(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099322
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/62 20060101AFI20240718BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F04D29/62 C
F04D29/42 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003179
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 匠
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB47
3H130AC11
3H130AC13
3H130BA22A
3H130BA25A
3H130BA96A
3H130BA98A
3H130EA01A
3H130EA07A
3H130EB01A
3H130EB04A
3H130EC08A
3H130ED02A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第一ケースと第二ケースを組みわせてなるケース体の簡易な組み立てが可能であるうえに、組み立て後のがたつきを防止した遠心送風機を提供する。
【解決手段】第一ケース4aの第一嵌合部Pと第二ケース4bの第二嵌合部Qは互いに凹凸嵌合され、第一嵌合部Pと第二嵌合部Qの対向壁面には中心線が軸方向に平行に延設された第一突条4gと第二突条4iが互いに径方向に重なり合い、第一突条4gと第二突条4iの頂上部4g1,4i1が周方向に互いに対向する壁面を押圧したまま噛み合っている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ファンとこれを回転駆動するモータがケース体内に収容され、ケース体の軸方向中央部より吸気して当該ケース体の径方向外側より圧縮空気を排気する遠心送風機であって、
前記ケース体は、前記遠心ファンを覆って組み付けられ、中央部に吸気用開口部が設けられ径方向外側に第一送風路が形成された第一ケースと、前記モータを回転可能に軸支すると共に前記遠心ファンの外周端部より径方向外側に前記第一送風路と組み合わされる第二送風路が形成された第二ケースと、を備え、
前記ケース体は、前記第一ケースに設けられた第一嵌合部と前記第二ケースに設けられた第二嵌合部が互いに凹凸嵌合され、前記第一嵌合部と前記第二嵌合部の対向壁面には中心線が軸方向に平行に延設された第一突条と第二突条が互いに径方向に重なり合い、前記第一突条と前記第二突条の頂上部が周方向に互いに対向する壁面を押圧したまま噛み合って組み付けられていることを特徴とする遠心送風機。
【請求項2】
前記第一ケースの外周縁部より板状に突設された前記第一嵌合部の周方向両側側壁には、頂上部が曲面形状で板厚方向に連なる第一突条が各々形成され、前記第一嵌合部と嵌め合う凹部形状の前記第二嵌合部の両側起立壁には、開口端側が幅狭で底部側に向かって漸進幅広に連なる第二突条が各々形成されている請求項1記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記第一嵌合部と前記第二嵌合部が嵌め合うことで、モータの口出し線を引き出す口出し線開口部が形成されている請求項1又は請求項2記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記第一ケースと前記第二ケースを軸方向に重ね合わせて前記第一ケースの外周側部に設けられた弾性変形可能な係止片が前記第二ケースの外周側部に設けられた係止部に係止することで、前記ケース体が形成される請求項1又は請求項2記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばシート空調用或いはHVAC(暖房、換気及び空調:Heating, Ventilation, and Air Conditioning)機器などに用いられる遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車を運転して長距離移動するなど、運転者がシートの背もたれや着座部に長時間に接していると、高温多湿の空気がまとわりつくため不快感が増す。このため、主に背もたれ部分と着座部分にこもりやすい高温多湿な空気を調和するためシート空調装置が用いられる。
【0003】
シート空調装置としては、シートから空気を吹き出すタイプとシートから空気を吸い込み排出するタイプのシート空調装置がある。ここではより快適な空調効果が期待できる吸い込みタイプのシート空調装置について説明する。吸い込みタイプのシート空調装置は、背もたれ部分と着座部分にこもった高温多湿な空気を吸引して当該領域から除去することで、空調効果が得られるようになっている。
上述したシート空調装置は、車両用シートに組み付けられ、搭乗者の発汗による湿度変化や走行面に存在する段差や凹凸面により振動するなど過酷な使用状況が想定される。
【0004】
例えば、防水性、低振動性を実現し、組み立て後のがたつきを防止する遠心ファンを備えた電動ポンプが提案されている。ステータ及びモータハウジングと支持部材との間には、第一ガスケットが介在されており、支持部材と基板ハウジングとの間には、第二ガスケットが介在されている。ステータ及びモータハウジングと支持部材との間、及び、支持部材と基板ハウジングとの間から水が浸入することを、第一ガスケット及び第二ガスケットにより阻止し防水性能を確保している。また、モータ部の作動時にステータに生じる振動がモータハウジングに伝達しても、この振動を第一ガスケット及び第二ガスケットで吸収することができ、低振動性能を確保している。
更には、第一スナップフィット構造、第二スナップフィット構造、及び第三スナップフィット構造を用いて、ステータ、モータハウジング、及び基板ハウジングを支持部材に組み付けることができるので、組立を容易にしている(特許文献1:特許第6973432号公報)。
【0005】
また、遠心ファンの上ケーシングと下ケーシングの間に支柱を介装して結合させている構造が提案されている。具体的には、支柱は上ケーシングの外周部に設けたフランジ部に樹脂(PBT樹脂)の成形により、上ケーシングと一体成形で形成され、支柱の先端部に突起部が形成されている。この突起部を下ケーシングのフランジに形成した貫通孔に挿通し、貫通孔から突出した突起部の先端部を溶着(例えば、超音波溶着、振動溶着、レーザ溶着、等)や熱カシメ等することで、上ケーシングと下ケーシングとが支柱を介して接合されている。上下ケーシングが樹脂成形されたものが用いられ軽量であり、各ケーシングにはリブが形成されているため剛性を高めて振動を抑えている(特許文献2:特許第7043338号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6973432号公報
【特許文献2】特許第7043338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1は第一スナップフィット構造、第二スナップフィット構造、及び第三スナップフィット構造を用いて、ステータ、モータハウジング、及び基板ハウジングを支持部材に組み付けるため、軸方向に大型化して薄型化には向いておらず、例えば車両用シート内のような組み付けるスペースが限られた箇所には採用できない。また、防水のためガスケットを組み付けるため、部品点数が多く工数が嵩み製造コストも上昇する。
【0008】
また、特許文献2のように、樹脂製の上ケーシングと下ケーシングを溶着や熱カシメ等で結合する場合には、結合部位が溶着や熱カシメを行う際に機械的応力に耐えるだけの容積を要するうえに、製造工数がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、第一ケースと第二ケースを組みわせてなるケース体の簡易な組み立てが可能であるうえに、組み立て後のケース体のがたつきを防止した遠心送風機を提供することにある。
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
遠心ファンとこれを回転駆動するモータがケース体内に収容され、前記ケース体の軸方向中央部より吸気して前記ケース体の径方向外側より圧縮空気を排気する遠心送風機であって、前記ケース体は、前記遠心ファンを覆って組み付けられ、中央部に吸気用開口部が設けられ径方向外側に第一送風路が形成された第一ケースと、前記モータを回転可能に軸支すると共に前記遠心ファンの外周端部より径方向外側に前記第一送風路と組み合わされる第二送風路が形成された第二ケースと、を備え、前記ケース体は、前記第一ケースに設けられた第一嵌合部と前記第二ケースに設けられた第二嵌合部が互いに凹凸嵌合され、前記第一嵌合部と前記第二嵌合部の対向壁面には中心線が軸方向に平行に延設された第一突条と第二突条が互いに径方向に重なり合い、前記第一突条と前記第二突条の頂上部が周方向に互いに対向する壁面を押圧したまま噛み合って組み付けられていることを特徴とする。
このように、第一嵌合部と第二嵌合部の対向壁面には中心線が軸方向に平行に延設された第一突条と第二突条が互いに径方向に重なり合い、第一突条と第二突条の頂上部が周方向に互いに対向する壁面を押圧したまま噛み合っているので、第一嵌合部と第二嵌合部が凹凸嵌合されると、ケース体の周方向及び径方向、さらには軸方向にガタが生ずることがない。
【0011】
前記第一ケースの外周縁部より板状に突設された前記第一嵌合部の周方向両側側壁には、頂上部が曲面形状で板厚方向に連なる第一突条が各々形成され、前記第一嵌合部と嵌め合う凹部形状の前記第二嵌合部の両側起立壁には、開口端側が幅狭で底部側に向かって漸進幅広に連なる第二突条が各々形成されていてもよい。
これにより、第一ケースと第二ケースを軸方向に重ね合わせるだけで、第一突条と第二突条とが当接しながら嵌め合うためケース体の径方向にガタを生ずることはなく、第一突条と第二突条の頂上部が互いに対向する壁面を押圧しているのでケース体の周方向にもガタが生ずることはなく、第一突条と第二突条は嵌合位置で最も押圧力が強まるように噛み合うため、ケース体の軸方向にもガタが生ずることはなくなる。
【0012】
前記第一嵌合部と前記第二嵌合部が嵌め合うことで、モータの口出し線を引き出す口出し線開口部が形成されていてもよい。
これにより、第一嵌合部と第二嵌合部が嵌め合うことで口出し線開口部が形成される場合には、第一嵌合部と第二嵌合部の内外壁に第一突条と第二突条を形成するだけで、新たな部材を設けることなくケース体の組み立て後のケース体のガタの発生を防止することができる。
【0013】
前記第一ケースと前記第二ケースを軸方向に重ね合わせて前記第一ケースの外周側部に設けられた弾性変形可能な係止片が前記第二ケースの外周側部に設けられた係止部に係止することで、前記ケース体が形成されるようにしてもよい。
これにより、第一ケースと第二ケースを軸方向に重ね合わせ、係止片を弾性変形させて係止部に係止させるスナップフィットにより組み立てることができ、組み立て性が良く、しかも、第一突条と第二突条の噛み合いが深まることで、係止片と係止部との係止状態も強まるので、スナップフィットの係止状態を強化することもできる。
【発明の効果】
【0014】
第一ケースと第二ケースを組みわせてなるケース体の簡易な組み立てが可能なうえに、組み立て後のがたつきを防止した遠心送風機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1の遠心送風機から第一ケースを取り外した斜視図である。
【
図5】
図1の第二ケース及び配線ケーブルの斜視図である。
【
図7】ケース体の口出し線引き出し部の断面図である。
【
図8】ケース体のスナップフィット構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る遠心送風機の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、遠心送風機の概略構成について
図1乃至
図12を参照して説明する。モータMは、DCブラシレスモータが用いられ、本実施例ではアウターロータ型モータが用いられる。尚、インナーロータ型モータであってもよい。
【0017】
図1に示すように、遠心送風機1は、遠心ファン2(
図2参照)と回転子3(
図12参照)が一体に組み付けられ、これらを回転駆動するモータMがケース体4内に収容されている。
図1に示すように、ケース体4の軸方向中央部より吸気し、径方向外側より加圧された空気を軸方向に沿って排気するものである。
図1に示すように、ケース体4は、遠心ファン2を覆って組み付けられる第一ケース4aとモータM(回転子3及び固定子5;
図12参照)を回転可能に軸支する第二ケース4bを組み合わせて形成される。第一ケース4aと第二ケース4bとは、第一ケース4aの外周側部に複数箇所に設けられた弾性変形可能な係止片4jを第二ケース4bの外周側部の対応する位置に設けられた係止部4kに各々係止させることで一体に組み付けられる(スナップフィット)。
【0018】
図12は駆動源であるモータMの断面図を示す。
図12に示すように、固定子5は、筒状に成形された固定子ハウジング6の軸方向中央部外周に固定子コア7が接着固定されている。固定子コア7は環状のコアバック部7aの中心孔に固定子ハウジング6を挿通して組み付けられる。固定子コア7は固定子ハウジング6に設けられた段付き部6gに突き当てられて軸方向に位置決めされて組み付けられる。固定子コア7はコアバック部7aより径方向外側に向かって複数の極歯7bが突設されている。極歯7bの周囲はインシュレータ7cに覆われており、モータコイル7dが巻き付けられている。モータコイル7dのコイルリードは、モータ基板12の端子部にはんだ付けされて電気的に接続されている。モータ基板12は、基板貫通孔12aに固定子ハウジング6を挿通させた状態でベースプレート11上に重ね合わせて組み付けられる。
【0019】
回転子3は、カップ状に形成された回転子ヨーク3aのハブ3bに回転子軸3cの一端が圧入、接着、焼き嵌めなどのいずれか或いはこれらの組み合わせで一体に組み付けられている。回転子ヨーク3aの内周面には、N極S極交互に着磁された環状の回転子マグネット3dが組み付けられている。回転子ヨーク3aは、インペラ2cとともにインサート成形されている。回転子軸3cは、固定子ハウジング6の筒孔6aに挿入され、固定ハウジング6内に圧入された焼結含油軸受8の筒孔8aに圧入される。回転子軸3cの挿入端部は、固定子ハウジング6の筒孔6aを閉止する閉止部材6bに支持されたスラスト受け6cに突き当てられて支持される。閉止部材6bは固定子ハウジング6の凹部6dに突き当てられて一体に組み付けられる。また、回転子軸3cの挿入端部近傍には、抜け止めワッシャ6eが嵌め込まれて、回転子軸3cが軸方向に抜け止めされる。閉止部材6bは、固定子ハウジング6の凹部6dに封止材6fが充填されて封止される。
【0020】
図2に示すように、遠心ファン2は、ハブ2aより径方向外側に連なる主板2bがドーム状に形成されている。遠心ファン2のハブ2aに対向する吸気用開口部4cより吸気された空気は、主板2b上に形成されたインペラ2cにより径方向外側に設けられた環状送風路に向けて加圧して送り出すことができる。インペラ2cの外周側上端部には環状に接続されたシュラウド2dが形成されている。また、遠心ファン2のハブ2a及びこれに連なる主板2bにより吸気用開口部4cとは反対面側にドーム状空間部が形成される。ドーム状空間部には、
図12に示すように、モータMの回転子3及び固定子5が軸方向に重なりあって収容されている。これにより、遠心送風機1の軸方向寸法を減らして同じ体格の遠心送風機1であっても小型扁平化を図ることができる。
【0021】
図1に示すように、第一ケース4aの中央部には吸気用開口部4cが設けられ、
図4に示すように、径方向外側に第一送風路4dが形成されている。なお、吸気用開口部4cは、その中心がモータMの回転子軸3cの軸線と厳密に一致している必要はなく、吸気用開口部4cの位置がケース体4の軸方向中央部付近であって遠心ファン2が効率を落とさずに動作する範囲であればよい。
図3及び
図4に示すように、第一ケース4aの外周縁部には、板状の第一嵌合部Pが突設されている。第一嵌合部Pの周方向両側面には、中心線が軸方向に平行となるように第一突条4gが各々設けられている。
【0022】
図5及び
図6に示すように、第二ケース4bの径方向外側には第一送風路4dと組み合わされる第二送風路4eが形成されている。第一ケース4aと第二ケース4bを組み合わせてケース体4の径方向外側に環状送風路が形成される。第二送風路4eとなる第二ケース4bの底部外周側には加圧された圧縮空気を軸方向沿って排気する排気孔4fが周方向に複数箇所に穿設されている。第二ケース4bの底部に設けられた底部外周壁4h1と底部内周壁4h2との間に複数の拡散板4rが架設され排気孔4fが形成されている。拡散板4rは、第二送風路4eに設けられた排気孔4fより軸方向に排気される空気を、各拡散板4rの傾斜に沿って遠心ファン2の回転方向に対して斜め下方に向かって排気する。第二ケース4bには、
図12に示すように、モータ底部を覆う板金状のベースプレート11が組み付けられる。ベースプレート11には固定子ハウジング6が抵抗溶接されて一体に組み付けられている。固定子ハウジング6には、モータ基板12が基板貫通孔12aに固定子ハウジング6を挿通させた状態で重ねて組み付けられる。モータ基板12には通電回路が形成されている。
【0023】
図5及び
図6に示すように、第二ケース4bの外周側部には、底部両側に起立壁が設けられ上側が開口した凹溝状の第二嵌合部Qが突設されている。第二嵌合部Qの両側起立壁Q1の対向面には、中心線が軸方向に平行となるように第二突条4iが各々設けられている。第一ケース4aと第二ケース4bを嵌め合わせると、第一嵌合部Pと第二嵌合部Qが嵌合し、第一突条4gと第二突条4iが互いに径方向に重なり合い、第一突条4gと第二突条4iの頂上部が周方向に互いに対向する壁面を押圧したまま噛み合う。第一嵌合部Pと第二嵌合部Qが嵌め合うことで、モータの口出し線4pを引き出す口出し線開口部4qが形成される(
図9参照)。
図1及び
図7に示すように、口出し線開口部4qから口出し線4pが引き出される。口出し線4pの先端には、配線接続用のコネクタ端子4p1が設けられている。
【0024】
図10に示すように、第一嵌合部Pの周方向両側側壁P1には、ラグビーボール状に曲面が膨出した第一突条4gが板厚方向に各々延設されている。また、
図11に示すように、第二嵌合部Qの周方向両側起立壁Q1の対向面には、軸方向一端側(開口側)が幅狭で軸方向他端側(底部側)に向かって漸進幅広となる第二突条4iが各々形成されている。第一突条4gと第二突条4iは中心線が軸方向に平行に延設され、第一突条4gと第二突条4iは互いに径方向に重なり合い、頂上部4g1が対向する壁面Q1を押圧し、頂上部4i1が対向する壁面P1を押圧し、周方向にそれぞれ対向する頂上部と壁面を押圧したまま噛み合っている(
図9参照)。このように、第一嵌合部Pと第二嵌合部Qが凹凸嵌合されると、ケース体4の周方向及び径方向、さらには軸方向にガタが生ずることがない。
【0025】
具体的には、第一嵌合部Pの周方向両側壁P1には、中心線が軸方向と平行であり頂上部4g1が曲面形状で板厚方向に連なる第一突条4gが各々突設されている。第一突条4gは、必ずしも板厚方向に同一幅である必要はなく板厚方向に幅寸法が異なっていてもよい。また、第二嵌合部Qの周方向両側で対向する起立壁Q1には、中心線が軸方向と平行であり頂上部4i1が曲面形状で軸方向一端側(開口側)が幅狭で軸方向他端側(底部側)が漸進幅広となるように連なる第二突条4iが各々突設されている。
【0026】
これにより、第一ケース4aと第二ケース4bを軸方向に重ね合わせるだけで、第一突条4gと第二突条4iとが径方向に当接しながら嵌め合うためケース体4の径方向にガタを生ずることはなく、第一突条4gの頂上部4g1が対向する壁面Q1を押圧し、第二突条4iの頂上部4i1が対向する壁面P1を押圧し、それぞれ対向する頂上部と壁面を押圧したまま嵌め合うためケース体4の周方向にもガタが生ずることはない。また、第一突条4gは開口側が幅狭で底部側が漸進幅広となるように形成された第二突条4iの傾斜面に沿って嵌め合い、嵌合位置で突条どうしの噛み合いが最も強まるため、ケース体4の軸方向にもガタが生ずることはなくなる。
【0027】
尚、第一突条4gは、開口側が幅狭で底部側が幅広に形成された第二突条4iのテーパ状に形成された傾斜面に沿って噛み合いが強まるため、
図9の矢印に示すように、第一ケース4aは径方向内側への押圧が強まり、第二ケース4bは径方向外側への押圧が強まる。このため、スナップフィットを構成する係止片4jと係止部4kとの係止状態がより強固になるという作用効果も得られる。
【0028】
このように、第一嵌合部Pと第二嵌合部Qが嵌め合うことで口出し線開口部4qが形成されるので、第一嵌合部Pと第二嵌合部Qの内外壁に第一突条4gと第二突条4iを形成するだけで、新たな部材を設けることなくケース体4の組み立て後のガタの発生を防止することができる。
【0029】
また、第一ケース4aの外周側部に設けられた弾性変形可能な係止片4jが第二ケース4bの外周側部に設けられた係止部4kに係止することで、ケース体4が組み付けられる。このとき、第一ケース4aと第二ケース4bを軸方向に重ね合わせ、係止片4jを弾性変形させて係止部4kに係止させるスナップフィットにより組み立てることができ、組み立て性が良く、しかも、第一突条4gと第二突条4iの噛み合いが深まることで、係止片4jと係止部4kとの係止状態が強まるので、スナップフィットの係止状態を強化することもできる。
【0030】
上記実施形態は、車載用シート空調を例示して説明したが、これに限らずHVAC(暖房、換気及び空調)用の遠心送風機等に用いてもよい。車両以外の、余剰空間が少なく従来の空調用送風機を配置する空間が確保困難な場所であっても、本発明は同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 遠心送風機 2 遠心ファン 2a ハブ 2b 主板 2c インペラ 3 回転子 3a 回転子ヨーク 3b ハブ 3c 回転子軸 3d 回転子マグネット 4a 第一ケース 4b 第二ケース 4c 吸気用開口部 4d 第一送風路 4e 第二送風路 4f 排気孔 4g 第一突条 4g1,4i1 頂上部 4i 第二突条 4h1 底部外周壁 4h2 底部内周壁 4j 係止片 4k 係止部 4r 拡散板 4p 口出し線 4q 口出し線開口部 P 第一嵌合部 P1 側壁 Q 第二嵌合部 Q1 起立壁 5 固定子 6 固定子ハウジング 6a 筒孔 6b 閉止部材 6c スラスト受け 6d 凹部 6e 抜け止めワッシャ 6f 封止材 6g 段付き部 7 固定子コア 7a コアバック部 7b 極歯 7c インシュレータ 7d モータコイル 8 焼結含油軸受 8a 筒孔 11 ベースプレート 12 モータ基板 12a 基板貫通孔