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特開2024-99335障害物検出装置及び障害物検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099335
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】障害物検出装置及び障害物検出システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240718BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240718BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240718BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20240718BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E02F9/24 H
G08G1/16 C
H04N7/18 J
B66C13/00 D
B66C23/88 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003200
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】井澤 敏泰
【テーマコード(参考)】
2D015
3F205
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB06
2D015GB07
2D015HA03
3F205AA03
3F205AA05
3F205AB01
5C054CA04
5C054CC02
5C054DA07
5C054FC12
5C054FE28
5C054FF06
5C054HA30
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】障害物の検出に要する時間を短縮すること。
【解決手段】障害物検出装置30は、本体部と本体部に対して移動可能に設けられた可動部とを備える作業機械の周辺の障害物を検出する装置であって、可動部の移動方向を特定する特定部31と、可動部の移動範囲を撮像可能に設けられた複数の撮像装置のうち、移動方向に存在する撮像装置の出力を用いて障害物を検出する検出部33と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と前記本体部に対して移動可能に設けられた可動部とを備える作業機械の周辺の障害物を検出する障害物検出装置であって、
前記可動部の移動方向を特定する特定部と、
前記可動部の移動範囲を撮像可能に設けられた複数の撮像装置のうち、前記移動方向に存在する撮像装置の出力を用いて障害物を検出する検出部と、
を備える、障害物検出装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記複数の撮像装置のうちの、前記可動部に設けられた第1撮像装置によって撮像された撮像画像に基づいて前記移動方向を特定する、請求項1に記載の障害物検出装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記複数の撮像装置のうちの、前記可動部を撮像可能な第1撮像装置によって撮像された撮像画像に基づいて前記移動方向を特定する、請求項1に記載の障害物検出装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の障害物検出装置と、
前記複数の撮像装置と、
を備える、障害物検出システム。
【請求項5】
前記障害物検出装置は、前記複数の撮像装置のうちの1つの撮像装置に搭載され、
前記複数の撮像装置は、互いに通信可能に接続されている、請求項4に記載の障害物検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、障害物検出装置及び障害物検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の周辺を監視する技術が知られている。特許文献1には、作業機械に搭載された複数の撮像装置によって撮像された撮像画像を用いて統合データ群を作成し、統合データ群に基づき監視エリア内の監視物体の検出を行う周辺監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-85617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の周辺監視システムでは、すべての撮像装置によって撮像された撮像画像を統合する必要があるので、処理負荷が高く、障害物の検出に時間が掛かるおそれがある。
【0005】
本開示は、障害物の検出に要する時間を短縮可能な障害物検出装置及び障害物検出システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る障害物検出装置は、本体部と本体部に対して移動可能に設けられた可動部とを備える作業機械の周辺の障害物を検出する装置である。この障害物検出装置は、可動部の移動方向を特定する特定部と、可動部の移動範囲を撮像可能に設けられた複数の撮像装置のうち、移動方向に存在する撮像装置の出力を用いて障害物を検出する検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、障害物の検出に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る障害物検出装置を含む障害物検出システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、図1に示される障害物検出システムの適用例を示す図である。
図3図3は、図1に示される可動部に設けられた撮像装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、図1に示される可動部に設けられた撮像装置の機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、図1に示される本体部に設けられた撮像装置の機能構成の一例を示す図である。
図6図6は、図1に示される障害物検出システムにおける障害物検出方法の一例を示すシーケンス図である。
図7図7は、別の実施形態に係る障害物検出装置を含む障害物検出システムの概略構成を示す図である。
図8図8は、図7に示される撮像装置の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]実施形態の概要
本開示の一側面に係る障害物検出装置は、本体部と本体部に対して移動可能に設けられた可動部とを備える作業機械の周辺の障害物を検出する装置である。この障害物検出装置は、可動部の移動方向を特定する特定部と、可動部の移動範囲を撮像可能に設けられた複数の撮像装置のうち、移動方向に存在する撮像装置の出力を用いて障害物を検出する検出部と、を備える。
【0010】
この障害物検出装置においては、可動部の移動方向が特定され、複数の撮像装置のうち、可動部の移動方向に存在する撮像装置の出力を用いて障害物が検出される。したがって、障害物検出装置はすべての撮像装置によって撮像された撮像画像を処理する必要が無いので、障害物検出装置の処理負荷を軽減することができる。その結果、障害物の検出に要する時間を短縮することが可能となる。
【0011】
特定部は、複数の撮像装置のうちの、可動部に設けられた第1撮像装置によって撮像された撮像画像に基づいて移動方向を特定してもよい。例えば、可動部を撮像することによって可動部の移動方向を特定することが考えられる。この場合、可動部の移動範囲が大きい場合には、可動部の移動方向を特定するために複数台の撮像装置が必要になる可能性がある。これに対し、上記構成によれば、第1撮像装置が可動部に設けられるだけで、可動部の移動方向を特定することができる。
【0012】
特定部は、複数の撮像装置のうちの、可動部を撮像可能な第1撮像装置によって撮像された撮像画像に基づいて移動方向を特定してもよい。この場合、撮像画像は可動部を撮像することによって得られるので、撮像画像には可動部が含まれる。したがって、撮像画像から特徴点が抽出される可能性が高いので、可動部の移動方向をより確実に特定することができる。
【0013】
本開示の別の側面に係る障害物検出システムは、上記障害物検出装置と、複数の撮像装置と、を備える。
【0014】
この障害物検出システムは上記障害物検出装置を備えるので、障害物検出システムにおいても障害物の検出に要する時間を短縮することが可能となる。
【0015】
障害物検出装置は、複数の撮像装置のうちの1つの撮像装置に搭載されてもよい。複数の撮像装置は、互いに通信可能に接続されてもよい。この場合、複数の撮像装置が通信可能に接続されているローカルのネットワーク内で障害物検出の一連の処理を行うことができる。したがって、処理速度を向上させることが可能となる。その結果、障害物の検出に要する時間を更に短縮することが可能となる。
【0016】
[2]実施形態の例示
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0017】
図1及び図2を参照しながら、一実施形態に係る障害物検出装置を含む障害物検出システムを説明する。図1は、一実施形態に係る障害物検出装置を含む障害物検出システムの概略構成を示す図である。図2は、図1に示される障害物検出システムの適用例を示す図である。図1に示される障害物検出システム1は、作業機械Mの周辺の障害物を検出するためのシステムである。障害物の例としては、作業者及び車両が挙げられる。
【0018】
作業機械Mは、土木及び建築の作業(工事)に用いられる機械である。作業機械Mは、本体部M1と、可動部M2と、を含む。本体部M1は、可動部M2を支持する部分である。可動部M2は、本体部M1に対して移動可能に本体部M1に設けられた部分である。このような作業機械Mの例としては、クレーン、ショベル、及びブルドーザが挙げられる。
【0019】
障害物検出システム1は、互いに通信可能に接続された複数の撮像装置を含む。本実施形態では、複数の撮像装置は、撮像装置10(第1撮像装置)と、複数(本実施形態では、3台)の撮像装置20と、を含む。撮像装置10と複数の撮像装置20とは、例えば、メッシュ型の無線ネットワークNWで接続されている。
【0020】
撮像装置10は、可動部M2に設けられている。撮像装置10は、可動部M2の移動方向Dを特定するために用いられる。可動部M2の移動方向Dは、可動部M2及び可動部M2によって運搬される運搬物のうち、作業機械Mの周辺に存在する障害物と干渉(衝突)し得る部分の移動方向を意味する。撮像装置10は、可動部M2に固定されており、可動部M2とともに移動する。撮像装置10の詳細については後述する。
【0021】
複数の撮像装置20は、可動部M2の周辺に分散配置されている。各撮像装置20は、本体部M1に設けられている。撮像装置20は、可動部M2及び可動部M2によって運搬される運搬物のうち、作業機械Mの周辺に存在する障害物と干渉(衝突)し得る部分が移動可能な移動範囲を撮像可能に設けられている。各撮像装置20は、上記移動範囲の一部を撮像しており、すべての撮像装置20によって上記移動範囲全体が撮像される。撮像装置20の台数は、上記移動範囲と各撮像装置20の撮像範囲とに応じて適宜変更され得る。撮像装置20の詳細については後述する。
【0022】
図2には、作業機械Mがタワークレーンである場合の撮像装置10及び撮像装置20の配置例が示されている。この例では、本体部M1は、タワークレーンを支持するマストM11と、マストM11に沿って可動部M2を昇降させる昇降フレームM12と、を含む。可動部M2は、昇降フレームM12上に設けられた旋回体M21と、旋回体M21と一体に構成されている運転室M22と、旋回体M21から延びるジブM23と、ジブM23の先端から垂れ下がるフックM24と、を含む。撮像装置10は、運転室M22の上に設けられ、複数の撮像装置20は、昇降フレームM12に設けられる。撮像装置10は、運転室M22の内部に設けられてもよい。
【0023】
次に、図3及び図4を参照しながら、撮像装置10の詳細を説明する。図3は、図1に示される可動部に設けられた撮像装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図4は、図1に示される可動部に設けられた撮像装置の機能構成の一例を示す図である。
【0024】
図3に示されるように、撮像装置10は、制御装置101と、記憶装置102と、カメラ103と、モーションセンサ104と、入力装置105と、無線通信モジュール106と、出力装置107と、を含む。制御装置101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び各種入出力用のインターフェースなどを含むコンピュータによって構成される。記憶装置102は、ハードディスク及びフラッシュメモリ等によって構成される補助記憶装置を含む。
【0025】
カメラ103は、レンズ及び撮像素子等の複数の光学系の部品と、それらを駆動制御する複数の制御系の回路と、撮像素子によって取得された撮像画像を表す電気信号をデジタル信号である画像信号に変換する信号処理系の回路部と、を含む。撮像画像は、動画像である。カメラ103により取得される撮像画像(各フレーム)は、例えば、各画素(ピクセル)の画素値(例えば、輝度、明度及び色彩等の画素に関する数値)を示す画像データとして取得される。
【0026】
モーションセンサ104は、撮像装置10の動きを検出するセンサである。モーションセンサ104の例としては、角速度センサ及び加速度センサが挙げられる。入力装置105は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び音声入力用マイク等によって構成される。無線通信モジュール106は、複数の撮像装置20と無線通信を行うためのモジュールである。出力装置107は、ディスプレイ等によって構成される。
【0027】
例えば、制御装置101のROMに格納されている障害物検出プログラムがRAM上にロードされてCPUによって実行されることにより、制御装置101が障害物検出装置30として機能する。言い換えると、障害物検出システム1は、障害物検出装置30を更に備えており、障害物検出装置30は、複数の撮像装置のうちの撮像装置10に搭載されている。
【0028】
障害物検出装置30は、作業機械Mの周辺の障害物を検出する装置である。図4に示されるように、障害物検出装置30は、機能的な構成要素として、特定部31と、決定部32と、検出部33と、出力部34と、を含む。後述の障害物検出方法の説明において、各機能部の機能(動作)を詳細に説明するので、ここでは各機能部の機能を簡単に説明する。
【0029】
特定部31は、可動部M2の移動方向Dを特定する機能部である。特定部31は、撮像装置10のカメラ103によって撮像された撮像画像(の各フレーム)に基づいて、可動部M2の移動方向Dを特定する。
【0030】
決定部32は、可動部M2の移動方向Dに基づいて、複数の撮像装置20の中から対象撮像装置を決定する機能部である。対象撮像装置は、出力が有効化される撮像装置20である。
【0031】
検出部33は、対象撮像装置の出力を用いて障害物を検出する機能部である。具体的には、検出部33は、解析結果の取得要求を対象撮像装置に送信し、対象撮像装置から解析結果を受信する。検出部33は、対象撮像装置の出力として解析結果を用いて、移動方向Dにおいて可動部M2の下流に障害物が存在するか否かを判定し、障害物の検出結果を生成する。
【0032】
出力部34は、障害物の検出結果を出力する機能部である。出力部34は、障害物の検出結果に基づいて、障害物検出装置30の外部に設けられた装置(外部装置)を制御する。
【0033】
次に、図5を参照しながら、撮像装置20の詳細を説明する。図5は、図1に示される本体部に設けられた撮像装置の機能構成の一例を示す図である。
【0034】
撮像装置20は、撮像装置10と同様のハードウェア構成を有する。撮像装置20は、モーションセンサ104を含んでいなくてもよい。例えば、制御装置101のROMに格納されている解析プログラムがRAM上にロードされてCPUによって実行されることにより、制御装置101が解析装置40として機能する。言い換えると、障害物検出システム1は、解析装置40を更に備えており、解析装置40は、各撮像装置20に搭載されている。
【0035】
解析装置40は、撮像装置20のカメラ103によって撮像された撮像画像を解析する装置である。図5に示されるように、解析装置40は、機能的な構成要素として、解析部41と、出力部42と、を含む。後述の障害物検出方法の説明において、各機能部の機能(動作)を詳細に説明するので、ここでは各機能部の機能を簡単に説明する。
【0036】
解析部41は、撮像装置20のカメラ103によって撮像された撮像画像を解析する機能部である。解析部41は、障害物が存在するか否かを示す解析結果を生成する。
【0037】
出力部42は、解析結果を障害物検出装置30に送信(出力)する機能部である。出力部42は、解析部41によって障害物が存在すると判定された場合、撮像画像を撮像装置20の記憶装置102に出力し、撮像画像を撮像装置20の記憶装置102に保存してもよい。
【0038】
次に、図6を参照しながら、障害物検出システム1における障害物検出方法を説明する。図6は、図1に示される障害物検出システムにおける障害物検出方法の一例を示すシーケンス図である。図6に示される一連の処理は、例えば、作業機械Mに電源が投入されることによって開始される。障害物検出システム1が動作している間、撮像装置10及び撮像装置20のカメラ103は、連続的に撮像を行っている。なお、図1に示される3台の撮像装置20を区別するために、図1の右側の撮像装置20を「撮像装置20A」と称し、図1の下側の撮像装置20を「撮像装置20B」と称し、図1の左側の撮像装置20を「撮像装置20C」と称する。
【0039】
図6に示されるように、まず、撮像装置10(障害物検出装置30)の特定部31が可動部M2の移動方向Dを特定する(ステップS1)。ステップS1では、特定部31は、撮像装置10のカメラ103によって撮像された撮像画像(の各フレーム)に基づいて、可動部M2の移動方向Dを特定する。例えば、特定部31は、オプティカルフロー法及びフレーム間差分法などにより、可動部M2の移動方向Dを特定する。特定部31は、撮像画像から特徴点を抽出することができない場合には、モーションセンサ104によって検出された動きに基づいて、可動部M2の移動方向Dを特定してもよい。そして、特定部31は、可動部M2の移動方向Dを示す移動方向情報を決定部32に出力する。
【0040】
各撮像装置20においては、解析装置40の解析部41が、撮像装置20のカメラ103によって撮像された撮像画像を常時解析している(ステップS2)。解析部41は、例えば、ディープラーニングにより撮像画像を解析し、障害物が存在するか否かを判定する。解析部41は、撮像画像のうちの予め定められた検出エリアに障害物が存在するか否かを判定してもよい。そして、解析部41は、解析結果を生成する。このとき、解析部41によって障害物が存在すると判定された場合、出力部42は、撮像画像を記憶装置102に出力し、撮像画像を記憶装置102に保存してもよい。
【0041】
続いて、決定部32は、特定部31から移動方向情報を受け取ると、可動部M2の移動方向Dに基づいて、複数の撮像装置20の中から対象撮像装置を決定する(ステップS3)。決定部32は、例えば、複数の撮像装置20のうち、可動部M2の移動方向Dに存在する撮像装置20を対象撮像装置として決定する。ここで、障害物検出装置30には、各撮像装置20の位置情報が予め登録されている。作業機械Mは可動部M2の現在の位置を示す位置情報を有しているので、決定部32は、入力装置105を介して作業機械Mから可動部M2の現在の位置を示す位置情報を取得する。
【0042】
決定部32は、可動部M2の位置及び可動部M2の移動方向Dから、移動方向Dにおいて可動部M2の下流に位置する撮像装置20を対象撮像装置として決定する。そして、決定部32は、対象撮像装置を識別可能な識別情報を検出部33に出力する。ここでは、撮像装置20A及び撮像装置20Bが対象撮像装置として決定されたと仮定して、以下の説明を行う。
【0043】
続いて、検出部33は、決定部32から対象撮像装置の識別情報を受け取ると、識別情報によって識別される撮像装置に取得要求を送信する(ステップS4)。そして、撮像装置20A及び撮像装置20Bが取得要求を受信すると、各解析装置40の出力部42は、解析結果を撮像装置10(障害物検出装置30)に送信する(ステップS5)。
【0044】
続いて、撮像装置10(障害物検出装置30)の検出部33は、撮像装置20A及び撮像装置20Bから解析結果を受信すると、解析結果に基づいて、障害物を検出する(ステップS6)。ステップS6では、検出部33は、移動方向Dにおいて可動部M2の下流に障害物が存在するか否かを判定し、障害物が存在するか否かを示す検出結果を生成する。例えば、いずれかの解析結果が、障害物が存在することを示す場合に、検出部33は、移動方向Dにおいて可動部M2の下流に障害物が存在すると判定し、障害物が存在することを示す検出結果を生成する。すべての解析結果が、障害物が存在しないことを示す場合に、検出部33は、移動方向Dにおいて可動部M2の下流に障害物が存在しないと判定し、障害物が存在しないことを示す検出結果を生成する。そして、検出部33は、検出結果を出力部34に出力する。
【0045】
続いて、出力部34は、検出部33から検出結果を受け取ると、検出結果を出力する(ステップS7)。出力部34は、例えば、作業機械Mに設けられた表示灯に検出結果を出力し、検出結果に応じて表示灯を点灯表示させてもよい。出力部34は、作業機械Mの運転室に設けられたディスプレイに検出結果を出力し、ディスプレイに検出結果を表示させてもよい。検出結果が、障害物が存在することを示す場合には、出力部34は、作業機械Mの動作を停止させてもよい。出力部34は、検出結果を記憶装置102に出力し、記憶装置102に検出結果を保存してもよい。
【0046】
以降、所定の時間が経過するごとに、ステップS1~ステップS7の処理が繰り返される。
【0047】
以上説明した障害物検出システム1及び障害物検出装置30においては、可動部M2の移動方向Dが特定され、複数の撮像装置20のうち、可動部M2の移動方向Dに存在する撮像装置20の出力(解析結果)を用いて障害物が検出される。したがって、障害物検出装置30はすべての撮像装置20によって撮像された撮像画像を処理する必要が無いので、障害物検出装置30の処理負荷を軽減することができる。その結果、障害物の検出に要する時間を短縮することが可能となる。
【0048】
例えば、可動部M2を撮像することによって可動部M2の移動方向Dを特定することが考えられる。この場合、可動部M2の移動範囲が大きいと、複数台の撮像装置が必要になる可能性がある。これに対し、特定部31は、可動部M2に設けられた撮像装置10によって撮像された撮像画像に基づいて可動部M2の移動方向Dを特定する。この構成によれば、撮像装置10が可動部M2に設けられるだけで、可動部M2の移動方向Dを特定することができる。
【0049】
障害物検出システム1においては、撮像装置10及び複数の撮像装置20が無線ネットワークNWで通信可能に接続されている。この構成によれば、クラウドを介さずに、ローカルの無線ネットワークNW(エッジ)内で障害物検出の一連の処理を行うことができる。したがって、処理速度を向上させることが可能となる。その結果、障害物の検出に要する時間を更に短縮することが可能となる。撮像装置10と複数の撮像装置20とはメッシュ型の無線ネットワークNWで接続されているので、2つの撮像装置が1対1で通信することができる。各撮像装置が中継機能を有しているので、通信経路を冗長化することができ、耐障害性を向上させることができる。各撮像装置が通信を中継することで、長距離の通信も可能となる。
【0050】
障害物検出システム1及び障害物検出装置30においては、可動部M2の移動方向Dに存在する撮像装置20の出力(解析結果)を用いて障害物が検出されるので、可動部M2の動作と連動した障害物検出を行うことができ、可動部M2が移動する前に事前に障害物を検出することが可能となる。障害物検出システム1及び障害物検出装置30においては、自律的に障害物が検出されるので、人による監視が不要となる。したがって、運用コストを削減することができる。複数の撮像装置20の位置は固定されているので、障害物が含まれる撮像画像を撮像した撮像装置20の位置から障害物の位置を特定することが可能となる。
【0051】
障害物検出システム1においては、各撮像装置20が撮像画像を解析し、撮像装置10が可動部M2の移動方向Dを特定して、各撮像装置20による解析結果から障害物を検出している。したがって、障害物検出に関する一連の処理が複数の撮像装置で分散処理されるので、処理速度を向上させることが可能となる。
【0052】
次に、図7及び図8を参照しながら、別の実施形態に係る障害物検出装置を含む障害物検出システムを説明する。図7は、別の実施形態に係る障害物検出装置を含む障害物検出システムの概略構成を示す図である。図8は、図7に示される撮像装置の機能構成の一例を示す図である。図7に示される障害物検出システム1Aは、撮像装置10及び複数の撮像装置20に代えて、複数の撮像装置50を含む点において、障害物検出システム1と主に相違する。
【0053】
複数の撮像装置50は、可動部M2の周辺に分散配置されている。各撮像装置50は、可動部M2を撮像可能に設けられている。各撮像装置50は、固定されている。本実施形態では、複数の撮像装置50は、作業機械Mを中心として同心円状に配置されている。撮像装置50は、可動部M2及び可動部M2によって運搬される運搬物のうち、作業機械Mの周辺に存在する障害物と干渉(衝突)し得る部分が移動可能な移動範囲の一部を撮像しており、すべての撮像装置50によって上記移動範囲全体が撮像される。複数の撮像装置50は、例えば、メッシュ型の無線ネットワークNWで接続されている。撮像装置50の台数は、上記移動範囲と各撮像装置50の撮像範囲とに応じて適宜変更され得る。
【0054】
撮像装置50は、撮像装置10と同様のハードウェア構成を有する。撮像装置50は、モーションセンサ104を含んでいなくてもよい。例えば、制御装置101のROMに格納されている障害物検出プログラムがRAM上にロードされてCPUによって実行されることにより、制御装置101が障害物検出装置30Aとして機能する。言い換えると、障害物検出システム1Aは、障害物検出装置30Aを更に備えており、障害物検出装置30Aは、各撮像装置50に搭載されている。
【0055】
図8に示されるように、障害物検出装置30Aは、機能的な構成要素として、選択部35、解析部41及び出力部42を更に含む点において、障害物検出装置30と主に相違する。
【0056】
選択部35は、障害物検出装置30の機能(特定部31、決定部32、検出部33及び出力部34)と解析装置40の機能(解析部41及び出力部42)とのうち、障害物検出装置30Aが実施する機能を選択する。例えば、可動部M2に認識用のマークが付されており、選択部35は、当該選択部35を含む撮像装置50のカメラ103によって撮像された撮像画像に認識用のマークが含まれている場合に、障害物検出装置30Aが障害物検出装置30の機能を実施すると判定し、撮像画像に認識用のマークが含まれていない場合に、障害物検出装置30Aが解析装置40の機能を実施すると判定する。そして、選択部35は、判定結果に基づき、障害物検出装置30Aが実施する機能を選択する。
【0057】
なお、複数台の撮像装置50が認識用のマークを撮像することが考えられる。このため、選択部35は、当該選択部35を含む撮像装置50のカメラ103によって撮像された撮像画像に認識用のマークが含まれているか否かを示す情報を、残りの障害物検出装置30Aに送信してもよい。そして、他のすべての障害物検出装置30Aから受信した情報が、マークが含まれていないことを示す場合に、選択部35は、障害物検出装置30Aが障害物検出装置30の機能を実施すると判定してもよい。
【0058】
他の障害物検出装置30Aから受信した情報が、マークが含まれていることを示す場合には、選択部35は、他の障害物検出装置30Aからマークを含む撮像画像を取得し、マークの正面に最も近い位置から撮像した撮像装置50の障害物検出装置30Aが障害物検出装置30の機能を実施すると判定する。例えば、認識用のマークが二重丸である場合、撮像方向が正面から外れてしまうと、撮像画像に含まれるマークの形状が楕円になったり、撮像画像に含まれるマークの面積が小さくなったりする。したがって、撮像画像に含まれるマークのうち、マークの本来の形状に最も近いマークは、正面に最も近い位置から撮像されたと考えられる。よって、選択部35は、予め登録されているマークの形状と、各撮像画像に含まれるマークとを比較し、類似度を算出する。選択部35は、公知の手法により類似度を算出する。そして、選択部35は、類似度が高い撮像画像を撮像した撮像装置50の障害物検出装置30Aが障害物検出装置30の機能を実施すると判定する。
【0059】
この構成により、複数の撮像装置50の障害物検出装置30Aのうち、1つの障害物検出装置30Aが障害物検出装置30の機能を実施し、残りの障害物検出装置30Aが解析装置40の機能を実施する。したがって、特定部31は、複数の撮像装置50のうちの、可動部M2(のマーク)を撮像可能な撮像装置50(第1撮像装置)によって撮像された撮像画像に基づいて移動方向Dを特定する。
【0060】
障害物検出システム1A及び障害物検出装置30Aにおいても、障害物検出システム1及び障害物検出装置30と共通の構成については、障害物検出システム1及び障害物検出装置30と同様の効果が奏される。さらに、障害物検出システム1A及び障害物検出装置30Aでは、移動方向Dを特定するために用いられる撮像画像は可動部M2を撮像することによって得られるので、撮像画像には可動部M2が含まれる。したがって、撮像画像から特徴点が抽出される可能性が高いので、可動部M2の移動方向Dをより確実に特定することができる。障害物検出システム1A及び障害物検出装置30Aでは、可動部M2の移動方向Dを検出するために専用の撮像装置を設ける必要がないので、撮像装置の台数を低減することができる。
【0061】
なお、本開示に係る障害物検出装置及び障害物検出システムは上記実施形態に限定されない。
【0062】
例えば、撮像装置10及び撮像装置20は、GNSS(Global Navigation Satellite System)などを用いて位置情報を取得し、障害物検出装置30に位置情報を登録してもよい。各撮像装置50は、GNSSなどを用いて位置情報を取得し、すべての障害物検出装置30Aに位置情報を登録してもよい。
【0063】
障害物検出装置30は、撮像装置10と別体でもよい。障害物検出装置30Aは、撮像装置50と別体でもよい。
【0064】
決定部32は、撮像装置10によって撮像された撮像画像を用いて、可動部M2の現在の位置を特定してもよい。例えば、障害物検出システム1のセットアップにおいて、作業機械Mの可動部M2が可動部M2の移動範囲全体にわたって移動され、その間に撮像装置10によって撮像された撮像画像が、作業機械Mの周囲の風景画像として位置情報とともに障害物検出装置30に登録されてもよい。そして、決定部32は、特定部31から移動方向情報を受け取ると、撮像装置10によって撮像された撮像画像を取得し、当該撮像画像を予め登録されている風景画像と照合することによって、可動部M2の現在の位置を特定してもよい。
【0065】
決定部32は、可動部M2の移動速度に応じて定められた台数分、移動方向Dにおいて可動部M2の下流に位置する撮像装置20の中から、可動部M2に近い順に対象撮像装置を決定してもよい。
【0066】
上記実施形態では、解析部41は、撮像画像を常時解析しているが、障害物検出装置30,30Aから取得要求を受信したことに応じて、撮像画像を解析してもよい。
【0067】
対象撮像装置の解析装置40は、撮像画像の解析結果に代えて、撮像画像を障害物検出装置30に送信してもよい。この場合、障害物検出装置30の検出部33が対象撮像装置から受信した撮像画像を解析する。同様に、対象撮像装置の障害物検出装置30Aは、撮像画像の解析結果に代えて撮像画像を、取得要求を送信した障害物検出装置30Aに送信してもよい。この場合、取得要求を送信した障害物検出装置30Aの検出部33が対象撮像装置から受信した撮像画像を解析する。
【0068】
撮像装置50は、車両又はドローンなどの移動体に搭載されてもよい。この場合、撮像装置50は、移動体によって所望の位置に配置され、静止状態で撮像を行う。この構成によれば、撮像装置50の配置の自由度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A 障害物検出システム
10 撮像装置(第1撮像装置)
20 撮像装置
30,30A 障害物検出装置
31 特定部
32 決定部
33 検出部
34 出力部
35 選択部
50 撮像装置(第1撮像装置)
M 作業機械
M1 本体部
M2 可動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8