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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099319
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003175
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】513144453
【氏名又は名称】藤原 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慶太
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DA03
4B029DA04
4B029DF02
4B029DF07
(57)【要約】
【課題】無駄になる炭酸ガスの量を抑えつつ、藻類の培養を適切に行う。
【解決手段】培養システム1は、藻類を含む培養液Lqを、外気から遮断した状態で、培養液タンク3と培養槽4との間で循環させて、藻類を培養する培養システムである。培養システム1では、酸素を含まない不活性ガスである窒素ガス(N)と、炭酸ガス(CO)と、藻類を含む培養液Lqと、が気液混合状態で培養槽4に供給される。藻類の光合成により生じた酸素が、培養液タンク3に貯留される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を含む培養液を、外気から遮断した状態で、培養液タンクと培養槽との間で循環させて、前記藻類を培養する培養システムであって、
酸素を含まない不活性ガスと、炭酸ガスと、前記藻類を含む培養液と、が気液混合状態で前記培養槽に供給される、培養システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記培養液タンクと前記培養槽とを接続する第1接続路と、
前記第1接続路内に、前記培養液タンクから前記培養槽に向かう前記培養液の流れを形成するポンプと、
前記第1接続路において前記ポンプと前記培養槽との間に設けられて、前記不活性ガスを前記第1接続路内に供給する第1供給装置と、
前記第1接続路において前記ポンプと前記培養槽との間に設けられて、前記炭酸ガスを前記第1接続路内に供給する第2供給装置と、を有する、培養システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記培養槽と前記培養液タンクとを接続すると共に、前記培養槽から前記培養液タンクに戻される前記培養液が通流する第2接続路と、
前記培養液タンク内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサと、
前記培養液タンク内の炭酸ガス濃度を検出する炭酸ガス濃度センサと、
前記培養液タンク内に貯留された培養液のpHを検出するpHセンサと、
前記第1供給装置からの前記不活性ガスの供給と、前記第2供給装置からの前記炭酸ガスの供給を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記酸素濃度と、前記炭酸ガス濃度と、前記培養液のpHのうちの少なくとも1つに基づいて、前記不活性ガスの供給量と、前記炭酸ガスの供給量を制御する、培養システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記培養液タンク内の気体を回収する気体回収機構を有しており、
前記気体回収機構は、
前記培養液タンク内の圧力を検出する圧力センサと、
回収した気体を貯留する貯留タンクと、
前記培養液タンクと前記貯留タンクとを繋ぐ回収管と、
前記回収管内に負圧を発生させて、前記培養液タンク内の気体を前記貯留タンクに送出する減圧ポンプと、を有する、培養システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記培養液タンク内の気体を回収する気体回収機構を有しており、
前記気体回収機構は、
前記培養液タンク内の圧力を検出する圧力センサと、
回収した気体を貯留する貯留タンクと、
前記培養液タンクと前記貯留タンクとを繋ぐ回収管と、
前記回収管内に負圧を発生させて、前記培養液タンク内の気体を前記貯留タンクまで吸引させる減圧ポンプと、を有する、培養システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記回収管に設けられて、前記貯留タンク側に吸引される気体に含まれる不活性ガスを分離する分離装置と、
分離装置で分離された不活性ガスを、前記第1供給装置に供給する供給管と、を有する、培養システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項において、
前記不活性ガスは、窒素ガスである、培養システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れか一項において、
前記培養システムは、農業ハウス内に設置される、培養システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記培養液の補充機構を有し、
前記補充機構は、
前記培養液を貯留する地下タンクと、
前記地下タンクと前記培養液タンクとを接続する接続管と、
前記接続管に設けられて、前記培養液タンク内の培養液を前記貯留タンクに向けて送出するポンプと、を有する培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、炭酸ガスの供給手段を備える植物の栽培装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6261911号公報
【0004】
特許文献1の栽培装置は、藻類と共に培養液を収容する培養タンクを有している。この栽培装置では、藻類が光合成を行う昼間に、培養タンク内に炭酸ガスを供給して、光合成を促進させる。藻類が光合成を行わない夜間に、培養タンク内に空気を供給して、藻類の成長に必要な窒素や酸素を培養液に溶解させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
藻類は、日照があっても、光飽和点で、限界に達して光合成効率が落ちることがある。藻類の光合成効率が低いときに炭酸ガスを供給しても、炭酸ガスは藻類に吸収されず無駄になる。そのため、炭酸ガスを供給する藻類の培養には改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
藻類を含む培養液を、外気から遮断した状態で、培養液タンクと培養槽との間で循環させて、前記藻類を培養する培養システムであって、
酸素を含まない不活性ガスと、炭酸ガスと、前記藻類を含む培養液と、が気液混合状態で前記培養槽に供給される構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭酸ガスの無駄を抑えることができ、藻類の培養の改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる培養システムの概略構成図である。
図2】各種センサと制御装置との接続態様と、制御装置の制御対象を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、藻類の培養システム1の場合を例に挙げて説明する。
図1は、実施の形態にかかる藻類の培養システム1の概略構成図である。
培養システム1は、建物2の内部に設置される。培養システム1は、培養液タンク3と、培養槽4を有する。培養液タンク3と培養槽4は、接続管5(5A、5B)を介して接続されている。
培養システム1は、藻類を含む培養液Lqを、外気から遮断した状態で、培養液タンク3と培養槽4との間で循環させて藻類を培養する仕様を採用している。
ここで、「外気から遮断した状態」とは、藻類を含む培養液Lqに、空気中の酸素が溶け込まないようにした状態を意味する。
【0010】
建物2は、一例として、農業ハウスである。より好ましくは、建物2は、木材の枠組みと、樹脂製のシートを用いて建てられた農業ハウスである。
農業ハウスは、コンクリート製の建物に比べて、蓄熱性の低い建物であり、温度や湿度などの建物の内部環境を、比較的に容易に調整できる建物である。言い換えると、内部環境の調整にかかるコストが、抑えられた建物といえる。
【0011】
培養液タンク3は、藻類を含んだ培養液Lqを貯留する。培養液タンク3は、建物2内の床面21から上方に離間した位置に配置されている。培養液タンク3は、床面21からの伝熱を抑えるために、建物2内の床面21に直置きされていないことが好ましい。また、培養液タンク3には、例えばLEDなどの光源(図示せず)が付設されており、培養液タンク3内の培養液Lqに向けて光の照射が可能である。光源からの光の照射時間は、後記する制御装置6が、藻類への炭酸ガスの吸収量などを参照しながら制御する仕様となっている。
【0012】
培養液Lqは、一例として、窒素、リン酸、カリウムなどを含む水溶液であり、藻類の生育に適した成分を含む水溶液である。培養液Lqは、ECバランスが調整された状態で、培養液タンク3内に貯留される。なお、地下水や、下水処理場から排出される処理水も、培養液Lqとして利用できる。
【0013】
培養液タンク3の下部には、接続管5Aの一端50aが接続されている。接続管5Aの一端50aは、培養液タンク3に貯留された培養液中に開口している(液中に開口している)。
接続管5Aの他端50bは、培養槽4に接続されている。接続管5Aは、培養液タンク3内の培養液Lqを培養槽4に供給するための供給管である。
接続管5Aには、ポンプ51が設けられている。ポンプ51は、後記する制御装置6により駆動/停止が制御される。ポンプ51が駆動されると、培養液タンク3内の培養液Lqが、接続管5A内に吸引される。吸引された培養液Lqは、ポンプ51で加圧されたのち、培養槽4側に向けて送出される。ポンプ51からの培養液Lqの送出速度は一定である。
【0014】
接続管5Aでは、ポンプ51と培養槽4との間の領域に、不活性ガスのバルブユニット52と、炭酸ガスのバルブユニット53が設けられている。
図1では、培養液タンク3側から順番に、バルブユニット52とバルブユニット53が並んでいる。
接続管5Aにおけるこれらバルブユニット52、53の並びは、図1の態様にのみ限定されない。バルブユニット53のほうがバルブユニット52よりも培養液タンク3側に位置していても良い。また、バルブユニット52、53は、接続管5A上の同じ位置に配置されていても良い。
同じ位置とは、バルブユニット52、53の位置が、接続管5Aの長手方向にオフセットしていないことを意味する。
【0015】
さらに、不活性ガスは、酸素ガスと比較してはるかに反応性の乏しい気体を意味する。本実施形態では、不活性ガスとして、窒素ガスを採用している。窒素ガスは、発明における「酸素を含まない不活性ガス」に相当する。ここでいう「酸素を含まない」は、酸素を全く含んでいない態様に限定されない。後記する酸素濃度センサ72による酸素濃度の検出に影響を与えない程度の微量の酸素が含まれている場合を否定しない。
また、「酸素を含まない不活性ガス」は、窒素のみに限定されない。従来公知の他の不活性ガスも利用可能である。本実施形態では、培養液Lqに窒素、リン酸、カリウムが、藻類の育成に寄与する栄養分として溶解しているので、窒素ガスを採用している。
【0016】
バルブユニット52は、窒素ボンベ54に接続されている。バルブユニット52は、窒素ボンベ54側から供給される窒素ガス(N)を、図示しないインジェクタから、接続管5A内を通流する培養液に噴射する。これにより、窒素ガスの気泡を多く含む培養液Lqが、培養槽4に供給される。
なお、窒素ボンベ54に代えて、窒素発生装置(図示せず)をバルブユニット52に接続しても良い。 かかる場合には、窒素ボンベ54にかかる費用を抑えることができる。
【0017】
バルブユニット53は、炭酸ガスボンベ55に接続されている。バルブユニット53は、炭酸ガスボンベ55から供給される炭酸ガス(COガス)を、図示しないインジェクタから、接続管5A内を通流する培養液に噴射する。これにより、炭酸ガスの気泡を多く含む培養液Lqが、培養槽4に供給される。
【0018】
よって、培養槽4には、窒素ガスの気泡と、炭酸ガスの気泡のうちの少なくとも一方を含む培養液、すなわち気液混合状態の培養液が供給される。この際に、培養液Lq中に分散した藻類は、窒素ガスの気泡や炭酸ガスの気泡に包まれた状態で、培養槽4に供給される傾向が高い。
【0019】
なお、窒素ガスの気泡や炭酸ガスの気泡の形成に、インジェクタを用いる場合を例示した。培養液Lq中に先端部を配置したニードルを用意して、ニードルの先端から窒素ガスや炭酸ガスを供給して、培養液Lq中に、窒素ガスの気泡や、炭酸ガスの気泡が含まれるようにしても良い。
【0020】
本実施形態では、窒素ガスの培養液への噴射条件(圧力、噴射量など)を調整することで、培養液Lqの培養槽4への供給速度や、培養槽4での培養液の移動速度が調整される。
ここで、圧縮空気を培養液の移動速度の調整に利用する従来例にかかる装置では、空気に含まれる酸素と窒素が、炭酸ガスと共に、培養液Lqに含まれた状態で、培養槽に供給されることになる。
【0021】
培養槽4は、藻類を含む培養液が通流する配管41と、LEDなどの光源42と、を有する。配管41と光源42は、筐体40の内部に収容されている。光源42は、配管41に向けて効率的に照射するため、配管41の側方に沿うように配設されている。
配管41は、光透過性の良い筒状部材である。配管41は、光源42から照射された光を透過可能な材料で形成される。配管41の始端は、接続管5Aの他端50bに接続する。配管41の終端は、接続管5Bの基端54aに接続する。
【0022】
培養槽4に供給された培養液Lqは、筐体40の内部を配管41の配策経路に沿って移動する。この際に、培養液Lqに含まれる藻類が、光源42から照射された光を受けることで、培養液Lqに含まれる炭酸ガス(CO2)を消費しつつ光合成を行って、酸素(O2)を生成する。培養液Lqに含まれる窒素、リン酸、カリウムは、藻類の生育の養分として消費される。
なお、培養液Lqに含まれる藻類は、窒素ガスの気泡や炭酸ガスの気泡に包まれた状態で配管41内を移動するので、配管41の内周への藻類の付着が抑えられる。藻類が配管41の内周に付着すると、光源42から照射された光の透過率が低下する結果、配管内を通流する藻類の光合成の効率が低下するので好ましくない。
【0023】
培養槽4は、培養液タンク3と同様に、建物2内の床面21から上方に離間した位置に配置されている。培養槽4は、床面21からの伝熱を抑えるために、建物2内の床面21に直置きされていないことが好ましい。
【0024】
培養槽4の上部には、接続管5Bが接続されている。接続管5Bの基端54aは、筐体40内の配管41に接続されている。接続管5Bの先端54b側は、培養液タンク3内に挿入されている。接続管5Bは、培養槽4を通過した培養液Lqを、培養液タンク3に戻すための配管である。
【0025】
培養液タンク3内において接続管5Bの先端54b側は、下側に屈曲している。接続管5Bの先端54bは、培養液タンク3内に貯留された培養液Lqの上面に、上下方向の間隔を開けて対向している。
培養液タンク3では、接続管5Bの先端54bが気中に配置されている。
【0026】
培養システム1では、ポンプ51が駆動されると、培養液タンク3内の培養液Lqが、接続管5Aを介して培養槽4に供給される。培養槽4を通過した培養液Lqは、接続管5Bを介して培養液タンク3に戻される。接続管5(5A、5B)は、培養液タンク3と、培養槽4との間で培養液Lqを循環させる循環路を構成する。
培養液タンク3と、培養槽4と、接続管5(5A、5B)とから構成される培養液の循環系は、外気(空気)との接触機会のない閉じられた循環系となっている。
バルブユニット52から供給される不活性ガス(窒素)、バルブユニット53から供給される炭酸ガス(二酸化炭素)、そして藻類の光合成により生成される酸素のみが、循環系内を循環し、他のガス成分が外部から混入しないようになっている。
【0027】
培養液タンク3には、温度調節機構100が付設されている。温度調節機構100は、循環路101と、培養液タンク3に付設された第1熱交換部102と、第2熱交換部103と、を有する。
第1熱交換部103では、循環路101を通流する熱交換媒体(例えば、水)と、供給路104を通流する冷水または温水との熱交換が行われる。 温度調節機構100では、制御装置6が、供給路104を通流する熱交換媒体を、冷却水と温水との間で切り替える。これにより、循環路101を通流する熱交換媒体の温度が、第2熱交換部103での熱交換で調整される。
第2熱交換部103での熱交換で加温または冷却された熱交換媒体は、第1熱交換部103を通過する際に、培養液タンク3内の培養液Lqを加温または冷却する。
【0028】
ここで、冷却水は、地下水、水道水など適宜利用可能である。地下水の場合は、冷却水の温度が低い温度に保たれているので、冷却装置の設置を省略できる。
温水は、ボイラーや、太陽光を利用した加温システムなどを用いて調整できる。太陽光を利用した加温システムを採用すると、加温用の燃料や装置を省略できる。地下水や、太陽光を利用した加温システムを採用すると、専用の電源を用意する必要が無いので、培養システム1をより安価に提供できる。
【0029】
培養システム1は、培養液タンク3内の気体成分を回収する気体回収機構9と、培養液タンク3内に培養液Lqを補充する補充機構10と、を有する。
【0030】
ここで、培養槽4内で、培養液Lq中の藻類が光合成をすると、培養液Lq内の炭酸ガス(二酸化炭素)が消費されて、酸素が生成される。
生成された酸素は、培養槽4から培養液タンク3に戻される培養液Lqと共に、培養液タンク3内に排出される。培養液タンク3では、酸素と培養液Lqとが気液に分離されて、培養液タンク3内の上部に酸素が滞留する。藻類での光合成が進行すると、培養液タンク3内に対流する酸素の量が経時的に増加する結果、培養液タンク3内の圧力が上昇する。
【0031】
気体回収機構9は、培養液タンク3内の気体成分(酸素、窒素)を回収して、培養液タンク3内の圧力を低下させるために設けられている。
気体回収機構9は、培養液タンク3とバッファタンク91とを接続する回収管90を有する。回収管90の一端90aは、培養液タンク3内の気中に配置される。回収管90の他端90bは、バッファタンク91に接続する。
【0032】
回収管90では、バッファタンク91側から順番に、コンプレッサ94と、窒素分離装置93と、バルブ92と、が設けられている。
バルブ92は、培養液タンク3内の気体をコンプレッサ94により吸引する際に、当該バルブ92の上流側(培養液タンク3側)と下流側(窒素分離装置93側)とを連通させる。
【0033】
コンプレッサ94が駆動されると、培養液タンク3内の気体が、窒素分離装置93を通過する。窒素分離装置93は、通過する気体から窒素成分を分離する。分離した窒素成分(窒素ガス)は、供給管95を介して、前記したバルブユニット52に供給される。
これにより、回収された窒素ガスが、バルブユニット52による培養液Lqへの窒素の噴射に再利用される。よって、窒素の利用効率が向上して、窒素ガスの消費が抑えられるので、窒素ボンベ54の交換頻度を抑えることができる。
【0034】
補充機構10は、地中に埋設された地下タンク11と、地下タンク11と培養液タンク3とを接続する接続管12とを有する。接続管12の途中には、ポンプ13とバルブ14が設けられている。
【0035】
バルブ14は、地下タンク11内の培養液Lqを培養液タンク3に補充する際に、当該バルブ14の上流側(地下タンク11側)と下流側(培養液タンク3側)とを連通させる。
ポンプ13が駆動されると、地下タンク11内の培養液Lqが、接続管12内に吸引される。吸引された培養液Lqは、ポンプ13で加圧されたのち、培養液タンク3に供給される。ポンプ13は、制御装置6により駆動/停止が制御される。
【0036】
制御装置6は、培養液タンク3に設置した各種のセンサ7、8の出力信号に基づいて、ポンプ51の駆動と、バルブユニット52からの培養液Lqへの窒素ガスの噴射と、バルブユニット53からの培養液Lqへの炭酸ガスの噴射を制御する。制御装置6は、培養液タンク3に設置した各種のセンサ7、8の出力信号に基づいて、培養槽4に付設した光源42の点消灯と、培養液タンク3に付設した光源(図示せず)の点消灯を制御する。
さらに、制御装置6は、光合成により生成されて培養液タンク3内に溜まった酸素の回収と、培養液タンク3への培養液Lqの供給を制御する。
【0037】
図2は、各種センサ7、8と制御装置6との接続態様と、制御装置6の制御対象を説明する図である。
図2に示すように、センサ7は、培養液タンク3内の気中に配置されたセンサ群である。
センサ7には、圧力センサ71と、酸素濃度センサ72と、炭酸ガス濃度センサ73と、温湿度センサ74と、が含まれる。
【0038】
圧力センサ71は、培養液タンク3内の圧力を測定する。培養液タンク3内の圧力は、気体回収機構9の駆動判断に利用される。
酸素濃度センサ72は、培養液タンク3内の気体成分中の酸素の濃度を測定する。酸素濃度センサ72が取得した酸素濃度は、後記する残存酸素濃度センサ82で取得した酸素濃度と共に、藻類の光合成の程度の判断に利用される。
炭酸ガス濃度センサ73は、培養液タンク3内の気体成分中の炭酸ガス(二酸化炭素:CO)の濃度を測定する。炭酸ガス濃度センサ73が取得した炭酸ガスの濃度は、後記する残存炭酸ガス濃度センサ83が取得した炭酸ガス濃度と共に、炭酸ガスの供給量の増減判断に利用される。
温湿度センサ74は、培養液タンク3内の温度と湿度を測定する。温度と湿度は、建物2内の環境調整の判断などに利用される。
【0039】
センサ8は、培養液タンク3内の液中(培養液中)に配置されたセンサ群である。センサ8には、pHセンサ81(ペーハセンサ)と、溶存酸素濃度センサ82と、溶存炭酸ガス濃度センサ83と、液温センサ84と、が含まれる。
【0040】
pHセンサ81は、培養液のpHを測定する。培養液のpHは、培養液Lqに対する炭酸ガスの噴射量の制御判断に用いられる。
溶存酸素濃度センサ82は、培養液タンク3内の液体成分中の酸素の濃度(溶存酸素濃度)を測定する。
溶存炭酸ガス濃度センサ83は、培養液タンク3内の液体成分中の炭酸ガスの濃度(溶存炭酸ガス濃度)を測定する。本実施形態では、気体ではなく、液体中の酸素や二酸化炭素(炭酸ガス)の濃度、すなわち、溶存酸素濃度や溶存炭酸ガス濃度(溶存二酸化炭素濃度)を測定することで、光合成速度(光合成効率)を測定可能にしている。
液温センサ84は、培養液Lqの温度を測定する。
【0041】
制御装置6は、各種センサ7、8の測定結果に基づいて、培養システム1を制御する。
藻類に光合成を行わせる際には、制御装置6は、ポンプ51を駆動して、培養液を、培養液タンク3と培養槽4との間で循環させる。この際に、制御装置6は、バルブユニット53を制御して、接続管5A内を通流する培養液への炭酸ガスの噴射量を調節することで、炭酸ガスの濃度を調整する。さらに、制御装置6は、培養槽4に付設した光源42の点消灯と、培養液タンク3に付設した光源(図示せず)の点消灯を制御する。
さらに、制御装置6は、バルブユニット53を制御して、接続管5A内を通流する培養液への窒素ガスの噴射量を制御することで、培養槽4に供給される培養液の供給速度を調整する。
【0042】
以下、制御装置6による制御例を説明する。なお、制御装置6による制御例は、下記のものにのみ限定されない。
【0043】
[制御例]
(I)炭酸ガスが過剰である場合
制御装置6は、酸素濃度センサ72(第1センサ)から、培養液タンク3内の酸素濃度Coxと、炭酸ガス濃度Ccdを、予め決められたタイミングで取得する。また、制御装置6は、溶存酸素濃度センサ82から培養液Lqにおける溶存酸素濃度を取得すると共に、溶存炭酸ガス濃度センサ83から培養液Lqにおける溶存炭酸ガス濃度を、予め決められたタイミングで取得する。
制御装置6は、酸素濃度Coxが、酸素濃度の下限を規定する閾値ThA1よりも低く(Cox<ThA1)、かつ炭酸ガス濃度Ccdが、炭酸ガス濃度の上限を規定する閾値ThB2よりも高い場合(Ccd>ThB2)、バルブユニット53を制御して、培養液Lqへの炭酸ガスの噴射量を減少させる。
【0044】
かかる状態は、培養槽4での藻類の光合成があまり行われておらず、無駄になる炭酸ガスの量が多い状態である。そのため、制御装置6は、炭酸ガスの供給量を減らして、無駄になる炭酸ガスの量を抑えている。
【0045】
また、制御装置6は、培養液における残存酸素濃度と炭酸ガス濃度に基づいて、培養槽4での光合成速度(効率)を算出する。制御装置6は、算出した光合成速度(効率)に基づいて、培養槽4に付設した光源42の点消灯と、培養液タンク3に付設した光源(図示せず)の点消灯を制御する。
【0046】
(II)炭酸ガスが不足である場合
制御装置6は、酸素濃度Coxが、光合成が行われているときの酸素濃度の基準を規定する基準閾値ThA0よりも高く(Cox>ThA0)、かつ炭酸ガス濃度Ccdが、炭酸ガス濃度の下限を規定する閾値ThB1よりも低い場合(Ccd<ThB1)、バルブユニット53を制御して、培養液Lqへの炭酸ガスの噴射量を増加させる。ここで、ThA0>ThA1である。
【0047】
かかる状態は、培養槽4での藻類の光合成が活発に行われており、炭酸ガスが不足している状態であるので、炭酸ガスの供給量を増やして、光合成がより活発に行える状況を培養槽4内に作り出している。
【0048】
(III)培養液の供給速度が速い場合
制御装置6は、酸素濃度Coxが、酸素濃度の基準を規定する基準閾値ThA0よりも高く(Cox>ThA0)、かつ炭酸ガス濃度Ccdが、炭酸ガス濃度の上限を規定する閾値ThB2よりも高い場合(Ccd>ThB2)、バルブユニット52を制御して、培養液Lqへの窒素ガス(不活性ガス)の噴射量を減少させる。
【0049】
かかる状態は、培養槽4での藻類の光合成が活発に行われており、炭酸ガスも足りている状態であるので、藻類を含む培養液Lqの移動速度を抑えて、培養槽4内で藻類が受光する時間を延ばすことで、光合成がより活発に行える状況を培養槽内に作り出すことができる。
【0050】
(IV)培養液タンク3内の圧力が高い場合
制御装置6は、圧力センサ71から、培養液タンク3内の圧力Pを予め決められたタイミングで取得する。
制御装置6は、圧力Pが、タンク内圧力の上限を規定する閾値ThPよりも大きい場合(P>ThP)、気体回収機構9を駆動して、培養液タンク3内の気体を回収する。
具体的には、制御装置6は、バルブ92を駆動して、バルブ92の上流側(培養液タンク3側)と下流側(窒素分離装置93側)とを連通させせたのち、コンプレッサ94を駆動する。これにより、培養液タンク3内の気体が、回収管90を介してバッファタンク91側に吸引される。
この状態で、制御装置6は、回収管90に設けた窒素分離装置93駆動して、窒素分離装置93を通過する気体から窒素成分を分離する。これにより、窒素が除去された残りの気体である酸素が、バッファタンク91内に貯留される。
【0051】
かかる状態は、培養槽4での藻類の光合成が活発に行われており、炭酸ガスも足りている状態であるので、藻類を含む培養液の移動速度を抑えて、培養槽4内で藻類が受光する時間を延ばすことで、光合成がより活発に行える状況を培養槽内に作り出すことができる。
【0052】
(V)培養液タンク3内の培養液Lqの温度が高い場合
制御装置6は、液温センサ84から、培養液タンク3内の培養液Lqの温度を予め決められたタイミングで取得する。
制御装置6は、培養液Lqの温度が、予め設定された温度範囲を外れた場合に、培養液タンク3に付設した温度調節機構100を駆動させて、培養液Lqの温度が予め決められた温度範囲内に収まるように制御する。
【0053】
以上の通り、培養システム1では、培養液Lqへの窒素ガスの噴射量を調整することで、培養液タンク3と培養槽4との間での培養液の循環速度が調整される。
窒素は、酸素を含まない不活性ガスであるので、培養液タンク3に設置した酸素濃度センサ72、82で測定した酸素量は、藻類の光合成により発生した酸素量となる。これにより、藻類の光合成の程度や、炭酸ガスの過不足を把握できる。そして、無駄になる炭酸ガスの量を抑えつつ、藻類の培養を適切に行えるので、炭酸ガスを用いる藻類の培養が改善される。
さらに、炭酸ガスが消費されるので、培養システム1を、工場などの炭酸ガスの発生源の近くに設置することで、炭酸ガスの大気中への放出量を削減できる。また、温暖化ガスである炭酸ガスの排出量取引への寄与も期待できる。
【0054】
また、培養槽4に供給する培養液Lqに酸素が混ざると、藻類の成長を阻害する可能性がある。本実施形態では、酸素を含まないに不活性ガス、例えば窒素ガスを、窒素ガスボンベから供給している。そのため、培養液タンク3には、藻類の光合成で発生した酸素と、窒素の混合気体が、培養槽4側から流入する。よって、培養液タンク3から延びる回収管90に窒素分離装置93を設けて、培養液タンク3側から吸引される混合気体から、窒素と酸素を分離できる。これにより、酸素を単独で回収できると共に、分離した窒素を、培養槽4に供給する培養液Lqへの窒素の供給に再利用できる。
【0055】
さらに、窒素ガスと炭酸ガス(CO2)と藻類を含む培養液Lqとが気液混合状態で培養槽4に供給されて、藻類の培養が、外気から遮断された閉鎖空間(培養液タンク3と培養槽4との間の外気から遮断された空間)で行われる。窒素と酸素を分離してそれぞれ回収できるので、藻類の光合成で生成した酸素の量を特定して、光合成速度(効率)を精度良く測定できる。
【0056】
このように、本実施形態にかかる培養システム1では、培養槽4における培養液Lqのバブリングに窒素を用いている。窒素は、藻類の成長を妨げないので、藻類の培養効率(光合成の効率)確保できる。また、制御装置6により、窒素の供給量(流量、圧力、時間)を制御することで、培養槽4への培養液Lqの供給速度を適切に調整する。これにより光合成の効率が制御可能になる。
さらに、気液混合状態の培養液が、培養液タンク3と培養槽4との間を循環するので、培養槽4の内壁(配管41の内周)への藻類の付着、培養液タンク3の内壁への藻類の付着、培養液タンク3と培養槽4とを接続する接続管5A、5Bの内壁への藻類の付着を抑えることができる。
また、藻類の内壁への付着状態を確認しながら、窒素の供給量を調整することで、藻類の付着を抑えることができる。また、藻類の配管41内への付着状態は、光源から照射される光の透過率を確認できる。よって、光の透過率を測定して、透過率が閾値よりも低くなった時点で、窒素の供給量を抑制することで、藻類の付着をより適切にコントロールできる。
【0057】
以上の通り、実施の形態にかかる培養システム1は、以下の構成を有する。
(1)培養システム1は、藻類を含む培養液Lqを、外気から遮断した状態で、培養液タンク3と培養槽4との間で循環させて、藻類を培養する培養システムである。
培養システム1では、酸素を含まない不活性ガスと、炭酸ガス(CO2)と、藻類を含む培養液Lqと、が気液混合状態で培養槽4に供給される。
【0058】
培養液タンク3には、培養槽4での藻類の光合成により生じた酸素が、培養液Lqと共に戻される。培養液Lqは外気から遮断されており、培養槽4には酸素O2が供給されないので、培養液タンク3内の酸素濃度は、光合成により生じた酸素の濃度に相当する。
これにより、酸素濃度を、培養槽4において藻類の光合成がどの程度行われているのかを示す指標として利用できる。
酸素濃度が低い場合には、光合成が余り行われていないことになるので、供給する炭酸ガス濃度を抑えることで、光合成に利用されずに無駄になる炭酸ガスの量を抑えることができる。
これにより、無駄になる炭酸ガスの量を抑えつつ、藻類の培養を適切に行えるので、炭酸ガスを用いる藻類の培養が改善される。
【0059】
(2)培養システム1は、
培養液タンク3と培養槽4とを接続する接続管5A(第1接続路)と、
接続管5A内に、培養液タンク3から培養槽4に向かう培養液Lqの流れを形成するポンプ51と、
接続管5Aにおいてポンプ51と培養槽4との間に設けられて、不活性ガスを接続管5A内に噴射して供給するバルブユニット52(第1供給装置)と、
接続管5Aにおいてポンプ51と培養槽4との間に設けられて、炭酸ガスCO2を接続管5A内に噴射して供給するバルブユニット53(第2供給装置)と、を有する。
【0060】
ポンプ51は、培養液タンク3から吸引した培養液Lqを圧縮して、培養槽4に向けて送出する。そのため、ポンプ51と培養液タンク3との間に、バルブユニット52、53が配置されていると、培養液Lq中に形成した不活性ガスの気泡や、炭酸ガスの気泡が、ポンプ51を通過する際に脱気されてしまう可能性がある。
上記のように構成すると、培養液Lq中に形成した不活性ガスの気泡や、炭酸ガスの気泡は、ポンプ51を通過しないので、培養槽4に供給される培養液Lqに、不活性ガスの気泡と、炭酸ガスの気泡を、含ませることができる。これにより、気液混合状態の培養液Lqを、培養槽4に確実に供給できる。
気液混合状態では、培養液Lqに含まれる藻類が、気泡に包まれた状態となる。そのため、培養槽4を通過する過程で、藻類が培養槽4の内壁(配管41の内周)に付着することを好適に防止できる。
藻類が培養槽4の内壁(配管41の内周)に付着すると、付着した藻類が光の通過を阻害する結果、藻類の受光量が低下して光合成に影響が及ぶ可能性がある。酸素を含まない不活性ガスと、炭酸ガスと、藻類を含む培養液Lqと、が気液混合状態で培養槽に供給されることで、かかる事態の発生を好適に防止できる。
【0061】
(3)培養システム1は、
培養槽4と培養液タンク3とを接続すると共に、培養槽4から培養液タンク3に戻される培養液Lqが通流する接続管5B(第2接続路)と、
培養液タンク3内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ72、82と、
培養液タンク3内の炭酸ガス濃度を検出する炭酸ガス濃度センサ73、83と、
培養液タンク3内に貯留された培養液LqのpHを検出するpHセンサ81と、
バルブユニット52(第1供給装置)からの不活性ガスの供給と、バルブユニット53(第2供給装置)からの炭酸ガスの供給を制御する制御装置6と、を有する。
制御装置6は、酸素濃度と、炭酸ガス濃度と、培養液LqのpHのうちの少なくとも1つに基づいて、不活性ガスの供給量と、炭酸ガスの供給量を制御する。
【0062】
酸素濃度の大小、炭酸ガス濃度の大小、pHの大小は、いずれも、培養槽4において藻類の光合成がどの程度行われているのかを示す指標となる。
よって、酸素濃度と、炭酸ガス濃度と、培養液のpHのうちの少なくとも1つに基づいて、不活性ガスの供給量と、炭酸ガスの供給量を制御することで、光合成に消費されずに無駄になる炭酸ガスの量を抑えることができる。
【0063】
(4)培養システム1は、培養液タンク3内の気体を回収する気体回収機構9を有する。
気体回収機構9は、
培養液タンク3内の圧力を検出する圧力センサ71と、
回収した気体を貯留するバッファタンク91(貯留タンク)と、
培養液タンク3とバッファタンク91(酸素回収装置)とを繋ぐ回収管90と、
回収管90内に負圧を発生させて、培養液タンク3内の気体をバッファタンク91に送出するコンプレッサ94(減圧ポンプ)と、を有する。
【0064】
藻類での光合成が進行すると、培養液タンク3内に滞留する酸素の量が経時的に増加する結果、培養液タンク3内の圧力が上昇する。
培養液タンク3内の圧力が閾値圧力を超えた時点で、コンプレッサ94(減圧ポンプ)を稼働させることで、培養液タンク3内の酸素をバッファタンク91に回収できる。これにより、発生した酸素を回収して、他の用途に有効活用できる。
【0065】
(6)回収管90に設けられて、バッファタンク91側に吸引される気体に含まれる窒素ガス(不活性ガス)を分離する窒素分離装置93(分離装置)と、
窒素分離装置93で分離された窒素ガス(不活性ガス)を、バルブユニット52(第1供給装置)に供給する供給管95と、を有する。
【0066】
培養液タンク3内に滞留する気体には、酸素の他に、窒素ガス(不活性ガス)も含まれる。
バッファタンク91(酸素回収装置)に向かう気体に含まれる窒素ガス(不活性ガス)を回収して、再利用することができるので、窒素ガス(不活性ガス)の利用効率が向上する。これにより、培養システム1の運用コストの低減が期待できる。
【0067】
(7)培養システム1で用いる不活性ガスは、窒素ガスである。
【0068】
窒素ガスは、酸素に比べて反応性が低い不活性ガスであるので、培養システム1の運用コストの低減が期待できる。
窒素ガスは、酸素を含まない不活性ガスであるので、培養液タンク3に設置した酸素濃度センサ72、82で測定した酸素量は、藻類の光合成により発生した酸素量となる。これにより、藻類の光合成の程度や、炭酸ガスの過不足を把握できる。そして、無駄になる炭酸ガスの量を抑えつつ、藻類の培養を適切に行えるので、炭酸ガスを用いる藻類の培養が改善される。
【0069】
(8)培養システム1は、建物2である農業ハウス内に設置される。
【0070】
培養システム1を、農業ハウス内(屋内)に設置することで、日射や外気温などの外部環境の影響が、培養システム1の運用、培養槽4における藻類の光合成に及ぶ可能性を低減できる。
また、農業ハウスは、コンクリート製の建物に比べて、蓄熱性が低い建物であり、温度や湿度などの内部環境を、比較的に容易に調整できる建物である。
よって、培養システム1の運用環境をより安定化させて、藻類の培養を安定的に行える可能性が向上する。
【0071】
(9)培養システム1は、培養液Lqの補充機構10を有する。
補充機構10は、
培養液Lqを貯留する地下タンク11と、
地下タンク11と培養液タンク3とを接続する接続管12と、
接続管12に設けられて、接続管12内に地下タンク11から培養液タンク3に向かう培養液の流れを形成するポンプ13と、を有する。
【0072】
地中に埋没設置される地下タンク11は、外気温の影響を受け難いので、地下タンク11に貯留された培養液Lqは、1年を通じて安定した温度に保持される。
そして、培養システム1が建物2内に設置されていることで、培養液タンク3と培養槽4との間を循環する培養液Lqの温度も、外気温に比べて略一定の温度に保たれる。
これにより、地下タンク11に貯留された培養液Lqを、培養液タンク3内に補充する際に、地下タンク11に貯留された培養液の温度と、培養液タンクと培養槽との間を循環する培養液の温度との差を抑えることで、急激な培養液温度の変化を好適に防止できる。これにより、温度の急激な変化が、藻類の光合成の進行に及ぼす影響を低減できる。
【0073】
(10)培養槽4では、培養槽4内の藻類に対し、より詳細には、配管41内を通流する藻類を含む培養液に、光源42からの光が照射されるよう構成されている。また、培養液タンク3では、図示されていないが、その内部あるいは外部の適宜の位置に光源が設けられている。これにより、培養液タンク3内の培養液に対しても、光源からの光を照射可能に構成されている。
【0074】
前記した実施形態では、培養槽4の内部に、藻類を含む培養液が通流する配管41を設置し、培養槽4に配置した光源からの光を、配管41内を通流する藻類を含む溶液に照射する構成の場合を例示した。
【0075】
培養槽4として、以下のような構成としても良い。
(a)培養液Lqの通流方向における上流側から下流側に向かうにつれて、配管41の設置高さが高くなるように、配管41を培養槽4の内部で傾けて配置する。培養槽4の内部で配管41を交互に折り返しつつ、配管41の経路長が長くなるようにする。
このように構成すると、藻類を含む培養液が配管41内を通流する過程で、藻類の光合成により酸素が発生させることができる。
これにより、発生した酸素と窒素を含む気液混合状態の培養液Lqが、培養液タンク3に流入し、培養液タンク3から延びる回収管90に設けた窒素分離装置93により、窒素と酸素を分離できる。これにより、酸素を単独で回収できると共に、分離した窒素を、培養槽4に供給する培養液Lqへの窒素の供給に再利用できる。
【0076】
(b)さらに、培養槽4の内部で、炭酸ガスと窒素のバブリングを行いつつ、培養槽4の内側と外側に配置した光源からの光を、配管41内を通流する培養液Lqに照射する。これにより、配管41の中心部分を通流する培養液Lqに含まれる藻類の光合成をより効率的に行うことができる。
【0077】
(c)培養液が通流させる配管41に代え、藻類を含む培養液を貯留するタンクを設ける構成とすることもできる。この場合、光源42は、該タンクの内部と外部に配設されることにより、タンク内の培養液に斑なく好適に光を照射することができる。さらに、光源は、タンク内の略中央位置に設けられることが望ましい。係る貯留タンク型の構成によれば、より大容量の培養液の取り扱いが可能となる。
【0078】
前記した実施形態では、制御装置6や、制御装置6により制御される各種機器、例えばポンプ51、光源42等の駆動用の電源が、外部の電力会社から供給される送電線を介して供給される場合を想定した。
例えば、建物2の屋根の上や、周囲に太陽光パネル15を設置して、太陽光パネル15が受光した太陽光から生成される直流電源を、パワーコンディショナ16により交流電源に変換するようにしても良い。これにより、必要に応じて、送電線を介して供給される電源に代えて、パワーコンディショナ16から供給される交流電源で制御装置6や各種機器を駆動することが可能となる。
【0079】
このように構成すると、電力の確保が難しい地域、例えば山間部などにも培養システム1を設置できるようになるので、培養システム1の設置場所の選択肢が広がることになる。
【0080】
また、建物2の開口部に、ブラインド型の遮光カーテンを設けて、太陽光を建物2内に導入できるようにしても良い。
このように構成すると、光源4からの光に加えて、建物2内に取り込んだ太陽光を藻類の光合成に利用できるので、光源(LED)と併用して、照射している太陽光の光強度をリニアに制御できる。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明した。本件発明は、前記した実施形態の態様にのみ限定されない。技術的思想の範囲内で、適宜変更であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0082】
1 :培養システム
2 :建物
3 :培養液タンク
4 :培養槽
5(5A、5B) :接続管
51 :ポンプ
52 :バルブユニット
53 :バルブユニット
54 :窒素ボンベ
55 :炭酸ガスボンベ
6 :制御装置
7 :センサ
71 :圧力センサ
72 :酸素濃度センサ
73 :炭酸ガス濃度センサ
74 :温湿度センサ
8 :センサ
81 :pHセンサ
82 :酸素濃度センサ
83 :炭酸ガス濃度センサ
84 :液温センサ
9 :気体回収機構
10 :補充機構
90 :回収管
91 :バッファタンク
92 :バルブ
93 :窒素分離装置
94 :コンプレッサ
図1
図2