(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099399
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】逆流抑止装置および逆流抑止装置を備えた排水ます
(51)【国際特許分類】
E03F 7/04 20060101AFI20240718BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E03F7/04
E03F5/10 A
E03F5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023003319
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063DA07
2D063DA24
2D063DA30
(57)【要約】
【課題】本発明は、順フロー排水の量が多い排水系統においてもその流れを阻害しないように設置することが可能であり、逆流水発生時は逆流防止弁を確実に閉じるように作動させることが可能であり、そして耐久性やメンテナンス性に優れ、簡単に取り付けることができる逆流抑止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】本発明によれば、開閉口と接続口とを有する筒状の弁管と、弁管の開閉口側の開口端に形成された弁座部と、弁管の開閉口側の上部において回動自在に支持された弁体とを備えた逆流抑止装置において、弁管の上部には弁体を軸支するための軸受け部が設けられ、そして軸受け部には、全部または一部を除去することができ、弁体と当接することより弁体の回動範囲を制限するストッパーが設けられている逆流抑止装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉口と接続口とを有する筒状の弁管と、
前記弁管の開閉口側の開口端に形成された弁座部と、
前記弁管の開閉口側の上部において回動自在に支持された弁体とを備えた逆流抑止装置において、
前記弁管の上部には前記弁体を軸支するための軸受け部が設けられ、そして
前記軸受け部には、全部または一部を除去することができ、前記弁体と当接することより前記弁体の回動範囲を制限するストッパーが設けられていることを特徴とする逆流抑止装置。
【請求項2】
前記ストッパーは切り穴を有し、そして
前記ストッパーは、前記切り穴より上部の部材を除去することにより前記ストッパーの高さを変えることができる請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項3】
前記ストッパーは、前記軸受け部よりも厚みの薄い板状部材または前記軸受け部よりも厚みの薄い切取り溝で区画された除去ブロックから形成されていることを特徴とする請求項2に記載の逆流抑止装置。
【請求項4】
前記弁体はアーム部を有し、そして
前記アーム部は、前記ストッパーと当接することにより前記弁体の回動範囲を制限することを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項5】
前記弁管は、前記開閉口近傍の頂部に当接受け部を有し、そして
前記当接受け部は、前記弁体の前記アーム部と当接することにより前記弁体の回動範囲を制限することを特徴とする請求項4に記載の逆流抑止装置。
【請求項6】
前記弁管の頂部には、前記弁体の回転軸と平行な平面を有し且つ水準器を載置することができる水準器載置部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項7】
前記弁管の頂部には、前記開閉口の中心軸と平行な標線が表示されていることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項8】
前記開閉口と前記接続口とは、前記開閉口の中心軸と前記接続口の中心軸とが互いに平行且つ偏心して配置されるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項9】
前記接続口を水平方向に開口するように配置したとき、前記開閉口が下向き斜め方向に開口するように、前記弁管はその途中で湾曲または屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の逆流抑止装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の逆流抑止装置を備えた排水ます。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流防止弁を備えた逆流抑止装置に関し、特に逆流防止弁の開く角度を可変に規制することが可能なストッパーや、さらに逆流抑止装置の取り付けを容易にするために水準器載置部や標線などが設けられた逆流抑止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に住宅などのトイレや風呂場、台所等の排水設備から排出される排水は、各排水設備に接続された排水管を経由して宅地内に設置された排水ますに集められ、そして該排水ますに集められた排水は公共ますやマンホールを経由して下水道本管へ流出される。
【0003】
また、排水ます等の流入口に取り付けることにより、下水道本管などの下流側排水設備で発生した逆流水の宅内への侵入を防止するために、例えば特開2008-261222号公報(特許文献1)に記載されているように、防臭効果を最大限に得るために、通常の排水が流れるとき以外は基本的に弁体を閉じているタイプの逆流防止(抑止)装置や、特開2020-153508号公報(特許文献2)に記載されているように、異物等による詰り防止を重視して、弁座を傾斜させて配置することにより、逆流水が流れるとき以外は基本的に逆流防止弁を開いているタイプの逆流防止(抑止)装置が広く知られている。
【0004】
また、近年では、地球温暖化等に伴う降雨量の増加や排水設備の多様化に伴う排水経路の複雑化により、排水ます等を通過する通常排水の量が増加する傾向にある。一方、地球温暖化等に伴う異常気象の発生より排水経路における逆流水の発生も多発していることから、逆流抑止装置には、平常時は逆流防止弁を大きく開けて多量の順フロー排水の流れを許容することが求められ、それでいて、異常時は逆流防止弁を確実に閉じて排水の逆流を防ぐことが求められるようになっている。
【0005】
また、上述したような逆流抑止装置では、従来よりも逆流防止弁の開閉頻度も高くなり、弁体や弁座、パッキン等の摩耗も激しくなることから、従来以上に高い耐久性や高度なメンテナンス性が求められるようになっている。
【0006】
さらに、上述したような複雑化した排水経路や取り付けスペース等に制約のある設置場所においても、簡単に取り付けることができる逆流抑止装置の開発が待ち望まれているという事情もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-261222号公報
【特許文献2】特開2020-153508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1,2に記載されている逆流抑止装置では、通常排水の量が多いときでもその円滑な流れを保証できるように、逆流防止弁は制限されることなく、弁座から90°以上の角度に全開可能に構成されているのみであるので、逆流防止弁が略全開の状態であるときに逆流水が発生すると、逆流防止弁を的確に閉じることができなくなって排水の逆流を許してしまうという問題があった。
【0009】
また、例えば逆流抑止装置が排水ますの底部やインバートから離れた位置に取り付けられていると、逆流水は、下流側から上流側へ向かう流れに加えて、弁体の下方から上方へ向けて液面を上昇させる流れも生じさせることになるので、特に特許文献2に記載されているように、逆流水が流れるとき以外は基本的に逆流防止弁を開いているタイプの逆流抑止装置では、弁体に対する逆流水の衝突する方向によっては弁体が開く方向に動いたり閉じる方向に動いたりして、その開閉動作が極めて不安定になるという問題があった。
【0010】
さらに、特許文献1に記載されているように、通常の排水が流れるとき以外は基本的に逆流防止弁を閉じているタイプの逆流抑止装置であっても、設計時に予定されていた取付け角度よりも下流側に向けて下向きに傾けて取り付けると、通常、逆流防止弁はその回転軸から略真下方向に鉛直に懸架されるのに対して、弁体が当接する弁座は下へ向かうほど鉛直方向から離れるように傾いて配置されることになる。換言すれば、特許文献1に記載の逆流抑止装置においても、弁体は、弁座から大きく開いた角度に配置されることになるので、逆流水が流れるとき以外は基本的に逆流防止弁を開いているタイプの逆流抑止装置と同様の問題を生じ得るという問題があった。
【0011】
一方、弁体が弁座から過度に開かないように恒久的に制限してしまうと、本来的に上流から下流へ向かう排水量が多い排水経路では弁体の開く角度が不足してしまい、スムーズな排水の流れを阻害したり詰りを生じ易くなるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、本来的に通常排水(順フロー排水)の量が多い排水系統においてもその流れを阻害しないように設置することが可能であり、それでいて逆流水が発生したとき、逆流防止弁(弁体)を確実に閉じるように作動させることができる逆流抑止装置であって、耐久性やメンテナンス性に優れ、取り付けも簡単に行うことができる逆流抑止装置および逆流抑止装置を備えた排水ますを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、逆流抑止装置の特に弁体(逆流防止弁)の支持構造などについて鋭意検討を重ねた結果、弁体の可動部へ、弁体の弁座部から開く回転角(回動範囲)を一定の範囲内に制限するストッパーを設け、さらに該ストッパーの全部または一部を除去することでストッパーの高さを変えられるようにすることにより、順フロー排水に対して弁体を開き易くしておきながら、逆流水に対しては弁体を閉じ易くするという相反する上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明によれば、開閉口と接続口とを有する筒状の弁管と、弁管の開閉口側の開口端に形成された弁座部と、弁管の開閉口側の上部において回動自在に支持された弁体とを備えた逆流抑止装置において、弁管の上部には弁体を軸支するための軸受け部が設けられ、そして軸受け部には、全部または一部を除去することができ、弁体と当接することより弁体の回動範囲を制限するストッパーが設けられていることを特徴とする逆流抑止装置が提供される。
【0015】
そのため、本発明では、ストッパーは貫通した切り穴を有し、そしてストッパーは、切り穴より上部の部材を除去することによりストッパーの高さ(弁体との当接位置)を変えられるように構成することが好ましい。また、切り穴は必ずしも開口した穴形状である必要はなく、貫通したスリットや貫通したミシン目等であってもよい。
【0016】
また、ストッパーは、切除等し易くするため、例えば軸受け部よりも厚みの薄い板状部材または軸受け部よりも厚みの薄い切取り溝で区画された除去ブロックから形成してもよい。
【0017】
本発明によれば、例えば逆流水の発生頻度が多い排水系統においては、ストッパー(ストッパー高さを高く保持する)により、弁体が全開となったときの回転角(回動範囲)を鉛直方向または鉛直方向よりも弁座部側へ近づいた角度内に規制することで、逆流水が発生したとき、弁体を逆流水により閉じる方向への力を受け易い角度に配置することができる。
【0018】
また、例えば本来的に上流から下流へ向かう順フロー排水の量が多い排水系統においては、ストッパーの全部または一部を除去する(ストッパー高さを低くする)ことより、弁体が鉛直方向よりも、弁座部側から離れた状態(角度)まで回動できるようにすることで、順フロー排水のスムーズな流れを許容し、異物等により詰りも効果的に防止することができる。
【0019】
このように、本発明の逆流抑止装置は、弁体を軸支する軸受け部に弁体と当接し、その当接高さを変えることができるストッパーを設けているので、順フロー排水の量および逆流水の発生頻度やその量に応じて、弁体の弁座部から開く回転角(回動範囲)を制限ないし調節することができる。
【0020】
その結果、本発明の逆流抑止装置は、それが基本的に弁体を開いているタイプであるか、または基本的に弁体を閉じているタイプであるとかに拠らず、順フロー排水の量が多い排水系統に取り付けても、逆流水の発生頻度が多い排水系統に取り付けても、若しくはその両方の特性を有する排水系統に取り付けても、それらのバランスを取りながらストッパーの当接高さを調節することにより順フロー排水のスムーズな流れを許容し、それでいて逆流水が発生したとき、弁体を安定して閉じるように作動させることができる。
【0021】
本発明の逆流抑止装置では、弁体はアーム部を有し、そしてアーム部は、ストッパーと当接することにより弁体の回動範囲を制限するように構成してもよい。
【0022】
また、本発明の逆流抑止装置では、弁管は開閉口近傍の頂部に当接受け部を設け、そして当接受け部は弁体のアーム部と当接することにより弁体の回動範囲を制限するように構成してもよい。
【0023】
本発明では、弁体にアーム部を設けることにより、弁管上部の弁体の軸支位置(回転軸)を自由に配置することができようになる。また、アーム部を弁管頂部の当接受け部と当接するように構成することで、弁体の過度な閉まる側への回転を抑制することができ、弁座部や該弁座部と当接する弁体および弁体のパッキンの損傷等を防ぐことができる。
【0024】
本発明の逆流抑止装置では、弁体のアーム部および軸受け部に軸穴を設け、軸穴には低摩擦係数のスリーブを装着し、そして弁体は、スリーブに挿通されたボルトおよびナットを介して軸受け部に着脱自在に取り付けてもよい。スリーブの装着により弁体の回動が円滑になると共に、軸穴の摩耗が防止されて耐久性が向上する。また、ボルトおよびナットの使用により弁体の着脱自在が極めて容易になり、逆流抑止装置のメンテナンス性が向上する。
【0025】
また、本発明の逆流抑止装置では、弁管の頂部に、弁体の回転軸と平行な平面を有し且つ水準器を載置することができる水準器載置部を設けてもよい。さらに弁管の頂部には、弁管の開閉口の中心軸と平行な標線を表示してもよい。水準器載置部の設置や標線の表示により水準器や標線を用いた逆流抑止装置の芯出しが容易となり、逆流抑止装置を排水ます等へ簡単に取り付けることができるようになる。
【0026】
本発明において、弁管の開閉口と接続口は、開閉口の中心軸と接続口の中心軸とが互いに平行且つ偏心して配置されるように形成してもよい。弁管の開閉口と接続口を互いの中心軸が偏心するように配置すると、開閉口および弁体の外形(直径など)を一定形状としておきながら、接続口の口径を、設計変更により容易に拡径または縮径することができるようになる。また、弁管の開閉口および接続口の口径が異なっていても、弁管の底部において段差を無くし面一とすることができるので、異物等による詰りを効果的に防止することができる。
【0027】
本発明の逆流抑止装置では、弁管の接続口を水平方向に開口するように配置したとき、開閉口が下向き斜め方向に開口するように、弁管はその途中で湾曲または屈曲させてもよい。弁管を湾曲等させて開閉口が下向き斜め方向に開口するよう形成すると、例えばインバートを有する排水ますの流入口へ逆流抑止装置を取り付けた際、インバートおよび流出口へ向けて順フロー排水を円滑に流すことができるようになる。また、平常時、弁体と開口端に形成された弁座部との間に隙間が形成されることにより少量の順フロー排水の円滑な流れも保証されるので、異物等による詰りを効果的に防止することができる。
【0028】
また、本発明の逆流抑止装置では、弁体を軸支したとき、弁座部との当接面が上から下へ向かうにつれて弁座部から遠ざかるように傾斜して配置されるように、弁体の重心を、弁体の当接面よりも上流側に配置してもよい。弁体の重心を弁体の当接面よりも上流側に配置すると、平常時、弁体は鉛直方向よりも下流側へ傾いて弁座部との間に隙間を形成するので少量の順フロー排水の円滑な流れを保証し、異物等による詰りを効果的に防止することができる。
【0029】
さらに、本発明の逆流抑止装置は、例えば流入口と流出口とを備えた排水ますの該流入口に取り付けることにより、排水ますにおいても、上述した本発明の逆流抑止装置により奏される効果を享受することができる。
【0030】
なお、本明細書において、「水平」とは、厳密な意味での水平方向のみを意味するものではなく、排水を水平方向に流す際に設けられる程度の勾配を含む範囲で用いている。また、「鉛直」とは、厳密な意味での鉛直方向のみを意味するものではなく、継手の製作や据付時に生じる程度の誤差を含む範囲で用いている。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、開閉口と接続口とを有する筒状の弁管と、弁管の開閉口側の開口端に形成された弁座部と、弁管の開閉口側の上部において回動自在に支持された弁体とを備えた逆流抑止装置において、弁管の上部には弁体を軸支するための軸受け部が設けられ、そして軸受け部には、全部または一部を除去することができ、弁体と当接することより弁体の回動範囲を制限するストッパーが設けられていることを特徴とする逆流抑止装置逆流抑止装置が提供される。
【0032】
その場合、ストッパーは切り穴を有し、そしてストッパーは、切り穴より上部の部材を除去することによりストッパーの高さ(弁体との当接位置)を変えられるように構成することが好ましい。また、ストッパーは、例えば軸受け部よりも厚みの薄い板状部材または軸受け部よりも厚みの薄い切取り溝で区画された除去ブロックから形成してもよい。
【0033】
本発明によれば、弁体を軸支する軸受け部に弁体と当接するストッパーを設けているので、順フロー排水の量および逆流水の発生頻度やその量に応じて、弁体の弁座部から開く回転角(回動範囲)を制限ないし調節することができる。その結果、本発明の逆流抑止装置は、それが基本的に弁体を開いているタイプであるか、または基本的に弁体を閉じているタイプであるとかに拠らず、順フロー排水の量が多い排水系統に取り付けても、逆流水の発生頻度が多い排水系統に取り付けても、若しくはその両方の特性を有する排水系統に取り付けても、それらのバランスを取りながらストッパーの当接高さを調節することにより順フロー排水のスムーズな流れを許容し、それでいて逆流水が発生したとき、弁体を安定して閉じるように作動させることができる。
【0034】
また、本発明によれば、弁管に水準器載置部や標線を設けることができるので、水準器や標線を用いた逆流抑止装置の芯出しが容易となり、逆流抑止装置を簡単に取り付けることができる。
【0035】
さらに、本発明によれば、弁管の開閉口と接続口の中心軸を互いに平行且つ偏心させて配置することができるので、開閉口および弁体の外形(直径など)を変更することなく、接続口の口径のみを容易に設計変更することが可能になり、弁管の底部も段差を無くし面一とすることができるので、異物等による詰りを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る逆流抑止装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示される逆流抑止装置において、弁管をA-A断面で切り取った縦断面図である。
【
図3a】
図1に示される逆流抑止装置をA-A断面で切り取った縦断面図(ただし、弁体3は開いた状態)と、当該縦断面図において軸受け部付近を部分的に拡大した拡大図である。
【
図3b】第1の実施形態に係る逆流抑止装置の軸受け部に形成されたストッパーを除去する前の態様を示した部分的拡大図である。
【
図3c】第1の実施形態に係る逆流抑止装置の軸受け部に形成されたストッパーを除去した後の態様を示した部分的拡大図である。
【
図4】
図1に示される逆流抑止装置において、弁管を真上からみた平面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る逆流抑止装置を排水ますへ取り付けた態様を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る逆流抑止装置の斜視図である。
【
図7】
図6に示される逆流抑止装置において、弁管をB-B断面で切り取った縦断面図である。
【
図8】
図7に示される縦断面図において、逆流抑止装置の軸受け部付近を部分的に拡大した拡大図である。
【
図9】第2の実施形態に係る逆流抑止装置を排水ますへ取り付けた態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る逆流抑止装置および逆流抑止装置を備えた排水ますについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例0038】
<第1の実施形態>
図1には、本発明の第1の実施形態に係る逆流抑止装置1の斜視図が示されている。
図2には、第1の実施形態の逆流抑止装置1において、弁管2をA-A断面で切り取った縦断面図が示されており、
図3aには、第1の実施形態の逆流抑止装置1をA-A断面で切り取った縦断面図(ただし、弁体3は開いた状態)と、当該縦断面図において軸受け部23付近を部分的に拡大した拡大図が示されている。また、
図3bには、第1の実施形態の逆流抑止装置1の軸受け部23に形成されたストッパー24を除去する前の態様を示した部分的拡大図が示されており、
図3cには、第1の実施形態に係る逆流抑止装置の軸受け部に形成されたストッパーを除去した後の態様を示した部分的拡大図が示されている。
【0039】
図1,2に示されるように、第1の実施形態の逆流抑止装置1は、開閉口20と接続口21とを有する筒状の弁管2と、弁管2の開閉口20側の上部において回動自在に支持された弁体3とを備えている。弁管2の開閉口20側の開口端には、弁体3の周縁部と当接することにより開閉口20を閉じる弁座部22が形成されている。また、弁座部22または弁座部22と当接する弁体3の周縁部には、閉じたときの弁座部22と弁体3とのシール性を向上させるために合成ゴムなどのエラストマー材料からなるパッキンが取り付けられていることが好ましく、本実施形態では、弁体3の周縁部に合成ゴム製のパッキン34(
図3a参照)が取り付けられている。
【0040】
図2に示されるように、弁管2の開閉口20と接続口21は、開閉口20の中心軸aと接続口21の中心軸bとが互いに平行且つ偏心して配置されるように形成されている。本実施形態では、弁管2の開閉口20と接続口21の中心軸a,bは互いに偏心するように配置されているので、開閉口20および弁体3の外形(直径など)は一定形状としておきながら、接続口21の口径を、設計変更により容易に拡径または縮径することができる。また、弁管2の開閉口20および接続口21の口径が異なっていても、弁管2の底部において段差を無くし面一とすることができるので、異物等による詰りを効果的に防止することができる。なお、本実施形態では接続口21の形状を基本的に差口形状としているが、受口形状(図示せず)としてもよい。
【0041】
図1,
図3b、cに示されるように、弁管2の外周部の上部側には、後述する弁体3のアーム部31を回動自在に軸支するための軸受け部23が立設されている。第1の実施形態では、軸受け部23は、弁管2の外周部から上方に延びた一対の柱部材230からなり、柱部材230の側面には弁管2の周方向への変形を防止するための補強リブ231が形成され、門型に配置されている。また、それぞれの柱部材230には、弁体3を軸支するためのボルト4を挿通することができる軸穴232(
図2)が形成されている。
【0042】
第1の実施形態では、弁管2の軸受け部23の一対の柱部材230の間に、両柱部材230を繋ぐようにストッパー24(
図3b)が設けられている。ストッパー24は、その全部または一部を除去することができるように、両柱部材230を繋ぐように形成された貫通した切り穴240を有しており、該切り穴240よりも上側のストッパー24部分の両端部を鋸やカッターナイフ等を用いて切断することにより、簡単に除去してストッパー24の当接高さを変えることができる(
図3c参照)。
【0043】
切り穴240は必ずしも開口した穴形状である必要はなく、貫通したスリットや貫通したミシン目等であってもよい。また、切り穴240やスリット、ミシン目等は複数個を多段階に配設してもよく、各切り穴240等の上部のストッパー24部分を切除することにより、多段階的にストッパー24の当接高さを変えられるようにしてもよい。さらに、切り穴240等を弁管2の外周面と接するように設けることで、弁管2の外周面上に形成されたストッパー24の全部を除去できるようにしてもよい。
【0044】
また、図示しないが、ストッパー24は、鋸やカッターナイフ等を用いて簡単に切断することができるように軸受け部23よりも厚みの薄い板状部材、または軸受け部23よりも厚みの薄い切取り溝で区画された除去ブロックとして形成することもできる。
【0045】
このように、ストッパー24は恒久的に配設される補強リブ231等とは異なり、切り穴240等や、軸受け部23の柱部材230などの他の部分よりも薄肉化された部分を有することにより、鋸やカッターナイフ等を用いてストッパー24の全部または一部を簡単に除去することができる。
【0046】
弁管2に取り付けられる弁体3は、
図1,3aに示されるように弁管2の弁座部22と当接する略円形上の弁本体30と、弁体3を弁管2の軸受け部23により軸支するために、弁本体30の上部端部から弁体3の裏側(上流側)へ連続して延びたアーム部31とを備えている。アーム部31の軸受け部23への取り付け側には、弁体3を軸支するためのボルト4を挿通することができる軸穴310(
図3a)が形成されている。
【0047】
また、アーム部31の軸穴310の外周には、ストッパー24と当接することで弁体3の全開する側の回転角(回動範囲)を規制する平面形状の第1の当接部311が形成されており、軸穴310を中心として、第1の当接部311から略100°回転した位置には、弁管2の開閉口20近傍の頂部に形成された当接受け部25と当接することで弁体3の全閉する側の回転角(回動範囲)を規制する平面形状の第2の当接部312が形成されている。
【0048】
第1の実施形態では、
図1および
図3cに示されるように、上述したストッパー24のうち、切り穴240よりも上側のストッパー24部分(
図3b参照)が除去されており、弁体3のアーム部31の第1の当接部311と、切り穴240よりも上側のストッパー24部分との当接が解除されている。ただし、本実施形態では、切り穴240よりも上側のストッパー24部分を除去しても、ストッパー24の残部として、除去したストッパー24部分よりも高さが低いサブストッパー241が残るように構成されているので、サブストッパー241の上端がアーム部31と当接することにより、弁体3の弁座部22に対する開閉角度は最大約100°に制限されている(
図3a参照)。
【0049】
また、先述したように、ストッパー24は、切り穴240を弁管2の外周面と接するように設けることで、弁管2の外周面上に形成されたストッパー24の全部を除去できるようにしてもよく、この場合、弁体3は、アーム部31の第1の当接部311が弁管2の外周面と当接するまで弁座部22に対して100°以上開く方向に回動できるようになる。
【0050】
なお、第1の実施形態では、サブストッパー241の上部に傾斜面242が設けられており、該傾斜面242がアーム部31の第1の当接部311と面対面で当接するので、サブストッパー241およびアーム部31の当接部分の局部的な摩耗や損傷が抑制されている。また、図示しないが、傾斜面242は、除去する前の切り穴240よりも上側のストッパー24部分に設けてもよい。
【0051】
一方、弁体3は閉まる側へ回動すると、弁体3と弁座部22とが当接するのと略同時に、アーム部31の第2の当接部312と弁管2の頂部に形成された当接受け部25とが当接するので、弁体3の過度な閉まる側への回転が抑制されて弁座部22や弁体3および弁体3のパッキン34が損傷等するのを未然に防止することができる。
【0052】
このように、第1の実施形態の逆流抑止装置1では、平常時、弁体3は順フロー排水が流れるとき以外は基本的に閉ざされているが、切り穴240よりも上側のストッパー24部分を除去することにより弁座部22から略100°の回動範囲まで開くことができるので、上流から下流へ向かう順フロー排水に対して円滑な流れを保証する。ただし、弁体3は順フロー排水の量がどれだけ増えても弁座部22から100°以上の位置(回転角)まで開くことができないので、逆流水が発生したとき、弁体3は逆流水の衝突を受け易い角度に保持されて迅速に閉じるように作動することができる。
【0053】
第1の実施形態の逆流抑止装置1は排水系統全般に使用することができるが、特に雨水系統、雨水用途に対して好適に使用することができる。その場合、本実施形態の逆流抑止装置1は、雨水が流れていない通常時において、下流側の排水設備から生じる臭いが上流側へ流れるのを防止することができる。
【0054】
第1の実施形態では、軸受け部23の軸穴232および/またはアーム部31の軸穴310にはフッ素樹脂等からなる低摩擦係数のスリーブ(図示せず)を内挿することができ、スリーブの装着により弁体3を軸支するボルト4の回動がスムーズになると共に、軸穴232、軸穴310の摩耗が防止されて耐久性が向上する。また、弁体3は、アーム部31を介してスリーブに挿通されたボルト4およびナット40により軸受け部23に取り付けられているので、弁体3の着脱自在が極めて容易となり、逆流抑止装置1のメンテナンス性が向上する。
【0055】
特に一般の逆流抑止装置では、弁体や弁体を支持する弁管の軸受け部が一体成形されたプラスチック樹脂等から出来ている場合が多いことから、弁体を軸支する手段として金属製のボルトやピン等の他の部品を使用せず、プラスチック樹脂等の弾性(撓み)を利用して、弁体と一体となって形成された回転軸を弁管の軸受け部へ嵌め込んでいることが多かった。そのため、弁体は、一度嵌め込んだ回転軸を軸受け部から容易に取り外すことが困難であったことから、本実施形態のように、弁体3の着脱を容易にした逆流抑止装置の開発が待ち望まれていた。
【0056】
本実施形態では、
図1,3aに示されるように、弁本体30の下流側の表面32は下流側から上流側へ向けて凹んでいる。このため、同じ流量であれば、弁本体30の下流側の表面32が受ける逆フロー排水の抵抗力は弁本体30の上流側の裏面33が受ける順フロー排水の抵抗力よりも大きくなるので、逆流発生時、弁体3の表裏面32,33の間で生じる抵抗力の差により、弁体3は安定して弁管2の開閉口20を閉じるように作動することができる。
【0057】
また、弁体3を軸支したとき、弁体3が、弁座部22との当接面が上から下へ向かうにつれて弁座部22から遠ざかるように傾斜して配置されるように、弁体3の重心を弁体3の当接面よりも上流側に配置してもよい。弁体3の重心を弁体3の当接面よりも上流側に配置すると、平常時、弁体3は鉛直方向よりも下流側へ傾いて弁座部22との間に隙間を形成するので、少量の順フロー排水の円滑な流れを保証し、異物等による詰りを効果的に防止することができる。
【0058】
本実施形態では、逆流抑止装置1を構成する弁管2および弁体3は、プラスチック材料によりそれぞれに一体的に成形されている。逆流抑止装置1に用いられる材料に特に限定はなく、主としてプラスチック等の公知の材料を用いることができ、高い強度、耐水性を有し、成形が容易である等の観点から塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。
【0059】
図5には、第1の実施形態に係る逆流抑止装置1を排水ます5へ取り付けた態様を示す斜視図が示されている。なお、
図5では、排水ます5の内部を透視できるようにするため、筒体50の部分のみを点線で図示している。
【0060】
図5に示されるように、第1の実施形態の逆流抑止装置1が取り付けられた排水ます5は、側壁に短管状の流入口500と流出口501とを備えた略円筒形の筒体50と、筒体50の下部に取り付けられた底部51と、点検口を有し、筒体50の上部に取り付けられた枠部52と、そして枠部52に着脱自在に取り付けられた略円盤状の蓋部53とを有している。また、流入口500および流出口501には、それぞれ上流側接続管54および下流側接続管55が取り付けられており、いずれの接続管54,55も筒体50の内部に突出している。本実施形態では、逆流抑止装置1は流入口500に取り付けられた上流側接続管54の内部突出部に接続口22を内挿することにより取り付けられている。
【0061】
本実施形態では、排水ます5はコンクリート材料から出来ているが、塩化ビニル樹脂等のプラスチック材料、鉄等の金属材料またはそれらの材料を適宜組み合わせたものから出来ていてもよい。
【0062】
また、排水ます5において、底部51および/または枠部52は筒体50と別部品として構成されている必要はなく、一体的に形成されていてもよい。本実施形態では、流入口500の上流側接続管54および流出口501の下流側接続管55はいずれも底部51から上方に離間した位置で開口しており、排水に落差を設けるため、流出口501および下流側接続管55は、それぞれの底部が流入口500および上流側接続管54の底部よりも低くなるように配置されている。
【0063】
本実施形態の排水ます5では、第1の実施形態の逆流抑止装置1の弁体3はサブストッパー241により、弁座部22に対して略100°開く方向に回動することができる(
図3a)。そのため、平常時、逆流抑止装置1は上流側接続管54(流入口500)から排水ます5内へ流れ込む排水の量が多くても少なくても、その流量に応じて自在に弁体3を開くことができる。
【0064】
一方、異常時、下流側接続管55(流出口501)から排水ます5内へ排水が逆流すると、下流側接続管55(流出口501)および上流側接続管54(流入口500)は底部51から離間した上方の位置で開口しているので、逆流水は底部51から上流側接続管54(流入口500)へ向けて液面を上昇させるようにして流れる。ところが、本実施形態では、逆流抑止装置1の弁管2の開閉口20(弁座部22)は鉛直面内に配置されているので、弁体3は基本的に開閉口20を閉じており、逆流水の上流側接続管54(流入口500)への浸入を確実に阻止することができる。
【0065】
<第2の実施形態>
図6には、本発明の第2の実施形態に係る逆流抑止装置1aの斜視図が示されている。
図7には、第2の実施形態に係る逆流抑止装置1aにおいて、弁管2aをB-B断面で切り取った縦断面図が示されており、
図8には、第2の実施形態に係る逆流抑止装置1aをB-B断面で切り取った縦断面図において、逆流抑止装置1aの軸受け部23a付近を部分的に拡大した拡大図が示されている。
【0066】
第2の実施形態の逆流抑止装置1aは、弁管2aの接続口21aを水平方向に開口するように配置したとき、他方の開閉口20aが下向き斜め方向に開口されるように、弁管2aの途中を湾曲または屈曲するように形成させていること、接続口21aの形状が基本的に受口形状であること、そしてストッパー24a(切り穴240aよりも上側のストッパー24a部分)を除去する前の状態であるため、ストッパー24aと当接する弁体3aの回動範囲が第1の実施形態よりも制限されていること以外は、基本的に第1の実施形態の逆流抑止装置1と同じ構成を有し、同じ効果を奏することができる。そのため、第2の実施形態の逆流抑止装置1aについては、基本的に第1実施形態の逆流抑止装置1と同じ構成および効果を有する部分についてのここでの詳細な説明を省略する。
【0067】
第2の実施形態の逆流抑止装置1aは、開閉口20aと接続口21aとを有する筒状の弁管2aを備えており、開閉口20aは、第1の実施形態と異なり、弁管2aを湾曲等させることにより下向き斜め方向に開口するように形成されている。弁管2aの湾曲等は、短い直管を組み合わせるようにして段階的に下向き斜め方向へ角度を付けてもよく(
図7)、または曲管により連続的に下向き斜め方向へ角度を付けてもよく、若しくは短い直管と曲管を組み合わせて下向き斜め方向へ角度を付けてもよい。また、本実施形態では接続口21aの形状を受口形状としているが、差口形状(図示せず)としてもよい。
【0068】
第2の実施形態では、弁管2aを湾曲等させることにより開閉口20aを下向き斜め方向に開口させているので、例えばインバート51aや底部を有する排水ます(
図9)の流入口500aへ逆流抑止装置1aを取り付けると、インバート51aや該インバート51aに接続された流出口501a(
図9)または底部へ向けて順フロー排水をスムーズに誘導することができる。また、第2の実施形態では、平常時、弁体3aと開閉口20aの弁座部22aとの間には隙間が形成されているので、順フロー排水が少量であっても円滑な流れが保証され、異物等による詰りが効果的に防止される。
【0069】
第2の実施形態では、弁管2aの軸受け部23aの一対の柱部材230aの間に、両柱部材230aを繋ぐようにストッパー24aが設けられている。ストッパー24aは、その全部または一部を簡単に除去することができるように、両柱部材230aを繋ぐように形成された貫通した切り穴240aを有しており、該切り穴240aよりも上側のストッパー24aの両端部を鋸やカッターナイフ等を用いて切断することにより、簡単に除去してストッパー24aの当接高さを変えることができる(
図3c参照)。
【0070】
切り穴240aは必ずしも開口した穴形状である必要はなく、貫通したスリットや貫通したミシン目等であってもよい。また、切り穴240aやスリット、ミシン目等は複数個を多段階に配設してもよく、各切り穴240a等の上部のストッパー24a部分を切除することにより、多段階的にストッパー24aの当接高さを変えられるようにしてもよい。さらに、切り穴240a等を弁管2aの外周面と接するように設けることで、弁管2aの外周面上に形成されたストッパー24aの全部を除去できるようにしてもよい。
【0071】
また、図示しないが、ストッパー24aは、鋸やカッターナイフ等を用いて簡単に切断することができるように軸受け部23aよりも厚みの薄い板状部材、または軸受け部23aよりも厚みの薄い切取り溝で区画された除去ブロックとして形成してもよい。
【0072】
このように、ストッパー24aは恒久的に配設される補強リブ231a等とは異なり、切り穴240a等や、軸受け部23aの柱部材230aなどの他の部分よりも薄肉化された部分を有することにより、鋸やカッターナイフ等を用いてストッパー24aの全部または一部を簡単に除去することができる。
【0073】
第2の実施形態では、弁管2aに取り付けられる弁体3aは、
図6,7に示されるように弁管2aの弁座部22aと当接する略円形上の弁本体30aと、弁体3aを弁管2aの軸受け部23aにより軸支するために、弁体本体30aの上部端部から弁体3aの裏側(上流側)へ連続して延びたアーム部31aとを備えている。アーム部31aの軸受け部23aへの取り付け側には、弁体3aを軸支するためのボルト4aを挿通することができる軸穴310a(
図7)が形成されている。また、アーム部31aの軸穴310aの外周には、ストッパー24aと当接させるための平面形状の当接部311aが形成されている。
【0074】
また、アーム部31aの軸穴310aの外周には、ストッパー24aと当接することで弁体3aの全開する側の回転角(回動範囲)を規制する平面形状の第1の当接部311aが形成されており、軸穴310aを中心として、第1の当接部311aから略100°回転した位置には、弁管2aの開閉口20a近傍の頂部に形成された当接受け部25aと当接することで弁体3aの全閉する側の回転角(回動範囲)を規制する平面形状の第2の当接部312aが形成されている。
【0075】
第2の実施形態では、
図7および
図3bに示されるように、ストッパー24aのうち、切り穴240aよりも上側のストッパー24a部分が除去されていないので、弁体3aは、ストッパー24aの上端がアーム部31aの第1の当接部311aと当接することにより鉛直方向または鉛直方向よりも弁座部22a側へ近づいた位置までしか開くことができないように弁座部22aに対する開閉角度が制限されている。そのため、本実施形態では、例えば弁体3aの下方から上方へ向けて液面を上昇させるような逆流水が生じても、弁体3aを、弁体3aの下流側から逆流水の衝突を受け易い角度に配置することが可能となり安定して閉じる方向に作動させることができる。
【0076】
このように、第2の実施形態の逆流抑止装置1aでは、平常時、弁体3aは弁座部22aとの間に隙間を形成することにより基本的に開閉口20aを開いているので、上流から下流へ向かう順フロー排水に対して円滑な流れを保証する。ただし、弁体3aはストッパー24aの存在により、弁体3aの回動範囲が鉛直方向または鉛直方向よりも弁座部22a側へ近づいた位置までしか開くことができないので、逆流水が発生したときは、弁体3aは逆流水の衝突を受けて確実に閉じるように作動することができる。
【0077】
第2の実施形態の逆流抑止装置1aは排水系統全般に使用することができるが、特に汚水系統、汚水用途に対して好適に使用することができる。その場合、本実施形態の逆流抑止装置1aでは、汚水が流れる際、弁体3aが開閉口20aを開いたままであるので、汚水に含まれる汚物等が弁体3aによって詰まるのを効果的に防止することができる。
【0078】
また、上述の機能および効果は、例えば第1の実施形態のように順フロー排水が流れるとき以外は基本的に弁体を閉じているタイプの逆流抑止装置1において、開閉口20を下向き斜め方向に開口するように取り付けた場合においても同様に得ることができる。すなわち、第1の実施形態の逆流抑止装置1においても、ストッパー24(
図3b)により、弁体3が全開となったときの回転角(回動範囲)を鉛直方向または鉛直方向よりも弁座部22側へ近づいた角度に制限することができるので、逆流水が発生したときにも弁体3を逆流水によって閉じる方向への力を受け易い角度に配置することができる。
【0079】
以上のように、本実施形態の逆流抑止装置1,1aは、それが基本的に弁体3aを開いているタイプであるか、または基本的に弁体3を閉じているタイプであるとかに拠らず、ストッパー24,24aの構成および機能、効果は同じであり、その使用方法も同じである。
【0080】
そのため、第2の実施形態の逆流抑止装置1aにおいて、ストッパー24aの全部または一部(切り穴240aよりも上側のストッパー24a部分)を
図3cのように除去すれば、弁体3aのアーム部31aの当接部311aとストッパー24a(切り穴240aよりも上側のストッパー24a部分)との当接が解除され、弁体3aは、第1の実施形態と同様に、鉛直方向よりも弁座部22a側から離れた位置(角度)まで回動できるようになる。
【0081】
一方、第1の実施形態の逆流抑止装置1において、
図3bのようにストッパー24(切り穴240よりも上側のストッパー24部分)を除去しなければ、アーム部31の当接部311がストッパー24と当接するので、順フロー排水の量がどれだけ増えても弁体3の回動範囲を逆流水の衝突を受け易い角度内に制限することが可能となり、逆流水が発生したとき、確実に閉じるように作動させることができる。
【0082】
図9には、第2の実施形態に係る逆流抑止装置1aを排水ます5aへ取り付けた態様を示す斜視図が示されている。なお、
図9では、排水ます5aの内部を透視できるようにするため、筒体50aの部分のみを点線で図示している。
【0083】
図9に示されるように、第2の実施形態の逆流抑止装置1aが取り付けられた排水ます5aは、側壁に短管状の流入口500aと流出口501aとを備えた略円筒形の筒体50aと、流入口500aと流出口501aとを接続し、筒体50aの下部に取り付けられたインバート部51aと、点検口を有し、筒体50aの上部に取り付けられた枠部52aと、そして枠部52aに着脱自在に取り付けられた略円盤状の蓋部53aとを有している。また、流入口500aおよび流出口501aには、それぞれ上流側接続管54aおよび下流側接続管55aが取り付けられており、いずれの接続管54a,55aも筒体50aの内部に突出している。本実施形態では、逆流抑止装置1aは流入口500aに取り付けられた上流側接続管54aの内部突出部に接続口21aを外挿することにより取り付けられている。
【0084】
本実施形態では、排水ます5aはコンクリート材料から出来ているが、塩化ビニル樹脂等のプラスチック材料、鉄等の金属材料またはそれらの材料を適宜組み合わせたものから出来ていてもよい。
【0085】
また、排水ます5aにおいて、インバート部51aおよび/または枠部52aは筒体50aと別部品として構成されている必要はなく、一体的に形成されていてもよい。本実施形態では、流入口500aの上流側接続管54aはインバート部51aから上方に離間した位置で開口しており、流出口501aの下流側接続管55aはインバート部51aの中に形成された断面U字形の溝の中で開口している。また、排水に落差を設けるため、流出口501aおよび下流側接続管55aは、それぞれの底部が流入口500aおよび上流側接続管54aの底部よりも低くなるように配置されている。
【0086】
本実施形態の排水ます5aでは、逆流抑止装置1aの弁管2aの開閉口20aは、弁管2aを湾曲させることにより下向き斜め方向に開口している。そのため、平常時、上流側接続管54a(流入口500a)から排水ます5a内へ流れ込む順フロー排水は確実にインバート部51aへ誘導されると共に、弁体3aと開閉口20aに形成された弁座部22aとの間には隙間が形成されているので、順フロー排水の量が少なくても円滑な流れが保証され、異物等による詰りも効果的に防止される。
【0087】
一方、本実施形態では、逆流抑止装置1aの弁体3aはストッパー24aによりその回動範囲(回転角度)が規制され、鉛直面内または鉛直面よりも弁座部22a側へ近づいた角度に保持されている。そのため、異常時、下流側接続管55a(流出口501a)から排水ます5a内へ排水が逆流し、下流側接続管55a(流出口501a)から上流側接続管54a(流入口500a)へ向かう流れに加えて、インバート部51aから上流側接続管54a(流入口500a)へ向けて液面を上昇させる流れが生じても、弁体3aはいずれの流れに対しても弁本体30aの下流側の表面32aから衝突を受け易い角度に保持されるので安定して閉じる方向に作動することができる。
【0088】
<第1,2の実施形態共通/水準器載置部>
図4および
図6に示されるように、第1の実施形態の逆流抑止装置1および第2の実施形態の逆流抑止装置1aでは、弁管2,2aの頂部に、弁体3,3aの回転軸(ボルト4,4a)と平行な平面を有し且つ水準器を載置することができる水準器載置部6,6aが設けられている。
【0089】
水準器載置部6,6aは平坦な平面から形成されており、該平面は弁体3,3aの回転軸4,4aと平行に配置されているため、水準器を弁管2,2aの管軸と直交するように横向きに水準器載置部6,6aの上に載置すれば、該水準器の表示により、弁体3,3aの回転軸(ボルト4,4a)が水平方向に配置されているか、若しくは弁体3、3aの回転軌跡が鉛直面内に配置されている簡単に把握することができる。その結果、弁管2,2aの周方向の角度を容易に矯正することが可能となり、弁体3,3aの回転軸(ボルト4,4a)やその回転軌跡が斜めに配置されることに生じる弁体3,3aの回動不良を防止することができる。
【0090】
また、第1の実施形態のように、基本的に弁管2の開閉口20が形成された短管部分の中心軸aが水平に配置されるタイプの逆流抑止装置1において、水準器載置部6を開閉口20の中心軸aと平行な平面を有するように構成すれば、水準器を弁管2の中心軸aと平行となるように縦向きに水準器載置部6,6aの上に載置することにより、該水準器の表示により、弁管2が水平に配置され、開閉口20が鉛直方向に配置されているか、若しくは開閉口20,20aが鉛直方向よりも傾いて配置されているかを簡単に把握することができる。
【0091】
その結果、第1の実施形態の逆流抑止装置1および第2の実施形態の逆流抑止装置1aは水準器を用いた逆流抑止装置1,1aの芯出しが容易となり、上述した排水ます5,5aの流入口500,500aなどへ正確に且つ簡単に取り付けることができるようになる。
【0092】
<第1,2の実施形態共通/標線>
図4および
図6に示されるように、第1の実施形態の逆流抑止装置1および第2の実施形態の逆流抑止装置1aは、弁管2,2aの頂部に、弁管2,2aの開閉口20,20aの中心軸と平行な標線7,7aが設けられている。
【0093】
標線7,7aは、開閉口20,20aの中心軸と平行となるように弁管2,2aの頂部に設けられているため、標線7,7aが真上に位置するように逆流抑止装置1,1aを配置すれば、弁体3,3aは、設計通り、その回転軸が水平方向に配置されて鉛直面に沿って回転するようになる。そのため、第1,2の実施形態では、逆流抑止装置1,1aの芯出しがさらに容易となり、例えば排水ます5,5aの流入口500,500aなどに簡単に取り付けることが可能になるばかりでなく、正確な取り付けによる弁体3,3aの誤作動の発生を防止することができる。