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特開2024-99346スタッカ装置及びその昇降速度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099346
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】スタッカ装置及びその昇降速度制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/26 20060101AFI20240718BHJP
   B65G 57/03 20060101ALI20240718BHJP
   B65H 29/68 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B65H31/26
B65G57/03 Z
B65H29/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003222
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000139931
【氏名又は名称】株式会社ISOWA
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】原 勇太
【テーマコード(参考)】
3F029
3F053
3F054
【Fターム(参考)】
3F029AA04
3F029BA09
3F029CA23
3F029DA04
3F053GA02
3F053GA05
3F053GB02
3F053GB14
3F053LA15
3F053LB05
3F054AA04
3F054AC09
3F054BA02
3F054BA03
3F054BB04
3F054BD02
3F054BG11
3F054CA11
3F054CA21
3F054CA40
(57)【要約】
【課題】最下流ラップコンベヤと、支持テーブル上のシートとの間の落差を、生産中、常に適切な値に設定することができるスタッカ装置及びその昇降速度制御方法を提供する。
【解決手段】本発明のスタッカ装置及びその昇降速度制御方法は、生産中に、各ラップコンベアの搬送速度がそれぞれ個別に任意に設定される際に、最上流ラップコンベアのメモリに、シートの「後端間距離のデータ」を記憶し、各ラップコンベアにおいて、シートが上流側のラップコンベアに乗り移る毎に、下流側ラップコンベアのメモリに記憶されている「後端間距離のデータ」に、そのときのラップコンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアのメモリに記憶するように、各メモリを同時並行で更新処理し、最下流ラップコンベアのシートの後端間距離から、最下流ラップコンベアの上昇速度及び/又は支持テーブルの下降速度を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタにより切断されたシートを搬送する搬送コンベアと、
この搬送コンベアの下流に設けられ、シートをオーバーラップ状態で搬送する最上流ラップコンベア及び最下流ラップコンベアを含む複数のラップコンベアと、
最下流ラップコンベアから放出されたシートを積み上げる支持テーブルと、
複数のラップコンベアの搬送速度を個別に制御するラップコンベア駆動手段と、
複数のラップコンベアのそれぞれに設けられ、そのラップコンベアにより搬送されるシートの後端間距離のデータを記憶するメモリと、
最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離を算出する後端間距離算出手段と、
最下流ラップコンベアの昇降速度及び/又は支持テーブルの昇降速度を制御する昇降制御手段と、を有し、
上記メモリに記憶される後端間距離のデータは、「後端間距離の現在値の、後端間距離の基準値に対する比率」又は「後端間距離の現在値」であり、
上記後端間距離算出手段は、生産中に、各ラップコンベアの搬送速度がラップコンベア駆動手段によりそれぞれ個別に設定される際に、最上流ラップコンベアの上記メモリに、「シート切断長×(搬送コンベアの搬送速度÷ライン速度)×(最上流ラップコンベアの搬送速度÷搬送コンベアの搬送速度)」から算出された最上流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを記憶し、各ラップコンベアにおいて、上流側ラップコンベアのベルトの移動量がそのラップコンベアの搬送方向の長さに一致しシートが下流側のラップコンベアに乗り移る毎に、上流側ラップコンベアの上記メモリに記憶されている後端間距離のデータに、そのときのラップコンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアの上記メモリに記憶するように、各メモリを同時並行で更新処理し、これらの更新処理により、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを求め、これにより、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値を算出し、
上記昇降制御手段は、「(最下流ラップコンベアの搬送速度÷最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値)×シート厚さ」から最下流ラップコンベアの上昇速度及び/又は上記支持テーブルの下降速度を設定する、スタッカ装置。
【請求項2】
さらに、各ラップコンベアのメモリに記憶される後端間距離のデータを表示する表示装置を有する、請求項1に記載のスタッカ装置。
【請求項3】
カッタにより切断されたシートを搬送する搬送コンベアと、
この搬送コンベアの下流に設けられ、シートをオーバーラップ状態で搬送する最上流ラップコンベア及び最下流ラップコンベアを含む複数のラップコンベアと、
最下流ラップコンベアから放出されたシートを積み上げる支持テーブルと、
上記複数のラップコンベアの搬送速度を個別に制御するラップコンベア駆動手段と、
上記最下流ラップコンベアの昇降速度及び/又は上記支持テーブルの昇降速度を制御する昇降制御手段と、
上記複数のラップコンベアのそれぞれに設けられ、そのラップコンベアにより搬送されるシートの後端間距離のデータを記憶するメモリと、を有するスタッカ装置の昇降速度制御方法であって、
上記メモリに記憶される後端間距離のデータは、「後端間距離の現在値の、後端間距離の基準値に対する比率」又は「後端間距離の現在値」であり、
生産中に、各ラップコンベアの搬送速度が上記ラップコンベア駆動手段によりそれぞれ個別に設定される際に、最上流ラップコンベアのメモリに、「シート切断長×(搬送コンベアの搬送速度÷ライン速度)×(最上流ラップコンベアの搬送速度÷搬送コンベアの搬送速度)」から算出された最上流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを記憶し、
各ラップコンベアにおいて、上流側ラップコンベアのベルトの移動量がそのラップコンベアの搬送方向の長さに一致しシートが下流側のラップコンベアに乗り移る毎に、上流側ラップコンベアのメモリに記憶されている後端間距離のデータに、そのときのラップコンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアのメモリに記憶するように、各メモリを同時並行で更新処理し、これらの更新処理により、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを求め、これにより、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値を算出し、
「(最下流ラップコンベアの搬送速度÷最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値)×シート厚さ」から最下流ラップコンベアの上昇速度及び/又は上記支持テーブルの下降速度を設定する、スタッカ装置の昇降速度制御方法。
【請求項4】
各ラップコンベアをそれぞれ搬送方向に複数に分割して上流側から順に区間0~区間Nを設定し、各コンベアの各区間用に上記メモリを設け、上流側ラップコンベアの区間Nから下流側ラップコンベアの区間0にシートが乗り移る毎に、上流側ラップコンベアの区間Nのメモリに記憶されている後端間距離のデータに、そのときのラップコンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアの区間0のメモリに記憶する、請求項3に記載のスタッカ装置の昇降速度制御方法。
【請求項5】
各ラップコンベアにおいて、そのラップコンベアに設定された上流側の区間から下流側の区間にシートが移動する毎に、上流側の区間のメモリに記憶されている後端間距離のデータを下流側の区間のメモリに記憶する、請求項4に記載のスタッカ装置の昇降速度制御方法。
【請求項6】
上記各ラップコンベアに設定された区間の数が、各ラップコンベアにおいて同じである、請求項4又は5に記載のスタッカ装置の昇降速度制御方法。
【請求項7】
上記各ラップコンベアにおいてそれぞれ、設定された各区間の長さが同じである、請求項4又は5に記載のスタッカ装置の昇降速度制御方法。
【請求項8】
上記後端間距離の基準値は、各ラップコンベアが共通の速度に設定される通常生産時の後端間距離であり、上記メモリは、上記最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の基準値を記憶し、最下流ラップコンベアのメモリに記憶される後端間距離のデータと上記基準値に基づいて、後端間距離の変化量の理論値を算出し、この後端間距離の変化量の理論値に補正係数を掛けることにより、後端間距離の変化量の補正値を算出し、この変化量の補正値を上記基準値から差し引くことにより、後端間距離の現在値を算出する、請求項3に記載のスタッカ装置の昇降速度制御方法。
【請求項9】
上記補正係数は、1より小さな値であり、シートの厚さが大きいほど小さな値に設定され及び/又はシート切断長が短いほど小さな値に設定されている、請求項8に記載のスタッカ装置の昇降速度制御方法。
【請求項10】
上記補正係数は、1より大きな値であり、この補正係数により、最下流ラップコンベアの後端間距離の現在値を実際の値よりも小さな値となるように補正する、請求項8に記載のスタッカ装置の昇降速度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカ装置及びその昇降速度制御方法に係り、特に、コルゲータラインの終端に配置され、カッタで切断された段ボールシートを支持テーブル上に積み重ねるスタッカ装置及びその昇降速度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スタッカ装置は、カッタ出口コンベアの下流側に配置される搬送コンベアと、搬送コンベアの下流側に傾斜状態で直列に複数配置されるラップコンベアを備える。搬送コンベアは、搬送速度がコルゲータライン速度(ダブルフェーサからカッタ入口コンベアまでの速度)より速く設定され、カッタによって切断された段ボールシートを、一枚ずつ間隔をあけて搬送する。複数のラップコンベアは、それぞれ搬送速度が搬送コンベアより遅く設定され、搬送コンベアから一枚ずつ送られたシートを、瓦葺き状に重なり合った状態(オーバーラップ状態)で搬送する。さらに、スタッカ装置は、最下流ラップコンベアの先端から放出されるシートを受けとめて、垂直に積み重ねる支持テーブルを備える。
【0003】
このようなスタッカ装置として、アップスタッカ、ダウンスタッカ、アップダウンスタッカの形式のものが使用されているが、いずれの形式においても、シートを支持テーブル上に整列して積み重ねるためには、最下流ラップコンベアから放出されるシートと、支持テーブル上に積載されたシートとの間の落差を、生産中、常に、適切な値に設定する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、従来のアップスタッカ装置の運転方法が記載されている。具体的に説明すると、特許文献1には、4組の積込みコンベア1~4(ラップコンベア)を備え、積載台9(支持テーブル)に搭載する最終の板状物体(シート)が供給コンベヤ5(搬送コンベア)から最上流の積込みコンベヤ4に移った切離し開始時点(図6)で、積込みコンベヤ4の搬送速度を供給コンベヤ5の速度より高くすると共に、この最上流の積込みコンベヤ4に後続する積込みコンベヤ1~3の搬送速度を、それぞれ前段のコンベヤ速度よりも順次低くし、最終板状物体の通過が完了した積込みコンベヤから順に通常の速度に戻す(図7図9)アップスタッカ装置の運転方法が記載されている(段落0002~0009)。
【0005】
特許文献1の運転方法においては、切離し作業時に積載台に載る板状物体の密度の変化に対応して、アップスタッカ装置の上昇速度を適切に制御し、板状物体の要目(オーダ)が変更になっても、板状物体を整列して積載台に搭載するために(段落0010~0011)、切離し開始時点で、各積込みコンベヤ1~4の後端位置にある板状物体を別個に特定し、これら特定板状物体が最下流の積込みコンベヤ1の先端から積載台9に移る度毎に、この最下流のコンベア1の先端の上昇速度を変化させるようにしている(段落0012)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2782645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1のアップスタッカ装置の運転方法においては、先ず、切離し開始時点で、供給コンベヤ5に最も近い積込みコンベヤ4の搬送速度を供給コンベヤ5の速度より高くすると共に、この積込みコンベヤ4に後続する積込みコンベヤ1~3の搬送速度を、それぞれ前段のコンベヤ速度よりも順次低くするように、搬送速度の条件が限定されている。また、最終板状物体の通過が完了した積込みコンベヤから順に、切離し作業時の速度から通常の速度に戻すように、搬送速度の条件が限定されている。
ここで、切離し作業時には、前オーダの最後の板状物体と後オーダの最初の板状物体との間隔を広げる必要があるが、前オーダと後オーダの板状物体の長さ等の関係で、特許文献1の運転方法では、必要な間隔を得ることができない場合がある。そして、必要な間隔を得るために、各積込みコンベアの搬送速度を任意の速度に変更した場合、特許文献1の運転方法では、板状物体を整列して積載台に搭載することができない可能性がある。
【0008】
このような従来技術に対し、本発明の発明者等は、鋭意研究することにより、各ラップコンベヤの搬送速度がそれぞれ個別に任意の速度に設定される場合、各コンベヤ上をオーバーラップ状態で搬送される前後のシートの後端間距離(以下「後端間距離」という)の変化から、最下流ラップコンベヤ上を搬送されるシートの後端間距離を正確に把握し、これにより、最下流ラップコンベアの上昇速度(又は、支持テーブルの下降速度)を適切な値に設定して、コンベアから放出されるシートの落差を適切な値にし、シートを安定して整列して積み重ねることができることを見出した。
【0009】
本発明は、従来の技術の課題を解決するためになされたものであり、最下流ラップコンベヤから放出されるシートと、支持テーブル上に積載されたシートとの間の落差を、生産中、常に適切な値に設定することができるスタッカ装置及びその昇降速度制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のスタッカ装置は、カッタにより切断されたシートを搬送する搬送コンベアと、この搬送コンベアの下流に設けられ、シートをオーバーラップ状態で搬送する最上流ラップコンベア及び最下流ラップコンベアを含む複数のラップコンベアと、最下流ラップコンベアから放出されたシートを積み上げる支持テーブルと、複数のラップコンベアの搬送速度を個別に制御するラップコンベア駆動手段と、複数のラップコンベアのそれぞれに設けられ、そのラップコンベアにより搬送されるシートの後端間距離のデータを記憶するメモリと、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離を算出する後端間距離算出手段と、最下流ラップコンベアの昇降速度及び/又は支持テーブルの昇降速度を制御する昇降制御手段と、を有し、メモリに記憶される後端間距離のデータは、「後端間距離の現在値の、後端間距離の基準値に対する比率」又は「後端間距離の現在値」であり、後端間距離算出手段は、生産中に、各ラップコンベアの搬送速度がラップコンベア駆動手段によりそれぞれ個別に設定される際に、最上流ラップコンベアのメモリに、「シート切断長×(搬送コンベアの搬送速度÷ライン速度)×(最上流ラップコンベアの搬送速度÷搬送コンベアの搬送速度)」から算出された最上流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを記憶し、各ラップコンベアにおいて、上流側ラップコンベアのベルトの移動量がそのラップコンベアの搬送方向の長さに一致しシートが下流側のラップコンベアに乗り移る毎に、上流側ラップコンベアのメモリに記憶されている後端間距離のデータに、そのときのラップコンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアのメモリに記憶するように、各メモリを同時並行で更新処理し、これらの更新処理により、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを求め、これにより、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値を算出し、昇降制御手段は、「(最下流ラップコンベアの搬送速度÷最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値)×シート厚さ」から最下流ラップコンベアの上昇速度及び/又は上記支持テーブルの下降速度を設定する。
このように構成された本発明のスタッカ装置においては、後端間距離算出手段が、複数のラップコンベアにより、オーバーラップ状態のシートが搬送され、上流側ラップコンベアから下流側ラップコンベアに乗り移るタイミングに合わせて、上流側ラップコンベア用のメモリが記憶していた後端間距離のデータに、コンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベア用のメモリに記憶するように、メモリを更新処理している。このように各メモリを更新処理することにより、特に切離し時において、どのタイミングで、どのラップコンベアを、どのような搬送速度に設定しても、その速度の変化に伴って生じる前オーダ及び後オーダのシートの後端間距離の変化を、各メモリに記憶される後端間距離のデータに反映させることができる。よって、本発明によれば、生産中、リアルタイムで、全てのラップコンベアについて、搬送されるシートの後端間距離の現在値を把握することができ、こうして把握される最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離に基づいて、昇降制御手段が、最下流ラップコンベアの上昇速度(又は、支持テーブルの下降速度)を設定して、シートの落差を適切な値に設定し、シートを支持テーブル上に安定して整列して積み重ねることができる。
【0011】
本発明のスタッカ装置は、好ましくは、さらに、各ラップコンベアのメモリに記憶される後端間距離のデータを表示する表示装置を有する。
このように構成された本発明のスタッカ装置においては、各ラップコンベアのメモリに記憶される後端間距離のデータを表示する表示装置を有するので、この表示装置により、作業者は、各ラップコンベアにおける後端間距離のデータを把握することができる。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、カッタにより切断されたシートを搬送する搬送コンベアと、この搬送コンベアの下流に設けられ、シートをオーバーラップ状態で搬送する最上流ラップコンベア及び最下流ラップコンベアを含む複数のラップコンベアと、最下流ラップコンベアから放出されたシートを積み上げる支持テーブルと、複数のラップコンベアの搬送速度を個別に制御するラップコンベア駆動手段と、最下流ラップコンベアの昇降速度及び/又は支持テーブルの昇降速度を制御する昇降制御手段と、複数のラップコンベアのそれぞれに設けられ、そのラップコンベアにより搬送されるシートの後端間距離のデータを記憶するメモリと、を有するスタッカ装置の昇降速度制御方法であって、メモリに記憶される後端間距離のデータは、「後端間距離の現在値の、後端間距離の基準値に対する比率」又は「後端間距離の現在値」であり、生産中に、各ラップコンベアの搬送速度がラップコンベア駆動手段によりそれぞれ個別に設定される際に、最上流ラップコンベアのメモリに、「シート切断長×(搬送コンベアの搬送速度÷ライン速度)×(最上流ラップコンベアの搬送速度÷搬送コンベアの搬送速度)」から算出された最上流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを記憶し、各ラップコンベアにおいて、上流側ラップコンベアのベルトの移動量がそのラップコンベアの搬送方向の長さに一致しシートが下流側のラップコンベアに乗り移る毎に、上流側ラップコンベアのメモリに記憶されている後端間距離のデータに、そのときのラップコンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアのメモリに記憶するように、各メモリを同時並行で更新処理し、これらの更新処理により、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離のデータを求め、これにより、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値を算出し、「(最下流ラップコンベアの搬送速度÷最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の現在値)×シート厚さ」から最下流ラップコンベアの上昇速度及び/又は上記支持テーブルの下降速度を設定する。
このように構成された本発明においては、複数のラップコンベアにより、オーバーラップ状態のシートが搬送され、上流側ラップコンベアから下流側ラップコンベアに乗り移るタイミングに合わせて、上流側ラップコンベア用のメモリが記憶していた後端間距離のデータに、コンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベア用のメモリに記憶するように、メモリを更新処理している。このように各メモリを更新処理することにより、特に切離し時において、どのタイミングで、どのラップコンベアを、どのような搬送速度に設定しても、その速度の変化に伴って生じる前オーダ及び後オーダのシートの後端間距離の変化を、各メモリに記憶される後端間距離のデータに反映させることができる。よって、本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法によれば、生産中、リアルタイムで、全てのラップコンベアについて、搬送されるシートの後端間距離の現在値を把握することができ、こうして把握される最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離に基づいて、最下流ラップコンベアの上昇速度(又は、支持テーブルの下降速度)を設定して、シートの落差を適切な値に設定し、シートを支持テーブル上に安定して整列して積み重ねることができる。
【0013】
本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法において、好ましくは、各ラップコンベアをそれぞれ搬送方向に複数に分割して上流側から順に区間0~区間N(Nは1以上の整数)を設定し、各コンベアの各区間用にメモリを設け、上流側ラップコンベアの区間Nから下流側ラップコンベアの区間0にシートが乗り移る毎に、上流側ラップコンベアの区間Nのメモリに記憶されている後端間距離のデータに、そのときのラップコンベア間の搬送速度の比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアの区間0のメモリに記憶する。
このように構成された本発明においては、各ラップコンベアを搬送方向に複数に分割して上流側から区間0~区間Nを設定し、各コンベアの各区間用に上記メモリを設けたので、シートが上流側ラップコンベアから下流側ラップコンベアに乗り移るとき、各ラップコンベア上のシートの後端間距離の分布状況を細かく把握することができる。
【0014】
本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法において、各ラップコンベアにおいて、そのラップコンベアに設定された上流側の区間から下流側の区間にシートが移動する毎に、上流側の区間のメモリに記憶されている後端間距離のデータを、下流側の区間のメモリに記憶する。
このように構成された本発明においては、各ラップコンベアにおいて、そのラップコンベアに設定された上流側の区間から下流側の区間にシートが移動する毎に、上流側の区間のメモリに記憶されている後端間距離のデータを、下流側の区間のメモリに記憶するので、シートが各ラップコンベア上を移動するとき、各ラップコンベア上のシートの後端間距離の分布状況を細かく把握することができる。なお、区間数を多くするほど、より細かく把握することができ、一方、区間数を少なくするほど、データ量が減り処理速度を速めることができる。
【0015】
本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法において、好ましくは、各ラップコンベアに設定された区間の数が、各ラップコンベアにおいて同じである。
このように構成された本発明においては、各ラップコンベアに設定された区間の数が、各ラップコンベアにおいて同じであるので、メモリにおける更新処理を実行するプログラムをシンプルにすることができる。
【0016】
本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法において、好ましくは、各ラップコンベアにおいてそれぞれ、設定された各区間の長さが同じである。
このように構成された本発明においては、各ラップコンベアにおいてそれぞれ、設定された各区間の長さが同じであるので、メモリにおける更新処理を実行するプログラムをシンプルにすることができる。
【0017】
本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法において、好ましくは、後端間距離の基準値は、各ラップコンベアが共通の速度に設定される通常生産時の後端間距離であり、メモリは、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の基準値を記憶し、最下流ラップコンベアのメモリに記憶される後端間距離のデータとこの基準値に基づいて、後端間距離の変化量の理論値を算出し、この後端間距離の変化量の理論値に補正係数を掛けることにより、後端間距離の変化量の補正値を算出し、この変化量の補正値を基準値から差し引くことにより、後端間距離の現在値を算出する。
ラップコンベアの搬送面(ベルト)とシートの接地面積が小さい場合、ラップコンベアがシートをグリップして移動させる力が弱まるため、重なり合う前後のシートの摩擦力の影響が相対的に大きくなり、前のシートが後のシートに対して移動しにくくなる。この場合、前のシートの後のシートに対する移動量、すなわち後端間距離の変化量が、理論上の変化量よりも小さくなる。そのため、本発明においては、上述した補正係数を用いて後端間距離の現在値を算出するようにしているので、より正確な最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離の値を得ることができる。
【0018】
本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法において、好ましくは、補正係数は、1より小さな値であり、シートの厚さが大きいほど小さな値に設定され及び/又はシート切断長が短いほど小さな値に設定されている。
ラップコンベアがシートをグリップして移動させる力の大きさは、ラップコンベアのベルトとシートの接地面積の大きさが関係し、この接地面積の大きさは、「シートの厚さ」及び「シートの切断長」と関係する。そのため、本発明においては、補正係数が1より小さな値であり、シートの厚さが大きいほど小さな値に設定され及び/又はシート切断長が短いほど小さな値に設定されている。
【0019】
本発明のスタッカ装置の昇降速度制御方法において、好ましくは、補正係数は、1より大きな値であり、この補正係数により、最下流ラップコンベアの後端間距離の現在値を実際の値よりも小さな値となるように補正する。
このように構成された本発明においては、最下流ラップコンベアからシートが放出される積込みペースに対して最下流ラップコンベアの上昇(又は、支持テーブルの下降)が遅れる場合に、後端間距離の現在値を実際の値よりも小さな値となるように補正して、最下流ラップコンベアから放出されるシートの密度を実際よりも密とすることにより、シートの積込みペースに対して最下流ラップコンベアの上昇(又は、支持テーブルの下降)が速くなるようにして、遅れ分を取り戻し、シートの落差を速やかに適切な値に修正することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスタッカ装置及びその昇降速度制御方法によれば、最下流ラップコンベヤから放出されるシートと、支持テーブル上に積載されたシートとの間の落差を、生産中、常に適切な値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態によるスタッカ装置を含むコルゲータラインの一部を示す全体正面図である。
図2図1の要部拡大正面図である。
図3】本発明の実施形態によるスタッカ装置のNO7ラップコンベヤを示す概略正面図である。
図4】最下流ラップコンベヤ上を搬送される2枚のシート後端間距離を説明するための図である。
図5】上流側ラップコンベヤから下流側ラップコンベヤに乗り移る前後2枚のシート後端間距離を説明するための図である。
図6】最上流ラップコンベヤ上の2枚のシート後端間距離を説明するための図である。
図7】各ラップコンベヤをそれぞれ搬送方向に10分割して設定された区間0~区間9を示す図である。
図8】本発明の実施形態によるスタッカ装置の制御装置を示すブロック図である。
図9】基準となる搬送コンベアの下流端の位置(0地点)から、カッタ切断位置、カッタ出口コンベアの下流端、各NO1~NO6ラップコンベアの下流端、支持テーブル中心位置までの距離をそれぞれ定めたデータAを示す図である。
図10】通常生産時のNO1ラップコンベア速度の搬送コンベア速度に対する速度比率をシート切断長との関係で定めたデータBを示す図である。
図11】NO1~NO7ラップコンベアにそれぞれ設定される各区間の1区間分の長さを定めたデータCを示す図である。
図12】NO7ラップコンベアに設定された各区間のうち、最も下流に存在する区間番号を、NO7ラップコンベア下流端の位置との関係で定めたデータDを示す図である。
図13】シートの厚さをフルートと原紙の坪量との関係で定めたデータEを示す図である。
図14】NO7ラップコンベア下流端から支持テーブル中心位置までの距離を記憶するためのメモリ1を示す図である。
図15】カッタ出口コンベア、搬送コンベア、NO1~NO7ラップコンベアの各ベルトの移動量を、各コンベアの長さと比較するためのメモリ2を示す図である。
図16】生産中のオーダの最後のシートの後端位置を追跡するためのメモリ3を示す図である。
図17】ライン速度、カッタ出口コンベア速度、搬送コンベア速度、NO1~NO7ラップコンベアの各速度を記憶するメモリ4を示す図である。
図18】NO1~NO7ラップコンベアの各ベルトの移動量を、各コンベアの1区間分の長さと比較するためのメモリ5を示す図である。
図19】NO1~NO7ラップコンベア上を搬送されるシートの後端間距離の現在値の、後端間距離の基準値に対する比率を記憶するためのメモリ6を示す図である。
図20】後端間距離の変化量の理論値を補正するための補正係数を定めたデータFを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるスタッカ装置及びその昇降速度制御方法について説明する。本実施形態においては、スタッカ装置として、ラップコンベヤが支持テーブルに対して上昇するアップスタッカ装置をスタッカ装置の一例として、説明する。なお、本実施形態は、他の形式の支持テーブルがラップコンベヤに対して下降するダウンスタッカ装置や、アップスタッカ装置とダウンスタッカ装置の両方の機構を兼ね備えたアップダウンスタッカ装置にも適用可能である。
【0023】
先ず、図1及び図2により、本発明の実施形態によるアップスタッカ装置(以下、「スタッカ装置」と言う)の基本構造について説明する。図1は本発明の実施形態によるスタッカ装置を含むコルゲータラインの一部を示す全体正面図であり、図2図1の要部拡大正面図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態によるスタッカ装置1の上流側には、図示しないコルゲータラインから連続して供給される段ボールシートを所定長さに切断するカッタ2が設けられ、このカッタ2の上流側(シート入口側)にはカッタ入口コンベヤ4、カッタ2の下流側(シート出口側)にはカッタ出口コンベヤ6が設けられている。
【0025】
スタッカ装置1において、上述したカッタ出口コンベヤ6の下流側には搬送コンベヤ8が設けられ、この搬送コンベヤ8の下流側には複数のラップコンベヤが設けられている。これらの複数のラップコンベヤは、上流側から順に設けられた、NO1ラップコンベヤ11、NO2ラップコンベヤ12、NO3ラップコンベヤ13、NO4ラップコンベヤ14、NO5ラップコンベヤ15、NO6ラップコンベヤ16、NO7ラップコンベヤ17である。なお、複数のラップコンベヤとして、NO8コンベヤやNO9コンベヤ等のより多くのラップコンベヤを設けるようにしてもよい。
【0026】
ここで、NO1~NO7ラップコンベア11~17は、ベルトコンベアであり、後述するように、それぞれ個別に駆動モータを備え、異なる速度で運転可能となっている。また、各ラップコンベア11~17の速度は、搬送コンベア8よりも常に遅い速度に設定される。さらに、最上流のNO1ラップコンベア11の上流端の高さは、搬送コンベア8の下流端よりも低くなるように設定されている。
【0027】
このコンベヤ間の速度差と高低差により、搬送コンベア8から搬送されたシートSは、NO1ラップコンベア11に載っている前のシートSの上に部分的に重なり、シートSがオーバーラップした状態となる。そして、NO1ラップコンベア11に乗り移ったシートSは、オーバーラップ状態のまま下流に搬送され、NO2~NO7の各ラップコンベア12~17間を乗り移り、最下流のNO7ラップコンベア17の下流端から放出される。
【0028】
最下流のNO7ラップコンベア17の出口側には、フレーム24が設けられ、このフレーム24内の下方位置には、シート積層体を支持するための支持テーブル26と、この支持テーブル26上に載置されシートSが供給されるパレット28が設けられている。
【0029】
また、フレーム24内の上方位置には、昇降フレーム30が設けられており、この昇降フレーム30とNO7ラップコンベヤ17の一部が連結部材32により互いに連結され、昇降フレーム30とNO7ラップコンベヤ17とが一体的に昇降可能となっている。このように、本実施形態のスタッカ装置1は、支持テーブル26の高さレベルが固定され、NO7ラップコンベヤ17が昇降可能となっている。
【0030】
次に、図1及び図2に示すように、フレーム24の上部には、昇降フレーム昇降用モータ128が設けられ、このモータ128の駆動軸に取り付けられたスプロケット36にチェーン38が連結され、このチェーン38の一端に昇降フレーム30の下流端が連結され、また、チェーン38の他端にはカウンターウエイト40が結合され、昇降フレーム30が容易に昇降駆動できるようになっている。
【0031】
さらに、上流から順に、複数のフレーム42、44、46、48が設けられている。これらのフレームのうちフレーム42、44、46は、NO4ラップコンベヤ14、NO5ラップコンベヤ15、NO6ラップコンベヤ16を昇降可能に支持するためのものである。また、フレーム46、48はフレーム24と共にNO7ラップコンベヤ17及び昇降フレーム30を昇降可能に支持するためのものである。
【0032】
また、図1に示すように、フレーム42の上部には、NO4~NO6ラップコンベア昇降用モータ129が設けられ、このモータ129の駆動軸に取り付けられたスプロケット52に無端状のチェーン54が連結され、このチェーン54の一部に、NO4ラップコンベア14及びNO5ラップコンベヤ15に連結されたラップコンベア用スライド部材56が接続され、これにより、NO4、NO5及びNO6ラップコンベア14、15、16が昇降して、傾斜角度が変化するようになっている。
【0033】
このように、本実施形態では、昇降フレーム昇降用モータ128及びNO4~NO6ラップコンベア昇降用モータ129の両者により、昇降フレーム30及びNO4~NO7ラップコンベア14、15、16、17が昇降できるようになっている。
【0034】
次に、図2に示すように、NO7ラップコンベヤ17は、伸縮自在のフレーム58を備え、このフレーム58内に、NO7ラップコンベヤ17を構成するベルト60及び下流側から順番に5つのロール61、62、63、64、65が取り付けられている。これらのロールの内、ロール62、64、65は固定配置され、後述するように、ロール61、63はシート搬送方向に移動可能となっている。
また、昇降フレーム30の上流側部分には、NO7ラップコンベア移動用モータ130が設けられており、一方、NO7ラップコンベア17のフレーム48の上流側部分には、NO7ラップコンベヤ駆動用モータ121が設けられている。
【0035】
NO7ラップコンベア移動用モータ130の駆動軸は、伸縮自在のフレーム58を介して、ロール63に連結されており、このモータ130が駆動することにより、フレーム58がシート搬送方向に進退移動すると共にロール63がシート搬送方向に移動する。同時に、ロール63が移動することにより、NO7ラップコンベヤ17の前方端(下流端)に位置するロール61も、シート搬送方向に移動する。なお、図2においては、実線で示されたNO7ラップコンベヤ17が下流側へ伸びて最も下流側に位置している状態を示し、鎖線で示されたNO7ラップコンベヤ17が上流側に後退し最も上流側に位置している状態を示している。
【0036】
図2に示すように、昇降フレーム30の下流側部分には、ストッパ76が、スライド部材78を介して、取り付けられている。また、このスライド部材78には、ストッパ移動用モータ131が取り付けられ、このモータ131の駆動軸には、ピニオン82が取り付けられている。さらに、昇降フレーム30の下流側半分の領域には、ラック84が設けられており、これらのラック84とピニオン82により、モータ131が駆動すると、ストッパ76が昇降フレーム30の中央位置と下流端との間の領域を移動できるようになっている。
【0037】
また、図2に示すように、第1シート検出センサ86が、昇降フレーム30に移動可能に支持されている。この第1シート検出センサ86は、NO7ラップコンベヤ17の下流端付近をシートSが通過していることを検出するためのものであり、NO7ラップコンベヤ17の下流端付近に向けて検出光を投射し、シートSの表面で反射した反射光に基づいて、シートSを検出する。
【0038】
さらに、図2に示すように、第2シート検出センサ88がストッパ76に固定され、所定の高さで水平方向に検出光を投射し、パレット28上に積層されたシートSの側面で反射した反射光に基づいて、シートSを検出する。
【0039】
次に、図3に示すように、NO7ラップコンベヤ17は、上述したように、5個のロール61~65を備え、これらロール61~65に対し無端状ベルト60が回し懸けられ伸縮コンベアとして機能するようになっている。上述したように、NO7ラップコンベヤ17は、ロール63をシート搬送方向に沿って移動させることにより、前端側ロール61が後端側ロール65に対し接近又は離間し、それにより、ベルト60の、それら前端側ロール61と後端側ロール65との間に回し懸けられた部分により形成されるコンベアの搬送面の長さを伸縮させつつ、その前端側をフレーム24内(図2参照)で進退するようになっている。
【0040】
そして、NO7ラップコンベア17の下流端(ロール61)及びストッパ76の位置を、NO7ラップコンベア17から放出されるシートSの切断長(カッタ2で切断されたシートの搬送方向長さ)に応じて、NO7ラップコンベア17の下流端とストッパ76との距離がシート切断長に一致し、かつ、その距離の中間位置が支持テーブル26の中心位置に一致するように位置決めする。これにより、シートSの切断長に関係なく、シートSを支持テーブル26上のパレット28の中心に積載して、パレット28の排出時に、シートSの山の姿勢を崩すことなく、安定して外部に排出することができる。
【0041】
次に、図4乃至図7を参照して、本実施形態における昇降速度制御方法の前提となる基本制御の内容を説明する。
シートSを支持テーブル上に整列して積み重ねるためには、最下流ラップコンベア(NO7ラップコンベヤ17)から放出されるシートと、支持テーブル上に積載されたシートとの間の落差を、生産中、常に、適切な値に設定する必要がある。
【0042】
<最下流ラップコンベヤの上昇速度>
上述した落差を適切な値に設定するための、最下流ラップコンベアの上昇速度Uは、単位時間あたりに最下流ラップコンベアから放出されるシートの枚数Nに、放出されるシートの厚さtを掛けることにより、以下の式1により、算出される。

《式1》
最下流ラップコンベアの上昇速度U
=単位時間あたりに最下流ラップコンベアから放出されるシート枚数N×シート厚さt
【0043】
ここで、図4に示すように、最下流ラップコンベアから放出される前後2枚のシートに着目すると、前のシートの後端がコンベアの下流端に到達してコンベアから放出された時点から、コンベアのベルトがその前後のシートの後端間距離分だけ移動すると、後のシートの後端がコンベアの下流端に到達して、コンベアからシートが1枚放出される。よって、単位時間あたりの放出枚数Nは、単位時間あたりのコンベアベルトの移動量、すなわち、最下流ラップコンベアの搬送速度VEを、最下流ラップコンベア上を搬送される前後のシートの後端間距離lEで割った値となり、式1は式2に置き換えられる。

《式2》
最下流ラップコンベアの上昇速度U
=(最下流ラップコンベア搬送速度VE÷最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離lE)×シート厚さt

式2から明らかなように、最下流ラップコンベアの上昇速度Uを適切な値に設定するためには、最下流ラップコンベア上を搬送されるシートの後端間距離lEの値を正確に算出する必要がある。
【0044】
<各ラップコンベア上を搬送されるシートの後端間距離>
通常生産時(各ラップコンベア上を同一オーダのシートが搬送されるとき)には、全てのラップコンベアの搬送速度を同じ速度に設定することが多く、この場合、シートは、最上流ラップコンベアから、一定の速度で、一定の後端間距離を保ったまま、各コンベア間を乗り移り、最下流ラップコンベアまで搬送される。
【0045】
一方、切離し時には、各ラップコンベアの搬送速度を個別に設定することが多い。ここで「切離し」とは、支持テーブル上のパレットに積載された枚数が所定枚数に達した場合や、オーダ変更する場合に、前のパレットに積む最後のシートと後のパレットに積む最初のシート(前オーダの最後のシートと後オーダの最初のシート)を分離する作業である。その境目となる前後のシートを分離して間隔を広げることにより、前のパレットに積む最後のシートが最下流コンベアから放出された後、後のパレットに積む最初のシートが同じく最下流コンベアから放出されるまでの間に、前のパレットを排出し、後のパレットを支持テーブル上にセットすることができるようになっている。
【0046】
この切離し時には、各ラップコンベアの搬送速度を個別に設定するため、シートが最上流ラップコンベアから最下流ラップコンベアに搬送される過程で、搬送速度の異なるラップコンベア間を乗り移る状況が生じ、この乗り移りの際にシートの後端間距離が変化する。また、切離し時に、最上流ラップコンベアの搬送速度を変更した場合、シートが搬送コンベアから最上流ラップコンベアに乗り移った時の後端間距離は、変更された最上流コンベアの速度に応じた値となる。
したがって、最下流ラップコンベア上のシートの後端間距離1Eを正確に把握するためには、特に切離し時において、各ラップコンベアの搬送速度がそれぞれ個別に設定された際の、各ラップコンベア上を搬送されるシートの後端間距離の変化を把握する必要がある。
【0047】
以下、切離し時における後端間距離について、より具体的に説明する。上流側のコンベア(搬送コンベヤとラップコンベヤの両方を含む)から下流側のコンベアに乗り移る前後2枚のシートに着目すると、後のシートの後端が下流側コンベアに乗り移った時点での、(下流側コンベア上の)前後のシートの後端間距離1Dは、図5のように、前のシートの後端が下流側コンベアに乗り移った時点1から、後のシートの後端が下流側コンベアに乗り移る時点2までの時間Tに、前のシートの後端が下流側コンベアに載って下流に移動した距離となる。この距離は、時間Tに、下流側コンベアの搬送速度VDを掛けた値であるから、下流側コンベア上のシートの後端間距離lDは、以下の式3で表される。

《式3》
下流側コンベア上のシートの後端間距離lD
=前のシートの後端が下流側コンベアに乗り移る時点から、後のシートの後端が下流側コンベアに乗り移る時点までの時間T×下流側コンベア搬送速度VD
【0048】
ここで、時間Tは、前のシートの後端が下流側コンベアに乗り移る時点1での、(上流側コンベア上の)前後のシートの後端間距離lUを、上流側コンベアの搬送速度VUで割った値であるから、式3は、次の式4に置き換えられる。

《式4》
下流側コンベア上のシートの後端間距離lD
=(上流側コンベア上のシートの後端間距離lU÷上流側コンベア搬送速度VU)×下流側コンベア搬送速度VD
=上流側コンベア上のシートの後端間距離lU×(下流側コンベア搬送速度VD÷上流側コンベア搬送速度VU)
【0049】
したがって、シートが上流側コンベアから下流側コンベアに乗り移った時点での後端間距離lDは、上流側コンベア上を搬送されている時点での後端間距離lUに対して、コンベア間の搬送速度VD÷VUに応じて変化することになる。さらに、式4において、上流側コンベアに搬送コンベア、下流側コンベアに最上流のラップコンベアを当てはめると、次の式5になる。

《式5》
最上流ラップコンベア上のシートの後端間距離l1
=搬送コンベア上のシートの後端間距離lT×(最上流ラップコンベア搬送速度V1÷搬送コンベア搬送速度VT)
【0050】
ここで、搬送コンベア上を搬送される前後のシートの後端間距離lTは、連続するウェブの段ボールシートがカッタによって枚葉に切断された後、シートがカッタ出口コンベア及び搬送コンベアに載って加速されて、1枚ずつ間隔が広げられたときの後端間距離である(なお、カッタ出口コンベアは、搬送コンベアと同じ速度に設定される)。この搬送コンベア上のシートの後端間距離lTは、図6に示すように、前のシートの後端をカッタで切断した時点1から、後のシートの後端を切断する時点2までの時間T´に、切断された前のシートの後端がカッタの切断位置から下流に移動した距離である。
この距離は、時間T´に、搬送コンベアの搬送速度VTを掛けた値であるから、式5は式6に置き換えられる。

《式6》
最上流ラップコンベア上のシートの後端間距離l1
=(前のシートの後端をカッタで切断した時点から、後のシートの後端をカッタで切断した時点までの間T´×搬送コンベア搬送速度VT)×(最上流ラップコンベア搬送速度V1÷搬送コンベア搬送速度VT)
【0051】
一方、この時間T´に、後のシートの前端がカッタの切断位置から下流に移動した距離が(後のシートは、カッタで切断されるまで連続シートの状態でライン速V0で移動する)、オーダ指定のシート切断長Lに一致する。
このため、時間T´は、シート切断長Lをライン速度V0で割った値であるから、式6は式7に置き換えられる。

《式7》
最上流ラップコンベア上のシートの後端間距離l1
=(シート切断長L÷ライン速度V0)×搬送コンベア搬送速度VT
×(最上流ラップコンベア搬送速度V1÷搬送コンベア搬送速度VT)
=シート切断長L×(搬送コンベアの搬送速度VT÷ライン速度V0)
×(最上流ラップコンベアの搬送速度V1÷搬送コンベアの搬送速度VT)

したがって、最上流ラップコンベア上を搬送されるシートの後端間距離l1は、最上流ラップコンベアの搬送速度V1に応じて変化することになる。
【0052】
次に、図7により、各ラップコンベヤをそれぞれ搬送方向に10分割して設定された区間0~区間9について説明する。ここで、「区間」とは、仮想的にラップコンベアをシート搬送方向に複数の領域に分けたときの、その区分された領域を指すものとする。
図7(a)に示すように、本実施形態では、各ラップコンベアをそれぞれ搬送方向に均等に10分割して区間0~区間9を設定し、後述するように、各コンベアの各区間用にそれぞれメモリを用意している。
そして、図7(b)に示すように、シートが上流側の区間から下流側の区間に移動する際に、ラップコンベアの乗り移りがない区間(区間0→区間1、区間2→区間3、・・・、区間8→区間9)は、上流側の区間のデータをそのまま下流側の区間に移行する。
さらに、図7(c)に示すように、シートが上流側の区間から下流側の区間に移動する際に、ラップコンベアの乗り移りがある区間(上流側コンベアの最下流区間9→下流側コンベアの最上流区間0)は、上流側の区間9のデータに、コンベア間の搬送速度の比率(下流側ラップコンベア搬送速度÷上流側ラップコンベア搬送速度(式4参照))を掛けたデータを、下流側の区間0に移行する。
なお、本実施形態では、メモリに、後端間距離の値自体ではなく、基準となる通常生産時の後端間距離の値に対する比率を記憶するようにしている。
【0053】
次に、図8により、本実施形態が適用されるスタッカ装置の制御装置を説明する。
図8に示すように、スタッカ装置1の制御装置100には、I/Oポート102と、このI/Oポート102に接続されたCPU104、ROM106、RAM108等を含む中央制御部110が設けられている。
【0054】
ROM106には、スタッカ装置1の全体を制御するための制御プログラムが格納されており、RAM108はそのワークエリアとして機能する。
I/Oポート102には、上位生産管理装置112が接続されている。この上位生産管理装置112は、段ボールシートの生産ライン全体の生産を管理・制御するものであり、例えば、生産するシート枚数、シート切断長(シートの搬送方向長さ)、フルート、使用する各原紙の坪量(1m2 あたりの重量)等の生産オーダのデータを格納しており、一日の生産開始時に、生産する複数のオーダのデータを送信する。また、生産中のオーダの最後のシートがカッタ2によって切断された時に、オーダ変更の制御信号(後述の「カッタオーダ変更信号」)を送信する。
【0055】
I/Oポート102には、ダブルフェーサ駆動用モータ114、及びカッタ出口コンベア駆動用モータ116に設置されたパルスジェネレータ(PG)から、それぞれ回転パルス信号が入力される。I/Oポート102には、上述した第1シート検出センサ86と第2シート検出センサ88が接続されている。
【0056】
I/Oポート102には、さらに、表示装置であるタッチパネル118が接続されている。タッチパネル118はモニタを備え、このモニタには、後述する「メモリ4」(図17参照)の各ラップコンベアの速度や、「メモリ6」の各区間(区間0~9)(図19参照)のデータ等が、オペレータの操作により表示可能となっている。
【0057】
CPU104には、モータドライバ用CPU120が接続され、このモータドライバ用CPU120に、NO1~NO7ラップコンベア11~17の各駆動用モータ121~127、昇降フレーム昇降用モータ128、NO4~NO6ラップコンベア昇降用モータ129、NO7ラップコンベア移動用モータ130、ストッパ移動用モータ131が、それぞれモータドライバ134~144を介して接続される。
【0058】
各モータ121~131への命令(起動、速度など)は、CPU104から、モータドライバ用CPU120、各モータドライバ134~144の順で伝わり、各モータ121~131の情報(回転パルス信号など)は、各モータドライバ134~144からモータドライバ用CPU120、CPU104の順で入力される。
【0059】
次に、ROM106に格納される制御プログラムについて説明する。ROM106に格納される制御プログラムには、「コンベア駆動制御プログラム」、「後端間距離算出プログラム」、「昇降制御プログラム」が含まれる。
コンベア駆動制御プログラムは、生産中、NO1~NO7ラップコンベア11~17の各駆動モータ121~127を制御して、シートの搬送を行うためのプログラムである。
後端間距離算出プログラムは、生産中、後述する各メモリのデータを入力、更新して、NO7ラップコンベア17から放出されるシートの後端間距離を算出するためのプログラムである。
昇降制御プログラムは、生産中、昇降フレーム昇降用モータ34を制御して、NO7ラップコンベア17の下流端から放出されるシートの下面と、パレット28上に積載されたシートの上面との落差を、適切な値に保つためのプログラムである。
【0060】
次に、図9図13により、ROM106に格納される固定データであるデータA~Eについて説明する。
図9に示すように、データAは、基準となる搬送コンベア8の下流端の位置(以下「0地点」とする)から、「カッタ切断位置」、「カッタ出口コンベアの下流端」、「各NO1~NO6ラップコンベアの下流端」、「支持テーブル中心位置」までの距離をそれぞれ定めたデータである。例えば、0地点からNO2ラップコンベア下流端までの距離は、1600mmとなる。
【0061】
図10に示すように、データBは、通常生産時のNO1ラップコンベアの搬送速度の、搬送コンベア速度に対する速度比率を、シート切断長との関係で定めたデータである。
スタッカ装置は、生産中、「通常生産」と「切離し」を切り替えながら、順番にオーダを生産する。
ここで、「通常生産」とは、「NO1~NO7ラップコンベアを共通の速度に設定し、NO1~NO7ラップコンベア上を同一オーダのシートがオーバーラップ状態で搬送される状態」を指す。通常生産時は、NO1~NO7ラップコンベアを同じ速度に設定し、ラップコンベア間の速度差をなくすことにより、シートがラップコンベア間を乗り移る際に、シートの整列が乱れないようにしている。
【0062】
このように、通常生産時は、NO1~NO7ラップコンベアが同じ速度に設定されるため、搬送コンベアから送られたシートがNO1ラップコンベアに乗り移り、前のシートの上に重なった時に形成されるオーバーラップの密度(前後のシートの後端間距離)は、その後、シートが下流に搬送されて、各ラップコンベア間を乗り移る際も変化することなく、同じ密度(後端間距離)を維持したまま、NO7ラップコンベアの下流まで搬送される。
【0063】
したがって、通常生産時に、NO1~NO7ラップコンベアの上を搬送されるシートの後端間距離は、どのラップコンベアのどの区間においても同じ値になり、この共通の後端間距離の値(以下「後端間距離の基準値」という)は、上述した式7に基づく下記の式8で求められる。

《式8》
後端間距離の基準値の計算式
=通常生産時のNO1~NO7ラップコンベア上のシートの後端間距離
=通常生産時のNO1ラップコンベア上のシートの後端間距離
=シート切断長L×(搬送コンベアの搬送速度VT÷ライン速度V0)
×(通常生産時のNO1ラップコンベアの搬送速度V1÷搬送コンベアの搬送速度VT)
【0064】
データBには、後端間距離の基準値の算出に必要となる、通常生産時のNO1ラップコンベアの速度を搬送コンベアの速度で割った値(速度比率)が定められる。具体的には、シート切断長が長いほどNO1ラップコンベア速度が遅く、切断長が短いほどNO1ラップコンベア速度が速くなるように速度比率が定められ、これにより、シートの切断長が変更されても、シートを安定して整列して搬送できるようにしている。
なお、シート切断長だけでなく、フルートの種類も考慮して、速度比率を定めてもよい。
【0065】
図11に示すように、データCは、NO1~NO7ラップコンベアにそれぞれ設定される各区間の1区間分の長さを定めたデータである。
データCには、NO1~NO7ラップコンベアのそれぞれについて、ラップコンベアの長さを所定の区間数で割った値が、1区間分の長さとして定められる。例えば、NO1ラップコンベアの長さが1000mm、区間数が10の場合、NO1ラップコンベアの1区間分の長さは100mmとなる。
なお、NO7ラップコンベアについては、ラップコンベアの搬送面を最大限伸ばした状態(このとき、NO7ラップコンベア下流端の位置がシート搬送方向において支持テーブル中心位置に一致する)を想定して、区間を設定する。
【0066】
図12に示すように、データDは、NO7ラップコンベアに設定された各区間のうち、最も下流に存在する区間番号を、NO7ラップコンベア下流端の位置との関係で定めたデータである。
NO7ラップコンベアは、ラップコンベア下流端の位置が支持テーブル中心位置に一致した状態を想定して区間が設定されるが、実際には、NO7ラップコンベア下流端は、シート切断長に応じて移動するため、上流へ移動するほどラップコンベアの搬送面の長さが短くなり、ラップコンベアの下流部分に設定された区間が存在しなくなる。
【0067】
データDには、現在のNO7ラップコンベア下流端の位置から支持テーブル中心位置までの距離と、対応するNO7ラップコンベアの最下流区間番号が定められる。「最下流区間番号」とは、NO7ラップコンベアに設定された各区間のうち、最も下流に存在する区間の番号であり、NO7ラップコンベアの下流端が上流へ移動するほど、コンベアの搬送面の長さが短くなり、番号は小さくなる。例えば、NO7ラップコンベア下流端から支持テーブル中心位置までの距離が800mmの場合、区間9は存在せず、最下流区間は区間8となる。
【0068】
図13に示すように、データEは、シートの厚さをフルートと原紙の坪量との関係で定めたデータである。
段ボールシートの厚さは、例えば、Aフルートは約5mmのように、規格で定められているが、同じフルートのオーダであっても、それぞれオーダによって、生産された段ボールシートの厚さが小数点単位で異なる場合がある。この厚さの違いは、1枚単位では些細な違いでも、支持テーブルのパレット上に100枚単位で積上げられた時に、10mm単位でシート上面高さの違いとして現れ、積重ねの精度に影響を及ぼすことがある。
本発明の発明者らは、この段ボールシートの厚さの違いは、使用する原紙の違いが原因であり、原紙の厚さが厚いほど、シートの厚さも厚くなることに注目した。
【0069】
データEには、原紙の厚さが、原紙の坪量と相関関係がある(厚い紙ほど重い)ことを利用して、フルートと原紙の坪量に応じたシート厚さのデータ(実測値)が定められる。例えば、Aフルート、坪量が550g/m2の場合、シート厚さは5.1mmとなる。ここで、同じオーダで使用する中芯、裏ライナ、表ライナの3つの原紙は、同じ坪量のものを使用することが多いため、データEに定められる原紙の坪量は、中芯、裏ライナ、表ライナに共通の値とする。
なお、坪量の代わりに、フルートと原紙の種類に応じて、シート厚さを定めてもよい。また、厳密な制御が必要でない場合、フルートのみに応じたシート厚さを定めてもよい。
【0070】
次に、図14図19により、RAM108に設けられたメモリについて説明する。このRAM108には、生産中にデータが書き換え可能な作業メモリとして、以下説明するメモリ1~6が設けられている。
先ず、図14に示すように、メモリ1は、NO7ラップコンベア下流端から支持テーブル中心位置までの距離を記憶するためのメモリであり、この距離を入力する領域が設けられている。
【0071】
図15に示すように、メモリ2は、カッタ出口コンベア、搬送コンベア、NO1~NO7ラップコンベアの各ベルトの移動量を、各コンベアの長さと比較するためのメモリである。メモリ2には、各コンベアのそれぞれについて、コンベアの長さを記憶する領域と、生産オーダ順に複数オーダ分、ベルトの移動量を入力する領域が設けられている。
【0072】
図16に示すように、メモリ3は、生産中のオーダの最後のシートの後端位置を追跡するためのメモリである。メモリ3には、生産オーダ順に複数オーダ分、オーダ番号を記憶する領域、シート切断長を記憶する領域、0地点(搬送コンベアの下流端)からNO7ラップコンベア下流端までの距離を入力する領域、0地点からオーダ最終シートの後端までの距離を入力する領域が設けられる。
ここで、最終シートの後端の距離データには、そのシート後端が0地点より上流側に位置する場合は-の値、0地点より下流側に位置する場合は+の値で入力される。
また、メモリ3において、「生産順が1番目のオーダ」とは、NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されてラップコンベアから放出されるシートのオーダを指すものとする。
【0073】
図17に示すように、メモリ4は、ライン速度、カッタ出口コンベア速度、搬送コンベア搬送速度、NO1~NO7ラップコンベアの各搬送速度を記憶するメモリであり、各コンベアのそれぞれについて速度を入力する領域が設けられている。
【0074】
図18に示すように、メモリ5は、NO1~NO7ラップコンベアの各ベルトの移動量を、各ラップコンベアの1区間分の長さと比較するためのメモリである。メモリ5には、各コンベアのそれぞれについて、1区間分の長さを記憶する領域と、コンベアベルトの移動量を入力する領域が設けられている。
【0075】
図19に示すように、メモリ6は、NO1~NO7ラップコンベア上を搬送されるシートの「後端間距離の現在値」の「後端間距離の基準値」に対する比率を記憶するためのメモリである。メモリ6には、NO1~NO7ラップコンベアの各区間にそれぞれ対応して、区間を搬送されるシートの「後端間距離の現在値」の「基準値」に対する比率を入力する領域が設けられている。例えば、NO1~NO7ラップコンベアの区間数が10の場合、各ラップコンベアの区間0~区間9にそれぞれ対応して、合計70の記憶領域が設けられている。
ここで、「シートが区間を搬送される」とは、シートの後端が区間の領域に入っている状態を指すものとする。
【0076】
なお、変形例として、メモリ6に、NO1~NO7ラップコンベア上を搬送されるシートの「後端間距離の現在値」を記憶するようにしてもよい。この場合、NO1~NO7ラップコンベアの各区間にそれぞれ対応して、区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値を入力する領域が設けられる。
【0077】
次に、スタッカ装置の制御装置が実行する制御プログラムについて説明する。この制御プログラムには、「コンベア駆動制御プログラム」、「後端間距離算出プログラム」、「昇降制御プログラム」が含まれ、以下順に説明する。
【0078】
<コンベア駆動制御プログラム>
「コンベア駆動制御プログラム」は、従来と同様(例えば、特許第3612482号を参照)であり、ここでは、NO7ラップコンベア下流端の移動についてのみ説明する。
ここで、生産中のオーダ(前のオーダ)の最後のシートがカッタにより切断され、シート切断長が後のオーダに合わせて変更されることを「カッタオーダ変更」、前オーダの最終シートがNO7ラップコンベアから放出され、支持テーブルがパレットを排出して後オーダのシートを積む準備を始めることを「支持テーブルオーダ変更」とする。
【0079】
「カッタオーダ変更」の時点では、NO1~NO7ラップコンベア上にはまだ前オーダのシートが搬送されており、NO7ラップコンベアから前オーダのシートが放出されているため、NO7ラップコンベア下流端及びストッパは、前オーダのシート切断長に合せた位置のまま移動させない。その後、前オーダの最終シートがNO7ラップコンベアから放出された「支持テーブルオーダ変更」の時点で、NO7ラップコンベア下流端及びストッパを、後オーダのシート切断長に合せた位置に移動させる。
【0080】
<後端間距離算出プログラム>
「後端間距離算出プログラム」は、NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値を算出するプログラムである。
【0081】
1日の生産開始時に行う処理
図9のデータAに基づいて、図15のメモリ2に、カッタ出口コンベア、搬送コンベア、NO1~NO6ラップコンベアの各コンベア長さを入力する。
・上位生産管理装置から取得したオーダデータに基づいて、図16のメモリ3に、生産順に、オーダ番号とシート切断長を入力する。
図11のデータCに基づいて、図18のメモリ5にNO1~NO7ラップコンベアの1区間分の長さを入力する。
図19のメモリ6に、全ての区間の初期データとして比率に「1」を入力する。
なお、上述した変形例(メモリ6に後端間距離の現在値を記憶)の場合、全ての区間の初期データとして、最初に生産するオーダの通常生産時の後端間距離を、上述した式8に基づいて算出し入力する。
【0082】
生産中に繰り返し行う処理(i)~(iii)
(i)NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の基準値の算出
「後端間距離の基準値」とは、「通常生産時にNO1~NO7ラップコンベア上を搬送されるシートの後端間距離の値」を指す。この基準値を算出するために、以下の(i-1)~(i-5)の処理を実行する。
【0083】
(i-1)NO7ラップコンベアの長さ及び0地点からNO7ラップコンベア下流端までの距離の算出
生産中、NO7ラップコンベア移動用モータのパルスジェネレータの値を参照して、図14に示すメモリ1の「NO7ラップコンベア下流端から支持テーブル中心位置までの距離」を入力する。
また、図9のデータAから、「0地点から支持テーブル中心位置までの距離」と、「0地点からNO6ラップコンベア下流端までの距離」を読み出し、これらを差し引くことにより、NO6ラップコンベア下流端(=NO7ラップコンベア上流端)から支持テーブル中心位置までの距離を算出する。
そして、このNO7ラップコンベア上流端から支持テーブル中心位置までの距離から、図14のメモリ1の「NO7ラップコンベア下流端から支持テーブル中心位置までの距離」を差し引くことにより、NO7ラップコンベアの長さを算出して、図15のメモリ2に入力する。
【0084】
また、図9のデータAから「0地点から支持テーブル中心位置までの距離」を読み出し、この距離から、図14のメモリ1の「NO7ラップコンベア下流端から支持テーブル中心位置までの距離」を差し引くことにより、0地点からNO7ラップコンベア下流端までの距離を算出し、図16のメモリ3の「生産順が1番目のオーダに関するデータ」として入力する。この(i-1)の処理は、上述した変形例の場合も同様に行う。
【0085】
(i-2)オーダの最後のシートの移動量の算出
生産中、カッタオーダ変更信号を取得した時に、カッタ出口コンベア駆動モータの回転パルス信号のカウントを開始し、図15のメモリ2の「生産順が1番目のオーダに関するカッタ出口コンベアのベルト移動量」に、カウント数に応じたベルト移動量を入力していく。
そして、カッタ出口コンベアのベルト移動量が、カッタ出口コンベアの長さに一致した時点で、搬送コンベア駆動モータの回転パルス信号のカウントに移行し、図15のメモリ2の「生産順が1番目のオーダに関する搬送コンベアのベルト移動量」に、カウント数に応じたベルト移動量を入力していく。同様に、上流側のコンベアから順々に、ベルトの移動量を入力していく。この(i-2)の処理は、上述した変形例の場合も同様に行う。
【0086】
(i-3)オーダの最後のシートの後端位置の算出
生産中、カッタオーダ変更信号を取得した時に、オーダ最終シートの後端はカッタ切断位置にあるため、図9のデータAから「0地点からカッタ切断位置までの距離」を読み出し、図16のメモリ3の「生産順が1番目のオーダに関する0地点からオーダ最終シートの後端までの距離」に、-の値で入力する。
その後、この値に、図15のメモリ2の「各コンベアのベルトの移動量」を逐次加算していく。ベルトの移動量が増えるにつれて、最終シートは下流に移動していき、図16のメモリ3の値は、-から0になり(このとき最終シートの後端は搬送コンベア下流端に到達)、その後+に転じて値が増えていく。この(i-3)の処理は、上述した変形例の場合も同様に行う。
【0087】
(i-4)メモリ3の生産順の更新
生産中、図16のメモリ3において、「生産順が1番目のオーダに関する0地点からオーダ最終シート後端までの距離」が、「0地点からNO7ラップコンベア下流端までの距離」に一致した時に、最終シートの後端がNO7ラップコンベアの下流端に到達してコンベアから放出されたと判断して、メモリ3の「生産順が1番目のオーダに関するデータ」を消去し、「生産順が2番目以降のオーダ」の順番を1つずつ繰り上げる。この後、NO7ラップコンベアから放出されるシートは、生産順が2番目から1番目に繰り上がったオーダのシートとなる。
また、図15のメモリ2の「生産順が1番目のオーダに関する各ベルトの移動量」をリセットする。
【0088】
なお、1番目オーダの最終シートがNO7ラップコンベア下流端に到達する前に、2番目のオーダの最終シートが切断された場合は、メモリ2とメモリ3の生産順が2番目のオーダ用の記憶領域も利用して、複数のオーダの最終シートの後端位置を同時並行で追跡する。この(i-4)の処理は、上述した変形例の場合も同様に行う。
上述した(i-1)~(i-4)の処理は、図16のメモリ3の、生産順が1番目のオーダ(NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートのオーダ)を更新するための処理である。
【0089】
(i-5)NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の基準値の算出
生産中、ダブルフェーサ駆動用モータの回転パルス信号に基づいてライン速度を算出し、また、カッタ出口コンベア駆動モータの回転パルス信号に基づいて搬送コンベア速度を算出し(なお、カッタ出口コンベアと搬送コンベアは同じ速度に設定される)、図17のメモリ4に入力する。
また、図16のメモリ3から「生産順が1番目のオーダのシート切断長」を読み出し、図10のデータBから、そのシート切断長に応じた速度比率(通常生産時のNO1ラップコンベア速度÷搬送コンベア速度)を読み出す。
そして、上述した式8(後端間距離の基準値の算出式)に各値を代入して、NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の基準値を算出する。
【0090】
なお、上述した変形例の場合、図17のメモリ4へのライン速度、搬送コンベア速度の入力は同様に行うが、基準値の算出は不要となる。ただし、後述する「後端間距離の現在値の補正」を行う場合は、上述した基準値の算出を同様に行う。
【0091】
(ii)NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値の基準値に対する比率の算出
生産中、NO1~NO7ラップコンベアの各駆動モータの回転パルス信号に基づいて、NO1~NO7ラップコンベアの搬送速度を算出し、図17のメモリ4に入力する。
また、生産中、NO1~NO7ラップコンベアについてそれぞれ、駆動モータの回転パルス信号をカウントし、図18のメモリ5の、NO1~NO7ラップコンベアのベルト移動量に、パルスカウント数に応じたベルト移動量を入力する。
そして、各ラップコンベアについてそれぞれ、ベルト移動量が1区間分の長さに一致した時に、パルスカウント数をリセットし、再び0からカウントを開始する。この処理は、上述した変形例の場合も同様に行う。
さらに、図19のメモリ6について、以下(ii-1)~(ii-3)の処理を同時並行で実行する。
【0092】
(ii-1)NO1ラップコンベアの区間0のデータの更新処理
NO1ラップコンベアの区間0は、搬送コンベアからシートが乗り移る区間であり、この区間を搬送されるシートの後端間距離は、上述した式7で表されるように、NO1ラップコンベアの速度に応じて変化する。
【0093】
この区間の更新は、図18のメモリ5のNO1ラップコンベアのベルト移動量が、NO1ラップコンベアの1区間分の長さに一致する度に行う。
更新タイミングになると、まず図16のメモリ3から、0地点からオーダ最終シート後端までの距離が+の値のオーダ(最終シート後端が搬送コンベア下流端より下流に位置するオーダ)を除いて、最も生産順の早いオーダのシート切断長を読み出す。これは、搬送コンベアからNO1ラップコンベアに乗り移るシートの切断長に相当する。
【0094】
次に、図10に示すデータBから、そのシート切断長に応じた速度比率(通常生産時のNO1ラップコンベア速度÷搬送コンベア速度)を読み出し、図17のメモリ4から、搬送コンベア速度を読み出し、搬送コンベア速度に速度比率を掛けることにより、通常生産時のNO1ラップコンベア速度を算出する。
そして、図17のメモリ4から、現在のNO1ラップコンベア速度を読み出し、現在のNO1ラップコンベア速度を通常生産時のNO1ラップコンベアの速度で割った値(速度比率)を、図19のメモリ6のNO1ラップコンベアの区間0のデータに上書きする。
【0095】
なお、上述した変形例(図19のメモリ6に後端間距離の現在値を記憶)の場合、更新タイミングになると、図16のメモリ3から、0地点からオーダ最終シート後端までの距離が+の値のオーダを除いて、最も生産順の早いオーダのシート切断長を読み出し、また、図17のメモリ4から、現在のNO1ラップコンベア速度、ライン速度、搬送コンベア速度を読み出し、上述した式7に代入して、後端間距離の現在値を算出し、図19のメモリ6の、NO1ラップコンベアの区間0のデータに上書きする。
【0096】
(ii-2)NO1~NO7ラップコンベアの区間1~9の更新処理
NO1~NO7ラップコンベアの区間1~区間9は、同じラップコンベアの区間0~区間8からシートが移動する区間であり、上流側の区間から下流側の区間へのシートの移動が同じラップコンベア上で行われ、区間間に速度差が生じないため、後端間距離は変化しない。
この区間の更新は、図18のメモリ5のNO1~NO7ラップコンベアのそれぞれについて、ベルト移動量が、ラップコンベアの1区間分の長さに一致する度に行う。
更新タイミングになったラップコンベアは、図19のメモリ6の区間0~区間8のデータを、同じラップコンベアの区間1~区間9に一つずつずらして上書きする。
なお、NO7ラップコンベアは、区間9まで存在するとして、他のラップコンベアと同様に処理する。この(ii-2)の処理は、上述した変形例の場合も同様に行う。
【0097】
(ii-3)NO2~NO7ラップコンベアの区間0の更新処理
NO2~NO7ラップコンベアの区間0は、上流側のNO1~NO6ラップコンベアの区間9からシートが乗り移る区間であり、上流側ラップコンベアの区間9から下流側ラップコンベアの区間0に乗り移ったシートの後端間距離は、上述した式4で求められる。
すなわち、下流側ラップコンベアの区間0を搬送されるシートの後端間距離は、上流側ラップコンベアの区間9を搬送されていたときの後端間距離に対して、ラップコンベア間の速度比率で変化する。
【0098】
この区間の更新は、図18のメモリ5の、NO1~NO6ラップコンベアのそれぞれについて、ベルト移動量が、ラップコンベアの1区間分の長さに一致する度に行う。
更新タイミングになったラップコンベア(上流側ラップコンベア)は、図17のメモリ4から、その上流側ラップコンベアの速度と、下流側ラップコンベアの速度を読み出し、下流側ラップコンベアの速度を上流側ラップコンベアの速度で割った値(速度比率)を算出する。
そして、図19のメモリ6の、その上流側ラップコンベアの区間9のデータに、算出した速度比率を掛けた値を、下流側ラップコンベアの区間0のデータとして上書きする。この(ii-3)の処理は上述した変形例の場合も同様に行う。
【0099】
ここで、各ラップコンベアの区間数を統一することにより、図19のメモリ6の更新処理プログラムを、各ラップコンベアに共通の区間番号で作成して、プログラムをシンプルにすることができる。また、各ラップコンベアについてそれぞれ、各区間の長さを同じにする(すなわち、ラップコンベアを均等に分割する)ことにより、図18のメモリ5に記憶する1区間分の長さが、各ラップコンベアにそれぞれ1種類となり、プログラムをシンプルにすることができる。ただし、各ラップコンベアにおいて1区間分の長さが同じになるように、それぞれ区間数を異なる数に設定してもよい。
【0100】
また、ラップコンベアの区間数は10に限定されず、区間数を多くするほど、ラップコンベア上のシートの後端間距離の分布状況をより細かく把握することできる。反対に、区間数を少なくするほど、データ量が減り、処理速度を速めることができる。
【0101】
本実施形態において、各ラップコンベアを複数に分割しない(各ラップコンベアの区間数が1)の場合、NO1ラップコンベアのデータの更新処理は、上述した「(ii-1)NO1ラップコンベアの区間0のデータの更新処理」において、データの更新を、NO1ラップコンベアのベルト移動量が、NO1ラップコンベアの長さに一致する度に行うようにする。
【0102】
また、NO2~NO7ラップコンベアのデータの更新処理は、上述した「(ii-3)NO2~NO7ラップコンベアの区間0の更新処理」において、データの更新を、NO1~NO6ラップコンベアのそれぞれについて、ベルト移動量が、ラップコンベアの長さに一致する度に行うようにし、また、更新タイミングになったラップコンベア(上流側ラップコンベア)について記憶されているデータに、下流側ラップコンベアの速度をその上流側ラップコンベアの速度で割った値(速度比率)を掛けた値を、下流側ラップコンベアのデータに上書きするようにする。
【0103】
ちなみに、切離しの際に、前オーダの最後のシートと後オーダの最初のシートの間隔が広がると、シートが載っていない区間が発生する。しかし、図19のメモリ6の処理では、このオーダの境目となるシートの位置は考慮しておらず、シートが載っていない区間についても、データが入力された状態となる。このシートが載っていない区間のデータ(ダミーデータ)は、後述する昇降制御プログラムにより、昇降フレームの上昇速度に反映されないように処理される。
【0104】
(iii)NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値の算出
生産中、図14のメモリ1から「NO7ラップコンベア下流端から支持テーブル中心位置までの距離」を読み出し、図12のデータDから、この距離に応じたNO7ラップコンベアの最下流区間番号を読み出す。
そして、図18のメモリ5のNO7ラップコンベアのベルト移動量が、NO7ラップコンベアの1区間分の長さに一致する度に、図19のメモリ6から、NO7ラップコンベアの最下流区間のデータ(最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値の基準値に対する比率)を読み出す。
そして、その比率のデータを、上述した(i)で算出した後端間距離の基準値に掛けることにより、NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値を算出する。
【0105】
なお、上述した変形例の場合、図19のメモリ6から、NO7ラップコンベアの最下流区間のデータ(最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値)を読み出す。
【0106】
<メモリ6(図19)の更新例>
本実施形態は、どのような切離し方法でも実施できるが、一例として、切離し時に、前オーダのシートの搬送を加速するとともに、後オーダの搬送を低速にして、前オーダの最後のシートと後オーダの最初のシートとの間隔を広げるようにした場合について、以下説明する。
【0107】
《設定》
・ライン速度:250m/分
・搬送コンベア速度:300m/分
・生産順1番目オーダA:シート切断長1000mm
通常生産時のNO1ラップコンベア速度:300m/分×14%=42m/分(図10のデータBより)
・生産順2番目オーダB:シート切断長2000mm
通常生産時のNO1ラップコンベア速度:300m/分×11%=33m/分(図10のデータBより)
・各ラップコンベアの1区間分長さ:NO1ラップコンベアは100mm、NO2は60mm、NO3は80mm、NO4は120mm、NO5は390mm、NO6は470mm、NO7は490mm(図11のデータCより)
【0108】
オーダAの通常生産時
・NO1~NO7ラップコンベア速度が、全てオーダAの通常生産時の42m/分に設定される。
~メモリ6の更新~
NO1ラップコンベアに関して、100mm÷42m/分の時間が経過すると、図18のメモリ5のNO1ラップコンベアのベルト移動量が1区間分の長さに一致する。
この更新タイミングで、メモリ6におけるNO1ラップコンベアの区間0~9と、NO2ラップコンベアの区間0のデータが更新される。
例えば、NO1ラップコンベア速度42m/分÷オーダAの通常生産時のNO1ラップコンベア速度42m/分=42/42=1が、NO1ラップコンベアの区間0に上書きされる。
ここで、区間のデータ(後端間距離の現在値の基準値に対する比率)が1となるので、搬送コンベアからNO1ラップコンベアの区間0に乗り移ったオーダAのシートの後端間距離は、後端間距離の基準値(オーダAの通常生産時における後端間距離)と同じとなる。
【0109】
なお、上述した変形例(メモリ6に後端間距離の現在値を記憶)の場合、式7より、オーダAのシート切断長1000mm×(搬送コンベア速度300m/分÷ライン速度250m/分)×(NO1ラップコンベア速度42m/分÷搬送コンベア速度300m/分)=168mmが、後端間距離の現在値として、NO1ラップコンベアの区間0に上書きされる。NO1ラップコンベアの区間0の以外の区間の更新は、本実施形態と同様である。
【0110】
また、上記の更新タイミングで、NO1ラップコンベアの区間0のデータが、NO1ラップコンベアの区間1にコピーされる。これにより、オーダAのシートが、NO1ラップコンベアの区間0から区間1に、同じ後端間距離を保ったまま移動する状況がデータに反映される。
区間2~区間9についても同様に、上流側の区間のデータが下流側の区間にコピーされる。
【0111】
さらに、上記の更新タイミングで、NO1ラップコンベヤの区間9のデータに、NO2ラップコンベア速度42m/分÷NO1ラップコンベア速度42m/分=42/42=1を掛けたデータが、NO2ラップコンベヤの区間0に上書きされる。
【0112】
NO2ラップコンベヤ~NO7ラップコンベヤにおいても、上述したNO1ラップコンベヤと同様な更新処理を行う。
このように、通常生産時においては、NO2ラップコンベヤ~NO7ラップコンベヤにおいて、その1区間分の長さ÷コンベア速度42m/分が経過すると、メモリ6のそのラップコンベアの区間1~区間9と、その下流のラップコンベアの区間0のデータが更新される。
このように、通常生産時においては、NO1~NO7のラップコンベアにおいて、後端間距離は変化せず、基準値と同じとなる。
【0113】
カッタオーダ変更となり、オーダBのシートがNO1ラップコンベアに送られ、オーダAの最後のシートの後端がNO1ラップコンベアからNO2ラップコンベアに乗り移った時
・NO1ラップコンベアの速度を、低速の18m/分に変更する。
・NO2~NO5ラップコンベアの速度を、高速の150m/分に変更する。
・NO6及びNO7ラップコンベアの速度を、高速の100m/分に変更する。
特に、NO7ラップコンベアの搬送速度は、NO7ラップコンベアから放出されたシートがストッパに衝突した際にシートが損傷しないように設定される。
【0114】
~メモリ6更新~
NO2ラップコンベアに関して、60mm÷150m/分の時間が経過した時、NO2ラップコンベアの区間1~9と、NO3ラップコンベアの区間0のデータが更新される。 例えば、NO2ラップコンベアの区間0のデータが、NO2ラップコンベアの区間1にコピーされる。これにより、オーダAのシートが、NO2ラップコンベアの区間0から区間1に、同じ後端間距離を保ったまま移動する状況がデータに反映される。
なお、このNO2ラップコンベアの区間0のデータは、NO1ラップコンベアに関して、100mm÷18m/分の時間が経過するまで更新されない。
この更新までの間に、60mm÷150m/分の時間が経過する度に(すなわち、NO2ラップコンベアのベルト移動量が1区間分の長さに一致する毎に)、NO2ラップコンベアの区間0から区間1、2、3・・・へデータが移行していく。
これにより、オーダBの最初のシートがNO1ラップコンベアからNO2ラップコンベアの区間0に乗り移る前に、オーダAの最後のシートが、NO2ラップコンベアの区間0から区間1、2、3・・・へ移動していき、オーダAの最後のシートとオーダBの最初のシートの間隔が広がり、NO2ラップコンベアの上流部分から徐々に、シートが存在しない区間が広がっていく状況がデータに反映される。
なお、NO1ラップコンベアに関して、100mm÷18m/分の時間が経過した時の更新については後述する。
【0115】
NO3ラップコンベヤ~NO5ラップコンベヤにおいても、上述したNO2ラップコンベヤと同様な更新処理を行う。
例えば、NO5ラップコンベアの区間9のデータに、NO6ラップコンベア速度100m/分÷NO5ラップコンベア速度150m/分の値100/150を掛けた値が、NO6ラップコンベアの区間0のデータに上書きされる。
これにより、オーダAのシートが、NO5ラップコンベアの区間9から、NO6ラップコンベアの区間0に乗り移る際に、後端間距離が100/150の割合で短くなる(オーバーラップが密になる)状況がデータに反映される。
【0116】
NO6ラップコンベヤ及びNO7ラップコンベヤにおいても、同様な更新処理を行う。
その後、各ラップコンベアの速度を、オーダAの最後のシートの通過が完了したラップコンベアから順に、低速18m/分に変更していく。
【0117】
NO1ラップコンベアに関して、上述した100mm÷18m/分の時間が経過した時に、オーダAの最後のシートがNO3ラップコンベアに載っており、NO1ラップコンベアとNO2ラップコンベアが低速18m/分に設定されているとすると、この更新タイミングで、NO1ラップコンベアの区間0に、NO1ラップコンベア速度18m/分÷オーダBの通常生産時のNO1ラップコンベア速度33m/分の値18/33が上書きされる。
これにより、搬送コンベアからNO1ラップコンベアの区間0に乗り移ったオーダBのシートの後端間距離は、基準値に対して18/33の割合で短くなる(オーバーラップが密になる)状況がデータに反映される。
【0118】
なお、上述した変形例の場合、式7より、オーダBのシート切断長2000mm×(搬送コンベア速度300m/分÷ライン速度250m/分)×(NO1ラップコンベア速度18m/分÷搬送コンベア速度300m/分)=144mmが、後端間距離の現在値として、NO1ラップコンベアの区間0に上書きされる。
【0119】
また、上記の更新タイミングで、NO1ラップコンベアの区間9のデータに、NO2ラップコンベア速度18m/分÷NO1ラップコンベア速度18m/分の値18/18=1を掛けた値が、NO2ラップコンベアの区間0に上書きされる。
これにより、NO1ラップコンベアとNO2ラップコンベアの間に速度差がないので、NO1ラップコンベアの区間9からNO2ラップコンベアの区間0に乗り移ったオーダBのシートの後端間距離が変化しない状況がデータに反映される。
【0120】
その後、オーダAの最後のシートの後端とオーダBの最初のシートの先端が離れた後は、各ラップコンベアの速度を、オーダAの最後のシートの通過が完了したラップコンベアから順に、オーダBの通常生産時の速度33m/分に変更していく。
【0121】
オーダAの最後のシートの後端がNO7ラップコンベアから放出されるとき
NO7ラップコンベアの速度を、オーダBの通常生産時の33m/分に変更することにより、NO1~NO7ラップコンベアの速度が、全てオーダBの通常生産時の33m/分に設定される。
【0122】
~メモリ6の更新~
NO1ラップコンベアに関して、100mm÷33m/分の時間が経過した時、NO1ラップコンベアの区間0~9と、NO2ラップコンベアの区間0のデータが更新される。
例えば、NO1ラップコンベア速度33m/分÷オーダBの通常生産時のNO1ラップコンベア速度33m/分=33/33=1が、NO1ラップコンベアの区間0に上書きされる。
ここで、区間のデータ(後端間距離の現在値の基準値に対する比率)が1となるので、搬送コンベアからNO1ラップコンベアの区間0に乗り移ったオーダBのシートの後端間距離は、後端間距離の基準値(オーダBの通常生産時における後端間距離)と同じとなる。
【0123】
なお、上述した変形例の場合、式7より、オーダBのシート切断長2000mm×(搬送コンベヤ速度300m/分÷ライン速度250m/分)×(NO1ラップコンベア速度33m/分÷搬送コンベア速度300m/分)=264mmが、後端間距離の現在値として、NO1ラップコンベアの区間0に上書きされる。
NO2ラップコンベア~NO7ラップコンベアに関しても、同様に、その1区間分の長さ÷コンベア速度33m/分の時間が経過した時、そのラップコンベアの区間1~9と、その下流のラップコンベアの区間0のデータが更新される。
【0124】
<後端間距離の現在値の補正>
次に、図20を参照して、上述した後端間距離の現在値の補正について説明する。
本実施形態においては、上述した「(iii)NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値の算出」において算出した後端間距離の現在値を、以下の方法により補正し、その補正した値(補正値)を、後述する昇降制御プログラムの(I)昇降フレームの上昇速度(支持テーブルの下降速度)の算出に使用することにより、より正確な値を得ることができる。
【0125】
補正方法
上述したように、本実施形態においては、式4に記載のように、「オーバーラップ状態で搬送される前後のシートが下流側ラップコンベアに乗り移った時点での後端間距離lDが、その前後のシートが上流側ラップコンベアを搬送されている時点での後端間距離lUに対して、ラップコンベア間の搬送速度の比率「VD÷VU」に応じて変化する」ことを利用して、シートがNO1ラップコンベアからNO7ラップコンベアまで搬送される過程での後端間距離の変化を記録し、NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離を把握している。
【0126】
しかし、この式4は理論上の式であり、厳密に言えば、シートの摩擦の影響により、シートの後端間距離がラップコンベア間の速度比率に応じて変化しない。この理由を、以下に説明する。
オーバーラップ状態で搬送される前後のシートが速度の異なるラップコンベアを乗り移る際に、そのシートの後端間距離が変化するのは、前のシートが下流側ラップコンベアに乗り移った時点から、後のシートが下流側ラップコンベアに乗り移る時点までの間において、「下流側ラップコンベアが前のシートをグリップして移動させようとする力」が、「前後のシートの重なる部分にその移動させようとする力とは逆向きに作用する摩擦力」を上回るためである。
【0127】
ここで、ラップコンベアの搬送面(ベルト)とシートの接地面積が小さい場合、ラップコンベアがシートをグリップする力が弱まるため、相対的に摩擦力の影響が大きくなり、前のシートが後のシートに対して移動しにくくなる。この場合、前のシートの後のシートに対する移動量、すなわち後端間距離の変化量が、理論上の変化量よりも小さくなる。
【0128】
そこで、本実施形態では、「(iii)NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の現在値の算出」において、まず、図19のメモリ6から、NO7ラップコンベアの最下流区間のデータ(現在値の基準値に対する比率、変形例の場合は現在値であり、いずれも理論値)を読み出し、そのデータと、「(i-5)NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートの後端間距離の基準値の算出」において算出された基準値に基づいて、理論上の後端間距離の変化量(理論値)を算出する。
【0129】
次に、その後端間距離の変化量の理論値に、後述する補正係数(図20参照)を掛けることによって、実際の後端間距離の変化量(補正値)を算出し、この変化量の補正値を、基準値から差し引くことにより、実際の後端間距離の現在値(補正値)を算出するようにしている。
【0130】
例えば、NO7ラップコンベアの最下流区間のシートの後端間距離の基準値を200mm、図19のメモリ6のNO7ラップコンベアの最下流区間のデータ(現在値の基準値に対する比率)を0.8、後述する補正係数を0.8とすると、後端間距離の変化量の理論値は、以下の式により求められる。

《後端間距離の変化量の理論値》
=後端間距離の基準値-後端間距離の現在値(理論値)
=後端間距離の基準値-後端間距離の基準値×メモリ8の比率
=後端間距離の基準値×(1-メモリ6の比率)
=200mm×(1-0.8)=200mm×0.2=40mm
【0131】
次に、実際の後端間距離の変化量(補正値)は、以下の式により求められる。

《後端間距離の変化量の補正値》
=後端間距離の変化量の理論値×補正係数
=後端間距離の基準値×(1-メモリ6の比率)×補正係数
=200mm×(1-0.8)×0.8=200mm×0.16=32mm
【0132】
よって、実際の後端間距離の現在値(補正値)は、以下の式により求められる。

《後端間距離の現在値の補正値》
=後端間距離の基準値-後端間距離の変化量の補正値
=後端間距離の基準値-{後端間距離の基準値×(1-メモリ6の比率)×補正係数}
=後端間距離の基準値×{1-(1-メモリ6の比率)×補正係数}
=200mm×{1-(1-0.8)×0.8}=200mm×0.84=168mm
【0133】
そして、この後端間距離の現在値の補正値に基づいて、昇降フレームの上昇速度(支持テーブルの下降速度)を算出することにより、昇降フレームの上昇速度を、NO7ラップコンベアから放出されるシートの実際の密度に即した値にすることができる。
【0134】
一方、上述した変形例の場合、図19のメモリ6のNO7ラップコンベアの最下流区間のデータ(後端間距離の現在値)を160mmとすると、後端間距離の変化量の理論値は、以下の式により求められる。

《後端間距離の変化量の理論値》
=後端間距離の基準値-後端間距離の現在値(理論値)
=後端間距離の基準値-メモリ6の現在値
=200mm-160mm=40mm
【0135】
次に、実際の後端間距離の変化量(補正値)は、以下の式により求められる。

《後端間距離の変化量の補正値》
=後端間距離の変化量の理論値×補正係数
=(後端間距離の基準値-メモリ6の現在値)×補正係数
=(200mm-160mm)×0.8=40mm×0.8=32mm
【0136】
よって、実際の後端間距離の現在値(補正値)は、以下の式により求められる。

《後端間距離の現在値の補正値》
=後端間距離の基準値-後端間距離の変化量の補正値
=200mm-32mm=168mm

そして、この後端間距離の現在値の補正値に基づいて、昇降フレームの上昇速度を算出する。
【0137】
図20に示すデータFは、後端間距離の変化量の理論値を補正するための補正係数を定めたデータである。
この補正係数が1より小さいのは、実際の後端間距離の変化量(補正値)が、理論上の後端間距離の変化量(理論値)に比べて小さくなるためである。また、補正係数の値が1に近い値であるほど、後端間距離の変化量の補正値は、理論値に近づき、このため、後端間距離の現在値の補正値も、理論値に近いものとなる。
【0138】
ラップコンベアがシートをグリップして移動させる力の大きさは、ラップコンベアのベルトとシートの接地面積の大きさが関係し、この接地面積の大きさは、「シートの厚さ」及び「シートの切断長」と関係するので、データFにおいて、シートの厚さを表すフルート及びシート切断長のそれぞれに応じた補正係数のデータが実測値に基づいて定められている。
【0139】
例えば、ABフルート(AフルートとBフルートが重なった2層シートで厚さ約8mm)の場合、シートが厚いため、シートがオーバーラップする時に、ラップコンベアに対するシートの角度が大きくなって(シートが立った状態に近くなる)、ラップコンベアとシートの接地面積が小さくなり、グリップが弱くなる。よって、シートは摩擦力の影響でずれにくくなり、実際の後端間距離の変化量は、変化量の理論値に比べてより小さくなることから、補正係数はより小さい値に設定される。
【0140】
一方、Bフルート(厚さ約3mm)の場合、シートが薄いため、シートがオーバーラップする時に、ラップコンベアに対するシートの角度が小さくなって(シートが寝た姿勢に近くなる)、ラップコンベアとシートの接地面積が大きくなり、グリップが効きやすくなる。よって、シートは比較的ずれやすくなり、実際の後端間距離の変化量は、変化量の理論値に近くなることから、補正係数はより1に近い値に設定される。
このように、データFには、厚いフルートほど補正係数がより小さくなるように、フルート別に補正係数が定められる。
【0141】
また、シートの切断長が短い場合も、シートのサイズ自体が小さいために、コンベアとシートの接地面積が小さくなり、グリップが弱くなる。よって、シートは摩擦力の影響でずれにくくなり、実際の後端間距離の変化量は、変化量の理論値に比べてより小さくなるので、補正係数はより小さい値に設定される。
このように、データFには、シート切断長が短いほど補正係数がより小さくなるように、シート切断長別に補正係数が定められる。
【0142】
なお、補正係数は、フルートや切断長に加えて、使用する原紙の種類別に定めてもよい。この場合、硬くてコシのある原紙の場合は、柔らかい原紙の場合と比べて、シートが撓みにくいため、コンベアとシートの接地面積が小さくなり、グリップが弱くなる。よって、原紙の材質が硬いものほど、シートは摩擦力の影響でずれにくくなり、実際の後端間距離の変化量は、変化量の理論値に比べてより小さくなることから、補正係数はより小さい値に設定される。
【0143】
補正係数の別の使用例
上述したデータFの補正係数は、後端間距離の現在値の理論値を、実際の現在値に補正するために使用されるものであるが、別の使用例として、運用上の問題に対応するために、後端間距離の現在値を、あえて実際の値とは異なる値に補正することも可能である。
【0144】
例えば、オーダの最初の1枚目のシートがNO7ラップコンベアの下流端に到達する前に、そのオーダの最後のシートがカッタにより切断された場合、カッタオーダ変更となり、後続のオーダとの切離しが行われる。この切離しにより、そのオーダのシートは高速で下流に送られ、最初の1枚目のシートから次々に高速で放出されてパレットへ積み込まれることになる。
【0145】
一方、その最初の1枚目が放出される時点で、パレットにはシートが載っておらず、昇降フレームは停止しているため、1枚目のシートから次々に高速で積み込まれるのに合わせて、昇降フレームを停止状態から急上昇させようとしても、昇降フレームは大型で重いため、すぐに目標の上昇速度で上昇させることができない。その結果、シートの積込みペースに対して昇降フレームの上昇が追い付かず、ラップコンベアから放出されるシートの下面とパレット上のシート上面との落差が小さくなってしまう。
【0146】
そこで、このような場合に適用する補正係数として、1より大きい補正係数(例えば1.1)を定め、後端間距離の現在値を、あえて実際の値よりも小さく補正することにより、ラップコンベアから放出されるシートの密度を実際よりも密であるとみなして、昇降フレームの上昇速度を、理論上の速度よりも高速に補正するようにする。
これにより、最初はシートの積込みペースに対して昇降フレームの上昇が遅れるものの、その後、シートの積込みペースに対して昇降フレームの上昇速度の方が速くなり、最初の遅れ分を取り戻して、シートの落差を速やかに適切な値に修正することができる。
【0147】
<昇降制御プログラム>
昇降制御プログラムは、上述した式2により、昇降フレームの上昇速度を算出し、昇降フレーム昇降用モータの回転を制御するプログラムである。
【0148】
生産中に繰り返し行う処理(I)(II)
(I)昇降フレームの上昇速度の算出
生産中、図16のメモリ3における、生産順が1番目のオーダ(NO7ラップコンベアの最下流区間を搬送されるシートのオーダに相当する)のオーダ番号を参照して、そのオーダのフルートと原紙の坪量を読み出し、図13のデータEから、そのフルートと原紙の坪量に応じたシート厚さを読み出す。
【0149】
そして、上述の後端間距離算出プログラムにより、NO7ラップコンベアの最下流区間のシートの後端間距離の現在値が算出される度に、図17のメモリ4から、NO7ラップコンベアの速度を読み出し、式2により、このNO7ラップコンベア速度を、後端間距離の現在値で割った値に、シート厚さを掛けることにより、昇降フレームの上昇速度を算出する。
【0150】
(II)昇降フレーム昇降用モータ(支持テーブル昇降用モータ)の制御
(I)で算出した昇降速度で昇降用モータを制御する条件として、以下の2つの条件を設定する。
【0151】
1つ目の条件は、NO7ラップコンベアの下流端からシートが放出されている、という条件である。これは、切離し時に、前オーダの最後のシートがNO7ラップコンベアから放出された後、後オーダの最初のシートがNO7ラップコンベアに到達して放出されるまでの間、NO7ラップコンベアからシートが放出されないため、この期間中のコンベアの上昇を停止するための条件である。この条件は、第1シート検出センサからシート検出信号を取得している時に満たされる。
なお、センサを用いる代わりに、前オーダの最後のシートと、後オーダの最初のシートをそれぞれ追跡し、前オーダ最終シートがNO7ラップコンベア下流端に到達した後、後オーダ最初シートがコンベア下流端に到達するまでの間、条件が満たされないとしてもよい。
【0152】
2つ目の条件は、支持テーブル上のパレット上にシートが所定高さまで積まれている、という条件である。これは、パレットが新しいものに交換されて、まだパレット上にシートが積載されていない状態や、数枚だけ積載された状態の期間は、NO7ラップコンベアの下流端とパレット上面との落差が適性値より大きいため、この期間中のコンベアの上昇を停止するための条件である。この条件は、第2シート検出センサからシート検出信号を取得している時に満たされる。
【0153】
この2つの条件の両方が満たされる時のみ、算出した昇降フレームの上昇速度となるように、昇降フレーム昇降用モータを制御し、いずれか一方でも条件が満たされていない場合は、昇降用モータの回転を停止することにより、上述した、シートが載っていない区間のデータ(ダミーデータ)が、昇降フレームの上昇速度に反映されないように処理することができる。
【符号の説明】
【0154】
1 スタッカ装置
2 カッタ
6 カッタ出口コンベア
8 搬送コンベア
11 NO1ラップコンベア
12 NO2ラップコンベア
13 NO3ラップコンベア
14 NO4ラップコンベア
15 NO5ラップコンベア
16 NO6ラップコンベア
17 NO7ラップコンベア
26 支持テーブル
28 パレット
30 昇降フレーム
76 ストッパ
86 第1シート検出センサ
88 第2シート検出センサ
100 制御装置
102 I/Oポート
104 CPU
106 ROM
108 RAM
110 中央制御装置
112 上位生産管理装置
116 カッタ出口コンベア駆動用モータ
118 タッチパネル
120 モータドライブ用CPU
121 NO1ラップコンベア駆動用モータ
122 NO2ラップコンベア駆動用モータ
123 NO3ラップコンベア駆動用モータ
124 NO4ラップコンベア駆動用モータ
125 NO5ラップコンベア駆動用モータ
126 NO6ラップコンベア駆動用モータ
127 NO7ラップコンベア駆動用モータ
128 昇降フレーム昇降用モータ
129 ラップコンベア昇降用モータ
130 NO7ラップコンベア移動用モータ
131 ストッパ移動用モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20