(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099390
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】連続鋳造用ノズル
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20240718BHJP
B22D 41/58 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B22D11/10 320D
B22D41/58
B22D11/10 360C
B22D11/10 310P
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003307
(22)【出願日】2023-01-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】倉田 恭太郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 純
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004FA00
4E004HA02
(57)【要約】
【課題】ストッパーに嵌合する条件で使用される外挿式の連続鋳造用ノズルにおいて、貫通孔から吐出するガスの吐出量が低下することを抑制する。
【解決手段】溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーBの下方に位置してストッパーBと嵌合すると共に溶鋼容器の外側から着脱される外挿式の連続鋳造用ノズルAであって、溶鋼が通過する内孔11を上下方向に有する耐火物からなるノズル本体1を備える。ノズル本体1は、ストッパーBと嵌合する嵌合部121を含むと共に内孔11の径がノズル本体1の上端に向けて拡大する拡径部12と、拡径部12の下端から下方に向けて連続すると共に内孔11がストレート状であるストレート部13とを一体的に有する。ガスプール14をストレート部13にのみ設け、ガスプール14と連通し拡径部12からガスを吐出する貫通孔15をノズル本体1に設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合すると共に溶鋼容器の外側から着脱される外挿式の連続鋳造用ノズルであって、
溶鋼が通過する内孔を上下方向に有する耐火物からなるノズル本体を備え、
前記ノズル本体は、前記ストッパーと嵌合する嵌合部を含むと共に前記内孔の径が前記ノズル本体の上端に向けて拡大する拡径部と、前記拡径部の下端から下方に向けて連続すると共に前記内孔がストレート状であるストレート部とを一体的に有し、
ガスプールを前記ストレート部にのみ設け、
前記ガスプールと連通し前記拡径部からガスを吐出する貫通孔を前記ノズル本体に設けている、連続鋳造用ノズル。
【請求項2】
前記ガスプールの上端が、前記ストレート部の上端を基準として下方の10mm以上100mm以下の範囲内にある、請求項1に記載の連続鋳造用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の連続鋳造において、タンディッシュなどの溶鋼容器から溶鋼を排出する際の流量制御を行うストッパーに嵌合する連続鋳造用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の連続鋳造において、ストッパーと連続鋳造用ノズルのノズル本体との嵌合部を含む嵌合領域には、アルミナ等の介在物が付着して流量制御が困難になることがある。このような嵌合領域への介在物付着防止対策として、例えば特許文献1には、ノズル本体に設けたガスプールと連通する貫通孔から嵌合領域へガスを吐出する貫通孔式の連続鋳造用ノズルが開示されている。
【0003】
ところで、連続鋳造用ノズルは、タンディッシュなどの溶鋼容器への着脱方式において例えば特許文献2の段落0003にも示されているように、溶鋼容器の外側から着脱する「外挿式」と、溶鋼容器の内側から着脱する「内挿式」と大別される。「外挿式」の場合、溶鋼容器の外側から着脱できるようにするため、ノズル本体はその外径が上方に向かうにつれて縮小する形状を有し、「内挿式」の場合、溶鋼容器の内側から着脱できるようにするため、ノズル本体はその外径が下方に向かうにつれて縮小する形状を有する。すなわち、特許文献1に開示されている連続鋳造用ノズルは「内挿式」である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-146702号公報
【特許文献2】特開平10-305357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、外挿式の連続鋳造用ノズルにおいてノズル本体にガスプールと貫通孔を設け、ストッパーに嵌合する条件で試験を重ねたところ、貫通孔から吐出するガスの吐出量が低下する現象が散見された。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ストッパーに嵌合する条件で使用される外挿式の連続鋳造用ノズルにおいて、貫通孔から吐出するガスの吐出量が低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、貫通孔から吐出するガスの吐出量が低下する現象の見られた連続鋳造用ノズルを回収しその断面等を調査したところ、ストッパーとの嵌合部を含むノズル本体上部に亀裂の発生が見られ、この亀裂が貫通孔又はガスプールにつながることでガス漏れが生じ、結果としてガスの背圧が低下しガスの吐出量が低下する現象が発生することがわかった。また、このような現象は「外挿式」の場合に特に発生しやすいこともわかった。すなわち「外挿式」の場合、ノズル本体はその外径が上方に向かうにつれて縮小する形状を有するため、ストッパーとの嵌合部を含むノズル本体上部では耐火物の厚みが特に薄くなり、その結果、亀裂が発生しやすくなる。
【0008】
このような現状分析に基づき本発明者らは、上記課題を解決するためには、ガスプールをストッパーとの嵌合部を含むノズル本体上部(後述する「拡径部」)には設けず、その下方(後述する「ストレート部」)にのみ設けることが有効であるとの知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一観点によれば次の連続鋳造用ノズルが提供される。
溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合すると共に溶鋼容器の外側から着脱される外挿式の連続鋳造用ノズルであって、
溶鋼が通過する内孔を上下方向に有する耐火物からなるノズル本体を備え、
前記ノズル本体は、前記ストッパーと嵌合する嵌合部を含むと共に前記内孔の径が前記ノズル本体の上端に向けて拡大する拡径部と、前記拡径部の下端から下方に向けて連続すると共に前記内孔がストレート状であるストレート部とを一体的に有し、ガスプールを前記ストレート部にのみ設け、
前記ガスプールと連通し前記拡径部からガスを吐出する貫通孔を前記ノズル本体に設けている、連続鋳造用ノズル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ストッパーに嵌合する条件で使用される外挿式の連続鋳造用ノズルにおいて、貫通孔から吐出するガスの吐出量が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である連続鋳造用ノズルの上下方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明の一実施形態である連続鋳造用ノズルを上下方向断面によって示している。同図に示す連続鋳造用ノズルAは、溶鋼容器であるタンディッシュの外側(下側)から着脱される外挿式の上ノズルであり、溶鋼の連続鋳造においてタンディッシュから鋳型に溶鋼を排出する際の流量制御を行うストッパーBに嵌合するものである。
【0013】
この上ノズルAは、耐火物からなるノズル本体1を備え、ノズル本体1は溶鋼通過経路である内孔11を上下方向に有する。ここで、上下方向とは内孔11の中心軸111に沿った方向のことをいい、上下方向断面とは内孔11の中心軸111に沿った断面のことをいう。
【0014】
上ノズルAにおいてノズル本体1は、拡径部12とストレート部13とを一体的に有する。すなわち、拡径部12及びストレート部13は耐火物の一体成形により一体的に形成されている。このうち拡径部12は、ストッパーBと嵌合する嵌合部121を含み、内孔11の径がノズル本体1の上端に向けて拡大する形状を有する。またストレート部13は、拡径部12の下端122から下方に向けて連続しており、内孔11がストレート状の形状となっている。ここで、内孔11がストレート状とは、上下方向断面において内孔11が直線によって画定される形状のことをいい、必ずしも内孔11の径が一定であることを要しない。例えば、内孔11を形成する際、一般的に芯棒を使用して成形し成形後、芯棒を引き抜くところ、この芯棒の引抜を容易にするために芯棒を下方に向けて拡径するテーパー形状とすることがあり、その場合、内孔11の径も下方に向けてテーパー状(直線的)に拡大するが、このような形状もストレート状という。一方、拡径部12では、上下方向断面において内孔11が曲線によって画定されている。したがって、ノズル本体1において拡径部12とストレート部13とは明確に区別することができる。
【0015】
ここで、上ノズルAは「外挿式」であるため、ノズル本体1はその外径が上方に向かうにつれて縮小するいわゆるテーパー状の形状を有する。そのため、ノズル本体1の上部である拡径部12では、耐火物の厚みが上方に向かうにつれて特に薄くなっている。
【0016】
一方、ストレート部13にはガスプール14が設けられている。より正確に説明すると、ガスプール14はストレート部13にのみ設けられ、拡径部12には設けられていない。上述の通り拡径部12では、耐火物の厚みが上方に向かうにつれて特に薄くなっているからである。すなわち上ノズルAでは、空隙であり亀裂発生の起点となり得るガスプール14をストレート部13にのみ設け、耐火物の厚みの薄い拡径部13には設けないことで、拡径部12に亀裂が発生することを抑制することができる。他の観点からいうと上ノズルAでは、拡径部13にガスプール14が存在しないことから拡径部13の構造強度が高くなり、その結果、拡径部13に亀裂が発生することを抑制することができる。
なお、上ノズルAにおいてガスプール14は、内孔11を囲むようにノズル本体1の周方向の全周にわたって設けているが、必ずしも全周にわたって設ける必要はなく周方向の一部に設けてもよい。
【0017】
ノズル本体1には、ガスプール14と連通し拡径部12からガスを吐出する貫通孔15が設けられている。本実施形態において貫通孔15は、ノズル本体1の周方向に沿って等間隔に複数設けている。またノズル本体1には、ガスプール14と連通しガスプール14へガスを導入するガス導入孔16が設けられている。
【0018】
以上の構成を有する上ノズルAにおいてガスは、ガス導入孔16からガスプール14へ導入され、貫通孔15を経由して拡径部12から溶鋼内へ吐出される。このとき上ノズルAでは上述の通り、空隙であり亀裂発生の起点となり得るガスプール14をストレート部13にのみ設け、耐火物の厚みの薄い拡径部12には設けていないことから拡径部12に亀裂が発生することを抑制することができる。これにより、ガスの背圧が低下し貫通孔15から吐出するガスの吐出量が低下することを抑制することができる。
【0019】
ここで、ガスプール14の上端141は、ストレート部13の上端131を基準として下方の10mm以上100mm以下の範囲内にあることが好ましい。ガスプール14の上端141がストレート部13の上端131を基準として下方の10mm以上の位置にあることで、空隙であり亀裂発生の起点となり得るガスプール14の拡径部12への影響が軽減され、拡径部12に亀裂が発生することを更に抑制することができる。また、ガスプール14の上端141がストレート部13の上端131を基準として下方の100mm以下の位置にあることで、貫通孔15の長さを短くすることができ、これにより貫通孔15の形成が容易となると共に貫通孔15の圧力損失を軽減することができる。
なお、ストレート部13の上端131は、拡径部12の下端122でもあり、言い換えると拡径部12とストレート部13の境界である。
【実施例0020】
本発明の実施例として
図1に示した上ノズルAを実操業(溶鋼の連続鋳造)に供した。また比較例として、
図2に示す上ノズルA’も実操業に供した。この比較例の上ノズルA’は実施例の上ノズルAにおいてガスプール14の上端141を拡径部12まで伸ばしたもので、それ以外の構成は実施例の上ノズルAと同じである。なお、実施例の上ノズルAにおいてガスプール14は、その上端141がストレート部13の上端131から下方へ35mmの位置となるように設けた。
【0021】
実操業中、実施例の上ノズルA及び比較例の上ノズルA’においてそれぞれ、ガスの背圧及び吐出量を監視したところ、実施例の上ノズルAでは背圧及び吐出量の低下は見られなかった。一方、比較例の上ノズルA’では背圧及び吐出量の低下が見られた。また、実操業終了後、各上ノズルA,A’を回収して断面観察を行ったところ、実施例の上ノズルAでは亀裂の発生は見られなかった。一方、比較例の上ノズルA’では
図2に概念的に示しているように、ガスプール14を跨ぐような亀裂Cの発生が見られた、このような亀裂の発生が背圧及び吐出量の低下の原因であると考えられる。
溶鋼の連続鋳造において溶鋼の流量を制御するストッパーの下方に位置して前記ストッパーと嵌合すると共に溶鋼容器の外側から着脱される外挿式の連続鋳造用ノズルであって、
溶鋼が通過する内孔を上下方向に有する耐火物からなるノズル本体を備え、
前記ノズル本体は、前記内孔の径が前記ノズル本体の上端に向けて拡大する拡径部と、前記拡径部の下端から下方に向けて連続すると共に前記内孔がストレート状であるストレート部とを一体的に有し、
前記拡径部は、前記ストッパーと接触する嵌合部を含み、
ガスプールを前記ストレート部にのみ設け、
前記ガスプールと連通し前記拡径部から前記内孔の方向にガスを吐出する貫通孔を前記ノズル本体に設けている、連続鋳造用ノズル。