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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099318
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】6-ヒドロキシインドールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/32 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C07D209/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003174
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 謙一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正史
(57)【要約】
【課題】6-ヒドロキシインドールを製造する際に、位置異性体(例えば、4-ヒドロキシインドール)の副生を抑制できる、6-ヒドロキシインドールの製造方法を提供する。
【解決手段】m-アミノフェノールとエチレングリコールとを、白金系触媒及び酸化亜鉛の存在下で反応させて6-ヒドロキシインドールを得る反応工程を含む、6-ヒドロキシインドールの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
m-アミノフェノールとエチレングリコールとを、白金系触媒及び酸化亜鉛の存在下で反応させて6-ヒドロキシインドールを得る反応工程を含む、6-ヒドロキシインドールの製造方法。
【請求項2】
前記反応工程において、前記白金系触媒における白金の仕込みmol数に対する前記酸化亜鉛の仕込みmol数の比が、0.05以上2.0以下である、請求項1に記載の6-ヒドロキシインドールの製造方法。
【請求項3】
前記白金系触媒が、活性炭担持白金を含む、請求項1又は請求項2に記載の6-ヒドロキシインドールの製造方法。
【請求項4】
前記反応工程において、m-アミノフェノールの仕込みmol数に対する、前記白金系触媒における白金の仕込みmol数の百分率が、0.25mol%~10mol%である、請求項1又は請求項2に記載の6-ヒドロキシインドールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、6-ヒドロキシインドールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノヒドロキシインドール類は、人の毛髪等、ケラチン質繊維の染色に適した染料として、以前より用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、6-ヒドロキシインドール等のモノヒドロキシインドール類にヨウ化物イオンまたは過酸化水素を組み合わせて得られる組成物により毛髪を染色する方法が記載されている。
【0004】
6-ヒドロキシインドールの製造方法として、例えば非特許文献1および非特許文献2には、インドールの過酸化水素での酸化による製造方法が記載されている。
【0005】
また、例えば特許文献2には、6-ヒドロキシインドールの製造方法として、m-アニシジン(即ち、3-メトキシアニリン)のインドール化の後、脱保護して6-ヒドロキシインドールに誘導する製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2-121913号公報
【特許文献2】特開昭59-62566号公報
【非特許文献1】Pharmazie, vol.40, no.5,(1985), p.356
【非特許文献2】Tetrahedron Lettres; vol.27, no.38, (1986), p.4565
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1~2や特許文献2のような従来の方法では、6-ヒドロキシインドールまたは6-ヒドロキシインドールの前駆体を得る上で、位置異性体の副生を抑制しにくい場合があることが判明した。
【0008】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、6-ヒドロキシインドールを製造する際に、位置異性体(例えば、4-ヒドロキシインドール)の副生を抑制できる、6-ヒドロキシインドールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> m-アミノフェノールとエチレングリコールとを、白金系触媒及び酸化亜鉛の存在下で反応させて6-ヒドロキシインドールを得る反応工程を含む、6-ヒドロキシインドールの製造方法。
<2> 前記反応工程において、前記白金系触媒における白金の仕込みmol数に対する前記酸化亜鉛の仕込みmol数の比が、0.05以上2.0以下である、<1>に記載の6-ヒドロキシインドールの製造方法。
<3> 前記白金系触媒が、活性炭担持白金を含む、<1>又は<2>に記載の6-ヒドロキシインドールの製造方法。
<4> 前記反応工程において、m-アミノフェノールの仕込みmol数に対する、前記白金系触媒における白金の仕込みmol数の百分率が、0.25mol%~10mol%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の6-ヒドロキシインドールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、6-ヒドロキシインドールを製造する際に、位置異性体(例えば、4-ヒドロキシインドール)の副生を抑制できる、6-ヒドロキシインドールの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
≪6-ヒドロキシインドールの製造方法≫
本開示の6-ヒドロキシインドールの製造方法(以下、「本開示の製造方法」ともいう)は、m-アミノフェノールとエチレングリコールとを、白金系触媒及び酸化亜鉛の存在下で反応させて6-ヒドロキシインドールを得る反応工程を含む。
本開示の製造方法は、必要に応じ、その他の工程を含んでいてもよい。
【0013】
本開示の製造方法によれば、6-ヒドロキシインドールを製造する際に、位置異性体(例えば、4-ヒドロキシインドール)の副生を抑制できる。
このため、本開示の製造方法によれば、高純度の6-ヒドロキシインドールが、効率よく得られる。
【0014】
反応工程では、m-アミノフェノールとエチレングリコールとを、白金系触媒及び酸化亜鉛の存在下で反応させて6-ヒドロキシインドールを得る。
反応工程では、下記反応スキームにより、6-ヒドロキシインドールが生成されると考えられる。
【0015】
【化1】
【0016】
上記反応スキームにおいて、m-アミノフェノール(MAP)とエチレングリコール(EG)とを、白金系触媒(Pt/C)及び酸化亜鉛(ZnO)の存在下で反応させることにより、まず、白金系触媒(Pt/C)及び酸化亜鉛(ZnO)の作用により、エチレングリコールからグリコールアルデヒド(GA)が生成され、次いで、生成されたグリコールアルデヒド(GA)とm-アミノフェノール(MAP)とが反応して中間体M1が生成されると考えられる。
次いで、中間体M1からの環形成により、6-ヒドロキシインドール(6-HI)が生成されると考えられる。
本発明者の検討により、この反応スキームでは、4-ヒドロキシインドール(4-HI)の副生が抑制されることが判明した(後述の「実施例」項参照)。
【0017】
本開示の製造方法に対し、前述の特許文献2(特開昭59-62566号公報)の実施例1には、m-アニシジン(即ち、3-メトキシアニリン)をエチレングリコールとの反応によってインドール化させた後、塩化アルミニウム(AlCl)との反応によって脱保護して6-ヒドロキシインドール(6-HI)を得る製造方法が記載されている(下記反応スキーム参照)。
この特許文献2の製造方法では、本開示の製造方法におけるm-アミノフェノールに代えて、m-アミノフェノールのヒドロキシ基を保護した化合物である3-メトキシアニリンを用いている。
【0018】
【化2】
【0019】
本発明者の検討の結果、この特許文献2のように、3-メトキシアニリンを出発物質として用いた場合、目的物である6-ヒドロキシインドールだけでなく、位置異性体である4-ヒドロキシインドールが副生され、6-ヒドロキシインドールの選択率(即ち、6-ヒドロキシインドールと位置異性体との合計中に占める6-ヒドロキシインドールの割合(mol%))が低下することが判明した(後述する比較例参照)。
【0020】
本開示において、6-ヒドロキシインドールの選択率とは、6-ヒドロキシインドール(目的物)と位置異性体(副生成物)との合計中に占める6-ヒドロキシインドールの割合(mol%)を意味する。
【0021】
通常は、この特許文献2のように、出発物質としては、反応中のヒドロキシ基の反応を防止するために、ヒドロキシ基が保護されてなるメトキシ基等を含む化合物を用いると考えられる。例えば、6-ヒドロキシインドールの類似化合物である5,6-ジヒドロキシインドールを製造する場合には、ヒドロキシ基に由来する生成物の変性を抑制するために、出発物質において、2つのヒドロキシ基が保護された化合物(例えば、3,4-ジメトキシアニリン)を用いる必要があると考えられる。
しかしながら、前述の通り、本発明者等の検討により、6-ヒドロキシインドールの製造において、敢えてヒドロキシ基が保護されていない化合物(m-アミノフェノール)を用いることで、位置異性体である4-ヒドロキシインドールの副生を抑制できるという、予想外の知見が得られた。
【0022】
また、本開示の製造方法に対し、例えば非特許文献1(Pharmazie, vol.40, no.5,(1985), p.356)及び非特許文献2(Tetrahedron Lettres; vol.27, no.38, (1986), p.4565)には、インドールを、過酸化水素によって酸化して、6-ヒドロキシインドールを得る方法が開示されている。
しかし、インドールを酸化して6-ヒドロキシインドールを得る方法では、原理的に、6-ヒドロキシインドール(6-HI)以外に、位置異性体として、5-ヒドロキシインドール(5-HI)、4-ヒドロキシインドール(4-HI)、及び7-ヒドロキシインドール(7-HI)からなる群から選択される少なくとも1つが生成されるので、6-ヒドロキシインドールの選択率(即ち、6-ヒドロキシインドールと位置異性体との合計中に占める6-ヒドロキシインドールの割合(mol%))が低下する(以上、下記反応スキーム参照)。
【0023】
【化3】
【0024】
本開示の製造方法における反応工程では、白金系触媒及び酸化亜鉛の存在下で、上述したm-アミノフェノールとエチレングリコールとを反応させる。これにより、6-ヒドロキシインドールが生成される。
【0025】
ここで、白金系触媒とは、白金を含有する触媒を意味する。
白金系触媒は、白金を担持する担体等、白金以外の成分を含有していてもよい。
白金系触媒としては、例えば、白金粉末、活性炭担持白金、アルミナ担持白金、酸化白金(IV)、塩化白金(II)、塩化白金(IV)等が挙げられる。
ここで、活性炭担持白金とは、担体としての活性炭と、活性炭に担持された白金と、を含む触媒を意味する。活性炭担持白金は、「白金-活性炭素」等の商品名にて市販されている。
また、アルミナ担持白金とは、担体としてのアルミナと、アルミナに担持された白金と、を含む触媒を意味する。アルミナ担持白金は、「白金-アルミナ」等の商品名にて市販されている。
白金系触媒は、活性炭担持白金を含むことが特に好ましい。
【0026】
白金系触媒は、活性炭担持白金を含むことが特に好ましい。
白金系触媒が活性炭担持白金を含む場合には、6-ヒドロキシインドールの生成がより促進される。
【0027】
反応工程において、m-アミノフェノール(MAP)の仕込みmol数に対する、前記白金系触媒における白金(Pt)の仕込みmol数の百分率(以下、仕込みmol百分率〔Pt/MAP〕ともいう)は、好ましくは0.25mol%~10mol%、より好ましくは0.5mol%~5mol%、更に好ましくは1.0mol%~2.5mol%である。
仕込みmol百分率〔Pt/MAP〕が0.25mol%以上である場合には、6-ヒドロキシインドールの生成がより促進される。
仕込みmol百分率〔Pt/MAP〕が10mol%以下である場合には、触媒の量に対する6-ヒドロキシインドールの生成効率がより向上する。
【0028】
反応工程では、白金系触媒とともに、触媒として、酸化亜鉛を用いる。
反応工程において、白金系触媒における白金(Pt)の仕込みmol数に対する酸化亜鉛(ZnO)の仕込みmol数の比(以下、仕込みmol比〔ZnO/Pt〕ともいう)は、好ましくは0.05以上2.0以下であり、より好ましくは0.1以上2.0以下であり、更に好ましくは0.1以上1.0以下である。
仕込みmol比〔ZnO/Pt〕が0.05以上である場合、6-ヒドロキシインドールの生成がより促進される。
仕込みmol比〔ZnO/Pt〕が2.0以下である場合、酸化亜鉛の量に対する6-ヒドロキシインドールの生成効率がより向上する。
【0029】
反応工程における操作の具体的な態様としては特に限定はないが、例えば;
m-アミノフェノール、エチレングリコール、白金系触媒、及び酸化亜鉛を全て混合して反応を開始する態様1;
エチレングリコール、白金系触媒、及び酸化亜鉛を混合して、エチレングリコールからグリコールアルデヒドを生成させる反応を行い、次いでここに、m-アミノフェノール又はその溶液を添加して反応させる態様2;
等が挙げられる。
6-ヒドロキシインドールの生成率をより向上させる観点からは、態様2が好ましい。
【0030】
反応工程において、エチレングリコールは、原料の一方である。
エチレングリコールは、一般的な有機溶剤であることから、反応工程における溶媒としても機能し得る。例えば、原料の他方であるm-アミノフェノールに対し、大過剰のエチレングリコールを仕込んだ場合、エチレングリコールのうちの一部が、原料の一方として機能し、残部が、溶媒として機能する。
【0031】
また、反応工程(例えば、前述の態様1及び態様2)において、溶媒として、エチレングリコール以外の有機溶剤を少なくとも1種用いてもよい。
反応溶媒として用いられ得るエチレングリコール以外の有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、デカン、ウンデカン、ドデカン、エチレンカーボネート、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0032】
反応工程における反応は、常圧下又は減圧下で行うことができる。
反応は、6-ヒドロキシインドールの生成を阻害する成分(例えば酸素)の混入を防ぐ観点から、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、等)で行うことが好ましい。
【0033】
反応工程における反応温度は、好ましくは140℃~200℃、より好ましくは150℃~190℃、更に好ましくは160℃~180℃である。
反応温度が140℃以上である場合には、6-ヒドロキシインドールの生成がより促進される。
反応温度が200℃以下である場合には、生成した6-ヒドロキシインドールの分解がより抑制され、生成率がより向上する。
【0034】
反応工程における反応時間は、反応を効率よく進行させる観点から、好ましくは8時間~80時間、より好ましくは12時間~60時間である。
【0035】
本開示の製造方法は、反応工程で得られた6-ヒドロキシインドールを取り出す工程を含んでいてもよい。
6-ヒドロキシインドールを取り出す方法については特に制限はない。
例えば、反応工程により、6-ヒドロキシインドールの溶媒溶液が得られた場合には、加熱濃縮等により溶液から溶媒を留去することによって6-ヒドロキシインドールを取り出すことができる。
また、6-ヒドロキシインドールの溶媒溶液に対し、6-ヒドロキシインドールが溶解しない溶媒を加えることによって6-ヒドロキシインドールを析出させ、次いで溶媒を分離し、乾燥させることにより、6-ヒドロキシインドールを取り出すこともできる。
【0036】
取り出された6-ヒドロキシインドールを乾燥する方法としては、例えば;
棚段式乾燥機での静置乾燥法;
コニカル乾燥機での流動乾燥法;
ホットプレート、オーブン等の装置を用いて乾燥させる方法;
ドライヤーなどの乾燥機で温風又は熱風を供給する方法;
等が挙げられる。
【0037】
取り出された6-ヒドロキシインドールを乾燥する際の圧力は、常圧及び減圧のいずれであってもよい。
取り出された6-ヒドロキシインドールを乾燥する際の温度は、好ましくは40℃~120℃である。
温度が40℃以上であることで乾燥効率により優れる。
温度が120℃以下であることで、6-ヒドロキシインドールの分解を抑制し、安定した状態で取り出すことができる。
【0038】
取り出された6-ヒドロキシインドールは、そのまま用いてもよいし、例えば、溶媒中に分散又は溶解させて用いてもよいし、他の物質、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等の酸化防止剤と混合して用いてもよい。
【実施例0039】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
【0040】
〔実施例1〕
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、排気ライン、及び、コンデンサを備えた500mLのフラスコを準備した。フラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに、触媒として、活性炭担持白金(富士フイルム和光純薬社製の「白金-活性炭素」)3.90g(Pt:2.0mmol)と酸化亜鉛0.163g(2.0mmol)とを入れた。続けてここに、m-アミノフェノール21.83g(0.2mol)とエチレングリコール400gとを入れ、攪拌混合した。攪拌を続けながら、フラスコを190℃のオイルバスで加熱し、内部液温175℃で12時間反応を行った。この反応後の反応液を濾過して触媒灰分を除いた後に濃縮器に入れ、2kPa以下に減圧し、加熱温度130℃で溶媒として残るエチレングリコールを揮発させる濃縮操作を行った。
得られた濃縮液にジクロロメタン250gを加えてジクロロメタン溶液とした。このジクロロメタン溶液を、純水250gと混合して乳化し、静置分液する洗浄操作を、3回繰り返し行った。洗浄後のジクロロメタン溶液を撥水濾過して懸濁水を除き、40℃の窒素を通気して乾燥させることにより、白色結晶粉体22.64gを得た。収率は85%であった。
【0041】
得られた白色結晶粉体を、重ジメチルスルホキシド溶媒に溶解し、H-NMR分析を行った。得られたスペクトルの、ケミカルシフト〔ppm〕及び積分値(比)は、それぞれ以下の通りであり、白色結晶粉体が、6-ヒドロキシインドールであることが確認された。
H-NMR:6.25ppm(1H)、6.52ppm(1H)、6.75ppm(1H)、7.08ppm(1H)、7.30ppm(1H)、8.85ppm(1H)、10.61ppm(1H)
【0042】
以上のことから、実施例1の製造方法においては、下記反応スキームのとおりに6-ヒドロキシインドールが、選択率(Selectivity)100%にて生成されたことが確認された。
【0043】
【化4】
【0044】
〔実施例2〕
酸化亜鉛0.163g(2.0mmol)の量を0.016g(0.2mmol)に変更し、かつ、内部液温175℃での反応時間12時間を、60時間に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
その結果、白色結晶粉体22.11gを得た。収率は83%であった。
H-NMR分析の結果、実施例2で得られた白色結晶粉体も、実施例1と同様に、6-ヒドロキシインドールであることが確認された。
以上により、実施例2においても、実施例1と同様に、6-ヒドロキシインドールが、選択率(Selectivity)100%にて生成されたことが確認された。
【0045】
〔比較例1〕
撹拌装置、温度計、ガス導入ライン、排気ライン、及び、コンデンサを備えた500mLのフラスコを準備した。フラスコを乾燥窒素ガスでパージした後、ここに、触媒として活性炭担持白金(富士フイルム和光純薬社製「白金-活性炭素」)3.90g(Pt:2.0mmol)のみを入れた。続けてここに、m-アミノフェノール21.83g(0.2mol)とエチレングリコール400gとを入れ、攪拌混合した。攪拌を続けながら、フラスコを190℃のオイルバスで加熱し、内部液温175℃で60時間反応を行った。60時間反応を行った時点での6-ヒドロキシインドールの生成率は1%以下であり、6-ヒドロキシインドールの精製及び取出しを行うことができなかった。
【0046】
〔比較例2〕
m-アミノフェノール21.83g(0.2mol)を、3-メトキシアニリン24.63g(0.2mol)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
その結果、白色結晶粉体19.13gを得た。収率は65%であった。
【0047】
得られた白色結晶粉体を重ジメチルスルホキシド溶媒に溶解し、H-NMR分析を行った。得られたスペクトルの、ケミカルシフト〔ppm〕及び積分値(比)は、それぞれ以下の通りであった。
(6-メトキシインドール由来のシグナル)
H-NMR:3.74ppm(3H)、6.32ppm(1H)、6.65ppm(1H)、6.88ppm(1H)、7.20ppm(1H)、7.42ppm(1H)、10.85ppm(1H)
(4-メトキシインドール由来のシグナル)
H-NMR:3.85ppm(0.84H)、6.42ppm(0.28H)、6.48ppm(0.28H)、6.99ppm(0.28H)、7.01ppm(0.28H)、7.22ppm(0.28H)、11.06ppm(0.28H)
【0048】
以上のことから、比較例2では、下記反応スキームのとおりに、6-メトキシインドール(目的物)と4-メトキシインドール(副生成物)とが生成され、得られた白色結晶粉体が異性体混合物であることが確認された。
また、6-メトキシインドールの選択率は78%にとどまった。
メトキシインドールを脱保護してヒドロキシインドールを得る操作は省略した。仮にこの比較例2において、メトキシインドールを脱保護してヒドロキシインドールを得たとしても、6-ヒドロキシインドール(目的物)が得られるだけでなく4-ヒドロキシインドール(副生成物)も得られ、実施例1及び2と比較して、6-ヒドロキシインドールの選択率に劣る(即ち、選択率78%にとどまる)ことは明らかである。
【0049】
【化5】