(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099386
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】プログラム、ユーザ端末、及び出力方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240718BHJP
B60C 23/06 20060101ALI20240718BHJP
B60C 11/24 20060101ALI20240718BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240718BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01M17/007 H
B60C23/06 D
B60C11/24 Z
B60C19/00 Z
B60C19/00 J
B60C19/00 H
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003297
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗野 光弘
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC55
3D131LA24
3D131LA34
(57)【要約】
【課題】一例として、コストップを抑制しつつ、車両に関する物理量に基づいて車両の状態を出力することができるプログラム、ユーザ端末、及び出力方法を提供する。
【解決手段】本開示の技術は、物理量センサを備えるユーザ端末が車両に対して固定された状態で前記物理量センサによって検出された前記車両に関する物理量を取得し、前記物理量に基づいて導出された前記車両の状態を出力する、ことを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量センサを備えるユーザ端末が車両に対して固定された状態で前記物理量センサによって検出された前記車両に関する物理量を取得し、
前記物理量に基づいて前記車両の状態を出力する、
ことを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記物理量センサは、加速度センサを含み、
前記物理量は、加速度を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記物理量センサは、角速度センサを含み、
前記物理量は、角速度を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記車両の状態は、前記車両に備えられたタイヤの状態を含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記タイヤの状態は、前記物理量に基づいて導出された前記車両のピッチ角及びロール角の少なくとも一方の角度に基づいて導出される
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記タイヤの状態は、前記タイヤの空気圧に関する状態を含む
請求項4に記載のプログラム。
【請求項7】
前記タイヤの状態は、前記タイヤの摩耗量に関する状態を含む
請求項4に記載のプログラム。
【請求項8】
前記タイヤの状態は、前記タイヤの劣化の度合に関する状態を含む
請求項4に記載のプログラム。
【請求項9】
前記処理は、前記ユーザ端末に備えられた測位ユニットによって前記車両の位置を検出することを含み、
前記タイヤの状態は、前記位置が既定位置にある場合に得られた前記角度と、前記既定位置に対応して予め定められた既定角度とに基づいて導出される
請求項5に記載のプログラム。
【請求項10】
前記処理は、前記ユーザ端末に備えられた測位ユニットによって前記車両の位置を検出することを含み、
前記タイヤの状態は、前記位置が既定位置にある場合に、前記車両が前記既定位置に移動するまでの移動区間で得られた前記角度の代表値と、前記既定位置に対応して予め定められた既定角度とに基づいて導出される
請求項5に記載のプログラム。
【請求項11】
前記処理は、前記ユーザ端末に備えられた測位ユニットによって前記車両の位置及び向きを検出することを含み、
前記タイヤの状態は、前記位置が既定位置にあり、かつ前記向きが既定向きである場合に得られた前記角度と、前記既定位置及び前記既定向きに対応して予め定められた既定角度とに基づいて導出される
請求項5に記載のプログラム。
【請求項12】
前記ユーザ端末は、スマートフォン又はタブレット端末である
請求項1に記載のプログラム。
【請求項13】
ユーザ端末であって、
前記ユーザ端末は、プロセッサ及び物理量センサを備え、
前記プロセッサは、
前記ユーザ端末が車両に対して固定された状態で前記物理量センサによって検出された前記車両に関する物理量を取得し、
前記物理量に基づいて前記車両の状態を出力する
ユーザ端末。
【請求項14】
物理量センサを備えるユーザ端末が車両に対して固定された状態で前記物理量センサによって検出された前記車両に関する物理量を取得すること、及び、
前記物理量に基づいて前記車両の状態を出力すること
を含む出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、プログラム、ユーザ端末、及び出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたセンサによって車両に関する物理量を検出し、検出された物理量に基づいて車両の状態を推定する技術が提案されている。このような技術に関する従来技術としては、次の技術が公知である。
【0003】
例えば、特許文1には、タイヤについての状態を検知するタイヤ状態検知装置の制御に関するトリガ信号を送信するためのトリガモジュールが開示されている。このトリガモジュールは、トリガ信号を送信する送信部と、タイヤ状態検知装置からの信号を受信する受信部と、携帯端末と通信可能に接続する外部接続部と、外部接続部を介した携帯端末との通信に応じて送信部及び受信部の少なくとも何れかに関する制御を行う制御部とを備える。このトリガモジュールによれば、利便性が向上するとされている。
【0004】
また、特許文献2には、車両を監視するシステムが開示されている。このシステムは、車両に設けられ、画像及び/又は音を取得する取得部と、車両に設けられ、車両の異常を検知する異常検知部と、を備え、異常検知部が異常を検知した時に、取得部の取得結果を車両に設けられた携帯情報端末と連動して車両の外部に送信する。このシステムによれば、製造コストを低減可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-094036号公報
【特許文献2】国際公開第2014/038575号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両に関する物理量を検出するための専用のセンサが車両に搭載される場合には、専用のセンサ自体のコストに加えて、専用のセンサを車両に取り付けるためのコストも必要であり、コストアップになる。ここで、特許文献1、2の技術が提案されているが、コストアップを抑制するには至っていない。
【0007】
本開示の技術は、上記課題に鑑みてなされたものであって、一例として、コストップを抑制しつつ、車両に関する物理量に基づいて車両の状態を出力することができるプログラム、ユーザ端末、及び出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の技術の第1態様は、物理量センサを備えるユーザ端末が車両に対して固定された状態で前記物理量センサによって検出された前記車両に関する物理量を取得し、前記物理量に基づいて前記車両の状態を出力する、ことを含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の技術の第2態様は、第1態様に係るプログラムにおいて、前記物理量センサは、加速度センサを含み、前記物理量は、加速度を含むプログラムである。
【0010】
本開示の技術の第3態様は、第1態様又は第2態様に係るプログラムにおいて、前記物理量センサは、角速度センサを含み、前記物理量は、角速度を含むプログラムである。
【0011】
本開示の技術の第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか一つの態様に係るプログラムにおいて、前記車両の状態は、前記車両に備えられたタイヤの状態を含むプログラムである。
【0012】
本開示の技術の第5態様は、第4態様に係るプログラムにおいて、前記タイヤの状態は、前記物理量に基づいて導出された前記車両のピッチ角及びロール角の少なくとも一方の角度に基づいて導出されるプログラムである。
【0013】
本開示の技術の第6態様は、第4態様又は第5態様に係るプログラムにおいて、前記タイヤの状態は、前記タイヤの空気圧に関する状態を含むプログラムである。
【0014】
本開示の技術の第7態様は、第4態様から第6態様のいずれか一つの態様に係るプログラムにおいて、前記タイヤの状態は、前記タイヤの摩耗量に関する状態を含むプログラムである。
【0015】
本開示の技術の第8態様は、第4態様から第7態様のいずれか一つの態様に係るプログラムにおいて、前記タイヤの状態は、前記タイヤの劣化の度合に関する状態を含むプログラムである。
【0016】
本開示の技術の第9態様は、第5態様に係るプログラムにおいて、前記処理は、前記ユーザ端末に備えられた測位ユニットによって前記車両の位置を検出することを含み、前記タイヤの状態は、前記位置が既定位置にある場合に得られた前記角度と、前記既定位置に対応して予め定められた既定角度とに基づいて導出されるプログラムである。
【0017】
本開示の技術の第10態様は、第5態様に係るプログラムにおいて、前記処理は、前記ユーザ端末に備えられた測位ユニットによって前記車両の位置を検出することを含み、前記タイヤの状態は、前記位置が既定位置にある場合に、前記車両が前記既定位置に移動するまでの移動区間で得られた前記角度の代表値と、前記既定位置に対応して予め定められた既定角度とに基づいて導出されるプログラムである。
【0018】
本開示の技術の第11態様は、第5態様に係るプログラムにおいて、前記処理は、前記ユーザ端末に備えられた測位ユニットによって前記車両の位置及び向きを検出することを含み、前記タイヤの状態は、前記位置が既定位置にあり、かつ前記向きが既定向きである場合に得られた前記角度と、前記既定位置及び前記既定向きに対応して予め定められた既定角度とに基づいて導出されるプログラムである。
【0019】
本開示の技術の第12態様は、第1態様から第11態様のいずれか一つの態様に係るプログラムにおいて、前記ユーザ端末は、スマートフォン又はタブレット端末であるプログラムである。
【0020】
本開示の技術の第13態様は、ユーザ端末であって、前記ユーザ端末は、プロセッサ及び物理量センサを備え、前記プロセッサは、前記ユーザ端末が車両に対して固定された状態で前記物理量センサによって検出された前記車両に関する物理量を取得し、前記物理量に基づいて前記車両の状態を出力するユーザ端末である。
【0021】
本開示の技術の第14態様は、物理量センサを備えるユーザ端末が車両に対して固定された状態で前記物理量センサによって検出された前記車両に関する物理量を取得すること、及び、前記物理量に基づいて前記車両の状態を出力することを含む出力方法である。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、一例として、コストップを抑制しつつ、車両に関する物理量に基づいて車両の状態を出力することができるプログラム、ユーザ端末、及び出力方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る推定システムを示す全体構成図である。
【
図2】本実施形態に係るサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るユーザ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る車両のロール角を示す背面図である。
【
図5】本実施形態に係る推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る車両のピッチ角を示す側面図である。
【
図7】変形例に係るユーザ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本開示の技術の一実施形態を説明する。
【0025】
図1には、本実施形態に係る推定システム10が示されている。推定システム10は、車両12に関する物理量を検出し、検出された物理量に基づいて車両12の状態を推定するシステムである。本実施形態では、車両12に関する物理量の一例として、車両12の横加速度及び上下加速度を検出する。また、車両12の状態の一例として、車両12に備えられたタイヤ14の状態を推定する。推定システム10は、ユーザ端末16及びサーバ18を備える。
【0026】
ユーザ端末16は、車両12に搭載された車載端末ではなく、ユーザ20が所持する端末である。ユーザ端末16は、例えば、スマートフォンである。車両12には、ユーザ端末16を固定するためのホルダ22が設けられている。ホルダ22は、例えば、車両12の室内に設けられたダッシュボード24の中央部に配置される。ユーザ20は、車両12を運転する際に、ユーザ端末16を車両12の室内に持ち込み、ユーザ端末16をホルダ22に固定する。ユーザ端末16は、ホルダ22に固定されることにより、車両12に対して固定される。
【0027】
ユーザ端末16は、ネットワーク26を介してサーバ18と通信可能に接続される。ネットワーク26は、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、又はイントラネットでもよく、これら以外の種類の通信ネットワークでもよい。サーバ18は、タイヤ14の状態を推定するためのアプリケーションプログラム28を格納しており、ユーザ端末16は、ネットワーク26を通じてアプリケーションプログラム28をサーバ18からダウンロードすることができるようになっている。
【0028】
図2には、本実施形態に係るサーバ18のハードウェア構成が示されている。サーバ18は、コンピュータ30及び通信I/F(Interface)32を備える。
【0029】
コンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)34、ROM(Read Only Memory)36、RAM(Random Access Memory)38、ストレージ40、及び入出力I/F42を備える。CPU34、ROM36、RAM38、ストレージ40、及び入出力I/F42は、バス44を介して相互に通信可能に接続されている。CPU34は、プロセッサを構成しており、ROM36、RAM38、及びストレージ40は、メモリを構成している。
【0030】
CPU34は、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。具体的には、CPU34は、ROM36又はストレージ40からプログラムを読み出し、RAM38を作業領域としてプログラムを実行する。CPU34は、ROM36又はストレージ40に記憶されているプログラムに従って、各部の制御及び各種の演算処理を行う。
【0031】
ROM36は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM38は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ40は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0032】
アプリケーションプログラム28は、一例として、ストレージ40に格納される。アプリケーションプログラム28は、本開示の技術に係るプログラムの一例であり、ストレージ40は、本開示の技術に係る記憶媒体の一例である。アプリケーションプログラム28は、1つのプログラムであってもよいし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群であってもよい。
【0033】
通信I/F32は、入出力I/F42に接続されている。通信I/F32は、ユーザ端末16を含む他の機器と通信するためのインタフェースである。通信I/F32には、例えば、ネットワーク26に対応する規格のインタフェースが用いられる。
【0034】
図3には、本実施形態に係るユーザ端末16のハードウェア構成が示されている。ユーザ端末16は、コンピュータ50、タッチパネル52、ディスプレイ54、スピーカ56、加速度センサ58、測位ユニット60、及び通信I/F62を備える。
【0035】
コンピュータ50は、サーバ18に備えられたコンピュータ30と同様のハードウェア構成である。具体的には、コンピュータ50は、CPU64、ROM66、RAM68、ストレージ70、及び入出力I/F72を備える。CPU64、ROM66、RAM68、ストレージ70、及び入出力I/F72は、バス74を介して相互に通信可能に接続されている。CPU64は、プロセッサを構成しており、ROM66、RAM68、及びストレージ70は、メモリを構成している。
【0036】
アプリケーションプログラム28は、一例として、ストレージ70に格納される。ストレージ70は、本開示の技術に係る記憶媒体の一例である。
【0037】
通信I/F62は、サーバ18に備えられた通信I/F32と同様のハードウェア構成である。タッチパネル52、ディスプレイ54、スピーカ56、加速度センサ58、測位ユニット60、及び通信I/F62は、入出力I/F72に接続されている。
【0038】
タッチパネル52は、ユーザ20によって入力された情報に応じたデータを出力する。ディスプレイ54は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイであり、CPU64によって処理されたデータを表示する。タッチパネル52は、ディスプレイ54と重ねて配置される。スピーカ56は、CPU64によって処理されたデータを音に変換して出力する。
【0039】
加速度センサ58は、加速度の一例として、ユーザ端末16の横方向に作用する横加速度と、ユーザ端末16に対して鉛直方向に作用する上下加速度とを検出し、検出した横加速度及び上下加速度に応じた加速度データを出力する。ユーザ端末16によって車両12の横加速度を正確に検出するためには、車両12の横方向がユーザ端末16の横方向と一致するように、ユーザ端末16が車両12に対して固定されることが望ましい。
【0040】
以下、便宜上、車両12の横方向がユーザ端末16の横方向と一致した状態で、ユーザ端末16が車両12に対して固定されていることを前提に説明する。ユーザ端末16によって検出される横加速度及び上下加速度は、本開示の技術に係る車両に関する物理量の一例である。また、加速度センサ58は、本開示の技術に係る物理量センサの一例である。
【0041】
測位ユニット60は、ユーザ端末16の位置を検出する装置である。ユーザ端末16の位置は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて検出される。GNSSの一例として、GPS(Global Positioning System)が用いられてもよい。
【0042】
測位ユニット60は、受信機(図示省略)を有する。受信機は、例えば、複数の衛星から送信された電波を受信する。測位ユニット60は、受信機で受信された電波に基づいてユーザ端末16の位置を検出し、検出した位置に応じた測位データ(例えば、緯度、経度、及び高度を示すデータ)を出力する。
【0043】
ユーザ端末16では、タイヤ14の状態を推定するためのアプリケーションが起動されると、CPU64によってアプリケーションプログラム28が実行される。CPU64は、アプリケーションプログラム28に従って、タイヤ14の状態を推定するための推定処理を実行する。推定処理は、本開示の技術に係る処理の一例である。推定処理は、CPU64がアプリケーションプログラム28に従って、取得部80、判定部82、推定部84、及び出力部86として動作することで実現される。
【0044】
取得部80は、ユーザ端末16が車両12に対して固定された状態で加速度センサ58によって検出された車両12の横加速度及び上下加速度を取得する。また、取得部80は、測位ユニット60によって検出された車両12の位置を取得する。取得部80によって取得された車両12の横加速度及び上下加速度は、取得部80によって取得された車両12の位置と対応付けられた状態でRAM68に記憶される。
【0045】
判定部82は、取得部80によって車両12の位置が取得される度に、車両12の位置と、タイヤ14の状態を推定する位置として予め定められた既定位置とを比較し、車両12の位置が既定位置にあるか否かを判定する。車両12の位置は、例えば、緯度、経度、及び高度によって規定される。既定位置は任意に設定可能である。車両12の位置が既定位置にない(すなわち、車両12が既定位置に到達していない)と判定部82によって判定された場合には、取得部80によって、車両12の横加速度、上下加速度、及び位置が再び取得される。
【0046】
推定部84は、車両12の位置が既定位置にある(すなわち、車両12が既定位置に到達した)と判定部82によって判定された場合には、次のように動作する。
【0047】
先ず、推定部84は、RAM68に記憶された車両12の横加速度及び上下加速度から、車両12が既定位置に移動するまでの一定の移動区間(以下、単に「一定の移動区間」とも称する)で得られた車両12の横加速度及び上下加速度を抽出する。一定の移動区間の長さは、任意に設定可能である。例えば、一定の移動区間の長さは、数メートルから数百メートルに設定される。一定の移動区間では、傾斜する道路によって車両が傾かないように道路が水平であってもよい。また、一定の移動区間では、車両に遠心力が作用することによって車両が傾かないように道路が直線であってもよい。
【0048】
続いて、推定部84は、抽出した横加速度及び上下加速度に基づいて、車両12のロール角α(
図4参照)を算出する。ロール角αは、以下の式(1)によって算出される。推定部84は、一定の移動区間内の複数の位置についてロール角αをそれぞれ算出し、ロール角αの平均値を算出する。ただし、a
Lは、横加速度であり、a
Vは、上下加速度である。ロール角αは、本開示の技術に係る角度の一例であり、平均値は、本開示の技術に係る代表値の一例である。また、算出することは、本開示の技術に係る導出することの一例である。
α=arctan(a
L/a
V)・・・(1)
【0049】
ストレージ70には、既定位置に対応して予め定められた既定ロール角α1、α2が予め記憶されている。既定ロール角α1、α2は、タイヤ14の状態が正常である場合に既定位置で得られた車両12のロール角である。タイヤ14の状態が正常であるとは、例えば、タイヤ14が新品であり、かつタイヤ14の空気圧が規定値である状態のことである。一例として、既定ロール角α1は、一定の移動区間で得られたロール角の平均値に対して2σを加算したロール角であり、既定ロール角α2は、一定の移動区間で得られたロール角の平均値に対して2σを減算したロール角である。ここでは、2σとしたが、3σ等としてもよい。σは標準偏差である。既定ロール角α1、α2は、本開示の技術に係る既定角度の一例である。
【0050】
続いて、推定部84は、ロール角αの平均値と、既定ロール角α1、α2とを比較する。そして、推定部84は、比較した結果に基づいて、タイヤ14の状態の一例として、タイヤ14の空気圧に関する状態を推定する。具体的には、推定部84は、ロール角αの平均値が既定ロール角α2以上既定ロール角α1以下である場合には、タイヤ14の空気圧が正常であると推定する。一方、推定部84は、ロール角αの平均値が既定ロール角α1を上回っているか、又は、ロール角αの平均値が既定ロール角α2を下回っている場合には、タイヤ14の空気圧が異常であると推定する。推定することは、本開示の技術に係る導出することの一例である。
【0051】
なお、推定部84は、タイヤ14の空気圧が異常であると推定した場合、ロール角αに基づいて車両12が傾斜する方向を特定し、車両12に備えられた複数のタイヤ14のうち車両12が傾斜する方向のタイヤ14の空気圧に異常があると推定してもよい。また、推定部84は、ロール角αの平均値が既定ロール角α2を下回っている場合にのみ、タイヤ14の空気圧が異常であると推定してもよい。
【0052】
出力部86は、推定部84によって推定された推定結果を示すデータをディスプレイ54及びスピーカ56に出力する。これにより、ディスプレイ54に推定結果を示す画像が表示され、スピーカ56から推定結果を示す音が出力される。
【0053】
なお、出力部86は、タイヤ14の空気圧が正常である場合には、推定結果を示すデータをディスプレイ54及びスピーカ56に出力せずに、タイヤ14の空気圧が異常である場合にのみ、推定結果を示すデータをディスプレイ54及びスピーカ56に出力してもよい。また、出力部86は、推定結果を示すデータをディスプレイ54及びスピーカ56のいずれか一方にのみ出力してもよい。
【0054】
次に、本実施形態に係る推定方法について説明する。
【0055】
図5には、本実施形態に係る推定処理の流れが示されている。先ず、ステップST10で、取得部80は、ユーザ端末16が車両12に対して固定された状態で加速度センサ58によって検出された車両12の横加速度及び上下加速度を取得する。また、取得部80は、測位ユニット60によって検出された車両12の位置を取得する。
【0056】
次いで、ステップST12で、判定部82は、車両12の位置と、タイヤ14の状態を推定する位置として予め定められた既定位置とを比較し、車両12の位置が既定位置にあるか否かを判定する。車両12の位置が既定位置にない(すなわち、車両12が既定位置に到達していない)と判定部82によって判定された場合には、推定処理はステップST10に移行する。一方、車両12の位置が既定位置にある(すなわち、車両12が既定位置に到達した)と判定部82によって判定された場合には、推定処理はステップST14に移行する。
【0057】
ステップST14で、推定部84は、一定の移動区間内の複数の位置についてロール角αをそれぞれ算出し、ロール角αの平均値を算出する。そして、推定部84は、ロール角αの平均値と、予め定められた既定ロール角α1、α2とを比較した結果に基づいて、タイヤ14の状態の一例として、タイヤ14の空気圧に関する状態を推定する。
【0058】
次いで、ステップST16で、出力部86は、推定部84によって推定された推定結果を示すデータをディスプレイ54及びスピーカ56に出力する。これにより、ディスプレイ54に推定結果を示す画像が表示され、スピーカ56から推定結果を示す音が出力される。
【0059】
次いで、ステップST18で、CPU64は、ユーザ20からタッチパネル52に対してアプリケーションを終了する旨の終了指示があったか否かを判定する。終了指示がない場合には、推定処理はステップST10に移行する。一方、終了指示があった場合には、推定処理は終了する。なお、推定方法は、本開示の技術に係る出力方法の一例である。
【0060】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0061】
以上詳述した通り、本実施形態では、ユーザ端末16が車両12に対して固定された状態で、ユーザ端末16に備えられた加速度センサ58によって車両12の横加速度及び上下加速度が検出される。そして、車両12の横加速度及び上下加速度に基づいて、タイヤ14の状態が推定され、推定結果が出力される。したがって、車両12の横加速度及び上下加速度を検出するための専用の加速度センサを車両12に搭載しなくて済むので、コストップを抑制しつつ、タイヤ14の状態を出力することができる。
【0062】
また、昨今、タイヤ14の状態を検出する専用のセンサを備えた車両12が増えつつあるが、本実施形態では、ユーザ端末16によってタイヤ14の状態が推定されるので、専用のセンサを備えていない車両12に対しても、ユーザ端末16を車両12の室内に持ち込むことで、タイヤ14の状態を推定することができる。
【0063】
また、加速度センサ58によって車両12の横加速度及び上下加速度が検出され、検出された車両12の横加速度及び上下加速度に基づいて、タイヤ14の状態が推定されるので、複雑な計算式を用いずに、タイヤ14の状態を推定することができる。これにより、アプリケーションプログラム28のコストアップも抑制することができる。
【0064】
また、車両12の横加速度及び上下加速度に基づいて車両12のロール角αが算出され、算出されたロール角αに基づいてタイヤ14の状態が推定される。ここで、車両12への入力荷重が同じでも、タイヤ14の状態が変化すれば、タイヤ14の特性は変わる。また、タイヤ14の特性が変化すれば、車両12の挙動は変化する。したがって、車両12の挙動を示すロール角αに基づいてタイヤ14の状態を推定することにより、タイヤ14の状態を精度よく推定することができる。
【0065】
また、タイヤ14の状態の一例として、タイヤ14の空気圧に関する状態が推定され、推定結果が出力される。これにより、ユーザ20に対して、タイヤ14の空気圧が正常であるか又は異常であるかを知らせることができる。
【0066】
また、車両12の位置が予め定められた既定位置にある場合に、車両12が既定位置に移動するまでの一定の移動区間で得られたロール角αの平均値が算出される。そして、算出されたロール角αの平均値と、既定位置に対応して予め定められた既定ロール角α1、α2とが比較されることにより、タイヤ14の状態が推定される。したがって、ロール角αの平均値が得られる位置と、既定ロール角α1、α2が定められた位置とが同じであるので、ロール角αの平均値と既定ロール角α1、α2とで車両12に入力される入力荷重の条件(すなわち、道路の傾斜角度等の条件)を揃えることができる。これにより、車両12への入力荷重の影響を排除しつつ、タイヤ14の状態に応じてロール角αが変化するようになるので、推定精度を向上させることができる。
【0067】
また、既定位置においてタイヤ14の状態が推定される場合に、車両12が既定位置に移動するまでの一定の移動区間で得られたロール角αの平均値が用いられるので、例えば、ロール角αの瞬間値が用いられる場合に比して、推定精度を向上させることができる。
【0068】
また、ユーザ端末16は、例えば、スマートフォンである。したがって、昨今、所有率が高まっているスマートフォンを用いることにより、タイヤ14の状態を手軽に推定することができる。
【0069】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0070】
上記実施形態において、ユーザ端末16は、一例として、スマートフォンであるが、例えば、車両12に対して固定できる端末機器であれば、タブレット端末又はウェアラブル端末などのスマートフォン以外の端末機器でもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、ユーザ端末16は、ダッシュボード24に固定されるが、車両12に対して固定されるのであれば、ダッシュボード24以外の場所に固定されてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、加速度センサ58が用いられているが、加速度以外の車両12に関する物理量を検出する物理量センサが用いられてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、加速度センサ58によって検出された車両12の横加速度及び上下加速度に基づいて、車両12のロール角αが算出されるが、加速度センサ58によって検出された車両12の前後加速度及び上下加速度に基づいて、車両12のピッチ角β(
図6参照)が算出されてもよい。そして、車両12のピッチ角βに基づいてタイヤ14の空気圧に関する状態が推定されてもよい。
【0074】
さらに、加速度センサ58によって検出された車両12の横加速度、前後加速度、及び上下加速度に基づいて、車両12のロール角α及びピッチ角βが算出され、車両12のロール角α及びピッチ角βに基づいてタイヤ14の空気圧に関する状態が推定されてもよい。また、タイヤ14の空気圧が異常であると推定される場合に、ロール角α及びピッチ角βに基づいて車両12が傾斜する方向を特定し、車両12に備えられた複数のタイヤ14のうち車両12が傾斜する方向のタイヤ14の空気圧に異常があると推定してもよい。
【0075】
また、加速度センサ58の代わりに、角速度センサ78(
図7参照)が用いられてもよい。そして、角速度センサ78によって車両12の横方向の角速度が検出され、検出された車両12の横方向の角速度が積分されることによって車両12のロール角αが算出されてもよい。また、角速度センサ78によって車両12の前後方向の角速度が検出され、検出された車両12の前後方向の角速度が積分されることによって車両12のピッチ角βが算出されてもよい。また、加速度センサ58及び角速度センサ78の両方を用いてロール角α又はピッチ角βが算出されてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、タイヤ14の状態の一例として、タイヤ14の空気圧に関する状態が推定されるが、タイヤ14の摩耗量に関する状態、又はタイヤ14の劣化の度合に関する状態が推定されてもよい。また、タイヤ14の空気圧に関する状態、タイヤ14の摩耗量に関する状態、及びタイヤ14の劣化の度合に関する状態の少なくとも一つの状態が推定されてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、タイヤ14の状態が推定されるが、タイヤ14の状態以外の車両12の状態が推定されてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、車両12が既定位置に移動するまでの一定の移動区間で得られた車両12の横加速度及び上下加速度に基づいて、ロール角αの平均値が算出されるが、車両12の位置が既定位置にある場合のロール角αが用いられてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、ロール角αの代表値の一例として、ロール角αの平均値が用いられるが、ロール角αの最大値、最小値、又は中心値が用いられてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、車両12の位置が既定位置にある場合に、タイヤ14の状態が推定されるが、ユーザ端末16に備えられた測位ユニット60によって車両12の向きが検出され、車両12の位置が既定位置にあり、かつ車両12の向きが既定向きである場合に、タイヤ14の状態が推定されてもよい。また、この場合に、車両12の位置が既定位置にあり、かつ車両12の向きが既定向きである場合に得られたロール角αと、既定位置及び既定向きに対応して予め定められた既定ロール角α1、α2とに基づいて、タイヤ14の状態が推定されてもよい。
【0081】
また、ユーザ端末16に備えられた測位ユニット60によって車両12の速度が検出され、車両12の位置が既定位置にあり、かつ車両12の速度が既定速度である場合に、タイヤ14の状態が推定されてもよい。また、この場合に、車両12の位置が既定位置にあり、かつ車両12の速度が既定速度である場合に得られたロール角αと、既定位置及び既定速度に対応して予め定められた既定ロール角α1、α2とに基づいて、タイヤ14の状態が推定されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、CPU64がプログラムを読み込んで実行した各種処理を、CPU64以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、推定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0083】
また、上記各実施形態では、アプリケーションプログラム28がストレージ40又はストレージ70に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。アプリケーションプログラム28は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、アプリケーションプログラム28は、ネットワーク26を介してサーバ18からユーザ端末16以外の他の機器にダウンロードされてもよい。
【0084】
また、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜組み合わされて実施されてもよい。
【0085】
以上、本実施形態について説明したが、本開示の技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
10 推定システム
12 車両
14 タイヤ
16 ユーザ端末
18 サーバ
20 ユーザ
22 ホルダ
24 ダッシュボード
26 ネットワーク
28 アプリケーションプログラム
30 コンピュータ
32 通信I/F
34 CPU
36 ROM
38 RAM
40 ストレージ
42 入出力I/F
44 バス
50 コンピュータ
52 タッチパネル
54 ディスプレイ
56 スピーカ
58 加速度センサ
60 測位ユニット
62 通信I/F
64 CPU
66 ROM
68 RAM
70 ストレージ
72 入出力I/F
74 バス
78 角速度センサ
80 取得部
82 判定部
84 推定部
86 出力部
α ロール角
β ピッチ角