(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099392
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】メタン製造装置及びメタン製造方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/113 20060101AFI20240718BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240718BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20240718BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20240718BHJP
C12P 5/02 20060101ALI20240718BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C12M1/113
B01D53/22
B01D53/02
C10L3/08
C12P5/02
C12M1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003309
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松林 未理
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 一将
(72)【発明者】
【氏名】高橋 惇太
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4D006
4D012
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029DB11
4B029DF07
4B064AB03
4B064CA01
4B064CC15
4B064CD01
4B064DA16
4D006GA41
4D006MA21
4D006PB18
4D006PB64
4D006PC80
4D012BA02
4D012BA03
4D012BA04
4D012CA03
4D012CA07
4D012CA20
4D012CB16
4D012CB17
4D012CG01
(57)【要約】
【課題】水素の液体への溶解を促進して効率良くメタンを生成でき、水素の装置外部への流出を抑制しながら装置内の圧力を適切に調整可能なメタン製造装置及びメタン製造方法を提供する。
【解決手段】液相部11と液相部11の上方に気相部12とを備え、微生物を用いたメタネーション反応により二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させる反応部1と、液相部11内に水素と二酸化炭素とを流入させるガス流入部3と、液相部11内の水素を含むガスを収集するガス収集部4と、ガス収集部4内の水素を含むガスを回収し液相部11へ循環させるガス循環部5とを備えるメタン製造装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相部と前記液相部の上方に気相部とを備え、微生物を用いたメタネーション反応により二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させる反応部と、
前記液相部内に水素と二酸化炭素とを流入させるガス流入部と、
前記液相部内の水素を含むガスを収集するガス収集部と、
前記ガス収集部内の前記水素を含むガスを回収し前記液相部へ循環させるガス循環部と
を備えることを特徴とするメタン製造装置。
【請求項2】
前記ガス循環部のガス圧力を検出可能な圧力検出部と、
前記ガス圧力の検出結果が予め定められた基準圧力を下回る場合に、前記気相部に収容されたメタンを含むガスを回収し、回収したガスを前記ガス循環部へ供給するガス回収部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のメタン製造装置。
【請求項3】
前記ガス回収部と前記ガス循環部とに接続された切替部と、
前記ガス循環部のガス圧力が前記基準圧力を下回る場合は、前記ガス収集部内の前記水素を含むガスと前記気相部に収容されたメタンを含むガスとを前記液相部に循環させるように前記切替部を制御し、前記ガス循環部のガス圧力が前記基準圧力を上回る場合は、前記ガス循環部のガス圧力が前記基準圧力となるまで前記気相部に収容されたメタンを含むガスの供給を停止させる様に前記切替部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載のメタン製造装置。
【請求項4】
前記液相部へ循環させるガスの圧力を調整する補充ガスを前記ガス循環部に供給するガス補充部を更に備える請求項1~3のいずれか1項に記載のメタン製造装置。
【請求項5】
前記気相部内のメタンを含むガスを導入し、前記メタンを含むガスから二酸化炭素を分離するガス分離部を更に備える請求項1~3のいずれか1項に記載のメタン製造装置。
【請求項6】
前記反応部が、前記二酸化炭素と水素とを前記反応部の下部から上向流で流入させる上向流式反応器を備え、前記ガス収集部が、前記上向流式反応器の高さ方向に沿って複数配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のメタン製造装置。
【請求項7】
前記反応部が、前記液相部で二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させるための反応流路を備え、前記反応流路の上方に前記気相部と前記反応流路から浮上する水素を含むガスを収集する前記ガス収集部とを備える横向流式反応器を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のメタン製造装置。
【請求項8】
微生物を用いたメタネーション反応により、二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させるメタン製造方法であって、
液相部と気相部とを備える反応部の前記液相部内に二酸化炭素と水素とを流入させ、
前記液相部内の水素を含むガスを収集し、
収集した前記水素を含むガスを回収して前記液相部内へ循環させ、
前記気相部内のメタンを含むガスを回収すること
を含むことを特徴とするメタン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素と水素を反応させてメタンを生成するメタン製造装置及びメタン製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン化触媒又は微生物の存在下で水素と二酸化炭素とを反応させ、都市ガス等に用いられるメタンを合成する「メタネーション」と呼ばれる技術が知られている。メタネーションに用いられる原料として、発電所又は工場等から回収した二酸化炭素と、風力発電や太陽光発電等の再生可能エネルギー由来の水素とを利用することにより、化石燃料由来でない再生可能エネルギー由来のメタンが合成できる。このように、メタネーション技術は、脱炭素社会への移行過程における環境を配慮した有用な技術の一つとして注目されている。
【0003】
下水汚泥や生ごみ等のバイオマス資源を嫌気性消化処理することにより、バイオガスを生成させる技術が知られている。バイオガスはメタンと二酸化炭素とを主な構成成分として含む。バイオガス中の二酸化炭素からメタネーション反応によりメタンを生成させるバイオメタネーションによってバイオガス中のメタンの濃度を高めることにより、バイオガスの更なる有効活用が期待されている。
【0004】
有機性廃水からバイオガスを効率良く精製させるためのバイオガス反応器として、例えば、特開2010-42352号公報(特許文献1)には、グラニュール汚泥及び/又は担体を充填した、ガス・液・固分離部を多段に有する上向流嫌気性処理装置の例が記載されている。特許文献1では、最上段に設置されたガス・液・固分離部よりも下方に配置した循環水の取水口から、処理装置内の水を循環水として引き抜く。引き抜いた循環水は、処理装置内の底部及び/又は原水流入箇所及び/又は上向流嫌気性処理装置の前段処理装置に循環させる。
【0005】
特開平06-78744号公報(特許文献2)には、活性バイオマスで全部または部分的に満たされている反応器ハウジングを備えたバイオガス反応器の例が記載されている。反応器ハウジングの内部には、その反応器セグメント内に上昇するガスための溢出エッジを有する、一個又は数個の柱状に重なって配設された分離エレメントを備える。分離エレメントにより、発酵懸濁液から上昇するガス収集用のガス収集室および活性バイオマス汚泥粒子沈降用のガス泡の希薄な沈降室が形成されると共に、この室内にガス排出用の絞り装置を備えた導管が導かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-42352号公報
【特許文献2】特開平06-78744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のバイオガス反応器は、ガス発生量の増減に伴いガス圧力バランスが取れなくなると、汚泥界面が上昇し、ガス・液・固分離部から汚泥が流出する。或いは、ガスラインの汚泥流入による詰まり等を引き起こすことがある。特許文献2のバイオガス反応器は、反応器セグメント内の分離エレメントに接続されたガス取出し装置の設置と定期的なメンテナンスが必要であるため、処理が煩雑である。また、特許文献2のバイオガス反応器は槽内の圧力制御もされていない。
【0008】
水素は液体に溶けにくい物質である。そのため、メタン製造装置内で二酸化炭素と水素を反応させて効率良くメタンを生成させるためには、水素の液相への溶解を促進することが望ましい。また、メタン製造装置内で未反応の水素が生じると未反応の水素が処理ガスと共に外部へ流出することがある。そのため、未反応の水素の外部への流出は極力抑制することが望ましい。メタネーション反応においては、反応の進行により反応器内の圧力が下がることがある。メタンを効率良く生成させるためには、反応器内の圧力を適切にすることが望ましい。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、水素の液体への溶解を促進して効率良くメタンを生成でき、水素の装置外部への流出を抑制しながら装置内の圧力を適切に調整可能なメタン製造装置及びメタン製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、微生物を用いたメタネーション反応により二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させる反応部において、反応部の液相部内の水素を含むガスを利用することが有用であるとの知見を得た。
【0011】
上記課題を解決するために、本開示は一側面において、液相部と液相部の上方に気相部とを備え、微生物を用いたメタネーション反応により二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させる反応部と、液相部内に水素と二酸化炭素とを流入させるガス流入部と、液相部内の水素を含むガスを収集するガス収集部と、ガス収集部内の水素を含むガスを回収し液相部へ循環させるガス循環部とを備えるメタン製造装置である。
【0012】
本発明の実施の形態に係るメタン製造装置は一実施態様において、ガス循環部のガス圧力を検出可能な圧力検出部と、ガス圧力の検出結果が予め定められた基準圧力を下回る場合に、気相部に収容されたメタンを含むガスを回収し、回収したガスをガス循環部へ供給するガス回収部とを備える。
【0013】
本発明の実施の形態に係るメタン製造装置は別の一実施態様において、ガス回収部とガス循環部とに接続された切替部と、ガス循環部のガス圧力が基準圧力を下回る場合は、ガス収集部内の水素を含むガスと気相部に収容されたメタンを含むガスとを液相部に循環させるように切替部を制御し、ガス循環部のガス圧力が基準圧力を上回る場合は、ガス循環部のガス圧力が基準圧力となるまで気相部に収容されたメタンを含むガスの供給を停止させる様に切替部を制御する制御部とを備える。
【0014】
本発明の実施の形態に係るメタン製造装置は更に別の一実施態様において、液相部へ循環させるガスの圧力を調整する補充ガスをガス循環部に供給するガス補充部を更に備える。
【0015】
本発明の実施の形態に係るメタン製造装置は更に別の一実施態様において、気相部内のメタンを含むガスを導入し、メタンを含むガスから二酸化炭素を分離するガス分離部を更に備える。
【0016】
本発明の実施の形態に係るメタン製造装置は更に別の一実施態様において、反応部が、二酸化炭素と水素とを反応部の下部から上向流で流入させる上向流式反応器を備え、ガス収集部が、上向流式反応器の高さ方向に沿って複数配置されている。
【0017】
本発明の実施の形態に係るメタン製造装置は更に別の一実施態様において、反応部が、液相部で二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させるための反応流路を備え、反応流路の上方に気相部と反応流路から浮上する水素を含むガスを収集するガス収集部とを備える横向流式反応器を備える。
【0018】
本開示は別の一側面において、微生物を用いたメタネーション反応により、二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させるメタン製造方法であって、液相部と気相部とを備える反応部の液相部内に二酸化炭素と水素とを流入させ、液相部内の水素を含むガスを収集し、収集した水素を含むガスを回収して液相部内へ循環させ、気相部内のメタンを含むガスを回収することを含むメタン製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水素の液体への溶解を促進して効率良くメタンを生成でき、水素の装置外部への流出を抑制しながら装置内の圧力を適切に調整可能なメタン製造装置及びメタン製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るメタン製造装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る反応部が備えるガス収集部と循環手段との間に配置される水封器の構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るメタン製造装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るメタン製造装置を反応部の上面側からみた場合の説明図であり、
図4(b)は、
図4(a)のメタン製造装置を側面側からみた場合の反応部の断面の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0022】
(メタンの製造装置)
本発明の実施の形態に係るメタンの製造装置は、
図1に示すように、液相部11と液相部11の上方に気相部12とを備え、微生物を用いたメタネーション反応により二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させる反応部1と、液相部11内に水素と二酸化炭素とを流入させるガス流入部3と、液相部11内の水素を含むガスを収集するガス収集部4と、ガス収集部4内の水素を含むガスを回収し液相部11へ循環させるガス循環部5とを備える。
【0023】
図1の例では、反応部1として、原料となる二酸化炭素と水素とを反応部1の下部から上向流で流入させる上向流式反応器を利用する例を示している。反応部1に供給される原料としては、メタンと二酸化炭素を含むバイオガス又は二酸化炭素と、水素とが用いられる。反応部1内には、バイオガス中の不純物に耐性を有する水素資化メタン生成菌等の微生物が収容されるため、バイオガスを原料として利用することで、効率の良いメタネーション反応が行える。二酸化炭素源としては、工場等で発生する排ガス等から回収した二酸化炭素等を利用してもよい。水素源としては、圧力容器等に封入された水素の他に、水素ステーションや再生可能エネルギー発電で得られる電力によって水を電気分解する水電解装置等の水素供給部20等から供給された水素等を利用してもよい。
【0024】
反応部1内では、以下の式(1)に従うメタネーション反応に従い、液相部11に存在する微生物の存在下で、二酸化炭素と水素とからメタンを生成させる。
CO2+4H2→CH4+2H2O ・・・(1)
【0025】
反応部1内の液相部11は、液相部11内でメタンを生成させるための水素資化メタン生成菌等の微生物を含む汚泥又は有機性廃水等溶液が収容される。気相部12には、液相部11内でのメタネーション反応によって生成されたメタンを含むガスが収容される。
【0026】
気相部12は、液相部11におけるガス発生量の増減に伴い、液相部11と気相部12との液界面の上昇の発生を許容し、液相部11に収容される微生物等の反応部1外への流出を抑制できる程度に十分な容積を有して形成されることが好ましい。以下に限定されないが、例えば、液相部11と気相部12との容積比が6:4~9:1となるように、より好ましくは7:3~8:2となるように、反応部1内の液相部11と気相部12との反応部1内における割合が調整されることが好ましい。或いは、液相部11の気相部12と接する界面(液相界面)の高さが、反応部1の高さに対して60~90%、より好ましくは70~80%となるように、反応部1内の液相部11の液相界面の高さが調整されることが好ましい。
【0027】
液相部11内に収容する微生物は、担体の表面上に微生物を付着固定させた結合固定化担体を用いることが好ましい。結合固定化担体を液相部11内の流動担体として利用することで、液相部11内に微生物を高濃度に保持できるため、安定した生物処理が行える。結合固定化担体に加えて、微生物の浮遊担体、グラニュール汚泥等を添加してもよい。担体の材質は、微生物が付着する素材であればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ガラス、プラスチック、ウレタン等が挙げられる。以下に制限されないが、メタネーション反応をより効率良く行うためには、反応部1内に収容される担体の充填率を10~60vol%とし、更には15~50vol%とする。
【0028】
反応部1内の温度条件は30~80℃とし、圧力条件は、大気圧下~1.0MPa程度とする。反応部1内では、30~35℃を至適温度とした中温メタン発酵処理、50~55℃を至適温度とした高温メタン発酵処理、60~80℃を至適温度とした超高温メタン発酵処理の中から任意の発酵処理が選択できる。メタネーション反応で得られるメタンを主成分とするメタンを含むガスは、反応部1の上部から処理ガスとして排出させる。反応部1内のガス滞留時間を調整することにより、反応部1の出口から排出されるメタンを含むガス中のメタン濃度が目標値になるように調整できる。反応部1の出口から排出されるメタンを含むガス中のメタン濃度は以下に限定されないが、典型的には90%以上であり、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上である。
【0029】
ガス流入部3は、反応部1の下部又は底部に接続されている。ガス流入部3は、メタネーション反応の原料である二酸化炭素と水素を含むガスを液相部11へ流入させる。二酸化炭素と水素は、所定の比率となるように予め混合して、ガス流入部3から液相部11中へ流入させてもよい。二酸化炭素及び水素は、それぞれ別々のガス流入部3から液相部11中へ流入させてもよい。
【0030】
ガス流入部3から流入させる二酸化炭素の濃度に対して水素の濃度が低すぎると、水素が液相部11中に十分に溶解せず、メタネーション反応によって得られるメタンの生成量が少なくなる場合がある。逆に、ガス流入部3から流入させる二酸化炭素の濃度に対して水素の濃度が高すぎると、未反応の水素が増えて、未反応の水素が、処理ガスと共に反応部1の外部へ流出するおそれがある。液相部11への二酸化炭素と水素の流入比は、二酸化炭素濃度に対して水素濃度が3~5倍となるように調整することが好ましく、3~4倍とすることがより好ましい。
【0031】
水素の添加は、本発明の実施の形態に係るメタン製造装置が定常運転となったときに、必要に応じて検知管又は濃度測定器等で確認した二酸化炭素濃度、メタン濃度、或いは反応部1内で生成したメタンの発生量を測定するメーター等の測定値を参考値として、その流入量を調整することが好ましい。或いは、ガス流入部3を介して液相部11へ流入させる水素濃度を測定するための水素濃度計等をガス流入部3の配管等に配置してもよい。
【0032】
ガス収集部4は、
図1に示すように、立方体形状や円柱形状をなす反応部1の内壁部において、反応部1の高さ方向に沿って複数設けられている。
図1では上段及び下段の2段のガス収集部4が配置される例が記載されているがこれに限定されない。ガス収集部4は、反応部1の内壁部に対向し、上部が内壁部に接続され、下部に向かって内壁部との距離が徐々に離れる方向に延びる邪魔板41を備える。ガス収集部4は、邪魔板41と反応部1の内壁部との間に形成される空間42内に、液相部11中を流れるガスが収容できるように配置されている。反応部1の中央部には、下方に開口した円錐形状をなす邪魔板41を備え、図示しない固定部材によって固定されたガス収集部4が設けられている。邪魔板41の形状、配置位置、及び個数は、反応部1の形状及び大きさによって適宜設定できる。
【0033】
反応部1の内壁部と邪魔板41となす角度は、35度以下の鋭角とすることにより、液相部11中の微生物や汚泥のガス収集部4への堆積を防ぐことができる。また、邪魔板41の総面積が反応部1の装置断面積の1/3以上、更には1/2以上となるように邪魔板41を反応部1内に配置することにより、液相部11内を流れるガスを効率良く収集できる。
【0034】
ガス収集部4で収集される未反応の水素を含むガスは、収集ライン43を介してそれぞれ回収される。反応部1内においてそれぞれ高さが異なる複数のガス収集部4から、水素を含むガスを回収する場合は、それぞれのガス圧が異なる。
図2に示すように、高さの異なる複数のガス収集部4の空間42に収集されたガスを、収集ライン43を介して水封器30に導入することにより各ガス収集部4で収集されるガスの差圧が調整できる。即ち、複数のガス収集部4で収集された水素を、水封器30を介してガス循環部5へ供給することで、ガスの収集位置の高さに関係なく、より均一な圧力のガスが得られる。
【0035】
図1に示すように、ガス循環部5は、ガス収集部4で収集される水素を含むガスを送るための収集ライン43と、反応部1の上部に設けられ、気相部12に収容されたメタンを含むガスを回収するためのガス回収部6と、液相部11に二酸化炭素及び水素を流入可能なガス流入部3とに接続されている。ガス回収部6とガス循環部5の間には切替弁等で構成された切替部7が配置されている。切替部7を介して、ガス回収部6から回収されたメタンを含むガス又は後述するガス分離部9で二酸化炭素等を分離処理した後のメタンを含むガスをガス循環部5内に供給できるようになっている。切替部7には、切替部7の開閉動作を制御する制御部10が接続されている。
【0036】
ガス循環部5は、圧力検出部2を備えてもよい。圧力検出部2は、例えば圧力計等で構成され、ガス循環部5内の配管内圧力を測定することで、ガス循環部5へ流入するガス収集部4からの水素を含むガスのガス圧力が検出できる。圧力検出部2は、制御部10に接続されており、圧力検出部2によるガス圧力の検出結果を制御部10へ出力する。制御部10は、ガス圧力の検出結果が予め定められた基準圧力を下回る場合に、気相部12に収容されたメタンを含むガスを、ガス回収部6を介して回収させ、回収したガスをガス循環部5へ供給する。
【0037】
反応部1内では、メタネーション反応により5モルのガスが1モルに減少する。そのため、ガス流入部3からのガス流入が停止すると、気相部12が減圧される。この減圧により、ガス収集部4の液位が上昇し、収集ライン43及びガス循環部5に反応部1中の液が混入する恐れがある。反応部1内に高い負圧がかかる場合には、液相部11の液相界面の高さも上昇し、反応部1の上部に接続されたガス回収部6内に液相部11の微生物や汚泥が付着する恐れがある。
【0038】
本発明の第1の実施の形態によれば、ガス収集部4内の水素を含むガスを回収し、液相部11へ循環させるガス循環部5を備えるため、このガスによって反応部1内を適切な圧力に維持できる。更に、圧力検出部2が測定したガス収集部4及びガス循環部5のガス圧力が基準圧力を下回る場合には、ガス回収部6によって、気相部12に収容されたメタンを含むガスを回収し、回収したガスをガス循環部5へ供給する。これにより、ガス収集部4及びガス循環部5のガス圧力の低下分に見合ったガスを液相部11内に流入させることができるため、反応部1内の圧力を適切に維持することができる。その結果、ガス収集部4の液位が上昇して、液相部11内の微生物や汚泥が収集ライン43及びガス循環部5に混入することや、液相部11の水位上昇による反応部1上部に接続されたガス回収部6への微生物や汚泥の混入が抑制できる。また、液相部11中のガスを、ガス収集部4で回収してガス循環部5及びガス流入部3を介して液相部11へ循環させることで、液相部11内の未反応の水素を回収できる。これにより、未反応のガスが、液相部11を上昇して気相部12に収容されたメタンを含むガスに混入し、反応部1の外部へ流出することが抑制できる。
【0039】
ガス循環部5は、液相部11へ循環させるガスの圧力を調整するための補充ガスをガス循環部5に補充するガス補充部8を備えることが好ましい。ガス補充部8から必要に応じて補充ガスをガス循環部5に注入することにより、ガス循環部5内のガス圧力が常に一定値となるように調整できる。補充ガスとしては、窒素、アルゴン等の不活性ガス又はメタンガス等が好ましく利用できる。中でも、補充ガスとしてアルゴンガス又はメタンガスを用いることが好ましい。
【0040】
図1の例では、ガス循環部5がガス流入部3に接続されて、ガス循環部5を流れるガスが、ガス流入部3を介して液相部11内へ流入する例を記載している。しかしながら、ガス流入部3とは別の位置からガス循環部5を流れるガスを液相部11へ流入させるようにしてもよい。
【0041】
第1の実施の形態によれば、ガス循環部5を介してガス収集部4で回収した水素を含むガスを液相部11内へ流入させることで、液相部11の撹拌効果を高めることができる。ガス循環部5から反応部1内へ流入させる水素を含むガスの循環量は、反応部1への原料の流入ガス量に比べて体積比で1/5以上、更には1/4以上、更には1/3以上とすることが好ましい。ガスの循環量が多すぎると必要動力が増えることから、ガス循環部5から反応部1内へ流入させる水素を含むガスの循環量は、反応部1への原料の流入ガス量に対して体積比で20以下とすることが好ましい。これにより、液相部11内の撹拌効果が高まり、液相部11中への水素の溶解を促進して、メタネーション反応を好適に進行させることができる。ガス循環部5から反応部1内へ流入させる水素を含むガスの循環量は、以下に限定されるものではないが2m3/h以上とすることが好ましい。また、液相部11内へ流入させるガスとして、ガス分離部9で得られるメタンを高濃度で含むガスを液相部11内へ流入させてもよい。
【0042】
液相部11内の微生物活性が低下したときに、馴致した消化汚泥や消化汚泥に含まれる栄養塩を追加可能な栄養塩供給部25が反応部1に接続されていてもよい。また、反応部1は、ガス流入部3側から上方にいくにつれて微生物濃度(汚泥濃度)が低下していく。よって、反応部1内に内部液循環ライン(不図示)を配置し、液相部11下方の微生物を液相部11上方へ循環させるようにしてもよい。内部液循環ラインを反応部1に設けることにより、液相部11全体の汚泥濃度を均一化することが可能である。
【0043】
反応部1の気相部12から流出するメタンを含むガスは、ガス回収部6を通ってガス分離部9へ導入される。ガス分離部9としては、例えば、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、物理吸着法、深冷分離法等の種々の方法を利用したガス分離装置が利用できる。中でも、気体分子径の調整により複数のガス成分の分離が可能な分離膜を備え、分離膜を用いてメタン含有ガス中に残留する水素及び二酸化炭素を選択的に分離する膜分離装置、或いは、活性炭、ゼオライト、モレキュラーシービングカーボン(機能性活性炭)等の吸着剤を用いた物理吸着法を利用した吸着装置を利用することが、装置の小型化及び簡略化、経済的観点及び分離されたガスの再利用の観点から好ましい。ガス分離部9は、複数段並列又は直列に接続されていてもよい。
【0044】
本発明の第1の実施の形態に係るメタン製造方法は、液相部11と気相部12とを備える反応部1の液相部11内に二酸化炭素と水素とを流入させ、液相部11内の水素を含むガスをガス収集部4から収集し、収集した水素を含むガスを回収して液相部11内へ循環させ、気相部12内のメタンを含むガスを回収することを含む。
【0045】
反応部1の液相部11には、微生物を保持した結合固定化担体を含む溶液が収容される。次に、反応部1の下方から、原料ガスとして、少なくとも水素及び二酸化炭素を含むガス又はバイオガスを供給する。水素及び二酸化炭素を含むガスはさらにメタンガスを含んでもよい。水素は水素供給部20を介して反応部1の下方から供給される。
【0046】
反応部1内ではメタネーション反応が進み、各ガス収集部4内にはガスが溜まる。各ガス収集部4に溜まるガスには、反応部1の底部から導入された未反応の水素も含まれる。一方、反応部1の上面側にある気相部12には、液相部11を上昇してきた濃度90wt%以上のメタンガス及び二酸化炭素を含むガスが溜まる。気相部12に溜まったメタンを含むガスは、ガス回収部6を介してガス分離部9へ導入される。ガス分離部9では、例えば分離膜を用いた分離処理によって、メタンを含むガスから二酸化炭素及び水素が除去される。分離膜を用いた分離処理を行うことによって、装置を簡略化し処理を効率化できる。
【0047】
各ガス収集部4で収集されたガスは、収集ライン43を介して
図2の水封器30内へ一旦収容された後、ガス循環部5へ送られる。ガス循環部5の圧力検出部2は、ガス循環部5内のガス圧力を検出し、検出結果を制御部10へ出力する。制御部10は、ガス循環部5内のガス圧力の検出結果と基準圧力とを比較し、ガス圧力の検出結果が基準圧力の範囲内の場合には、ガス収集部4からガス循環部5へ導入された水素を含むガスを、ガス流入部3を介して液相部11内へ流入させるように、切替部7を閉状態に制御して、ガス循環部5内の水素を含むガスを液相部11内へ循環させる。
【0048】
一方、ガス圧力の検出結果が基準圧力を下回る場合は、制御部10は、ガス収集部4内の水素を含むガスと気相部12に収容されたメタンを含むガスとの両方のガスを液相部11に循環させるように、切替部7が開状態となるように制御する。これにより、ガス循環部5内の圧力は上昇する。ガス圧力の検出結果が基準圧力を上回る程度に高くなった場合には、制御部10は、切替部7が閉状態となるように切替部7を制御することにより、メタンを含むガスのガス循環部5への供給を停止させて圧力を下降させる。この際、分離膜を備えるガス分離部9の負荷が高くなることがある。このような場合は、切替部7とガス回収部6との間に設けられた緊急ガス排出弁(不図示)により、ガス分離部9へ流れるガスを逃がすことが好ましい。これにより、ガス分離部9への過負荷を避けながら、反応部1においてより安定的に処理を行うことができる。なお、ガス循環部5内のガス圧力の調整のために、制御部10は、ガス補充部8に接続された切替部21を制御し、不活性ガス等の補充ガスをガス循環部5内に供給して圧力の一定化を図ってもよい。
【0049】
第1の実施の形態に係るメタン製造方法によれば、反応部1内にガス収集部4から収集した水素を含むガスを循環させて反応部1内の圧力を適切に維持することにより、反応部1内に注入される水素を効率良く液相部11の溶液中へ溶解させながら、ガス収集部4内の液面及び液相部11の液面を適切な位置に維持でき、効率良くメタンを生成できる。また、液相部11に配置されたガス収集部4によって液相部11中の未反応の水素が回収できるため、気相部12側への未反応の水素の混入を防ぐことができる。その結果、水素を効率良く利用したメタネーション反応が達成できる。気相部12へ混入した未反応の水素は、ガス分離部9において分離膜を用いる場合、分離膜の性能悪化をもたらすおそれがある。第1の実施の形態に係るメタン製造装置によれば、気相部12からガス回収部6を介してガス分離部9に供給されるメタン含有ガス中の水素はごく僅かかほぼ無いに等しいため、ガス分離部9でわざわざ水素を分離するための装置を用いる必要がない。その結果、小型で効率的にメタンを製造可能なメタン製造装置が得られる。
【0050】
(変形例)
図3に示すように、ガス循環部5に二酸化炭素濃度計22、メタン濃度計23を接続し、ガス循環部5を流れるガスの二酸化炭素濃度及びメタン濃度を測定してもよい。二酸化炭素濃度計22及びメタン濃度計23での濃度測定結果は、制御部10に出力される。制御部10は、ガス循環部5を流れるガスの二酸化炭素濃度及びメタン濃度の測定結果から、反応部1内に流入する水素濃度及び供給流量を算出し、流量制御装置又は弁24を介して水素の供給流量を制御することができる。これにより、反応部1内をメタネーション反応により適した原料混合比とすることができるため、メタネーション反応におけるメタンの生成効率を向上できる。
【0051】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るメタン製造装置は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、液相部11に二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを生成させるための反応流路15を備える反応部1であって、反応流路15の上方に、気相部12と、反応流路15から浮上する水素を含むガスを収集するガス収集部4とを備える横向流式反応器で構成されている。
【0052】
反応部1は、直方体状の密閉された反応器である。反応部1内の液相部11には所定の間隔で複数の仕切板14が設けられている。仕切板14で仕切られた各領域によって反応流路15が形成されている。仕切板14は、液相部11において微生物を保持した液体が上下左右(垂直方向及び水平方向)に流動できるように、仕切板14の上下の端部が反応部1の上部と下部とにそれぞれ交互に接続されるように配置されている。仕切板14の左右の端部は、ガス及び溶液の通り道13が設けられるように、反応部1の側面の適切な位置に接続されている。仕切板14の枚数については特に制限はないが、仕切板14を用いて反応部1内を適切に分断することにより、液相部11に収容される微生物を保持する液体と原料としての二酸化炭素及び水素の接触効率を向上できる。
【0053】
反応部1の最も下流側の反応流路15の上方には、反応部1内で生成されたメタンを含有するガスを収容するための気相部12が形成されている。
図4(b)に示すように、気相部12が区画された領域以外の液相部11の上方には、メタンの他に、液相部11内を流通する未反応の水素や二酸化炭素を収集するためのガス収集部4が設けられている。
【0054】
気相部12内に収容されたメタンを含むガスは、ガス回収部6を介してガス分離部9へ導入される。ガス分離部9は、気相部12から供給されたメタンを含有するガスから二酸化炭素を分離し、処理ガス中のメタンの濃度を高める。ガス収集部4にはガス収集部4で収集された水素を含むガスを循環させるためのガス循環部5が接続されている。ガス循環部5には圧力検出部2と、ガス循環部5内のガス圧力を維持するためのガス補充部8が設けられている。圧力検出部2の圧力検出結果は制御部10へ出力される。制御部10は、圧力検出部2の圧力検出結果に基づいて、ガス回収部6とガス循環部5との間に接続された切替部7の開閉状態を制御する。反応部1には、液相部11の微生物活性が低下したときに、馴致した消化汚泥や消化汚泥に含まれる栄養塩を追加可能な栄養塩供給部25が接続される。
【0055】
反応部1の液相部11には、微生物を保持した結合固定化担体を含む溶液が収容される。必要に応じて栄養塩供給部25から栄養塩を液相部11中へ供給する。微生物を保持した汚泥等の溶液及び栄養塩の供給は、メタネーション反応の反応速度が低下したときのみ実施することが好ましい。反応部1の一端から、二酸化炭素及び/又はメタンガスと水素とをガス流入部3を介して流入させる。液相部11内の混合はガス流入部3からのガス流入による流動が主であるが、必要に応じて撹拌機を設けてもよい。
【0056】
液相部11内の微生物を含む溶液は、ガス流入部3に近い、ガス濃度の高い領域の方が、汚泥濃度が高くなる。よって、液相部11の上流側の溶液を下流側へ循環させるような内部液循環ライン(不図示)を設けることで、槽内濃度を均一にできる。反応部1は、求められるメタンガスの濃度や処理条件等に応じて、多段に配置しても良い。
【0057】
次に、反応部1の一端に接続されたガス流入部3から、少なくとも水素及び二酸化炭素を含むガス又はバイオガスを供給する。水素及び二酸化炭素を含むガスは、さらにメタンガスを含んでもよい。反応部1内ではメタネーション反応が進み、反応流路15の上方に形成された各ガス収集部4内には未反応の水素を含むガスが溜まる。一方、反応部1の最下流側の反応流路15の上方に設けられた気相部12には、液相部11を上昇してきた濃度90wt%以上のメタンガス及び二酸化炭素を含むガスが溜まる。気相部12に溜まったメタンを含むガスは、ガス回収部6を介してガス分離部9へ導入される。ガス分離部9では、例えば分離膜を用いた分離処理によってメタンを含むガスから二酸化炭素及び水素が除去される。
【0058】
各ガス収集部4で収集されたガスは、ガス循環部5へ送られる。ガス循環部5の圧力検出部2はガス循環部5内の圧力を検出し、検出結果を制御部10へ出力する。制御部10は、ガス圧力の検出結果と基準圧力とを比較し、ガス圧力の検出結果が基準圧力を満たす場合、即ち予め設定されたガス圧力の基準値の範囲内である場合は、ガス収集部4からガス循環部5へ導入された水素を含むガスを、ガス流入部3を介して液相部11内へ流入させるように、切替部7を閉状態に制御してガス循環部5内の水素を含むガスを選択的に液相部11内へと循環させる。
【0059】
一方、ガス圧力の検出結果が基準圧力を下回る場合は、制御部10は、ガス収集部4内の水素を含むガスに、気相部12に収容されたメタンを含むガスを更に加えたガスを液相部11に循環させるように、切替部7が開状態となるように制御する。これにより、ガス循環部5内の圧力が上昇する。ガス圧力の検出結果が基準圧力を上回る程度に高くなった場合には、制御部10は、切替部7が閉状態となるように切替部7を制御して、メタンを含むガスのガス循環部5への供給を停止させて圧力を下降させる。なお、ガス循環部5内のガス圧力の調整のために、制御部10は、ガス補充部8から不活性ガス等の補充ガスをガス循環部5内に供給することによりガス循環部5及びガス収集部4における圧力の一定化を図ってもよい。
【0060】
第2の実施の形態に係るメタン製造装置によれば、反応部1として横向流式反応器を利用する場合においても、水素の液体への溶解を促進して効率良くメタンを生成でき、水素の装置外部への流出を抑制しながら装置内の圧力を適切に調整することができる。
図4に示すように、反応部1の液相部11は、仕切板14によって、反応部1内で気液接触を促すための反応流路15が形成されるため、気液接触時間を十分に長く取ることができ、メタネーション反応によるメタン生成効率も向上できる。
【0061】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本開示は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できる。
【0062】
図1に示すメタン製造装置を用いて、バイオメタネーション試験を行った例を以下に示す。反応部1内の温度条件は30~80℃とし、古細菌である水素資化メタン生成菌を担体に担持して充填率40vol%となるように反応部1内に収容し、反応部1内の圧力を大気圧~1.0MPaの範囲で任意の圧力となるように制御する。反応部1内に流入させる原料ガス(流入ガス)として水素60%、二酸化炭素17%、メタン23%のバイオガスをガス流入部3から流入させ、メタネーション反応後のメタンを含有する処理ガスを反応部1上部のガス回収部6から排出させる。ガス循環部5による循環を行わない場合(循環なし)と、ガス収集部4により液相部11中の水素を含むガスを回収し、回収したガスを、ガス循環部5及びガス流入部3を介して液相部11に循環させた場合(循環あり)における処理ガスの組成を評価した結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
表1に示すように、ガス循環部5による循環処理を行うことによって、処理ガスへの残存水素の混入を防ぐことができる。流入ガス中に含まれる二酸化炭素と水素の供給比についても検討を行ったところ、式(1)に基づく理論値の二酸化炭素:水素=1:4に対して、二酸化炭素を少し多く流入し、例えば、二酸化炭素:水素=1:3程度とすることにより、処理ガス側への水素流出を防ぐことができることが分かった。具体的には、二酸化炭素濃度を15%以上、水素濃度50%以上とすることで、処理ガス側への水素の流出を防ぎながら効率のよいメタネーション処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1…反応部
2…圧力検出部
3…ガス流入部
4…ガス収集部
5…ガス循環部
6…ガス回収部
7…切替部
8…ガス補充部
9…ガス分離部
10…制御部
11…液相部
12…気相部
13…通り道
14…仕切板
15…反応流路
20…水素供給部
21…切替部
22…二酸化炭素濃度計
23…メタン濃度計
24…流量制御装置又は弁
25…栄養塩供給部
30…水封器
41…邪魔板
42…空間
43…収集ライン