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特開2024-9937単一方向デュアルプローブプライマー伸長による標的濃縮
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009937
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】単一方向デュアルプローブプライマー伸長による標的濃縮
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240116BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240116BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176172
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2022092739の分割
【原出願日】2018-12-19
(31)【優先権主張番号】62/609,013
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】511109814
【氏名又は名称】カパ バイオシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】バージェス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴドウィン,ブライアン・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ラブジョイ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ブロンウェン
(72)【発明者】
【氏名】プラッツァー,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ペンクラー,ジョー-アン・エリザベス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸の濃縮のための方法を提供する。
【解決手段】第1のオリゴヌクレオチドは、第1及び第2のアダプターを有する核酸のライブラリー中の標的核酸にハイブリダイズされる。ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドは、第1のポリメラーゼで伸長され、それにより、標的核酸及び伸長された第1のオリゴヌクレオチドを含む第1のプライマー伸長複合体を生成する。第1のプライマー伸長複合体が捕捉され、核酸のライブラリーに対して濃縮され、第2のオリゴヌクレオチドが標的核酸にハイブリダイズする。ハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドは第2のポリメラーゼで伸長され、それにより標的核酸及び伸長された第2のオリゴヌクレオチドを含む第2のプライマー伸長複合体を生成し、伸長された第1のオリゴヌクレオチドを第1のプライマー伸長複合体からさらに遊離させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するための方法であって、以下のステップ:
第1のオリゴヌクレオチドを、核酸のライブラリー中の標的核酸にハイブリダイズするステップであって、核酸のライブラリー中の各核酸が、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有するステップ;
ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを第1のポリメラーゼで伸長し、それにより標的核酸及び伸長された第1のオリゴヌクレオチドを含む第1のプライマー伸長複合体を生成するステップ;
第1のプライマー伸長複合体を捕捉するステップ;
第1のプライマー伸長複合体を、核酸のライブラリーに対して濃縮するステップ;
第2のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズするステップ;
ハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを第2のポリメラーゼで伸長し、それにより、標的核酸及び伸長された第2のオリゴヌクレオチドを含む第2のプライマー伸長複合体を生成し、それにより、伸長された第1のオリゴヌクレオチドを第1のプライマー伸長複合体から遊離させるステップ;並びに
標的核酸を第3のポリメラーゼ、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーで増幅するステップであって、第1の増幅プライマーが、第1のアダプターに相補的な3’末端を持ち、第2の増幅プライマーが、第2のアダプターに相補的な3’末端を持つステップ
を含む方法。
【請求項2】
増幅された標的核酸を、配列決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のオリゴヌクレオチドが、捕捉部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズする前に固体支持体に結合しており、並びに第1のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズし、及びハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドをポリメラーゼで伸長することが、それにより、固体支持体上の第1のプライマー伸長複合体を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを、第1のプライマー伸長複合体中の伸長された第1のオリゴヌクレオチド及び第2のプライマー伸長複合体中の伸長された第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも1つに組み込むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1のプライマー伸長複合体中の伸長された第1のオリゴヌクレオチドに少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを組み込むステップをさらに含み、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは捕捉部分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1のプライマー伸長複合体における伸長された第1のオリゴヌクレオチド、及び
第2のプライマー伸長複合体における伸長された第2のオリゴヌクレオチド
の少なくとも1つに、少なくとも1つのウラシルを組み込むステップをさらに含み、
それにより、ウラシル含有オリゴヌクレオチド産物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
核酸のライブラリーを、ブロッキングオリゴヌクレオチドと接触させるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第1のアダプター及び第2のアダプターが、フォーク型アダプターである、請求項1に
記載の方法。
【請求項10】
第1のアダプター及び第2のアダプターが、少なくとも1つのウラシルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第1のアダプター、第2のアダプター、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つが、固有識別子(UID)配列、分子識別子(MID)配列のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸の濃縮のためのキットであって、前記キットが:
核酸のライブラリー中の標的核酸に相補的な第1のオリゴヌクレオチドであって、核酸のライブラリー中の各核酸が、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有する、第1のオリゴヌクレオチド;
標的核酸に相補的な第2のオリゴヌクレオチド;
第1の増幅プライマー;及び
第2の増幅プライマー
を含み、
ここで、第1のオリゴヌクレオチドが捕捉部分を含み、
ここで、第2のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズし、
ここで、第1の増幅プライマーが、第1のアダプターに相補的な3’末端を有し、第2の増幅プライマーが、第2のアダプターに相補的な3’末端を有する、キット。
【請求項14】
核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸の濃縮のためのキットであって、前記キットが:
核酸のライブラリー中の標的核酸に相補的な第1のオリゴヌクレオチドであって、核酸のライブラリー中の各核酸が、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有する、第1のオリゴヌクレオチド;
捕捉部分を有する修飾ヌクレオチド;
標的核酸に相補的な第2のオリゴヌクレオチド;
第1の増幅プライマー;及び
第2の増幅プライマー
を含み、
ここで、第2のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズし、
ここで、第1の増幅プライマーが、第1のアダプターに相補的な3’末端を有し、第2の増幅プライマーが、第2のアダプターに相補的な3’末端を有する、キット。
【請求項15】
少なくとも1つの標的核酸を含む核酸のライブラリーであって、核酸のライブラリー中の各核酸が、第1のアダプターを含む第1の末端、第2のアダプターを含む第2の末端、及び第1のアダプター及び第2のアダプターの中間の目的領域を有する、核酸のライブラリー;
標的核酸の目的領域にハイブリダイズした伸長された第1のオリゴヌクレオチドであって、少なくとも1つの捕捉部分を含む伸長された第1のオリゴヌクレオチド;
少なくとも1つの捕捉部分に結合した固体支持体;
第1の伸長されたオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズした第
2のオリゴヌクレオチド;並びに
第2のオリゴヌクレオチドの3’末端に会合したポリメラーゼ
を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般に、サンプル中の核酸標的の濃縮に関し、より詳細には、ハイスループット配列決定を含む、核酸配列決定のための標的の濃縮に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]本発明は、配列決定される核酸内の目的領域にユーザーが焦点を絞ることを可能にする技術のクラスに属する。このことにより、配列決定反応とそれに続くデータ分析に付随するコストが低減される。現在、サンプルに存在する核酸内の目的領域を選択的に捕捉する3つの一般的なタイプの技術がある。第1の技術はハイブリダイゼーション捕捉で、捕捉表面に選択的に結合できるプローブのハイブリダイゼーションによって目的領域が捕捉される。非標的核酸の除去がこの捕捉により可能となり、その後、捕捉された標的分子の放出及び回収が続く。このタイプの技術は、エクソームサイズの領域や未知の構造多型を含む領域を捕捉する能力を含む利点を有する。短所には、完了するまでに8時間以上かかる傾向のある長く複雑なプロトコルが挙げられる。複雑さは主に、ハイブリダイゼーションの前にランダムにフラグメント化されたショットガンライブラリーを準備する必要があることにより発生する。ハイブリダイゼーションステップだけでも、完了するまでに最大3日かかることがある。このタイプの技術の例には、SECAP EZ標的濃縮システム(ROCHE)及びSURESELECT標的濃縮システム(AGILENT)が含まれる。
【0003】
[0003]標的濃縮の別の方法は、デュアル標的プライマーに基づく増幅である。この方法では、標的の境界にある2つのプローブを使用して目的領域を濃縮する。この方法は、8時間未満で完了する傾向があり、ハイブリダイゼーション捕捉法よりも簡単である。しかしながら、デュアルプライマーに基づく技術は、未知の構造多型を持つ配列を濃縮することができない。最も確立されたデュアルプライマーアプローチは、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。これは非常に簡単な単一ステップのプロセスであるが、反応チューブあたり数十の標的を増幅することしかできない。現在、単一の反応チューブ内で数百から数千の標的を増幅することができ、数回の処理ステップしか必要としない、TRUSEQアンプリコン配列決定キット(ILLUMINA)及びION TORRENT AMPLISEQ配列決定キット(LIFE TECHNOLOGIES)製品を含む、他のより新しい技術が利用可能である。
【0004】
[0004]第3の技術は、単一標的プライマーに基づく増幅である。この方法では、単一標的プライマー及び末端ライゲーションユニバーサルプライマーによって定義される領域の増幅によって、標的が濃縮される。ハイブリダイゼーションに基づくアプローチと同様に;これらの技術では、標的オリゴヌクレオチドの選択的ハイブリダイゼーションの前に、ランダムにフラグメント化されたショットガンライブラリーを生成する必要がある。しかしながら、このオリゴヌクレオチドを、標的を捕捉し、非標的分子を洗い流すことに使用する代わりに、ランダムに生成された末端と標的特異的オリゴヌクレオチドとの間の領域を選択的に増幅する増幅ステップが採用される。この技術の利点は、デュアルプライマー技術とは異なり、未知の構造多型を持つ配列の検出が可能となることである。また、それはハイブリダイゼーションに基づく技術よりも迅速で簡単である。しかしながら、このタイプの技術は、デュアルプライマーに基づくアプローチよりも低速で複雑である。このタイプの技術の例は、ARCHERのアンカーマルチプレックスPCR(ARCHER DX)及びOVATION標的濃縮システム(NUGEN)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]標的配列における未知の構造多型にも対応する、標的濃縮の迅速かつ簡単な方法に対する満たされぬ必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一実施形態によれば、本開示は、核酸のライブラリーにおける少なくとも1つの標的核酸の濃縮のための方法を提供する。この方法は、第1のオリゴヌクレオチドを、核酸のライブラリー中の標的核酸にハイブリダイズさせることを含む。核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有する。この方法はさらに、ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを第1のポリメラーゼで伸長し、それにより標的核酸及び伸長された第1のオリゴヌクレオチドを含む第1のプライマー伸長複合体を生成することを含む。この方法はさらに、第1のプライマー伸長複合体を捕捉し、核酸のライブラリーに対して第1のプライマー伸長複合体を濃縮し、第2のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズし、ハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを第2のポリメラーゼで伸長し、それにより、標的核酸及び伸長された第2のオリゴヌクレオチドを含む第2のプライマー伸長複合体を生成し、それにより、伸長された第1のオリゴヌクレオチドを第1のプライマー伸長複合体から遊離させることを含む。この方法はさらに、第3のポリメラーゼ、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーで標的核酸を増幅することを含み、第1の増幅プライマーは第1のアダプターに相補的な3’末端を有し、第2の増幅プライマーは第2のアダプターに相補的な3’末端を有する。
【0007】
[0007]一態様では、方法は、増幅された標的核酸を配列決定することをさらに含む。
[0008]別の態様では、第1のオリゴヌクレオチドは、捕捉部分を含む。
[0009]別の態様では、第1のプライマー伸長複合体を捕捉することは、固体支持体上に捕捉部分を捕捉することを含む。
【0008】
[0010]別の態様では、捕捉部分はビオチンであり、固体支持体はストレプトアビジンを含む。
[0011]別の態様では、第1のオリゴヌクレオチドは標的核酸にハイブリダイズする前に、第1のオリゴヌクレオチドを固体支持体に結合しており、第1のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズし、ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドをポリメラーゼで伸長することが、それにより、固体支持体上の第1のプライマー伸長複合体を捕捉する。
【0009】
[0012]別の態様では、第1のプライマー伸長複合体の捕捉は、ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを伸長した後に行われる。
[0013]別の態様では、本方法は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを、第1のプライマー伸長複合体中の伸長された第1のオリゴヌクレオチド及び第2のプライマー伸長複合体中の伸長された第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも1つに組み込むことをさらに含む。
【0010】
[0014]別の態様では、修飾ヌクレオチドは、dUTP及び捕捉部分を有するヌクレオチドから選択される。
[0015]別の態様では、本方法は、第1のプライマー伸長複合体中の伸長された第1のオリゴヌクレオチドに少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを組み込むことをさらに含み、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは捕捉部分を有する。
【0011】
[0016]別の態様では、第1のプライマー伸長複合体を捕捉することは、固体支持体上に捕捉部分を捕捉することを含む。
[0017]別の態様では、本方法は、少なくとも1つのウラシルを第1のプライマー伸長複合体の伸長された第1のオリゴヌクレオチド及び第2のプライマー伸長複合体の伸長された第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも1つに組み込むこと、それによりウラシル含有オリゴヌクレオチド産物を形成することをさらに含む。
【0012】
[0018]別の態様では、本方法は、ウラシル含有オリゴヌクレオチド産物を消化することをさらに含む。
[0019]別の態様では、ウラシル含有オリゴヌクレオチド産物の消化は、ウラシルDNAグリコシラーゼ及びDNAグリコシラーゼリアーゼのうちの少なくとも1つを用いて達成される。
【0013】
[0020]別の態様では、DNAグリコシラーゼリアーゼは、エンドヌクレアーゼIV及びエンドヌクレアーゼVIIIから選択される。
[0021]別の態様では、本方法は、核酸のライブラリーをブロッキングオリゴヌクレオチドと接触させることをさらに含む。
【0014】
[0022]別の態様では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、第1のアダプター及び第2のアダプターの少なくとも1つに少なくとも部分的に相補的である。
[0023]別の態様では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、ユニバーサルブロッキングオリゴヌクレオチドである。
【0015】
[0024]別の態様では、第1のアダプター及び第2のアダプターは、同じ核酸配列を有する。
[0025]別の態様では、第1のアダプター及び第2のアダプターは、異なる核酸配列を有する。
【0016】
[0026]別の態様では、第1のアダプター及び第2のアダプターは、フォーク型アダプターである。
[0027]別の態様では、第1のアダプター及び第2のアダプターは、少なくとも1つのウラシルを含む。
【0017】
[0028]別の態様では、第1のポリメラーゼ及び第2のポリメラーゼの少なくとも1つは、ウラシル不適合性ポリメラーゼである。
[0029]別の態様では、第3のポリメラーゼは、ウラシル適合性ポリメラーゼである。
【0018】
[0030]別の態様では、第2のオリゴヌクレオチドは、標的核酸に第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位でハイブリダイズする。
[0031]別の態様では、第3のポリメラーゼは、ウラシル不適合性ポリメラーゼである。
【0019】
[0032]別の態様では、第1のアダプター、第2のアダプター、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーの少なくとも1つは、固有識別子(unique identifier;UID)配列、分子識別子(molecular identifier;MID)配列の少なくとも1つを含む。
【0020】
[0033]別の実施形態によれば、本開示は、核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するためのキットを提供する。キットは、核酸のライブラリー中の標的核酸に相補的な第1のオリゴヌクレオチドを含み、核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有する。キットは、標的核酸に相補的な第2のオリゴヌクレオチド、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーをさらに含む。第1のオリゴヌクレオチドは捕捉部分を含み、第2のオリゴヌクレオチドは第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズし、第1の増幅プライマーは第1のアダプターに相補的な3’末端を持ち、第2の増幅プライマーは第2のアダプターに相補的な3’末端を持つ。
【0021】
[0034]別の実施形態によれば、本開示は、核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するためのキットを提供する。キットは、核酸のライブラリー中の標的核酸に相補的な第1のオリゴヌクレオチドを含み、核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有する。キットは、捕捉部分を有する修飾ヌクレオチド、標的核酸に相補的な第2のオリゴヌクレオチド、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーをさらに含む。第2のオリゴヌクレオチドは第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズし、第1の増幅プライマーは第1のアダプターに相補的な3’末端を持ち、第2の増幅プライマーは第2のアダプターに相補的な3’末端を持つ。
【0022】
[0035]一態様では、キットは、ウラシルヌクレオチド、ウラシル適合性ポリメラーゼ、ウラシル不適合性ポリメラーゼ、及びブロッキングオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0023】
[0036]別の実施形態によれば、本開示は、少なくとも1つの標的核酸を含む核酸のライブラリーを含む組成物を提供する。核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端、第2のアダプターを含む第2の末端、並びに第1のアダプター及び第2のアダプターの中間の目的領域を有する。組成物は、標的核酸の目的領域にハイブリダイズした伸長された第1のオリゴヌクレオチドをさらに含む。伸長された第1のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの捕捉部分を含む。組成物は、少なくとも1つの捕捉部分に結合した固体支持体、第1の伸長されたオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチド、及び第2のオリゴヌクレオチドの3’末端に会合したポリメラーゼをさらに含む。
【0024】
[0037]一態様では、組成物は、第1のアダプター及び第2のアダプターのそれぞれとハイブリダイズしたブロッキングオリゴをさらに含む。
[0038]別の態様では、少なくとも1つの捕捉部分は、伸長された第1のオリゴヌクレオチドの5’末端に位置する。
【0025】
[0039]別の態様では、少なくとも1つの捕捉部分は、伸長された第1のオリゴヌクレオチドの伸長部分に組み込まれる。
[0040]別の態様では、伸長された第1のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのウラシル及び少なくとも1つのチミンをさらに含む。
【0026】
[0041]別の態様では、ポリメラーゼは、ウラシル不適合性ポリメラーゼである。
[0042]別の態様では、第1のアダプター及び第2のアダプターの少なくとも1つは、少なくとも1つのウラシル及び少なくとも1つのチミンを含む。
【0027】
[0043]別の態様では、第1のプライマー伸長複合体から伸長された第1のオリゴヌクレオチドを遊離させることは、鎖置換活性、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性、及びフラップエンドヌクレアーゼ活性から選択される活性を有する酵素を用いて達成される。
【0028】
[0044]本発明の前述の及び他の態様及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。説明においては、本明細書の一部を形成し、本発明の好ましい実施形態を例として示す添付図面を参照する。しかしながら、そのような実施形態は、必ずしも本発明の全ての範囲を表すものでは無く、したがって、本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲及び本明細書を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】[0045]本開示による、核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するための方法の実施形態を例示する概略フローダイアグラムを示す図である。
図2】[0046]本開示による、核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するための方法の第1の実施形態の概略表示を示す図である。例示された実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドは、標的核酸の液相捕捉のための捕捉部分を含む。
図3】[0047]本開示による核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するための方法のさらなる第2の実施形態の概略表示を示す図である。例示された実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドは、標的核酸のインサイツの捕捉のために固体支持体に結合している。
図4】[0048]本開示による核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸の濃縮のための方法のさらなる第3の実施形態の概略表示を示す図である。例示された実施形態では、標的核酸にハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドの伸長中に1つ又は複数の捕捉部分が組み込まれ、それにより固体支持体上の標的核酸及び伸長された第1のオリゴヌクレオチドを含む複合体の捕捉が可能になる。
図5】[0049]分子間アダプター-アダプターハイブリダイゼーションを示すライブラリー分子中の複数の核酸の概略例示を示す図である。
図6】[0050]図6Aは、市販のライブラリー調製キットを使用して一般的なアダプター末端配列に適合させた、ヒトゲノムDNA由来の核酸のライブラリーの電気泳動DNA解析機からの蛍光出力トレースを示す図である。10ngのライブラリー1μL及び100ngのライブラリー1μLの、それぞれ5サイクルと12サイクルでの標準PCR増幅に続けて、データを収集した。本開示に従って、核酸のライブラリーをサンプルとし、標的核酸について濃縮した。 [0051]図6Bは、本開示によるプライマー伸長標的濃縮及び増幅後の図6Aの核酸のライブラリーの蛍光に基づくサイズ分析を示す図である。
図7】[0052]図7は、図6Bの濃縮された核酸のライブラリーの高レベル配列決定メトリックを示す棒グラフを示す図である。配列決定リードの99%以上が、ライブラリーに存在することが知られている配列にマップされ、及び配列決定リードの約半分が、濃縮された標的核酸にマップされた。ライブラリーのフォールド80塩基ペナルティは、60℃及び65℃の第1のオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング温度について、それぞれ1.4及び1.5であった。3つのバーの各クラスター内で、マップされたトリミングされたリード割合(左)、パディングされた標的核酸の塩基割合(中央)、及びオンターゲットのマップされた重複していないリード割合(右)についてのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
I.定義
[0053]本出願では、文脈からそうでないことが明らかでない限り、(i)「a」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解され得る;(ii)「又は」という用語は、「及び/又は」を意味すると理解され得る;(iii)「含む(comprising、including)」という用語は、それ自体で提示されるか、1つ又は複数の追加の成分又はステップと一緒に提示されるかにかかわらず、項目化された成分又はステップを包含すると理解され得る;並びに(iv)「約」及び「およそ」という用語は、当業者によって理解される標準的な変動を許容するものと理解され得る;及び(v)範囲が指定されている場合、エンドポイントが含まれる。
【0031】
[0054]アダプター:本明細書で使用する場合、「アダプター」とは、別の配列に追加の特性を移入するために別の配列に追加することができるヌクレオチド配列を意味する。アダプターは一本鎖又は二本鎖であり得、又は一本鎖部分及び二本鎖部分の両方を有し得る。
【0032】
[0055]およそ:本明細書で使用される場合、「およそ」又は「約」という用語は、1つ又は複数の目的値に適用される場合、言及された参照値と同様の値を指す。ある実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、そうでないことが言及されていないか、又は文脈から明白でない限り、言及された参照値のいずれかの方向(より大きいか又はより小さい)に、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ以下の内にある値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0033】
[0056]付随する(Associated with):一つの存在、レベル、及び/又は形態が他のものと相関している場合、その用語が本明細書で使用されるように、2つの事象又は実体は互いに「付随する」。例えば、その存在、レベル及び/又は形態が、疾患、障害、又は状態の発生頻度及び/又は感受性と相関する場合(例えば、関連する集団にわたって)、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャー、代謝物など)は、特定の疾患、障害、又は状態に付随すると見なされる。いくつかの実施形態では、それらが互いに物理的に近接しているか、及び/又は物理的に近接したままであるかのように、それらが直接的又は間接的に相互作用する場合、2つ以上の実体は、互いに物理的に「会合している(associated)」。いくつかの実施形態では、互いに物理的に会合している2つ以上の実体は、互いに共有結合されている;いくつかの実施形態では、互いに物理的に会合している2つ以上の実体は、互いに共有結合されていないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、及びそれらの組み合わせによって、非共有結合的に会合している。
【0034】
[0057]バーコード:本明細書中で使用される場合、「バーコード」は、分子に同一性を付与するヌクレオチド配列を意味する。バーコードは、個々の分子(及びそのコピー)にユニークな同一性を付与し得る。そのようなバーコードは、ユニークなID(unique ID;UID)である。バーコードは、同一源(例えば、患者)からの分子(及びそのコピー)の集団全体に同一性を付与し得る。そのようなバーコードは、マルチプレックスID(multiplex ID;MID)である。
【0035】
[0058]生物学的サンプル:本明細書で使用される場合、「生物学的サンプル」という用語は、本明細書に記載されるように、目的の生物学的供給源(例えば、組織又は生物又は細胞培養物)から得られるか又は由来するサンプルを典型的に指す。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、動物又はヒトなどの生物を含むか、又はからなる。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルは、生体組織又は体液を含むか、又はからなる。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルは、骨髄;血液;血液細胞;腹水;組織若しくは細針生検サンプル;細胞含有体液;遊離浮遊核酸;喀痰;唾液;尿;脳脊髄液、腹水;胸水;糞便;リンパ;婦人科体液;皮膚スワブ;膣スワブ;口腔スワブ;鼻腔スワブ;管洗浄液又は気管支肺胞洗浄液などの洗液又は洗浄液;吸引;スクレーピング;骨髄標本;組織生検標本;外科標本;他の体液、分泌物、及び/若しくは排泄物;並びに/又はそれらからの細胞などであり得るか、又は含み得る。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルは、個体から得られた細胞を含むか、又はからなる。いくつかの実施形態では、得られた細胞は、サンプルが得られた個体からの細胞であるか、又はその細胞を含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、目的の供給源から任意の適切な手段によって直接得られた「一次サンプル」である。例えば、いくつかの実施形態では、一次生物学的サンプルは、生検(例えば、細針吸引又は組織生検)、手術、体液の収集(例えば、血液、リンパ液、糞便など)などからなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態では、文脈から明らかとなるように、「サンプル」という用語は、一次サンプルの処理によって(例えば、1つ又は複数の成分を除去することによって、及び/又は1つ又は複数の薬剤を加えることによって)得られる調製物を指す。例えば、半透膜を使用したろ過。そのような「処理されたサンプル」は、例えば、サンプルから抽出されるか、又は一次サンプルをmRNAの増幅又は逆転写、特定の成分の単離及び/又は精製などの技術に供することによって得られる核酸又はタンパク質を含み得る。
【0036】
[0059]ブロッキングオリゴヌクレオチド:反応混合物中に存在する別の核酸に相補的であり、そのような核酸にハイブリダイズして、そのような核酸の望ましくないハイブリダイゼーションを防ぐことができるオリゴヌクレオチド。そのような別の核酸は、合成核酸、例えば、プライマー又はアダプターであり得る。プライマー又はアダプターがライブラリー核酸分子に組み込まれると、防ぐべき望ましくないハイブリダイゼーションが起き得る。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないハイブリダイゼーションから保護される核酸に完全に相補的である必要はないが、望ましくない事象が起きることを防ぐために十分に安定なハイブリッドを形成しなければならない。その目的のために、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、ユニバーサル塩基又はT修飾塩基を含み得る。
【0037】
[0060]含む:1つ又は複数の指定された要素又はステップを「含む」として本明細書に記載されている組成物又は方法は、オープンエンドであり、指定された要素又はステップが必須であることを意味するが、他の要素又はステップが、組成物又は方法の範囲内で追加されてもよい。1つ又は複数の指定された要素又はステップを「含む」(又は「含まれる」)と記載された組成物又は方法は、同一に指定された要素又はステップに「本質的にからなる」(又は「本質的に~からなる」)対応したより限定された組成物又は方法も記述され、これは、組成物又は方法に、指定された必須の要素又はステップが含まれ、さらに、組成物又は方法の基本的かつ新規の特質に実質的に影響しない追加の要素又はステップもまた含まれ得ることを意味することを理解されたい。1つ又は複数の指定された要素又はステップ「を含む」又は「から本質的になる」として本明細書に記載される任意の組成物又は方法もまた、他の指定されていない要素又はステップを除外した、指定された要素又はステップ「からなる」(又は「から成る」)対応した、より限定された、クローズドエンドの組成物又は方法を記載することも理解される。本明細書に開示される任意の組成物又は方法では、任意の指定された必須要素又はステップの公知の又は開示された同等物が、その要素又はステップの代替となり得る。
【0038】
[0061]設計された:本明細書で使用される場合、「設計された」という用語は、(i)その構造が人間の手によって選択されるか、又は選択された因子;(ii)人間の手を必要とするプロセスによって生成される因子;及び/又は(iii)天然物質及び他の公知の因子とは異なる因子を指す。
【0039】
[0062]決定:本明細書を読んだ当業者は、「決定する」ことが、例えば本明細書に明示的に引用された特定の技術を含む、当業者に利用可能な様々な技術のいずれかを使用することによって利用又は達成できることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、決定は、物理的サンプルの操作を含む。いくつかの実施形態では、決定には、例えば、関連する分析を実行するように適合されたコンピュータ又は他の処理ユニットを利用する、データ又は情報の考察及び/又は操作が含まれる。いくつかの実施形態では、決定には、関連する情報及び/又は資料を供給源から受け取ることが含まれる。いくつかの実施形態では、決定は、サンプル又は実体の1つ又は複数の特徴を比較可能な参照と比較することを含む。
【0040】
[0063]同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)間及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同一である場合、互いに「実質的に同一」であると見なされる。2つの核酸又はポリペプチド配列の同一性割合の計算は、例えば、2つの配列を最適な比較目的のために整列させることによって実行できる(例えば、最適な整列のために、第1及び第2の配列の一方又は両方にギャップを導入でき、同一でない配列は比較目的からは無視され得る)。特定の実施形態では、比較目的で整列された配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は実質的に100%である。対応する位置にあるヌクレオチドが次に比較される。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸)で占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性割合は、2つの配列の最適な整列のために導入する必要があるギャップの数と、各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数である。配列の比較と2つの配列間の同一性割合の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性割合は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyers及びMiller(CABIOS、1989、4:11~17頁)のアルゴリズムを使用して決定できる。いくつかの例示的な実施形態では、ALIGNプログラムで行われた核酸配列比較は、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用する。2つのヌクレオチド配列間の同一性割合は、或いは、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用するGCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用して決定できる。
【0041】
[0064]ライゲーション部位:本明細書で使用される場合、「ライゲーション部位」は、ライゲーションを促進させる(二本鎖分子の平滑末端以外の)核酸分子の一部である。2つの分子に存在する「互換性のあるライゲーション部位」は、2つの分子の互いの優先的なライゲーションを可能にする。
【0042】
[0065]サンプル:本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、定性的及び/又は定量的評価のための目的の組成物であるか、又はそれを含む物質を指す。いくつかの実施形態において、サンプルは、生物学的サンプルである(すなわち、生体(例えば、細胞又は生物)から来る)。いくつかの実施形態において、サンプルは、地質学的、水生学的、天文学的、又は農学的供給源に由来する。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、動物又はヒトなどの生物を含むか、又はからなる。いくつかの実施形態では、法医学分析用のサンプルは、生物学的組織、生体体液、例えば衣服、汚れ、プラスチック、水などの有機物又は非有機物であるか、又はそれらを含む。いくつかの実施形態では、農学的サンプルは、葉、花弁、樹皮、木材、種子、植物、果物などの有機物を含むか、又はからなる。
【0043】
[0066]一本鎖ライゲーション:本明細書で使用される場合、「一本鎖ライゲーション」は、少なくとも1つの一本鎖基質で始まり、典型的には1つ又は複数の二本鎖又は部分的な二本鎖アダプターを含むライゲーション手順である。
【0044】
[0067]固体支持体:本明細書で使用される場合、「固体支持体」は、捕捉部分と相互作用することができる任意の固体材料を指す。固体支持体は、溶液中に懸濁することができる溶液相支持体(例えば、ガラスビーズ、磁気ビーズ、又は別の類似の粒子)、又は固相支持体(例えば、シリコンウエハー、ガラススライド、など)であり得る。溶液相支持体の例には、INVITROGENからのDYNABEADS磁気ビーズなどの超常磁性球状ポリマー粒子、又は米国特許第656568、6274386、7371830、6870047、6255477、6746874及び6258531に記載されているような磁性ガラス粒子が含まれる。
【0045】
[0068]実質的に:本明細書で使用する場合、「実質的に」という用語は、目的の特質若しくは特性の全体若しくはほぼ全体の規模又は程度を示す定性的状態を指す。生物学の当業者は、生物学的及び化学的現象が完了に至る、及び/又は完全に進む、又は絶対的な結果を達成する若しくは回避することは稀にしかないことを理解するであろう。したがって、本明細書において「実質的に」という用語は、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捕捉するために使用される。
【0046】
[0069]合成:本明細書で使用される場合、「合成」という用語は、自然には存在しない構造を持っているため、又は自然に付随しない1つ又は複数の他の成分に付随するか、若しくは自然に付随する1つ又は複数の他の成分に付随しないため、人間の手によって、したがって、自然には存在しない形態で生成されることを意味する。
【0047】
[0070]ユニバーサルプライマー:本明細書中で使用される場合、「ユニバーサルプライマー」及び「ユニバーサルプライミング部位」は、標的配列中の天然に存在しないプライマー及びプライミング部位を指す。典型的には、ユニバーサルプライミング部位は、アダプター又は標的特異的プライマーに存在する。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライミング部位に結合し、そこからプライマー伸長を誘導できる。
【0048】
[0071]変異:本明細書で使用する場合、「変異」という用語は、参照実体と有意な構造的同一性を示すが、参照実体と比較した場合、1つ又は複数の化学部分の存在又はレベルが参照実体と構造的に異なる実体を指す。多くの実施形態では、変異はまた、その参照実体と機能的に異なる。一般に、特定の実体が参照実体の「変異」であると適切に見なされるかどうかは、参照実体との構造的同一性の程度に基づいている。当業者によって認識されるように、任意の生物学的又は化学的参照実体は、特定の特徴的な構造要素を有する。変異は、定義により、1つ又は複数のそのような特徴的な構造要素を共有する別個の化学的な実体である。いくつかの例を挙げるならば、小分子は、特徴的なコア構造要素(例えば、大員環コア)及び/又は1つ又は複数の特徴的なペンダント部分を有し、その結果、小分子の変異は、コア構造要素及び特徴的なペンダント部分を共有するが、コア内の他のペンダント部分及び/又は存在する結合のタイプ(単結合対二重結合、E対Zなど)が異なり、ポリペプチドは、線形又は三次元空間において、互いに対して指定された位置を有し、及び/又は特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から構成される特徴的な配列要素を有してもよく、核酸は、線形又は三次元空間において、他に対して指定された位置を有する複数のヌクレオチド残基から構成される特徴的な配列要素を有してもよい。例えば、変異ポリペプチドは、アミノ酸配列の1つ又は複数の差異及び/又はポリペプチド骨格に共有結合された化学的部分(例えば、炭水化物、脂質など)の1つ又は複数の差異の結果として、参照ポリペプチドと異なり得る。いくつかの実施形態では、変異ポリペプチドは、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、又は99%である、参照ポリペプチドと全体的な配列同一性を示す。或いは、又はさらに、いくつかの実施形態では、変異ポリペプチドは、参照ポリペプチドと少なくとも1つの特徴的な配列要素を共有しない。いくつかの実施形態では、参照ポリペプチドは、1つ又は複数の生物学的活性を有する。いくつかの実施形態では、変異ポリペプチドは、参照ポリペプチドの1つ又は複数の生物学的活性を共有する。いくつかの実施形態では、変異ポリペプチドは、参照ポリペプチドの1つ又は複数の生物学的活性を欠く。いくつかの実施形態では、変異ポリペプチドは、参照ポリペプチドと比較して、低減したレベルの1つ又は複数の生物学的活性を示す。多くの実施形態では、目的のポリペプチドが特定の位置で少数の配列変化がある以外は親のアミノ酸配列と同一である場合、目的のポリペプチドは親又は参照ポリペプチドの「変異体」であると見なされる。典型的には、親と比較して、変異体における残基の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満が置換される。いくつかの実施形態では、変異体は、親と比較して、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つの置換残基を有する。しばしば、変異体は非常に少数(例えば、5、4、3、2、又は1未満)の数の置換された機能的残基(すなわち、特定の生物学的活性に関与する残基)を有する。さらに、変異は、典型的には、親と比較して、5、4、3、2、又は1以下の追加又は削除があるが、追加又は削除がないこともしばしばある。さらに、任意の追加又は削除は通常、約25、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約10、約9、約8、約7、約6残基未満であり、一般に、約5、約4、約3、又は約2残基未満である。いくつかの実施形態では、変異はまた、1つ又は複数の機能的欠陥も有する場合があり、及び/又はそうでなければ「突然変異体」と見なされ得る。いくつかの実施形態では、親ポリペプチド又は参照ポリペプチドは、自然界に見られるものである。当業者によって理解されるであろうが、特に、ある特定の目的ポリペプチドが感染性因子のポリペプチドである場合、目的ポリペプチドの複数の変異は自然界で一般に見られ得る。
【0049】
II.特定の実施形態の詳細な説明
[0072]多くの核酸濃縮技術において、最初に核酸のショットガンライブラリーを提供することは有用であり得、それにより、サンプルに由来するより長い核酸配列が、短いリード配列決定技術と互換性のあるより小さいフラグメントに細分される(すなわち、約50~500ヌクレオチド)。ショットガンライブラリーを準備するために、高分子量の核酸鎖(典型的には、cDNA又はゲノムDNA)は、ランダムなフラグメントに剪断され、場合により、共通の末端配列(すなわちアダプター)のライゲーションによって修飾され、下流の処理及び分析のためにサイズ選択される。例えば、ショットガンライブラリーの核酸のサブセットを選択的に捕捉することは有用であり得る。
【0050】
[0073]現在、2つの一般的なカテゴリーの捕捉技術が存在する:ハイブリダイゼーションに基づく捕捉及び増幅に基づく捕捉である。ハイブリダイゼーションに基づく捕捉方法には、元のライブラリーフラグメントのサブセットのみを複製して回収するのではなく、元のショットガンライブラリーフラグメント全体を回収できるという利点がある。しかしながら、ハイブリダイゼーションに基づく捕捉に付随するオンターゲット率は、増幅に基づく方法と比較して一般的に低い。特に、オンターゲット率が低いと、オフターゲット捕捉産物を配列決定する必要があるため、配列決定能力が無駄になる。さらに、ハイブリダイゼーションに基づく捕捉方法に付随するワークフローは、増幅に基づくアプローチと比較して、長い所要時間で複雑になる可能性がある。対照的に、アンカーマルチプレックスPCR法(anchored multiplex PCR method)などの増幅に基づくアプローチは、ハイブリダイゼーションに基づく方法と比べて、単純なワークフロー、より短い所要時間、オンターゲット率がより高いという利点があるが、いくつかの短所がある。例えば、増幅後のライブラリーフラグメントに組み込まれた標的特異的プライマー配列のため、配列決定能力が無駄になる。さらに、鋳型が標的特異的プライマー結合部位で必ずトランケートされるため、ライブラリーフラグメントは必ずしも元のショットガンライブラリーを代表していない。したがって、標的配列における未知の構造多型にも対応する、標的濃縮の迅速かつ単純な方法に対する要求は満たされていないままである。
【0051】
[0074]これら及び他の課題は、本開示による一方向性デュアルプローブプライマー伸長による標的濃縮のための方法で克服され得る。一態様では、本開示は一方向デュアルプローブプライマー伸長に基づく濃縮のための一般的アプローチ並びにそのための改善の両方を記載する。この目的のために、本開示は、標的核酸のライブラリーからの1つ又は複数の標的核酸の濃縮のための、プライマー伸長及び固体支持体上へのハイブリダイゼーションに基づく捕捉の組み合わせを提供する。本開示はさらに、アンカーマルチプレックス増幅に基づく濃縮方法及びハイブリダイゼーション捕捉方法の前述の利点の多くを有するが、前述の短所の多くを伴わない、全体的なワークフローを提供する。多くの既存のハイブリダイゼーションに基づく捕捉方法及びアンカーマルチプレックス増幅に基づく捕捉方法と比較した、本開示のキット、組成物及び方法の利点には、ショットガン分子全体に由来するライブラリー分子の回収、単純なワークフロー(例えば、全ステップ数の減少及び実践時間の短縮)、所要時間の短縮、より高いオンターゲット率、及びより低い全体的な材料コストが含まれる。
【0052】
[0075]一実施形態では、本発明は、核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸の濃縮のための方法である。本方法は、核酸のライブラリー中の標的核酸に第1のオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせることを含むことができる。核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を備えることができる。本方法は、ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを第1のポリメラーゼで伸長し、そのことにより標的核酸及び伸長された第1のオリゴヌクレオチドを含む第1のプライマー伸長複合体を生成することをさらに含む。
【0053】
[0076]一態様では、本方法は、第1のプライマー伸長複合体を捕捉すること、及び核酸のライブラリーに対して第1のプライマー伸長複合体を濃縮することをさらに含むことができる。別の態様では、本方法は、第2のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズし、ハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを第2のポリメラーゼで伸長し、それにより標的核酸及び伸長された第2のオリゴヌクレオチドを含む第2のプライマー伸長複合体を生成し、それにより、伸長された第1のオリゴヌクレオチドを第1のプライマー伸長複合体から遊離させることを含むことができる。本方法は、第3のポリメラーゼ、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーを用いて、標的核酸を増幅することをさらに含むことができる。第1のアダプターに相補的な3’末端を有する第1の増幅プライマー及び第2のアダプターに相補的な3’末端を有する第2の増幅プライマー。
【0054】
[0077]第1、第2、及び第3のポリメラーゼは、任意の適切なポリメラーゼであってもよい。ポリメラーゼの一例は、Taq又はTaq由来ポリメラーゼ(例えば、KAPA BIOSYSTEMSのKAPA 2Gポリメラーゼ)である。別の例のポリメラーゼは、BファミリーDNAポリメラーゼ(例えば、KAPA BIOSYSTEMSからのKAPA HIFIポリメラーゼ)である。
【0055】
[0078]別の実施形態では、本開示は、核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸の濃縮のためのキットを提供する。キットは、核酸のライブラリー中の標的核酸に相補的な第1のオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の端部及び第2のアダプターを含む第2の端部を有する。キットはさらに、標的核酸に相補的な第2のオリゴヌクレオチド、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーを含むことができる。第1のオリゴヌクレオチドは、捕捉部分を含み得る。第2のオリゴヌクレオチドは、標的核酸に第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位でハイブリダイズできる。第1の増幅プライマーは、第1のアダプターに相補的な3’末端を有し、第2の増幅プライマーは、第2のアダプターに相補的な3’末端を有する。
【0056】
[0079]別の実施形態では、本開示は、核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するためのキットを提供する。キットは、核酸のライブラリー中の標的核酸に相補的な第1のオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有することができる。キットはさらに、捕捉部分を有する修飾ヌクレオチド、標的核酸に相補的な第2のオリゴヌクレオチド、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーを含むことができる。第2のオリゴヌクレオチドは第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズし、第1の増幅プライマーは第1のアダプターに相補的な3’末端を有し、第2の増幅プライマーは第2のアダプターに相補的な3’末端を有する。
【0057】
[0080]さらに別の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの標的核酸を含む核酸のライブラリーを含む組成物を提供する。核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端、第2のアダプターを含む第2の末端、及び第1のアダプターと第2のアダプターの中間の目的領域を有する。組成物は、標的核酸の目的領域にハイブリダイズした伸長された第1のオリゴヌクレオチドをさらに含む。伸長された第1のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの捕捉部分を含む。組成物は、少なくとも1つの捕捉部分に結合した固体支持体、第1の伸長されたオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチド、及び第2のオリゴヌクレオチドの3’末端に会合したポリメラーゼをさらに含む。
【0058】
[0081]本発明の方法は、ハイスループット単一分子配列決定プロトコルを含む、配列決定プロトコルの一部として使用することができる。本発明の方法は、配列決定される標的核酸のライブラリーを生成する。ライブラリー中の標的核酸には、分子同定及びサンプル同定のためのバーコードが組み込まれていてもよい。
【0059】
[0082]本発明は、標的特異的プライマーを用いた少なくとも1つの線形プライマー伸長ステップを含む。線形伸長ステップには、当技術分野で行われている指数関数的増幅を超えるいくつかの利点がある。各標的核酸は、標的特異的プライマーのアニーリングの速度及びポリメラーゼが特定の標的配列を読み通すことができる速度に依存するユニークな合成速度によって特徴付けられる。伸長速度及び合成速度の違いにより、単一ラウンドの合成でわずかな違いをもたらし得るバイアスが生じる。しかしながら、そのわずかな違いがPCR中に指数関数的に増幅されるようになる。結果として生じるギャップは、PCRバイアスと呼ばれる。バイアスにより、サンプル中の各配列の初期量に何らかの違いがあったとしてもそれが不明瞭になり、いかなる定量的な分析も妨げられる場合がある。
【0060】
[0083]本発明は、標的特異的プライマー(偶然にもゲノム内の結合部位に特異的である遺伝子特異的プライマー及び縮重プライマーを含む)の伸長を単一ステップに限定する。指数関数的増幅は全て、鋳型依存バイアスを受けないか、又は標的特異的プライマーよりもバイアスを受けないユニバーサルプライマーを使用して行われる。
【0061】
[0084]ここで図1を参照すると、一方向性デュアルプローブプライマー伸長による標的濃縮のための方法100には、核酸ライブラリーフラグメントを調製するステップ102が含まれる。一態様では、核酸ライブラリーフラグメントは、1つ又は複数の標的核酸を含む任意の核酸源から調製することができる。一般に、標的核酸には目的領域又は配列が含まれ、それらの目的領域又は配列の下流の検出及び分析のための、核酸ライブラリー中の1つ又は複数の標的核酸の非標的核酸に対する優先的な濃縮が、方法100により可能となる。
【0062】
[0085]続いてステップ102を参照すると、核酸は任意選択でフラグメント化され、アダプターは核酸の各末端にライゲーションされる。本開示とともに使用するための核酸フラグメントのライブラリーを調製するための例示的な方法には、トランスポゾン媒介フラグメント化及び標識化、機械的剪断、酵素消化、オーバーハング(overhang)(例えば、T/A)又は平滑末端ライゲーション、鋳型スイッチング媒介アダプターライゲーションなど並びにその組み合わせが含まれる。最終的に、核酸ライブラリーフラグメントを調製するステップ102の産物は、核酸のライブラリーをもたらすことができ、ここで、核酸のライブラリー中の各核酸は、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有する。特に、第1及び第2のアダプターは同一でも異なっていてもよく、さらに、相補部分及び非相補部分を持つフォーク型又はY字型アダプター、ブラントエンドアダプター、オーバーハングアダプター、ヘアピンアダプターなど、並びにそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない、さまざまな形態をとることができる。一般に、前述のアダプターの少なくとも一部は二本鎖である;しかしながら、他のアダプター構成もまた、本開示による核酸フラグメントのライブラリーを調製する際に使用され得る。さらに、ヘアピンアダプターの場合、自己プライミング事象を防ぐために、ブロッキング要素(例えば、3’ジデオキシヌクレオチド又はリン酸基)を含めると有用な場合がある。
【0063】
[0086]方法100の次のステップ104は、核酸のライブラリー中に存在する標的核酸への第1のオリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションを含むことができ、それにより、未伸長の第1のプライマー-標的複合体を形成する。一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸の配列に相補的である規定された配列を有する標的特異的プライマーである。標的特異的プライマーの一例は、目的遺伝子(例えば、cDNA、ゲノムDNA)、又はその近くに(例えば、その上流又は5’に)ハイブリダイズするように設計された遺伝子特異的プライマーである。標的核酸は、RNA、DNA、又はそれらの組み合わせであり得る。第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、修飾された核酸(例えば、ビオチン化、ロックド核酸、イノシン、シーラ塩基など)、又は当技術分野で公知の他の核酸アナログから構成されるオリゴヌクレオチドプライマーであり得る。
【0064】
[0087]本開示の様々な実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、1つ又は複数の修飾された塩基、捕捉部分又はそれらの組み合わせを含み得る。第1のオリゴヌクレオチドプライマーが捕捉部分を含む場合、第1のオリゴヌクレオチドプライマーを標的核酸にハイブリダイズするステップ104の前に、第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、固体支持体に付着していても、溶液中に遊離(すなわち、固体支持体に結合していないか、又は代わりに付着していない)していてもよい。捕捉部分を含む第1のオリゴヌクレオチドプライマーが、捕捉部分を介して固体支持体に付着していない実施形態では、ステップ104は溶液中で実行することができる。捕捉部分を含む第1のオリゴヌクレオチドプライマーが、捕捉部分を介して固体支持体に付着している実施形態では、ステップ104はインサイツで実行することができる。特に、インサイツでの反応の場合、得られた未伸長のプライマー-標的複合体は、固体支持体に付着する。プライマー-標的複合体が結合している固体支持体から溶液を分離することにより、溶液中に残っている非標的核酸又は第1のオリゴヌクレオチドプライマーにアニーリングされていない標的核酸を全て除去することができる。
【0065】
[0088]方法100の次のステップ106は、第1のプライマー伸長反応を行うことを含む。一態様では、ステップ106は、ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドプライマーの第1のポリメラーゼを用いた伸長を含む。ステップ104での標的核酸鋳型への第1のオリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションに続いて、第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、第1のポリメラーゼによって伸長され、それにより、少なくとも一部の標的核酸鋳型の逆相補体を含む伸長された第1のオリゴヌクレオチドプライマーの3’領域を含む第1のプライマー伸長産物又は複合体を生成する。本明細書に記載されるように、ハイブリダイゼーション及び伸長反応は任意選択で同時に行われるが、他の実施形態では、ハイブリダイゼーション及び伸長反応は別々に(例えば、順次に)行われ、アニールしていなくて捕捉されていない標的核酸を反応混合物から除去する洗浄ステップによって分離されてもよい。さらに、ステップ104は、伸長された第1のオリゴヌクレオチドプライマーの長さを制御するために、プライマー伸長反応を停止することをさらに含み得る。特に、伸長された第1のオリゴヌクレオチドプライマー産物の長さは、ステップ104で追加したポリメラーゼを不活性化するなどの手法により能動的に制御するか、又は、限定された量の反応物の消費を介することなどで反応を完結させることや、方法100のステップ102において、核酸のライブラリー中の核酸のフラグメントのサイズを制御/選択することにより受動的に制御することができる。
【0066】
[0089]方法100は、第1のプライマー伸長複合体を捕捉するステップ108をさらに含む。第1のプライマー伸長複合体の捕捉は、本明細書に開示される様々な方法で達成することができ、方法100のステップ104及びステップ106のいずれかの前、同時又は後に達成することができる。上に記載のように、第1のオリゴヌクレオチドは、方法100のステップ104又はステップ106の前、間、又は後に第1のオリゴヌクレオチドプライマーを固体支持体上に捕捉するために使用できる捕捉部分を含むことができる。別の例では、標的核酸へのハイブリダイゼーションに続く第1のオリゴヌクレオチドプライマーの伸長は、1つ又は複数の修飾ヌクレオチドの取り込みを含む。修飾ヌクレオチドは、捕捉部分を含むことができるか、又は修飾ヌクレオチドの下流修飾が、捕捉部分を第1のプライマー伸長複合体の伸長された部分に付着又はそうでなければ組み込むことを可能にするように構成することができる。したがって、第1のプライマー伸長複合体を、1つ又は複数の修飾ヌクレオチドに付随する捕捉部分によって、ステップ106の間又はその後に捕捉することができる。標的核酸、アニールされたプライマー-標的複合体、又は標的伸長プライマー複合体が捕捉されるかどうかの選択は、方法のステップ104及びステップ106が溶液又はインサイツで行われるかどうかをさらに決定する。
【0067】
[0090]方法100の次のステップ110は、第1のプライマー伸長複合体の濃縮を含み得る。一態様では、ステップ110は、ライブラリー中の非標的核酸及び未使用の反応成分(例えば、ヌクレオチド、プライマー分子、ATPなど)、酵素、緩衝液などの他の分子からの第1のプライマー伸長複合体の回収のための1つ又は複数の精製及び濃縮ステップを含む。いくつかの実施形態では、ステップ110は、酵素消化、サイズ排除に基づく精製、親和性に基づく精製など、又はそれらの組み合わせを含む。特に、第1のプライマー伸長産物の濃縮は、核酸のライブラリーの全体に対する濃縮として測定することができる。一態様では、濃縮は、標的核酸ではない核酸のライブラリーの他のメンバーの枯渇(すなわち、除去)を介して標的核酸の濃度を増加させることを含む。
【0068】
[0091]方法100の次のステップ112は、核酸のライブラリーに存在する標的核酸への第2のオリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションを含むことができる。一態様では、第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、(第1のアダプター及び第2のアダプターの一方又は両方とハイブリダイズ又は相補的であるのではなく)標的核酸内の目的領域に結合する標的特異的プライマーである。別の態様では、標的核酸は、ステップ112の間の第1のプライマー伸長複合体の一部である。例えば、第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、第1のプライマー伸長複合体中の伸長された第1のオリゴヌクレオチドプライマーに対して5’位(すなわち、上流)で標的核酸にハイブリダイズすることができる。この場合に、生じた未伸長の第2のプライマー-標的複合体には、第1の伸長されたオリゴヌクレオチドプライマー、第1の伸長されたオリゴヌクレオチドプライマーにハイブリダイズした標的核酸、及び第2の(未伸長)オリゴヌクレオチドプライマーが含まれる。ステップ112の間に第1のプライマー伸長産物が固体支持体に付着する場合、未伸長の第2のプライマー-標的複合体は、同様に固体支持体に付着する。他の実施形態では(例えば、反応混合物から非標的核酸を除去した後)、第1のプライマー伸長産物は、固体支持体から遊離されて溶液中にあり、ステップ112で第2のオリゴヌクレオチドプライマーの溶液中ハイブリダイゼーションが可能になる。
【0069】
[0092]方法100の次のステップ114は、第2のプライマー伸長反応を行うことを含む。ステップ112における第2のオリゴヌクレオチドプライマーの標的核酸鋳型へのハイブリダイゼーションに続いて、第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、第2のポリメ
ラーゼによって伸長され、それにより、標的核酸を含む第2のプライマー伸長産物又は複合体を生成する。伸長された第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸鋳型の少なくとも一部の逆相補体を含む3’領域を含む。一態様では、第2のポリメラーゼでの第2のオリゴヌクレオチドプライマーの伸長は、伸長された第1のオリゴヌクレオチドプライマーを標的核酸との複合体から遊離させる。第1のプライマー伸長複合体から伸長された第1のオリゴヌクレオチドを遊離させることは、1つ又は複数の鎖置換(例えば、ポリメラーゼによる)、又は消化(例えば、ヌクレアーゼによる)を含み得る。例えば、伸長された第1のオリゴヌクレオチドの遊離は、鎖置換活性、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性、及びフラップエンドヌクレアーゼ活性の少なくとも1つを有する酵素で達成することができる。
【0070】
[0093]本明細書に記載されるように、ステップ112及びステップ114は任意選択で同時に行われるが、他の実施形態では、ステップ112及びステップ114は別々に(例えば、順次に)行われる。さらに、ステップ114は、伸長された第2のオリゴヌクレオチドプライマーの長さを制御するために、プライマー伸長反応の停止をさらに含むことができる。特に、伸長された第2のオリゴヌクレオチドプライマー産物の長さは、ステップ114で追加したポリメラーゼを不活性化するなどの手法により能動的に制御するか、又は、限定された量の反応物の消費を介することなどで反応を完結させることや、核酸のライブラリー中の核酸のフラグメントのサイズを制御/選択することにより受動的に制御することができる。
【0071】
[0094]伸長された第1のプライマーが固体支持体に付着した1つ又は複数の捕捉部分を含む場合、ステップ114における伸長された第1のオリゴヌクレオチドの遊離は、固体支持体に付着するのではなく溶液中で遊離した、第2のプライマー伸長複合体をもたらす。したがって、方法100のステップ110に記載されるように、ステップ114に続いて、支持体に付着した第1の伸長されたオリゴヌクレオチドプライマー、第2のポリメラーゼ、他の反応成分など、及びそれらの組み合わせから、未結合の第2の伸長産物又は標的核酸を含む複合体を回収するために、1つ又は複数の精製技術を実現することができる。
【0072】
[0095]方法100は、増幅のステップ116をさらに含む。ステップ116は、線形又は指数関数的増幅(例えば、PCR)を含むことができる。一般に、ステップ116は、第3のポリメラーゼ、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーを用いて標的核酸を増幅することを含む。一態様では、第1及び第2の増幅プライマーは、ステップ102で核酸のライブラリー中の標的核酸に組み込まれたアダプターの配列に相補的であるように設計される。例えば、第1の増幅プライマーは、第1のアダプターに相補的な3’末端を有することができ、第2の増幅プライマーは、第2のアダプターに相補的な3’末端を有することができる。しかしながら、増幅のためのプライマーは、増幅される標的核酸内に存在する任意の配列を含むことができ(例えば、遺伝子/標的特異的プライマー、ユニバーサルプライマーなど)、一方又は両方の鎖(すなわち、増幅反応の鋳型に対応する二本鎖核酸の上方及び下方の両方の鎖)の合成を支援することができる。
【0073】
[0096]いくつかの実施形態では、ステップ116は、標的核酸に由来する第1又は第2の伸長されたオリゴヌクレオチドプライマーのいずれかの増幅するのではなく、核酸のライブラリーからの標的核酸の選択的増幅を可能にする。一例において、ウラシル適合性ポリメラーゼ及びdUTPは、ステップ106及びステップ114で実行される伸長反応の一方又は両方に含まれる。反応から生じる伸長されたオリゴヌクレオチドプライマーは、少なくとも1つのウラシルヌクレオチドを含むが、標的核酸鋳型は、ウラシルヌクレオチドを有さないDNA鋳型であり得る。その後、標的核酸の増幅のために、ウラシル不適合性ポリメラーゼがステップ116に含まれる。ウラシル不適合性ポリメラーゼは、ウラシ
ルヌクレオチドを有さない標的核酸を増幅できる;しかしながら、ウラシル不適合性ポリメラーゼは、ウラシルを含む伸長されたオリゴヌクレオチドプライマーの複製が不可能であろう。或いは、又はさらに、ウラシルを含む産物は、選択的に消化されるか、さもなければ分解され得、それによって、核酸のライブラリーからの元の分子のみが残る。
【0074】
[0097]増幅のステップ116の後、方法100は、増幅された標的核酸を分析するステップ118を含むことができる。ステップ116は、方法100の1つ又は複数の産物の核酸配列を決定するための、任意の方法を含むことができる。ステップ116は、配列アラインメント、配列変動の同定、ユニークなプライマー伸長産物の計測など、又はそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0075】
[0098]方法100で概説される本開示の要素に加えて、本明細書に記載されるキット、組成物、及び方法を実現する場合、いくつかの追加の検討事項を考慮することが有用であり得る。一態様では、プライマーハイブリダイゼーションステップは、プライマーの標的特異的領域によって仲介される。いくつかの実施形態では、標的特異的領域は、エクソン、イントロン、若しくは遺伝子の非翻訳部分、又は遺伝子の非転写部分(例えば、プロモーター又はエンハンサー)に位置する遺伝子の領域にハイブリダイズすることができる。一部の実施形態では、遺伝子はタンパク質コード遺伝子であるが、他の実施形態では、遺伝子は、RNAコード遺伝子又は偽遺伝子などの、タンパク質コード遺伝子ではない。さらに他の実施形態では、標的特異的領域は遺伝子間領域に位置する。mRNA又はcDNA標的については、プライマーはオリゴdT配列を含んでもよい。
【0076】
[0099]予め設計された標的特異的領域の代わりに、プライマーは、縮重配列(すなわち、無作為に組み込まれたヌクレオチドのストリング)を含んでもよい。そのようなプライマーもまた、ゲノム内の結合部位を見いだし、その結合部位の標的特異的プライマーとして作用し得る。特に、各ヌクレオチド位置が縮重している完全縮重プライマーは、標的化された濃縮に有用ではない可能性がある。しかしながら、ヌクレオチド位置の一部のみが縮重している部分的な縮重プライマーは、本開示による使用に有用であり得る。例えば、単一ヌクレオチド位置に部分的な縮重を有するプライマーは、1つ又は複数の単一ヌクレオチド多型(SNP)を含む標的配列の捕捉に有用であり得る。
【0077】
[0100]標的特異的領域に加えて、プライマーは追加の配列を含んでもよい。一部の実施形態では、これらの配列は、標的特異的領域の5’末端に位置する。他の実施形態では、標的特異的領域が下に記載のように標的にハイブリダイズしてプライマー伸長反応を推進することができる限り、これらの配列をプライマー内の他の場所に含めることが可能であり得る。プライマー内の追加の配列は、ユニークな分子識別配列(unique molecular identification sequence;UID)又はマルチプレックスサンプル識別配列(multiplex sample identification sequence;MID)などの1つ又は複数のバーコード配列を含んでもよい。バーコード配列は、単一の配列として、又は2つ以上の配列として存在し得る。
【0078】
[0101]いくつかの実施形態では、追加の配列は、プライマーの5’末端へのライゲーションを促進する配列を含む。プライマーには、次のセクションに記載するように、アダプターのライゲーションを可能にするユニバーサルライゲーション配列を含んでもよい。
【0079】
[0102]いくつかの実施形態では、追加の配列は、1つ又は複数のユニバーサル増幅プライマーのための1つ又は複数の結合部位を含む。
[0103]プライマー伸長ステップは、核酸ポリメラーゼによって行われる。分析される核酸の種類に依存して、ポリメラーゼはDNA依存性DNAポリメラーゼ(「DNAポリメラーゼ」)又はRNA依存性DNAポリメラーゼ(「逆転写酵素」)であってもよい。
【0080】
[0104]いくつかの実施形態では、プライマー伸長反応で合成される核酸鎖の長さを制御することが望ましい。以下で説明されるように、この鎖の長さは、方法の後続のステップ及び任意の下流の応用に供される核酸の長さを決定する。伸長反応は、当技術分野で公知の任意の方法によって停止することができる。例えば、温度シフト又はポリメラーゼ阻害剤の添加により、反応を物理的に停止させてもよい。いくつかの実施形態では、反応は氷上に反応物を置くことにより停止される。他の実施形態において、反応は、温度を上昇させて非耐熱性ポリメラーゼを不活性化することによって停止される。さらに他の実施形態において、反応は、酵素の重要な補因子を隔絶することができるEDTAなどのキレート剤の添加、又は酵素を可逆的若しくは不可逆的に不活性化することができる別の化学的若しくは生物学的な物質化合物によって停止される。
【0081】
[0105]プライマー伸長産物の長さを制御する別の方法は、伸長長さを直接限定するために重要な成分(例えば、dNTP)を限定するか、又は伸長速度を遅くして伸長停止ポイントを制御する能力を改善するためにMg2+を限定して、伸長反応を欠乏させることである。当業者は、限定されたプライマー伸長が主に所望の長さの産物を生じることを可能にする重要な成分の適切な量を実験的又は理論的に決定することができる。
【0082】
[0106]プライマー伸長産物の長さを制御する別の方法は、可逆的ターミネーターヌクレオチドを含む、ターミネーターヌクレオチドの付加である。当業者は、限定されたプライマー伸長が主に所望の長さの産物を生じることを可能にするターミネーター及び非ターミネーターヌクレオチドの適切な比率を実験的又は理論的に決定することができる。ターミネーターヌクレオチドの例には、ジデオキシヌクレオチド、Gelfandらの米国特許第8,163,487号に記載されるように2’-リン酸ヌクレオチド、3’-O-ブロック化可逆ターミネーター、並びに例えば、Zhuoらの米国特許出願公開第2014/0242579号及びGuo、J.ら、Four-color DNA sequencing with 3’-O-modified nucleotide reversible terminators and chemically cleavable fluorescent dideoxynucleotides、P.N.A.S. 2008年 105(27)9145~9150頁に記載されるように3’非ブロック化可逆ターミネーターが含まれる。プライマー伸長産物の長さを制御するさらなる別の方法は、プライマー伸長反応への限定量のウラシル(dUTP)の添加である。その後、ウラシル含有DNAをウラシルN-DNAグリコシラーゼで処理して、脱塩基部位を生成する。脱塩基部位を有するDNAは、Guptaらの米国特許第8,669,061号に記載されるように、分解の効率を改善するためにアルカリを任意選択で添加して熱処理することにより分解することができる。当業者は、エンドヌクレアーゼ処理時に所望の長さの産物を主に生じさせるためにdUTPを限定的に含める伸長反応において、dUTP対dTTPの適切な比率を実験的又は理論的に決定することができる。
【0083】
[0107]いくつかの実施形態では、伸長産物の長さは、入力核酸の長さによって本質的に限定される。例えば、母体血漿に存在する無細胞DNAは200bp未満の長さであり、大部分は166bpの長さである。Yu,S.C.Y.ら、Size-based molecular diagnostics using plasma DNA for
noninvasive prenatal testing、PNAS USA 2014年;111(23):8583~8頁。健常者や癌患者の血漿中で見られる無細胞DNAの長さの中央値は、約185~200bpである。Giacona,M.B.ら、Cell-free DNA in human blood plasma:length measurements in patients with pancreatic cancer and healthy controls、Pancreas 1998年;17(1):89~97頁。保存が不十分であるか又は化学的に処理されたサンプルは、化学的又は物理的に分解された核酸を含む場合がある。例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)は、典型的には、平均150bpの長さの核酸を生成する。
【0084】
[0108]いくつかの実施形態では、本発明の方法は、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素によるプライマー伸長後に、1つ又は複数の精製ステップを含む。精製により、未使用のプライマー分子及びプライマー伸長産物の作成に使用された鋳型分子が除去される。いくつかの実施形態では、鋳型核酸及び伸長されたプライマー以外のすべての核酸フラグメントは、エキソヌクレアーゼ消化によって除去される。その実施形態では、プライマー伸長において使用されるプライマーは、プライマー及び任意の伸長産物をエキソヌクレアーゼ消化耐性にする5’末端修飾を有してもよい。そのような修飾の例には、ホスホロチオエート結合が含まれる。他の実施形態では、RNA鋳型は、RNaseH消化を含むRNase消化などの、DNAを残す酵素処理によって除去することができる。さらなる他の実施形態では、プライマー及び大型鋳型DNAは、サイズ排除法、例えば、ゲル電気泳動、クロマトグラフィー又は等速電気泳動又はエピタコフォレシス(epitachophoresis)によって伸長産物から分離される。
【0085】
[0109]いくつかの実施形態では、精製は、親和性結合による。この実施形態の変形では、親和性は、特定の標的配列に対するものである(配列捕捉)。他の実施形態では、プライマーは、親和性タグを含む。当技術分野で公知の任意の親和性タグ、例えばビオチン又は抗体又は特定の抗体が存在する抗原を使用することができる。親和性タグの親和性パートナーは、溶液中に、例えば、懸濁粒子又はビーズなどの溶液相固体支持体上に存在するか、又は固相支持体に結合することができる。親和性精製の過程で、反応混合物の未結合成分が洗い流される。いくつかの実施形態では、未使用のプライマーを除去するために追加のステップが取られる。いくつかの実施形態では、親和性捕捉は、プライマー伸長産物の電荷を変化させる。例えば、1つ又は複数のビオチン化ヌクレオチドの含めること及びストレプトアビジンをそれに結合させることにより、新生した核酸鎖において電荷に変化が生じる。変化した電荷は、等速電気泳動又はエピタコフォレシスにより、新生した鎖(プライマー伸長産物)の分離に利用できる。
【0086】
[0110]特に、本開示の方法は、ライゲーションステップを必要としない(例えば、共通配列を伸長された第1又は第2のオリゴヌクレオチドプライマーに追加すること)。しかしながら、いくつかの実施形態では、本発明は、ライゲーションステップを含む。例えば、ホモポリマーテールを核酸の3’末端に追加することができる。この実施形態では、ホモポリマーは、逆補体ホモポリマーの結合部位として機能し得る(mRNAのためのポリTプライマーを用いるポリAテールと同様に)。ライゲーションにより、1つ又は複数のアダプター配列が、前のステップで生成されたプライマー伸長産物に追加される。アダプター配列は、1つ又は複数のユニバーサルプライミング部位(増幅又は配列決定のための)及び任意選択で、1つ又は複数のバーコードを提供する。アダプターをライゲーションする正確なモードは、アダプターがプライマー伸長産物に付随し、以下で説明する後続ステップが可能な限り、重要ではない。
【0087】
[0111]上に記載するいくつかの実施形態では、本方法は、ユニバーサルプライミング配列(「プライミング部位」)を含み、単一のプライミング部位を用いたプライマー伸長産物を生じる標的特異的プライマーを含む。そのような実施形態では、指数関数的増幅を可能にするために、1つだけの追加のプライミング配列(「プライミング部位」)を提供する必要がある。他の実施形態では、標的特異的プライマーは、ユニバーサルプライミング部位を含まない。そのような実施形態では、指数関数的増幅を可能にするために、2つのプライミング部位が提供される必要がある。ユニバーサルプライミング部位を有するアダプターは、当技術分野で利用可能な任意の一本鎖ライゲーション法によって追加されても
よい。
【0088】
[0112]一本鎖ライゲーション法の一例は、伸長プライマーが、ユニバーサルライゲーション部位を含む実施形態で使用することができる。そのような実施形態では、プライマーのユニバーサルライゲーション部位に相補的な二本鎖領域及び一本鎖オーバーハングを有するアダプターを、アニール及びライゲートすることができる。アダプターの一本鎖3’オーバーハングをプライマーの5’末端のユニバーサルライゲーション部位にアニーリングすると、プライマー伸長産物を含む鎖にニックのある二本鎖領域が生成される。DNAリガーゼ若しくは別の酵素、又はプライマー伸長産物の5’-リン酸とアダプターの3’-OHの間の反応を触媒することができる非酵素試薬によって、2本の鎖をニックでライゲートできる。アダプターをつなげることにより、ライゲーションは、プライマー伸長産物の一端にユニバーサルプライミング部位を提供する。
【0089】
[0113]一本鎖ライゲーション法の別の例を、ユニバーサルプライミング部位をプライマー伸長産物の反対側末端に(又は、伸長プライマーがユニバーサルライゲーション部位を含まない実施形態では、伸長産物の両側に)追加することに使用できる。この実施形態では、ライゲーションされるプライマー伸長産物の一端又は両端は、ユニバーサルライゲーション部位を持たない。さらに、いくつかの実施形態では、ライゲーションされるプライマー伸長産物の少なくとも1つの末端は、(例えば、無作為的な終結事象又は未知の配列変動のために)未知の配列を有する。そのような実施形態では、配列に依存しない一本鎖ライゲーション法が用いられる。例示的な方法は、米国特許出願公開第20140193860号に記載されている。基本的に、本方法では、一本鎖3’末端オーバーハングが、ユニバーサルライゲーション部位を持つ代わりに、無作為配列、例えば、無作為ヘキサマー配列を持つアダプターの母集団を使用する。その方法のいくつかの実施形態では、アダプターはヘアピン構造も持つ。別の例は、ACCEL-NGS 1S DNAライブラリーキット(Swift Biosciences、Ann Arbor、Mich.)によって可能となる方法である。
【0090】
[0114]本方法のライゲーションステップは、リガーゼ若しくは同様の活性を持つ別酵素又は非酵素試薬を利用する。リガーゼは、例えば、T4若しくはE.coliリガーゼなどのウイルス若しくは細菌起源のDNA若しくはRNAリガーゼ、又は熱安定性リガーゼAfu、Taq、Tfl若しくはTthであり得る。一部の実施形態では、代替酵素、例えばトポイソメラーゼを使用することができる。さらに、非酵素試薬を使用して、Bevilacquaらの米国特許出願公開第2014/0193860号に記載及び参照されているように、プライマー伸長産物の5’-リン酸とアダプターの3’-OHとの間にリン酸-ジエステル結合を形成することができる。
【0091】
[0115]本方法のいくつかの実施形態では、アダプターの第1のライゲーションの後に、任意選択のプライマー伸長が続く。ライゲーションされたアダプターは、伸長して二本鎖核酸を生成できる遊離の3’末端を持つ。その後、アダプターの反対端は、別のアダプターの平滑末端ライゲーションに適するようになる。一本鎖ライゲーション手順の必要を避け、分子のこの二本鎖末端を、任意のリガーゼ又は別の酵素的又は非酵素的手段によって、二本鎖アダプターにライゲーションすることができる。二本鎖アダプター配列は、1つ又は複数のユニバーサルプライミング部位(増幅又は配列決定のための)及び、任意選択で1つ又は複数のバーコードを提供する。
【0092】
[0116]いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ライゲーションステップの後に1つ又は複数の精製ステップを含む。精製により、未使用のアダプター分子が除去される。アダプター及び大きなサイズのライゲーション産物は、サイズ排除法、例えばゲル電気泳動、クロマトグラフィー、又は等速電気泳動によって伸長産物から分離される。
【0093】
[0117]いくつかの実施形態では、精製は親和性結合による。この実施形態の変形では、親和性は特定の標的配列に対するものである(配列捕捉)。他の実施形態では、アダプターは親和性タグを含む。当該分野で公知の任意の親和性タグを使用することができる(例えば、ビオチン又は抗体又は特定の抗体が存在する抗原)。親和性タグの親和性パートナーは、溶液相支持体(例えば、懸濁粒子上又はビーズ上)に会合していても、又は固体支持体に結合していてもよい。親和性精製の過程で、反応混合物の未結合成分が洗い流される。一部の実施形態では、未使用のアダプターを除去するために追加のステップが取られる。
【0094】
[0118]いくつかの実施形態において、本発明は、増幅ステップを含む。このステップには、線形又は指数関数的増幅(例えば、PCR)が含まれる。増幅用のプライマーは、増幅される核酸内に存在する任意の配列を含むことができ、一方又は両方の鎖の合成を支援することができる。増幅は、等温であってもよいし、熱サイクルを伴っていてもよい。
【0095】
[0119]いくつかの実施形態では、増幅は指数関数的であり、PCRを伴う。PCR増幅バイアスを低減することが望まれる。バイアスを低減するために1つ又は複数の遺伝子特異的プライマーが使用される場合、限定された数の増幅サイクル(例えば、約10以下のサイクル)が方法に伴う。これらの実施形態の他の変形では、ユニバーサルプライマーを使用して両方の鎖を合成する。ユニバーサルプライマー配列は、ライゲーションされたアダプターの一方又は両方の元来の伸長プライマーの一部であってもよい。1つ又は2つのユニバーサルプライマーが使用できる。上に記載の伸長プライマー及び一方又は両方のアダプターは、同じプライマー結合部位を有するように操作することができる。その実施形態では、単一のユニバーサルプライマーを使用して、両方の鎖を合成することができる。他の実施形態では、増幅される分子の一方の側の伸長プライマー(又はアダプター)及びもう一方の側のアダプターは、異なるユニバーサルプライマー結合部位を含む。ユニバーサルプライマーは、(同じ又は異なる配列の)別のユニバーサルプライマーと対になってもよい。他の実施形態では、ユニバーサルプライマーは、遺伝子特異的プライマーと対になってもよい。ユニバーサルプライマーを用いたPCRでは配列バイアスが低減するため、増幅サイクルの数を、遺伝子特異的プライマーを用いたPCRにおける場合と同じ程度に限定する必要はない。ユニバーサルプライマーが使用される場合の増幅サイクルの数は、低くてもよいが、約20、30又はそれ以上に高くてもよい。
【0096】
[0120]本発明は、分子バーコードの使用を含む。バーコードは、典型的には、4~36ヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、バーコードは、互いに10℃以下の融解温度を有するように設計される。バーコードは、最小限のクロスハイブリダイズセット、つまり、所望の反応条件下で互いにできるだけ少ない安定なハイブリッドを形成する配列の組み合わせを形成するように設計できる。配列の同定及び計測のためのバーコードの設計、配置及び使用は、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第7,393,665号、第8,168,385号、第8,481,292号、第8,685,678号、及び第8,722,368号を参照されたい。
【0097】
[0121]バーコードを使用して、サンプル及びその子孫(すなわち、元の核酸分子を使用して産生される核酸分子のセット)中の各核酸分子を同定することができる。そのようなバーコードは「ユニークID」(unique IDs;UID)である。
【0098】
[0122]バーコードはまた、分析される核酸分子が由来するサンプルを同定するために使用できる。そのようなバーコードは「マルチプレックスサンプルID」(multiplex sample ID;「MID」)である。同じサンプルに由来するすべての分子は、同じMIDを共有する。
【0099】
[0123]バーコードには、各バーコードに特徴的なヌクレオチドのユニークな配列が含まれる。いくつかの実施形態では、バーコードの配列は事前に設計されている。他の実施形態では、バーコード配列は無作為的である。バーコード内の全て又は一部のヌクレオチドは無作為的にできる。既知の配列内の無作為配列及び無作為ヌクレオチド塩基は、それぞれ「縮重配列」及び「縮重塩基」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、分子は2つ以上のバーコードを含む:1つは分子識別(UID)用であり、1つはサンプル識別(MID)用である。ときおり、UID又はMIDが各々いくつかのバーコードを含み、それらを一緒にすると、分子又はサンプルの識別が可能になる。
【0100】
[0124]いくつかの実施形態では、反応におけるUIDの数は、標識される分子の数を超えることができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のバーコードを使用して、配列をグループ化又はビン化する。例えば、いくつかの実施形態では、1つ又は複数のUIDを使用して配列をグループ化又はビン化し、各ビン内の配列は同じUIDを含む、すなわち、単一の標的分子に由来するアンプリコンである。いくつかの実施形態では、配列を整列させるためにUIDが使用される。他の実施形態では、標的特異的領域は、配列を整列させるために使用される。本発明のいくつかの実施形態では、UIDが初期プライマー伸長事象に導入される一方で、サンプルのバーコード(MID)がライゲーションされたアダプターに導入される。
【0101】
[0125]ライゲーションを行った後、核酸産物を配列決定することができる。配列決定は、当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。ハイスループットの単一分子配列決定が特に有利である。そのような技術の例には、454 LIFE SCIENCES GS FLXプラットフォーム(454 LIFE SCIENCES)ILLUMINA HISEQプラットフォーム(ILLUMINA)、ION TORRENTプラットフォーム(LIFE TECHNOLOGIES)、SMRT配列決定技術を利用したPACIFIC BIOSCIENCESプラットフォーム(PACIFIC BIOSCIENCES)、及び合成による配列決定を伴うか、又は伴わない任意の他の現在存在するか又は将来の単一分子配列決定技術が含まれる。これらの実施形態の変形では、配列決定は、一方又は両方のアダプター配列又は一方又は両方のプライマー配列に存在するユニバーサルプライマー部位を利用する。これらの実施形態のさらなる他の変形では、遺伝子特異的プライマーが配列決定に使用される。しかしながら、ユニバーサルプライマーは、遺伝子特異的プライマーと比較して、配列決定バイアスの減少が付随することに留意されたい。
【0102】
[0126]いくつかの実施形態では、配列決定ステップは、配列整列を含む。いくつかの実施形態では、整列を使用して、複数の配列、例えば、同じユニーク分子ID(UID)を有する複数からコンセンサス配列を決定する。いくつかの実施形態では、整列は、単一ヌクレオチド変動(single nucleotide variation;SNV)などの配列変動を同定するために使用される。いくつかの実施形態では、コンセンサス配列は、すべてが同一のUIDを有する複数の配列から決定される。他の実施形態では、UIDは、アーティファクト、すなわち、(特定のUIDによって特徴付けられる)単一分子の子孫に存在する変動、を排除するために使用される。PCRエラー又は配列決定エラーから生じるそのようなアーティファクトは、UIDを使用して排除できる。
【0103】
[0127]いくつかの実施形態では、サンプル中の各配列の数は、同じマルチプレックスサンプルID(MID)を持つ集団の間で、各UIDを持つ配列の相対数を定量化することによって定量化することができる。各UIDは元のサンプルの単一分子を表し、各配列変異体に付随する異なるUIDを計数すると、すべての分子が同じMIDを共有する、元のサンプルの各配列変異体の割合を決定することができる。当業者は、コンセンサス配列を
決定するために必要な配列読み取りの数を決定することができるであろう。一部の実施形態では、関連する数は、正確な定量的結果のために必要であるUID(「配列深度」)あたりの読み取りである。一部の実施形態では、所望の深さは、UIDあたり5~50回の読み取りである。
【0104】
[0128]本発明の方法において使用されるサンプルは、核酸を含む任意の個体(例えば、ヒト、患者)又は環境サンプルを含む。ポリヌクレオチドはサンプルから抽出することができるか、又はサンプルは本発明の方法に直接供することができる。開始サンプルはまた、抽出されるか又は単離された核酸、DNA又はRNAであり得る。サンプルは、生物から得られた任意の組織又は体液を構成することができる。例えば、サンプルは、腫瘍生検又は血液又は血漿サンプルであり得る。一部の実施形態では、サンプルは、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)サンプルである。サンプルは、1つ又は複数の供給源、例えば1人又は複数の患者からの核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、組織は病原体に感染する可能性があり、したがって宿主及び病原体の核酸を含み得る。
【0105】
[0129]DNA抽出の方法は、当技術分野でよく知られている。J.Sambrookら、“Molecular Cloning: A Laboratory Manual,”1989年、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press:New York、N.Y.を参照されたい。生体サンプルから核酸(DNA又はRNA)を抽出するためのさまざまなキットが市販されている(例えば、BD BIOSCIENCES CLONTECH (Palo Alto、Cal.)、EPICENTRE TECHNOLOGIES (Madison、Wisc.);GENTRA SYSTEMS、INC.(Minneapolis、Minn.);and QIAGEN、INC.(Valencia、Cal.)、AMBION、INC.(Austin、Tex.);BIORAD LABORATORIES(Hercules、Cal.);など)。
【0106】
[0130]いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される開始サンプルは、ライブラリー、例えば、複数のポリヌクレオチドを含むゲノムライブラリー又は発現ライブラリーである。他の実施形態では、ライブラリーは、本発明の方法によって作成される。出発材料が生物学的サンプルである場合、本方法は、増幅ライブラリー、又は多様性又は配列を代表するアンプリコンのコレクションを作成する。ライブラリーは、ライブラリー内の核酸のさらなる増幅又は配列決定のために複数回保存及び使用することができる。
【0107】
[0131]本開示の一実施形態によれば、プライマー伸長標的濃縮のための方法は、標的核酸の溶液中プライマー媒介捕捉を含むことができる。ここで図2A~2Eを見ると、核酸のライブラリーには、目的領域(ROI)202を含む標的核酸200が含まれる(図2A)。標的核酸200は、第1のアダプター204を含む第1の末端及び第2のアダプター206を含む第2の末端をさらに含む。図2A~2Eでは、標的核酸200は、標的核酸200の3’末端(すなわち、第1の末端)に位置する第1のアダプター204及び標的核酸200の5’末端(すなわち、第2の末端)に位置する第2のアダプター206を有する一本鎖核酸として示される。第1のオリゴヌクレオチド208は、核酸のライブラリー中の標的核酸200にハイブリダイズする。第1のオリゴヌクレオチド208は、標的核酸に相補的な3’標的特異的領域210及び捕捉部分212を含む。図示の実施形態では、標的特異的領域210は、ROI 202に相補的である。
【0108】
[0132]図2Bに示すように、ハイブリダイズされた第1のオリゴヌクレオチド208は、第1のポリメラーゼ(図示せず)で伸長され、それにより、標的核酸200及び伸長された第1のオリゴヌクレオチド216を含む第1のプライマー伸長複合体214を生成する(伸長された第1のオリゴヌクレオチド216の伸長された部分を破線で示す)。第1のプライマー伸長複合体214は、固体支持体218上に捕捉される。固体支持体は、溶液相支持体(例えば、ビーズ又は別の類似の粒子)、又は固相支持体(例えば、シリコンウエハー、ガラススライドなど)であり得る。例えば、米国特許第656568号、第6274386号、第7371830号、第6870047号、第6255477号、第6746874号及び第6258531号に記載される磁性ガラス粒子及びそれを使用するデバイスを使用することができる。図2Bに図示される実施形態では、第1のプライマー伸長複合体214は、捕捉部分212を介して固体支持体上に捕捉される。捕捉に続いて、第1のプライマー伸長複合体214は、核酸のライブラリーに対して濃縮される。
【0109】
[0133]図2Cを見ると、第2のオリゴヌクレオチド220は、標的核酸200にハイブリダイズされる。第2のオリゴヌクレオチド220は、標的核酸200に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチド208の標的特異的領域210に対して5’位で標的核酸200にハイブリダイズする。図示される実施形態では、第2のオリゴヌクレオチド220は、ROI 202のすぐ外側の位置で標的核酸200に相補的であり、ハイブリダイズされる。しかしながら、第1のオリゴヌクレオチド208及び第2のオリゴヌクレオチド220は、第2のオリゴヌクレオチド220が第1のオリゴヌクレオチド208の標的特異的領域210に対して5’位で標的核酸200にハイブリダイズするように、標的核酸200の長さに沿った任意の定義された位置でハイブリダイズするように設計できることが認識される。図2Cから、第1の伸長されたオリゴヌクレオチド216(固体支持体218に付着している)及び第2のオリゴヌクレオチド220の両方が標的核酸200にハイブリダイズされることが分かる。
【0110】
[0134]図2Dを参照すると、ハイブリダイズされた第2のオリゴヌクレオチド220は、第2のポリメラーゼ(図示せず)で伸長され、それにより、標的核酸200及び伸長された第2のオリゴヌクレオチド224(伸長された第2のオリゴヌクレオチド224の伸長部分を破線で示す)を含む第2のプライマー伸長複合体222を生成する。一態様では、ハイブリダイズされた第2のオリゴヌクレオチド220の伸長により、第1のプライマー伸長複合体214から伸長された第1のオリゴヌクレオチド216が遊離する。別の態様では、伸長された第1のオリゴヌクレオチド216(第1のオリゴヌクレオチドプライマー208を含む)は、固体支持体218に付着したままである。
【0111】
[0135]図2Eに図示するように、標的核酸200は、第3のポリメラーゼ(図示せず)、第1の増幅プライマー226、及び第2の増幅プライマー228で増幅される。第1の増幅プライマー226は、第1のアダプター204に相補的な3’末端を含み、第2の増幅プライマー228は、第2のアダプター206に相補的な3’末端を含む。
【0112】
[0136]本開示の別の実施形態によれば、プライマー伸長標的濃縮のための方法は、標的核酸のインサイツプライマー媒介捕捉を含むことができる。図3A及び3Bを参照すると、核酸のライブラリーは、目的領域(region of interest;ROI)302(図3A)を含む標的核酸300を含む。標的核酸300は、第1のアダプター304を含む第1の末端及び第2のアダプター306を含む第2の末端をさらに含む。図3A及び3Bでは、標的核酸300は、第1のアダプター304が標的核酸300の3’末端(すなわち、第1の末端)に位置し、第2のアダプター306が標的核酸300の5’末端(すなわち、第2の末端)に位置する一本鎖核酸として図示される。第1のオリゴヌクレオチド308は、核酸のライブラリー中の標的核酸300にハイブリダイズされる。第1のオリゴヌクレオチド308は、標的核酸300に相補的である3’標的特異的領域310及び捕捉部分312を含む。図示の実施形態では、標的特異的領域310は、ROI 302に相補的である。
【0113】
[0137]図2A~2Eに示される実施形態と比較して、第1のオリゴヌクレオチド308
は、第1のオリゴヌクレオチド308の標的核酸300へのハイブリダイゼーションの前又は同時に、固体支持体318上に捕捉される。固体支持体318は、溶液相支持体(例えば、ビーズ又は他の類似の粒子)、又は固相支持体(例えば、シリコンウエハー、ガラススライドなど)であってもよい。図3Aに示される実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド308は、捕捉部分312を介して固体支持体318上に捕捉される。図2Bを見ると、ハイブリダイズされた第1のオリゴヌクレオチド308は、第1のポリメラーゼ(図示せず)で伸長され、それにより、標的核酸300及び伸長された第1のオリゴヌクレオチド316を含む第1のプライマー伸長複合体314を生成する(伸長された第1のオリゴヌクレオチド316の伸長された部分を破線で示す)。特に、第1のプライマー伸長複合体314は、固体支持体318上に捕捉され、核酸のライブラリーに対する標的核酸300の濃縮を可能にする。その後、第2のプライマーハイブリダイゼーション及び伸長反応は、図2C及び2Dに図示されるように実行することができ、その後、図2Eに図示されるような増幅ステップが続く。
【0114】
[0138]本開示のさらなる別の実施形態によれば、プライマー伸長標的濃縮のための方法は、標的核酸の伸長媒介捕捉を含んでもよい。図4A~4Dを参照すると、核酸のライブラリーは、目的領域(ROI)402を含む標的核酸400を含む(図4A)。標的核酸400はさらに、第1のアダプター404を含む第1の末端及び第2のアダプター406を含む第2の末端を含む。図4A~4Dでは、標的核酸400は、第1のアダプター404が標的核酸400の3’末端(すなわち、第1の末端)に位置し、第2のアダプター406が標的核酸400の5’末端(すなわち、第2の末端)に位置する一本鎖核酸として図示される。第1のオリゴヌクレオチド408は、核酸のライブラリー中の標的核酸400にハイブリダイズされる。第1のオリゴヌクレオチド408は、標的核酸400に相補的である。特に、第1のオリゴヌクレオチド408は、図2Aの捕捉部分212を含む第1のオリゴヌクレオチド208と比較して、必ずしも捕捉部分を含まない。図4Aに示される実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド408は、ROI 402の一部に相補的である。
【0115】
[0139]図4Bに示されるように、ハイブリダイズされた第1のオリゴヌクレオチド408は、第1のポリメラーゼ(図示せず)で伸長され、それにより、標的核酸400及び伸長された第1のオリゴヌクレオチド416を含む第1のプライマー伸長複合体414を生成する(伸長された第1のオリゴヌクレオチド416の伸長された部分を破線で示す)。図4A~4Dに図示される実施形態によれば、第1のオリゴヌクレオチド408の伸長は、1つ又は複数の修飾核酸412の存在下で行われる。各修飾核酸は、捕捉部分412aを含むか、又は、第1のオリゴヌクレオチド416の伸長と同時に又はその後に、修飾を受けて捕捉部分412aを追加することができる。捕捉部分412aを含む1つ又は複数の修飾核酸412を組み込むことにより、固体支持体418上での標的核酸400の伸長を介した捕捉が可能になる。固体支持体418は、溶液相支持体(例えば、ビーズ又は他の類似の粒子)、又は固相支持体(例えば、シリコンウエハー、ガラススライドなど)であり得る。図4Bに図示される実施形態では、第1のプライマー伸長複合体414は、捕捉部分412aを含む修飾された核酸412を介して固体支持体418上に捕捉される。捕捉に続いて、第1のプライマー伸長複合体414は、核酸のライブラリーに対して濃縮される。
【0116】
[0140]図4Cを見ると、第2のオリゴヌクレオチド420は、標的核酸400にハイブリダイズされる。第2のオリゴヌクレオチド420は、標的核酸400に相補的であり、第1のオリゴヌクレオチド408に対して5’位で標的核酸400にハイブリダイズする。図示の実施形態では、第2のオリゴヌクレオチド420は、ROI 402のすぐ内側の位置で標的核酸400に相補的であり、ハイブリダイズする。しかしながら、第1のオリゴヌクレオチド408及び第2のオリゴヌクレオチド420は、第2のオリゴヌクレオチド420が第1のオリゴヌクレオチド408の標的特異的領域410に対して5’位で標的核酸400にハイブリダイズするように、標的核酸400の長さに沿った任意の定義された位置でハイブリダイズするように設計できることが認識される。
【0117】
[0141]図4Cを引き続き参照すると、ハイブリダイズされた第2のオリゴヌクレオチド420は、第2のポリメラーゼ(図示せず)で伸長され、それにより、標的核酸400及び伸長された第2のオリゴヌクレオチド424(伸長された第2のオリゴヌクレオチド424の伸長部分を破線で示す)を含む第2のプライマー伸長複合体422を生成する。第2のポリメラーゼでの第2のオリゴヌクレオチド420の伸長の前に、第1の伸長されたオリゴヌクレオチド416(固体支持体418に付着している)及び第2のオリゴヌクレオチド420はそれぞれ標的核酸400にハイブリダイズされている。ハイブリダイズされた第2のオリゴヌクレオチド420の伸長により、第1のプライマー伸長複合体414から、伸長された第1のオリゴヌクレオチド416が遊離する。別の態様では、伸長された第1のオリゴヌクレオチド416(第1のオリゴヌクレオチドプライマー408及び修飾された核酸412を含む)は、固体支持体418に付着したままである。
【0118】
[0142]図4Dに図示されるように、標的核酸400は、第3のポリメラーゼ(図示せず)、第1の増幅プライマー426、及び第2の増幅プライマー428で増幅される。第1の増幅プライマー426は、第1のアダプター404に相補的な3’末端を含み、第2の増幅プライマー428は、第2のアダプター406に相補的な3’末端を含む。
【0119】
[0143]一態様では、核酸のライブラリー中の標的及び非標的核酸は、デイジーチェーン構造をもたらす分子間相互作用を示し得る。図5に示されるように、標的核酸200(図2Aも参照)は、ROI、第1のアダプター204及び第2のアダプター206を含む。第1のオリゴヌクレオチド208は、標的核酸200にハイブリダイズされる。第1のオリゴヌクレオチド208は、3’標的特異的領域210及び捕捉部分212を含む。核酸のライブラリーは、第1の非標的核酸500及び第2の非標的核酸500’を含む1つ又は複数の非標的核酸をさらに含み得る。標的核酸200と同様に、第1の非標的核酸500及び第2の非標的核酸500’は各々、第1のアダプター504及び504’をそれぞれ含む第1の末端、並びに第2のアダプター506及び506’をそれぞれ含む第2の末端を含む。一態様では、第1のアダプター204は、第1のアダプター504に少なくとも部分的に相補的であり、第2のアダプター506は、第2のアダプター506’に少なくとも部分的に相補的である。したがって、図5に図示されるように、標的核酸200は、非標的核酸500及び非標的核酸500’とデイジーチェーンを形成することができる。
【0120】
[0144]様々な状況において、デイジーチェーン構造の形成を最小化又は排除することは有用であり得る。例えば、第1のオリゴヌクレオチド208のハイブリダイゼーション及び伸長による標的核酸200の捕捉は、非標的核酸500及び非標的核酸500を、会合を介して捕捉してしまう可能性があり、それにより、捕捉及び濃縮法の特異性の低減をもたらし得る。核酸のライブラリー中の標的核酸と非標的核酸のアダプター末端間の分子間相互作用を低減するために、ブロッキングオリゴヌクレオチドをアダプター末端配列にハイブリダイズさせることができる。
【0121】
[0145]オフターゲットハイブリダイゼーションの低減を促進するために、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、アダプター(例えば、第1のアダプター204及び第2のアダプター206)に相補的な配列を有し、これらのアダプター配列に優先的にハイブリダイズする。ブロッキングオリゴは、シングルプレックス(single-plex)とマルチプレックス(multiplex)の両方のフォーマットで使用できる。マルチプレックスが望ましい場合は、さまざまなサンプルインデックス配列をアダプターに組み込むこと
ができる。しかしながら、これには、マッチングするブロッキングオリゴヌクレオチドの使用が必要である。多数のサンプルインデックス(例えば、24、96など)を使用する場合、1つの「ユニバーサル」ブロッキングオリゴヌクレオチドを使用することは1つの可能性である。ユニバーサルブロッキングオリゴヌクレオチドは、多数の異なるサンプルインデックス配列に結合できる非天然ヌクレオチドを含むユニーク配列を持っている。その結果、単一のブロッキングオリゴヌクレオチドのみが核酸サンプルに追加される。或いは(又はさらに)、単一のユニバーサルブロッキングオリゴヌクレオチドは、ユニバーサルブロッキングオリゴヌクレオチド組成物を集合的に構成するオリゴヌクレオチドの混合物であり得る。
【0122】
[0146]一態様では、ユニバーサルブロッキングオリゴヌクレオチドは、第1及び第2の特異的領域に隣接する非特異的領域を含む。非特異的領域は、例えば、ユニバーサルブロッキングオリゴヌクレオチドが標的アダプター配列にハイブリダイズしたときにサンプルインデックス配列と整列する一連のイノシンを含む。ユニバーサルブロッキングオリゴヌクレオチドの特定領域は、アダプター配列の不変部分に相補的であり、ブロッキングオリゴヌクレオチドアダプター二重鎖のTを増加させるために1つ又は複数の融解温度(T)修飾塩基を含む。T修飾塩基置換の例を表1に示す。
【0123】
[0147]
【0124】
【表1】
【0125】
[0148]別の態様では、2つの異なるアダプター配列で調製された非増幅核酸ライブラリーは、アダプター末端が互いにハイブリダイズしないならば、ブロッキングオリゴヌクレオチド無しで処理することもあり得る。このアプローチに適したアダプタータイプには、フォーク型及びY型アダプターが含まれる。
【実施例0126】
実施例1
溶液中プライマー媒介捕捉(PETE-Cap)によるプライマー伸長標的濃縮
[0149]溶液中プライマー媒介捕捉によるプライマー伸長標的濃縮は、以下のプロトコルに従って行われた。製造業者の取扱説明書に従って、KAPA HYPERPLUSライブラリー調製キットを使用して、最大0.8Xのライゲーション後クリーンアップステップを含む、10ng及び100ngのNA12878ヒトゲノムDNA(CORIELL)から、核酸の重複ライブラリーを調製した(図6A)。その後、核酸のライブラリー中の標的核酸は、図2に図示されている実施形態に従って、溶液中プライマー媒介捕捉を含むプライマー伸長標的濃縮によって濃縮された。標的核酸のプラス又はマイナス鎖に相補的なプライマーは、各目的遺伝子(すなわち、標的)の同じエクソン用に設計されている。第1の(内側)オリゴヌクレオチドプライマーは20~25ヌクレオチド長で、第2の(外側)オリゴヌクレオチドプライマーは50~60ヌクレオチド長であった。第2のオリゴヌクレオチドプライマーに付随する追加の長さ(第1のオリゴヌクレオチドプライマーと比較した)は、5’非相補的テール配列が含まれていたためであった。特に、5’非相補的テール配列を省略することで、第2のオリゴヌクレオチドプライマーの全長を低減することができる。
【0127】
[0150]第1のオリゴヌクレオチド(内部)プライマーハイブリダイゼーション及び伸長反応を表2に従って設定した。核酸のライブラリーは、上記のKAPA HYPERPLUSライブラリー調製キットで調製された未増幅産物から構成された。0.8Xのライゲーション後クリーンアップステップが反応に含まれた後、溶出後に回収された核酸のライブラリーの総量;核酸のライブラリーの最終濃度は決定されていない(n.d.)。マスターミックス(Mastermix)は、カスタムKAPA 2GポリメラーゼPCRマスターミックスで構成された。プライマー混合物は、等モル濃度で存在する377個の第1のオリゴヌクレオチド標的特異的内部プライマーのセットで構成された。特に、各々の第1のオリゴヌクレオチド標的固有の内部プライマーには、5’ビオチン捕捉部分が含まれていた。
【0128】
[0151]
【0129】
【表2】
【0130】
[0152]第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、核酸のライブラリー中の標的核酸にハイブリダイズされ、表3の熱プロファイルに従い合計約1時間、ポリメラーゼで伸長された。特に、表3のプロトコルでは熱サイクルの使用が省略されている。
【0131】
[0153]
【0132】
【表3】
【0133】
[0154]ビオチン化された第1のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたハイブリダイゼーション及び伸長に続いて、サンプルは、1:1の比率でDYNABEADS MYONEストレプトアビジンT1捕捉ビーズ(THERMO FISHER SCIENTIF
IC)と混合された。捕捉ビーズは、DNAサンプルに添加する前に、1X結合及び洗浄緩衝液で2回洗浄し、2X結合及び洗浄緩衝液で再懸濁することにより調製した。結合及び洗浄緩衝液の組成は、表4に列挙される。
【0134】
[0155]
【0135】
【表4】
【0136】
[0156]サンプルは、50μLのMYONE捕捉ビーズと共に、自動サンプル回転機の上で、室温で10分間、インキュベートされた。ビオチン化DNAがビーズに結合したら、サンプルを磁石上に3分間置いてビーズを捕捉し、上清を除去して廃棄した。ビーズを2回、表3に記載されている1X結合及び洗浄緩衝液で1回、pH8.0の10mM Tris-HClで1回、洗浄し、非ビオチン化DNAを除去した。次に、ビーズを20μLの10mM Tris-Cl、pH8.0に再懸濁した。
【0137】
[0157]表5に従って、再懸濁したビーズを、第2のオリゴヌクレオチド(外側)プライマーハイブリダイゼーション反応混合物に加えた。
[0158]
【0138】
【表5】
【0139】
[0159]表5に列挙した反応混合物を55℃で165分間インキュベートして、標的捕捉の特異性を高めて、第2のオリゴヌクレオチドプライマーが核酸のライブラリー中の標的核酸にハイブリダイズできるようにした。
【0140】
[0160]次に、以前に記載されたようにサンプルを洗浄し、溶出した(すなわち、1×結合及び洗浄緩衝液での単回の洗浄及び10mM Tris-HClでの単回の洗浄、続いて20μLの10mM Tris-HCl中での再懸濁)。
【0141】
[0161]再懸濁したビーズを第2の伸長反応に加え、第2のオリゴヌクレオチドプライマーの伸長及び標的核酸分子の溶液への遊離をもたらした。第2の伸長反応の組成が、表6に列挙される。
【0142】
[0162]
【0143】
【表6】
【0144】
[0163]第2の伸長反応に続いて、サンプルを50℃で2分間インキュベートし、次に氷上で1分間、磁石の上に直接置いた。上澄みを(ビーズを乱すことなく)サンプルから除去し、等量のKAPA PURE BEADS捕捉ビーズ(KAPA BIOSYSTEMS)に加えた。1Xのクリーンアップを行い、サンプルを15μLの10mM Tris-Cl、pH8.0で溶出した。
【0145】
[0164]標的濃縮プロトコルの次のステップは、KAPA HYPERPLUSライブラリー調製キットの製造業者の取扱説明書に従った、増幅反応及びKAPA PURE BEAD捕捉ビーズ(KAPA BIOSYSTEMS)クリーンアップであった。最終産物を25μLのTris-HClで溶出した。次に、濃縮された標的核酸を増幅し、KAPA HYPERPLUSライブラリー調製キット(KAPA BIOSYSTEMS)を製造業者の取扱説明書に従って使用して、精製した(図6B)。濃縮され、増幅されたライブラリーは、MINISEQ DNAシーケンサー(ILLUMINA)上、2x150bpの読み取り、1.6pMのローディング濃度、及び1%のPhiX DNAでmid-outputキットを使用し、配列決定された。得られた配列決定データは、標的濃縮の程度を評価するために、SEQCAP EZ標的濃縮システム(ROCHE)データの分析用に開発されたパイプラインを使用して処理された(図7)。
【0146】
[0165]本発明の記載された特徴、構造、又は特質は、1つ又は複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の記載では、システムの実施形態の完全な理解を提供するために、数多くの特定の詳細が列挙される。しかしながら、当業者は、1つ又は複数の特定の詳細を省いて、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて、システム及び方法の両方が実行され得ることを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は操作は、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、詳細に示されていないか、又は記載されていない。したがって、前述の記載は例示を意図したものであって、本発明の概念の範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸を濃縮するための方法であって、以下のステップ:
第1のオリゴヌクレオチドを、核酸のライブラリー中の標的核酸にハイブリダイズするステップであって、核酸のライブラリー中の各核酸が、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を有するステップ;
ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドを第1のポリメラーゼで伸長し、それにより標的核酸及び伸長された第1のオリゴヌクレオチドを含む第1のプライマー伸長複合体を生成するステップ;
第1のプライマー伸長複合体を捕捉するステップ;
第1のプライマー伸長複合体を、核酸のライブラリーに対して濃縮するステップ;
第2のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズするステップ;
ハイブリダイズした第2のオリゴヌクレオチドを第2のポリメラーゼで伸長し、それにより、標的核酸及び伸長された第2のオリゴヌクレオチドを含む第2のプライマー伸長複合体を生成し、それにより、伸長された第1のオリゴヌクレオチドを第1のプライマー伸長複合体から遊離させるステップ;並びに
標的核酸を第3のポリメラーゼ、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーで増幅するステップであって、第1の増幅プライマーが、第1のアダプターに相補的な3’末端を持ち、第2の増幅プライマーが、第2のアダプターに相補的な3’末端を持ち、
ここで、標的核酸を増幅するステップは、標的核酸のコピーを産生し、ここで、標的核酸のコピーは、標的核酸の全配列を含み、そして、前記標的核酸のコピーは、伸長された第1のオリゴヌクレオチドおよび伸長された第2のオリゴヌクレオチドよりも長い、ステップ
を含む方法。
【請求項2】
増幅された標的核酸を、配列決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のオリゴヌクレオチドが、捕捉部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズする前に固体支持体に結合しており、並びに第1のオリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズし、及びハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドをポリメラーゼで伸長することが、それにより、固体支持体上の第1のプライマー伸長複合体を捕捉する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを、第1のプライマー伸長複合体中の伸長された第1のオリゴヌクレオチド及び第2のプライマー伸長複合体中の伸長された第2のオリゴヌクレオチドの少なくとも1つに組み込むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1のプライマー伸長複合体中の伸長された第1のオリゴヌクレオチドに少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを組み込むステップをさらに含み、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは捕捉部分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1のプライマー伸長複合体における伸長された第1のオリゴヌクレオチド、及び
第2のプライマー伸長複合体における伸長された第2のオリゴヌクレオチド
の少なくとも1つに、少なくとも1つのウラシルを組み込むステップをさらに含み、
それにより、ウラシル含有オリゴヌクレオチド産物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
核酸のライブラリーを、ブロッキングオリゴヌクレオチドと接触させるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第1のアダプター及び第2のアダプターが、フォーク型アダプターである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1のアダプター及び第2のアダプターが、少なくとも1つのウラシルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドに対して5’位で標的核酸にハイブリダイズする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第1のアダプター、第2のアダプター、第1の増幅プライマー、及び第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つが、固有識別子(UID)配列、分子識別子(MID)配列のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。