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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099378
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】透明表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20240718BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20240718BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20240718BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20240718BHJP
   G02F 1/133 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
G09G5/00 510G
H04N5/66 D
G02F1/13357
G09G3/36
G09G3/34 J
G09G5/00 550C
G09G5/10 B
G02F1/133 580
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003284
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 諒
【テーマコード(参考)】
2H193
2H391
5C006
5C058
5C080
5C182
【Fターム(参考)】
2H193ZG14
2H193ZG34
2H193ZG60
2H193ZH02
2H193ZH39
2H193ZQ13
2H391AA25
2H391AB05
2H391AD52
2H391AD55
2H391AD59
2H391CB03
2H391FA02
5C006AC25
5C006BA16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BC16
5C006BF15
5C006EA01
5C058AA06
5C058AB01
5C058AB03
5C058BA29
5C058BB25
5C080AA10
5C080BB05
5C080EE01
5C080EE21
5C080EE26
5C080FF11
5C080GG07
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ06
5C080JJ07
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA22
5C182AB02
5C182AC02
5C182AC37
5C182BA14
5C182BA25
5C182BA35
5C182BA56
5C182BA75
5C182CA32
5C182CB13
5C182CB34
5C182CB45
5C182DA65
(57)【要約】
【課題】透明表示装置の用途を広げることができる技術を提供する。
【解決手段】透明表示装置は、第1基板、第2基板、および表示層が重なる領域に設けられた表示領域と、表示層の画素の状態を制御するコントローラと、を備え、第1基板の第1面側から表示領域に表示された画像および第2基板の第2面側の背景が視認可能であり、第2面側から表示領域に表示された画像および第1面側の背景が視認可能であり、コントローラは、第1面側の第1空間にいる第1利用者に向けて表示層に画像を表示させる際、第1空間内を照らす第1照明装置の状態を制御する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1基板と、
前記第1面の反対側にある第2面を有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、背景光を透過する透明状態と画像を表示する非透明状態との遷移が可能な画素を有する表示層と、
前記第1基板、前記第2基板、および前記表示層が重なる領域に設けられた表示領域と、
前記表示層の前記画素の状態を制御するコントローラと、を備え、
前記第1面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第2面側の背景が視認可能であり、前記第2面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第1面側の背景が視認可能である透明表示装置であって、
前記コントローラは、
前記第1面側の第1空間にいる第1利用者に向けて前記表示層に前記画像を表示させる際に、前記第1空間内を照らす第1照明装置の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記コントローラは、
前記第1利用者の操作に基づいて、前記第1照明装置の状態を、前記第1照明装置の照明光源が消灯する第1状態と前記照明光源が点灯する第2状態とで切り替える制御を行う、
透明表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の透明表示装置において、
前記第1利用者の視点を検出するためのセンサデバイスを備え、
前記コントローラは、
前記第1状態または前記第2状態を選択するための選択画像を前記表示層に前記第1利用者に向けて表示させ、
前記センサデバイスの検出情報から前記第1利用者が注視している前記選択画像に基づいて、前記第1照明装置の状態を、前記第1状態と前記第2状態とで切り替える制御を行う、
透明表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載の透明表示装置において、
前記コントローラは、
前記第1照明装置の状態を前記第1状態から前記第2状態に切り替える際、
前記第1空間の明るさが、前記表示層に表示される前記画像の明るさよりも明るくなるように、前記第1照明装置の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の透明表示装置において、
前記第1空間内の照度を検出する照度センサを備え、
前記コントローラは、
前記照度センサの検出結果に基づいて、前記照明光源の光量を上げるように、前記第1照明装置の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の透明表示装置において、
前記コントローラは、
前記第1空間内の明るさが、前記表示層に表示される前記画像の明るさよりも明るくなるように、前記画素の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の透明表示装置において、
前記第1空間内の照度を検出する照度センサを備え、
前記コントローラは、
前記照度センサの検出結果に基づいて、前記表示層に表示される前記画像の輝度を下げるように、前記画素の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記コントローラは、
前記第1利用者に向けて前記表示層に前記画像を表示させる際、前記画像に付加される付加情報に応じて前記第1照明装置の状態を制御する、
透明表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の透明表示装置において、
前記コントローラは、
前記付加情報に、非表示情報が含まれているか否かを判定し、前記付加情報に前記非表示情報が含まれている場合に、前記第1照明装置の状態を、前記第1照明装置の照明光源が消灯する第1状態から前記照明光源が点灯する第2状態に変更する制御を行う、
透明表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の透明表示装置において、
前記表示層は、液晶層であり、
前記表示領域に対し重ならない位置に、前記液晶層に光源光を供給する液晶光源を備える、
透明表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明表示装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明表示装置(言い換えると、透明ディスプレイ)が開発・提供されている。透明表示装置は、液晶層などによって構成された光透過性を有する表示領域において画像(言い換えると映像等)を表示する。ユーザである人は、透明表示装置の表示画像を、背景と重ね合わせた状態で、前面側からも背面側からも視認可能である(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、画像を表示する表示領域の透明性を高めて、背景の視認性を向上させる透明ディスプレイの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-120022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透明表示装置は、人と人とのコミュニケーションに関する多くの用途に利用することができると考えられ、そのためのさらなる技術開発が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、透明表示装置の用途を広げることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1面を有する第1基板と、前記第1面の反対側にある第2面を有する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置され、背景光を透過する透明状態と画像を表示する非透明状態との遷移が可能な画素を有する表示層と、前記第1基板、前記第2基板、および前記表示層が重なる領域に設けられた表示領域と、前記表示層の前記画素の状態を制御するコントローラと、を備え、前記第1面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第2面側の背景が視認可能であり、前記第2面側から前記表示領域に表示された前記画像および前記第1面側の背景が視認可能である透明表示装置であって、前記コントローラが、前記第1面側の第1空間にいる第1利用者に向けて前記表示層に前記画像を表示させる際に、前記第1空間内を照らす第1照明装置の状態を制御する、ものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1の透明表示装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1の透明表示装置の基本的な特性を説明する図である。
図3】実施の形態1の透明表示装置の基本的な特性を説明する図である。
図4】実施の形態1の透明表示装置のハードウェア構成例を示す斜視図である。
図5】実施の形態1の透明表示装置を示す断面図である。
図6】実施の形態1の透明表示装置の回路の構成例を示す図である。
図7】実施の形態1の透明表示装置のコントローラの構成例を示す図である。
図8】実施の形態1の透明表示装置での画像表示処理のフローを示す図である。
図9】実施の形態1の透明表示装置での選択判定処理のフローを示す図である。
図10】実施の形態1の透明表示装置の画面表示例を示す図である。
図11】実施の形態1の透明表示装置の画面表示例を示す図である。
図12】実施の形態1の透明表示装置の画面表示例を示す図である。
図13】実施の形態2の透明表示装置の構成を示す図である。
図14】実施の形態2の透明表示装置での画像表示処理のフローを示す図である。
図15】実施の形態3の透明表示装置での画像表示処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPU/MPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0010】
プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、例えばメモリカードやディスクでもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クライアント・サーバシステム、クラウドコンピューティングシステム、IoTシステム等で構成されてもよい。各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で構成されるが、これに限定されない。識別情報、識別子、ID、名前、番号等の表現は互いに置換可能である。
【0011】
<実施の形態1>
図1図12を用いて、実施の形態1の透明表示装置について説明する。図1は、実施の形態1の透明表示装置の概略構成を示す図である。
【0012】
なお、説明上、座標系や方向として、図示の(X,Y,Z)や(x,y)を用いる場合がある。図1でのX軸・X方向およびY軸・Y方向は、直交する2つの水平方向であり、Z軸・Z方向は、鉛直方向である。X方向は、透明表示装置の利用者から見て左右方向であり、Z方向は、利用者から見て上下方向であり、Y方向は利用者から見て前後方向である。また、図1でのx方向は、透明表示装置の画面を構成する横方向(画面内水平方向)であり、y方向は、画面を構成する縦方向(画面内垂直方向)である。
【0013】
[透明ディスプレイの全体構成]
図1に示すように、実施の形態1の透明表示装置である透明ディスプレイ1は、第1利用者である第1ユーザU1および第2利用者である第2ユーザU2によって利用され、第1ユーザU1および第2ユーザU2は、透明ディスプレイ1の透明表示パネル10を挟んで対面する。図1には、透明ディスプレイ1を第1ユーザU1と第2ユーザU2との二人の利用者が利用する状況を模式的に示している。この例では、メインユーザである第1ユーザU1が、透明表示パネル10の前面である第1面s1側から透明ディスプレイ1を利用し、第2ユーザU2は、透明表示パネル10の背面である第2面s2側から透明ディスプレイ1を利用する。勿論、第1ユーザU1が、第2面s2側から透明ディスプレイ1を利用し、第2ユーザU2が、メインユーザとして第1面s1側から透明ディスプレイ1を利用してもよい。
【0014】
透明ディスプレイ1は、光透過性を有する透明表示パネル10と、透明表示パネル10に接続または内蔵されるコントローラ2と、カメラ30を含むセンサデバイスとしてのアイトラッキング装置3と、を備える。
【0015】
透明表示パネル10は、例えば、液晶表示パネルである。透明表示パネル10の画面20は、複数の部材によって構成されている。透明表示パネル10は、画面20を構成する部材として、例えば、第1基板11、第2基板12、および表示層13を有する。第1基板11は対向基板であり、第2基板12はアレイ基板であり、表示層13は液晶層である。表示層13の画素PIXは、全方向にわたって発光する。詳しくは後述するが、表示層13は、画面20の表示領域を構成する複数の画素PIXを有する(図4等参照)。勿論、第1基板11をアレイ基板とし、第2基板12を対向基板としてもよい。
【0016】
実施の形態1では、透明表示パネル10の表示層13として液晶層を有する透明ディスプレイ(言い換えれば、液晶ディスプレイ)1について説明する。なお、実施の形態1では、透明ディスプレイ1の透明表示パネル10として、画面20の表示領域の透明度合いを表す透過率が窓ガラスの透過率程度である84%以上を実現する液晶パネルを使用している。
【0017】
透明表示パネル10は、第1基板11側の第1面s1と、第2基板12側の第2面s2とを有する。説明上、第1面s1を前面(言い換えると表面)とし、第2面s2を背面(言い換えると裏面)とする。透明ディスプレイ1は、表示層13を制御することで、第1面s1側の第1ユーザU1に向けて画像を表示することもできるし、第2面s2側の第2ユーザU2に向けて画像を表示することもできる。透明ディスプレイ1は、表示層13の制御に対応して透明表示パネル10の画面20に画像が表示された場合、その画像は、第1面s1側にいる第1ユーザU1からも、第2面s2側にいる第2ユーザU2からも視認できる。なお、図1では、画面20の表示画像をドットパターンとして模式的に示している。
【0018】
コントローラ2は、透明表示パネル10に電気的に接続され、透明表示パネル10が備える表示層13を制御する。コントローラ2は、液晶層である表示層13の画素の表示の状態を制御することにより、画面20に画像を表示させる。コントローラ2は、透明表示パネル10に内蔵されてもよいし、透明表示パネル10の外部に接続されてもよい。例えば、第1基板11や第2基板12の一部に、駆動回路などの他、コントローラ2を構成する制御回路が実装されてもよい。コントローラ2は、透明表示パネル10に接続されるパーソナルコンピュータ(PC)等の外部コンピュータであってもよい。図示しないが、透明表示パネル10には、その他、マイクやスピーカ、ランプ等が設置・接続されてもよい。
【0019】
センサデバイスとしてのアイトラッキング装置3は、透明表示パネル10の第1面s1側にいるメインユーザである第1ユーザU1の視点を検出する。アイトラッキング装置3は、第1ユーザU1の視点を検出するための画像を撮影するカメラ30を備える。カメラ30は、画面20の第1面s1側を向いて設置され、このカメラ30によって第1ユーザU1の目の動き(特に、瞳の動き)を特定するための画像を撮影する。カメラ30は、第1ユーザU1の顔を前方から撮影できるように、例えば、透明表示パネル10の上部に設けられている。
【0020】
カメラ30の設置場所は、第1ユーザU1の目の動きを撮影できる場所であれば特に限定されず、必ずしも透明表示パネル10上でなくてもよい。カメラ30は、本例ではCCDカメラ等であるが、これに限定されず、第1ユーザU1の目の動きを撮影できるものであればよい。また、本例では、カメラ30は、撮影した画像をコントローラ2に送信し、コントローラ2が、その撮影画像(言い換えるとカメラ画像)に基づいて、画像処理を行うことで、第1ユーザU1の視点、より詳しくは第1ユーザU1の視線に基づく画面20上の視点、を検出する。このようにコントローラ2は、アイトラッキング装置3の一部としても機能する。
【0021】
なお、アイトラッキング装置3は、既存の装置を採用すればよく、その構成は特に限定されない。一例として、アイトラッキング装置3は、カメラ30によって撮影された画像を解析し、第1ユーザU1の目の動き(特に、瞳の動き)から第1ユーザU1の視点を検出する。また、アイトラッキング装置3は、例えば、赤外線の角膜反射を利用することで、第1ユーザU1の視点(言い換えれば、視線方向)を検出するものであってもよい。
【0022】
また、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の画面20の画素ごとに、少なくとも、背景を透過する透明状態と、画像を表示する非透明状態と、を切り替えることができる。言い換えると、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の透明化の制御として、透明化のオン状態である透明状態と、オフ状態である非透明状態と、を切り替えることができる。上記非透明状態とは、上記透明状態と比べて、背景よりも画面20に表示される画像をユーザが視認しやすい状態であり、上記透明状態とは、上記非透明状態に比べて、画面20に表示される画像よりも背景をユーザが視認しやすい状態である。また、単に透明状態を画像非表示状態、非透明状態を画像表示状態と言い換えてもよく、後述するように透明状態を非散乱状態、非透明状態を散乱状態と言い換えてもよい。なお、透明ディスプレイ1による画面20の画素ごとの制御は、透明状態と非透明状態との間での透明度合い(透明度と記載する場合がある)をオン/オフの二値で変更するものに限られず、多値で変更するものであってもよい。
【0023】
このような透明ディスプレイ1は、例えば、人と人との間を仕切るパーティションとして、任意の場所に設置して利用可能である。一例として、透明ディスプレイ1は、人と人とが対面するカウンターや窓口等に設置することで、有効に利用することができる。
【0024】
実施の形態1では、透明ディスプレイ1は、表示層13に対して第1基板11側の第1空間SP1と、表示層13に対して第2基板12側の第2空間SP2との境界部分に設置されている。透明ディスプレイ1は、例えば、第1空間SP1にいる第1ユーザU1の操作に基づいて、第1ユーザU1または第2ユーザU2に向けて表示層13に画像を表示する。
【0025】
[透明ディスプレイの基本的な特性]
図2は、透明表示パネルをX方向に見た図であり、画面に表示される表示画像の状態を説明する図である。図2(A)には、透明ディスプレイ1の前面である第1面s1に対し前側(方向Y2)にいる第1ユーザU1が、画面20に表示された表示画像DGを視認する状態を示す。図2(B)は、逆に、透明ディスプレイ1の背面である第2面s2に対し前側(方向Y1)にいる第2ユーザU2が、画面20に表示された表示画像DGを視認する状態を示す。
【0026】
透明ディスプレイ1は、上述したように、透明表示パネル10の画面20に表示された表示画像DGを、画面20の第1面s1側から第1ユーザU1が視認できるとともに、画面20の第2面s2側から第2ユーザU2が視認できるディスプレイ装置である。
【0027】
透明表示パネル10は、第1面s1側の第1空間SP1にいる第1ユーザU1から、画面20に表示された表示画像DGおよび第2面s2側の第2ユーザU2を視認可能な特性を有する。また、透明表示パネル10は、第2面s2側の第2空間SP2にいる第2ユーザU2から、画面20に表示された表示画像DGおよび第1面s1側の第1ユーザU1を視認可能な特性を有する。透明ディスプレイ1において、画面20の表示領域に、第1空間SP1にいる第1ユーザU1に向けて画像を表示した場合に、その画像は、基本的には第2空間SP2にいる第2ユーザU2からも視認できる。
【0028】
例えば、図2に示すように、透明ディスプレイ1が、表示画像DGとして、第1面s1側に向けて「ABC」の文字画像を表示させたとする。第1ユーザU1は、透明表示パネル10の画面20を、第1面s1側から第2面s2側に向かう方向(方向Y1)で見る。このため、第1ユーザU1は、図2(A)に示すように、画面20の表示画像DG、例えば、画像光DGL1に対応した「ABC」の文字画像を視認できる。その際、第1ユーザU1は、画面20を介して第2面s2側にいる第2ユーザU2と、それに対応する背景光BGL1とを視認できる。
【0029】
一方、第2ユーザU2は、透明表示パネル10の画面20を第2面s2側から第1面s1側に向かう方向(方向Y2)で見る。第2ユーザU2は、図2(B)に示すように、画面20に表示された表示画像DG、例えば、画像光DGL2に対応した文字画像を視認できる。また、第2ユーザU2は、画面20を介して第1面s1側にいる第1ユーザU1と、それに対応する背景光BGL2とを視認できる。
【0030】
第2ユーザU2から見える表示画像DGは、あくまで画面20の第2面s2側から見た画像となり、第1面s1側から見た表示画像DGとは異なる。第2ユーザU2から見える表示画像DGは、図2(B)に示すように、「ABC」の文字を左右方向で反転させた像となる。
【0031】
なお、画面20の第1面s1のうち、少なくとも画像が表示される表示領域については、上記のような特性、言い換えると背景透過性などを有する。同様に、画面20の第2面s2のうち、少なくとも画像が表示される表示領域については、上記のような特性を有する。画面20の第1面s1および第2面s2のうち、表示領域以外の周辺領域(後述の図4等)については、表示領域と同様に上記特性を有する構成としてもよいし、背景を透過しない遮光性を有する構成としてもよい。
【0032】
このように、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の画面20に表示された表示画像DGを、画面20の第1面s1側から第1ユーザU1が視認できるとともに、画面20の第2面s2側から第2ユーザU2が視認できるという基本的な特性を有する。
【0033】
[空間および画面の明るさによる画像の見え方(視認状態)の変化]
ただし、第1空間SP1および第2空間SP2の明るさと、画面20の明るさとの関係によっては、第1ユーザU1および第2ユーザU2は、画面20に表示されている画像を視認し難い、あるいは視認できない場合がある。なお、画像を視認し難い状態とは、画面20に表示された画像の存在自体は認識できるものの、その画像の内容までは理解できない状態をいう。
【0034】
例えば、図3(A)に示すように、第1ユーザU1がいる第1空間SP1の第1照明装置110が点灯し、第1空間SP1(特に、透明表示パネル10の近傍)の明るさが、透明表示パネル10の画面20に表示される画像(言い換えれば、画像を形成する画素)の明るさに比べて明るい状態であるとする。この状態では、第2空間SP2にいる第2ユーザU2は、第1ユーザU1を視認できるが、画面20に表示されている「ABC」の文字画像を視認し難い、あるいは視認できない場合がある。すなわち、背景光BGL2が画像光DGL2よりも明るいと、第2ユーザU2は、画面20を介して第1ユーザU1を視認できるが、画面20に表示されている「ABC」の文字画像を視認し難い、あるいは視認できない場合がある。なお、図3(A)は、第2ユーザU2が「ABC」の文字画像を視認できない状態を説明する図である。また、この状態でも第1ユーザU1は、上述のように画面20の表示画像と第2ユーザU2とを視認できる。
【0035】
同様に、例えば、図3(B)に示すように、第2ユーザU2がいる第2空間SP2の第2照明装置120が点灯し、第2空間SP2の明るさが、透明表示パネル10の画面20に表示される画像の明るさに比べて明るい状態であるとする。この状態では、第1空間SP1にいる第1ユーザU1は、第2ユーザU2を視認できるが、画面20に表示されている「ABC」の文字画像を視認し難い、あるいは視認できない場合がある。すなわち、背景光BGL1が画像光DGL1よりも明るいと、第1ユーザU1は、画面20を介して第2ユーザU2を視認できるが、画面20に表示されている「ABC」の文字画像は視認し難い、あるいは視認できない場合がある。なお、図3(B)は、第1ユーザU1が「ABC」の文字画像を視認できない状態を説明する図である。また、この状態でも第2ユーザU2は、上述のように画面20の表示画像と第1ユーザU1とを視認できる。
【0036】
実施の形態1の透明ディスプレイ1は、詳しくは後述するが、このように第1照明装置110及び第2照明装置120の状態によって第1ユーザU1および第2ユーザU2による画面20の視認状態が変化するという特性を利用するものである。そして、実施の形態1の透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1に向けて画面20に画像を表示させる際、必要に応じて、画面20に表示される画像が第2ユーザU2からは視認し難い、あるいは視認できなくなるようにした点に特徴がある。
【0037】
[透明ディスプレイのハードウェア構成例]
図4図6を用いて、実施の形態1の透明ディスプレイ1のハードウェア構成例を説明する。図4は、透明ディスプレイの透明表示パネルの構成例の概要を示す斜視図であり、透明表示パネル10について、主に第1面s1を見た斜視図である。図5は、図4のA-A線に沿った断面図であり、透明ディスプレイの光源部から出射された光の経路等についても模式的に示している。図6は、透明ディスプレイに形成される回路の構成例を示している。
【0038】
図4では、図1の座標系に合わせて、透明表示パネル10の厚さ方向に沿った方向をY方向とし、Y方向に直交するX-Z平面において、透明表示パネル10の一辺の延在方向をX方向とし、X方向に交差する方向をZ方向としている。また、画面20内の座標系(x,y)として、X方向に対応したx方向が横方向(画面内水平方向)であり、Z方向に対応したy方向が縦方向(画面内垂直方向)である。本例では、画面20は、X方向(x方向)のサイズの方がZ方向(y方向)のサイズよりも大きい横長の画面としている。ただし、画面20の形状は、これに限定されない。
【0039】
図4および図5に示すように、透明表示パネル10は、上述の第1基板11、第2基板12および表示層13を有し、さらに光源部50および駆動回路70を有する。透明表示パネル10を構成する第1基板11、表示層13、および第2基板12は、Y方向において、前面である第1面s1側から、この順で配置されている。
【0040】
透明表示パネル10の第1面s1には、画面20に対応した表示領域DAおよび周辺領域PFAが設けられている。なお、本例では周辺領域PFAも画面20の一部としているが、表示領域DAのみを画面20としてもよい。画面20の表示領域DAは、第1基板11、第2基板12、および表示層13をY方向で平面視した場合に重なる領域にある。表示領域DAの外側に周辺領域PFAがある。図4中において表示領域DAと周辺領域PFAとの境界を二点鎖線で示している。
【0041】
表示領域DAは、外部から供給される入力信号に応じて画像が形成される領域である。表示領域DAは、平面視、例えばY方向で第1面s1を見た場合や第2面s2を見た場合に画像が表示される有効領域である。表示領域DAに対応する表示層13には、複数の画素PIXがマトリクス状に形成されている。周辺領域PFAは、表示領域DAの周囲にある四辺を含む領域、言い換えると額縁領域であり、画像は表示されない。
【0042】
本例では、第2基板12は、第1基板11よりも、X方向での幅が大きい。第2基板12は、X方向での一方側に延長された領域40を有する。その領域40に、光源部50および駆動回路70が搭載されている。
【0043】
光源部50は、本例では、図5に示すように、画面20に対し右辺の周辺領域PFAに沿って配置されている。光源部50は、表示層13での液晶表示のための光源光を発生し、表示層13に供給する。
【0044】
駆動回路70は、第1基板11、第2基板12、表示層13、および光源部50の駆動のための電気信号を発生し、それらを各部に供給する。図4には、透明表示パネル10が備える回路のうち、画素PIXに対応した液晶を駆動するための信号を伝送する信号配線の一部である後述するゲート線GLおよびソース線SLを、一点鎖線で模式的に示している。
【0045】
この透明表示パネル10は、図4および図5に示す構成要素の他に、例えば、フレキシブルプリント回路基板、筐体などを有する場合もある。筐体としては、例えば第1基板11、表示層13、および第2基板12を固定するものが挙げられる。図4および図5では、この要素については省略している。また、本例では表示領域DAは四角形であるが、これに限定されず、多角形や円形などの他の形状でもよい。また、本例では第2基板12の領域40に光源部50および駆動回路70が搭載されているが、光源部50および駆動回路70は、透明表示パネル10とは別の基板に搭載されていてもよい。例えば、透明表示パネル10の周辺領域PFAに、光源部50が搭載された光源用基板や、駆動回路70が搭載された駆動回路基板が取り付けられていてもよい。
【0046】
光源部50から出射された光の光路や、液晶の状態などについて図5を参照して説明する。透明表示パネル10は、表示層13としての液晶層LQLを介して対向するように貼り合わせられた第1基板11および第2基板12を有している。第1基板11と第2基板12とは、液晶層LQLを介して透明表示パネル10の厚さ方向であるY方向に配設されている。言い換えれば、第1基板11と第2基板12とは、Y方向において互いに対向して配置されている。
【0047】
アレイ基板である第2基板12は、液晶層LQLおよび第1基板11と対向する前面12fを有する。第1基板11である対向基板は、第2基板12の前面12fおよび液晶層LQLと対向する背面11bを有する。液晶を含む液晶層LQLは、第2基板12の前面12fと第1基板11の背面11bとの間にある。液晶層LQLは、言い換えると光学変調素子である。
【0048】
第2基板12は、後述のスイッチング素子(言い換えると能動素子)としての複数のトランジスタ(言い換えるとトランジスタ素子)がアレイ状に配置されたアレイ基板である。第1基板11は、アレイ基板である第2基板12に対向配置された基板という意味で、対向基板と言い換えることができる。
【0049】
透明表示パネル10は、上記スイッチング素子を介して液晶層LQLの周辺に形成される電界の状態を制御することにより、その液晶層LQLの液晶を通過する光を変調する機能を備えている。表示領域DAは、液晶層LQLと重畳する領域に設けられている。
【0050】
第1基板11と第2基板12とは、シール部(言い換えるとシール材)SLMを介して接着されている。シール部SLMは、表示領域DAの周囲を囲むように配置されている。シール部SLMの内側に液晶層LQLがある。シール部SLMは、第1基板11と第2基板12との間に液晶を封入する役割、および、第1基板11と第2基板12とを接着する接着材としての役割を果たす。
【0051】
光源部50は、第1基板11の一方の側面11s1と対向する位置に配置されている。図5中に、光源部50から出射された光である光源光L1を二点鎖線で模式的に示す。光源部50からX方向で出射された光源光L1は、図示のように、第2基板12の背面12bである第2面s2および第1基板11の前面11fである第1面s1で反射しながら、側面11s1から遠ざかる方向、本例では方向X2に伝搬する。光源光L1の伝搬経路において、第2基板12の背面12bおよび第1基板11の前面11fは、屈折率の大きな媒質と、屈折率の小さな媒質との界面である。このため、光源光L1が前面11fおよび背面12bに入射する入射角が臨界角よりも大きい場合、光源光L1は、前面11fおよび背面12bにおいて全反射する。
【0052】
液晶層LQLの液晶は、高分子分散型液晶であり、液晶性ポリマーと液晶分子を含んでいる。液晶性ポリマーは、筋状に形成され、液晶分子は、液晶性ポリマーの隙間に分散されている。液晶性ポリマーおよび液晶分子の各々は、光学異方性あるいは屈折率異方性を有している。液晶性ポリマーの電界に対する応答性は、液晶分子の電界に対する応答性よりも低い。液晶性ポリマーの配向方向は、電界の有無にかかわらず殆ど変化しない。
【0053】
一方、液晶分子の配向方向は、液晶に閾値以上の高い電圧が印加された状態では、電界に応じて変化する。液晶に電圧が印加されていない状態では、液晶性ポリマーおよび液晶分子のそれぞれの光軸は互いに平行であり、液晶層LQLに入射した光源光L1は、液晶層LQL内で殆ど散乱されることなく透過する。このような状態を透明状態(非散乱状態)と記載する場合がある。
【0054】
液晶に電圧が印加された状態では、液晶性ポリマーおよび液晶分子のそれぞれの光軸は互いに交差し、液晶に入射した光源光L1は、液晶層LQL内で散乱される。このような状態を散乱状態(言い換えると非透明状態)と記載する場合がある。
【0055】
透明表示パネル10に設けられる駆動回路70や、駆動回路70に接続される制御回路としてのコントローラ2は、光源光L1の伝搬経路における液晶の配向を制御することにより、画面20の表示状態を制御する。散乱状態において、光源光L1は、液晶により放出光L2として、前面11fである第1面s1側および背面12bである第2面s2側から透明表示パネル10の外部に出射される。
【0056】
また、背面12bである透明表示パネル10の第2面s2から入射した背景光L3は、第2基板12、液晶層LQL、および第1基板11を透過して、前面11fである透明表示パネル10の第1面s1から外部に出射される。前面11fである第1面s1から入射した背景光L4は、第1基板11、液晶層LQL、および第2基板12を透過して、背面12bである透明表示パネル10の第2面s2から外部に出射される。
【0057】
これらの放出光L2および背景光L3は、上述のように、前面である第1面s1側にいる第1ユーザU1から視認される。放出光L2は画像光DGL1と対応し、背景光L3は背景光BGL1と対応する。第1ユーザU1は、放出光L2と背景光L3とを組み合わせて認識することができる。言い換えると、第1ユーザU1は、背景光L3に放出光L2が重畳した状態を認識することができる。
【0058】
放出光L2および背景光L4は、上述のように、背面である第2面s2側にいる第2ユーザU2から視認される。放出光L2は画像光DGL2と対応し、背景光L4は背景光BGL2と対応する。第2ユーザU2は、放出光L2と背景光L4とを組み合わせて認識することができる。言い換えると、第2ユーザU2は、背景光L4に放出光L2が重畳した状態を認識することができる。
【0059】
図5に示す例では、透明表示パネル10の前面である第1面s1および背面である第2面s2の可視光透過性を確保するために、平面視で表示領域DAと重ならない位置に光源部50が配置されている。また、透明表示パネル10は、導光部材として機能する第1基板11および第2基板12と、周囲の空気層との屈折率差を利用して、光源光L1を反射させる。これにより、透明表示パネル10では、光源部50と対向する反対側の側面11s2まで光を届けることができる。
【0060】
図6を参照して、透明表示パネル10が備える回路の構成例について説明する。図6には、駆動回路70、光源部50、および表示領域DAの画素PIX(図4)の構成例を示している。
【0061】
図6に示すように、駆動回路70には、画像の表示を制御する制御回路を備える制御部90が接続されている。この制御部90は、実施の形態1ではコントローラ2に相当する。なお、制御部90(言い換えれば、コントローラ2)は、透明表示パネル10と別体である必要はなく、例えば、駆動回路70とともに透明表示パネル10に搭載されていてもよい。
【0062】
駆動回路70は、信号処理回路71、画素制御回路72、ゲート駆動回路73、ソース駆動回路74、コモン電位駆動回路75、および光源制御部52を備える。また、光源部50は、例えば発光ダイオード素子51r(例えば赤色)、発光ダイオード素子51g(例えば緑色)、および発光ダイオード素子51b(例えば青色)を備える。
【0063】
信号処理回路71は、入力信号解析部711、記憶部712、および信号調整部713を備える。信号処理回路71の入力信号解析部711には、制御部90から、図示しないフレキシブルプリント回路基板などの配線経路を介して、入力信号VSが入力される。入力信号解析部711は、入力された入力信号VSに基づいて解析処理を行い、入力信号VCSを生成する。入力信号VCSは、例えば、入力信号VSに基づいて、各画素PIX(図3)にどのような階調値を与えるかを定める信号である。
【0064】
信号調整部713は、入力信号解析部711から入力された入力信号VCSから入力信号VCSAを生成する。信号調整部713は、入力信号VCSAを画素制御回路72へ送出し、光源制御信号LCSAを光源制御部52へ送出する。光源制御信号LCSAは、例えば、画素PIXへの入力階調値に応じて設定される光源部50の光量の情報を含む信号である。
【0065】
画素制御回路72は、入力信号VCSAに基づいて、水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSを生成する。例えば、本実施例では、複数の画素PIXは、フィールドシーケンシャル方式で駆動される。そのため、画素制御回路72では、水平駆動信号HDSと垂直駆動信号VDSが、光源部50が発光可能な色毎に生成される。
【0066】
ゲート駆動回路73は、水平駆動信号HDSに基づいて、1垂直走査期間内に透明表示パネルのゲート線GL(言い換えると信号配線)を順次選択する。ゲート線GLの選択の順番は任意である。図4に示すように、複数のゲート線GLは、X方向(x方向)に延び、かつ、Z方向(y方向)に沿って複数本が配列されている。
【0067】
ソース駆動回路74は、垂直駆動信号VDSに基づいて、1水平走査期間内に透明表示パネルの各ソース線SL(言い換えると信号配線)に各画素PIXの出力階調値に応じた階調信号を供給する。図3に示すように、複数のソース線SLは、Z方向(y方向)に延び、かつ、X方向(x方向)に沿って複数本が配列されている。ゲート線GLとソース線SLとの交差毎に、一つの画素PIXが形成されている。
【0068】
ゲート線GLとソース線SLとが交差する部分のそれぞれには、スイッチング素子Trが形成されている。複数のゲート線GLおよび複数のソース線SLは、図5の液晶層LQLの液晶を駆動するための駆動信号を伝送する複数の信号配線に相当する。
【0069】
スイッチング素子Trとしては例えば薄膜トランジスタが用いられる。薄膜トランジスタの種類は特に限定されない。スイッチング素子Trのソース電極およびドレイン電極のうちの一方はソース線SLに接続され、ゲート電極はゲート線GLに接続され、ソース電極およびドレイン電極のうちの他方は、高分子分散型液晶LC(図5の液晶層LQLの液晶に相当する)の容量の一端に接続されている。高分子分散型液晶LCの容量は、一端がスイッチング素子Trに画素電極PEを介して接続され、他端がコモン電極CEを介してコモン電位配線CMLに接続されている。また、画素電極PEと、コモン電位配線CMLに電気的に接続されている保持容量電極との間には、保持容量HCが生じる。コモン電位配線CMLは、コモン電位駆動回路75より供給される。図6のコモン電極CEに接続される配線経路は、例えば図4の第1基板11に形成されている。図6では、第1基板11に形成された配線を点線で図示している。
【0070】
図6に示す構成例では、光源制御部52が駆動回路70に含まれている。変形例として、光源制御部52が駆動回路70とは別に設けられている場合がある。前述のように、光源部50が第2基板12とは別の光源用基板に搭載されている場合、光源制御部52は、その光源用基板に形成されていてもよいし、その光源用基板に搭載された電子部品に形成されていてもよい。
【0071】
[コントローラ]
図7は、制御装置であるコントローラ2の構成例を示す機能ブロック図である。図7に示すように、コントローラ2は、プロセッサ1001、メモリ1002、通信インタフェース装置1003、入出力インタフェース装置1004等を備え、これらはバス等を介して相互に接続されている。プロセッサ1001は、制御プログラム1011に従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部などが実現される。プロセッサ1001により実現される機能や処理部としては、画像生成処理、表示処理などがある。
【0072】
また、上述のようにコントローラ2は、アイトラッキング装置3の一部としても機能する。すなわち、プロセッサ1001により実現される機能や処理部の一つとしては、第1ユーザU1の視点を検出する視点検出処理(言い換えれば、アイトラッキング処理)がある。
【0073】
メモリ1002には、制御プログラム1011、設定情報1012、画像データ1013、その他、処理に関するデータ・情報が格納されている。制御プログラム1011は、機能などを実現するコンピュータプログラムである。設定情報1012は、システム設定情報やユーザ設定情報である。画像データ1013は、画面20に画像・映像を表示させるためのデータである。
【0074】
通信インタフェース装置1003は、アイトラッキング装置3や透明表示パネル10の駆動回路70、外部の機器などと接続され、所定の通信インタフェースで通信処理を行う。このようにアイトラッキング装置3や駆動回路70等の機器は、無線通信を介してコントローラ2と接続されている。ただし、アイトラッキング装置3や駆動回路70等の機器は、ケーブルを介してコントローラ2と接続されていてもよい。
【0075】
通信インタフェース装置1003には、さらに、第1空間SP1を照らす第1照明装置110の電源スイッチ111および第2空間SP2を照らす第2照明装置120の電源スイッチ121を操作するための操作装置80が接続されている。すなわち、操作装置80は、無線通信を介してコントローラ2と接続され、コントローラ2は、操作装置80を介して、第1照明装置110の電源スイッチ111と、第2照明装置120の電源スイッチ121とについて、オンオフを切り替える制御を行う。この操作装置80の構成は特に限定されない。操作装置80は、例えば、第1照明装置110および第2照明装置120の回路内に組み込まれて電源スイッチ111,121を電気的に操作するものであってもよいし、電源スイッチ111,121を物理的に操作するものであってもよい。
【0076】
なお、この例では、操作装置80は、第1照明装置110の電源スイッチ111および第2照明装置120の電源スイッチ121を操作するものであるが、操作装置80の構成はこれに限定されない。操作装置80は、必要に応じて、第1照明装置110の電源スイッチ111または第2照明装置120の電源スイッチ121の一方を操作するものであってもよい。
【0077】
入出力インタフェース装置1004には、例えば、第1ユーザU1の要求や指示を入力する入力装置85がケーブル等を介して接続される。入力装置85は、言い換えれば、第1ユーザU1の操作を受け付けるための装置であり有線でコントローラ2と接続されている。入力装置85としては、例えば、キーボード、ボタン、タッチスクリーン等が挙げられる。入出力インタフェース装置1004は、入力装置85から送られてくる信号をプロセッサ1001に送信する。また入出力インタフェース装置1004には、コントローラ2の信号が出力される各種の出力装置が接続される場合もある。なお、入力装置85や各種の出力装置は、無線通信を介してコントローラ2と接続されていてもよい。
【0078】
[透明ディスプレイのコミュニケーションツールとしての利用]
透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1と第2ユーザU2との間でのコミュニケーションツールとして利用することができる。例えば、第1ユーザU1と第2ユーザU2との間に透明ディスプレイ1の透明表示パネル10を配置し、第1ユーザU1は、画面20に表示した画像を第2ユーザU2に示しながら、第2ユーザU2の顔を見て会話等することができる。ただし、画面20に表示させる画像は、第1ユーザU1にとって、第2ユーザU2には見られたくない内容が含まれている場合であっても、第2ユーザU2に見られてしまう。
【0079】
そこで実施の形態1では、透明ディスプレイ1のコントローラ2が、メインユーザである第1ユーザU1に向けて画面20に画像を表示させる際、例えば、第1ユーザU1の操作に基づいて、第1空間SP1内を照らす第1照明装置110の状態を制御する。より詳しくは、コントローラ2は、第1空間SP1の透明表示パネル10近傍の明るさが、透明表示パネル10に表示される画像の明るさよりも明るくなるように、第1照明装置110の状態を制御する。一例として、コントローラ2は、第1照明装置110の電源スイッチ111のオンとオフとを切り替える制御を行う。
【0080】
これにより、図3を参照して説明したように、透明表示パネル10の画面20に表示される画像が実質的に第1ユーザU1のみから視認できる状態とすることができる。すなわち、第2ユーザU2からは、画面20に表示される画像が視認し難い、あるいは視認できない状態とすることができる。このように、実施の形態1の透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1に向けて画面20に画像を表示させる際、透明表示パネル10の画面20に表示される画像が実質的に第1ユーザU1のみから視認できる状態となるように、第1照明装置110の状態を制御する。
【0081】
実施の形態1では、コントローラ2は、第1ユーザU1の操作に基づいて、第1照明装置110の状態を、第1照明装置110の照明光源112が消灯する第1状態と、照明光源112が点灯する第2状態と、で切り替える制御を行う。例えば、第1ユーザU1の操作に基づいて画面20に画像を表示させる際に、第1ユーザU1により、その画像を第2ユーザU2に対して非表示とする要求の操作があると、コントローラ2は、第1照明装置110の状態を上記第1状態から上記第2状態に切り替える制御を行う。
【0082】
ここで、第1照明装置110の状態が上記第2状態である場合、第1空間SP1内の透明表示パネル10近傍の明るさは、透明表示パネル10の画面20に表示される画像の明るさに比べて、十分に明るくなる。言い換えれば、第1照明装置110は、照明光源112として、上記のような第1空間SP1内の明るさを確保できる光量(言い換えれば、光束)を有するものを備えている。
【0083】
したがって、第1照明装置110の状態を、第1状態から第2状態に切り替えることで、画面20に表示される画像が第2ユーザU2からは視認し難い、あるいは視認できない状態(言い換えれば、実質的に第1ユーザU1のみから視認できる状態)となる。なお、第1照明装置110の照明光源112および第2照明装置120の照明光源122の種類は、特に限定されず、上記のような光量を有するものであればよい。
【0084】
このように透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10と連動して第1照明装置110の状態を制御する。これにより、透明表示パネル10の画面20に表示されている画像が、実質的に第1ユーザU1のみから視認できるようになる。したがって、メインユーザである第1ユーザU1は、透明ディスプレイ1を介して第2ユーザU2と会話等をする際、状況を気にすることなく様々な画像を表示させることができる。
【0085】
例えば、第1ユーザU1は、第2ユーザU2には見られたくない情報を含む画像を、透明表示パネル10に表示させることができる。また、第2ユーザU2に見られても構わないが、第2ユーザU2にとってはノイズとなりそうな画像等についても、第1ユーザU1は非表示とする操作を行うことなく、画像を表示させたままとすることができる。さらに第2ユーザU2からは画面20に表示されている画像が見えないようにすることで、透明ディスプレイ1を、いわゆるプロンプタとしても利用することができる。このように本発明の技術により、透明ディスプレイ1の利便性を向上することができ、また透明ディスプレイ1の利用範囲が広がる。
【0086】
以下、図8図12を参照して、実施の形態1の透明ディスプレイ1の画像表示処理の一例についてさらに説明する。図8は、実施の形態1の透明ディスプレイにおける画像表示処理の一例を説明するフローチャートである。図9は、実施の形態1の透明ディスプレイにおける視認状態の選択判定処理の一例を説明するフローチャートである。また図10図12は、透明表示パネルの画面の一例を示す図である。なお、以下で説明する透明ディスプレイ1での各種処理は、上述したようにコントローラ2によって実行される。
【0087】
図8のフローチャートに示すように、ステップS1で、透明ディスプレイ1の電源がオンの状態になると、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の画面20に、画面20に表示される画像の視認状態を選択するための選択画像を表示させる(ステップS2)。実施の形態1では、図10に示すように、上記選択画像として、「第2ユーザ視認NG」の画像160と、「第2ユーザ視認OK」の画像170と、がメインユーザである第1ユーザU1に向けて表示される。
【0088】
「第2ユーザ視認NG(以下、単に「視認NG」という)」の状態とは、第2ユーザU2が、画面20に表示された画像を視認し難い、あるいは視認できない状態である。言い換えれば、「視認NG」の状態とは、実質的に第1ユーザU1のみが画面20の画像を視認できる状態である。一方、「第2ユーザ視認OK(以下、単に「視認OK」という)」の状態とは、第2ユーザU2が、画面20に表示された画像を視認できる状態である。言い換えれば、「視認OK」の状態とは、第1ユーザU1および第2ユーザU2のそれぞれが、画面20に表示された画像を視認できる状態である。
【0089】
このように実施の形態1の透明ディスプレイ1では、メインユーザである第1ユーザU1は、画像の視認状態として、「視認NG」の状態と、「視認OK」の状態と、を適宜選択することができる。そして、第1ユーザU1に向けて画面20に画像を表示させる際、第1ユーザU1が「視認NG」を選択していると、実質的に第1ユーザU1のみから視認できるように、画面20に画像が表示される。一方、第1ユーザU1が「視認OK」を選択していると、第1ユーザU1および第2ユーザU2のそれぞれから視認できるように画面20に画像が表示される。
【0090】
この例では、透明ディスプレイ1の電源がオンになると、常に、視認状態として「視認OK」が選択された状態となる。このため、透明ディスプレイ1は、ステップS3で、第1ユーザU1がいる第1空間SP1を照らす第1照明装置110を第1状態とする制御を行う。すなわち、透明ディスプレイ1は、電源オン時、第1照明装置110が第2状態であれば第1状態に切り替え、第1状態であれば第1状態を維持する。
【0091】
勿論、透明ディスプレイ1の電源がオンになると、常に、視認状態として「視認NG」が選択された状態となるようにしてもよい。その場合、透明ディスプレイ1は、ステップS3で、第1ユーザU1がいる第1空間SP1を照らす第1照明装置110を第2状態とすることが好ましい。すなわち、透明ディスプレイ1の電源投入時、第1照明装置110が第1状態であれば第2状態に切り替え、第2状態であれば第2状態を維持することが好ましい。
【0092】
次に、第1ユーザU1により、視認状態として「視認NG」または「視認OK」のどちらが選択されたかを判定する(ステップS4)。第1ユーザU1による視認状態の選択方法は、特に限定されないが、一例として、第1ユーザU1は、視線によって「視認NG」または「視認OK」のどちらかを選択することができる。
【0093】
例えば、図9に示すように、ステップS11で、透明ディスプレイ1が備えるアイトラッキング装置3が、例えば、カメラ30によって撮影された第1ユーザU1の画像等に基づいて、第1ユーザU1の視点を検出する。すなわちアイトラッキング装置3は、画面20上において第1ユーザU1の視線がそそがれる先(言い換えれば、注視点)を検出する。第1ユーザU1の画面20上における視点が検出されると、透明表示パネル10の画面20には、図11に示すように、アイトラッキング装置3による検出情報に基づいて第1ユーザU1の視点を示すカーソル(一例として、図中に丸印で示す)150が表示される。このカーソル150は、第1ユーザU1の視点の移動に伴って画面20内を移動する。
【0094】
ステップS12に進み、透明ディスプレイ1は、アイトラッキング装置3により検出された第1ユーザU1の視点から、第1ユーザU1が、「視認NG」の画像160または「視認OK」の画像170のどちらを注視しているか判定する。すなわち、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1が、「視認NG」の画像160または「視認OK」の画像170のどちらを選択しようとしているか判定する。
【0095】
透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1の視点が、予め決定された所定時間(例えば、数秒程度)以上、「視認NG」の画像160または「視認OK」の画像170の一方に留まっている場合に、第1ユーザU1が「視認NG」の画像160または「視認OK」の画像170を注視していると判定する。この例では、まずステップS12で、第1ユーザU1が「視認NG」の画像160を注視しているか否かを判定する。すなわち、第1ユーザU1の視点が、上記所定時間以上、「視認NG」の画像160上またはその近傍に留まっているか否かを判定する。第1ユーザU1の視点が、所定時間以上、「視認NG」の画像160付近に留まっている場合(ステップS12:YES)、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1によって、視認状態として「視認NG」が選択されたと判定する(ステップS13)。
【0096】
例えば、図11に示すようにカーソル150が「視認NG」の画像160上に重なり、重なっている時間が上記所定時間以上になると(ステップS12:YES)、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1によって「視認NG」の画像160を注視していると判定する(ステップS13)。そして透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1によって、画面20に表示される画像の視認状態として「視認NG」が選択されたと判定し、視認状態の選択判定処理を終了する。一方、第1ユーザU1が、「視認NG」の画像160を注視していない場合には(ステップS12:NO)、ステップS14に進む。
【0097】
ステップS14では、第1ユーザU1が、「視認OK」の画像170を注視しているか否かを判定する。つまり第1ユーザU1の視点が、上記所定時間以上、「視認OK」の画像170上またはその近傍に留まっているか否かを判定する。第1ユーザU1の視点が、上記所定時間以上、画像170の近傍に留まっている場合(ステップS14:YES)、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1によって、視認状態として「視認OK」が選択されたと判定する(ステップS15)。
【0098】
例えば、図12に示すように、カーソル150が「視認OK」の画像170に重なり、重なっている時間が上記所定時間以上になると(ステップS14:YES)、透明ディスプレイ1は、第1ユーザが「視認OK」の画像170を注視していると判定する(ステップS15)。すなわち、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1によって、画面20に表示される画像の視認状態として「視認OK」が選択されたと判定し(ステップS15)、視認状態の選択判定処理を終了する。一方、第1ユーザU1によって「視認OK」の画像170が注視されていない場合には(ステップS14:NO)、ステップS11に戻り、上記の選択判定処理を継続する。
【0099】
なお、第1ユーザU1による視認状態の選択方法は、特に限定されず、例えば、第1ユーザU1が、キーボードやスイッチ等の入力装置85を操作することで選択するようにしてもよい。
【0100】
図8のフローチャートに戻り、ステップS4では、第1ユーザU1により、視認状態として「視認NG」または「視認OK」のどちらが選択されたかを判定する。一例として、第1ユーザU1により選択された視認状態が「視認NG」であるか否かを判定する。ここで、「視認OK」の状態から第1ユーザU1により「視認NG」が選択された場合には(ステップS4:YES)、ステップS5に進む。また、「視認NG」の状態で「視認OK」が選択されなかった場合にも(ステップS4:YES)、同様にステップS5に進む。
【0101】
一方、「視認NG」の状態から、第1ユーザU1により「視認OK」が選択された場合には(ステップS4:NO)、ステップS6に進む。また、「視認OK」の状態で、第1ユーザにより「視認NG」が選択されなかった場合にも(ステップS4:NO)、同様にステップS6に進む。
【0102】
ステップS5では、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110の状態を第2状態とする制御を行う(ステップS5)。透明ディスプレイ1は、第1照明装置110が第1状態であれば第2状態に切り替える制御を行い、第2状態であれば第2状態を維持する制御を行う。例えば、第1照明装置110が第1状態である場合、透明ディスプレイ1は、操作装置80によって、第1照明装置110の電源スイッチ111をオフからオンに切り替え、照明光源112を点灯させる。
【0103】
次いで、例えば、入力装置85等の操作により、第1ユーザU1から、画面20に画像を表示させる旨の要求があると、透明ディスプレイ1は、所定の画像を画面20に表示させる(ステップS6)。この場合、第1照明装置110の照明光源112は点灯しているため、画面20に表示される画像は、第1ユーザU1からは視認できるものの、第2ユーザU2からは視認し難い、あるいは視認できない状態となる(図3参照)。
【0104】
一方、ステップS4で、第1ユーザU1により「視認OK」が選択された場合、言い換えれば、第1ユーザU1により「視認NG」が選択されなかった場合(ステップS4:NO)、第1照明装置110の状態を変化させることなく、ステップS6に進む。ステップS6では、上述のように第1ユーザU1の入力操作に基づいて、所定の画像が画面20に表示される。ただし、この場合、第1照明装置110の照明光源112は消灯しているため、画面20に表示される画像は、第1ユーザU1および第2ユーザU2のそれぞれが視認できる状態となる(図2参照)。
【0105】
その後、第1ユーザU1により、視認状態として「視認NG」または「視認OK」のどちらが選択されたかを判定する(ステップS7)。一例として、ステップS7では、第1ユーザU1により、視認状態として「視認OK」が選択されたか否かを判定する。
【0106】
ここで、「視認NG」の状態から、第1ユーザU1により「視認OK」が選択された場合には(ステップS7:YES)、ステップS3に戻り、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110の状態を第2状態から第1状態に切り替える制御を行う。また、「視認OK」の状態で、「視認NG」が選択されない場合にも(ステップS7:YES)、同様にステップS3に戻り、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110の状態を第1状態に維持する制御を行う。
【0107】
一方、「視認NG」の状態で、第1ユーザU1により「視認OK」が選択されなかった場合には(ステップS7:NO)、ステップS5に戻り、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110の状態を第2状態に維持する制御を行う。また、「視認OK」の状態で、第1ユーザU1により「視認NG」が選択された場合にも(ステップS7:NO)、同様にステップS5に戻り、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110の状態を第1状態から第2状態に切り替える制御を行う。
【0108】
以上のように、実施の形態1によれば、例えば、第1ユーザU1の操作に基づいて、第1ユーザU1に向けて画面20に表示される画像が、一時的に、実質的に第1ユーザU1のみから視認可能な状態にできる。これにより、第1ユーザU1は、透明表示パネル10に、第2ユーザU2には見られたくない情報を含む画像も表示できるようになり、透明ディスプレイ1の利便性が向上する。また、第2ユーザU2からは画面20に表示されている画像が視認できないようにすることで、透明ディスプレイ1の新しい使い方が可能となる。例えば、透明ディスプレイ1を、いわゆるプロンプタとしても利用することができ、透明ディスプレイ1の利用範囲が広がる。このように本発明によれば、透明ディスプレイ1である透明表示装置の用途を広げることができる技術を提供することができる。
【0109】
<実施の形態1の変形例>
実施の形態1では、第1ユーザU1の操作に基づいて画面20に画像を表示させる際に、第1照明装置110の状態を制御するようにしたが、第1照明装置110の状態を制御するタイミングは、あくまで一例であり、これに限定されない。透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1に向けて画面20に画像を表示させる際に、第1照明装置110の状態を制御すればよい。
【0110】
また、実施の形態1では、第1ユーザU1の操作に基づいて、第1照明装置110の状態を制御する例について説明したが、さらに、第2照明装置120の状態を適宜制御することもできる。例えば、透明ディスプレイ1が、電源オン時に、第2照明装置120が第2状態であれば第1状態に切り替え、第1状態であれば第1状態を維持する制御を行うようにしてもよい。これにより、第1ユーザU1から画面20に表示される画像を見やすくすることができる。
【0111】
また、実施の形態1では、第1空間SP1にいる第1ユーザU1が、透明ディスプレイ1のメインユーザである例について説明したが、勿論、第2空間SP2にいる第2ユーザU2がメインユーザであってもよい。ただし、この場合には、アイトラッキング装置3を構成するカメラ30を第2ユーザU2に向けて配置する必要がある。
【0112】
<実施の形態2>
図13は、実施の形態2の透明ディスプレイの概略構成を示す図である。図14は、実施の形態2の透明ディスプレイにおける画像表示処理の一例を説明するフローチャートである。図13及び図14を用いて、実施の形態2の透明ディスプレイについて説明する。実施の形態2の透明ディスプレイの基本的な構成は、実施の形態1と同様・共通であり、以下では、実施の形態2の透明ディスプレイにおける、実施の形態1とは異なる構成部分について主に説明する。
【0113】
図13に示すように、実施の形態2の透明ディスプレイ1は、実施の形態1の構成に加え、第1空間SP1の照度を検出する照度センサ100をさらに備えている。この照度センサ100は、第1空間SP1内の透明表示パネル10の近傍に設けられていることが好ましい。ただし、照度センサ100の配置は、特に限定されない。照度センサ100は、第1空間SP1内の照度を検出できるように第1空間SP1内に配置されていればよい。また実施の形態2では、第1照明装置110および第2照明装置120として、光量を複数段階で調整できるものを採用している。
【0114】
そして実施の形態2の透明ディスプレイ1は、画像表示処理を実施する際、照度センサ100の検出結果に基づいて、第1照明装置110の状態を制御する。言い換えれば、透明ディスプレイ1は、照度センサ100により測定された第1空間SP1の透明表示パネル10近傍の照度に基づいて、第1照明装置110の状態を制御する。
【0115】
例えば、図14のフローチャートに示すように、ステップS21で、透明ディスプレイ1の電源がオンの状態になると、透明ディスプレイ1は、透明表示パネル10の画面20に、画像の視認状態を選択するための選択画像(図10参照)を表示させる(ステップS22)。次いで、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110を第1状態とする制御を行う(ステップS23)。ステップS23では、透明ディスプレイ1は、第2ユーザU2がいる第2空間SP2を照らす第2照明装置120の状態を第1状態とする制御も行う。なおステップS21~ステップS23は、実施の形態1のステップS1~S4と同様のステップである。
【0116】
次に、ステップS24で第1ユーザU1から画面20に画像を表示させる指示があると、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1により、視認状態として「視認NG」または「視認OK」のどちらが選択されているかを判定する(ステップS25)。ステップS25は、実施の形態1のステップS4に相当し、第1ユーザU1により視認状態として「視認NG」が選択されているか否かを判定する。第1ユーザU1により視認状態として「視認NG」が選択されている場合には(ステップS25:YES)、ステップS26に進む。なおステップS25の判定方法は、特に限定されないが、例えば、実施の形態1と同様に、第1ユーザU1の視点に基づいて判定する。
【0117】
ステップS26では、透明ディスプレイ1は、照度センサ100の検出結果に基づいて、第1空間SP1の明るさを判定する。より詳しくは、透明ディスプレイ1は、第1空間SP1の透明表示パネル10近傍の明るさが、画面20に表示される画像の明るさよりも、暗いか否かを判定する。一例として、透明ディスプレイ1は、照度センサ100の検出結果が、予め設定された第1閾値以下であるか否かを判定する。
【0118】
ここで、照度センサ100の検出結果が、第1閾値以下である場合(ステップS26:YES)、透明ディスプレイ1は、第1空間SP1の明るさが、画面20に表示される画像の明るさよりも暗いと判定し、ステップS27に進む。ステップS27では、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110の状態を第2状態とする制御を行う。具体的には、透明ディスプレイ1は、照度センサ100の検出結果が第1閾値よりも大きくなるように、つまり第1空間SP1の明るさが、画面20に表示される画像の明るさよりも明るくなるように、第1照明装置110の状態を適宜制御する。透明ディスプレイ1は、例えば、第1照明装置110の状態が第1状態であれば第2状態に切り替え、さらに必要に応じて第1照明装置110の光量を段階的に増加させる制御を行う。その後、ステップS28に進む。
【0119】
そして、この状態で、第1ユーザU1の上記指示に応じて、所定の画像を透明表示パネル10の画面20に表示させる。この場合、第1空間SP1内の透明表示パネル10近傍の明るさは、画面20に表示される画像の明るさよりも明るくなっている。このため、画面20に表示される画像は、第1ユーザU1からは視認できるが、第2ユーザU2からは視認し難いか、あるいは視認できない(図3参照)。
【0120】
一方、ステップS25で、第1ユーザU1により「視認OK」が選択されている場合、言い換えれば、第1ユーザU1により「視認NG」が選択されていない場合(ステップS25:NO)、第1照明装置110の状態を変更する制御をすることなく、ステップS28に進む。またステップS26で、照度センサ100の検出結果が第1閾値よりも大きい場合(ステップS26:NO)、透明ディスプレイ1は、第1空間SP1内の表示層13近傍の明るさは、画面20に表示される画像の明るさよりも明るいと判定する。そして、第1照明装置110の状態を変更する制御を行うことなく、ステップS28に進む。
【0121】
ステップS28では、この状態で、第1ユーザU1の上記指示に応じて、所定の画像を画面20に表示させる。ただし、この場合、第1空間SP1内の明るさは、画面20に表示される画像の明るさよりも暗くなっている。したがって、画面20に表示される画像は、第1ユーザU1および第2ユーザU2のそれぞれが視認できる(図2参照)。
【0122】
その後は、第1ユーザU1により、視認状態として「視認NG」または「視認OK」のどちらが選択されているかを判定する(ステップS29)。例えば、第1ユーザU1により、「視認OK」が選択されているか否かを判定する。第1ユーザU1によって「視認OK」が選択されていれば(ステップS29:YES)、ステップS23に戻り、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110の状態を第2状態から第1状態に切り替える制御を行う。一方、第1ユーザU1により「視認NG」が選択されている場合には(ステップS29:NO)、ステップS26に戻り、上述のように照度センサ100の検出結果に基づいて、第1照明装置110の状態を適宜制御する。
【0123】
以上説明したように、実施の形態2の透明ディスプレイ1においても、実施の形態1と同様、利便性を向上でき、また透明ディスプレイ1の新しい使い方が可能となる。さらに、実施の形態2では、透明ディスプレイ1が照度センサ100の検出結果に基づいて、第1照明装置110の状態を制御するようにしたので、第1照明装置110の状態をより適切に制御でき、例えば、第1照明装置110の無駄な点灯を抑制することもできる。
【0124】
<実施の形態2の変形例>
上述のように、実施の形態2では、第1空間SP1を照らす第1照明装置110の状態を制御することで、つまり第1照明装置110の状態を第2状態とすることで、第1空間SP1内の明るさが、透明表示パネル10の画面20に表示される画像の明るさよりも明るくなるようにした。ただし、第1空間SP1内の明るさを、このような明るさとする方法は、第1照明装置110の状態を制御することに限定されない。例えば、第1照明装置110の状態を制御し、さらに、画面20に表示される画像を形成する画素の状態を制御するようにしてもよい。具体的には、画像を形成する画素の輝度を下げる制御を行うようにしてもよい。これにより、第1空間SP1内の明るさを、より確実に、画面20に表示される画像の明るさよりも明るくすることができる。
【0125】
<実施の形態3>
図15は、実施の形態3の透明ディスプレイにおける画像表示処理の一例を説明するフローチャートである。図15を用いて、実施の形態3の透明ディスプレイにおける画像表示制御の一例ついて説明する。なお、実施の形態3の透明ディスプレイの基本的な構成は、実施の形態1と同様・共通である。
【0126】
実施の形態3の透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1の操作・指示に基づいて透明表示パネル10に画像を表示させる際、その画像に付加されている付加情報に応じて第1照明装置110の状態を制御するようにした例である。例えば、透明ディスプレイ1は、付加情報に、第2ユーザU2に対して、画像を非表示とする非表示情報が含まれているか否かを判定し、付加情報に非表示情報が含まれている場合に、第1照明装置110の状態を、第1状態から第2状態に変更する制御を行う。
【0127】
ここで、付加情報とは、画像に対して付加される情報、例えば、属性等の情報である。また非表示情報とは、第1ユーザU1が、第2空間SP2にいる第2ユーザU2に対して画像を非表示としたい旨の情報であり、例えば、その画像が機密情報等を含む場合に付加される。一例として、透明ディスプレイ1は、第1ユーザU1の指示に応じて透明表示パネル10に画像を表示させる際、その画像データに、付加情報として機密属性の情報が付加されているか否かを判定する。そして、機密属性の情報が付加されている場合に、第1照明装置110の状態を第1状態から第2状態に変更する制御を行う。また、付加情報は、特に限定されるものではなく、例えば、第1ユーザU1が任意に設定した「視認NG」の情報等であってもよい。
【0128】
例えば、実施の形態3の透明ディスプレイ1は、図15に示すように、ステップS31で電源がオンの状態になり、第1ユーザU1が画面20に画像を表示させる指示の操作を行うと(ステップS32)、ステップS33で、その画像に付加情報があるか否かを判定する。実施の形態3では、透明ディスプレイ1は、非表示情報を含む付加情報があるか否かを判定する。ここで、画像に非表示情報を含む付加情報がある場合(ステップS33:YES)、透明ディスプレイ1は、ステップS34に進み、第1照明装置110の状態を第2状態とする制御を行う。ステップS34は、実施の形態1のステップS5と同様のステップであり、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110が第1状態であれば第2状態に切り替える制御を行い、第2状態であれば第2状態を維持する制御を行う。
【0129】
その後、第1ユーザU1の上記指示に応じて、所定の画像を画面20に表示させ(ステップS35)、ステップS32に戻る。この場合、第1照明装置110の照明光源112は点灯しているため、画面20に表示される画像は、第1ユーザU1からは視認できるが、第2ユーザU2からは視認し難いか、あるいは視認できない(図3参照)。
【0130】
一方、画像に非表示情報を含む付加情報がない場合(ステップS33:NO)、第1照明装置110の状態を変更する制御を行うことなくステップS36に進む。ステップS36は、実施の形態1のステップS3と同様のステップであり、第1照明装置110を第1状態とする制御を行う。すなわち、透明ディスプレイ1は、第1照明装置110が第2状態であれば第1状態に切り替える制御を行い、第1状態であれば第1状態を維持する制御を行う。その際、第2照明装置120についても、第1照明装置110と同様の制御を行うことが好ましい。ただし、第2照明装置120の制御は行わなくてもよい。
【0131】
その後、ステップS37で、第1ユーザU1の上記指示に応じて所定の画像を画面20に表示させた後、ステップS32に戻る。この場合、第1照明装置110の照明光源112は消灯しているため、画面20に表示される画像は、第1ユーザU1および第2ユーザU2のそれぞれが視認できる(図2参照)。
【0132】
以上説明したように、実施の形態3の透明ディスプレイ1においても、実施の形態1と同様、利便性を向上でき、また透明ディスプレイ1の新しい使い方が可能となる。さらに、実施の形態3では、画面に表示される画像に付加された付加情報に基づいて、第1照明装置110の状態を制御するようにしたので、第1ユーザU1の操作を要することなく、第1照明装置110の状態を適切に制御することができる。
【0133】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は、前述の実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。各実施の形態は、必須構成要素を除き、構成要素の追加・削除・置換などが可能である。特に限定しない場合、各構成要素は、単数でも複数でもよい。本発明には、各実施の形態や変形例を組み合わせた形態も含まれる。
【0134】
上述の実施の形態では、本発明の透明表示装置の一例として、液晶表示装置である液晶ディスプレイについて説明したが、本発明は、有機EL装置などの、他の自発光型表示装置に適用することもできる。実施の形態で説明した機能は、透明状態と非透明状態との間での遷移が可能な表示層(画素)を備える表示装置であれば、同様に適用可能である。また、表示装置の画面のサイズは、小型から大型まで、特に限定せずに適用可能である。
【0135】
また、上述の実施の形態では、本発明の透明表示装置として、コントローラによって特徴的な制御を行う例について説明したが、本発明の透明表示装置の構成は、これに限定されない。本発明の透明表示装置は、コントローラに対して外部に接続されるコンピュータシステムが、同様の特徴的な制御を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0136】
1…透明ディスプレイ(透明表示装置)、2…コントローラ、3…アイトラッキング装置(センサデバイス)、10…透明表示パネル、11…第1基板、12…第2基板、13…表示層、20…画面、30…カメラ、80…操作装置、85…入力装置、100…照度センサ、110…第1照明装置、111…電源スイッチ、112…照明光源、120…第2照明装置、121…電源スイッチ、122…照明光源、150…カーソル、U1…第1ユーザ、U2…第2ユーザ、SP1…第1空間、SP2…第2空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15