じて大きく異なる。例えば、乗りかご53の一定速時における定格電力量と加速時における最大電力量とは、システムによるが1.5倍~2.5倍、場合によってはそれ以上の比になる。
【0030】
乗りかご53の加速による最大電力時には、リアクトル11に対する通電電流量が増加する。このため、従来の電力変換装置では、通電電流量の増加によってDCリンク電圧が大きく低下し、エレベータ駆動用のインバータ回路の出力電圧に制限が掛かるといった事態が発生していた。
本実施の形態に係るエレベータ装置50には、DCリンク電圧の低下を抑制できる電力変換装置10が設けられている。このため、乗りかご53の加速による最大電力時であっても、DCリンク電圧の低下が緩和され、インバータ回路14の出力電圧に制限が掛かるといった事態を回避できる。
【0031】
次に、具体例として、定格電力11kW、力行加速時の最大電力が18kWのエレベータ装置50に対して高調波対策を実施する場合を示す。
まず、IEC6100-3-12の規格を満足するために近似的に導出した式(3)に基づいて、インダクタンス値の下限を計算する。
系統電源20の電圧実効値がE=400[Vrms]、系統電源20の周波数がFs=50[Hz]、系統電源20の角周波数がωs=2π×50=100π[rad/s]の場合、系統電源20からの入力電流の転流角をu=π/180×20°[rad]、定格入力電力をPin=11[kW]として、式(3)に代入すると、以下のようになる。
【0032】
【0033】
次に、DCリンク電圧の低下を抑制するために近似的に導出した式(4)に基づいて、インダクタンス値の上限を計算する。
系統電源20の電圧実効値がE=380[Vrms]、系統電源20の周波数がFs=50[Hz]、系統電源20の角周波数がωs=2π×50=100π[rad/s]の場合、乗りかご53の加速による最大電力時において低下するDCリンク電圧の下限値をVdc_lim=490[V]、インダクタンス値の上限値をPin_max=18[kW]として、式(4)に代入すると、以下のようになる。
【0034】
【0035】
本実施の形態に係るエレベータ装置50は、式(5)から得られるインダクタンス値Lacと、式(6)から得られるインダクタンス値Lacとを満足する飽和特性を有するリアクトル11を備えている。その結果、本実施の形態に係るエレベータ装置50は、IEC6100-3-12の規格を準拠することにより、系統電源20側への高調波電流の流出を確実に抑制できるといった優れた効果を有する。また、乗りかご53の加速による最大電力時においてもDCリンク電圧の低下を緩和することにより、エレベータ駆動用のインバータ回路14の出力電圧に制限を与えないといった優れた効果を有する。
【0036】
図6は、本実施の形態に係るエレベータ装置50が有する制御装置60のハードウェア構成の例を示す図である。
図6には、制御装置60の機能が専用のハードウェアを使用して実現される場合におけるハードウェア構成を示している。制御装置60は、各種処理を実行する処理回路61と、制御装置60の外部の機器との接続インタフェースであるインタフェース62とを備える。
【0037】
専用のハードウェアである処理回路61は、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらの組み合わせである。制御装置60の各機能は、処理回路61を用いて実現される。インタフェース62は、電力変換装置10のインバータ回路14に制御信号を出力する。
【0038】
なお、実施の形態2では、電力変換装置10の機器への適用例としてエレベータ装置50について説明したが、電力変換装置10が適用される対象機器は、エレベータ装置50に限定されず、エスカレータ装置、インバータ空調機などのその他の機器であってもよい。
【0039】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0040】
(付記1)
三相の系統電源から入力された入力電力を全波整流する全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記全波整流回路の前段に設けられ、前記入力電力の高調波成分を抑制するリアクトルとを備え、
前記系統電源からの入力電流の転流角をu[rad]、前記系統電源の電圧実効値をE[Vrms]、前記系統電源の電気角周波数をω
s[rad/s]、前記入力電力をP
in[W]、前記入力電力の上限値をP
in_max[W]、前記インバータ回路の直流側電圧制限値をV
dc_lim[V]としたときに、前記リアクトルのインダクタンス値L
ac[H]は、以下の式(1)及び式(2)を満たす電力変換装置。
【数6】
(付記2)
前記全波整流回路と前記インバータ回路との間に接続され、前記インバータ回路の直流側の電圧を平滑化するDCリンクコンデンサを更に備える付記1記載の電力変換装置。
(付記3)
付記1または付記2に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置から供給される交流電力によって駆動する電動機と、
前記電動機の駆動によって動作する巻上機と、
前記巻上機に掛けられた主索と、
前記主索の一端に取付けられた乗りかごと、
前記主索の他端に取付けられた釣合錘と、
前記電力変換装置に制御信号を伝送して、前記電動機の駆動を制御する制御装置とを備えるエレベータ装置。
【符号の説明】
【0041】
10 電力変換装置、11 リアクトル、12 全波整流回路、13 DCリンクコンデンサ、14 インバータ回路、20 系統電源、30 電動機、40,41 境界線、42 領域、50 エレベータ装置、51 巻上機、52 主索、53 乗りかご、54 釣合錘、60 制御装置。