(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099394
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】モールド副資材とその製造方法および複合材
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20240718BHJP
A47C 27/22 20060101ALI20240718BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240718BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B29C43/34
A47C27/22
B29C44/00 A
B29C44/36
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003312
(22)【出願日】2023-01-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-29
(71)【出願人】
【識別番号】593041136
【氏名又は名称】大塚産業マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠嚴
(72)【発明者】
【氏名】堺 一
【テーマコード(参考)】
3B096
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
3B096AD06
3B096AD07
4F204AA03
4F204AA21
4F204AA24
4F204AA29
4F204AC02
4F204AH26
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB28
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD07
4F214AD16
4F214AG20
4F214AH26
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UD13
4F214UD17
4F214UF05
4F214UF27
(57)【要約】
【課題】樹脂体に対応した複雑な形状の副資材でも効率的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、例えば、型成形により平坦なシート材の一部に凹凸状の成形部(10)を設けた成形材(m1)を得る成形工程と、その成形材の外周側に設けた切込部(21)を重着して外周側の少なくとも一部を湾曲させた重着成形材(m4)を得る重着工程とを備える。こうして、その重着成形材からなり、樹脂体(R)と一体化される副資材(M)が得られる。シート材は、例えば、不織布からなる。樹脂体は、例えば、発泡樹脂からなる。樹脂体に内空部(通気路)が設けられる場合、例えば、その内空部に対応した貫通穴が成形部に形成される。成形工程と重着工程に分けることにより、複雑な形状の副資材でも、低コストで製造できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型成形により平坦なシート材の一部に凹凸状の成形部を設けた成形材を得る成形工程と、
該成形材の外周側に設けた切込部を重着して該外周側の少なくとも一部を湾曲させた重着成形材を得る重着工程とを備え、
該重着成形材からなり樹脂体と一体化されるモールド副資材の製造方法。
【請求項2】
前記シート材は、前記成形工程前に、少なくとも外周側が所望形状に切り取られる請求項1に記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項3】
前記成形材は、前記重着工程前に、少なくとも外周側が所望形状に切り取られる請求項1に記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項4】
平坦なシート材の外周側に設けた切込部を重着して該外周側の少なくとも一部を湾曲させた重着材を得る重着工程と、
型成形により該重着材の一部に凹凸状の成形部を設けた重着成形材を得る成形工程とを備え、
該重着成形材からなり樹脂体と一体化されるモールド副資材の製造方法。
【請求項5】
前記シート材は、前記重着工程前に、少なくとも外周側が所望形状に切り取られる請求項4に記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項6】
前記重着は、縫着、圧着、接着または係着によりなされる請求項1~5のいずれかに記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項7】
前記重着成形材は、少なくとも外周側に磁性材が配設される請求項1~5のいずれかに記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項8】
前記シート材は、少なくとも不織布を有する請求項1~5のいずれかに記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項9】
前記成形部には、前記樹脂体に設けられる内空部に対応した貫通穴が形成される請求項1~5のいずれかに記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項10】
前記内空部は、通気路である請求項9に記載のモールド副資材の製造方法。
【請求項11】
凹凸状の成形部と、
切込みの重着により形成され外周側の少なくとも一部を湾曲させる重着部とを備え、
樹脂体と一体化されるモールド副資材。
【請求項12】
前記成形部は、前記樹脂体に設けられる内空部に対応した貫通穴を有する請求項11に記載のモールド副資材。
【請求項13】
請求項11または12に記載のモールド副資材と、
該モールド副資材と一体化した樹脂体と、
を備える複合材。
【請求項14】
前記樹脂体は、発泡樹脂を有し、
前記モールド副資材は、少なくとも不織布を有し、
座席用クッション材とされる請求項13に記載の複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂体と一体化されるモールド副資材(適宜、単に「副資材」という。)の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
パッドまたはクッション等を構成する軟質な樹脂体(例えばウレタンフォーム等の発泡樹脂体)は、その少なくとも一部表面が一体化された不織布等(副資材)で覆われる。副資材は、樹脂体の強度、耐摩耗性、保形性等の確保、樹脂体とフレーム等との間で発生する異音の抑止等に寄与する。このように副資材が一体化された樹脂体の代表例として、移動体(自動車、鉄道車両等)に用いられる座席用クッション材がある。
【0003】
ところで、自動車等に装備される座席は多機能化が進展しており、例えば、サイドエアバッグ装置やベンチレーション装置等の内蔵、衝突時等に乗員の身体をシート内に沈み込ませて乗員の保護を図る反発力低減機能の付加等がなされる。このような事情に応じて、座席用クッション材のみならず、副資材にも複雑な三次元形状(立体形状)が求められようになっている。これらに関連する記載が、例えば、下記の特許文献にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-84039
【特許文献2】特開2018-76044
【特許文献3】特開2021-146805
【特許文献4】特開平5-130923
【特許文献5】特開2006-1147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3はいずれも、クッション材(パッド材を含む)自体の形状や構造に関する提案をしているに過ぎない。つまり、クッション材と一体化される不織布等(副資材)に関する構造や製法等については、何ら具体的な記載や示唆がされていない。
【0006】
特許文献4は、不織布全体を型成形し、その外周囲を切取(トリミング)したクッション材用の補強布(副資材)を提案している。この場合、一種類(一品番)の補強布毎に異なる成形型が必要となり、補強布の製造コストや成形型の保管コスト等が増加し得る。
【0007】
特許文献5は、平坦な不織布の外周側に設けた切込みを縫製したパッド用補強布(副資材)を提案している。縫製のみで、複雑な立体形状の補強布を製作することは困難である。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、モールド副資材の新たな製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、シート材の一部の型成形と、シート材の外周側に設けた切込みの重着とを分けることを着想して具体化した。これを発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0010】
《モールド副資材の製造方法》
(1)本発明は、例えば、型成形により平坦なシート材の一部に凹凸状の成形部を設けた成形材を得る成形工程と、該成形材の外周側に設けた切込部を重着して該外周側の少なくとも一部を湾曲させた重着成形材を得る重着工程とを備え、該重着成形材からなり樹脂体と一体化されるモールド副資材の製造方法である。
【0011】
(2)また本発明は、平坦なシート材の外周側に設けた切込部を重着して該外周側の少なくとも一部を湾曲させた重着材を得る重着工程と、型成形により該重着材の一部に凹凸状の成形部を設けた重着成形材を得る成形工程とを備え、該重着成形材からなり樹脂体と一体化されるモールド副資材の製造方法でもよい。
【0012】
(3)本発明によれば、立体的(三次元的)な形状の副資材を効率的に生産でき、その製造コストや単価の低減を図れる。この理由は次のように考えられる。
【0013】
成形工程では、形状が複雑で所望の精度が求められる領域を型成形している。シート材全体を型成形する必要がなく、その一部の型成形に留めるため、成形型の小型化や共通化が図られる。これにより、成形型の製作コスト(型修正コスト等を含む。)や保管コストの低減等が可能となり、ひいては副資材の製造コストが低減され得る。なお、成形型の共通化が可能になる理由は、全体形状の異なる副資材(つまり異品番の副資材)でも、成形部自体の形状は同じ(共通化されている)ことも多いためである。
【0014】
重着工程では、型成形されない外周側に設けた切込部を重ね合わせて接合する。これにより、成形部のように複雑形状や高精度が求められない外周域も、効率的または低コストで形成される。
【0015】
このように、成形工程と重着工程が相互補完的に機能することにより、複雑な形状の副資材でも効率的に生産できるようになり、全体的に観て、副資材の製造コストや単価の低減が図られる。
【0016】
(4)ちなみに、重着工程前の成形材は、成形部のみが凹凸状であり、残部は平坦なシート(sheet)状であるため、複数枚を重ねた状態(積層した状態)にできることが多い。このような場合、複数枚の成形材を一括して、加工(切込、裁断等)、搬送または保管等することが可能となる。このような事情は、成形工程前の重着材についても同様に該当し得る。このため本発明によれば、成形工程と重着工程をそれぞれ異なる場所(工場、国等)で行なう場合でも、副資材の製造コストや単価を低減し得る。
【0017】
《モールド副資材》
本発明は、モールド副資材自体としても把握される。例えば、本発明は、凹凸状の成形部と、切込みの重着により形成され外周側の少なくとも一部を湾曲させる重着部とを備え、樹脂体と一体化されるモールド副資材でもよい。なお、モールド副資材は、機能等に応じて、補強布、裏打ち材、被覆材、成形基布等ともいわれる。
【0018】
《複合材等》
本発明は、複合材としても把握される。例えば、本発明は、上述したモールド副資材と、そのモールド副資材と一体化した樹脂体と、を備える複合材でもよい。
【0019】
また本発明は、そのような複合材の製造方法としても把握される。例えば、本発明は、モールド副資材をキャビティの内壁面に配設する準備工程と、そのキャビティ内で樹脂を(発泡)成形する樹脂成形工程と、を備える複合材の製造方法でもよい。
【0020】
さらに本発明は、上述した複合材を有する各種の製品(部材)として把握されてもよい。そのような製品は、複合材が表皮材等で被包された物(例えば座席等)でもよいし、複合材の少なくとも一部が露出した物(例えば吸音材等)でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】シート材の成形過程を例示する模式断面図である。
【
図2】型成形されたシート材(成形材)を例示した斜視図である。
【
図3A】外周側をトリミングした成形材の裏側(凹側)を例示した斜視図である。
【
図3B】その成形材の表側(凸側)を例示した斜視図である。
【
図4】成形部に貫通穴を設けた成形材を例示した斜視図である。
【
図5】外周側に設けた切込部を逢着した重着成形材を例示した斜視図である。
【
図6】外周側に磁性材を配設した重着成形材(副資材)を例示した斜視図である。
【
図7】その副資材に発泡樹脂体が一体化される過程を例示する模式断面図である。
【
図8A】副資材と発泡樹脂体が一体化したクッション材の裏側を例示した斜視図である。
【
図8B】そのクッション材の表側を例示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の製造方法のみならず、物(副資材、複合材等)にも適宜該当し得る。方法に関する構成要素も、物に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0023】
《シート材》
(1)素材となるシート材は、通常、平坦で可撓性を有する軟質材からなる。シート材は、単層でも複層でもよい。シート材は、全域が均質的でもよいし、厚さ、材質、層構成等が領域毎に異なってもよい。シート材は、少なくとも成形前において、含浸した樹脂の裏面への浸透を抑止できる程度の厚さまたは密度(目付)があるとよい。
【0024】
シート材(成形材または重着材を含む。)は、少なくとも外周側が所望形状にカット(裁断、切り取り、トリミング等)されるとよい(カット工程)。カットは、複数(多数)枚が重ねられた状態でされてもよい。カットは、切断刃(抜き刃)により機械的にせん断されてもよいし、加熱刃やレーザ照射等により溶断されてもよいし、鋏等で切り取られてもよい。
【0025】
カットは、成形工程前、成形工程後から重着工程前または重着工程後のいずれかにおいて少なくとも一回なされるとよい。カットは、切込部の形成と併せて、重着工程前になされると効率的である。加工前のシート材なら、副資材の最終形状を考慮した展開図状にカットされてもよい。成形工程後または重着工程後に、さらにカット(トリミング)が追加されてもよい。
【0026】
(2)シート材は、少なくとも不織布(層)を有するとよい。樹脂体の反対側(裏側)に設けられた不織布は、複合材と他部材(フレーム等)の接触により生じる異音を抑止し得る。樹脂体側(表側)に設けられた不織布は、樹脂(特に発泡樹脂)の含浸により、樹脂体に副資材を密着させる。
【0027】
不織布は、多数の繊維が絡合(交絡)、結合(接合)等して薄くシート状になったものである。不織布の形態や製法、繊維の種類・配合、繊維間の絡合や結合の状態等は適宜選択される。
【0028】
不織布を構成する繊維は、通常、化学繊維からなるが、天然繊維(綿、ウール、麻等)、炭素繊維、金属繊維等を含んでもよい。各繊維の長さは問わず、例えば、長繊維で も短繊維でもそれらを混合したものでもよい。化学繊維は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル等の他、レーヨン等の再生繊維でもよい。
【0029】
不織布は、例えば、軟化点または融点が相対的に異なる低融点繊維と高融点繊維が混在した混合繊維からなってもよい。このような不織布を加熱すると、低融点繊維が優先的に軟化または溶融して、高融点繊維と絡んだ状態で硬化または凝固する。このような不織布からなるシート材は、融着(サーマルボンド)し易いため、加熱成形したときの保形性、加熱重着したときの圧着性等に優れる。
【0030】
シート材は、単種の不織布のみでもよいし、複数種の不織布が積層されたものでもよいし、不織布以外の材質を有してもよい。シート材は、予め所定の単位(形状)毎に切断されて、成形工程または重着工程に供給されてもよいし、連続的(例えばロール状)に供給されてもよい。
【0031】
《成形工程》
成形工程は、型成形により、平坦なシート材の一部に凹凸状の成形部を形成する。成形型は、金型の他、樹脂型等でもよい。型成形は、通常、上型と下型によりシート材をプレスしてなされる。成形工程の温度、加圧力、時間等は、シート材の材料特性、成形性、成形後の保形性等を考慮して適宜調整される。成形工程は、冷間成形でもよいが、温間成形(熱間成形)すれば、成形部の形状が安定化または高精度化され易い。
【0032】
シート材が低融点繊維と高融点繊維が混在した不織布からなる場合なら、シート材または成形型の温度を、低融点繊維の少なくとも一部が溶融する温度以上で高融点繊維が溶融しない温度未満に調整して、温間成形がなされてもよい。
【0033】
《重着工程》
重着工程により、外周側に設けた切込部が重ね合わされた重着部が形成される。重着部により、シート材の外周側の少なくとも一部は湾曲した状態となる。成形工程前に重着工程を行なうと重着材が得られ、成形工程後に重着工程を行なうと重着成形材が得られる。
【0034】
重着工程は、例えば、切込部を縫着、圧着、接着または係着等してなされる。切込部の形状、重着部の長さや幅等の変更により、外周側にできる湾曲形態は調整され得る。切込部の圧着は、例えば、重ね合わせる切込片同士を溶着させる熱圧着でもよい。切込部の係着は、例えば、その切込片同士をステープラー(ホッチキス)やピン等で止めてなされる。ステープル(針)やピンを後述する磁性材として利用してもよい。
【0035】
《磁性材》
副資材は、通常、キャビティの内壁に保持された状態で、樹脂体と一体成形(インサート成形)される。副資材の保持方法は種々あり得る。例えば、キャビティの内壁に配設された突起に、副資材の外周側に設けた孔を掛止して副資材を保持してもよい。樹脂体の成形型が磁性体(鋼材等)の場合、副資材をキャビティの内壁に磁着させて保持してもよい。このような磁性材は、例えば、副資材(成形材、重着成形材)の少なくとも外周側に配設されるが、それ以外の箇所に設けられてもよい。磁性材は、軟磁性材でも硬磁性材(永久磁石)でもよい。樹脂体の成形型が磁化されていれば、副資材側は軟磁性材でもよい。
【0036】
《副資材/複合材》
(1)副資材は凹凸状の成形部と切込部を重着した重着部とを備え、この副資材が樹脂体と一体化して複合材となる。
【0037】
成形部や重着部は、複合材の仕様に適した形態であればよい。例えば、樹脂体に内空部が設けられる場合なら、その内空部に対応した貫通穴が成形部があるとよい。内空部は、例えば、空調等に利用される通気路、他部材(配管、配線、ケーブル、センサー、機器等)の通路(挿通路、嵌通路、貫通路、導通路等)や収容室などである。
【0038】
貫通穴は、成形工程前または重着工程前、成形工程後または重着工程後のいずれの段階で形成されてもよい。貫通穴は、複数枚を重ねた状態で一括して穿設されてもよい。また、貫通穴となる一部の切込みがなされたシート材の成形工程後または重着工程後に、残部を切り落として貫通穴を完成させてもよい。
【0039】
重着部は、切込部の対向する端縁同士を重ね合せ、その重合部を接合して形成される。重着部は、一体成形される樹脂原料が漏出(浸透)しない程度に形成されているとよい。重着される切込部の形状は問わないが、例えば、楔状(V字状)、スリット状(細長い方形状)、円弧状、U字状等である。
【0040】
(2)複合材は、例えば、クッション材、配線(電線)や配管等の保護材、防音材、緩衝材、フィルター材、断熱材等に用いられる。
【0041】
本発明の複合材は、振動や揺動を伴う移動体(自動車、鉄道、飛行機等)の構成品(座席、内装品等)に用いられる他、建物内にある家具(座席、ソファー等)、寝具(ベッド等)などに用いられてもよい。
【実施例0042】
空調機能付き自動車用シートに装着されるクッション材(複合材)に用いられる副資材を例示を示しつつ、さらに本発明を具体的に説明する。
【0043】
《成形》
(1)
図1に示すように、成形型Dでシート材m0を加熱成形した。成形型Dは、上型D1と下型D2からなる。上型D1と下型D2はそれぞれ、ヒータ(図略)を内蔵する金型である。上型D1と下型D2は、対向する成形面側に凸部e1と凹部e2とをそれぞれ有する。凸部e1と凹部e2は、シート材m0に設ける凹凸状の成形部10に対応した形状にとなっている。
【0044】
本実施例では、説明の便宜上、各図に矢印で示す方向を上下方向、左右方向または前後方向とする。既述した部材または部位については、適宜、同符号を付して重複した説明を省略する。
【0045】
シート材m0は、厚さが略均一的な単層の不織布からなる。不織布は、例えば、融点が異なる2種類の化学繊維が混在してなる。具体例を挙げると、不織布は、低融点ポリエステル繊維(例えば融点・軟化点(TL)が50~200℃程度)と高融点ポリエステル繊維(例えば融点・軟化点(TH)が200~300℃)との混合繊維からなる。低融点ポリエステル繊維の混合比率は、例えば、全体(合計)に対して10~70質量%程度である。
【0046】
シート材m0は、ロール状に巻回された不織布を所望形状(例えば方形状)に予め裁断されている。
【0047】
(2)成形型Dによるシート材m0の成形は、次のようになされる。先ず、上型D1と下型D2を内蔵ヒータで所望の成形温度に加熱しておく。成形温度(T)は、例えば、シート材m0が上述した混合繊維からなる不織布の場合なら、TL≦T<THとすればよい。このとき、軟化または溶融した低融点ポリエステル繊維が高融点ポリエステル繊維に絡まって凝固することにより、成形性、保形性等が向上し得る。
【0048】
次に、シート材m0を加熱した上型D1と下型D2の間に挿入し、シート材m0の成形領域を凸部e1、凹部e2の間に配置する。上型D1と下型D2によりシート材m0の成形領域をプレス成形する。所定時間の保持後、シート材m0を成形型Dから取り出す。こうして
図2に示すように、平坦な不織布の所定領域にだけ複雑な凹凸状の成形部10が高精度に形成された成形材m1が得られる。
【0049】
《切取》
図3A、
図3B(両者を併せて「
図3」という。)に示すように、成形材m1の外周側を所望形状に切取(裁断、トリミング等)することにより、成形材m2が得られる(切取工程)。
図3Aは成形材m2の凹部側(これを裏側とする。)、
図3Bは成形材m2の凸部側(これを表側とする。)を示す。
【0050】
成形材m2の外周縁20は、後述する一体成形される発泡樹脂体Rに相応した形状となっている。また成形材m2の外周側には、略V字状の切込部211、212、213(これらを併せて「切込部21」という。)が左右対称に形成されている。成形材m2の外周側のカットは、例えば、複数の成形材m1を重ねた状態で、トムソン刃等によるせん断ややレーザ等による溶断により行える。
【0051】
《穿設》
図4に示すように、成形部10内の所定位置に貫通穴110、111、112、113、114(これらを併せて「貫通穴11」という。)を設ける(穿設工程)。貫通穴111、112、113、114は、成形部10内に略左右対称に形成されている。こうして成形材m3が得られる。
【0052】
貫通穴11の穿設も、例えば、複数の成形材m2を重ねた状態で行える。なお、穿設に代えて、シート材m0に対して、貫通穴11に対応する位置に予め切込みを入れておいてもよい。切込みは、完全な貫通穴でもよいし、穴の一部でもよい。後者の場合、残片を手作業等で切り落とすことにより、貫通穴が完成される。
【0053】
《重着》
図5に示すように、成形材m2(成形材m3)の外周側に形成された切込部211、212、213の切縁を重ねて縫製することにより、逢着された重着部221、222、223(これらを併せて「重着部22」という。)が左右対称に形成される(重着工程)。こうして外周側が緩やかに表側へ起曲された重着成形材m4が得られる。重着部22は、切込部21の熱圧着や接着等により形成されてもよい。
【0054】
《磁性材》
図6に示すように、永久磁石であるプラスチック磁石片からなる磁性材311、312、313、314、315(これらを併せて「磁性材31」という。)を、重着成形材m4の裏面外周側に略前後対称に配設する。磁性材31は、両面粘着テープや接着剤により、重着成形材m4の裏面(一体化される発泡樹脂体Rの反対面)に貼着される。こうして、発泡樹脂体Rと一体化させる副資材Mが得られる。
【0055】
《一体成形》
図7に示すように、樹脂型F1、F2(両者を併せて「樹脂型F」という。)に形成されるキャビティCの上壁面(樹脂型F1の成形面)の所定位置に、副資材Mを磁着させる。キャビティC内に注入した樹脂原料rを加熱発泡させる。樹脂原料rは、例えば、ウレタンと発泡剤とを含む組成物である。
【0056】
その加熱発泡後、
図8A、
図8B(両者を併せて「
図8」という。)に示すように、副資材Mが発泡樹脂体R(例えばウレタンフォーム)に一体化(インサート成形)されたクッション材S(複合材)が得られる。なお、
図8Aはクッション材Sの裏面側、
図8Bはクッション材Sの表面側(着座面側)を示す。
【0057】
なお、発泡樹脂体Rには、副資材Mの貫通穴11に対応した複数の通気路g(内空部)が形成されている。成形部10を囲む環状部12に取り付けられた空調装置の配管から導入される冷気または暖気は、クッション材Sの裏面側から貫通穴11を経由し。通気路gを通過して自動車用シートの座面へ放出される。
【0058】
本実施例では、成形工程後に重着工程を行なって副資材を製造する場合を例示したが、当然、重着工程後に成形工程を行なって副資材を製造してもよい。