(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099328
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】回転電機の絶縁特性測定方法、回転電機
(51)【国際特許分類】
G01R 31/34 20200101AFI20240718BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20240718BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01R31/34 B
G01R31/12 Z
H02K15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003189
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】廣島 聡
(72)【発明者】
【氏名】河上 哲哉
【テーマコード(参考)】
2G015
2G116
5H615
【Fターム(参考)】
2G015AA12
2G015AA19
2G015CA04
2G015CA07
2G116BA00
2G116BB03
2G116BC02
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615SS57
(57)【要約】
【課題】コイルの汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な評価を可能にする絶縁特性測定方法、回転電機を提供する。
【解決手段】実施形態による絶縁特性測定方法の一例では、回転電機1のコイル7の絶縁特性を測定する際、回転電機1の固定子鉄心6に形成されたコイルエンド8の表面に導電性部材12を配置し、導電性部材12をガード電極として接地して、コイルエンド8の表面を流れる漏れ電流を抑制し、絶縁特性として、コイル7の導体7aと固定子鉄心6または固定子鉄心6が固定されているケース2との間の絶縁抵抗を測定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のコイルの絶縁特性を測定するための方法であって、
前記回転電機の固定子鉄心に形成されたコイルエンドの表面に導電性部材を配置し、
前記導電性部材をガード電極として接地して、前記コイルエンドの表面を流れる漏れ電流を抑制し、
絶縁特性として、前記コイルの導体と前記固定子鉄心または前記固定子鉄心が固定されているケースとの間の絶縁抵抗を測定する回転電機の絶縁特性測定方法。
【請求項2】
回転電機のコイルの絶縁特性を測定するための方法であって、
前記回転電機の固定子鉄心に形成されたコイルエンドの表面に導電性部材を配置し、
前記固定子鉄心または前記固定子鉄心が固定されているケースをガード電極として接地して、前記コイルエンドの表面を流れる漏れ電流を抑制し、
絶縁特性として、前記コイルの導体と前記導電性部材との間の絶縁抵抗を測定する回転電機の絶縁特性測定方法。
【請求項3】
回転電機のコイルの絶縁特性を測定するための方法であって、
前記回転電機の固定子鉄心に形成されたコイルエンドの表面に導電性部材を配置し、
前記導電性部材をガード電極として接地して、前記コイルエンドの表面を流れる漏れ電流を抑制し、
絶縁特性として、前記コイルの導体と前記固定子鉄心または前記固定子鉄心が固定されているケースとの間の誘電正接を測定する回転電機の絶縁特性測定方法。
【請求項4】
回転電機のコイルの絶縁特性を測定するための方法であって、
前記回転電機の固定子鉄心に形成されたコイルエンドの表面に導電性部材を配置し、
前記固定子鉄心または前記固定子鉄心が固定されているケースをガード電極として接地して、前記コイルエンドの表面を流れる漏れ電流を抑制し、
絶縁特性として、前記コイルの導体と前記導電性部材との間の誘電正接を測定する回転電機の絶縁特性測定方法。
【請求項5】
回転電機のコイルの絶縁特性を測定するための方法であって、
前記回転電機の固定子鉄心に形成されたコイルエンドの表面に導電性部材を配置し、
前記導電性部材をガード電極として接地して、前記コイルエンドの表面を流れる漏れ電流を抑制し、
前記コイルの導体と前記固定子鉄心または前記固定子鉄心が固定されているケースとの間に交流電圧を印加し、
絶縁特性として、前記コイルの電流急増電圧を測定する回転電機の絶縁特性測定方法。
【請求項6】
回転電機のコイルの絶縁特性を測定するための方法であって、
前記回転電機の固定子鉄心に形成されたコイルエンドの表面に導電性部材を配置し、
前記固定子鉄心または前記固定子鉄心が固定されているケースをガード電極として接地して、前記コイルエンドの表面を流れる漏れ電流を抑制し、
前記コイルの導体と前記導電性部材との間に交流電圧を印加し、
絶縁特性として、前記コイルの電流急増電圧を測定する回転電機の絶縁特性測定方法。
【請求項7】
ケースと、
前記ケースの内部に固定され、複数の鉄心材を積層して形成されている固定子鉄心と、
前記固定子鉄心に設けられているコイルと、
前記固定子鉄心の積層方向の端部に形成されるコイルエンドと、
前記コイルエンドの表面に配置されている導電性部材と、
前記導電性部材と前記固定子鉄心または前記ケースとが同電位となるように接続する接続部材と、
を備える回転電機。
【請求項8】
前記接続部材は、一方の端部が前記導電性部材に固定されている一方、他方の端部が、通常の運転時には前記固定子鉄心または前記ケースと同電位となる箇所に固定されており、絶縁特性の測定時には測定装置に接続可能な状態、または、接地可能な状態で設けられている請求項7に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の絶縁特性測定方法、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のコイルは、運転時に熱や振動などの機械的ストレスを受けたり、冷却用の空気による吸湿や汚損などに晒されたりすることがあることから、長期間の運転においては、コイルの経年劣化に伴う絶縁状態の変化を把握することが、絶縁劣化による故障や破損等を未然に防ぐために非常に重要になる。このとき、コイルの絶縁劣化の評価には、例えば特許文献1に記載されているように絶縁抵抗、誘電正接あるいは電流急増電圧などが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コイルの絶縁特性は、コイルの表面が汚損しているとその表面に漏れ電流が流れ、絶縁特性の測定に影響を与えることになる。そのため、従来では、コイルの表面の汚損の影響を受けた状態で絶縁特性が測定されていることから、コイルの絶縁特性を正確に評価することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コイルの汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な評価を可能にする絶縁特性測定方法、回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態による回転電機の絶縁特性測定方法の一例は、回転電機のコイルの絶縁特性を測定するための方法であって、回転電機の固定子鉄心に形成されたコイルエンドの表面に導電性部材を配置し、導電性部材をガード電極として接地して、コイルエンドの表面を流れる漏れ電流を抑制し、絶縁特性として、コイルの導体と固定子鉄心または固定子鉄心が固定されているケースとの間の絶縁抵抗を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態における回転電機の構成例を模式的に示す図
【
図2】従来の測定方法とその測定結果の一例を説明する図
【
図10】電流急増電圧の測定態様を模式的に示す図その1
【
図11】電流急増電圧の測定態様を模式的に示す図その2
【
図12】第2実施形態による回転電機の構成例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。また、各実施形態において実質的に共通する部位には同じ符号を付している。
【0009】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1から
図11を参照しながら説明する。
図1に模式的に示すように、本実施形態の回転電機1は、金属製のケース2の内部に、固定子3および回転子4を収容している。固定子3は、複数の鉄心材5を積層して概ね円筒状に形成されている固定子鉄心6と、固定子鉄心6の内周側の図示しないスロットに装着されている例えば三相のコイル7とを備えている。
【0010】
コイル7は、例えばエナメル線を巻回することによって形成されており、固定子鉄心6の積層方向における両端にそれぞれコイルエンド8を形成する。このコイルエンド8は、固定子鉄心6から突出している部分を成形してワニスを含浸することなどにより、固定子鉄心6の外形よりも小さい概ね環状に成形されている。そのため、コイルエンド8の外周側にはケース2の内面との間に所定の隙間が存在しており、内周側には回転子4を配置するためのスペースが存在している。このコイル7の一端側は、フランジ9に設けられている端子ボックス10の内部まで引き出されており、例えば図示しないコネクタなどと接続可能になっている。
【0011】
回転子4は、固定子3の内周側に所定のギャップが介在する状態で配置されている。この回転子4の中心にはシャフト11が固定されており、シャフト11は、ケース2の両端を塞ぐフランジ9にそれぞれ設けられている軸受けによって回転可能に支持されている。なお、
図1に示す構成は一例である。
【0012】
さて、前述のように、回転電機1は、運転時に熱や振動などの機械的ストレスを受けたり、冷却用の空気による吸湿や汚損などに晒されたりすることがある。そのため、とくに長期間利用されることが想定される産業用の回転電機1においては、コイル7の経年劣化に伴う絶縁状態の変化を把握することが絶縁劣化による故障や破損等を未然に防ぐために非常に重要になる。
【0013】
また、コイル7の絶縁劣化を評価する際には、一般的に絶縁抵抗、誘電正接あるいは電流急増電圧などが用いられる。例えば、絶縁特性として絶縁抵抗を測定する場合には、
図2に従来の測定方法として模式的に示すように、絶縁抵抗測定装置20を導体7aと固定子鉄心6とに接続し、コイル7の導体7aと固定子鉄心6との間の絶縁特性、つまりは、エナメル線の被覆や絶縁紙のような絶縁物7bの絶縁特性が測定されていた。
【0014】
ただし、長期間の運転によってコイル7の表面が汚損すると、測定時にはコイルエンド8の表面に漏れ電流(Ix)が発生するため、
図1に測定式として(1)式に示すように、絶縁抵抗測定装置20によって測定される抵抗(Rm)は、コイル7の導体7aと固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)と、絶縁物7bの抵抗(Re)と、コイル7の表面抵抗(Rs)が並列接続された合成抵抗となっていた。
【0015】
この場合、コイル7の表面の抵抗(Rs)が導体7aと固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)よりも十分大きい場合には、測定される抵抗(Rm)は、導体7aと固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)とほぼ同じ値になる。その一方で、汚損などでコイル7の表面の抵抗(Rx)が相対的に小さくなると、測定される抵抗(Rm)は、コイルエンド8の絶縁物7bの抵抗(Re)およびコイル7の表面の抵抗(Rs)を無視できなくなる。
【0016】
つまり、従来の測定方法では、コイル7の表面が汚損されていた場合、その汚損の影響を受けた状態で絶縁特性が測定されていたことから、本来測定したい例えば導体7aと固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)を正確に測定することができず、絶縁特性を正確に評価することが困難であった。
【0017】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、絶縁特性を正確に評価できるようにしている。具体的には、絶縁特性を測定する際、
図3に示すように、コイルエンド8の外周側の表面に導電性部材12(
図4参照)を配置する(S1)。
【0018】
回転電機1は、
図4に側面視および正面視として示すように、フランジ9を取り外すことでコイルエンド8が露出して外部からコイルエンド8に対する作業が可能になる。また、回転電機1には、コイルエンド8の外周側の表面とケース2の内面との間に、作業者が手を入れて作業することができる程度の隙間が存在するものとする。ただし、後述する
図5に示すように、コイルエンド8の外周側の隙間が狭い場合であっても、導電性部材12の配置を工夫することによって同様の測定を行うことはできる。なお、
図5では、図面を見やすくするために、回転子鉄心6、コイルエンド8および導電性部材13を抽出して図示している。
【0019】
本実施形態では、コイルエンド8の外周側の表面の全周に渡って導電性部材12を配置している。この導電性部材12は、例えば金属テープ、カーボンテープ、金属箔、導電性の粘土などにより構成されている。なお、金属テープは、金属を含むものであればよい。つまり、導電性部材12は、導電性を有する材料を含み、コイルエンド8の表面に密着させることができるものを採用することができる。
【0020】
ただし、導電性部材12は、
図5に他の配置態様その1として示すように、コイルエンド8の外周側の表面の一部に配置することができる。この場合、導電性部材12を配置する範囲を示す中心角(α)は適宜設定することができる。また、他の配置態様その2として示すように、コイルエンド8の外周側の表面に複数の導電性部材12を配置することができる。この場合、導電性部材12を配置する範囲や数は敵下設定することができる。
【0021】
また、他の配置態様その3として示すように、コイルエンド8の内周側の表面の全周に渡って導電性部材12を配置することができる。これにより、コイルエンド8の外周側の表面とケース2の内面との間の隙間が狭い場合であっても、導電性部材12をコイルエンド8の表面に配置することができる。また、他の配置態様その4として示すように、コイルエンド8の内周側の表面の一部に導電性部材12を配置することができる。この場合、導電性部材12を配置する範囲を示す中心角(β)は適宜設定することができるし、配置態様その2のように複数個所に配置することもできる。
【0022】
また、他の配置態様その5として示すように、U字状、C字状あるいは環状に形成された例えば金属製部材13をコイルエンド8の外周側の表面に接する状態で配置して、導電性部材12として用いる構成とすることもできる。また、他の配置態様その6として示すように、U字状、C字状あるいは環状に形成された例えば筒状の金属筒14をコイルエンド8の内周側の表面に接する状態で配置し、導電性部材12として用いることもできる。この場合、金属筒14に径方向外側に広がる弾性を持たせることにより構造とすることにより、コイルエンド8の内周側に密着させることもできる。また、図示は省略するが、コイルエンド8の外周側の表面と内周側の表面とに金属製部材13と金属筒14とを配置する構成とすることもできる。
【0023】
また、図示は省略するが、コイルエンド8に例えばアルコールなどの導電性の液体を塗布あるいは吹き付けてコイルエンド8の表面に導電性を持たせて配線を接続することにより、導電性部材12を配置した状態と概ね同じ状態を作り出すこともできる。また、コイルエンド8の外周側および内周側の表面のそれぞれの全周に渡って、または、それぞれの一部に導電性部材12を配置する構成とすることもできる。
【0024】
また、
図4の側面視において図示右方側のコイルエンド8については、積層方向における表面つまりは図示右方側の端面に導電性部材12を配置したり、図示左方側のコイルエンド8については、図示左方側の端面に導電性部材12を配置したりすることができる。さらに、導電性部材12は、金属テープ、カーボンテープ、金属箔、導電性の粘土、金属製部材13、金属筒14、導電性の液体の塗布または吹き付けなどと組み合わせることができる。
【0025】
さて、導電性部材12を配置すると、
図3に示すように、測定内容に合わせてガード電極を接地し(S3)、測定装置を接続する(S4)。本実施形態の場合、導電性部材12または固定子鉄心6のいずれかをガード電極として接地する。
【0026】
例えば、
図6に示すように、絶縁特性としてコイル7の導体7aと固定子鉄心6との間の絶縁抵抗を測定する場合には、ガード電極として導電性部材12を選択し、その導電性部材12を接地する。そして、導体7aを絶縁抵抗測定装置20の高圧側に接続し、固定子鉄心6を絶縁抵抗装置の低圧側に接続する。この場合、固定子鉄心6とガード電極とが同じ接地電位になることから、絶縁抵抗測定装置20で測定される抵抗(Rm)は、コイル7の表面の抵抗(Rs)の大きさに関わらず、導体7aと固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)となる。
【0027】
また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れるため、絶縁物7bの抵抗(Rs)は無視される。つまり、コイルエンド8に導電性部材12を配置することにより、本来測定すべき導体7aと固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)を正確に測定することが可能になる。なお、固定子鉄心6はケース2に固定されているため、ケース2を絶縁抵抗測定装置20に接続することによっても、固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)を間接的に測定する構成とすることもできる。
【0028】
また、
図7に示すように、絶縁特性としてコイル7の導体7aと導電性部材12との間の絶縁抵抗を測定したい場合には、つまりは、絶縁物7bの絶縁特性を測定したい場合には、ガード電極として固定子鉄心6を選択し、その固定子鉄心6を接地する。そして、導体7aを絶縁抵抗測定装置20の高圧側に接続し、導電性部材12を絶縁抵抗装置の低圧側に接続する。この場合、導電性部材12とガード電極とが同じ接地電位になることから、絶縁抵抗測定装置20で測定される抵抗(Rm)は、コイル7の表面の抵抗(Rs)の大きさに関わらず、導体7aと導電性部材12との間の抵抗(Rs)となる。
【0029】
また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れるため、固定子鉄心6との間の抵抗(Rg)は無視される。つまり、コイルエンド8に導電性部材12を配置することにより、本来測定すべき導体7aと導電性部材12との間の抵抗(Rs)を正確に測定することが可能になる。なお、固定子鉄心6はケース2に固定されているため、ケース2を接地させることによっても、導体7aと導電性部材12との間の抵抗(Rs)を間接的に測定する構成とすることもできる。
【0030】
また、
図8に示すように、絶縁特性としてコイル7の導体7aと固定子鉄心6との間の誘電正接を測定する場合には、ガード電極として導電性部材12を選択し、その導電性部材12を接地する。そして、導体7aを誘電正接測定装置21の高圧側に接続し、固定子鉄心6を誘電正接測定装置21の低圧側に接続する。
【0031】
このとき、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることになることから、本来測定すべき導体7aと固定子鉄心6との間の誘電正接を正確に測定することが可能になる。つまり、コイルエンド8に導電性部材12を配置することにより、誘電正接を正確に測定することが可能になる。なお、固定子鉄心6はケース2に固定されているため、ケース2を誘電正接測定装置21に接続することによっても、導体7aと固定子鉄心6との間の誘電正接を間接的に測定する構成とすることもできる。
【0032】
また、
図9に示すように、絶縁特性としてコイル7の導体7aと導電性部材12との間の誘電正接を測定する場合には、つまりは、絶縁物7bの誘電正接を測定する場合には、ガード電極として固定子鉄心6を選択し、その固定子鉄心6を接地する。そして、導電性部材12を誘電正接測定装置21の高圧側に接続し、導体7aを誘電正接測定装置21の低圧側に接続する。
【0033】
この場合、導体7aとガード電極とは同じ接地電位になり、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることになることから、本来測定すべきコイル7の導体7aと導電性部材12との間の誘電正接を正確に測定することが可能になる。つまり、コイルエンド8に導電性部材12を配置することにより、誘電正接を正確に測定することが可能になる。なお、固定子鉄心6はケース2に固定されているため、ケース2を接地させることによっても、コイル7の導体7aと導電性部材12との間の誘電正接を間接的に測定する構成とすることもできる。
【0034】
また、
図10に示すように、コイル7の電流急増電圧を測定する場合には、ガード電極として導電性部材12を選択し、その導電性部材12を接地する。また、導体7aを交流電源22の高圧側に接続し、固定子鉄心6を交流電源22の低圧側に接続する。そして、交流電源22を昇圧しながら電流計23で電流を測定することにより、電流急増電圧を測定する。これら交流電源22および電流計23は、測定装置に相当する。
【0035】
この場合、固定子鉄心6とガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべきコイル7の電流急増電圧を正確に測定することが可能になる。つまり、コイルエンド8に導電性部材12を配置することにより、コイル7の電流急増電圧を正確に測定することが可能になる。なお、固定子鉄心6はケース2に固定されているため、ケース2を交流電源22の低圧側に接続することによっても、コイル7の電流急増電圧を間接的に測定する構成とすることもできる。
【0036】
また、
図11に示すように、コイル7の電流急増電圧を測定する場合には、ガード電極として固定子鉄心6を選択し、その固定子鉄心6を接地する。また、導電性部材12を交流電源22の高圧側に接続し、導体7aを交流電源22の低圧側に接続する。そして、交流電源22を昇圧しながら電流計23で電流を測定することにより、電流急増電圧を測定する。
【0037】
この場合、導体7aとガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべきコイル7の電流急増電圧を正確に測定することが可能になる。つまり、コイルエンド8に導電性部材12を配置することにより、コイル7の電流急増電圧を正確に測定することが可能になる。なお、固定子鉄心6はケース2に固定されているため、ケース2を接地させることによっても、コイル7の電流急増電圧を間接的に測定する構成とすることもできる。
【0038】
図3に戻り、選択したガード電極を接地して測定装置と接続すると、測定を実施し(S4)、測定が完了すると導電性部材12を取り外し(S5)、終了する。なお、測定の終了後には、フランジ9を取りつけて不具合が無いかなどの確認が行われる。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
絶縁特性測定方法は、回転電機1のコイル7の絶縁特性を測定するものであって、回転電機1の固定子鉄心6に形成されたコイルエンド8の表面に導電性部材12を配置し、導電性部材12をガード電極として接地して、コイルエンド8の表面を流れる漏れ電流を抑制し、絶縁特性として、コイル7の導体7aと固定子鉄心6または固定子鉄心6が固定されているケース2との間の絶縁抵抗を測定する。
【0040】
このようにコイルエンド8に導電性部材12を配置したことにより、固定子鉄心6またはケース2とガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべき導体7aと固定子鉄心6またはケース2との間の抵抗(Rg)を正確に測定することが可能になる。したがって、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になる。
【0041】
また、絶縁特性測定方法は、回転電機1のコイル7の絶縁特性を測定するものであって、回転電機1の固定子鉄心6に形成されたコイルエンド8の表面に導電性部材12を配置し、固定子鉄心6または固定子鉄心6が固定されているケース2をガード電極として接地して、コイルエンド8の表面を流れる漏れ電流を抑制し、絶縁特性として、コイル7の導体7aと導電性部材12との間の絶縁抵抗を測定する。
【0042】
このようにコイルエンド8に導電性部材12を配置したことにより、導電性部材12とガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべき導体7aと導電性部材12との間の抵抗(Rg)を正確に測定することが可能になる。したがって、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になる。
【0043】
また、絶縁特性測定方法は、回転電機1のコイル7の絶縁特性を測定するものであって、回転電機1の固定子鉄心6に形成されたコイルエンド8の表面に導電性部材12を配置し、導電性部材12をガード電極として接地して、コイルエンド8の表面を流れる漏れ電流を抑制し、絶縁特性として、コイル7の導体7aと固定子鉄心6または固定子鉄心6が固定されているケース2との間の誘電正接を測定する。
【0044】
このようにコイルエンド8に導電性部材12を配置したことにより、固定子鉄心6またはケース2とガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべき導体7aと固定子鉄心6またはケース2との間の誘電正接を正確に測定することが可能になる。したがって、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になる。
【0045】
また、絶縁特性測定方法は、回転電機1のコイル7の絶縁特性を測定するものであって、回転電機1の固定子鉄心6に形成されたコイルエンド8の表面に導電性部材12を配置し、固定子鉄心6または固定子鉄心6が固定されているケース2をガード電極として接地して、コイルエンド8の表面を流れる漏れ電流を抑制し、絶縁特性として、コイル7の導体7aと導電性部材12との間の誘電正接を測定する。
【0046】
このようにコイルエンド8に導電性部材12を配置したことにより、コイル7の導体7aとガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべき導体7aと導電性部材12とのとの間の誘電正接を正確に測定することが可能になる。したがって、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になる。
【0047】
また、絶縁特性測定方法は、回転電機1のコイル7の絶縁特性を測定するものであって、回転電機1の固定子鉄心6に形成されたコイルエンド8の表面に導電性部材12を配置し、導電性部材12をガード電極として接地して、コイルエンド8の表面を流れる漏れ電流を抑制し、コイル7の導体7aと固定子鉄心6または固定子鉄心6が固定されているケース2との間に交流電圧を印加し、絶縁特性として、コイル7の電流急増電圧を測定する。
【0048】
このようにコイルエンド8に導電性部材12を配置したことにより、固定子鉄心6またはケース2とガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべきコイル7の電流急増電圧を正確に測定することが可能になる。したがって、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になる。
【0049】
また、絶縁特性測定方法は、回転電機1のコイル7の絶縁特性を測定するものであって、回転電機1の固定子鉄心6に形成されたコイルエンド8の表面に導電性部材12を配置し、固定子鉄心6または固定子鉄心6が固定されているケース2をガード電極として接地して、コイルエンド8の表面を流れる漏れ電流を抑制し、コイル7の導体7aと導電性部材12との間に交流電圧を印加し、絶縁特性として、コイル7の電流急増電圧を測定する。
【0050】
このようにコイルエンド8に導電性部材12を配置したことにより、導体7aとガード電極とが同じ接地電位になることから、また、絶縁物7bに流れる漏れ電流(Ix)はガード電極を介して接地へ流れることから、本来測定すべきコイル7の電流急増電圧を正確に測定することが可能になる。したがって、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になる。
【0051】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図12および
図13を参照しながら説明する。第2実施形態では、第1実施形態で説明した絶縁特性測定方法を容易に実施できる回転電機について説明する。また、回転電機の基本的な構成、測定方法の主な工程、ならびに、測定装置との接続態様は第1実施形態と共通するため、
図3から
図11も参照しながら説明する。
【0052】
第1実施形態で説明したように、コイルエンド8に導電性部材12を配置することにより、絶縁特性を正確に測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になる。その場合、例えば
図12に示すように、回転電機100のコイルエンド8に、予め導電性部材12を配置する構成とすることができる。例えば、回転電機100では、端子ボックス10側のコイルエンド8の表面に導電性部材12が配置されており、接続部材としての接続線101によって端子ボックス10まで引き出されている。
【0053】
この接続線101は、通常の運転時には、端子ボックス10に電気的に接続された状態で固定されている。そのため、導電性部材12は、通常の運転時にはケース2や固定子鉄心6と同電位になっている。そして、試験時には、端子ボックス10を開放して、接続線101と試験装置とを接続したり、接続線101を接地したりすることによって、例えば第1実施形態で例示した絶縁抵抗の測定、誘電正接の測定、および、電流急増電圧の測定と同様の接続態様で、
図3に示すステップS2からステップS4の工程を実施することができる。つまり、回転電機100は、フランジ9を取り外すことなく、容易に絶縁特性を測定することができる。
【0054】
これにより、絶縁特性の測定を容易に行うことができるとともに、コイル7の汚損の影響を抑制して絶縁特性を測定でき、正確な絶縁特性の評価が可能になるなど、第1実施形態で説明した測定方法と同様の効果を得ることができる。また、通常の運転時には、接続線101はケース2または固定子鉄心6と同電位となる端子ボックス10に固定されていることから、導電性部材12がケース2と同電位となっており、電位が安定しないいわゆる浮いた状態となることを抑制できる。
【0055】
この場合、導電性部材12は、第1実施形態の
図4に示すように例えばコイルエンド8の外周面の表面に全周に渡って配置することができる。また、導電性部材12は、
図5に他の配置態様その1として示したようにコイルエンド8の外周側の表面の一部に配置したり、他の配置態様その2として示したように外周側の表面の複数個所に配置したり、他の配置態様その3として示したように内周側の表面の全周に渡って配置したり、他の配置態様その4として示したように外周側と内周側の表面のそれぞれに配置したり、外周側と内周側の表面の複数個所に配置したりすることができる。
【0056】
また、接続線101は、一方の端部が導電性部材12に固定され、他方の端部が通常の運転時には固定子鉄心6またはケース2と同電位となる箇所に固定され、絶縁特性の測定時には測定装置に接続可能な状態、または、接地可能な状態で設けられている。これにより、回転電機100では、フランジ9を取り外さずに絶縁特性を測定することが可能となり、作業効率を改善することができる。なお、フランジ9を取り外して接続線101を測定装置に接続したり設置したりすることにより絶縁特性を測定することも可能である。
【0057】
また、
図13に他の構成例として示すように、回転電機110は、双方のコイルエンド8に配置した導電性部材12を、固定子鉄心6またはケース2から絶縁した状態で接続する短絡線111を設け、例えば図示左方側の接続線101を端子ボックス10内でフランジ9に着脱可能に接続する構成とすることができる。
【0058】
この場合、フランジ9はケース2に固定されるため、フランジ9とケース2とは同電位になることから、フランジ9をケース2の一部とみなすことができる。すなわち、一方の端部が導電性部材12に固定されている一方、他方の端部が、通常の運転時には固定子鉄心6またはケース2に固定されて、絶縁特性の測定時には測定装置に接続可能に配置されている接続線101を設けた上で、双方のコイルエンド8を短絡線111で短絡した構成とすることができる。
【0059】
このような構成とすることにより、通常の運転時には接続線101をフランジ9に固定しておくことで浮いた状態になることを防止でき、絶縁特性の測定時には接続線101をフランジ9から取り外して接地または測定装置と接続することにより、第1実施形態の
図6から
図11に示したいずれの測定方法によっても絶縁特性を測定することができる。また、フランジ9を取り外す必要が無いことから、容易に絶縁特性を測定することができる。
【0060】
また、短絡線111を用いて各導電性部材12を接続する構成の場合にも、
図5に示したように、導電性部材12をコイルエンド8の外周側の表面の一部に配置したり、外周側の表面の複数個所に配置したり、内周側の表面の全周に渡って配置したり、外周側と内周側の表面のそれぞれに配置したり、外周側と内周側の表面の複数個所に配置したりすることができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
図面中、1は回転電機、2はケース、3は固定子、4は回転子、5は鉄心材、6は固定子鉄心、7はコイル、7aは導体、7bは絶縁物、8はコイルエンド、12は導電性部材、14は金属製部材(導電性部材)、14は金属筒(導電性部材)、100は回転電機、101は接続線(接続部材)、110は回転電機を示す。