(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099332
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/50 20180101AFI20240718BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20240718BHJP
F21V 31/00 20060101ALI20240718BHJP
F21V 15/01 20060101ALI20240718BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240718BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240718BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240718BHJP
【FI】
F21S45/50
F21S45/10
F21V31/00 300
F21V15/01 380
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W102:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003195
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中橋 大祐
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014NA02
3K014NA08
(57)【要約】
【課題】灯室の設計自由度を担保でき、且つ灯室内への異物及び湿気の混入の防止と、灯室内外の圧力差の調整とを両立できる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具1は、ハウジング2及びハウジング2に気密に設けられたレンズ3によって構成された灯室4と、灯室4内に配置された光源5と、を備えている。ハウジング2及びレンズ3の一方には、ハウジング2の背面26bの面積よりも小さい開口面積を有する開口部15が設けられている。開口部15には、灯室4内外の圧力差に応じて伸縮する圧力調整部16が気密に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング及び当該ハウジングに気密に設けられたレンズによって構成された灯室と、
前記灯室内に配置された光源と、を備え、
前記ハウジング及び前記レンズの一方には、前記ハウジングの背面の面積よりも小さい開口面積を有する開口部が設けられ、
前記開口部には、前記灯室内外の圧力差に応じて伸縮する圧力調整部が気密に設けられている車両用灯具。
【請求項2】
前記圧力調整部は、可撓性材料によって構成された袋体である請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記圧力調整部は、可撓性材料によって構成された蛇腹体である請求項1記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記圧力調整部は、前記灯室内に配置されている請求項1記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記圧力調整部は、前記灯室外に配置されている請求項1記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記圧力調整部は、前記ハウジングの前記背面に設けられている請求項1記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記圧力調整部は、前記ハウジングの下面に設けられている請求項1記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記圧力調整部は、前記レンズの下部に設けられている請求項1記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記灯室内には、乾燥剤が配置されている請求項1~8のいずれか一項記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記乾燥剤は、前記圧力調整部に取り付けられている請求項9記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばヘッドライトとして車両に搭載される車両用灯具が知られている。例えば特許文献1に記載の車両用灯具は、レンズ及びハウジングによって構成された灯室と、灯室内に配置されている光源と、を備えている。灯室内の圧力は、例えば光源の点灯及び消灯により変化することがある。この従来の車両用灯具には、上述した灯室内の圧力の変化により生じる灯室内外の圧力差を調整するために、ハウジングの背面に換気孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような車両用灯具では、換気孔を通じて灯室外の空気が灯室内に流入することによって、灯室内外の圧力差が調整される。しかしながら、この換気孔を通じて灯室外の空気が灯室内に流入することで、当該空気と共に異物及び湿気が灯室内に混入することがある。異物が灯室内に混入した場合、当該異物が例えばレンズの内側に付着するおそれがある。また、湿気が灯室内に混入した場合、結露が例えばレンズの内側に生じるおそれがある。異物がレンズの内側に付着した場合又は結露がレンズの内側に生じた場合、光源からの光が異物又は結露により遮られ、車両用灯具として機能が十分に発揮されなくなることが考えられる。灯室外からの異物及び湿気の混入を防止するためには、灯室内の気密を確保する必要がある。
【0005】
一方で、灯室内を気密にする場合、灯室内外の圧力差の調整が困難となる。灯室内外の圧力差が調整されない場合、当該圧力差によりレンズの変形が生じるおそれがある。このため、車両用灯具には、灯室内外の圧力差を調整する圧力調整部の導入が望ましいが、導入にあたっては、上述した灯室内への異物及び湿気の混入の防止に加え、灯室の設計自由度を阻害しないような工夫も必要となる。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、灯室の設計自由度を担保でき、且つ灯室内への異物及び湿気の混入の防止と、灯室内外の圧力差の調整とを両立できる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る車両用灯具は、ハウジング及び当該ハウジングに気密に設けられたレンズによって構成された灯室と、灯室内に配置された光源と、を備え、ハウジング及びレンズの一方には、ハウジングの背面の面積よりも小さい開口面積を有する開口部が設けられ、開口部には、灯室内外の圧力差に応じて伸縮する圧力調整部が気密に設けられている。
【0008】
この車両用灯具では、開口部に気密に設けられた圧力調整部が灯室内外の圧力差に応じて伸縮する。圧力調整部が開口部に気密に設けられていることで、灯室内への異物及び湿気の混入を防止できる。これにより、レンズの内側に、異物が付着すること及び結露が生じることを防止できる。また、圧力調整部の伸縮によって灯室内の内部空間が膨張・収縮することで灯室内外の圧力差が調整され、当該圧力差によるレンズの変形を抑制できる。さらに、この車両用灯具では、開口部の開口面積がハウジングの背面の面積よりも小さくなっている。この構成により、例えば換気孔を用いて灯室内外の圧力差を調整する構成と比較して、開口部の開口面積を抑えることが可能となり、開口部周りを含めた灯室の設計自由度を担保できる。
【0009】
圧力調整部は、可撓性材料によって構成された袋体であってもよい。この場合、袋体の膨張・収縮により、灯室内外の圧力差を好適に解消できる。
【0010】
圧力調整部は、可撓性材料によって構成された蛇腹体であってもよい。この場合、蛇腹体の膨張・収縮により、灯室内外の圧力差を好適に解消できる。
【0011】
圧力調整部は、灯室内に配置されていてもよい。この場合、圧力調整部が灯室内に収まることで、車両用灯具の取付先となる車両の設計自由度を向上できる。
【0012】
圧力調整部は、灯室外に配置されていてもよい。この場合、灯室内の光源などの設計自由度を担保できる。また、圧力調整部の取付時及びメンテナンスの作業性を向上できる。
【0013】
圧力調整部は、ハウジングの背面に設けられていてもよい。この場合、車両用灯具の取付先となる車両の設計自由度への影響を抑えつつ、車両用灯具への圧力調整部の配置が可能となる。
【0014】
圧力調整部は、ハウジングの下面に設けられていてもよい。この場合、車両用灯具の取付先となる車両の設計自由度への影響を抑えつつ、車両用灯具への圧力調整部の配置が可能となる。
【0015】
圧力調整部は、レンズの下部に設けられていてもよい。この場合、車両用灯具の取付先となる車両の設計自由度への影響を抑えつつ、車両用灯具への圧力調整部の配置が可能となる。
【0016】
灯室内には、乾燥剤が配置されていてもよい。この場合、気密の灯室内の湿気を予め除去することで、レンズの内側に結露が生じることをより一層確実に防止できる。
【0017】
乾燥剤は、圧力調整部に取り付けられていてもよい。この場合、圧力調整部と乾燥剤とをユニット化できるため、圧力調整部及び乾燥剤の取付時及びメンテナンス時の作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、灯室の設計自由度を担保でき、且つ灯室内への異物及び湿気の混入の防止と、灯室内外の圧力差の調整とを両立できる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
【
図2】
図1に示した車両用灯具の断面構成を示す図である。
【
図5】第一変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。
【
図6】第二変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。
【
図7】第三変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。
【
図8】第四変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る車両用灯具の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る車両用灯具1の構成を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る車両用灯具の正面図である。
図2は、
図1に示した車両用灯具の断面構成を示す図である。
図3は、
図1に示した車両用灯具の背面図である。車両用灯具1は、例えばヘッドライトとして自動車等の車両に搭載され、搭載された車両の前方を照らす装置である。本実施形態では、車両用灯具1は、車両の前端かつ車両の幅方向外側寄りにおいて、ボディ100とバンパー200との間に位置している。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、車両用灯具1は、ハウジング2及びハウジング2に気密に設けられたレンズ3によって構成された灯室4と、灯室4内に配置された光源5と、を備えている。本実施形態では、光源5には、発光ダイオード(LED)が用いられる。
【0023】
図2に示されるように、ハウジング2は、有底筒形状を呈している。本実施形態では、ハウジング2は、車両後方側に位置する底部21と、車両前方側に位置する開口部22と、を有している。底部21は、灯室4を臨む底面21aと、底面21aとは反対側に位置している背面21bと、を含んでいる。底面21aと背面21bとは、車両の前後方向で互いに対向している。開口部22は、車両の前後方向のうち背面21bから底面21aに向かう方向に開口している。すなわち、開口部22は、車両の前方側に開口している。
【0024】
ハウジング2は、底部21によって連結された上部23及び下部24を、更に有している。上部23は、灯室4を臨む内面23aと、内面23aとは反対側に位置している上面23bと、レンズ3を嵌め込むための溝部23cと、を含んでいる。内面23aと上面23bとは、車両の上下方向で互いに対向している。溝部23cは、車両の前後方向のうち背面21bから底面21aに向かう方向に開口している。
【0025】
下部24は、灯室4を臨む内面24aと、内面24aとは反対側に位置している下面24bと、レンズ3を嵌め込むための溝部24cと、を含んでいる。内面24aと下面24bとは、車両の上下方向で互いに対向している。溝部24cも、溝部23cと同様に、車両の前後方向のうち背面21bから底面21aに向かう方向に開口している。すなわち、溝部23c及び溝部24cは、開口部22と同じ方向に開口している。
【0026】
レンズ3は、光源5からの光を透過するように構成されており、これにより、車両用灯具1が搭載された車両の前方が光源5からの光によって照らされる。
図2に示されるように、レンズ3は、レンズ本体部31と、レンズ本体部31の上側に位置する上部32と、レンズ本体部31の下側に位置する下部33と、を有している。レンズ本体部31は、湾曲した形状を呈していると共にハウジング2の底部21と車両の前後方向で対向している。
【0027】
上部32は、レンズ本体部31の上端から車両の前後方向に延在している。上部32の先端には、ハウジング2の溝部23cに嵌め込まれる取付部32aが設けられている。下部33は、レンズ本体部31の下端から車両の上下方向に延在している。下部33の先端には、車両の前後方向に突出していると共にハウジング2の溝部23cに嵌め込まれる取付部33aが設けられている。
【0028】
上述したように、レンズ3は、ハウジング2に気密に設けられている。ハウジング2にレンズ3を気密に設ける際には、まず、取付部32aを溝部23cに嵌め込み、取付部33aを溝部24cに嵌め込む。続いて、取付部32a,33aが対応する溝部23c,24cに嵌め込まれた状態で、全周にわたって防水処理及び密閉処理を施すことによって、ハウジング2にレンズ3が気密に設けられる。これらのハウジング2及びレンズ3によって灯室4が構成されている。
【0029】
灯室4内には、ブラケット6と、制御部7と、リフレクタ8と、光軸支点9と、光軸調整ネジ10と、インナーパネル11と、が更に配置されている。
【0030】
ブラケット6は、灯室4内において光源5を支持する。本実施形態では、ブラケット6は、灯室4の上部に設けられている。したがって、光源5は、灯室4内の上部において、ブラケット6によって支持されている。
【0031】
制御部7は、光源5に接続されており、光源5を制御する。制御部7は、例えば光源5の点灯及び消灯を制御する。本実施形態では、制御部7は、ハウジング2の下部24に配置されている。光源5が発光ダイオードである本実施形態では、制御部7はLEDドライバである。
【0032】
リフレクタ8は、灯室4内において光源5より下方に配置されており、光源5からの光を反射してレンズ本体部31に向かわせる。リフレクタ8の一端は光軸支点9に接続されており、リフレクタ8の他端は光軸調整ネジ10に接続されている。光軸調整ネジ10は回転可能に構成されている。車両用灯具1では、光軸調整ネジ10を回転させることで、光軸支点9を中心として、リフレクタ8の上下方向に対する角度が調整される。これにより、光源5からレンズ本体部31に向かう光の光軸が調整される。
【0033】
インナーパネル11は、ハウジング2とリフレクタ8との間の隙間を隠すための部材である。本実施形態では、
図1に示されるように、インナーパネル11は、車両前方から見て、リフレクタ8の周囲を囲むように配置されている。これにより、車両用灯具1を車両前方から見た場合に、灯室4内に配置されているリフレクタ8以外の部材が視認されないように目隠しされる。
【0034】
灯室4内には、ライトガイド12と、リフレクタ13と、インナーレンズ14と、が更に配置されている。
【0035】
ライトガイド12は、光源5とは異なる別の光源からの光を導光するための部材である。本実施形態では、ライトガイド12は、上記別の光源からの光をインナーレンズ14に導光する。ライトガイド12は、例えば車幅を知らせるためのクリアランスランプ又は昼間に点灯させるデイタイムランニングランプとして機能する。本実施形態では、上記別の光源には、発光ダイオード(LED)が用いられる。上記別の光源には、例えば、半導体レーザ、又は蛍光灯を用いてもよい。上記別の光源は、制御部7とは異なる、別の制御部に接続されており、当該制御部によって、点灯及び消灯が制御されている。
【0036】
リフレクタ13は、ライトガイド12の後方において、ライトガイド12の後部を囲むように配置されている。リフレクタ13は、ライトガイド12からの光を反射してインナーレンズ14に導光する。リフレクタ13によってライトガイド12から車両後方に向かう光が前方に反射されるため、ライトガイド12からの光がインナーレンズ14に効率的に導光される。
【0037】
インナーレンズ14は、灯室4内においてライトガイド12の前方に配置されている。インナーレンズ14は、車両前方から見た場合に、
図1に示されるように、車両の幅方向に延在するように設けられている。インナーレンズ14は、ライトガイド12からの光を透過させ、レンズ3のレンズ本体部31へライトガイド12からの光を照射する。すなわち、ライトガイド12からの光は、インナーレンズ14を介して、レンズ本体部31に照射される。
【0038】
車両用灯具1において、ハウジング2又はレンズ3の一方には、開口部15が設けられている。本実施形態では、
図2に示されるように、開口部15は、ハウジング2の背面21bに設けられている。車両後方から開口部15及び背面21bを見た場合に、開口部15は、例えば背面21bの略中央に設けられていると共に円形状を呈している。開口部15は、円形状以外を呈していてもよい。また、
図3に示されるように、開口部15は、ハウジング2の背面21bの面積よりも小さい開口面積を有している。
【0039】
開口部15には、灯室4内外の圧力差に応じて伸縮する圧力調整部16が気密に設けられている。
図3に示されるように、本実施形態では、圧力調整部16は、灯室4外に配置されている。本実施形態では、圧力調整部16の内部空間は、開口部15を介して、灯室4と連通している。したがって、本実施形態では、灯室4内の内部空間は、ハウジング2及びレンズ3によって画成される内部空間に圧力調整部16の内部空間を加算した容積を有している。
【0040】
上述したように、圧力調整部16は、灯室4内外の圧力差に応じて伸縮することで、当該圧力差を調整する。この機能を実現するために、本実施形態では、圧力調整部16は、可撓性材料によって構成された袋体である。可撓性材料は、例えばゴム材料を含む。
【0041】
さらに、車両用灯具1では、灯室4内を除湿するために、乾燥剤17が灯室4内に配置されている。本実施形態では、
図2に示されるように、乾燥剤17は、圧力調整部16に取り付けられている。具体的には、乾燥剤17は、圧力調整部16の内面に取り付けられている。乾燥剤17は、吸湿特性を有する吸湿材料から構成されている。吸湿材料としては、例えばシリカゲルが用いられる。
【0042】
次に、
図4を参照して、圧力調整部16が灯室4内外の圧力差を調整する際の作用について説明する。
図4は、圧力調整部の作用を説明する図である。
【0043】
上述したように、圧力調整部16は、灯室4内外の圧力差に応じて伸縮する。具体的には、圧力調整部16は、その形状が車両後方から開口部15に向けて収縮した収縮状態16Aと、その形状が開口部15から車両後方に向けて膨張した膨張状態16Bと、に変形する。
【0044】
例えば、光源5の点灯時における熱によって、灯室4内の空気が膨張し灯室4の内圧が上昇した場合には、圧力調整部16が膨張状態16Bとなり、その容積が大きくなる。上述したように、本実施形態では、圧力調整部16の内部空間は、開口部15を介して、灯室4と連通している。したがって、圧力調整部16が膨張状態16Bとなり、その容積が大きくなることで、灯室4内の内部空間が膨張し、灯室4内外の圧力差が吸収される。
【0045】
また、光源5が消灯したことによって、灯室4内の空気が収縮し灯室4の内圧が低下した場合には、圧力調整部16が収縮状態16Aとなり、その容積が小さくなる。これにより、灯室4内の内部空間が収縮し、灯室4内外の圧力差が吸収される。このようにして、圧力調整部16が灯室4内外の圧力差に応じて伸縮することで、当該圧力差の調整が行われる。
【0046】
以上説明したように、車両用灯具1では、開口部15に気密に設けられた圧力調整部16が灯室4内外の圧力差に応じて伸縮する。圧力調整部16が開口部15に気密に設けられていることで、灯室4内への異物及び湿気の混入を防止できる。これにより、レンズの内側に異物が付着すること及び結露が生じることを防止できる。また、圧力調整部16の伸縮によって灯室4内の内部空間が膨張・収縮することで灯室4内外の圧力差が調整され、当該圧力差によるレンズ3の変形を抑制できる。さらに、車両用灯具1では、開口部15の開口面積がハウジング2の背面21bの面積よりも小さくなっている。車両用灯具1では、例えば換気孔を用いて灯室4内外の圧力差の調整と比較して、開口部15における通気量を抑えることができる。したがって、この構成により、例えば換気孔を用いて灯室4内外の圧力差を調整する構成と比較して、開口部15の開口面積を抑えることが可能となり、開口部15周りを含めた灯室4の設計自由度を担保できる。
【0047】
車両用灯具1では、光源5には、交換の必要がない発光ダイオード(LED)が用いられる。光源5として交換が必要な光源を用いた場合、光源5を交換するための開口部を別途設ける必要がある。一方で、車両用灯具1では、光源5を交換するための開口部を別途設ける必要がないため、灯室4の設計自由度を確実に担保できる。さらに、光源5を交換する際には、灯室4内に外気と共に異物が灯室4内に混入するおそれがある。したがって、光源5を交換する必要のない車両用灯具1では、灯室4内への異物の混入を確実に防止できる。
【0048】
車両用灯具1では、圧力調整部16は、可撓性材料によって構成された袋体である。この場合、袋体の膨張・収縮により、灯室4内外の圧力差を好適に解消できる。
【0049】
車両用灯具1では、圧力調整部16は、灯室4外に配置されている。この場合、灯室4内の光源5などの設計自由度を担保できる。また、圧力調整部16の取付時及びメンテナンスの作業性を向上できる。
【0050】
車両用灯具1では、圧力調整部16は、ハウジング2の背面21bに設けられている。この場合、車両用灯具1の取付先となる車両の設計自由度への影響を抑えつつ、車両用灯具1への圧力調整部16の配置が可能となる。
【0051】
車両用灯具1では、灯室4内には、乾燥剤17が配置されている。この場合、気密の灯室4内の湿気を予め除去することで、レンズ3の内側に結露が生じることをより一層確実に防止できる。
【0052】
車両用灯具1では、乾燥剤17は、圧力調整部16に取り付けられていてもよい。この場合、圧力調整部16と乾燥剤17とをユニット化できるため、圧力調整部16及び乾燥剤17の取付時及びメンテナンス時の作業性を向上できる。
【0053】
次に、
図5を参照して、本実施形態の第一変形例に係る車両用灯具1Aの変形例を説明する。
図5は、第一変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。第一変形例に係る車両用灯具1Aは、概ね、上述した車両用灯具1と類似又は同じである。しかしながら、車両用灯具1Aは、圧力調整部16の配置及び乾燥剤17の配置に関して、車両用灯具1と相違する。以下、車両用灯具1と車両用灯具1Aとの相違点を主として説明する。
【0054】
図5に示されるように、本変形例では、圧力調整部16は、灯室4内に配置されている。本変形例では、圧力調整部16の内部空間は、開口部15を介して、灯室4外の空間と連通している。すなわち、圧力調整部16の内部空間と灯室4とは連通していない。したがって、本変形例では、灯室4の内部空間は、ハウジング2及びレンズ3によって画成される内部空間から圧力調整部16の内部空間を減算した容積を有している。
【0055】
本変形例においても、圧力調整部16は、上述した実施形態と同様に、収縮状態16Aと膨張状態16Bとに変形することで、灯室4内外の圧力差を調整する。しかしながら、圧力調整部16の内部空間と灯室4とは連通していないので、収縮状態16A及び膨張状態16Bへの変形による灯室4内外の圧力差の調整方法が上述した実施形態と相違する。
【0056】
例えば、灯室4の内圧が上昇した場合には、圧力調整部16が収縮状態16Aとなり、その容積が小さくなる。これにより、灯室4内の内部空間が膨張し、灯室4内外の圧力差が吸収される。また、灯室4の内圧が低下した場合には、圧力調整部16が膨張状態16Bとなり、その容積が大きくなる。これにより、灯室4内の内部空間が収縮し、灯室4内外の圧力差が吸収される。
【0057】
本変形例に示されるように、圧力調整部16の内部空間が灯室4外の空間と連通している場合には、乾燥剤17は、圧力調整部16に取り付けられていなくてもよい。例えば、乾燥剤17は、ハウジング2の下部24に配置されていてもよい。本変形例では、
図5に示されるように、乾燥剤17は、下部24の内面24a上に配置されている。あるいは、乾燥剤17は、圧力調整部16の外面に取り付けられていてもよい。この場合、乾燥剤17が圧力調整部16の内面に取り付けられた場合と同様に、圧力調整部16と乾燥剤17はユニット化されることとなる。
【0058】
本変形例では、上述した実施形態と同様の作用効果が奏されることに加え、圧力調整部16が灯室4内に収まることで、車両用灯具1の取付先となる車両の設計自由度を向上できる。
【0059】
次に、
図6を参照して、本実施形態の第二変形例に係る車両用灯具1Bの変形例を説明する。
図6は、第二変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。第二変形例に係る車両用灯具1Bは、概ね、上述した車両用灯具1と類似又は同じである。しかしながら、車両用灯具1Bは、圧力調整部16の配置に関して、車両用灯具1と相違する。以下、車両用灯具1と車両用灯具1Bとの相違点を主として説明する。
【0060】
図6に示されるように、本変形例では、開口部15が、ハウジング2の下部24に設けられている。具体的には、開口部15は、下部24の下面24bに設けられている。したがって、本変形例では、圧力調整部16は、ハウジング2の下面24bに設けられている。本変形例では、灯室4内外の圧力差の調整する際には、圧力調整部16が、収縮状態16Aにおいて車両下方から開口部15に向けて収縮し、膨張状態15Bにおいて開口部15から車両下方に向けて膨張する。
【0061】
車両用灯具1Bでは、圧力調整部16は、ハウジング2の下面24bに設けられている。これにより、上述した実施形態と同様の作用効果が奏されることに加え、車両用灯具1の取付先となる車両の設計自由度への影響を抑えつつ、車両用灯具1への圧力調整部16の配置が可能となる。
【0062】
次に、
図7を参照して、本実施形態の第三変形例に係る車両用灯具1Cの変形例を説明する。
図7は、第三変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。第三変形例に係る車両用灯具1Cは、概ね、上述した車両用灯具1と類似又は同じである。しかしながら、車両用灯具1Cは、圧力調整部16の配置に関して、車両用灯具1と相違する。以下、車両用灯具1と車両用灯具1Cとの相違点を主として説明する。
【0063】
図7に示されるように、本変形例では、開口部15が、レンズ3に設けられている。具体的には、開口部15は、レンズ3の下部33に設けられている。したがって、本変形例では、圧力調整部16は、レンズ3の下部33に設けられている。本変形例では、灯室4内外の圧力差の調整する際には、圧力調整部16が、収縮状態16Aにおいて車両前方から開口部15に向けて収縮し、膨張状態15Bにおいて開口部15から車両前方に向けて膨張する。
【0064】
車両用灯具1Cでは、圧力調整部16は、レンズ3の下部33に設けられている。これにより、上述した実施形態と同様の作用効果が奏されることに加え、車両用灯具1Cの取付先となる車両の設計自由度への影響を抑えつつ、車両用灯具1Cへの圧力調整部16の配置が可能となる。
【0065】
次に、
図8を参照して、本実施形態の第四変形例に係る車両用灯具1Dの変形例を説明する。
図8は、第四変形例に係る車両用灯具の断面構成を示す図である。第四変形例に係る車両用灯具1Dは、概ね、上述した車両用灯具1と類似又は同じである。しかしながら、車両用灯具1Dは、圧力調整部の構成に関して、車両用灯具1と相違する。以下、車両用灯具1と車両用灯具1Dとの相違点を主として説明する。
【0066】
図8に示されるように、本変形例では、開口部15には、圧力調整部16Dが設けられている。圧力調整部16Dは、可撓性材料によって構成された蛇腹体である。本変形例においても、圧力調整部16Dは、灯室4内外の圧力差に応じて伸縮する。図示は省略するが、圧力調整部16Dも、圧力調整部16と同様に、その形状が車両後方から開口部15に向けて収縮した収縮状態16D
Aと、その形状が開口部15から車両後方に向けて膨張した膨張状態16D
Bと、に変形する。したがって、本変形例においても、圧力調整部16Dが灯室4内外の圧力差に応じて伸縮することで、当該圧力差の調整が行われる。
【0067】
車両用灯具1Dでは、圧力調整部16Dは、可撓性材料によって構成された蛇腹体である。この場合、蛇腹体の膨張・収縮により、灯室4内外の圧力差を好適に解消できる。
【0068】
以上、本開示の実施形態及び各変形例について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0069】
上述した実施形態及び各変形例では、光源5には、発光ダイオード(LED)が用いられているが、光源5には、半導体レーザ、蛍光灯などの他の光源装置が用いられてもよい。また、光源5に交換が必要な光源が用いられた場合には、車両用灯具1は、例えばハウジング2の底面21aに設けられた光源5の交換用の開口部と、当該開口部に気密に設けられたカバー部材と、更に備えていてもよい。この場合、開口部15は、上記カバー部材に設けられていてもよい。
【0070】
上述した実施形態及び各変形例では、車両用灯具1に開口部15を単体で設けているが、車両用灯具1には、複数の開口部15が設けられていてもよい。車両用灯具1に複数の開口部15が設けられている場合、複数の開口部15のそれぞれに圧力調整部16が気密に設けられていてもよい。この場合、複数の開口部15及び複数の圧力調整部16は、ハウジング2の背面21bに設けられてもよく、ハウジング2の下面24bに設けられてもよく、レンズ3の下部33に設けられてもよい。あるいは、これらの配置を組み合わせてもよい。また、複数の開口部15に対して、一つの圧力調整部16を気密に設ける構成としてもよい。
【0071】
上述した実施形態及び各変形例では、圧力調整部16は、ハウジング2の背面21b、ハウジング2の下面24b、又はレンズ3の下部33に設けられている例を説明したが、圧力調整部16が設けられる位置は上述した位置に限定されない。例えば、圧力調整部16は、ハウジング2の上面23b又はレンズ3の上部32に設けられていてもよい。
【0072】
本開示の要旨は、以下の[1]~[10]のとおりである。
[1]ハウジング及び当該ハウジングに気密に設けられたレンズによって構成された灯室と、前記灯室内に配置された光源と、を備え、前記ハウジング及び前記レンズの一方には、前記ハウジングの背面の面積よりも小さい開口面積を有する開口部が設けられ、前記開口部には、前記灯室内外の圧力差に応じて伸縮する圧力調整部が気密に設けられている車両用灯具。
[2]前記圧力調整部は、可撓性材料によって構成された袋体である[1]記載の車両用灯具。
[3]前記圧力調整部は、可撓性材料によって構成された蛇腹体である[1]記載の車両用灯具。
[4]前記圧力調整部は、前記灯室内に配置されている[1]~[3]のいずれか記載の車両用灯具。
[5]前記圧力調整部は、前記灯室外に配置されている[1]~[3]のいずれか記載の記載の車両用灯具。
[6]前記圧力調整部は、前記ハウジングの前記背面に設けられている[1]~[5]のいずれか記載の車両用灯具。
[7]前記圧力調整部は、前記ハウジングの下面に設けられている[1]~[5]のいずれか記載の車両用灯具。
[8]前記圧力調整部は、前記レンズの下部に設けられている[1]~[5]のいずれか記載の車両用灯具。
[9]前記灯室内には、乾燥剤が配置されている[1]~[8]のいずれか記載の車両用灯具。
[10]前記乾燥剤は、前記圧力調整部に取り付けられている[9]記載の車両用灯具。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B,1C,1D…車両用灯具、2…ハウジング、3…レンズ、4…灯室、5…光源、15…開口部、16,16D…圧力調整部、17…乾燥剤、21b…ハウジングの背面、24b…ハウジングの下面、33…レンズの下部。