(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099383
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】異常検出システム、異常検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20240718BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240718BHJP
G01H 3/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
G01M99/00 Z
G01H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003290
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 敏文
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3F027
【Fターム(参考)】
2G024AD15
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA09
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
2G064AB02
2G064AB15
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD20
2G064CC13
2G064DD08
2G064DD15
3F027AA02
3F027DA22
3F027FA01
(57)【要約】
【課題】効率よく異常を検出する。
【解決手段】異常検出システムは、ベルトコンベアの延在方向においてそれぞれ異なる位置に固定されて、ベルトコンベアからの騒音を検出する複数のマイクと、マイクにより検出されたベルトコンベアからの騒音データを取得して、騒音データに基づいて、ベルトコンベアの異常を判定する第1処理装置と、を有し、第1処理装置は、基準騒音データと、マイクにより検出された騒音データとに基づいて、ベルトコンベアの異常度を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアの延在方向においてそれぞれ異なる位置に固定されて、前記ベルトコンベアからの騒音を検出する複数のマイクと、
前記マイクにより検出された前記ベルトコンベアからの騒音データを取得して、前記騒音データに基づいて、前記ベルトコンベアの異常を判定する第1処理装置と、
を有し、
前記第1処理装置は、基準騒音データと、前記マイクにより検出された前記騒音データとに基づいて、前記ベルトコンベアの異常度を算出する、
異常検出システム。
【請求項2】
前記ベルトコンベアは、設備内の複数のエリアに亘って掛けられ、
前記第1処理装置は、前記エリアごとに前記基準騒音データを異ならせて、前記ベルトコンベアの異常度を算出する、
請求項1に記載の異常検出システム。
【請求項3】
前記第1処理装置が判定した前記ベルトコンベアの異常度を取得し、前記異常度に基づいて、前記ベルトコンベアの異常の有無を判定する第2処理装置を更に有する、請求項1又は請求項2に記載の異常検出システム。
【請求項4】
前記第2処理装置は、騒音以外の前記ベルトコンベアの状態を示す状態情報を取得し、前記異常度と前記状態情報とに基づいて、前記ベルトコンベアの異常の有無を判定する、請求項3に記載の異常検出システム。
【請求項5】
前記第2処理装置は、
前記異常度が所定の閾値以上であり、かつ、前記状態情報が、前記ベルトコンベアが定常状態であることを示す定常条件を満たす場合には、前記ベルトコンベアが異常であると判定し、
前記異常度が所定の閾値以上であるが、前記状態情報が前記定常条件を満たさない場合には、前記ベルトコンベアが異常でないと判定する、
請求項4に記載の異常検出システム。
【請求項6】
前記第1処理装置は、前記マイク毎に、前記異常度を算出し、
前記第2処理装置は、前記マイク毎の前記異常度に基づいて、前記ベルトコンベアの異常発生箇所を推定する、
請求項3に記載の異常検出システム。
【請求項7】
前記第2処理装置は、前記マイク毎の前記異常度と前記マイクの位置とから、前記ベルトコンベアの異常発生箇所を推定する、
請求項6に記載の異常検出システム。
【請求項8】
前記マイクは、収音範囲に指向性がある指向性マイクであり、前記収音範囲の方向が変化するように向きが変化する、
請求項6に記載の異常検出システム。
【請求項9】
前記ベルトコンベアの延在方向の異なる位置に設けられる複数の警告装置を更に有し、
前記第2処理装置は、前記異常発生箇所に対応する位置に配置された前記警告装置に警報を出力させる、請求項6に記載の異常検出システム。
【請求項10】
前記第1処理装置は、前記第2処理装置によって異常であると判定された際の前記異常度に対応する前記騒音データにより、前記異常度を算出する際に用いる基準騒音データを更新する、
請求項3に記載の異常検出システム。
【請求項11】
騒音以外の前記ベルトコンベアの状態を検出するセンサを更に有し、
前記第2処理装置は、前記異常度に基づいて異常と判定し、前記センサの検出結果も異常であると判定した場合には、前記ベルトコンベアを停止させる、
請求項7に記載の異常検出システム。
【請求項12】
ベルトコンベアの延在方向においてそれぞれ異なる位置に固定された複数のマイクにより、前記ベルトコンベアからの騒音を検出するステップと、
前記マイクにより検出された前記ベルトコンベアからの騒音データを取得して、前記騒音データに基づいて、前記ベルトコンベアの異常を判定するステップと、
を含み、
前記ベルトコンベアの異常を判定するステップにおいては、基準騒音データと、前記マイクにより検出された前記騒音データとに基づいて、前記ベルトコンベアの異常度を算出する、
異常検出方法。
【請求項13】
ベルトコンベアの延在方向においてそれぞれ異なる位置に固定された複数のマイクにより、前記ベルトコンベアからの騒音を検出するステップと、
前記マイクにより検出された前記ベルトコンベアからの騒音データを取得して、前記騒音データに基づいて、前記ベルトコンベアの異常を判定するステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記ベルトコンベアの異常を判定するステップにおいては、基準騒音データと、前記マイクにより検出された前記騒音データとに基づいて、前記ベルトコンベアの異常度を算出する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常検出システム、異常検出方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアの異常を検出する技術が開示されている。例えば、特許文献1には、点検員が、マイクを備えた異常診断装置を携帯しつつベルトコンベアを巡回して、その異常診断装置が異常を発見した場合には、その点検員に異常を知らせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、点検員が巡回するため、長距離の移動には労力を要し、効率よく異常を検出することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、効率よく異常を検出することができる異常検出システム、異常検出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る異常検出システムは、ベルトコンベアの延在方向においてそれぞれ異なる位置に固定されて、前記ベルトコンベアからの騒音を検出する複数のマイクと、前記マイクにより検出された前記ベルトコンベアからの騒音データを取得して、前記騒音データに基づいて、前記ベルトコンベアの異常を判定する第1処理装置と、を有し、前記第1処理装置は、基準騒音データと、前記マイクにより検出された前記騒音データとに基づいて、前記ベルトコンベアの異常度を算出する。
【0007】
本開示に係る異常検出方法は、ベルトコンベアの延在方向においてそれぞれ異なる位置に固定された複数のマイクにより、前記ベルトコンベアからの騒音を検出するステップと、前記マイクにより検出された前記ベルトコンベアからの騒音データを取得して、前記騒音データに基づいて、前記ベルトコンベアの異常を判定するステップと、を含み、前記ベルトコンベアの異常を判定するステップにおいては、基準騒音データと、前記マイクにより検出された前記騒音データとに基づいて、前記ベルトコンベアの異常度を算出する。
【0008】
本開示に係るプログラムは、ベルトコンベアの延在方向においてそれぞれ異なる位置に固定された複数のマイクにより、前記ベルトコンベアからの騒音を検出するステップと、前記マイクにより検出された前記ベルトコンベアからの騒音データを取得して、前記騒音データに基づいて、前記ベルトコンベアの異常を判定するステップと、をコンピュータに実行させ、前記ベルトコンベアの異常を判定するステップにおいては、基準騒音データと、前記マイクにより検出された前記騒音データとに基づいて、前記ベルトコンベアの異常度を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、効率よく異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る異常検出システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る第1処理装置の模式的なブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る第2処理装置の模式的なブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る異常検出システムの処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る異常検出システムの処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る第2処理装置の模式的なブロック図である。
【
図8】
図8は、第2処理装置の出力結果の表示の一例を示す図ある。
【
図9】
図9は、指向性マイクを説明する模式図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る異常検出システムの概略構成図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態に係る異常検出システムの処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、第1実施形態に係る異常検出システムの概略構成図である。
【0013】
異常検出システム10は、ベルトコンベア12の異常を検出するシステムである。異常検出システム10は、マイクロフォン(以下、「マイク」と記載する)18で、ベルトコンベア12の騒音(騒音データ)を取得する。そして、異常検出システム10は、第1処理装置20にて異常度を算出し、第2処理装置50に異常度の算出結果を送信する。異常検出システム10は、第2処理装置50にて第1処理装置20が算出した異常度に基づいて、ベルトコンベア12の異常の有無を出力するものである。
【0014】
<ベルトコンベア>
ベルトコンベア12は、搬送物(図示せず)を搬送する装置である。ベルトコンベア12は、プーリ13と、駆動装置14と、ベルト15と、複数のローラ16とを有する。ここで、ベルトコンベア12の搬送物(図示せず)が搬送される方向(矢印Xの方向)を延在方向Xとする。言い換えれば、延在方向Xは、ベルトコンベア12(ベルト15)の長辺方向を指す。また、延在方向Xに直交したベルト15の幅方向を、短辺方向とする。なお、ベルトコンベア12の搬送物の種類は、限定されないが、石炭や燃料等が挙げられる。また、ベルトコンベア12は、ベルト15を覆う図示しないカバーを有してもよい。
【0015】
プーリ13は、ベルトコンベア12のベルト15を延在方向Xに回転させる機構であり、ベルト15が掛けられる一対の回転体である。プーリ13は、ベルト15の幅方向に延在する図示しない回転軸を有し、回転軸を回転中心として回転する。プーリ13は、ベルトコンベア12を駆動する駆動装置14が接続する。プーリ13は、駆動装置14の動力によって回転軸の周方向に回転する。プーリ13は、2個以上であってもよい。
【0016】
駆動装置14は、モータMと減速機17とを含む。駆動装置14は、モータMの動力により、プーリ13(ベルトコンベア12)を回転させる。駆動装置14は、プーリ13に接続する。なお、駆動装置14は、プーリ13に内蔵されていることが好ましいが、一方のプーリ13だけに内蔵されていてもよく、他方のプーリ13は、一方のプーリ13の動力が伝達することで回転してもよい。駆動装置14の配置は、これらに限られず、任意であってよい。駆動装置14は、回転数を検出するセンサを有していてもよい。また駆動装置14の構成も任意であってよい。また、駆動装置14は、後述する第2処理装置50にもネットワークNを介して接続する。
【0017】
ベルト15は、搬送物を搬送するものであり、プーリ13に掛けられる。ベルト15は、プーリ13の外周面に接するように掛けられる。ベルト15は、プーリ13が回転することにより、プーリ13と共に回動して、延在方向Xに搬送物を搬送する。搬送物は、ベルト15から落下しないようにベルト15の上面に載せられる。
【0018】
ローラ16は、延在方向Xにおいて、一対のプーリ13の間に配置される。ローラ16は、ベルト15が撓まないように、ベルト15の回転を補助する回転体である。ローラ16は、ベルト15の幅方向に沿った図示しない回転軸を有し、回転軸を回転中心として回転する。ローラ16は、ベルト15の面に接するように複数配置される。具体的には、ローラ16は、プーリ13の間であって、且つ、ベルト15の内側の面に接するように配置される。また、ローラ16は、プーリ13の間であって、且つ、ベルト15の搬送物が載らない外側の面に接するように配置される。なお、ローラ16は、ベルト15の内側の面だけに接するように配置されていてもよく、任意であってよい。
【0019】
<エリア>
ベルトコンベア12は、設備内の複数のエリアに亘って掛けられる。ここで、エリアについて説明する。本実施形態では、設備内で互いに環境が異なる場所を、それぞれ別のエリアとする。例えば、本実施形態においては、ベルトコンベア12が同じ条件で駆動された状態で、設備内の異なる場所に配置されたマイク18にベルトコンベア12の騒音データを検出させた場合に、マイク18により検出される騒音データの強度の差分が所定の閾値以内に収まる場所同士を、同じエリアとし、騒音データの強度の差分が所定の閾値より高い場所同士を、異なるエリアとする。すなわち、ベルトコンベア12が同じ条件で駆動された状態で、検出される騒音データが大きく異なる設備内の各場所を、設備内の各エリアと呼ぶ。具体的に例えば、設備内の複数のエリアは、例えば屋内、屋外、地下等を指し、それぞれを1つのエリアとする。本例では、複数のエリアをそれぞれエリアA、エリアB、エリアC・・・と示す。また、複数のエリアは、周囲の雑音の程度や防音の程度によって区画されてもよい。例えば、ベルトコンベア12は、屋内においてもベルト15を覆うカバーを有することがある。この場合、屋内においてもカバーの有無でエリアを区分してもよい。なお、ベルトコンベア12は、複数のエリアに亘って掛けられることが好ましいが、1つのエリアだけ(例えば地下のみ、屋外のみ等)に配置されるものであってもよい。
【0020】
<異常検出システム>
図1に示すように、第1実施形態において、異常検出システム10は、マイク18と、第1処理装置20と、第2処理装置50と、管理端末70と、携帯端末72と、警告装置74とを有する。
【0021】
(マイク)
マイク18は、ベルトコンベア12の延在方向Xにおいてそれぞれ異なる位置に固定される。マイク18は、ベルトコンベア12からの騒音を検出する。ベルトコンベア12の延在方向Xにおけるそれぞれのマイク18の設置位置や数は任意であるが、例えば、延在方向Xで隣り合うマイク18同士は、収音範囲が重なるように固定されることが好ましい。このように配置することで、ベルトコンベア12から異音が発生した場合、異音の発生箇所を特定しやすくなる。なお、マイク18は、収音範囲が重ならないように固定されてもよい。マイク18は、エリア毎に複数台固定されることが好ましいが、エリアに1台固定されてもよい。また、マイク18は、設備内での位置が固定されつつ、収音範囲の方向が変化するように、向きが変化可能な構造であってもよい。マイク18の種類は、限定されず、収音範囲に指向性がない無指向性マイクであってもよいし、収音範囲に指向性がある指向性マイクであってもよい。
【0022】
(第1処理装置)
図2は、第1実施形態に係る第1処理装置の模式的なブロック図である。
【0023】
第1処理装置20は、マイク18により検出されたベルトコンベア12からの騒音データを取得して、騒音データに基づいて、ベルトコンベア12の異常を判定する。
【0024】
第1処理装置20は、いわゆるコンピュータであり、
図2に示すように、入力部22と出力部24と通信部26と記憶部28と制御部30とを含む。入力部22は、ユーザの操作を受け付ける装置であり、例えばマウス、キーボード、タッチパネルなどであってよい。出力部24は、情報を出力する装置であり、例えば画像を表示するディスプレイなどであってよい。通信部26は、外部の装置などと通信するモジュールであり、例えばアンテナなどを含んでよい。通信部26による通信方式は、マイク18との通信は有線であるが、第2処理装置50との通信方式は任意であってよい。なお、第1処理装置20は、入力部22及び出力部24を有さなくてもよい。また、第1処理装置20は、単体の装置で構成してもよいし、他の装置と一体に構成してもよいし、演算装置及びデータサーバ等の各種装置を組み合わせたシステムとして構成してもよく、特に限定されない。第1処理装置20は、ベルトコンベア12が配置されたエリア内に配置される。
【0025】
記憶部28は、制御部30の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部28が保存する制御部30用のプログラムは、第1処理装置20が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。本実施形態では、記憶部28は、後述する学習モデル29を記憶する。また、記憶部28は、ベルトコンベア12の異常や誤検知のデータを一時的に記憶してもよいし、マイク18の後述するマイクデータを記憶してもよい。
【0026】
制御部30は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部30は、取得部32と、学習部34と、異常度判定部36と、出力制御部38とを含む。制御部30は、記憶部28からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、取得部32と学習部34と異常度判定部36と出力制御部38とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部30は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、取得部32と学習部34と異常度判定部36と出力制御部38との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0027】
以下、第1処理装置20の処理内容について説明する。
【0028】
(騒音データの取得)
第1処理装置20は、それぞれのマイク18に接続されている。本実施形態では、第1処理装置20は、それぞれのマイク18と、有線で接続されている。マイク18と有線で接続されることで、マイク18が検出した騒音データを、適切に取得できる。ただしそれに限られず、第1処理装置20とマイク18とは無線で接続されていてもよい。第1処理装置20の取得部32は、それぞれのマイク18を制御して、マイク18に収音を行わせる。取得部32は、それぞれのマイク18から、マイク18が収音した騒音データを取得する。マイク18はベルトコンベア12が発する騒音を検出可能な程度に、ベルトコンベア12の近傍に配置されているため、マイク18が検出する騒音データは、ベルトコンベア12からの騒音データといえる。取得部32は、マイク18に、時系列で連続して収音させることが好ましく、言い換えれば、所定の期間にわたって検出された騒音データを取得することが好ましいといえる。すなわち、マイク18が検出した騒音データは、マイク18がベルトコンベア12から検出した連続するパラメータであり、時系列データといえる。また、取得部32は、マイク18を他のマイク18から識別するための識別番号(ID IDentification)と、マイク18の設置位置と、騒音データを検出した時刻とを、合わせて取得してもよい。騒音データ以外のマイク18に関するデータ(ここでは識別番号、設置位置、騒音データを検出した時刻など)を、以下、マイクデータと記載する。
【0029】
(異常の判定)
第1処理装置20の異常度判定部36は、取得部32によって取得された騒音データに基づいて、ベルトコンベア12の異常を判定する。より詳しくは、異常度判定部36は、取得部32によって取得された騒音データに基づいて、ベルトコンベア12の異常度を算出する。異常度とは、ベルトコンベア12の異常度合いを示す指標である。異常度判定部36は、騒音データに基づいた任意の方法で、ベルトコンベア12の異常度を算出してよいが、本実施形態では、基準騒音データと、取得部32によって取得された騒音データとに基づいて、ベルトコンベア12の異常度を算出することが好ましい。基準騒音データとは、予め設定された基準となる騒音データであり、例えば、ベルトコンベア12が正常に動作している場合の騒音データであってよい。すなわち、異常度判定部36は、基準騒音データと、取得部32によって取得された騒音データとを比較して、基準騒音データに対する騒音データの乖離度合いを、異常度として算出するといえる。また、基準騒音データは、エリア毎に設定されることが好ましい。この場合、異常度判定部36は、判定対象となる騒音データと同じエリアの基準騒音データを抽出して、判定対象となる騒音データと、抽出した基準騒音データとを用いて、異常度を算出する。
【0030】
より詳しくは、本実施形態においては、異常度判定部36は、基準騒音データを教師データとして機械学習した学習モデル29を用いて、異常度を算出する。以下、具体的に説明する。
【0031】
学習部34は、基準騒音データと、その基準騒音データの異常度とを教師データとして、学習モデル29に、騒音データと異常度との対応関係を機械学習させる。これにより、学習モデル29は、騒音データと異常度との対応関係を機械学習して、入力データとして騒音データが入力されたら、異常度を算出可能なモデルとなる。なお、上記では、教師データとして、基準騒音データの異常度そのものを用いることを例にしたが、それに限られず、基準騒音データと、その基準騒音データが正常又は異常であることを示すラベルとを、教師データとしてもよい。この場合、学習モデル29に騒音データを入力すると、その騒音データの正常状態からの乖離度合いが、異常度として算出されることになる。
【0032】
また、学習部34は、エリア毎に学習モデル29を設定してよい。すなわちこの場合、学習部34は、同じエリアにおける基準騒音データと異常度とのデータセットを複数準備して、それらの複数のデータセットを教師データとして、そのエリアにおける騒音データと異常度との対応関係を、機械学習させる。学習部34は、設備のエリア毎に同様な処理を行うことで、騒音データと異常度との対応関係を機械学習した学習モデル29を、エリア毎に設定する。
【0033】
なお、学習モデル29としては、任意のモデルが適用でき、例えばCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)モデルを用いてよい。
【0034】
異常度判定部36は、マイク18により検出されたベルトコンベア12からの騒音データを、学習済みの学習モデル29に入力して、その騒音データに対応する、ベルトコンベア12の異常度を算出する。異常度判定部36は、マイク18毎の騒音データについて、同様の方法で異常度を算出する。また、エリア毎に学習モデル29が設定されている場合には、異常度判定部36は、騒音データを検出したマイク18と同じエリアに対して設定された学習モデル29に、騒音データを入力して、その騒音データについての異常度を算出する。
【0035】
このように、第1処理装置20は、機械学習を利用して異常度を算出することが好ましいが、異常度の算出方法はこれに限られず、任意であってもよい。例えば、騒音データの周波数ごとの音圧レベルによって異常度を算出してもよい。
【0036】
(異常度の出力)
出力制御部38は、異常度判定部36が算出した異常度を、通信部26を介して第2処理装置50に出力(送信)する。また、出力制御部38は、マイクデータについても、通信部26を介して第2処理装置50に出力してよい。なお、出力制御部38は、異常度判定部36が算出した異常度やマイクデータを出力部24にも出力してもよい。
【0037】
(第2処理装置)
図3は、第1実施形態に係る第2処理装置の模式的なブロック図である。第2処理装置50は、
図1に示すようにネットワークNを介して、駆動装置14と、管理端末70と、携帯端末72と、警告装置74とが接続される。管理端末70と、携帯端末72と、警告装置74とは必須の構成ではない。ネットワークNは、有線接続でも無線接続(クラウドサーバやオンプレミス等)でもよく、任意であってよい。
【0038】
第2処理装置50は、いわゆるコンピュータであり、
図3に示すように、入力部52と出力部54と通信部56と記憶部58と制御部60とを含む。入力部52は、ユーザの操作を受け付ける装置であり、例えばマウス、キーボード、タッチパネルなどであってよい。出力部54は、情報を出力する装置であり、例えば画像を表示するディスプレイなどであってよい。通信部56は、外部の装置などと通信するモジュールであり、例えばアンテナなどを含んでよい。通信部56による通信方式は、任意であってよい。なお、第2処理装置50は、入力部52及び出力部54を有さなくてもよい。また、第2処理装置50は、単体の装置で構成してもよいし、他の装置と一体に構成してもよいし、演算装置及びデータサーバ等の各種装置を組み合わせたシステムとして構成してもよく、特に限定されない。第2処理装置50は、ベルトコンベア12が配置されたエリア内に配置される。
【0039】
記憶部58は、制御部60の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部58が保存する制御部60用のプログラムは、第2処理装置50が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0040】
制御部60は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部60は、取得部62と、異常有無判定部64と、出力制御部66とを含む。制御部60は、記憶部58からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、取得部62と異常有無判定部64と出力制御部66とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部60は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、取得部62と異常有無判定部64と出力制御部66との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0041】
以下、第2処理装置50の処理内容について説明する。
【0042】
(第1処理装置の処理結果の取得)
取得部62は、第1処理装置20が算出したベルトコンベア12の異常度を取得する。
【0043】
(異常の有無の判定)
異常有無判定部64は、取得部62が取得した異常度に基づいて、ベルトコンベア12の異常の有無を判定する。異常有無判定部64は、取得した異常度が所定の閾値以上である場合には、異常であると判定し、取得した異常度が所定の閾値よりも小さい場合には、異常でないと判定する。例えば第2処理装置50は、閾値が55である場合に、第1処理装置20が異常度を86と算出したら、異常があると判定する。また第2処理装置50は、閾値が40である場合に、第1処理装置20が異常度を5と算出したら、異常がないと判定する。
【0044】
上述のように、本実施形態では、第1処理装置20は、マイク18毎に異常度を算出する。取得部62は、マイク18毎の異常度を取得して、異常有無判定部64は、マイク18毎の異常度に基づいて、ベルトコンベア12の異常の有無を判定する。例えば、第1処理装置20は、マイク18毎の異常度に基づいて総合異常度を算出して、総合異常度が所定の閾値以上である場合には、異常であると判定し、総合異常度が所定の閾値よりも小さい場合には、異常でないと判定してよい。総合異常度は任意の方法で算出してよく、例えばマイク18毎の異常度の相加平均値であってよい。また例えば、異常有無判定部64は、それぞれのマイク18について、異常度に基づき、異常の有無を判定してよい。これにより、ベルトコンベア12の場所毎に、異常の有無を判定できる。
【0045】
(異常の有無の出力)
出力制御部66は、異常有無判定部64が判定した結果を、通信部56を介して管理端末70、携帯端末72、警告装置74の全部若しくは、いずれかに出力する。出力制御部66は、ベルトコンベア12の異常発生箇所に対応する位置に配置された警告装置74に警報を出力する。なお、出力制御部66は、異常有無判定部64が判定した結果を出力部54にも出力してもよい。
【0046】
管理端末70は、設備の管理やベルトコンベア12等を制御するコンピュータである。管理端末70は、作業者の操作に従って設備やベルトコンベア12等を制御する。管理端末70は、ベルトコンベア12の異常の有無を表示する。
【0047】
携帯端末72は、ベルトコンベア12を巡回する巡回者が携帯している端末である。携帯端末72は、例えばタブレット端末等である。携帯端末72は、ベルトコンベア12の異常の有無を表示する。携帯端末72は、ベルトコンベア12に異常がある場合には、音、メール機能やプッシュ通知機能などで通知してもよい。このように、携帯端末72に通知することで、巡回者に迅速にベルトコンベア12の異常を知らせることができ、異常の有無や異常発生箇所を適切に特定できる。
【0048】
警告装置74は、ベルトコンベア12の延在方向Xの異なる位置に複数設けられる。警告装置74は、例えばスピーカやランプである。警告装置74は、エリア毎に複数台設けられていることが好ましいが、各エリアに少なくとも1台設けられてもよい。複数の警告装置74のうち、ベルトコンベア12の異常発生箇所に対応する位置に配置された警告装置74は、巡回者に異常が発生していることを知らせる。これにより、携帯端末を携帯していない巡回者にもベルトコンベア12に異常が発生していることを報知できる。
【0049】
(処理フロー)
図4は、第1実施形態に係る異常検出システムの処理の一例を説明するフローチャートである。
【0050】
異常検出システム10は、マイク18で騒音データを取得し(ステップS10)、第1処理装置20で取得した騒音データの異常度を算出する(ステップS12)。そして、異常検出システム10は、第2処理装置50で異常度を取得して、異常度に基づいて異常の有無を判断する(ステップS14)。
【0051】
(効果)
第1実施形態に係る異常検出システム10によれば、点検員がベルトコンベア12を長距離移動して巡回することなく、ベルトコンベア12の騒音データを効率よく取得して、効率よく異常を検出できる。また、マイク18を固定して配置することで、マイク18の落下による故障や災害を防ぐことも可能となる。マイク18が有線で第1処理装置20に接続することで、より正確なベルトコンベア12の騒音データを取得できる。ベルトコンベア12に異常があった場合に、巡回者が携帯している携帯端末72に通知することで、巡回者が迅速にベルトコンベア12の異常を知ることができ、異常の有無や異常発生箇所を特定可能となる。さらに、警告装置を起動することで、携帯端末を携帯していない巡回者にもベルトコンベア12に異常があることを報知できる。
【0052】
(再学習)
ここで、時系列データを基準騒音データとする場合には、時間の経過に従い、学習モデル29による異常度の算出精度が低くなるおそれがある。そのため、本実施形態においては、異常であると判定された騒音データを教師データとして、機械学習済みの学習モデル29に、再学習(追加学習)させてよい。この場合例えば、第1処理装置20は、記憶部28に、第2処理装置50によって異常であると判定された騒音データと、その騒音データが異常である旨を示す指標(又はその騒音データについて算出された異常度)とを、記憶させておき、それらを読み出して、教師データとして学習モデル29に入力する。このように、学習モデル29を再学習させることで、異常の有無の判定精度が向上できる。
【0053】
[第2実施形態]
第2実施形態においては、第2処理装置50が、マイク18が検出した騒音データが誤検知であるかを判断する点が第1実施形態とは異なる。
【0054】
以下、第2処理装置50の処理内容について説明する。
【0055】
(第1処理装置の処理結果の取得)
取得部62は、第1実施形態と同様に、第1処理装置20が算出したベルトコンベア12の異常度を取得する。また、第2実施形態においては、取得部62は、騒音以外のベルトコンベア12の状態を示す状態情報を取得する。状態情報は、騒音データによる異常判定が誤検知であるかを判定するための情報(誤検知因子)である。状態情報としては、例えば駆動装置14(モータM)の制御信号、ベルトコンベア12の映像データや振動データ等が挙げられる。駆動装置14の制御信号は、モータMの起動・停止信号、モータMの回転数を制御する信号を含む。取得部62は、駆動装置14が回転数や負荷を検出するセンサを有していてもよく、センサが検出したベルトコンベア12の状態情報を取得してもよい。なお、ベルトコンベア12の状態を示す状態情報は、これらに限定されない。
【0056】
(異常の有無の判定)
異常有無判定部64は、取得部62が取得した第1処理装置20が算出した異常度とベルトコンベア12の状態情報とに基づいて、ベルトコンベア12の異常の有無を判定する。具体的には、異常有無判定部64は、異常度が所定の閾値以上であり、かつ、状態情報が、ベルトコンベア12が定常状態であることを示す定常条件を満たす場合には、ベルトコンベア12が異常であると判定する。また、異常有無判定部64は、異常度が所定の閾値以上であるが、状態情報が定常条件を満たさない場合には、ベルトコンベア12が異常でない、すなわち、騒音データによる異常判定は誤検知である、と判定する。なお、異常度が所定の閾値未満である場合は、第1実施形態と同様に異常でないと判定してよい。ただし例えば、異常度が所定の閾値未満であるが、状態情報が定常条件を満たさない場合には、ベルトコンベア12が異常である、すなわち、騒音データによる正常判定は誤検知である、と判定してもよい。
【0057】
なお、定常状態とは、ベルトコンベア12が定常運転されている状態を指す。また、定常条件は、予め設定されており、任意の基準で設定されてよい。例えば状態情報がモータMの起動・停止信号である場合、状態情報が停止信号である場合を、定常状態を満たさないと設定されてよい。同様に、状態情報がモータMの負荷・回転数である場合、定常条件は、定常負荷・回転数であり、状態情報が定常負荷・回転数でない場合には、定常条件を満たさないと設定されてよい。状態情報がカメラ映像である場合、定常条件は、マイク周辺のノイズ発生源(車両や機械)の有無であり、状態情報がノイズ発生源有りである場合には、定常条件を満たさないと設定されてよい。状態情報が振動センサである場合、定常条件は、振動データであり、状態情報が、振動データが基準値未満であることを示す場合に定常条件を満たさないと設定されてよい。
【0058】
(処理フロー)
図5は、第2実施形態に係る異常検出システムの処理の一例を示すフローチャートである。
【0059】
図5において、ステップS10及びステップS12は、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。第1処理装置20は、閾値以上の異常度があるかを判定し(ステップS16)、閾値以上の異常度がないと判定した場合(ステップS16;No)、ステップS10に戻り、マイク18でベルトコンベア12の騒音データを取得する。第1処理装置20は、閾値以上の異常度があると判定した場合(ステップS16;Yes)、第2処理装置に異常を検出したマイク18のマイクデータを第2処理装置50に送信する(ステップS18)。第2処理装置50は、ベルトコンベア12の状態情報を確認する(ステップS20)。そして、第2処理装置50は、状態情報が定常条件に該当するかを判定する(ステップS22)。第2処理装置50は、定常条件に該当しないと判定した場合(ステップS22;No)、誤検知と判断し(ステップS24)、ステップS10に戻り、第1処理装置20は、マイク18で騒音データを取得する。第2処理装置50は、定常条件に該当すると判定した場合(ステップS22;Yes)、異常と判断する(ステップS26)。
【0060】
(効果)
第2実施形態に係る異常検出システム10によれば、騒音データ以外のベルトコンベア12の状態情報を取得して、騒音データと状態情報との両方に基づき、ベルトコンベア12の異常を判定する。このため、例えば状態情報から、騒音データによる異常判定が誤検知であるかを判定でき、異常判定の精度を向上できる。
【0061】
[第3実施形態]
図6から
図9を用いて、第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態に係る第2処理装置の模式的なブロック図である。
図7は、エリアを拡大した模式図である。
図8は、第2処理装置の出力結果の表示の一例を示す図ある。
図9は、指向性マイクを説明する模式図である。第3実施形態において上記実施形態と同様の箇所は、詳細な説明を省略する。
【0062】
(異常発生箇所の推定)
図6に示すように、第3実施形態に係る第2処理装置50は、異常発生箇所推定部68を有する。異常発生箇所推定部68は、異常有無判定部64によって異常があると判定した場合に、異常発生箇所を推定する。異常発生箇所推定部68は、マイク18毎の異常度に基づいて、ベルトコンベア12の異常発生箇所を推定する。異常発生箇所推定部68は、マイク18毎の異常度とマイク18の位置とから、ベルトコンベア12の異常発生箇所を推定する。例えば、異常発生箇所推定部68は、マイクデータに基づき、異常度が閾値以上とされたマイク18の位置を把握して、そのマイク18の位置に対応するベルトコンベア12における位置を、異常発生箇所とする。また例えば、異常発生箇所推定部68は、異常度が閾値以上とされたマイク18が配置されたエリアを、異常発生箇所としてもよい。
【0063】
以下、異常発生箇所の推定の具体例を、説明する。
図7は、エリアA~Eと、エリアCに配置されたマイク18とを模式的に示している。
図7の例ではエリアAからエリアEの5つのエリアが示されているが、エリアは5つに限定されない。
【0064】
エリアCには、
図7の例では5つのマイク18が配置されており、それぞれのマイク18が異常度を検出する。なお、エリアCのほかのエリアにもマイク18が固定される。マイク18は、5台でなくてもよく、少なくとも2台以上固定されることが好ましいが、各エリアに1台は固定される。
【0065】
(異常発生箇所の推定)
異常発生箇所推定部68は、固定されたマイク18の異常度を隣接するマイク18毎に比較して、異常発生箇所を推定する。異常発生箇所推定部68は、マイク18の異常度が高いほど、そのマイク18が固定されている位置のベルトコンベア12の場所に異常が発生していると推定する。また、異常発生箇所推定部68は、エリア毎に異常発生箇所を推定する。異常発生箇所推定部68は、エリアの境の近傍に固定されたマイク18の異常度を比較することで、隣接するエリアに異常が発生しているかを推定できる。
【0066】
図7に示す例では、マイク18は、エリアB側から、第1処理装置20が判定した異常度が30、80、90、50、0となっている。この場合では、異常発生箇所推定部68は、エリアCのうちで、異常度が高いマイク18付近に異常が発生していると推定し、異常度が低いマイク18側では、異常が発生している可能性が低いと推定する。具体的には、エリアD側のマイク18は異常度が0であり、その隣のマイク18は、異常度が50である。このため、異常発生箇所推定部68は、ベルトコンベア12のエリアD側よりもエリアC側に異常があると推定する。異常発生箇所推定部68は、異常度が50のマイク18のさらにエリアC側のマイク18は、異常度が90であり、異常度が50のマイク18よりも異常度が高いため、異常があると推定する。このようして、第2処理装置50は、隣接するマイク18の異常度を比較していき、異常度が80及び90のマイク18が固定されているところに異常が発生していると推定する。
【0067】
また、
図7の例では、エリアD側のマイク18の異常度は0であり、エリアB側のマイク18の異常度は30である。この時、異常発生箇所推定部68は、エリアDに固定された図示しないマイク18のうち、エリアC側に固定されたマイク18の異常度が10である場合には、エリアDには異常が発生している可能性が低いと推定する。一方、異常発生箇所推定部68は、エリアBに固定された図示しないマイク18のうち、エリアC側に固定されたマイクの異常度が60である場合には、エリアBにも異常が発生していると推定する。
【0068】
図8は、
図7の例の第2処理装置50の異常の有無の判定結果を端末に出力して表示したものである。エリアB及びエリアCを除いたエリアは正常を示し、エリアB及びエリアCは異常が発生している可能性があることを示す。このようにして、第2処理装置50は、異常の有無を判定し、その結果を管理端末70や携帯端末72に出力する。なお、表示内容は一例であり、マイクデータやエリアのより具体的な位置、ベルトコンベア12の異常発生部分をも表示してもよい。また、端末を操作することで、より詳細な情報を表示してもよい。
【0069】
出力制御部66は、異常有無判定部64が判定した結果と異常発生箇所推定部68が推定した異常発生箇所を通信部56を介して管理端末70、携帯端末72及び警告装置74の全部若しくは、いずれかに出力する。出力制御部66は、ベルトコンベア12の異常発生箇所に対応する位置に配置された警告装置74に警報を出力する。なお、出力制御部66は、異常有無判定部64が判定した結果を出力部54にも出力してもよい。また出力制御部66は、ベルトコンベア12から異常が検出された場合には、巡回者が携帯している携帯端末72に異常時の対応ガイダンスを出力することが好ましい。携帯端末72に対応ガイダンスを出力することで、巡回者が適切に発生した異常に対応することができ、異常の悪化を防止できる。
【0070】
(指向性マイク)
図9に示すように、マイク18が指向性のある指向性マイク18Aである場合には、より具体的に異常が発生している可能性がある箇所を推定できる。指向性マイク18Aは、収音範囲SARの方向が変化するように向きが変化するように固定されることが好ましい。指向性マイク18Aは、上下方向や左右方向に向きが変化するように固定されることが好ましい。このようにすることで、屋内でも異常発生箇所をより適切に特定することができる。指向性マイク18Aの向きが変化するように固定することで、指向性マイク18Aの固定台数を減らすこともできる。この場合、指向性マイク18Aは、少なくとも1台固定されてもよい。指向性マイク18Aを用いることで、マイク18よりもベルトコンベア12の奥行方向(幅方向)の異常の有無を検出しやすくなる。指向性マイク18Aは、少なくとも2台以上固定する場合には、収音範囲SARが重なるような位置に固定されることが好ましい。これにより、例えばベルトコンベア12の収音範囲SARが重なった箇所に異常が発生している可能性があると特定しやすくなる。
【0071】
(効果)
第3実施形態に係る異常検出システム10によれば、マイク18毎の異常度とマイク18の位置とから、ベルトコンベア12の異常発生箇所を推定するため、ベルトコンベア12の異常をより好適に検出できる。
【0072】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態に係る異常検出システムの概略構成図である。第4実施形態において上記実施形態と同様の箇所は、詳細な説明を省略する。
【0073】
第4実施形態においては、騒音データ以外のベルトコンベア12の状態を検出するセンサ80を更に有する点が上記実施形態と異なる。また、第2処理装置50は、センサ80の検出結果も異常であると判断するという点で上記実施形態と異なる。さらに、第2処理装置50は、異常度に基づいて異常と判定し、センサ80の検出結果も異常であると判定した場合には、ベルトコンベア12を停止させるという点で上記実施形態と異なる。
【0074】
図10に示すように、異常検出システム10は、センサ80を更に有する。
【0075】
(センサ)
センサ80は、騒音以外のベルトコンベア12の状態を検出するセンサである。センサ80は、ネットワークNを介して、第2処理装置50に接続する。センサ80は、
図10に示す例では、画像センサ81や温度センサ82である。なお、センサ80は、画像センサ81と温度センサ82とに限定されず、任意のセンサであってよい。また、センサ80の数も2つに限られず、1つ以上であってよい。
【0076】
画像センサ81は、カメラであり、ベルトコンベア12の状態や周囲を常時撮影する。画像センサ81は、可視カメラや赤外線カメラであってもよい。画像センサ81は、ベルトコンベア12付近に設けられる。画像センサ81は、撮影したベルトコンベア12の映像データを第2処理装置50へ出力する。画像センサ81は、マイク18が固定されている箇所にマイク18と共に設けられていてもよい。
【0077】
温度センサ82は、ベルトコンベア12の温度を検出する。温度センサ82は、例えば駆動装置14やローラ16の温度を検出するものであり、駆動装置14やローラ16等の温度を検出可能な位置に設けられる。温度センサ82は、検出したベルトコンベア12の検出した温度データを第2処理装置50へ出力する。温度センサ82は、マイク18が固定されている箇所にマイク18と共に設けられていてもよい。
【0078】
(第2処理装置)
取得部62は、第1処理装置20が算出した異常度と共に、センサ80が検出したデータをも取得する。
【0079】
異常有無判定部64は、取得した異常度とセンサ80が検出したデータに基づいて、ベルトコンベア12に異常があるかを判定する。そして、異常有無判定部64は、異常度もセンサ80が検出したデータも異常があると判定した場合には、出力制御部66は、ベルトコンベア12を停止させる停止信号を発信する。ベルトコンベア12を停止する信号は、緊急停止させる信号である。これにより、ベルトコンベア12がすぐに停止し、異常に起因して発生するおそれのある被害を防止できる。
【0080】
(処理フロー)
図11は、第4実施形態に係る異常検出システムの処理の一例を説明するフローチャートである。
【0081】
図11において、ステップS10及びステップS12は、上記実施形態と同様なので、説明を省略する。第1処理装置20は、閾値以上の異常度があるかを判定し(ステップS16)、閾値以上の異常度がないと判定した場合(ステップS16;No)、ステップS10に戻り、マイク18でベルトコンベア12の騒音データを取得する。第1処理装置20は、閾値以上の異常度があると判定した場合(ステップS16;Yes)、第2処理装置50は、センサ80が検出したデータを確認し(ステップS30)、センサ80のデータも異常かを判定する(ステップS32)。第2処理装置50は、センサ80のデータも異常でないと判定した場合(ステップS32;No)、ベルトコンベア12に異常があると判断する(ステップS26)。第2処理装置50は、センサ80のデータも異常であると判定した場合(ステップS32;Yes)、モータM(ベルトコンベア12)を停止する信号を発信する(ステップS34)。
【0082】
(効果)
第4実施形態に係る異常検出システム10によれば、騒音以外のデータを検出するセンサを用いることで、騒音データ及び騒音以外の検出データからベルトコンベア12の異常を検出できるため、ベルトコンベア12の異常をより高精度に検出できる。また、異常検出システム10が騒音データもセンサ80が検出したデータも異常であると判定した場合、ベルトコンベア12を緊急停止させることで、異常な状態での運転継続を防止できる。
【0083】
[効果]
本開示の第1態様に係る異常検出システム10は、ベルトコンベア12の延在方向Xにおいてそれぞれ異なる位置に固定されて、ベルトコンベア12からの騒音を検出する複数のマイク18と、マイク18により検出されたベルトコンベア12からの騒音データを取得して、騒音データに基づいて、ベルトコンベア12の異常を判定する第1処理装置20と、を有し、第1処理装置20は、基準騒音データと、マイク18により検出された騒音データとに基づいて、ベルトコンベア12の異常度を算出する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、マイクを固定することで、ベルトコンベアへの落下や接触を防ぐことができ、それに伴う被害の防止にもつながる。
【0084】
本開示の第2態様に係る異常検出システム10は、第1態様に係る異常検出システム10であって、ベルトコンベア12は、設備内の複数のエリアに亘って掛けられ、第1処理装置20は、エリアごとに基準騒音データを異ならせて、ベルトコンベア12の異常度を算出する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、精度よく異常度を算出できる。
【0085】
本開示の第3態様に係る異常検出システム10は、第1態様又は第2態様に係る異常検出システム10であって、第1処理装置20が判定したベルトコンベア12の異常度を取得し、異常度に基づいて、ベルトコンベア12の異常の有無を判定する第2処理装置50を更に有する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。
【0086】
本開示の第4態様に係る異常検出システム10は、第3態様に係る異常検出システム10であって、第2処理装置50は、騒音以外のベルトコンベア12の状態を示す状態情報を取得し、異常度と状態情報とに基づいて、ベルトコンベア12の異常の有無を判定する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、誤検知を低減できる。
【0087】
本開示の第5態様に係る異常検出システム10は、第1態様から第4態様のいずれかに係る異常検出システム10であって、第2処理装置50は、異常度が所定の閾値以上であり、かつ、状態情報が、ベルトコンベア12が定常状態であることを示す定常条件を満たす場合には、ベルトコンベア12が異常であると判定し、異常度が所定の閾値以上であるが、状態情報が定常条件を満たさない場合には、ベルトコンベア12が異常でないと判定する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、誤検知を低減できる。
【0088】
本開示の第6態様に係る異常検出システム10は、第3態様から第5態様のいずれかに係る異常検出システム10であって、第1処理装置20は、マイク18毎に、異常度を算出し、第2処理装置50は、マイク18毎の異常度に基づいて、ベルトコンベア12の常発生箇所を推定する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、精度よく異常を検出することができる。
【0089】
本開示の第7態様に係る異常検出システム10は、第6態様に係る異常検出システム10であって、第2処理装置50は、マイク18毎の異常度とマイク18の位置とから、ベルトコンベア12の異常発生箇所を推定する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、精度よく異常を検出することができる。
【0090】
本開示の第8態様に係る異常検出システム10は、第6態様に係る異常検出システム10であって、マイク18は、収音範囲に指向性がある指向性マイク18Aであり、収音範囲の方向が変化するように向きが変化する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、精度よく異常を検出することができる。
【0091】
本開示の第9態様に係る異常検出システム10は、第6態様から第8態様のいずれかに係る異常検出システム10であって、ベルトコンベア12の延在方向Xの異なる位置に設けられる複数の警告装置74を更に有し、第2処理装置50は、異常発生箇所に対応する位置に配置された警告装置74に警報を出力させる。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、携帯端末を不携帯の巡回者にもベルトコンベアの異常を知らせることができる。
【0092】
本開示の第10態様に係る異常検出システム10は、第3態様に係る異常検出システム10であって、第1処理装置20は、第2処理装置50によって異常であると判定された際の異常度に対応する騒音データにより、異常度を算出する際に用いる基準騒音データを更新する。本開示によると、異常度の判定精度が向上する。
【0093】
本開示の第11態様に係る異常検出システム10は、第7態様から第10態様のいずれかに係る異常検出システム10であって、騒音以外のベルトコンベア12の状態を検出するセンサ80を更に有し、第2処理装置50は、異常度に基づいて異常と判定し、センサ80の検出結果も異常であると判定した場合には、ベルトコンベア12を停止させる。本開示によると、騒音以外の異常を検出することができる。また、異常によって発生するおそれのある被害を防ぐことができる。
【0094】
本開示の第12態様に係る異常検出方法は、ベルトコンベア12の延在方向Xにおいてそれぞれ異なる位置に固定された複数のマイク18により、ベルトコンベア12からの騒音を検出するステップと、マイク18により検出されたベルトコンベア12からの騒音データを取得して、騒音データに基づいて、ベルトコンベア12の異常を判定するステップと、を含み、ベルトコンベア12の異常を判定するステップにおいては、基準騒音データと、マイク18により検出された騒音データとに基づいて、ベルトコンベア12の異常度を算出する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、マイクを固定することで、ベルトコンベアへの落下や接触を防ぐことができ、それに伴う被害の防止にもつながる。
【0095】
本開示の第13態様に係るプログラムは、ベルトコンベア12の延在方向Xにおいてそれぞれ異なる位置に固定された複数のマイク18により、ベルトコンベア12からの騒音を検出するステップと、マイク18により検出されたベルトコンベア12からの騒音データを取得して、騒音データに基づいて、ベルトコンベア12の異常を判定するステップと、をコンピュータに実行させ、ベルトコンベア12の異常を判定するステップにおいては、基準騒音データと、マイク18により検出された騒音データとに基づいて、ベルトコンベア12の異常度を算出する。本開示によると、効率よく異常を検出することができる。また、マイクを固定することで、ベルトコンベアへの落下や接触を防ぐことができ、それに伴う被害の防止にもつながる。
【符号の説明】
【0096】
10 異常検出システム
12 ベルトコンベア
18 マイク
18A 指向性マイク
20 第1処理装置
34 学習部
36 異常度判定部
50 第2処理装置
64 異常有無判定部
68 異常発生箇所推定部
74 警告装置
80 センサ
X 延在方向