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特開2024-99345タンパクを高含有するグルコマンナン加工食品の製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099345
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】タンパクを高含有するグルコマンナン加工食品の製造法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/244 20160101AFI20240718BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240718BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20240718BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20240718BHJP
【FI】
A23L29/244
A23L29/256
A23L19/00 102Z
A23L7/109 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003220
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】518313434
【氏名又は名称】中尾食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】中尾 友彦
【テーマコード(参考)】
4B016
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B016LK04
4B016LK09
4B016LK10
4B016LK13
4B016LQ05
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH07
4B041LH08
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK07
4B041LK14
4B041LK15
4B041LK25
4B041LP07
4B041LP12
4B046LA10
4B046LB03
4B046LG09
4B046LG18
4B046LG36
4B046LP34
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】 独特の食感を有し、低カロリーな食品であるというコンニャクの利点を活かしつつ、タンパクを多く含むコンニャク様の食品を提供する。
【解決手段】 0.3w/w%以上2.5w/w%以下のグルコマンナンと、0.2w/w%以上2.5w/w%以下のアルギン酸及び/又はその塩と、3.0w/w%以上12.0w/w%以下の植物性タンパクを含み、場合によっては0.1w/w%以上1.5w/w%以下のキサンタムガムを含み、グルテンを実質的に含まない混合液を、2価カチオンを含む水溶液中に吐出してゲル状物を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコマンナンと、アルギン酸及び/又はその塩と、植物性タンパクを含む混合液を、2価カチオンを含む水溶液中に吐出してゲル状物を得る工程を備え、
前記混合液は、
0.3w/w%以上2.5w/w%以下のグルコマンナンと、
0.2w/w%以上2.5w/w%以下のアルギン酸及び/又はその塩と、
3.0w/w%以上12.0w/w%以下の植物性タンパクを含み、
グルテンを実質的に含まないゲル状食品の製造方法。
【請求項2】
グルコマンナンと、アルギン酸及び/又はその塩と、植物性タンパクを含む混合液を、2価カチオンを含む水溶液中に吐出してゲル状物を得る工程を備え、
前記混合液は、
0.3w/w%以上2.5w/w%以下のグルコマンナンと、
0.2w/w%以上2.5w/w%以下のアルギン酸及び/又はその塩と、
3.0w/w%以上12.0w/w%以下の植物性タンパクと、
0.1w/w%以上1.5w/w%以下のキサンタムガムを含み、
グルテンを実質的に含まないゲル状食品の製造方法。
【請求項3】
グルコマンナンと、アルギン酸及び/又はその塩と、植物性タンパクを含む混合液を、2価カチオンを含む水溶液中に吐出してゲル状物を得る工程と、
得られたゲル状物を乾燥する工程を備え、
前記混合液は、
0.3w/w%以上2.5w/w%以下のグルコマンナンと、
0.2w/w%以上2.5w/w%以下のアルギン酸及び/又はその塩と、
3.0w/w%以上12.0w/w%以下の植物性タンパクを含み、
実質的にグルテンを含まない乾燥食品の製造方法。
【請求項4】
グルコマンナンと、アルギン酸及び/又はその塩と、植物性タンパクを含む混合液を、2価カチオンを含む水溶液中に吐出してゲル状物を得る工程と、
得られたゲル状物を乾燥する工程を備え、
前記混合液は、
0.3w/w%以上2.5w/w%以下のグルコマンナンと、
0.2w/w%以上2.5w/w%以下のアルギン酸及び/又はその塩と、
3.0w/w%以上12.0w/w%以下の植物性タンパクを含み、
グルテンを実質的に含まない乾燥食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルコマンナンとタンパクを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃくはグルコマンナンを主成分とするこんにゃく粉を糊化し、カルシウムにより固めたものである。グルコマンナンは難消化性であり低カロリーであることから痩身や排便促進用などに用いられるいわゆるダイエット食品として着目されている。
【0003】
しかしながら、その一方で、こんにゃくには主要な栄養素であるタンパクが含まれていないので、筋肉強化を必要とするアスリートなどは乳タンパクや大豆タンパクを含むプロテイン製剤と称される栄養食品を摂取しているのが実情である。また、高齢者のフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)対策や糖質摂取制限者にとっては、低糖質、低脂質でありながら、多くのタンパクが摂取できる食品が望まれるところである。
【0004】
このような状況下において、こんにゃくにタンパクを含有させた商品が上市されている(非特許文献1、2)。例えば、出願人が販売するタンパクを含有した糸こんにゃくがある。この糸こんにゃくは、こんにゃく粉の糊化液に水酸化カルシウムと乳タンパクを含ませ、湯中に麺線状に投入することで製造されている。
【0005】
しかしながら、このような従来のコンニャクの製造方法によると、出来上がったこんにゃく中にはタンパクが2w/w%程度、経験上多くとも3w/w%にしか含ませることができなかった。
【0006】
ところで、アルギン酸塩とグルコマンナンを含む混合液(または混合物)とカルシウム塩(カルシウムイオン)を接触させることでゲル状の食品を製造することは公知の技術である。例えば、特開昭61-166378号公報(特許文献1)には、アルギン酸ナトリウムとコンニャク粉を含む混合液を塩化カルシウム水溶液に投入して、凍結保存可能なコンニャク様のゲル状食品を得ることが開示され、特開2020-036538号公報(特許文献2)には、グルコマンナンとアルギン酸ナトリウム、キサンタムガムを含む混合液を塩化カルシウムの溶液に投入してゲル状物を得たのち、それを乾燥した水戻りのよい乾物が開示されている。
【0007】
また、特開昭56-55162号公報(特許文献3)には、アルギン酸ナトリウムやペクチン質ナトリウム塩と、カゼイン、大豆タンパクその他タンパクを含む種々の食品を含む糊状の混合物を水溶性カルシウム塩の水溶液に投入することでコンニャクの食感を有する麺状の食品凝固物を得ることが開示されている。特開2002-209554号公報(特許文献4)には、グルコマンナンとアルギン酸ナトリウム、さらにはキサンタムガムなどの増粘多糖類を含む混合液に、ゼラチンやコラーゲンなどのタンパク、食物繊維、多糖類などを加えた粘ちゅう液を塩化カルシウムの溶液に投入してゲル状食品を得ることが開示されている。特開2011-120541号公報(特許文献5)には、アルギン酸ナトリウムとカードランを含む溶液におからパウダー、食物繊維及びこんにゃく粉を加えた混合液を塩化カルシウム溶液に吐出し、大豆麺を得たことが開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のゲル状食品はアルギン酸塩とコンニャク粉又はキサンタムガムによって耐凍結性を向上させる技術を開示するものであって、実施例ではデンプンが使用されているために低カロリー食であるコンニャクの利点が活かされない。また、小麦タンパクも使用された実施例が開示されているが、小麦タンパクはグルテンが主成分であり、これを使用すると吐出時にグルコマンナンなどを含む混合液が粘りすぎて、麺線状に吐出できない。さらに摂食時にアレルギーを引き起こす可能性が高くなり、グルテンを含まないことが望まれる。
【0009】
特許文献2にはコンニャク様の食品を提供するものではあるが、この技術は得られたゲル状食品の水戻しを良好にするものであって、タンパクを含ませることについての記載や示唆はない。
【0010】
特許文献3はカルシウム塩との接触によって凝固するアルギン酸塩の性質を利用して、非凝固系の物質であるカゼイン、大豆タンパク、各種のデンプンなどを含ませて、コンニャク様の食感を有する食品を試みるものである。特許文献3には、アルギン酸ナトリウムとグルコマンナン、生コンブを含む実施例も記載されているが、生コンブのタンパク含有量は少なく、3w/w%以上のタンパクを含ませた食品の開示はない。
【0011】
特許文献4にはアルギン酸ナトリウムとグルコマンナンとローカストビーンガムを用いた乾燥物が実施例として開示されているものの、タンパクが含まれていない乾燥物であるか、タンパクを少量しか含まない米糠を含ませたものであって、3w/w%以上のタンパクを含ませた食品の開示はない。特許文献5に開示された大豆麺も同様におからパウダーを含有するものの、おからパウダー中のタンパク含有率は約25%程度であって、この大豆麺においてもタンパク含有量は多くとも2w/w%程度と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61-166378号公報
【特許文献2】特開2020-036538号公報
【特許文献3】特開2002-209554号公報
【特許文献4】特開2002-209554号公報
【特許文献5】特開2011-120541号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】中尾食品工業、商品紹介"美腸こんにゃく"、[online]、[令和4年12月26日検索]、インターネット<URL:https://nakaoshokuhin.co.jp/merchandise/%e7%be%8e%e8%85%b8%e3%81%93%e3%82%93%e3%81%ab%e3%82%83%e3%81%8f/>
【非特許文献2】中尾食品工業、商品紹介"SHAPE MEN(シェイプメン)"、[online]、[令和4年12月26日検索]、インターネット<URL:https://nakaoshokuhin.co.jp/merchandise/shape-men%ef%bc%88%e3%82%b7%e3%82%a7%e3%82%a4%e3%83%97%e3%83%a1%e3%83%b3%ef%bc%89180g/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、独特の食感を有し、低カロリーな食品であるというコンニャクの利点を活かしつつ、タンパクを多く含むコンニャク様の食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、グルコマンナンと、アルギン酸及び又はその塩と、植物性タンパクを含む混合液を、二価カチオンを含む溶液に吐出してゲル状物を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、植物性タンパクを高濃度に含むこんにゃく様の食感を有するゲル状食品、及びこんにゃく様の食感を有するゲル状食品に水戻しできる乾物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の製造法は、タンパク含有量の高いこんにゃく様の食感を有するゲル状食品、さらには水戻しした際にタンパク含有量の高いこんにゃく様の食感を有するゲル状食品となる乾物を製造する方法である。
【0018】
本発明の製造法は、グルコマンナンと、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩と、タンパク源となる植物性タンパクを含む混合液を、2価カチオンの溶液、好ましくはアルカリ性を示さない溶液に吐出させてゲル化させる工程を有する。
【0019】
グルコマンナンは、こんにゃく粉の主成分となる多糖類である。本発明において用いられるグルコマンナンは、こんにゃく芋やムカゴ芋などの原料から精製された多糖でなくてもよく、業界内においてこんにゃく粉と称されるようにこんにゃく製造時に用いられる精粉や荒粉で差し支えない。なお、特開昭62-163664号公報に開示されたように、グルコマンナンやこんにゃく粉に処理を施した誘導体である必要はない。
【0020】
アルギン酸は、褐藻などに含まれる多糖類である。その塩は、例えば、ナトリウム塩であり、カリウム塩であり、カルシウム塩であり、マグネシウム塩であり、アンモニウム塩であり、それらの混合物でもあり得る。好ましくは水溶性のアルギン酸塩であり、ナトリウム塩、カリウム塩が望ましく用いられる。また、アルギン酸とアルギン酸塩を併用しても差し支えない。
【0021】
植物性タンパクの由来となる植物は特に限定されることはないが、植物性タンパクの1種であるグルテンは水などと混合した場合に混合液の粘度が高くなる傾向にあるだけでなく、前記のとおりヒトに対するアレルゲンとなり得るので本発明においては用いられず、本発明におけるゲル状物、つまり混合液はグルテンを実質的に含まない。ここにおいて、実質的に含まないとは、グルテンは意図的に混合中に加えないということを意味し、用いられる植物性タンパク中に意図せずグルテンが混在した場合においてまで、グルテンが全く含まれないことを意味するものではない。本発明において用いられ得る植物性タンパクは、例えば、大豆、エンドウ豆、緑豆、ヒヨコ豆などの豆類に由来するタンパクやヘンプタンパク(麻由来のタンパク)であり得る。また、ホエイタンパクやカゼインなどの動物由来のタンパク(動物性タンパク)では、グルコマンナンと、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩との混合液を二価カチオンの水溶液に投入した場合、1w/w%程度の濃度でも十分にゲル化しなかったので、本発明では用いられない。
【0022】
本発明の製造法における混合液の媒体は水であることが好ましいが、エタノールなどの水溶性アルコール類が少量、ゲル化に影響を及ぼさない限りで含まれていても差し支えない。用いられるグルコマンナン、アルギン酸塩類、植物性タンパクは、混合液中、グルコマンナンが0.3w/w%以上2.5w/w%以下、アルギン酸塩類が0.2w/w%以上2.5w/w%以下、タンパクが3.0w/w%以上12.0w/w%以下である。以下、本明細書における「%」の表記は、w/w%を意味する。また、グルコマンナン、アルギン酸塩類、植物性タンパクはそれぞれ市販品が用いられる場合があるが、混合液中の各濃度はいわゆる純度100%に換算した値である。これらの3成分と媒体を混合した場合、これらの全てが媒体に溶解する必要はないが、アルギン酸塩類が溶解している状態であればよく、分散時において必要に応じて加熱してもよく、常温でもよい。
【0023】
混合液中のグルコマンナンの量が少なくなればこんにゃく様の風味や食感が悪くなる傾向にあり、0.3%よりも少ない場合にはゲル状物に出来なかったり、ゲル状物の風味や食感が悪くなり好ましくない。グルコマンナンの量が多くなれば混合液が粘稠になる傾向にあり、2.5%よりも多くなれば、例えば麺線状に押し出せないなど、成形性が悪くなり好ましくない。混合液中のアルギン酸塩類の量が0.2%よりも少ない場合には3.0%よりも多いタンパクを含ませることができず、良好な麺線状にならないなど成形性が悪くなる傾向になる。一方、アルギン酸塩類の量が多くなると混合液が粘稠になって、麺線状に押し出せないなど成形性が悪くなったり、風味や食感も悪くなる傾向になる。アルギン酸塩類の量が2.5%よりも多い場合には成形性、風味や食感の観点から望ましくない。また、グルコマンナンやアルギン酸塩類の量がそれぞれ多くなればタンパク含有量も高めることができるが、混合液中のタンパクが12.0%よりも多くなれば、タンパクが均一に溶解または懸濁しきれなかったり麺線状に押し出せないなどの成形性が悪くなるだけでなく、ゲル状物の風味や食感が悪くなる傾向になり望ましくない。
【0024】
混合液中のグルコマンナンとアルギン酸塩類の質量比は1:3から3:1、つまりグルコマンナンがアルギン酸塩類の1/3以上3以下であることが望まれる。タンパクの配合量によっても異なるが、グルコマンナンとアルギン酸塩類の混合液にタンパクを加えた場合、グルコマンナンがアルギン酸塩類に比べて少ない場合には、得られたゲル状物はこんにゃく様の風味や食感が悪くなる傾向にあり、両者の比が3.0を越える場合にも同様にこんにゃく様の風味や食感が悪くなる傾向になる。また、アルギン酸塩類がグルコマンナンに比べて少ない場合には成形性が悪くなる傾向になり、両者の比が1/3より小さいと麺線状に成形できなくなるおそれが強くなり望ましくない。
【0025】
タンパクの配合量によっても異なるが、グルコマンナンとアルギン酸塩類、タンパクの混合液から得られたゲル状物を乾燥した乾燥物は、グルコマンナンのアルギン酸塩類に対する比が大きくなるにつれて水戻し、つまり水や湯に浸した場合に十分に柔らかくならず、風味や食感が悪くなる傾向になり、両者の比が3を越えると好ましくない。
【0026】
混合液は、その他の成分として、着色や風味付けをするための風味剤を含み得る。風味剤は、例えば着色料であり、着香料であり、香辛料であり、青のりやひじきなどの乾燥海産物、乾燥野菜であり、しょうゆや砂糖などの各種調味料であり得る。風味剤の配合量は、2価カチオンの溶液中におけるゲル化性や水戻し性に影響を与えない範囲において適宜決定できる。これらの風味剤はアルギン酸塩類のゲル化能にほとんど影響を与えないと考えられるが、その場合、その配合量は例えば混合液中に10w/w%以下であり、5w/w%であり、2w/w%であり、1w/w%であり、0.5w/w%であり、0.1w/w%であり得る。また、必要により、混合液の液性を6.5~7.5程度の中性に維持するためにpH調整剤を用いることもできる。
【0027】
一方、混合液は、カロリー源となり得るデンプンなどの糖質、植物油などの脂質は望ましくは含まない。カロリー源となる糖質や脂質を含むと低カロリー食としてのこんにゃく様食品の利点が失われなくなるだけでなく、十分なゲル状物が得られなくなるおそれがある。もっとも、原材料として用いられる市販のグルコマンナンやアルギン酸塩類、植物性タンパク、混合液に添加される風味剤が糖質や脂質を含む場合もあるが、上記の配合量では混合液における糖質や脂質の含有量は高くならず、低カロリー食としてのこんにゃく様食品の利点が失われないと考えられる。一方、植物性タンパクにはタンパク含有量が低い市販品もあり、この場合には得られたゲル状物におけるカロリー源となる糖質や脂質の含有量が多くなる。従って、タンパク含有量が高い市販品を用いるのが好ましく、タンパク含有量が少なくとも50%以上、好ましくは75%以上の市販品を用いるのがタンパクを高含有させるためには好ましい。
【0028】
混合液は、得られたゲル状物を乾燥させて乾物とする場合を除き、キサンタムガム以外のいわゆる増粘剤として用いられる多糖類(増粘多糖類)を含まないことが好ましい。キサンタムガムをはじめとする各種の増粘剤を含めた場合にはゲル状物の粘性が上がりこんにゃく様の食感が失われる傾向になり好ましくない。一方で、得られたゲル状物を乾燥して乾麺のような乾燥食品とする場合には、キサンタムガムを加えることで食感や水戻し性が向上する。つまり乾燥食品を水又は温湯で戻した場合にこんにゃく様の食品(ゲル状物)に戻しやすくなる。キサンタムガムは単独で用いることが好ましく、キサンタムガム以外の増粘多糖類、例えばカラギーナンやグアーガムでは水戻し性が悪くなる。混合液中のキサンタムガムは0.1%以上1.5%以下である。また、キサンタムガムの一部に替えて、カラギーナン、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナンなどの他の増粘多糖類を用いることもできるが、その場合には少なくともキサンタムガムを混合液中に0.1%以上を含むことが必要であり、他の増粘多糖類がキサンタムガムを含めた増粘多糖類におけるキサンタムガムの割合が30%以上、好ましくは50%以上である。なお、増粘多糖類は一般には混合液(混合物)の粘性を上げる多糖類を意味するが、本発明においてはグルコマンナン、アルギン酸類は増粘多糖類としては扱わない。
【0029】
得られた混合液は2価カチオンの溶液中に吐出される。2価カチオンは、溶液中でアルギン酸塩類をゲル化させることができればよく、例えば、カルシウムイオンであり、マグネシウムイオンであり、ストロンチウムイオンであり、好ましくはカルシウムイオンである。強固なゲル化物が得られるからである。2価カチオンの溶液は好ましくは水溶液であって、その塩を水に溶解することで得られる。塩は水溶液とした場合に非アルカリ性、好ましくはほぼ中性を示す塩が好ましく、例えば、塩化カルシウムであり、乳酸カルシウムであり、塩化マグネシウムであり、好ましくは乳酸カルシウム又は塩化カルシウムである。
【0030】
2価カチオンの溶液の濃度も、前記混合液をゲル化できる濃度であれば適宜決定できる。混合液中のアルギン酸塩類の濃度によっても異なるが、例えば、塩化カルシウムや乳酸カルシウムを用いる場合には、概ね0.1%~20%程度、好ましくは1~10%である。2価カチオンの溶液も特段の加熱は必要なく、加温してもよいが常温でも構わない。
【0031】
吐出する方法は、2価カチオンの溶液中でゲル化できる方法であれば特に限定されない。吐出後の形状も限定される必要もなく、例えば、麺線状や薄板状に吐出できる方法が好ましく、また、粒状であっても差し支えない。
【0032】
得られたゲル状物は2価カチオンの溶液から分離され、あるいは2価カチオンの溶液中に多量の水を加えることで2価カチオンの溶液から分離されることなく、必要に応じて、表面に付着したカルシウム類を除くために水洗される。水洗には例えば常温の水や冷水が用いられる。このようにして得られたゲル状物はそのままコンニャク様の食品として提供される。
【0033】
キサンタムガムを含む混合液をゲル化した場合、水洗されたゲル状物を食することもできるが、好ましくは乾燥に付される。乾燥の方法も特に限定されず、自然乾燥、40~120℃程度の温風乾燥、60~120℃程度の乾燥庫による乾燥、凍結乾燥が例示されるが、乾燥後の水戻し性を考慮すると、自然乾燥又は温風や熱風を用いて乾燥するのがよい。また、温度が100℃よりも高い場合には過乾燥により水戻しが出来なくなるおそれが強くなるので、100℃以下の乾燥で行うのが好ましい。なお、薄板状に吐出した場合、そのまま乾燥に付してもよいが、必要に応じて、乾燥の前後の何れかにおいて麺線状又は幅広の麺状に切断する。もっとも薄板状のまま乾物として使用しても差し支えない。
【0034】
乾燥して得られた乾物は水戻しを行うことで、こんにゃく風味がありこんにゃくに近い食感を有する即席麺や即席こんにゃく米などとして用いられる。水戻しは常温の水や調味液で行うこともできるが、80~100℃に加温された水又は調味液を用いるのが好ましい。得られたゲル化物は水に長時間浸漬しておいても型崩れしたり、水に溶解したりすることがないので、水に入れた状態で包装して保存することができる。さらにゲル化により得られたゲル状物は、そのまま凍結保存したり、水や出汁と共に凍結保存したりして、いわゆる冷凍食品としても提供し得る。凍結時の温度は一般的な冷凍食品と同様の温度でよく、氷点下、例えば-80℃~-10℃程度で行い得る。得られた凍結品は加熱や電子レンジによる調理によってゲル状の食品に戻して喫食できる。また冷凍食品には、ゲル状物以外にいわゆるスープ類や加工野菜その他の具材などを含ませてもよい。
【0035】
次に本発明について下記の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限られないのは言うまでもない。
【実施例0036】
表1~3に示す組成に基づいて、全ての成分を常温(約20℃)の水に投入して混合液を作製した。その後、常温(約20℃)の5w/v%の乳酸カルシウム水溶液に麺線状に吐出した。水溶液中で形成されたゲル状物を取り出し、約20℃の流水で洗った。次に、80℃の温風を当てて乾燥して、乾燥麺を得た。
【0037】
乳酸カルシウム溶液に吐出した状態を3段階(良好な麺線状に吐出できた場合を○、麺線状に吐出できたが、吐出した麺線が堅すぎる若しくは柔らかすぎる場合は△、混合液が堅い若しくは柔らかくて麺線状に吐出できなかった場合を×で表す)で評価した。次に得られた水洗後のゲル状物の食感について、こんにゃくの風味(味や臭い)や食感(歯ごたえ)について3段階(風味及び食感が良好であった場合を○、風味又は食感が良好とは言えないが、摂食することはできた場合を△、風味又は食感が悪く、摂食が困難であった場合を×で表す)で評価した。また、乾燥して得られた乾燥麺を80℃のお湯にひたし、水戻し性並びに風味及び食感について3段階(お湯で十分に戻すことができ、風味・食感は乾燥前と同様であった場合を○、お湯で戻すことができたが、風味・食感は乾燥前と同様ではなかったものの、摂食は可能であった場合を△、お湯でも十分に戻らず、摂食可能な風味・食感にはならなかった場合を×で示す。)で評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【実施例0041】
表4、5に示す組成に基づいて、全ての成分を常温(約20℃)の水に投入して混合液を作製した。その後、実施例1と同様にして得られたゲル状物及び乾燥麺の評価を行った。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【実施例0044】
表6に示す組成に基づいて、全ての成分を常温(約20℃)の水に投入して混合液を作製した。その後、実施例1と同様にして得られたゲル状物及び乾燥麺の評価を行った。
【0045】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0046】
タンパク含有量の多いこんにゃく様の食品並びにその乾燥物が提供される。